(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173929
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】キャリアテープ切断装置
(51)【国際特許分類】
B26D 3/08 20060101AFI20231130BHJP
B26B 27/00 20060101ALI20231130BHJP
B26D 1/02 20060101ALI20231130BHJP
B26D 7/20 20060101ALI20231130BHJP
H05K 13/02 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B26D3/08 Z
B26B27/00 Z
B26D1/02 D
B26D7/20
H05K13/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086494
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】木谷 実
(72)【発明者】
【氏名】礒端 美伯
(72)【発明者】
【氏名】高田 力
【テーマコード(参考)】
3C021
3C061
5E353
【Fターム(参考)】
3C021GA01
3C021GA02
3C021GA04
3C061AA02
3C061AA25
3C061EE28
5E353HH32
5E353HH34
5E353NN17
5E353QQ21
5E353QQ30
(57)【要約】
【課題】サイズが小さく簡易な構成でありながらベーステープを安定的に切断できるキャリアテープ切断装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本体部10は、枢結軸線13Jを中心に回動させて開閉操作が可能な第1ハンドル部11と第2ハンドル部12から成る。第1ハンドル部11にはキャリアテープCTが保持された状態でベーステープBTと対向する位置に刃を有するカッター17が設けられ、第2ハンドル部12には、第1ハンドル部11と第2ハンドル部12が閉じる方向に操作されるとキャリアテープCTに接触してキャリアテープCTをカッター17に押し付ける押付け部材19が設けられる。押付け部材19は、枢結軸線13Jとほぼ平行に延びる揺動軸線18Jを中心に揺動自在な状態で第2ハンドル部12に取り付けられており、キャリアテープCTの形状に倣うように揺動軸線18Jを中心に揺動しながらキャリアテープCTに接触する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品が収納されるベーステープにカバーテープが貼り付けられて成るキャリアテープから前記カバーテープを残して前記ベーステープを切断するキャリアテープ切断装置であって、
基端部同士が枢結されて枢結軸線を中心に開閉操作が可能な第1ハンドル部および第2ハンドル部から成る本体部と、
前記第1ハンドル部に設けられ、前記キャリアテープを保持するテープ保持部と、
前記第1ハンドル部に設けられ、前記テープ保持部に前記キャリアテープが保持された状態で前記ベーステープと対向する位置に刃を有するカッターと、
前記第2ハンドル部に設けられ、前記第1ハンドル部と前記第2ハンドル部が閉じる方向に操作されると前記テープ保持部に保持された前記キャリアテープに接触して前記ベーステープを前記カッターに押し付ける押付け部材と、
前記押付け部材によって前記カッターに押し付けられた前記ベーステープが前記カッターによって切断されたところで前記押付け部材による前記キャリアテープの前記カッターへの押し付けを規制する規制手段と、
を備え、
前記押付け部材は、前記枢結軸線とほぼ平行に延びる揺動軸線を中心に揺動自在な状態で前記第2ハンドル部に取り付けられている、キャリアテープ切断装置。
【請求項2】
前記キャリアテープが前記テープ保持部に保持された状態で前記第1ハンドル部と前記第2ハンドル部が閉じる方向に操作されると、前記押付け部材は前記キャリアテープの形状に倣うように前記揺動軸線を中心に揺動しながら前記キャリアテープに接触して前記ベーステープを前記カッターに押し付ける、請求項1に記載のキャリアテープ切断装置。
【請求項3】
前記規制手段は、前記押付け部材から突出して延びた2つの突起部と、前記第1ハンドル部に設けられ、前記第1ハンドル部と前記第2ハンドル部が閉じる方向に操作された場合に前記2つの突起部と当接する当接面と、から成り、前記2つの突起部は、前記当接面と当接した時点で前記キャリアテープを幅方向に挟む位置に位置する、請求項1に記載のキャリアテープ切断装置。
【請求項4】
前記キャリアテープは長手方向に沿って並んだ複数の送り孔を有し、前記テープ保持部は前記複数の送り孔のうちの一部が嵌入されることで前記キャリアテープを保持する複数の保持ピンを備えた、請求項1または2に記載のキャリアテープ切断装置。
【請求項5】
前記複数のピンは前記第1ハンドル部に対して位置調整することが可能な、請求項4に記載のキャリアテープ切断装置。
【請求項6】
前記カバーテープは前記キャリアテープの幅方向の一部の領域に貼り付けられており、前記押付け部材の一部に、前記キャリアテープのうち前記カバーテープが貼り付けられていない部分に接触する接触部材を備えた、請求項1または2に記載のキャリアテープ切断装置。
【請求項7】
前記接触部材は樹脂から成る、請求項6に記載のキャリアテープ切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品が収納されるベーステープにカバーテープが貼り付けられて成るキャリアテープからカバーテープを残してベーステープを切断するキャリアテープ切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板に部品を装着する部品装着装置における部品供給手段として、部品が収納されるベーステープにカバーテープが貼り付けられて成るキャリアテープを用いて部品を供給するテープフィーダが知られている。テープフィーダには種々の形態のものがあるが、その中には、ロード時のキャリアテープがカバーテープの先端がベーステープの先端よりも長い状態に加工される必要があるものがある(例えば下記の特許文献1)。
【0003】
キャリアテープのカバーテープの先端がベーステープの先端よりも長い状態とするためには、キャリアテープの先端部からベーステープの一部を切断して除去する加工が必要となる。特許文献2に示されるキャリアテープ切断装置はそのような加工をするための工具であり、リンクで連結された2つのレバー(第1の操作レバーと第2の操作レバー)を互いに近づける操作をすると、カッターとテープ押さえ部材が互いに平行な姿勢を維持した状態で接近し、テープ押さえ部材がキャリアテープをカッターに押し付けてベーステープを切断する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-125625号公報
【特許文献2】特開2021-122568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に示されるキャリアテープ切断装置はサイズが大きく、持ち運びが不便であるという難点がある。このような点を改善する方策として、基端部同士が枢結されて開閉操作が可能な2つのハンドル部の一方にカッターを設けるともに、2つのハンドルの他方に押付け部材を設け、2つのハンドル部を閉じる方向に操作してキャリアテープを挟むことで、押付け部材によってキャリアテープをカッターに押し付けるサイズが小さくて簡易な構成を採用することが考えられる。
【0006】
しかしながら、このような構成では、押付け部材は枢結軸線を中心とする円弧軌道で移動してキャリアテープに接触するため、キャリアテープは幅方向に均等な力で切断されず、ベーステープの一部が完全には切断されないなど、安定的な切断がなされないおそれがある。
【0007】
そこで本発明は、サイズが小さく簡易な構成でありながらベーステープを安定的に切断できるキャリアテープ切断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のキャリアテープ切断装置は、部品が収納されるベーステープにカバーテープが貼り付けられて成るキャリアテープから前記カバーテープを残して前記ベーステープを切断するキャリアテープ切断装置であって、基端部同士が枢結されて枢結軸線を中心に開閉操作が可能な第1ハンドル部および第2ハンドル部から成る本体部と、前記第1ハンドル部に設けられ、前記キャリアテープを保持するテープ保持部と、前記第1ハンドル部に設けられ、前記テープ保持部に前記キャリアテープが保持された状態で前記ベーステープと対向する位置に刃を有するカッターと、前記第2ハンドル部に設けられ、前記第1ハンドル部と前記第2ハンドル部が閉じる方向に操作されると前記テープ保持部に保持された前記キャリアテープに接触して前記ベーステープを前記カッターに押し付ける押付け部材と、前記押付け部材によって前記カッターに押し付けられた前記ベーステープが前記カッターによって切断されたところで前記押付け部材による前記キャリアテープの前記カッターへの押し付けを規制する規制手段と、を備え、前記押付け部材は、前記枢結軸線とほぼ平行に延びる揺動軸線を中心に揺動自在な状態で前記第2ハンドル部に取り付けられている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、サイズが小さく簡易な構成でありながらベーステープを安定的に切断できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施の形態におけるキャリアテープ切断装置の斜視図
【
図2】本発明の一実施の形態におけるキャリアテープ切断装置の斜視図
【
図3】本発明の一実施の形態におけるキャリアテープ切断装置による切断対象となるキャリアテープの斜視図
【
図4】(a)(b)本発明の一実施の形態におけるキャリアテープ切断装置の斜視図
【
図5】本発明の一実施の形態におけるキャリアテープ切断装置の一部の断面図
【
図6】本発明の一実施の形態におけるキャリアテープ切断装置の一部の拡大図
【
図7】本発明の一実施の形態におけるキャリアテープ切断装置が有する押付け部材の(a)斜視図(b)分解斜視図
【
図8】(a)(b)本発明の一実施の形態におけるキャリアテープ切断装置をキャリアテープとともに示す斜視図
【
図9】本発明の一実施の形態におけるキャリアテープ切断装置にキャリアテープをセットした状態を示す断面図
【
図10】(a)(b)(c)本発明の一実施の形態におけるキャリアテープ切断装置によるキャリアテープの切断動作を説明する図
【
図11】本発明の一実施の形態におけるキャリアテープ切断装置によりキャリアテープのベーステープを切断した状態を示す断面図
【
図12】本発明の一実施の形態におけるキャリアテープ切断装置によって(a)切断されている途中のキャリアテープの斜視図(b)切断された後のキャリアテープの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1および
図2は本発明の一実施の形態におけるキャリアテープ切断装置1を示している。キャリアテープ切断装置1の構成を説明する前に、先ず、キャリアテープ切断装置1が切断する対象とするキャリアテープCTについて説明する。
【0012】
キャリアテープCTは
図3に示すように、ベーステープBTとカバーテープTTを有して構成される。ベーステープBTには多数の部品収納用のポケットPKがベーステープBTの(すなわちキャリアテープCTの)長手方向に沿って一列に並んで設けられており、ポケットPKが並ぶ列と平行な位置には、複数の送り孔KHが一列に並んで設けられている。各ポケットPKには部品BHが1個ずつ収納されており、カバーテープTTはベーステープBTの上面の送り孔KHを塞がない位置に貼り付けられている。
【0013】
図3において、カバーテープTTは、ベーステープBT上のポケットPKの列に沿って(すなわちキャリアテープCTの長手方向に沿って)延びており、ベーステープBT上の、送り孔KHを覆うことなくポケットPKを覆う位置に貼り付けられている。すなわちカバーテープTTは、キャリアテープCTの幅方向の一部の領域(ポケットPKを覆る領域)にのみ貼り付けられた状態となっている。
【0014】
次に、キャリアテープ切断装置1について説明する。キャリアテープ切断装置1の本体部10は、
図1および
図2に示すように、第1ハンドル部11と第2ハンドル部12を備えている。第1ハンドル部11と第2ハンドル部12は長手方向の一端部同士が枢結軸13によって枢結されている。このため第1ハンドル部11と第2ハンドル部12は。枢結軸13の中心軸線である枢結軸線13Jを中心に回動させることで開閉操作することが可能である。
【0015】
図1および
図2において、第1ハンドル部11と第2ハンドル部12はそれぞれ幅方向の両端部から延びる一対のフランジFGを有しており、それぞれ断面形が溝状となっている。第1ハンドル部11と第2ハンドル部12が閉じる方向(互いに接近する方向)に操作された状態では(
図4(a),(b))、第2ハンドル部12の一対のフランジFGは、第1ハンドル部11の一対のフランジFGの外側に位置する。第1ハンドル部11が備える一方のフランジFGには、上縁側が切り欠かれた形状の切欠き部11Kが形成されている(
図1および
図4(a))。
【0016】
図1および
図2において、第1ハンドル部11には、保持部ベース14、テープ保持部15、カッター押さえ部材16およびカッター17が設けられている。保持部ベース14はブロック状の部材から成り、上面(第2ハンドル部12側に向く面)の一部は平らな当接面14Mとなっている。保持部ベース14の当接面14Mとは異なる箇所には、2つのガイド突起14Pがそれぞれ上方に延びて設けられている。
【0017】
テープ保持部15は矩形の板状部材から成る。テープ保持部15の上面には、上方に突出した2つの保持ピン15Pが第1ハンドル部11の幅方向に並んで設けられている。2つの保持ピン15Pの間隔は、キャリアテープCT上に並ぶ2つの送り孔KHの間隔と一致している。ここでいう「2つの送り孔KHの間隔」は、隣り合って並ぶ2つの送り孔KHの間隔でなくてもよく、複数個おきに並ぶ2つの送り孔KHの間隔であってもよい。
【0018】
図1および
図2において、テープ保持部15には、第1ハンドル部11の幅方向に延びた長孔15Hとこれと同方向に延びた長孔状のガイド溝15Mが設けられている。保持部ベース14の上面には固定ボルト15Nが螺設されている。固定ボルト15Nは長孔15Hを上方から貫通している。ガイド溝15M内には保持部ベース14に設けられた前述の2つのガイド突起14Pが下方から入り込んでいる。
【0019】
テープ保持部15はガイド溝15Mを2つのガイド突起14Pに対してスライドさせることで第1ハンドル部11の幅方向に移動させることができ、固定ボルト15Nを保持部ベース14にねじ込んでいくことで、固定ボルト15Nでテープ保持部15を保持部ベース14に固定することが可能である。保持部ベース14に対するテープ保持部15の位置(第1ハンドル部11の幅方向の位置)を変更する場合には、固定ボルト15Nを一旦緩めてテープ保持部15を移動させ、そのうえで固定ボルト15Nを再度ねじ込むようにする。
【0020】
このように本実施の形態において、テープ保持部15が備える複数の保持ピン15Pは、第1ハンドル部11に対して位置調整することが可能になっている。
【0021】
図1および
図2において、カッター押さえ部材16は、保持部ベース14の側面(切欠き11Kが設けられている側の側面)に、第1ハンドル部11の長手方向に沿って2つ並んで設けられている。各カッター押さえ部材16はここでは
図5(
図5は
図1における矢視V1-V1断面図)に示すように螺子部材から成り、雄螺子部16Sが保持部ベース14の側面に形成された雌螺子部14Sに螺入されている。これら2つのカッター押さえ部材16はそれぞれ、第1ハンドル部11フランジFGに形成された挿入孔11S(
図2および
図4(b)も参照)から工具(例えばスクリュードライバ)を挿入してねじり操作(螺子を締め付けたり緩めたりする操作)を行うことができる。
【0022】
カッター17は、例えば市販のカッターの交換刃から成る。
図1、
図2、
図5および
図6に示すように、カッター17は刃17Hを上方(第2ハンドル部12に向く側)に向けており、第1ハンドル部11の長手方向に延びた姿勢で保持部ベース14の側面に取り付けられている。
【0023】
保持部ベース14に対するカッター17の取り付けは、2つのカッター押さえ部材16を保持部ベース14の側面に締め付け、保持部ベース14の側面とカッター押さえ部材16の頭部に形成されたフランジ部16C(
図5)との間にカッター17を挟み込むことによって行われる。このときカッター17は、
図5に示すように、峰側(刃17Hとは反対側であり、
図5では下側)の縁が、2つのカッター押さえ部材16それぞれに設けられた首部16Nの上縁に当接されることによって、高さ方向の位置決めがなされる。なお、上記「首部16N」とは、
図5に示すように、カッター押さえ部材16の雄螺子部16Sの付け根の位置に形成された円筒状の部分をいう。
【0024】
図1および
図2において、第2ハンドル部12には揺動軸18が取り付けられている。揺動軸18は第2ハンドル部12が有する一対のフランジFGによって両端部が支持されており、第2ハンドル部12の幅方向に延びている。従って揺動軸18の中心軸線である揺動軸線18Jは、枢結軸13の中心軸線である枢結軸線13Jと平行になっている。
【0025】
図1および
図2において、第2ハンドル部12には押付け部材19が取り付けられている。押付け部材19は第2ハンドル部12の長手方向に沿って延びた形状を有しており、揺動軸18によって中間部が支持されている。すなわち本実施の形態において、押付け部材19は、枢結軸線13Jとほぼ平行に延びる揺動軸線18Jを中心に揺動自在な状態で第2ハンドル部12に取り付けられた状態となっている。
【0026】
押付け部材19の下面(第1ハンドル部11側に向く面)は平面形状であり、後述するようにテープ保持部15に保持されたキャリアテープCTの上面(カバーテープTTが貼り付けられている側の面)に接触してキャリアテープCTの下面側(ベーステープBT)をカッター17の刃17Hに押し付ける。以下、この面を「押付け面19M」と称する(
図1および
図2)。
【0027】
押付け部材19には下方(第1ハンドル部11に向く側)に突出して延びた2つの突起部としてのピン部材21が設けられている。
図1および
図2に示すように、2つのピン部材21は押付け部材19の長手方向に並んでおり、揺動軸18を間に挟み、かつ、
図3に示すように、端部(下端部)が当接面14Mに当接した時点で、テープ保持部15に保持されたキャリアテープCTを幅方向に挟む位置に設けられている。
【0028】
ここで、
図7(a),(b)に示すように、押付け部材19の両端部それぞれにはピン挿入孔19Hが形成されている。各ピン挿入孔19Hは押付け部材19の端部から延びるスリット19Sと連通している。押付け部材19の両端部それぞれにおいてスリット19Sを形成している2つの部分(揺動軸18の延びる方向に対向している2つの部分)のそれぞれには、一方側の側面から他方側の側面に貫通して延びた貫通孔19Kが設けられており、そのうちの一方の内面には雌螺子19Jが形成されている。
【0029】
図7(a),(b)において、押付け部材19の両端部それぞれの2つの貫通孔19Kには雄螺子19bが形成されたピン固定螺子19Nが取り付けられている。ピン固定螺子19Nは貫通孔19Kが形成された上記2つの部分のうち、雌螺子19Jが形成されていない側から挿入される。そして、雄螺子19bと雌螺子19Jが螺合するようにねじ込まれていくと、スリット19Sの間隔が狭まり、ピン挿入孔19Hの内径が小さくなっていく。このためピン挿入孔19Hにピン部材21が挿入された状態でピン固定螺子19Nをねじ込んでいくことで、ピン部材21をピン挿入孔19H内に(すなわち押付け部材19に)固定することができる。
【0030】
2つのピン部材21はそれぞれ、ピン固定螺子19Nを締め付ける際の押付け面19Mからの突出量を調整することで、それぞれの端部(ピン部材21の端部)から押付け面19Mまでの高さHT(
図6)を所望の値に設定することができる。本実施の形態では、2つのピン部材21は、押付け部19(詳細には押付け面19M)とカッター17の刃17Hとの間の距離D(
図6)がカバーテープTTの厚み相当の距離になったときに当接面14Mに当接するようにその高さHTが調節されている。
【0031】
図2において、押付け部材19のフランジFG側の側面に第2ハンドル部12の長手方向に並んで位置する上述の2つのピン固定螺子19Nはそれぞれ、フランジFGに形成された2つの円孔12H内に位置している。このため押付け部材19は2つのピン固定螺子19Nの端部がそれぞれ円孔12H内で移動できる範囲で揺動することが可能である。なお、2つの円孔12Hはそれぞれ、スクリュードライバー等の工具によってピン固定螺子19Nを操作する際の工具の挿入孔でもある。
【0032】
このような構成のキャリアテープ切断装置1によってキャリアテープCTのベーステープBTを切断する場合には、先ず、第1ハンドル部11と第2ハンドル部12を開いた状態にする(
図1および
図2)。そして、カバーテープTTを上にしたキャリアテープCTを第1ハンドル部11に設けられたテープ保持部15に保持させることによってキャリアテープCTを第1ハンドル部11にセットする。
【0033】
キャリアテープCTをテープ保持部15に保持させるには、キャリアテープCTを第1ハンドル部11の長手方向に対してほぼ直交して延びた姿勢にし、第1ハンドル部11の切欠き部11K内に位置させたうえで、キャリアテープCTが備える2つの送り孔KHをテープ保持部15が備える2つの保持ピン15Pに上方から嵌入させる(
図8(a))。これによりキャリアテープCTのベーステープBTはカッター17の上方に位置し、カッター17の刃17HはベーステープBTと接触した状態(あるいはほぼ接触した状態)となる(
図9。
図9は
図8(a)における矢視V2-V2断面図)。
【0034】
このように本実施の形態において、キャリアテープCTは長手方向に沿って並んだ複数の送り孔KHを有し、テープ保持部15は複数の送り孔KHの内の一部が嵌入されることでキャリアテープCTを保持する複数の保持ピン15Pを備えた構成となっている。また、本実施の形態においてカッター17は、第1ハンドル部11に設けられ、テープ保持部15によってキャリアテープCTが保持された状態でキャリアテープCTのベーステープBTと対向する位置に刃17Hを有するものとなっている。
【0035】
第1ハンドル部11にセットしたキャリアテープCTのカッター17からの突出長さL(
図9)は、キャリアテープ切断装置1によってベーステープBTを切断した場合に得ようとするカバーテープTTのベーステープBTからの突出長さと一致するようにする。カバーテープTTの突出長さの調整は、保持ピン15Pに嵌入させる送り孔KHを変更することによって行う。また、カバーテープTTの切断位置は、保持部ベース14に対するテープ保持部15の固定位置を変更することで調整できる。
【0036】
上記の手順によって第1ハンドル部11にキャリアテープCTをセットしたら、第2ハンドル部12を枢結軸線13Jまわりに回動させて(
図8(a)中に示す矢印A)、第1ハンドル部11と第2ハンドル部12を閉じる方向に操作する(
図8(a)→
図8(b))。これにより第2ハンドル部12に設けられた押付け部材19は、第1ハンドル部11に設けられたカッター17の刃17Hに近づいていく。
【0037】
カッター17の刃17Hに近づいた押付け部材19の押付け面19Mは、キャリアテープCTの上面(カバーテープTTが貼り付けられている側の面)に接触する。このとき押付け部材19は、枢結軸線13Jを中心とする円弧軌道で移動してその一部をキャリアテープCTに接触させるが(
図10(a))、一部を接触させた後はキャリアテープCTの上面の形状に倣うように揺動軸線18Jを中心に揺動しながら(
図10(b)中に示す矢印B)、押付け面19MをキャリアテープCTの上面の幅方向の全体に接触させる(
図10(b))。そして、その状態でベーステープBTをカッター17の刃17Hに押し付けていく(
図10(b)→
図10(c))。このときベーステープBTは、幅方向に均等な力でカッター17に押し付けられる。
【0038】
このように本実施の形態において、押付け部材19は、枢結軸線13Jとほぼ平行に延びる揺動軸線18Jを中心に揺動自在な状態で第2ハンドル部12に取り付けられ、第1ハンドル部11と第2ハンドル部12が閉じる方向に操作されるとテープ保持部15に保持されたキャリアテープCTに接触してベーステープBTをカッター17に押し付けるようになっている。
【0039】
押付け部材19は上記のようにしてベーステープBTをカッター17に押し付けていくが、2つのピン部材21の端部(下端部)が当接面14Mに当接したところでそれ以上はカッター17に近づくことができず、ベーステープBTをカッター17に押し付けることができなくなる。前述したように、2つのピン部材21は、押付け面19Mとカッター17の刃17Hとの間の距離DがカバーテープTTの厚み相当の距離になったときに当接面14Mに当接するようにその高さHTが調節されているので、2つのピン部材21が当接面14Mに当接した(押付け部材19がカッター17に近づくことができなくなった)時点において、キャリアテープCTはカバーテープTTを残してベーステープBTが切断された状態となる(
図10(c)、
図11および
図12(a))。
【0040】
このように本実施の形態において、押付け部材19に設けられた2つのピン部材21と、第1ハンドル部11に設けられた保持部ベース14の上面から成る当接面14Mは、押付け部材19によってカッター17に押し付けられたキャリアテープCTのベーステープBTがカッター17によって切断された時点で押付け部材19によるキャリアテープCTのカッター17への押し付けを規制する規制手段となっている。
【0041】
上記のようにしてベーステープBTは押付け部材19によってカッター17に押し付けられて切断されるが、この際、押付け部材19はキャリアテープCTの形状に倣うように揺動軸線18Jを中心に揺動しながらキャリアテープCTに接触してベーステープBTをカッター17に押し付ける。このためキャリアテープCTはその全体が幅方向に均等な力でカッター17の刃17Hに押し付けられ、ベーステープBTは極めて安定的に切断される。
【0042】
ところで、前述したように、キャリアテープCTのカバーテープTTはキャリアテープCTの幅方向の一部の領域に貼り付けられているため、押付け部材19の押付け面19Mには、カバーテープTTとは直接接触しない部分が生じる。このため、カバーテープTTが貼り付けられていない領域においては、押付け部材19がベーステープBTをカッター17に押し付ける力が不足し、ベーステープBTを完全には切断できないおそれがある。この対策として、本実施の形態では、
図1、
図2および
図8(a)に示すように、押付け面19Mのうち、カバーテープTTと直接接触しない部分に接触部材22が設けられている。
【0043】
接触部材22は、押付け部材19がキャリアテープCTの上面(カバーテープTTが貼り付けられている側の面)に接触した状態で、カバーテープTTが貼り付けられていない領域に接触する部材であり、押付け部材19がキャリアテープCTの上面に接触した状態で、押付け面19MとキャリアテープCTの上面との間の隙間を埋める役割を果たす(
図10(a)→
図10(b))。このため接触部材22は、少なくともカバーテープTTの厚みの相当する高さを有しており、弾性材料(例えば樹脂)から構成されている。押付け部材19に接触部材22が設けられることで、キャリアテープCTの幅方向の全域をカッター17に押し付けることができる(
図10(c))。これにより、ベーステープBTのみを確実に切断することができる。
【0044】
上記のようにしてベーステープBTが切断されたら、第1ハンドル部11と第2ハンドル部12を互いに離間する方向(開き方向)に操作したうえで(
図8(b)→
図8(a))、キャリアテープCTをテープ保持部15から取り外す。そして、テープ保持部15から取り外したキャリアテープCTから、切断されたベーステープBTの先端部分BTS(
図12(a),(b))を取り除く。これにより、ベーステープBTの先端からカバーテープTTの先端TTSが突出するように加工されたキャリアテープCTが得られる(
図12(b))。
【0045】
以上説明したように、本実施の形態におけるキャリアテープ切断装置1は、枢結軸線13Jを中心に回動させて開閉操作が可能な第1ハンドル部11および第2ハンドル部12から成るサイズが小さく簡易な構成の本体部10をベースにしており、第1ハンドル部11にはカッター17が設けられ、第2ハンドル部12には押付け部材19が設けられている。押付け部材19は枢結軸線13Jとほぼ平行に延びる揺動軸線18Jを中心に揺動自在な状態で第2ハンドル部12に取り付けられている。このため、押付け部材19の一部がキャリアテープCTに接触すると、押付け部材19はキャリアテープCTの形状に倣うように揺動軸線18Jを中心に揺動し、キャリアテープCTを幅方向に均等な力でカッター17に押し付けるので、ベーステープBTは安定的に切断される。このように本実施の形態におけるキャリアテープ切断装置1によれば、サイズが小さく簡易な構成でありながらベーステープBTを安定的に切断できる。
【0046】
これまで本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上述したものに限定されず、種々の変形等が可能である。例えば、上述の実施の形態では、規制手段は押付け部材19に設けられた2つの突起部としてのピン部材21と、第1ハンドル部11に設けられて2つのピン部材21と当接する当接面14Mとから成る構成であったが、規制手段は、押付け部材19によってカッター17に押し付けられたキャリアテープCTのベーステープBTがカッター17によって切断されたところで押付け部材19によるキャリアテープCTのカッター17への押し付けを規制するものであればよい。従って、2つの突起部が第1ハンドル部11側に設けられており、これと当接する当接面が押付け部材19側に設けられているのであってもよい。
【0047】
また、テープ保持部15は第1ハンドル部11に対してほぼ直交して延びる姿勢となるようにキャリアテープCTを保持するものであればよく、上述の実施の形態に示したような、キャリアテープCTの送り孔KHの列を構成する複数の送り孔KHに嵌入される複数の保持ピン15Pを備えた構成に限定されるわけではない。
【産業上の利用可能性】
【0048】
サイズが小さく簡易な構成でありながらベーステープを安定的に切断できるキャリアテープ切断装置を提供する。
【符号の説明】
【0049】
1 キャリアテープ切断装置
10 本体部
11 第1ハンドル部
12 第2ハンドル部
13 枢結軸
13J 枢結軸線
14 保持部ベース
14M 当接面(規制手段)
14P ガイド突起
15 テープ保持部
15P 保持ピン
16 カッター押さえ部材
17 カッター
17H 刃
18 揺動軸
18J 揺動軸線
19 押付け部材
19M 押付け面
21 ピン部材(突起部)(規制手段)
22 接触部材
CT キャリアテープ
KH 送り孔
BT ベーステープ
TT カバーテープ
BH 部品