(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173906
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】プログラム、被写体画像抽出装置、および被写体画像抽出システム
(51)【国際特許分類】
H04N 23/60 20230101AFI20231130BHJP
G06T 7/70 20170101ALI20231130BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20231130BHJP
【FI】
H04N5/232 290
G06T7/70 A
G06T7/00 660Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086458
(22)【出願日】2022-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122529
【弁理士】
【氏名又は名称】藤枡 裕実
(74)【代理人】
【識別番号】100135954
【弁理士】
【氏名又は名称】深町 圭子
(74)【代理人】
【識別番号】100119057
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英生
(74)【代理人】
【識別番号】100131369
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100171859
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 英之
(72)【発明者】
【氏名】西本 卓也
(72)【発明者】
【氏名】清野 創
(72)【発明者】
【氏名】宮内 翼
(72)【発明者】
【氏名】倉持 惇彩
【テーマコード(参考)】
5C122
5L096
【Fターム(参考)】
5C122DA20
5C122EA61
5C122FH09
5C122FH10
5C122FH11
5C122HA46
5C122HA88
5C122HB01
5L096BA08
5L096CA04
5L096CA24
5L096DA01
5L096DA02
5L096EA35
5L096EA37
5L096FA02
5L096FA18
5L096FA60
5L096FA66
5L096FA67
5L096FA69
5L096FA77
5L096GA51
5L096HA02
5L096JA11
(57)【要約】
【課題】 高速に移動する被写体を撮影して、被写体が好適に写った画像を得ることが可能なプログラム、被写体画像抽出装置、および被写体画像抽出システムを提供する。
【解決手段】 撮影手段により連続して取得された各撮影画像を処理して、人物が位置する領域である人物領域を推定する人物領域推定手段21、前記人物領域を含む座席領域を推定する座席領域推定手段22、撮影画像における所定の領域である設定領域と、前記座席領域との重複の有無を確認する重複確認手段23、座席領域と設定領域が重複している場合、前記座席領域と前記設定領域の所定点同士の距離である領域距離を算出する領域距離算出手段24、座席領域と設定領域が重複する撮影画像が連続する画像群である重複画像群の中から、領域距離が最小となる撮影画像を被写体画像として抽出する被写体画像抽出手段25、としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影手段により連続して取得された各撮影画像を処理して、人物が位置する領域である人物領域を推定する人物領域推定手段、
前記人物領域を含み、座席が位置する座席領域を推定する座席領域推定手段、
前記撮影画像における所定の領域である設定領域と、前記座席領域との重複の有無を確認する重複確認手段、
前記座席領域と前記設定領域が重複している場合、前記座席領域と前記設定領域の所定点同士の距離である領域距離を算出する領域距離算出手段、
前記座席領域と前記設定領域が重複する撮影画像が連続する画像群である重複画像群の中から、前記領域距離が最小となる撮影画像を被写体画像として抽出する被写体画像抽出手段、
としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【請求項2】
前記座席が複数の人物を収容する座席であって、
前記座席領域推定手段は、近接する複数の人物領域を包含する領域を座席領域として推定する、請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記座席領域推定手段は、
前記近接する複数の人物領域の重心同士を結ぶ線分を求め、その線分と前記撮影画像の水平方向がなす角度が所定角度以下である場合に、前記近接する複数の人物領域を座席領域として推定、請求項2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記撮影画像は、進行方向に沿って複数列の座席が配置された乗り物が撮影されており、
前記被写体画像抽出手段は、各重複画像群から抽出された前記被写体画像のうち、ある被写体画像とその直前の被写体画像との間隔に基づいて、各前記被写体画像に対応する前記座席の列順を特定する、請求項1に記載のプログラム。
【請求項5】
前記被写体画像抽出手段は、前記重複画像群における各前記撮影画像の前記領域距離を、直前の撮影画像の前記領域距離と比較し、後の撮影画像の前記領域距離が直前の撮影画像における前記領域距離よりも大きい場合に、当該直前の撮影画像を被写体画像として抽出し、
前記人物領域推定手段は、撮影順において所定間隔だけ後方に移動した箇所の撮影画像を次の処理対象とする、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項6】
撮影手段により連続して取得された各撮影画像を処理して、人物が位置する領域である人物領域を推定する人物領域推定手段と、
前記人物領域を含み、座席が位置する座席領域を推定する座席領域推定手段と、
前記撮影画像における所定の領域である設定領域と、前記座席領域との重複の有無を確認する重複確認手段と、
前記座席領域と前記設定領域が重複している場合、前記座席領域と前記設定領域の所定点同士の距離である領域距離を算出する領域距離算出手段と、
前記座席領域と前記設定領域が重複する撮影画像が連続する画像群である重複画像群の中から、前記領域距離が最小となる撮影画像を被写体画像として抽出する被写体画像抽出手段と、
を有する被写体画像抽出装置。
【請求項7】
画像を連続して撮影する撮影手段と、前記撮影手段により撮影された撮影画像を取得する被写体画像抽出装置と、前記被写体画像抽出装置により抽出された被写体画像を取得するユーザ端末と、を有する被写体画像抽出システムであって、
前記被写体画像抽出装置は、
前記撮影手段により取得された各撮影画像を処理して、人物が位置する領域である人物領域を推定する人物領域推定手段と、
前記人物領域を含み、座席が位置する座席領域を推定する座席領域推定手段と、
前記撮影画像における所定の領域である設定領域と、前記座席領域との重複の有無を確認する重複確認手段と、
前記座席領域と前記設定領域が重複している場合、前記座席領域と前記設定領域の所定点同士の距離である領域距離を算出する領域距離算出手段と、
前記座席領域と前記設定領域が重複する撮影画像が連続する画像群である重複画像群の中から、前記領域距離が最小となる撮影画像を被写体画像として抽出する被写体画像抽出手段と、
を有する被写体画像抽出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プログラム、被写体画像抽出装置、および被写体画像抽出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、遊園地、アミューズメントパーク、サーキット場などにおいて高速に移動する被写体をカメラで撮影することが行われている。高速に移動する被写体から好適な画像を抽出する技術としては様々なものが提案されている。その中で、カメラ映像を画像解析し、動きや人物の特徴に基づいた検出を用いた手法も開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術では、撮影のトリガとして別途センサが必要になるなど設備が複雑になるという問題がある。
【0005】
そこで、本開示は、高速に移動する被写体を撮影して、被写体が好適に写った画像を得ることが可能なプログラム、被写体画像抽出装置、および被写体画像抽出システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本開示では、
撮影手段により連続して取得された各撮影画像を処理して、人物が位置する領域である人物領域を推定する人物領域推定手段、
前記人物領域を含む座席領域を推定する座席領域推定手段、
前記撮影画像における所定の領域である設定領域と、前記座席領域との重複の有無を確認する重複確認手段、
前記座席領域と前記設定領域が重複している場合、前記座席領域と前記設定領域の所定点同士の距離である領域距離を算出する領域距離算出手段、
前記座席領域と前記設定領域が重複する撮影画像が連続する画像群である重複画像群の中から、前記領域距離が最小となる撮影画像を被写体画像として抽出する被写体画像抽出手段、
としてコンピュータを機能させるためのプログラムを提供する。
【0007】
また、本開示のプログラムは、
前記座席が複数人を収容する座席であって、
前記座席領域推定手段は、近接する複数の人物領域を包含する領域を座席領域として推定してもよい。
【0008】
また、本開示のプログラムにおける、
前記座席領域推定手段は、
前記近接する複数の人物領域の重心同士を結ぶ線分を求め、その線分と前記撮影画像の水平方向がなす角度が所定角度以下である場合に、前記近接する複数の人物領域を座席領域として推定してもよい。
【0009】
また、本開示のプログラムにおいて、
前記撮影画像は、進行方向に沿って複数列の座席が配置された乗り物が撮影されており、
前記被写体画像抽出手段は、各重複画像群から抽出された前記被写体画像のうち、ある被写体画像とその直前の被写体画像との間隔に基づいて、各前記被写体画像に対応する前記座席の列順を特定してもよい。
【0010】
また、本開示のプログラムにおける、
前記被写体画像抽出手段は、前記重複画像群における各前記撮影画像の前記領域距離を、直前の撮影画像の前記領域距離と比較し、後の撮影画像の前記領域距離が直前の撮影画像における前記領域距離よりも大きい場合に、当該直前の撮影画像を被写体画像として抽出し、
前記人物領域推定手段は、撮影順において所定間隔だけ後方に移動した箇所の撮影画像を次の処理対象としてもよい。
【0011】
また、本開示では、
撮影手段により連続して取得された各撮影画像を処理して、人物が位置する領域である人物領域を推定する人物領域推定手段と、
前記人物領域を含む座席領域を推定する座席領域推定手段と、
前記撮影画像における所定の領域である設定領域と、前記座席領域との重複の有無を確認する重複確認手段と、
前記座席領域と前記設定領域が重複している場合、前記座席領域と前記設定領域の所定点同士の距離である領域距離を算出する領域距離算出手段と、
前記座席領域と前記設定領域が重複する撮影画像が連続する画像群である重複画像群の中から、前記領域距離が最小となる撮影画像を被写体画像として抽出する被写体画像抽出手段と、
を有する被写体画像抽出装置を提供する。
【0012】
また、本開示では、
画像を連続して撮影する撮影手段と、前記撮影手段により撮影された撮影画像を取得する被写体画像抽出装置と、前記被写体画像抽出装置により抽出された被写体画像を取得するユーザ端末と、を有する被写体画像抽出システムであって、
前記被写体画像抽出装置は、
前記撮影手段により取得された各撮影画像を処理して、人物が位置する領域である人物領域を推定する人物領域推定手段と、
前記人物領域を含む座席領域を推定する座席領域推定手段と、
前記撮影画像における所定の領域である設定領域と、前記座席領域との重複の有無を確認する重複確認手段と、
前記座席領域と前記設定領域が重複している場合、前記座席領域と前記設定領域の所定点同士の距離である領域距離を算出する領域距離算出手段と、
前記座席領域と前記設定領域が重複する撮影画像が連続する画像群である重複画像群の中から、前記領域距離が最小となる撮影画像を被写体画像として抽出する被写体画像抽出手段と、
を有する被写体画像抽出システムを提供する。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、高速に移動する被写体を撮影して、好適な静止画を得ることが可能なプログラム、被写体画像抽出装置、および被写体画像抽出システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本開示の一実施形態に係る被写体画像抽出システムの構成を示す図である。
【
図2】処理装置11の詳細を示す機能ブロック図である。
【
図3】本開示の一実施形態に係る被写体画像抽出システムの処理概要を示すフローチャートである。
【
図4】撮影装置12、撮影対象、撮影画角の関係を示す図である。
【
図7】1つの撮影画像において、下方に2つ、上方に2つ、計4つの人物領域が推定された場合を示す図である。
【
図8】人物領域の重心同士を結ぶ線分と画像の水平方向がなす角度が所定角度以下である場合において推定された座席領域を示す図である。
【
図9】撮影画像における設定領域と座席領域を示す図である。
【
図10】撮影画像における設定領域と座席領域の中心同士を結ぶ線分を示す図である。
【
図11】各撮影画像と、座席領域と設定領域の中心同士の距離の関係を示す図である。
【
図12】途中に空席がある場合における、各撮影画像と、座席領域と設定領域の所定点同士の距離の関係を示す図である。
【
図14】被写体画像のインペインティングを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の好適な実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
<システム構成>
図1は、本開示の一実施形態に係る被写体画像抽出システムの構成を示す図である。
図1において、10は被写体画像抽出システム、11は処理装置、12は撮影装置、13は表示装置、14はプリンタ、15は画像データ出力部、30はユーザ端末である。このうち、処理装置11、表示装置13、プリンタ14、画像データ出力部15は、被写体画像抽出装置40を構成する。
【0016】
処理装置11は、被写体画像抽出システム10における様々な演算処理を行う装置であり、CPU、主メモリ、不揮発性の記憶装置等を有するコンピュータに、被写体画像抽出システム10としての機能を実現するためのプログラムを組み込むことにより実現される。処理装置11を実現するコンピュータとしては、GPU等のプロセッサを備えていてもよい。処理装置11は、撮影装置に接続されている。撮影装置12は、撮影を行って画像データとして撮影画像を取得する撮影手段であり、CCD等の撮影素子を備えた動画撮影カメラにより実現される。動画は静止画である画像を連続して撮影することにより得られる。本明細書において、単に画像という場合は静止画を意味する。
【0017】
表示装置13は、処理装置11により処理された結果に基づいて表示を行う表示手段であり、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等の汎用の表示機器により実現される。プリンタ14、画像データ出力部15は、画像を出力する画像出力手段である。プリンタ14は、画像を紙媒体等にプリント出力する。画像データ出力部15は、画像をデータとして出力するデータ出力装置である。画像データ出力部15は、被写体画像として抽出された静止画である撮影画像として出力してもよいし、被写体画像およびその前後の撮影画像を含む、連続する複数の撮影画像を動画として出力してもよい。
【0018】
被写体画像抽出システム10の構成要素は、一部あるいは全体が1つの筐体内に配置される構成であってもよい。本実施形態では、被写体画像抽出装置40を構成する処理装置11、表示装置13、プリンタ14、画像データ出力部15を1つの筐体内に収納し、画像提供端末として設置している。本実施形態では、出力される被写体画像に写っている顧客は、自身が被写体として写っている被写体画像を画像提供端末(被写体画像抽出装置40)から出力することができる。例えば、画像データ出力部15から被写体画像を無線通信によりスマートフォン等のユーザ端末30に出力することができる。
【0019】
図2は、処理装置11の詳細を示す機能ブロック図である。本実施形態では、処理装置11は、汎用のコンピュータに専用のプログラムを組み込むことにより実現される。
図2に示すように、処理装置11は、人物領域推定手段21、座席領域推定手段22、重複確認手段23、領域距離算出手段24、被写体画像抽出手段25、画像加工手段26を有する。
【0020】
人物領域推定手段21は、撮影装置12により取得された撮影画像に対して画像解析を行い、人物が位置する領域を推定する手段であり、不揮発性の記憶装置に記憶されたプログラムや学習済みモデルをCPU、GPU等が読み込んで実行することにより実現される。
座席領域推定手段22は、人物領域を含む座席領域を推定する手段であり、不揮発性の記憶装置に記憶されたプログラムをCPUが読み込んで実行することにより実現される。
【0021】
重複確認手段23は、撮影画像における所定の領域である設定領域と、座席領域との重複の有無を確認する手段であり、不揮発性の記憶装置に記憶されたプログラムをCPUが読み込んで実行することにより実現される。領域距離算出手段24は、座席領域と設定領域が重複している場合に、座席領域と設定領域の所定点同士の距離を算出する手段であり、不揮発性の記憶装置に記憶されたプログラムをCPUが読み込んで実行することにより実現される。被写体画像抽出手段25は、座席領域と設定領域が重複する撮影画像が連続する画像群である重複画像群の中から、座席領域と設定領域の所定点同士の距離である領域距離が最小となる撮影画像を好適な被写体画像として抽出する手段であり、不揮発性の記憶装置に記憶されたプログラムをCPUが読み込んで実行することにより実現される。
【0022】
処理装置11は、キーボードやマウス等の指示入力部を備え、ユーザからの指示を受け付ける。ユーザからの指示に基づき、様々な設定値を設置することができる。
【0023】
<処理動作>
次に、本実施形態に係る被写体画像抽出システムの処理動作について、本実施形態に係る被写体画像抽出方法とともに説明する。
図3は、本実施形態に係る被写体画像抽出システムの処理概要を示すフローチャートである。
【0024】
まず、被写体画像抽出システムが起動し、処理を開始する。そして、撮影装置12が常時撮影し、撮影により得られた画像データを撮影画像として取り込む(ステップS1)。
図4は、撮影装置12、撮影対象、撮影画角の関係を示す図である。
図4の例では、ライド・アトラクションの一例であるジェットコースターのような乗り物、および乗り物に乗った人物が撮影対象である。本実施形態で撮影対象とする乗り物は、座席が複数の人物を収容する構造のものを想定している。ただし、必ずしも座席に複数の人物が収容されなくてもよい。このような状態において、乗り物に乗った人物を撮影可能な撮影画角を設定し、その撮影画角で撮影可能な位置に撮影装置12が設置されている。撮影画角は所定の位置に固定されている。
【0025】
本実施形態に係る被写体画像抽出システムは、特にジェットコースター(ローラーコースター)のように、進行方向に沿って複数列の座席が配置されているような場合に、人物を被写体として撮影する場合に適している。撮影装置12は、
図4に示したような撮影画角において所定の間隔で撮影し、静止画像である撮影画像を取得する。撮影画像は所定の時間間隔で得られる。このため、得られた撮影画像を順に表示すると動画として見える。このため、撮影装置12は、動画像を取得しているとも言える。取り込まれた撮影画像は処理装置11に渡されて所定の処理が行われる。撮影装置12は、所定のレート(fps:フレーム(画像)/秒)で撮影を行い、撮影画像を取り込んで処理装置11に送る。所定のレートとしては任意に設定することができる。本実施形態では、60fpsとしている。撮影装置12による撮影画像の取得は、被写体画像抽出システムの稼働中は常に行われる。
【0026】
被写体画像抽出システムで処理が開始されると、処理装置11は、取り込んだ撮影画像に対して、解析等の処理を行う。処理装置11における撮影画像の解析レートは、撮影装置12による撮影レートと同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、上記のように撮影レートが60fpsである場合、処理装置11における解析レートは、撮影レートと同じ60fpsとしてもよいし、レートを落として例えば40fpsとしてもよい。
【0027】
処理装置11では、人物領域推定手段21が、人物領域の推定を行う(ステップS2)。具体的には、人物領域推定手段21は、撮影画像を解析して所定の領域を人物領域として特定する。
図5は、人物領域と撮影画像の関係を示す図である。
図5に示すように、人物が2人検出された場合、2つの人物領域が撮影画像上で推定される。
図5の例では、人物領域として人物の顔を含むようにして、矩形状の人物領域が推定されている。人物領域推定手段21が行う人物領域特定の手法は特に限定されないが、機械学習により得られた学習済みモデルや、ルールベースを用いることができる。人物領域の形状は特に限定されないが、本実施形態では、
図5に示すように、人物領域を矩形状としている。
図5においては、人物領域を実線の矩形で示している。
【0028】
人物領域推定手段21により人物領域が推定されたら、座席領域推定手段22が座席領域の推定を行う(ステップS3)。座席領域推定手段22は、撮影画角と乗り物の種類に応じて設定されたパラメータに基づき座席領域を推定する。具体的には、人物領域推定手段21により推定された人物領域のうち、近接する複数の人物領域を包含する外接矩形を取得する。そして、取得した外接矩形から上下左右それぞれにマージンをとった領域を座席領域として推定する。近傍とする人物領域の距離(ピクセル数)、及び上下左右のマージン幅(ピクセル数)は、撮影画角と乗り物の種類に応じて設定されるパラメータである。このようなパラメータは、指示入力部を介して、処理装置11に入力することにより設定しておくことができる。
【0029】
図6は座席領域と撮影画像の関係を示す図である。2つの人物領域が近接する場合、
図6に示すように、座席領域は2つの人物領域を包含する領域として設定される。座席領域の形状は特に限定されないが、本実施形態では、
図6に示すように、座席領域を矩形状としている。
図6においては、人物領域を実線の矩形、座席領域を破線の矩形で示している。
【0030】
図7は、1つの撮影画像において、下方に2つ、上方に2つ、計4つの人物領域が推定された場合を示す図である。
図7の例では、下方の2つの人物領域は、乗り物の前方の席を示し、上方の2つの人物領域は、乗り物の後方の席を示している。このため、下方の2つの人物領域を含む1つの座席領域を推定し、上方の2つの人物領域を含む1つの座席領域を推定することが好ましい。
【0031】
図7のような例において、単純に人物領域の距離で近接を判定すると、下方の人物領域と上方の人物領域を含む座席領域が設定されてしまう。これにより、本来の座席が座席領域として設定されないことになる。そこで、本実施形態では、人物領域の重心同士を結ぶ線分を求め、その線分と画像の水平方向(横方向:
図7における左右方向)がなす角度が所定角度以下である場合に、その2つの人物領域を含んだ座席領域を推定するようにしている。この所定角度としては、任意に設定することができるが、20度以下であることが好ましく、10度以下であることがより好ましい。通常、撮影画角は、人物が並んだ状態で撮影されるように設定されているため、所定角度が0度に近付く程、好適な状態で人物が撮影されるためである。
図8は、人物領域の重心同士を結ぶ線分と画像の水平方向がなす角度が所定角度以下である場合において推定された座席領域を示す図である。
図8においても、人物領域を実線の矩形、座席領域を破線の矩形で示している。
【0032】
座席領域推定手段22により座席領域が推定されたら、重複確認手段23が座席領域と設定領域の重複の有無を確認する(ステップS4)。具体的には、座席領域と設定領域の重複の有無は、座席領域と設定領域が同一の画素を少なくとも一画素以上含むか否かにより判定する。設定領域は、撮影画像の所定の領域に設定されている。設定領域は任意の位置に設定しておくことが可能である。しかし、設定領域は、被写体である人物が配置されて好適な位置に設定しておくことが好ましい。
【0033】
例えば、設定領域を撮影画像の中央に設定しておくことにより、中央から離れた位置に人物領域が位置する撮影画像と、中央に近い位置に人物領域が位置する撮影画像を区別することが可能となる。設定領域は、指示入力部を用いてユーザにより直接指定された領域であってもよい。また、設定領域は、例えば、撮影画像の中心点から所定の範囲に渡って設定された領域であってもよい。
図9は、撮影画像における設定領域と人物領域を示す図である。
図9においては、座席領域を破線の矩形、設定領域を一点鎖線の矩形で示している。
図9の例では、設定領域と人物領域は重複している。
【0034】
重複確認手段23により座席領域と設定領域が重複している場合、領域距離算出手段24が座席領域と設定領域の所定点同士の距離である領域距離を算出する(ステップS5)。領域所定点としては、任意に設定することができる。ただし、所定点としては、座席領域と設定領域の近接度を的確に反映することができる点が好ましい。そのため、領域の中心や重心を所定点としてもよい。本実施形態では、所定点を領域の中心としている。
図10は、撮影画像における設定領域と人物領域の中心同士を結ぶ線分を示す図である。
図10に示した中心同士を結ぶ線分の長さが設定領域と座席領域の領域距離として算出される。ステップS2~S5の処理を各撮影画像に対して行う。この結果、座席領域と設定領域が重複する各撮影画像に対して、座席領域と設定領域の所定点同士の距離が領域距離として求められる。したがって、座席領域と設定領域が重複していない撮影画像に対しては、領域距離を算出しなくてもよい。
【0035】
各撮影画像に対して、ステップS1~S5の処理がなされたら、被写体画像抽出手段25が、解析された撮影画像の中から、好適な撮影画像を被写体画像として抽出する(ステップS6)。具体的には、連続して取得された複数の撮影画像の中から、人物が好適に写っている撮影画像を特定して抽出する。通常、その撮影画角において、被写体である人物は特定の位置に写っていることが好ましい。例えば、ジェットコースターを所定の位置で撮影する場合の撮影画角において、人物が位置する好ましい領域が特定される。本実施形態では、撮影装置12による撮影画角に基づいて、撮影画像の全体領域における所定の領域を設定領域として設定しておく。このため、人物が写っている位置が設定領域に近いほど好適な画像と言えることになる。
【0036】
そのため、本実施形態では、座席領域と設定領域の所定点同士の距離である領域距離に基づき、好適な撮影画像を特定する。具体的には、まず、座席領域と設定領域が重複している撮影画像が連続する画像群を重複画像群として特定する。したがって、座席領域と設定領域が重複していない撮影画像があった場合は、その箇所で重複画像群は途切れる。
図11は、各撮影画像と、座席領域と設定領域の所定点同士の距離である領域距離の関係を示す図である。このうち、
図11(a)は各撮影画像における、座席領域と設定領域の所定点同士の距離である領域距離を示すグラフである。
図11(a)において、横軸は、連続する撮影画像(フレーム)の撮影順であり、縦軸は、座席領域と設定領域の所定点同士の距離である領域距離を示している。また、横軸方向において、網掛けされている部分は、座席領域と設定領域が重複している撮影画像を示し、網掛けされていない部分は、座席領域と設定領域が重複していない撮影画像を示している。すなわち、網掛けされている部分は、重複画像群を示し、網掛けされていない部分は、非重複画像群を示している。
【0037】
図11(a)の例では、重複画像群と非重複画像群は交互に現れている。これは、座席領域が設定領域に近い位置に写っている重複画像群の間に、座席領域が設定領域から遠い位置にある非重複画像群が存在することを示している。アトラクションの構成によっては、非重複画像群におけるいくつかの撮影画像には、座席領域が存在しない場合もある。重複画像群における撮影画像は、座席領域が設定領域に近い位置に写っており、好適な撮影画像であることが多い。
【0038】
図11(a)に示すように、重複画像群においては、距離のグラフは極小点を有している。したがって、各重複画像群において、座席領域と設定領域の所定点同士の距離が最小となる撮影画像を特定することができる。座席領域と設定領域の所定点同士の距離が最小となる撮影画像においては、座席領域が最も好ましい位置に写っていると考えられる。そのため、本実施形態では、被写体画像抽出手段25は、1つの重複画像群において、座席領域と設定領域の所定点同士の距離が最小となる撮影画像を、被写体画像として抽出する。抽出された被写体画像は、被写体が好適に写っている撮影画像である。
【0039】
各重複画像群において、座席領域と設定領域の所定点同士の距離が最小となる撮影画像を抽出することにより、各座席についての被写体画像を抽出することができる。
図11(b)は、
図11(a)に示した3つの重複画像群から抽出した、座席領域と設定領域の所定点同士の距離が最小となる撮影画像を示す図である。
図11(b)に示すように、3つの重複画像群から抽出された被写体画像には、それぞれ1列目、2列目、3列目の座席の人物が被写体として好適な状態で写っている。本実施形態によれば、以上のようにして、進行方向に対して複数列の座席が存在する乗り物を撮影した際に、各座席の被写体画像を取得することが可能となる。
【0040】
図11の例では、1列目、2列目、3列目に全て人物が乗っていた場合を説明した。次に、途中の列に人物が乗っていない場合について説明する。
図12は、途中に空席がある場合における、各撮影画像と、座席領域と設定領域の所定点同士の距離の関係を示す図である。
図11と比較すると、
図12の場合、2枚目の被写体画像と3枚目の被写体画像の抽出間隔が、1枚目の被写体画像と2枚目の被写体画像の抽出間隔よりもかなり大きくなっている。抽出間隔は、2つの被写体画像の間の撮影画像数すなわちフレーム数で換算することができる。通常、高速で走るアトラクションは、同一間隔で各座席がある撮影ポイントに到達することになる。したがって、人物が検出された被写体画像の抽出間隔が大きい場合、その間に空席が存在したことを意味する。本実施形態では、隣り合う座席間における抽出間隔(撮影画像数)である標準抽出間隔を設定し、この標準抽出間隔との比較により、被写体画像間の間に空席があったか否かを判定する。
【0041】
隣り合う座席間における抽出間隔(撮影画像数)である標準抽出間隔を事前に計測し、設定しておいてもよい。また、抽出された全被写体画像間のうち最低の抽出間隔を標準抽出間隔としてもよい。ある抽出間隔を標準抽出間隔と比較することにより、間に空席がいくつあったかを特定することができる。例えば、
図12の例の場合、1枚目の被写体画像と2枚目の被写体画像が標準抽出間隔で抽出されたとする。そして、2枚目の被写体画像と3枚目の被写体画像の抽出間隔が標準抽出間隔の約2倍であったとする。すると、2枚目の被写体画像と3枚目の被写体画像の間に空席があったと考えられる。この場合、2枚目の被写体画像が2列目の座席を撮影したものであったとすると、3枚目の被写体画像は4列目の座席を撮影したものと特定される。このようにして、各撮影画像が何列目の座席を撮影したものであるかを特定することができる。現実には、抽出間隔は、標準抽出間隔の整数倍になるとは、限らない。そのため、本実施形態では、抽出間隔を標準抽出間隔で除算して得られた値を四捨五入して整数値とする。その整数値の分だけ後の被写体画像は前の被写体画像から列数がずれているとして、後の被写体画像の列数を特定する。
【0042】
本実施形態では、ステップS6においては、被写体画像の抽出の後、画像加工手段26が、さらに被写体画像に対して加工処理を行う。被写体画像に対する加工処理としては、例えば、トリミングやインペインティングがある。トリミングとは、画像における一部の領域を切り出す処理である。本実施形態では、座席領域のみを被写体画像から切り出して新たな切り出し画像を得ることができる。
図13は、被写体画像のトリミングを示す図である。
図13(a)はトリミング前の被写体画像であり、
図13(b)はトリミング後の切り出し画像である。この切り出し画像をデータ出力やプリント出力して顧客に提供することができる。
図13(a)においては、トリミング領域を破線の矩形で示している。
【0043】
また、インペインティングとは、被写体画像において一部を他の情報に描き換える処理である。本実施形態では、座席領域以外に人物を検出した場合、その部分を、他の情報で描き換える。他の情報としては、例えばキャラクターなどの絵柄であってもよいし、周囲の画素であってもよい。
図14は、被写体画像のインペインティングを示す図である。
図14(a)はインペインティング前の被写体画像であり、
図14(b)はインペインティング後の加工画像である。この加工画像をデータ出力やプリント出力して顧客に提供することができる。なお、画像加工手段26は、必須の手段ではなく、抽出された被写体画像に対して、必ずしも加工を行う必要はない。
【0044】
上記のようにして、被写体画像が抽出されたら、画像出力手段が、抽出された被写体画像を出力する(ステップS7)。具体的には、被写体画像とその被写体画像の列順(何列目であるかの情報)を出力する。被写体画像として抽出された撮影画像は、プリンタ14、画像データ出力部15等の画像出力手段に出力される。
【0045】
画像出力手段への被写体画像の出力は、被写体画像抽出手段25により抽出された被写体画像を直接出力するようにしてもよい。また、被写体画像抽出手段25により抽出された被写体画像を表示装置13に表示出力し、内容を確認した後、指示入力部からのユーザからの指示に基づき、画像出力手段へ被写体画像を出力するようにしてもよい。画像データ出力部15からはネットワークを介してスマートフォンで実現されるユーザ端末30に送信してもよい。
【0046】
被写体画像抽出手段25は、1つの重複画像群から複数の被写体画像を抽出するようにしてもよい。例えば、領域距離が最小の撮影画像とその前後の撮影画像とすることもできる。そのような場合、画像データ出力部15は、複数の被写体画像を表示装置13またはユーザ端末30に表示してユーザに選択を促す。そして、画像データ出力部15は、ユーザの指示により選択された被写体画像をユーザ端末30に送信する。上述のように、被写体画像は、何列目の座席であるかという情報と対応付けられている。このため、ユーザにより列順を指定されると、画像データ出力部15は、その列順に対応した被写体画像を表示装置13またはユーザ端末30に表示することもできる。
【0047】
<応用例>
次に、応用例について説明する。応用例においては、ステップS6における被写体画像の抽出の処理が上記実施形態と異なる。
図15は、応用例を示す図である。本システムでは、上記のように各撮影画像に対して解析を行い、座席領域と設定領域の重複を判定し、座席領域と設定領域の所定点同士の距離を算出してもよい。しかし、全ての撮影画像に対して解析を行うと、システムの処理負荷が大きくなり、高速な処理が難しい。このため、応用例では、システムの処理負荷を軽減する対応を行っている。具体的には、
図13において説明したように、重複画像群の全ての撮影画像の中から、座席領域と設定領域の中心同士の距離が最小のものを被写体画像として抽出するのではなく、座席領域とを設定領域の中心同士の距離が増加に転じた時点で、その直前の撮影画像を被写体画像として抽出する。そして、その時点から所定間隔だけ移動した箇所から、撮影画像の解析を行う。すなわち、撮影順において所定間隔だけ後方に移動した箇所の撮影画像を次の処理対象とする。
【0048】
所定間隔としては、標準抽出間隔に所定の比率αを乗じた値とすることができる。この比率αは、任意に設定することができるが、0.5以上とすることが好ましく、0.8以上とすることがより好ましい。比率αが小さ過ぎると、処理を省略する撮影画像の数が少なく、処理負荷の軽減が十分に行えない。比率αが大き過ぎると、座席領域と設定領域の中心同士の距離が最小となるはずの撮影画像の処理をし損ねる恐れがある。例えば比率α=0.9とした場合、90%の撮影画像は処理しなくてよいことになり、システムの処理負荷が大きく軽減される。したがって、
図15に右向きの矢印で示した分だけ撮影画像を読み飛ばしたような状態になる。
【0049】
以上、本開示の好適な実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、処理装置11としてコンピュータを用い、記憶装置に記憶された専用のプログラムをCPUが実行することにより、人物領域推定手段、座席領域推定手段、重複確認手段、領域距離算出手段、被写体画像抽出手段、画像加工手段を実現するようにしたが、これらの各手段を演算回路としてハードウェアに組み込むようにしても良い。
【符号の説明】
【0050】
10・・被写体画像抽出システム
11・・・処理装置
12・・・撮影装置
13・・・表示装置
14・・・プリンタ
15・・・画像データ出力部
21・・・人物領域推定手段
22・・・座席領域推定手段
23・・・重複確認手段
24・・・領域距離算出手段
25・・・被写体画像抽出手段
26・・・画像加工手段
30・・・ユーザ端末
40・・被写体画像抽出装置