(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173918
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】成形品質予測方法、成形品質予測装置
(51)【国際特許分類】
B29C 45/76 20060101AFI20231130BHJP
G06F 30/23 20200101ALI20231130BHJP
G06F 30/28 20200101ALI20231130BHJP
G06F 113/22 20200101ALN20231130BHJP
【FI】
B29C45/76
G06F30/23
G06F30/28
G06F113:22
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086476
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520167645
【氏名又は名称】東レエンジニアリングDソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】嶋村 亜佑子
(72)【発明者】
【氏名】前田 真人
(72)【発明者】
【氏名】池田 浩二
(72)【発明者】
【氏名】菊池 泰志
【テーマコード(参考)】
4F206
5B146
【Fターム(参考)】
4F206AM23
4F206AM36
4F206JA07
4F206JL02
4F206JL09
4F206JM04
4F206JP01
4F206JP13
4F206JP30
4F206JQ81
4F206JQ88
4F206JQ90
5B146AA06
5B146DJ03
5B146DJ07
5B146DJ14
(57)【要約】
【課題】成形品質の予測精度に優れた成形品質予測技術を提供する。
【解決手段】成形品質予測方法は、シェルメッシュの流動解析を行う第2ステップS102と、流動解析の結果に基づいて2つの樹脂流の会合領域に形成される一次ウェルドに沿った複数の節点を抽出する第3ステップS103と、成形品を樹脂厚み方向の複数の仮想分割層に分割し抽出した複数の節点のそれぞれについて複数の仮想分割層のうち樹脂厚み方向の中心層における流速ベクトルの経時的変化を導出する第4ステップS104と、流速ベクトルの経時的変化に基づいて成形品の成形完了時に樹脂厚み方向の断面に形成されるウェルド界面の流動先端部の位置を推定する第5ステップS105と、ウェルド界面の流動先端部を複数の節点に対応するものについて繋いだラインを二次ウェルドと推定する第6ステップS106と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂の射出成形により形成される成形品の品質予測を行う成形品質予測方法であって、
上記成形品の形状データに基づいてシェルメッシュの流動解析を行う流動解析ステップと、
上記流動解析ステップにおける流動解析結果に基づいて、2つの樹脂流の会合領域に形成される一次ウェルドに沿った複数の節点を抽出する節点抽出ステップと、
上記成形品を樹脂厚み方向の複数の仮想分割層に分割し、上記節点抽出ステップで抽出した上記複数の節点のそれぞれについて上記複数の仮想分割層のうち上記樹脂厚み方向の中心層における流速ベクトルの経時的変化を導出する流速ベクトル導出ステップと、
上記流速ベクトル導出ステップで導出した上記流速ベクトルの経時的変化に基づいて、上記成形品の成形完了時に上記樹脂厚み方向の断面に形成されるウェルド界面の流動先端部の位置を推定するウェルド界面推定ステップと、
上記ウェルド界面推定ステップで推定した上記ウェルド界面の上記流動先端部を上記複数の節点に対応するものについて繋いだラインを二次ウェルドと推定する二次ウェルド推定ステップと、
を有する、成形品質予測方法。
【請求項2】
上記流速ベクトルは、樹脂流れ方向の流速ベクトルを上記一次ウェルドが延びる軸線方向の第1流速ベクトルと上記軸線方向と直交する直交方向の第2流速ベクトルとに分解したときの上記第2流速ベクトルである、請求項1に記載の、成形品質予測方法。
【請求項3】
上記流速ベクトルは、樹脂流れ方向の流速ベクトルである、請求項1に記載の、成形品質予測方法。
【請求項4】
上記ウェルド界面の形状をy=a×x2+bx+cなる二次曲線で近似する二次曲線近似ステップと、上記二次曲線近似ステップで近似の上記二次曲線の係数aに基づいて上記成形品の成形品質の予測を行う成形品質予測ステップと、を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の、成形品質予測方法。
【請求項5】
樹脂の射出成形により形成される成形品の品質予測を行う成形品質予測装置であって、
上記成形品の形状データに基づいてシェルメッシュの流動解析を行う流動解析部と、
上記流動解析部による流動解析結果に基づいて、2つの樹脂流の会合領域に形成される一次ウェルドに沿った複数の節点を抽出する節点抽出部と、
上記成形品を樹脂厚み方向の複数の仮想分割層に分割し、抽出した上記複数の節点のそれぞれについて上記複数の仮想分割層のうち上記樹脂厚み方向の中心層における流速ベクトルの経時的変化を導出する流速ベクトル導出部と、
上記流速ベクトルの経時的変化に基づいて、上記成形品の成形完了時に上記樹脂厚み方向の断面に形成されるウェルド界面の流動先端部の位置を推定するウェルド界面推定部と、
上記ウェルド界面の上記流動先端部を上記複数の節点に対応するものについて繋いだラインを二次ウェルドと推定する二次ウェルド推定部と、
を備える、成形品質予測装置。
【請求項6】
上記流速ベクトルは、樹脂流れ方向の流速ベクトルを上記一次ウェルドが延びる軸線方向の第1流速ベクトルと上記軸線方向と直交する直交方向の第2流速ベクトルとに分解したときの上記第2流速ベクトルである、請求項5に記載の成形品質予測装置。
【請求項7】
上記流速ベクトルは、樹脂流れ方向の流速ベクトルである、請求項5に記載の、成形品質予測装置。
【請求項8】
上記ウェルド界面の形状をy=a×x2+bx+cなる二次曲線で近似する二次曲線近似部と、上記二次曲線近似部で近似の上記二次曲線の係数aに基づいて上記成形品の成形品質の予測を行う成形品質予測部と、を備える、請求項5~7のいずれか一項に記載の、成形品質予測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形品質を予測する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、この種の成形品質予測技術が開示されている。この成形品質予測技術は、成形品の形状のCADデータをシェルメッシュに変換して流動解析を行うときに、1次ウェルドが発生している周辺の複数の節点を抽出し、各節点における樹脂速度の時間積分を内部ウェルド移動量として求め、この内部ウェルド移動量に基づいて成形品の品質予測を行うものである。ところが、この技術は、成形品の厚さ方向の内部の状態を推測するのが難しく、成形品の品質予測を精度良く行うのが難しいという問題を抱えている。
【0003】
そこで、下記特許文献2には、成形品の内部のウェルド界面の形状を推定する技術が開示されている。この技術は、シェルメッシュの流動解析において、1次ウェルドの周辺の各節点の樹脂の移動量と流動層厚みとの時系列データに基づいて、ウェルド界面の折り返しの有無と、ウェルド界面の厚さ方向の中央部分での曲率を推定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-74786号公報
【特許文献2】特開2008-207440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種の成形品質予測技術では、ウェルド界面の中央部分の突出先端部の位置と形状を精度良く推定することが求められている。しかしながら、この技術を採用する場合、ウェルド界面の突出先端部の位置を精度良く推定するのが難しい。また、ウェルド界面の厚さ方向の中央部分での曲率を推定する場合、ウェルド界面の各部位のうち円弧の部位が対象となり、ウェルド界面の中央部分の突出先端部の極めて狭い範囲を円弧の一部として近似することになり、ウェルド界面の広範囲を評価することが難しい。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、成形品質の予測精度に優れた成形品質予測技術を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、
樹脂の射出成形により形成される成形品の品質予測を行う成形品質予測方法であって、
上記成形品の形状データに基づいてシェルメッシュの流動解析を行う流動解析ステップと、
上記流動解析ステップにおける流動解析結果に基づいて、2つの樹脂流の会合領域に形成される一次ウェルドに沿った複数の節点を抽出する節点抽出ステップと、
上記成形品を樹脂厚み方向の複数の仮想分割層に分割し、上記節点抽出ステップで抽出した上記複数の節点のそれぞれについて上記複数の仮想分割層のうち上記樹脂厚み方向の中心層における流速ベクトルの経時的変化を導出する流速ベクトル導出ステップと、
上記流速ベクトル導出ステップで導出した上記流速ベクトルの経時的変化に基づいて、上記成形品の成形完了時に上記樹脂厚み方向の断面に形成されるウェルド界面の流動先端部の位置を推定するウェルド界面推定ステップと、
上記ウェルド界面推定ステップで推定した上記ウェルド界面の上記流動先端部を上記複数の節点に対応するものについて繋いだラインを二次ウェルドと推定する二次ウェルド推定ステップと、
を有する、成形品質予測方法、
にある。
【0008】
本発明の他の態様は、
樹脂の射出成形により形成される成形品の品質予測を行う成形品質予測装置であって、
上記成形品の形状データに基づいてシェルメッシュの流動解析を行う流動解析部と、
上記流動解析部による流動解析結果に基づいて、2つの樹脂流の会合領域に形成される一次ウェルドに沿った複数の節点を抽出する節点抽出部と、
上記成形品を樹脂厚み方向の複数の仮想分割層に分割し、抽出した上記複数の節点のそれぞれについて上記複数の仮想分割層のうち上記樹脂厚み方向の中心層における流速ベクトルの経時的変化を導出する流速ベクトル導出部と、
上記流速ベクトルの経時的変化に基づいて、上記成形品の成形完了時に上記樹脂厚み方向の断面に形成されるウェルド界面の流動先端部の位置を推定するウェルド界面推定部と、
上記ウェルド界面の上記流動先端部を上記複数の節点に対応するものについて繋いだラインを二次ウェルドと推定する二次ウェルド推定部と、
を備える、成形品質予測装置、
にある。
【発明の効果】
【0009】
上述の態様の成形品質予測方法において、流動解析ステップでは成形品の形状データに基づいてシェルメッシュの流動解析を行う。節点抽出ステップでは、流動解析ステップにおける流動解析結果に基づいて、2つの樹脂流の会合領域に形成される一次ウェルドに沿った複数の節点を抽出する。流速ベクトル導出ステップでは、成形品を樹脂厚み方向の複数の仮想分割層に分割し、節点抽出ステップで抽出した複数の節点のそれぞれについて複数の仮想分割層のうち樹脂厚み方向の中心層における流速ベクトルの経時的変化を導出する。ウェルド界面推定ステップでは、流速ベクトル導出ステップで導出した流速ベクトルの経時的変化に基づいて、成形品の成形完了時に樹脂厚み方向の断面に形成されるウェルド界面の流動先端部の位置を推定する。二次ウェルド推定ステップでは、ウェルド界面推定ステップで推定したウェルド界面の流動先端部を複数の節点に対応するものについて繋いだラインを二次ウェルドと推定する。
【0010】
上述の態様の成形品質予測装置において、流動解析部で上記流動解析ステップに相当する処理が実行される。節点抽出部で上記節点抽出ステップに相当する処理が実行される。流速ベクトル導出部で上記流速ベクトル導出ステップに相当する処理が実行される。ウェルド界面推定部で上記ウェルド界面推定ステップに相当する処理が実行される。二次ウェルド推定部で上記二次ウェルド推定ステップに相当する処理が実行される。
【0011】
上述の各態様によれば、複数の仮想分割層のうち樹脂厚み方向の中心層における流速ベクトルの経時的変化を導出し、この流速ベクトルの経時的変化に基づいてウェルド界面の流動先端部の位置を推定することで、その推定精度を高めることが可能になる。例えば、樹脂流れ方向の樹脂移動量と樹脂厚み方向の流動層厚みとに基づいてウェルド界面の形状を推定するのに比べて、ウェルド界面の流動先端部の位置を精度良く推定するのに有効である。そして、このときのウェルド界面の流動先端部の位置から二次ウェルドの位置を推定することができる。これにより、一次ウェルドと二次ウェルドとの位置関係を可視化することができ、成形品の成形品質予測が可能になる。
【0012】
以上のごとく、上述の各態様によれば、成形品質の予測精度に優れた成形品質予測技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態1の成形品質予測装置のシステム構成図。
【
図2】成形品の射出成形過程で生じる一次ウェルド及び二次ウェルドについて説明するための図。
【
図3】実施形態1の成形品質予測方法を示すフローチャート。
【
図4】
図3中の第4ステップの第1段階の処理を説明するための図。
【
図5】
図3中の第4ステップの第1段階の処理を説明するための図。
【
図6】
図3中の第4ステップの第2段階の処理を説明するための図。
【
図7】
図3中の第4ステップの第2段階の処理を説明するための図。
【
図8】
図3中の第5ステップおよび第6ステップの処理を説明するための図。
【
図9】
図3中の第5ステップおよび第6ステップの処理により二次ウェルドが推定される様子について説明するための図。
【
図10】
図3中の第7ステップの処理を説明するための図。
【
図11】ウェルド界面の凸領域の形状が樹脂に含まれるタルクの配向に及ぼす影響について説明するための図。
【
図12】
図3中の第8ステップにおける予測結果のテキストデータを示す図。
【
図13】実施形態2の成形品質予測方法において
図4に対応した図。
【
図14】実施形態2の成形品質予測方法において
図5に対応した図。
【
図15】実施形態2の成形品質予測方法において
図6に対応した図。
【
図16】実施形態2の成形品質予測方法において
図7に対応した図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
上述の態様の好ましい実施形態について以下に説明する。
【0015】
上述の態様の成形品質予測方法において、上記流速ベクトルは、樹脂流れ方向の流速ベクトルを上記一次ウェルドが延びる軸線方向の第1流速ベクトルと上記軸線方向に直交する直交方向の第2流速ベクトルとに分解したときの上記第2流速ベクトルであるのが好ましい。
【0016】
この成形品質予測方法によれば、流速ベクトル導出ステップで第2流速ベクトルの経時的変化を導出することにより、成形品の成形完了までの実際の樹脂流の変化をリアルに反映させることが可能になる。これにより、二次ウェルド推定ステップで二次ウェルドの位置を推定する精度をより高めることができる。
【0017】
上述の態様の成形品質予測方法において、上記流速ベクトルは、樹脂流れ方向の流速ベクトルであるのが好ましい。
【0018】
この成形品質予測方法によれば、流速ベクトル導出ステップで樹脂流れ方向の流速ベクトルの経時的変化を導出することにより、流速ベクトル導出ステップにおける処理を簡素化することができる。
【0019】
上述の態様の成形品質予測方法において、上記ウェルド界面の形状をy=a×x2+bx+cなる二次曲線で近似する二次曲線近似ステップと、上記二次曲線近似ステップで近似の上記二次曲線の係数aに基づいて上記成形品の成形品質の予測を行う成形品質予測ステップと、を有するのが好ましい。
【0020】
この成形品質予測方法によれば、二次曲線近似ステップで、成形品の成形品質に特に関連性の高いウェルド界面の形状を二次曲線で近似することによって、成形品の成形品質を精度良く推定することが可能になる。
【0021】
上述の態様の成形品質予測装置において、上記流速ベクトルは、樹脂流れ方向の流速ベクトルを上記一次ウェルドが延びる軸線方向の第1流速ベクトルと上記軸線方向に直交する直交方向の第2流速ベクトルとに分解したときの上記第2流速ベクトルであるのが好ましい。
【0022】
この成形品質予測装置によれば、流速ベクトル導出部で第2流速ベクトルの経時的変化を導出することにより、成形品の成形完了までの実際の樹脂流の変化をリアルに反映させることが可能になる。これにより、二次ウェルド推定部で二次ウェルドの位置を推定する精度をより高めることができる。
【0023】
上述の態様の成形品質予測装置において、上記流速ベクトルは、樹脂流れ方向の流速ベクトルであるのが好ましい。
【0024】
この成形品質予測装置によれば、流速ベクトル導出部で樹脂流れ方向の流速ベクトルの経時的変化を導出することにより、流速ベクトル導出部による処理を簡素化することができる。
【0025】
上述の態様の成形品質予測装置は、上記ウェルド界面の形状をy=a×x2+bx+cなる二次曲線で近似する二次曲線近似部と、上記二次曲線近似部で近似の上記二次曲線の係数aに基づいて上記成形品の成形品質の予測を行う成形品質予測部と、を備えるのが好ましい。
【0026】
この成形品質予測装置によれば、二次曲線近似部で、成形品の成形品質に特に関連性の高いウェルド界面の形状を二次曲線で近似することによって、成形品の成形品質を精度良く推定することが可能になる。
【0027】
以下、本実施形態の成形品質予測技術の具体例について、図面を参照しつつ説明する。
【0028】
(実施形態1)
図1に示されるように、実施形態1の成形品質予測装置100は、樹脂の射出成形により形成される成形品(後述の「成形品W」)の品質予測を行うための装置である。成形品質予測装置100は、モニター(表示手段)、キーボード(入力手段)、マウス(選択手段)、CPU、ROM、RAM等を有する、デスクトップ型若しくはノート型のパーソナルコンピュータ(PC)によって構成されるのが好ましい。また、この成形品質予測装置100は、通信ネットワークを介して外部機器に送受信可能に接続されるのが好ましい。
【0029】
図2に示されるように、成形品Wの射出成形過程では、高圧と低圧の2つの樹脂流が会合し衝突する会合領域1の表面に一次ウェルドL1が形成される。その後、樹脂が硬化した状態である成形品Wの成形完了時に樹脂内部に二次ウェルドL2が形成される。このとき、成形品Wの樹脂厚み方向Yの断面にウェルド界面3が形成され、このウェルド界面3の流動先端部(突出先端部)4を通るラインが二次ウェルドL2となる。
【0030】
図1に戻り、成形品質予測装置100は、データ処理部101と、記憶部102と、入力部103と、出力部104と、を備えている。
【0031】
記憶部102は、設計者が作成した成形品Wの形状データDを記憶するとともに、データ処理部101の処理で生成したデータを一時的に格納する。形状データDとして典型的にはCADデータが使用される。後述の流動解析で使用される各種のパラメータが入力部103から入力される。データ処理部101における処理結果が出力部104から出力される。なお、出力部104として典型的には、データを印字によって出力するプリンター、データを表示によって出力するモニター、データを音声によって出力するスピーカー等を用いることができる。
【0032】
データ処理部101は、さらに、流動解析部110と、節点抽出部120と、流速ベクトル導出部130と、ウェルド界面推定部140と、二次ウェルド推定部150と、二次曲線近似部160と、成形品質予測部170と、を備えている。
【0033】
流動解析部110は、成形品Wの形状データDに基づいてシェルメッシュの流動解析を行う機能を有する。このとき、形状データのDのシェルメッシュへの変換処理および流動解析は、市販のCAEソフトウェアのプログラムを使用して実行される。
【0034】
節点抽出部120は、流動解析部110による流動解析結果に基づいて、樹脂表面に形成される一次ウェルドL1に沿った複数の節点を抽出する機能を有する。なお、本実施形態では、説明の便宜上、3つのn1,n2,n3(
図4を参照)を抽出する場合について例示している。
【0035】
流速ベクトル導出部130は、成形品Wを樹脂厚み方向Yの複数の仮想分割層(後述の「仮想分割層S」)に分割し、抽出した3つの節点n1,n2,n3のそれぞれについて複数の仮想分割層Sのうち樹脂厚み方向Yの中心層(後述の「中心層Sa」)における流速ベクトル(後述の「流速ベクトルV」)の経時的変化を導出する機能を有する。
【0036】
ウェルド界面推定部140は、流速ベクトルVの経時的変化に基づいて、成形品Wの成形完了時に樹脂厚み方向Yの断面に形成されるウェルド界面3の流動先端部4の位置を推定する機能を有する。
【0037】
二次ウェルド推定部150は、ウェルド界面3の流動先端部4を3つ節点n1,n2,n3に対応するものについて繋いだラインを二次ウェルドL2と推定する機能を有する。このとき、二次ウェルドL2は、第1節点n1に対応した流動先端部4と、第2節点n2に対応した流動先端部4と、第3節点n3に対応した流動先端部4と、を通るラインである。
【0038】
二次曲線近似部160は、ウェルド界面3の先端側の凸領域3aの形状をy=a×x2+bx+cなる二次曲線で近似する機能を有する。この二次曲線において、aは、放物線の開き具合を表す係数であり、bは、y切片における接線の傾きを表す係数であり、cは、y切片を表す係数である。
【0039】
成形品質予測部170は、二次曲線近似部160で近似の二次曲線の係数aに基づいて成形品Wの成形品質の予測を行う機能を有する。
【0040】
次に、
図3~
図11を参照しながら、実施形態1の成形品質予測方法について説明する。この成形品質予測方法は、樹脂の射出成形により形成される成形品Wの品質予測を行うためのものである。
【0041】
図3に示されるように、実施形態1の成形品質予測方法は、第1ステップS101から第8ステップS108までのステップを順次実行することよって達成される。これらのステップに必要に応じて1または複数のステップが追加されてもよいし、或いは複数のステップが統合されてもよい。また、必要に応じて各ステップの順番を入れ替えてもよい。
【0042】
図3中の第1ステップS101は、成形品Wの形状データDを作成するデータ作成ステップである。この第1ステップS101は、成形品Wの設計者によって実行される。作成された形状データDは
図1中の記憶部102に記憶される。
【0043】
図3中の第2ステップS102は、成形品Wの形状データDに基づいてシェルメッシュの流動解析を行う流動解析ステップである。流動解析は形状データDをシェルメッシュに変換して行われる。この第2ステップS102は、
図1中の流動解析部110に搭載されている市販のCAEソフトウェアのプログラムによって実行される。
【0044】
図3中の第3ステップS103は、第2ステップS102における流動解析結果に基づいて、樹脂表面に形成される一次ウェルドに沿った複数の節点を抽出する節点抽出ステップである。この第3ステップS103は、
図1中の節点抽出部120によって実行される。
【0045】
図4に示されるように、この第3ステップS103では、3つの節点n1,n2,n3を備えるシェルメッシュで表現された流動解析モデルが例示されている。この流動解析モデルでは、2つのゲート位置(図示省略)から注入された樹脂が互いに会合するように流動し、その後に冷却されて硬化し、最終的に成形品Wとなるまでの成形過程がシミュレーションされる。この流動解析モデルによれば、2つの樹脂流が会合する位置を一次ウェルドL1として、この一次ウェルドL1の位置および形状が特定される。このため、一次ウェルドL1上の3つの節点n1,n2,n3を抽出することができる。
【0046】
なお、
図4では、3つの節点n1,n2,n3がいずれもウェルドラインL1上に位置する場合について例示している。一方で、3つの節点n1,n2,n3は一次ウェルドL1に沿った位置にあればよく、これら3つの節点n1,n2,n3の少なくとも1つがウェルドラインL1から僅かに外れた周辺位置にあるものであってもよい。例えば、ウェルドラインL1からの距離を予め定めて節点を選択するようにしてもよい。また、節点の数や位置はユーザが適宜に選択可能である。
【0047】
図3中の第4ステップS104は、成形品Wの樹脂厚み方向Yの中心層における流速ベクトルの経時的変化を導出する流速ベクトル導出ステップである。この第4ステップS104は、
図1中の流速ベクトル導出部130によって実行される。
【0048】
図5に示されるように、この第4ステップS104において、先ず、成形品Wを樹脂厚み方向Yの複数の仮想分割層Sに分割する。そして、第3ステップS103で抽出した3つの節点n1,n2,n3のそれぞれについて複数の仮想分割層Sのうち樹脂厚み方向Yの中心層Saにおける流速ベクトルVの経時的変化を導出する。このとき、中心層Saは、樹脂厚み方向Yの仮想の中央線Aを通る層として定義される。また、流速ベクトルVとして、樹脂流れ方向Xの流速ベクトルが使用される。
【0049】
この第4ステップS104では、各仮想分割層Sの流速ベクトルVに基づいて、中心層Saの流速ベクトルVを導出する。先ず、複数の仮想分割層Sのうち表面側の仮想分割層Sの流速ベクトルVを導出する。その後、仮想分割層Sの流速ベクトルVを表面側から中心層Sa側に向けて逐次的に導出していく。その結果、中心層Saの流速ベクトルVを導出することが可能になる。
【0050】
図4に示されるように、例えば、第1節点n1に対応した流動部2は、流速ベクトルVにしたがって樹脂流れ方向Xに経時的に流動し、その流動過程で第1位置P1に到達することが推定される。残りの第2節点n2及び第3節点n3についても同様である。このとき、第1節点n1に対応した第1位置P1の流動部2と、第2節点n2に対応した第1位置P1の流動部2と、第3節点n3に対応した第1位置P1の流動部2と、を通るライン(破線で示すライン)が、流動過程で中心層Saに形成される内部ウェルドL1’となる。
【0051】
図6及び
図7に示されるように、内部ウェルドL1’上の複数の流動部2は、その後も流速ベクトルVにしたがって樹脂流れ方向Xに経時的に流動する。例えば、第1節点n1に対応した流動部2は、第1位置P1から流速ベクトルVにしたがって樹脂流れ方向Xに経時的に流動し、成形完了時の最終位置である第2位置P2に到達することが推定される。残りの第2節点n2及び第3節点n3についても同様である。このとき、第2位置P2の流動部2は、ウェルド界面3の流動先端部4となる。
【0052】
なお、
図5及び
図7では、仮想分割層Sの数、即ち樹脂厚み方向Yの分割数が20であり、また、各仮想分割層Sの樹脂厚み方向Yの層幅が同一である場合について例示している。一方で、仮想分割層Sの数や各仮想分割層Sの樹脂厚み方向Yの層幅はこれに限定されるものではなく、必要に応じて適宜に変更することが可能である。
【0053】
また、
図6では、流動部2が第1位置P1を経て第2位置P2に至る二段階のステップで最終位置に到達する場合について例示したが、流動部2が三段階以上のステップで最終位置に到達するようにしてもよい。
【0054】
また、第4ステップS104において、流動部2の初期位置(一次ウェルドL1に対応した位置)における樹脂流れ方向Xと、流動部2の第1位置P1における樹脂流れ方向X2は、互いに一致していてもよいし、或いは互いに相違していてもよい。
【0055】
図3中の第5ステップS105は、第4ステップS104で導出した流速ベクトルVの経時的変化に基づいて、成形品Wの成形完了時に樹脂厚み方向Yの断面に形成されるウェルド界面3の流動先端部4の位置を推定するウェルド界面推定ステップである。この第5ステップS105は、
図1中のウェルド界面推定部140によって実行される。
【0056】
図3中の第6ステップS106は、第5ステップS105で推定したウェルド界面3の流動先端部4を3つの節点n1,n2,n3に対応するものについて繋いだラインを二次ウェルドL2(
図2、
図6を参照)と推定する二次ウェルド推定ステップである。この第6ステップS106は、
図1中の二次ウェルド推定部150によって実行される。
【0057】
図8及び
図9に示されるように、この第6ステップS106によれば、一次ウェルドL1から最終的に形成された二次ウェルドL2の位置を推定することが可能になる。
【0058】
図10に示されるように、
図3中の第7ステップS107は、ウェルド界面3の先端側の凸領域3aの形状をy=a×x
2+bx+cなる二次曲線で近似する二次曲線近似ステップである。凸領域3aは、ウェルド界面3のうち樹脂厚み方向Yの中央側の選択領域Sb(中央側の仮想分割層Sの10層分)に対応する領域である。二次曲線は、樹脂流れ方向Xの位置をx座標とし、樹脂厚み方向Yの位置をy座標としたときのものである。この第7ステップS107は、
図1中の二次曲線近似部160によって実行される。
【0059】
この第7ステップS107において、選択領域Sbは、ウェルド界面3の形状に応じてユーザにより適宜に設定されるのが好ましい。例えば、ウェルド界面3は樹脂厚み方向Yの両端側の形状が乱れ易いため、両端側の形状を省いて二次曲線で近似するのに相関性の高い凸領域3aを選ぶように選択領域Sを設定することができる。
【0060】
なお、
図10では、選択領域Sbにおける仮想分割層Sの数が10である場合について例示している。一方で、選択領域Sbにおける仮想分割層Sの数はこれに限定されるものではなく、必要に応じて適宜に変更することが可能である。
【0061】
図3中の第8ステップS108は、第7ステップS107で近似の二次曲線の係数aに基づいて成形品Wの成形品質の予測を行う成形品質予測ステップである。この第8ステップS108は、
図1中の成形品質予測部170によって実行される。
【0062】
ところで、成形品Wの射出成形で使用する樹脂には機能付与剤としてのタルクが添加されている。そして、ウェルド界面3の凸領域3aの形状がタルクの配向に影響を及ぼすことが知られている。ここで、
図11(a)には、ウェルド界面3の凸領域3aの開き度合いが相対的に大きい場合のタルクTの配向の様子について示している。また、
図11(b)には、ウェルド界面3の凸領域3aの開き度合いが相対的に小さい場合のタルクTの配向の様子について示している。
【0063】
図11(a)に示されるように、凸領域3aの開き度合いが相対的に大きい場合には、タルクTは樹脂の会合領域である流動先端部4の周辺領域4aで樹脂厚み方向Yに沿って配向する。このため、流動先端部4の周辺領域4aと一般部との間で樹脂厚み方向Yの収縮量に差が生じ易くなり、その結果、成形品Wの表面に大きな面ひずみが形成される要因に成り得る。
【0064】
これに対して、
図11(b)に示されるように、凸領域3aの開き度合いが相対的に小さい場合には、流動先端部4の周辺領域4aで樹脂厚み方向Yに沿って配向するタルクTの量が少なくなる。このため、流動先端部4の周辺領域4aと一般部との間で樹脂厚み方向Yの収縮量に差が生じにくくなり、その結果、成形品Wの表面には小さな面ひずみが形成されるのみとなる。
【0065】
図12に示されるように、第8ステップS108では、成形品Wの品質評価点Eを算出するために、E=k1×a+k2なる評価式を使用する。品質評価点Eを算出することにより、成形品Wの品質を数値化することができる。
【0066】
ここで、評価式中のaは、二次曲線の係数であり、k1とk2はともに補正係数(>0)である。係数aは、二次曲線の開き度合いを示すパラメータであり、値が大きいほど二次曲線の開き度合いが小さい。そして、評価式として一次式を用いている。このため、二次曲線の開き度合いが小さいほど、係数aが大きくなり、品質評価点Eが高くなる。
【0067】
第8ステップS108における予測結果は、出力部104により出力データとしてされる。この出力データとして、例えば、品質評価点Eと評価結果がデータベース化されたテキストデータTDを使用することができる。
【0068】
図12では、テキストデータTDにおいて、品質評価点Eが基準値である3以上のときの評価結果を「良」とし、品質評価点Eが基準値である3を下回るときの評価結果を「不良」とする場合について例示している。この場合、品番が「T-A001」のものと「T-A003」のものの評価結果が「良」となり、品番が「T-A002」のものの評価結果が「不良」となる。テキストデータTDによれば、品質評価点Eと評価結果の両方を表示することによって、ユーザは成形品Wの品質を一目で把握することができる。
【0069】
上述の実施形態1によれば、以下のような作用効果が得られる。
【0070】
実施形態1の成形品質予測装置100において、流動解析部110で流動解析ステップである第2ステップS102の処理が実行される。節点抽出部120で節点抽出ステップである第3ステップS103の処理が実行される。流速ベクトル導出部130で流速ベクトル導出ステップである第4ステップS104の処理が実行される。ウェルド界面推定部140でウェルド界面推定ステップである第5ステップS105の処理が実行される。二次ウェルド推定部150で二次ウェルド推定ステップである第6ステップS106の処理が実行される。
【0071】
上記の処理において、複数の仮想分割層Sのうち樹脂厚み方向Yの中心層Saにおける流速ベクトルVの経時的変化を導出し、この流速ベクトルVの経時的変化に基づいてウェルド界面3の流動先端部4の位置を推定することで、その推定精度を高めることが可能になる。例えば、樹脂流れ方向Xの樹脂移動量と樹脂厚み方向Yの流動層厚みとに基づいてウェルド界面3の形状を推定するのに比べて、ウェルド界面3の流動先端部4の位置を精度良く推定するのに有効である。そして、このときのウェルド界面3の流動先端部4の位置から二次ウェルドL2の位置を推定することができる。これにより、一次ウェルドL1と二次ウェルドL2との位置関係を可視化することができ、成形品Wの成形品質予測が可能になる。
【0072】
以上のごとく、上述の実施形態1によれば、成形品質の予測精度に優れた成形品質予測技術を提供することができる。
【0073】
実施形態1によれば、流速ベクトル導出部130による第4ステップS104で樹脂流れ方向Xの流速ベクトルVの経時的変化を導出することにより、第4ステップS104における処理を簡素化することができる。
【0074】
実施形態1によれば、二次曲線近似部160による第7ステップS107で、成形品Wの成形品質に特に関連性の高いウェルド界面3の形状を二次曲線で近似することによって、成形品Wの成形品質を精度良く推定することが可能になる。二次曲線で近似すれば、ウェルド界面3の流動先端部4の曲率を推定する場合に比べて、ウェルド界面3の広範囲を評価することが可能になる。
【0075】
以下、上述の実施形態1に関連する他の実施形態について図面を参照しつつ説明する。他の実施形態において、実施形態1の要素と同一の要素には同一の符号を付しており、当該同一の要素についての説明は省略する。
【0076】
(実施形態2)
実施形態2では、実施形態1の場合と同様の成形品質予測装置100(
図1を参照)が使用される。一方で、この実施形態2では、流速ベクトル導出部130が実行する流速ベクトル導出ステップの処理(
図3中の第4ステップS104に相当する処理)の詳細について、実施形態1のものと相違している。その他の構成及び方法は、実施形態1と同様である。
【0077】
図13~
図16を参照しながら、実施形態2において、流速ベクトル導出部130が実行する流速ベクトル導出ステップについて説明する。
【0078】
図13及び
図14に示されるように、3つの節点n1,n2,n3のそれぞれについて複数の仮想分割層Sのうち樹脂厚み方向Yの中心層Saにおける流速ベクトルの経時的変化を導出する。このときの流速ベクトルとして、樹脂流れ方向Xの流速ベクトルVを第1流速ベクトルVaと第2流速ベクトルVbとに分解したときの第2流速ベクトルVbが使用される。ここで、第1流速ベクトルVaは、一次ウェルドL1が延びる軸線方向の流速ベクトルである。これに対して、第2流速ベクトルVbは、一次ウェルドL1が延びる軸線方向と直交する直交方向X1の流速ベクトルである。
【0079】
流速ベクトル導出ステップでは、各仮想分割層Sの第2流速ベクトルVbに基づいて、中心層Saの第2流速ベクトルVbを導出する。先ず、複数の仮想分割層Sのうち表面側の仮想分割層Sの第2流速ベクトルVbを導出する。その後、仮想分割層Sの第2流速ベクトルVbを表面側から中心層Sa側に向けて逐次的に導出していく。その結果、中心層Saの第2流速ベクトルVbを導出することが可能になる。
【0080】
図13に示されるように、例えば、第1節点n1に対応した流動部2は、第2流速ベクトルVbにしたがって直交方向X1に経時的に流動し、その流動過程で第1位置P1に到達することが推定される。残りの第2節点n2及び第3節点n3についても同様である。このとき、第1節点n1に対応した第1位置P1の流動部2と、第2節点n2に対応した第1位置P1の流動部2と、第3節点n3に対応した第1位置P1の流動部2と、を通るライン(破線で示すライン)が、流動過程で中心層Saに形成される内部ウェルドL1’となる。
【0081】
このとき、樹脂流れ方向Xの流速ベクトルVに代えて直交方向X1の第2流速ベクトルVbを使用するため、この内部ウェルドL1’は、実施形態1の内部ウェルドL1’(
図4を参照)とは異なる位置に形成される。
【0082】
図15及び
図16に示されるように、内部ウェルドL1’上の複数の流動部2は、その後も第2流速ベクトルVbにしたがって直交方向X1に経時的に流動する。例えば、第1節点n1に対応した流動部2は、第1位置P1から第2流速ベクトルVbにしたがって直交方向X1に経時的に流動し、成形完了時の最終位置である第2位置P2に到達することが推定される。残りの第2節点n2及び第3節点n3についても同様である。
【0083】
なお、
図14及び
図16では、仮想分割層Sの数、即ち樹脂厚み方向Yの分割数が20であり、また、各仮想分割層Sの樹脂厚み方向Yの層幅が同一である場合について例示している。一方で、仮想分割層Sの数や各仮想分割層Sの樹脂厚み方向Yの層幅はこれに限定されるものではなく、必要に応じて適宜に変更することが可能である。
【0084】
また、
図15では、流動部2が第1位置P1を経て第2位置P2に至る二段階のステップで最終位置に到達する場合について例示したが、流動部2が三段階以上のステップで最終位置に到達するようにしてもよい。
【0085】
また、流速ベクトル導出ステップにおいて、流動部2の初期位置(一次ウェルドL1に対応した位置)における直交方向X1と、流動部2の第1位置P1における直交方向X1は、互いに一致していてもよいし、或いは互いに相違していてもよい。
【0086】
なお、特に図示しないものの、実施形態2において、ウェルド界面3の凸領域3aの形状をy=a×x2+bx+cなる二次曲線で近似する二次曲線近似ステップでは、直交方向X1の位置をx座標とし、樹脂厚み方向Yの位置をy座標とする。
【0087】
上述の実施形態2によれば、流速ベクトル導出ステップ(第4ステップS104)で第2流速ベクトルVbの経時的変化を導出することにより、成形品Wの成形完了までの実際の樹脂流の変化をリアルに反映させたシミュレーションが可能になる。これにより、二次ウェルド推定ステップ(第6ステップS106)で二次ウェルドL2の位置を推定する精度をより高めることができる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0088】
本発明は、上述の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の応用や変更が考えられる。例えば、上述の実施形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0089】
上述の実施形態では、二次ウェルドL2の位置を推定する処理(以下、「第1の処理」という。)と、ウェルド界面3の形状を二次曲線で近似する処理(以下、「第2の処理」という。)の両方を実行する場合について例示したが、これに代えて、第1の処理と第2の処理のいずれか一方のみを実行するようにしてもよい。
【0090】
上述の実施形態や種々の変更例の記載に鑑みた場合、本発明では以下のような態様1を採り得る。
【0091】
(態様1)
樹脂の射出成形により形成される成形品の品質予測を行うためのプログラムであって、
上記成形品の形状データに基づいてシェルメッシュの流動解析を行う流動解析処理と、
上記流動解析処理における流動解析結果に基づいて、2つの樹脂流の会合領域に形成される一次ウェルドに沿った複数の節点を抽出する節点抽出処理と、
上記成形品を樹脂厚み方向の複数の仮想分割層に分割し、上記節点抽出処理で抽出した上記複数の節点のそれぞれについて上記複数の仮想分割層のうち上記樹脂厚み方向の中心層における流速ベクトルの経時的変化を導出する流速ベクトル導出処理と、
上記流速ベクトル導出処理で導出した上記流速ベクトルの経時的変化に基づいて、上記成形品の成形完了時に上記樹脂厚み方向の断面に形成されるウェルド界面の流動先端部の位置を推定するウェルド界面推定処理と、
上記ウェルド界面推定処理で推定した上記ウェルド界面の上記流動先端部を上記複数の節点に対応するものについて繋いだラインを二次ウェルドと推定する二次ウェルド推定処理と、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【0092】
上述の態様1によれば、成形品質の予測精度に優れたプログラムを提供することが可能になる。
【符号の説明】
【0093】
3 ウェルド界面
4 流動先端部
100 成形品質予測装置
110 流動解析部
120 節点抽出部
130 流速ベクトル導出部
140 ウェルド界面推定部
150 二次ウェルド推定部
160 二次曲線近似部
170 成形品質予測部
D 形状データ
L1 一次ウェルド
L2 二次ウェルド
n1,n2,n3 節点
S 仮想分割層
Sa 中心層
V 樹脂流れ方向の流速ベクトル
Va 第1流速ベクトル
Vb 第2流速ベクトル
W 成形品
X 樹脂流れ方向
X1 一次ウェルドが延びる軸線方向と直交する直交方向
Y 樹脂厚み方向
S102 第2ステップ(流動解析ステップ)
S103 第3ステップ(節点抽出ステップ)
S104 第4ステップ(流速ベクトル導出ステップ)
S105 第5ステップ(ウェルド界面推定ステップ)
S106 第6ステップ(二次ウェルド推定ステップ)
S107 第7ステップ(二次曲線近似ステップ)
S108 第8ステップ(成形品質予測ステップ)