(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173916
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】棚板固定装置
(51)【国際特許分類】
A47B 96/06 20060101AFI20231130BHJP
A47B 57/40 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
A47B96/06 B
A47B96/06 C
A47B96/06 E
A47B57/40 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086471
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000107572
【氏名又は名称】スガツネ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112140
【弁理士】
【氏名又は名称】塩島 利之
(74)【代理人】
【識別番号】100119297
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 正男
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 聖宏
(72)【発明者】
【氏名】大西 佳奈
(57)【要約】
【課題】棚柱に装着し易い棚板固定装置を提供する。
【解決手段】棚板固定装置1は、本体部11と、本体部11に対して上下移動可能に設けられる押え部12と、を備える。本体部11は、棚柱3の手前側に配置される基部11aと、棚柱3の上側開口部6aに挿入され、上側開口部6aに係合可能な凹部14を有する係合部11bと、棚柱3の下側開口部6bに挿入され、下側開口部6bに係合可能な凹部を有さない突起部11cと、を有する。基部11aが係合部11bの上端よりも上方に延びている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
棚柱の手前側に配置される基部、前記棚柱の上側開口部に挿入され、前記上側開口部に係合可能な凹部を有する係合部、及び前記棚柱の下側開口部に挿入され、前記下側開口部に係合可能な凹部を有さない突起部を有する本体部と、
前記本体部に対して上下移動可能に設けられる押え部と、を備え、
前記基部が前記係合部の上端よりも上方に延びている棚板固定装置。
【請求項2】
前記凹部の底面には、前記上側開口部の上枠に当接する傾斜面又は段部が形成され、
前記傾斜面又は前記段部は、前記基部から離れるにしたがって高くなることを特徴とする請求項1に記載の棚板固定装置。
【請求項3】
前記基部には、前記押え部のねじ軸に螺合するナットが収容されることを特徴とする請求項1又は2に記載の棚板固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棚板を固定する棚板固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
棚柱にブラケットを装着し、ブラケットに棚板を支持させるようにした棚がある。棚柱には、ブラケットが高さ調整可能に装着される。ブラケットの高さを調整することで、棚板の高さを調整することができる。この棚において、棚板に上向きの力が働くと、棚板がずれたり、棚板がブラケットから外れたりする。これを防止するために、棚板を固定する棚板固定装置(特許文献1参照)が設けられる。
【0003】
特許文献1に記載の棚板固定装置は、棚柱に装着される本体部と、本体部に螺合し、上下移動可能な当接バーと、を備える。当接バーを回すと、当接バーが本体部に対して上下移動する。
【0004】
本体部には、棚柱に係合する上側係合部と下側係合部が形成される。上側係合部と下側係合部は、棚柱の上側開口部と下側開口部に挿入される。当接バーを回して下降させ、棚板の上面に当接させると、本体部の上側係合部と下側係合部が棚柱の上側開口部と下側開口部に係合する。これにより、棚板が固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-22178号公報([0035]~[0038]、
図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の棚板固定装置においては、本体部の上側係合部と下側係合部を棚柱の上側開口部と下側開口部に係合させるので、棚柱に対して本体部が回転するのを防止することができる。しかし、2箇所を係合させる必要があるので、棚柱に棚板固定装置を装着しにくいという課題がある。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本体部が棚柱に対して回転するのを防止でき、かつ棚柱に装着し易い棚板固定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、棚柱の手前側に配置される基部、前記棚柱の上側開口部に挿入され、前記上側開口部に係合可能な凹部を有する係合部、及び前記棚柱の下側開口部に挿入され、前記下側開口部に係合可能な凹部を有さない突起部を有する本体部と、前記本体部に対して上下移動可能に設けられる押え部と、を備え、前記基部が前記係合部の上端よりも上方に延びている棚板固定装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、本体部の上側の係合部のみを棚柱に係合させればよく、本体部の下側の突起部を棚柱に係合させる必要がないので、棚柱に棚板固定装置を装着し易い。また、本体部の基部が係合部の上端よりも上方に延びているので、本体部が回転するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態の棚板固定装置を使用した棚を示す斜視図である(木製の棚板の場合)。
【
図2】上記棚の縦断面図である(木製の棚板の場合)。
【
図3】本実施形態の棚板固定装置を使用した棚を示す斜視図である(ガラス製の棚板の場合)。
【
図4】上記棚の縦断面図である(ガラス製の棚板の場合)。
【
図5】
図5(a)は本実施形態の棚板固定装置の背面図であり、
図5(b)は側面図である。
【
図6】本実施形態の棚板固定装置の縦断面図である(
図6(a)は押え部が下降した状態、
図6(b)は押え部が上昇した状態を示す)。
【
図8】本実施形態の棚板固定装置の係合部の他の例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施形態の棚板固定装置を詳細に説明する。ただし、本発明の棚板固定装置は種々の形態で具体化することができ、本明細書に記載される実施形態に限定されるものではない。本実施形態は、明細書の開示を十分にすることによって、当業者が発明を十分に理解できるようにする意図をもって提供されるものである。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態の棚板固定装置1を使用した棚を示す。
図2は、棚の縦断面図を示す。2は壁面、3は棚柱、4はブラケット、5は棚板である。なお、以下では、棚を正面から見たときの方向、すなわち
図1の前後、左右、上下の各方向を用いて、棚の構成を説明する。
【0013】
壁面2には、上下に延びる棚柱3が左右に間隔を開けて取り付けられる。棚柱3は、例えば断面U字状である。棚柱3の背面には、上下方向に延びる溝3a(
図2参照)が形成される。この溝3aは、ブラケット4のフック4a,4b、棚板固定装置1の係合部11bと突起部11cの挿入を許容する。
【0014】
図1に示すように、棚柱3には、上下に一定のピッチを開けて複数の開口部6が形成される。本実施形態の開口部6の形状は、下の端部の幅が中央部の幅よりも広い略矩形状に形成される。開口部6の形状は、特に限定されるものではなく、例えば上下に長いスリット状に形成されてもよい。棚柱3には、棚柱3を壁面に締結するためのねじ用の取付け穴7が形成される。
【0015】
図2に示すように、棚柱3には、ブラケット4が装着される。
図2に示すように、ブラケット4の後端部には、棚柱3の開口部6c,6dに挿入される上下2つのフック4a,4bが形成される。フック4a,4bは、断面略L字状であり、その先端部が下方に垂れ下がる。ブラケット4のフック4a,4bを棚柱3の開口部6c,6dに挿入し、ブラケット4を下げれば、ブラケット4が棚柱3に装着される。ブラケット4は、ブラケット4のフック4a,4bを、棚柱3の上下方向に形成された複数の開口部6のうち、適宜選択される一対の開口部6c,6dに係合させることにより、高さ調整可能である。
【0016】
ブラケット4には、棚板5が載置される。棚板5は、木製、ガラス製等である。
図1と
図2には、木製の棚板5を使用した棚を示す。
図3と
図4には、ガラス製の棚板5を使用した棚を示す。一般的に木製の棚板5は、ガラス製の棚板5よりも厚い。棚板固定装置1の装着高さを変えることで、厚い木製の棚板5でも薄いガラス製の棚板5でも対応できる。
【0017】
図1と
図2に示すように、木製の棚板5の場合、棚板5の下面にねじを用いてストッパ8を取り付けてもよい。このストッパ8は、ブラケット4に当接して棚板5の左右のずれを防止する役割を持つ。また、
図3と
図4に示すように、ガラス製の棚板5の場合、ブラケット4の本体部4cを緩衝体9で覆ってもよい。
【0018】
棚柱3には、棚板固定装置1が装着される。棚板固定装置1とブラケット4との間で棚板5を挟むことで、棚板5が固定される。以下に棚板固定装置1の構成を詳細に説明する。
【0019】
図5(a)(b)は棚板固定装置1の背面図、側面図を示し、
図6(a)(b)は棚板固定装置1の縦断面図を示す。棚板固定装置1は、本体部11と、本体部11に上下移動可能に設けられる押え部12と、を備える。
【0020】
本体部11は、棚柱3の手前側に配置される基部11aと、棚柱3の上側開口部6a(
図2参照)に挿入される係合部11bと、棚柱3の下側開口部6b(
図2参照)に挿入される突起部11cと、を有する。基部11a、係合部11b、突起部11cは、樹脂成型により一体に形成される。棚柱3の上側開口部6aは、下側開口部6bよりも上方に配置される。棚柱3の下側開口部6bは、ブラケット4のフック4a,4bが挿入される開口部6c,6d(
図2参照)よりも上方に配置される。押え部12は、基部11aに上下移動可能に取り付けられる。押え部12を回すことによって、押え部12が上下移動する。
【0021】
図1に示すように、基部11aは、例えば前方が断面円弧状に形成された略直方体状に形成される。
図5に示すように、基部11aの幅W1は、係合部11bと突起部11cの幅W2よりも大きい。係合部11bと突起部11cの幅W2は、開口部6a,6bの中央部の幅よりも僅かに小さい。係合部11bと突起部11cの後端部には、開口部6a,6bへの挿入を容易にするための面取りが形成される。基部11aの背面には、上部穴11a1、中央部穴11a2、下部穴11a3が形成される。下部穴11a3には、ナット13が収容される。基部11aは、係合部11bの上端11b1よりも上方向に延びている。すなわち、基部11aには、棚柱3の前面に当接する回転規制部18が形成される。
【0022】
係合部11bは、基部11aから後方に突出する。係合部11bには、棚柱3の上側開口部6aに係合可能な凹部14が形成される。凹部14を形成することにより、係合部11bはその後端部が上方に突出するフック状に形成される。凹部14の底面には、傾斜面14aが形成される。
図7の拡大図に示すように、傾斜面14aは、基部11aから離れるにしたがって高くなる。凹部14の後方側の側面14bは、垂直面に形成される。凹部14の前方側の側面14cは、基部11aの背面と同一平面に形成される。
【0023】
図5に示すように、突起部11cは、係合部11bよりも下方に配置される。突起部11cも、基部11aから後方に突出する。突起部11cは、縦断面が矩形状である。突起部11cには、凹部14が形成されていない。突起部11cの上面11c1は、実質的に平坦に形成される。
【0024】
図6に示すように、押え部12は、ねじ軸15と、ねじ軸15の下端部に設けられるキャップ16と、を備える。ねじ軸15の下端部には、6角状の頭部15aが形成される。キャップ16は、頭部15aに被せられる。キャップ16は、その下端面が曲面状に形成される。回し易くするために、キャップ16の周囲には複数の溝が形成される。
図6に示すように、基部11aに収容されたナット13にねじ軸15を螺合させ、キャップ16を回すことにより、押え部12が基部11aに対して上下に移動する。
【0025】
以下に、本実施形態の棚板固定装置1の作用を説明する。
図2に示すように、棚柱3の上側開口部6aと下側開口部6bに本体部11の係合部11bと突起部11cを挿入する。そして、本体部11を持ち上げると、係合部11bの凹部14の傾斜面14aが上側開口部6aの上縁に当接する。すなわち、係合部11bと上側開口部6aが係合する。このとき、突起部11cの上面と下側開口部6bの上枠との間には隙間δがある。すなわち、突起部11cと下側開口部6bとは係合していない。
【0026】
棚柱3に本体部11を装着しただけでは、押え部12と棚板5の上面との間には隙間がある。押え部12を回して下げると、押え部12が棚板5の上面に当接する。押え部12が棚板5に当接すると、本体部11には棚板5からの反力によって上向きの力が働く。このため、本体部11の係合部11bが棚柱3の上側開口部6aにしっかりと係合する。そして、棚板5が棚板固定装置1とブラケット4との間にしっかりと挟まれる。
【0027】
棚板5を取り外す際には、押え部12を反対方向に回して上方に移動させる。これにより、棚板5を取り外すことができる。
【0028】
棚柱3から棚板固定装置1を取り外す際には、棚板固定装置1を下に押し下げ、本体部11の係合部11bと棚柱3の上側開口部6aとの係合を解除する。これにより、棚柱3から棚板固定装置1を抜くことができる。
【0029】
以上に、本実施形態の棚板固定装置1の構成、作用を説明した。本実施形態の棚板固定装置1によれば、以下の効果を奏する。
【0030】
棚柱3に棚板固定装置1を装着する際、本体部11の上側の係合部11bのみを棚柱3に係合させればよく、本体部11の下側の突起部11cを棚柱3に係合させる必要がないので、棚柱3に棚板固定装置1を装着し易い。
【0031】
押え部12を下降させて棚板5に当接させた際、本体部11には棚板5からの反力によって本体部11を回転させようとする力が働く。この力によって本体部11の突起部11cが棚柱3の下側開口部6bから抜けようとする。しかし、本実施形態の棚板固定装置1によれば、本体部11の基部11aが係合部11bの上端よりも上方に延びているので、本体部11が回転するのを防止し、本体部11の突起部11cが棚柱3の下側開口部6bから抜けるのを防止する。
【0032】
係合部11bの凹部14の底面に棚柱3の上側開口部6aに当接する傾斜面14aを形成するので、係合部11bと上側開口部6aとの係合を強固にすることができるし、また棚柱3の厚みが異なっても、同一の棚板固定装置1で対応できるようになる。
【0033】
本体部11の基部11aに押え部12に螺合するナット13を収容するので、押え部12の送り機構をシンプルにすることができる。
【0034】
図8は、本体部11の係合部11bの凹部14の他の例を示す。上記実施形態では、係合部11bの凹部14の底面が傾斜面14aに形成されるのに対し、この例では、係合部11bの凹部14の底面が段部17に形成される。段部17は、1段でも2段以上でもよい。段部17は基部11aから離れるにしたがって高くなる。この例のように、係合部11bの凹部14の底面に段部17を形成してもよい。
【0035】
なお、本発明の棚板固定装置は上記実施形態に具現化するのに限られることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲で他の実施形態に具現化可能である。
【0036】
例えば、上記実施形態では、送り機構により押え部を上下移動させているが、本体部に押え部を上下方向にスライド可能に設け、押え部をコイルスプリングにより棚板に当接させてもよい。また、押え部に弾性爪を設け、本体部に弾性爪に係合する凹凸を設け、弾性爪と凹凸によって押え部の下方への移動を許容する一方、上方への移動を制限するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1…棚板固定装置
3…棚柱
5…棚板
6a…上側開口部
6b…下側開口部
11…本体部
11a…基部
11b…係合部
11c…突起部
12…押え部
13…ナット
14…凹部
14a…傾斜面
15…ねじ軸
17…段部