(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173895
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】繰出容器
(51)【国際特許分類】
A45D 40/14 20060101AFI20231130BHJP
A45D 40/06 20060101ALI20231130BHJP
B65D 83/00 20060101ALN20231130BHJP
【FI】
A45D40/14
A45D40/06 Z
B65D83/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086435
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】吉村 和寿
【テーマコード(参考)】
3E014
【Fターム(参考)】
3E014AA01
(57)【要約】
【課題】使用されずに残ってしまう内容物の残量を減らすことができる繰出容器を提供する。
【解決手段】内周面にねじ部221が形成された外筒2と、外筒2内に回転可能に収容され、軸方向に沿い形成されたスリット部31を有する内筒3と、内筒3に軸方向に沿いスライド可能に収容され、上端部が内容物Cを支持する受け皿41になっていて、受け皿41に貫通孔411が形成され、周壁部に径方向外側に突出し内筒3のスリット部31を通じて外筒2のねじ部221に螺合可能な突起部43が形成されている中皿部4と、中皿部4内においてスライド可能に収容され、貫通孔411から突出可能であり受け皿41に支持された内容物C内に埋入される突出部51と、突出部51の下端部から径方向外側に向けて形成されたフランジ部52と、を有する可動体5と、を備える繰出容器1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面にねじ部が形成された外筒と、
前記外筒内に回転可能に収容され、軸方向に沿い形成されたスリット部を有する内筒と、
前記内筒に軸方向に沿いスライド可能に収容され、上端部が内容物を支持する受け皿になっていて、前記受け皿に貫通孔が形成され、周壁部に径方向外側に突出し前記内筒の前記スリット部を通じて前記外筒の前記ねじ部に螺合可能な突起部が形成されている中皿部と、
前記中皿部内において前記中皿部の軸方向に沿いスライド可能に収容され、前記中皿部の前記貫通孔から突出可能であり前記受け皿に支持された内容物内に埋入される突出部と、前記突出部の下端部から径方向外側に向けて形成されたフランジ部と、を有する可動体と、
を備える繰出容器。
【請求項2】
前記突出部は中空であり周壁部に連通孔が形成されている請求項1に記載の繰出容器。
【請求項3】
前記受け皿の前記貫通孔の周囲に複数の周辺貫通孔が形成され、
前記可動体の前記フランジ部の上面において前記突出部の周囲に前記周辺貫通孔から突出可能であり前記受け皿に支持された内容物内に埋入される複数の周辺突出部が形成されている請求項1に記載の繰出容器。
【請求項4】
前記周辺貫通孔および前記周辺突出部の平面視における形状が弧状である請求項3に記載の繰出容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繰出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
口紅やリップクリーム、或いはスティックタイプの糊のような棒状の内容物を収容する容器として、下部の操作体を回転させることによって中皿を上昇させ、中皿で保持した棒状の内容物を上部開口から繰り出すことができる繰出容器が既知である(例えば特許文献1、2参照)。
【0003】
この種の繰出容器において中皿は、棒状の内容物を確実に保持できるようにするため、通常、内容物の底面を支持する底壁部と、底壁部の周囲を取り囲んで内容物の下部外周面を保持する周壁部とを備えて有底筒状になるように形作られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭63-062016号公報
【特許文献2】特開2013-208154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところでこの種の繰出容器において、内容物の高さは使い続けていくうちに次第に低くなっていく。しかし、周壁部の上端部に至るまで低くなると、それ以上内容物を使うことは難しいため、周壁部の内側に比較的多量の内容物が残ることになる。
【0006】
このような点に鑑み、本発明は、使用されずに残ってしまう内容物の残量を減らすことができる繰出容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、内周面にねじ部が形成された外筒と、前記外筒内に回転可能に収容され、軸方向に沿い形成されたスリット部を有する内筒と、前記内筒に軸方向に沿いスライド可能に収容され、上端部が内容物を支持する受け皿になっていて、前記受け皿に貫通孔が形成され、周壁部に径方向外側に突出し前記内筒の前記スリット部を通じて前記外筒の前記ねじ部に螺合可能な突起部が形成されている中皿部と、前記中皿部内において前記中皿部の軸方向に沿いスライド可能に収容され、前記中皿部の前記貫通孔から突出可能であり前記受け皿に支持された内容物内に埋入される突出部と、前記突出部の下端部から径方向外側に向けて形成されたフランジ部と、を有する可動体と、を備える繰出容器であることを特徴とする。
【0008】
上記繰出容器について、前記突出部は中空であり周壁部に連通孔が形成されていることが好ましい。
【0009】
また、上記繰出容器について、前記受け皿の前記貫通孔の周囲に複数の周辺貫通孔が形成され、前記可動体の前記フランジ部の上面において前記突出部の周囲に前記周辺貫通孔から突出可能であり前記受け皿に支持された内容物内に埋入される複数の周辺突出部が形成されていることが好ましい。
【0010】
また、上記繰出容器について、前記周辺貫通孔および前記周辺突出部の平面視における形状が弧状であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の繰出容器によれば、使用されずに残ってしまう内容物の残量を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る繰出容器について蓋体を外した状態を示す正面部分断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る繰出容器に用いられる中皿部と可動体を組み合わせた状態を示す平面図である。
【
図3】
図1の繰出容器について中皿部を最上部まで繰り出した状態を示す正面部分断面図である。
【
図4】
図3の繰出容器の先端部分について内容物が使用により減少して可動体が露出した状態を示す正面部分断面図である。
【
図5】
図4の状態の繰出容器から内容物が使用により更に減少して可動体が押し込まれた状態を示す正面部分断面図である。
【
図6】
図5の状態の繰出容器から内容物が使用により更に減少して中皿部の外部に露出している内容物が無くなるとともに可動体が中皿部に完全に押し込まれた状態を示す正面部分断面図である。
【
図7】
図5の状態の繰出容器から可動体のみが中皿部内に押し込まれた状態を示す正面部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明に従う繰出容器の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る繰出容器1について蓋体を外した状態を示す正面部分断面図である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係る繰出容器1は、外筒2と、外筒2内に回転可能に収容された内筒3と、内筒3内に軸方向に沿いスライド可能に収容された中皿部4と、中皿部4内において中皿部4の軸方向に沿いスライド可能に収容された可動体5と、を備えている。
【0015】
外筒2は、有底筒状の外筒本体21内に、外筒本体21の内部に収容され内周面にねじ部221が形成された筒状のねじ形成筒22が嵌め込まれて形成されている。外筒本体21の内周面には軸方向に沿い突条(不図示)が形成されているとともに、ねじ形成筒22の外周面には軸方向に沿い長溝(不図示)が形成されていて、この突条と長溝が係合することにより外筒本体21内においてねじ形成筒22が回転方向に位置決めされた状態になっている。外筒本体21とねじ形成筒22を別体とすることにより、両者を異なる材料を用いて形成することが可能になる。例えば外筒本体21については装飾性を重視して金属製とした場合には、金属製の部材にねじ部を形成することは容易ではないため、樹脂製のねじ形成筒22を組み合わせることにより、外筒本体21にねじ部を形成しなくてもよくなる。また、外筒2の底部には充填孔部23が形成されている。繰出容器1に収容される内容物Cは、固化前の状態でこの充填孔部23から繰出容器1内において内筒3、中皿部4および可動体5に及ぶように充填され、繰出容器1内で固化される。これにより、
図1に示すような棒状の内容物Cを繰出容器1内に設けることができる。なお、本発明においては充填孔部23が形成されているが、本発明においては充填孔部23は必須の構成ではなく、これを廃止し、繰出容器1の上方(
図1の紙面上方)から内部空間に内容物Cの原料を充填して内容物Cを設けてもよい。また、半固化状態の原料を準備し、これを繰出容器1の上方から内部空間に押し込んで固化することによっても内容物Cを設けてもよい。
【0016】
内筒3は、有頂筒状で、外筒2に軸方向に沿いスライド可能に収容されている筒状部材である。内筒3には軸方向に沿い形成されたスリット部31が形成されている。また、内筒3の外周面には、径方向外側に向けて突出する抜け止め突起32が形成されている。内筒3が外筒2内に挿入された状態において、外筒2の上端部と内筒3との間に間隙が形成された状態になるが、この間隙に円環状の抜け止め部材7が嵌入される。この抜け止め部材7が嵌入された状態において、内筒3の抜け止め突起32が抜け止め部材7に係止した状態になり、内筒3は外筒2から脱離しない状態になる。
【0017】
中皿部4は、有頂筒状で、内筒3に軸方向に沿いスライド可能に収容されている。中皿部4の上端部(
図1の紙面上方)は内容物を支持する受け皿41になっている。受け皿41の中央部分には平面視で円形状の貫通孔411が形成されているとともに、貫通孔411の周囲に複数の、平面視における形状が弧状である周辺貫通孔412が形成されている。また、中皿部4の周壁部42の外周面には、径方向外側に突出し内筒3のスリット部31を通じて外筒2のねじ部221に螺合可能な柱状の突起部43が形成されている。さらに、周壁部42の内周面には、径方向内側に突出するストッパー44が形成されている。このストッパー44があることにより、中皿部4内に収容された可動体5の下方への動作を制限することができる。
【0018】
可動体5は、中皿部4内において中皿部4の軸方向に沿いスライド可能に収容されている。可動体5は、中皿部4の貫通孔411から突出可能であり受け皿41に支持された内容物C内に埋入される突出部51と、突出部51の下端部から径方向外側に向けて形成されたフランジ部52と、を有している。
【0019】
突出部51は有頂筒状で中空の構成であり、周壁部には連通孔511が形成されている。連通孔511が形成されていることにより、中皿部4の内部と外部が連通孔511を通じて連通することができ、
図1に示すように、中皿部4の内部と外部にわたるように内容物Cを設けることが可能になり、内容物Cの脱落を防止し、保持しやすくすることができる。
【0020】
フランジ部52の上面には、突出部51の周囲に複数の周辺突出部521が形成されている。周辺突出部521は、平面視における形状が弧状であり、周辺貫通孔412から突出可能になっていて、受け皿41に支持された内容物C内に埋入される。周辺突出部521が平面視で弧状になっていることにより、内容物C内に埋入された際に内容物Cとの接触面積を直線状の場合と比較して大きくすることができ、内容物Cを保持しやすくすることができる。
【0021】
図2は、本発明の実施形態に係る繰出容器1に用いられる中皿部4と可動体5を組み合わせた状態を示す平面図である。
図2に示すように、可動体5は、中皿部4内において、突出部51を貫通孔411から外部に突出させるとともに、周辺突出部521を周辺貫通孔412から外部に突出させた状態で収容されている。この突出部51と、その周辺を環状に取り囲む複数の(本実施形態においては5つの)周辺突出部521とが
図1に示すように内容物C内に埋入されることにより、内容物Cの脱落を防止し、保持しやすくすることができる。また、周辺突出部521が内容物C内に埋入されることにより、使用時に内容物Cが傾いてしまうことを防止することができる。
【0022】
なお、上述した繰出容器1には
図1の2点鎖線Mで示すように有頂筒状のキャップを取り付けることができるが、
図1においてはこのキャップは省略されている。
【0023】
次に、上述した構成を備える繰出容器1の動作について説明する。
図3は、
図1の繰出容器1について中皿部4を最上部まで繰り出した状態を示す正面部分断面図である。
【0024】
使用者が繰出容器1の内筒3を保持しつつ外筒2を回転させることにより、
図3に示すように中皿部4を内筒3から繰り出したり、内筒3に収納したりすることができる。具体的には、外筒2を回転させると、ねじ部221に螺合する中皿部4の突起部43が上下方向に螺進(螺退)し、これに伴い中皿部4全体が従動して上下動する。こうした動作により、中皿部4、可動体5およびこれらにわたり設けられている内容物Cが
図1に示す状態から
図3に示す状態(または逆に
図3に示す状態から
図1に示す状態)まで突出(または退避)することができる。
【0025】
図4は、
図3の繰出容器1の先端部分について内容物Cが使用により減少して可動体5が露出した状態を示す正面部分断面図である。使用に伴い内容物Cが消耗していくと、
図4に示すように内容物Cの中に埋没していた可動体5の先端部分が外部に露出した状態になる。このとき、周辺突出部521の平面視における形状が弧状であることにより、
図4に示すように内容物Cの外部に周辺突出部521が露出した際に、周辺突出部521が内容物Cが塗布される場所(例えば内容物Cがリップクリームである場合には使用者の唇、内容物Cが糊である場合には紙面等)に引っ掛かりこれを傷つけてしまうことを防止することができる。
【0026】
図5は、
図4の状態の繰出容器1から内容物Cが使用により更に減少して可動体5が押し込まれた状態を示す正面部分断面図である。
図4の状態から更に使用を継続すると、
図5に示すように内容物Cの消耗に伴い可動体5が中皿部4内へと押し込まれていく。これにより受け皿41上に残存する内容物Cを常に塗布可能な状態に保つことができ、受け皿41上の内容物Cを塗布できない状態で残存させてしまうことがなくなるため、使用されずに残ってしまう内容物Cの残量を減らすことができる。
【0027】
図6は、
図5の状態の繰出容器1から内容物Cが使用により更に減少して中皿部4の外部に露出している内容物Cが無くなるとともに可動体5が中皿部4に完全に押し込まれた状態を示す正面部分断面図である。
図5に示す状態から更に使用を継続すると、やがて受け皿41上の内容物Cが無くなる。このとき、可動体5の突出部51およびフランジ部52の下側(
図6の紙面下方)に内容物Cが僅かに残存するが、可動体5の突出部51により中皿部4の貫通孔411が塞がれた状態になるため繰出容器1の外部から視認できなくなる。これにより、使用後の繰出容器1の見栄えを良くすることができる。なお、中皿部4に押し込まれた可動体5は、フランジ部52の周縁部がストッパー44に当接することにより、
図6に示す状態よりも更に下方に押し込まれてしまうことが防止されている。
【0028】
図7は、
図5の状態の繰出容器から可動体のみが中皿部内に押し込まれた状態を示す正面部分断面図である。
図5に示す状態から、
図7に示すように可動体5のみが押し込まれてしまった場合、突出部51や周辺突出部521による受け皿41上に残存する内容物Cの支持が無い状態になるが、受け皿41上の内容物Cの残存量が僅かであるため、受け皿41から脱落することなく使用を継続することができる。
【0029】
上述した実施形態に係る繰出容器1によると、使用されずに残ってしまう内容物Cの残量は
図6に示すように可動体5の突出部51およびフランジ部52の下側に残る僅かな量である。そのため、繰出容器1を使い切った場合に残存して使用できなくなる内容物Cの量を減らすことができる。
【0030】
なお、本発明は上述した実施形態に限られず、種々の変形を採用することができる。
【0031】
例えば、上述した実施形態に係る繰出容器1においては外筒本体21とねじ形成筒22が別体として形成されていたが、本発明においてはこれに限らず。外筒2を一体的に形成してもよい。これにより部品点数を削減し、製造コストを低減することができる。
【0032】
また、上述した実施形態に係る繰出容器1においては5つの、平面視における形状が弧状の周辺突出部521が形成されていたが、本発明においてはこれに限らず、周辺突出部521の数を2~4個、または6個以上としてもよい。また、周辺突出部521の形状も平面視で弧状になるものに限らず、平面視で長方形状になるものであってもよい。このとき、中皿部4の周辺貫通孔412の個数や形状も、周辺突出部521に応じて変更される。
【符号の説明】
【0033】
1:繰出容器
2:外筒
3:内筒
4:中皿部
5:可動部
7:抜け止め部材
21:外筒本体
22:ねじ形成筒
31:スリット部
32:抜け止め突起
41:受け皿
43:突起部
44:ストッパー
51:突出部
52:フランジ部
221:ねじ部
411:貫通孔
412:周辺貫通孔
511:連通孔
521:周辺突出部
C:内容物