(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173936
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】光源装置
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20231130BHJP
H05G 2/00 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
G03F7/20 503
H05G2/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086505
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺本 雄介
(72)【発明者】
【氏名】浦上 英之
(72)【発明者】
【氏名】藪田 泰伸
【テーマコード(参考)】
2H197
4C092
【Fターム(参考)】
2H197CA10
2H197GA01
2H197GA04
2H197GA24
4C092AA05
4C092AA15
4C092AB19
(57)【要約】
【課題】デブリの固化に起因する電極ハウジングとチャンバとの間の短絡を抑制する。
【解決手段】本発明の一形態に係る光源装置は、光源ユニットと、チャンバと、遮蔽部材とを具備する。前記光源ユニットは、円盤状の第1の放電電極と、前記第1の放電電極を収容する第1の電極ハウジングと、円盤状の第2の放電電極と、前記第2の放電電極を収容する第2の電極ハウジングとを有し、前記第1の放電電極と前記第2の放電電極との間の放電領域に導電性の液体原料のプラズマを発生させることで所定波長の光を放出させる。前記チャンバは、前記第1の電極ハウジングおよび前記第2の電極ハウジングを収容し、前記光源ユニットを固定する第1の側壁部を有する。前記遮蔽部材は、前記第1の側壁部の内壁面に設置され、前記光源ユニットと前記第1の側壁部との間に形成された間隙部の少なくとも一部を遮蔽する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円盤状の第1の放電電極と、前記第1の放電電極を収容する第1の電極ハウジングと、円盤状の第2の放電電極と、前記第2の放電電極を収容する第2の電極ハウジングとを有し、前記第1の放電電極と前記第2の放電電極との間の放電領域に導電性の液体原料のプラズマを発生させることで所定波長の光を放出させる光源ユニットと、
前記第1の電極ハウジングおよび前記第2の電極ハウジングを収容し、前記光源ユニットを固定する第1の側壁部を有するチャンバと、
前記第1の側壁部の内壁面に設置され、前記光源ユニットと前記第1の側壁部との間に形成された間隙部の少なくとも一部を遮蔽する遮蔽部材と
を具備する光源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光源装置であって、
前記第2の電極ハウジングおよび前記チャンバは、グランド電位に接続され、
前記第1の電極ハウジングは、前記第2の電極ハウジングよりも高電位または低電位の電圧供給源に接続され、
前記遮蔽部材は、少なくとも、前記第1の電極ハウジングと前記第1の側壁部との間に形成された間隙部の一部を遮蔽する
光源装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光源装置であって、
前記第1の側壁部は、前記第1の電極ハウジングおよび前記第2の電極ハウジングを前記チャンバの内部に配置するための貫通孔を有し、
前記間隙部は、前記第1の電極ハウジングおよび前記第2の電極ハウジングと前記貫通孔の内周面との間に形成される
光源装置。
【請求項4】
請求項3に記載の光源装置であって、
前記光源ユニットは、前記第1の側壁部の外壁面に取り付けられ前記第1の電極ハウジングおよび前記第2の電極ハウジングを共通にまたは個別に支持するユニット基板をさらに有し、
前記光源ユニットは、前記ユニット基板を介して第1の側壁部に固定される
光源装置。
【請求項5】
請求項3に記載の光源装置であって、
前記第1の側壁部は、前記第1の側壁部の内壁面に設けられ前記貫通孔の上縁周縁部から前記チャンバの内部に向かって突出する突出部をさらに有し、
前記遮蔽部材は、前記突出部と前記第1の電極ハウジングとの間を遮蔽する
光源装置。
【請求項6】
請求項3に記載の光源装置であって、
前記光源ユニットは、
前記第1の電極ハウジングに収容され、前記第1の放電電極の周縁部に前記液体原料を供給する第1の材料供給部と、
前記第2の電極ハウジングに収容され、前記第2の放電電極の周縁部に前記液体原料を供給する第2の材料供給部と、
前記第1の支持部材を貫通し前記第1の放電電極を回転させる回転軸を有する第1のモータと、
前記第2の支持部材を貫通し前記第2の放電電極を回転させる回転軸を有する第2のモータと、をさらに有する
光源装置。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の光源装置であって、
前記チャンバは、前記第1の電極ハウジングおよび前記第2の電極ハウジングを収容するチャンバ本体をさらに有し、前記第1の側壁部は、前記チャンバ本体に着脱可能に取り付けられる
光源装置。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の光源装置であって、
前記遮蔽部材に付着し前記遮蔽部材から落下する前記液体原料を収容する回収容器と、
前記遮蔽部材からの前記液体原料の落下経路上に配置され、前記液体原料を前記回収容器へ導く受け板部材と、をさらに具備する
光源装置。
【請求項9】
請求項8に記載の光源装置であって、
前記遮蔽部材は、前記遮蔽部材に付着した前記液体原料を前記受け板部材へ向けて落下させる離脱部と、前記液体原料を前記離脱部へ導くガイド部とを有する板部材であり、
前記ガイド部は、前記遮蔽部材の下面を含む
光源装置。
【請求項10】
請求項9に記載の光源装置であって、
前記ガイド部は、前記離脱部へ向かう傾斜面で形成される
光源装置。
【請求項11】
請求項9に記載の光源装置であって、
前記離脱部は、前記遮蔽部材の下面に設けられた角部である
光源装置。
【請求項12】
請求項9に記載の光源装置であって、
前記液体原料を気化させるエネルギービームを前記放電領域へ照射するエネルギービーム照射源をさらに具備し、
前記離脱部は、前記落下経路と前記放電領域への前記エネルギービームの入射経路とが交わらない位置に設けられる
光源装置。
【請求項13】
請求項8に記載の光源装置であって、
前記第1の電極ハウジングおよび前記第2の電極ハウジングは、前記第1の電極ハウジングおよび前記第2の電極ハウジング各々の内壁面に付着した前記液体原料を前記受け板部材へ向けて排出する排出口をそれぞれ有する
光源装置。
【請求項14】
請求項1又は2に記載の光源装置であって、
前記チャンバは、前記プラズマから放出される光が通過する窓部を有する第2の側壁部をさらに有し、
前記光源装置は、前記プラズマから放出され前記窓部を通過するデブリを捕捉するホイルトラップをさらに具備する
光源装置。
【請求項15】
請求項1又は2に記載の光源装置であって、
前記所定波長の光は、極端紫外光である
光源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば極端紫外光の光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路の微細化および高集積化につれて、露光用光源の短波長化が進められている。次世代の半導体露光用光源としては、特に、波長13.5nmの極端紫外光(以下、「EUV(Extreme Ultra Violet)光」とも言う)を放射する極端紫外光光源装置(以下、「EUV光源装置」とも言う)の開発が進められている。
【0003】
EUV光源装置において、EUV光(EUV放射)を発生させる方法はいくつか知られている。それらの方法のうちの一つに極端紫外光放射種(以下、EUV放射種とも言う)を加熱して励起することによりプラズマを発生させ、プラズマからEUV光を取り出す方法がある。このような方法を採用するEUV光源装置は、プラズマの生成方式により、LPP(Laser Produced Plasma:レーザ生成プラズマ)方式と、DPP(Discharge Produced Plasma:放電生成プラズマ)方式とに分けられる。
【0004】
DPP方式のEUV光源装置は、EUV放射種(気相のプラズマ原料)を含む放電ガスが供給された電極間に高電圧を印加して、放電により高密度プラズマを生成し、そこから放射される極端紫外光を利用する。DPP方式としては、例えば、特許文献1に記載されているように、放電を発生させる電極表面にEUV放射種を含む液体状のプラズマ原料(例えば、スズ(Sn)またはリチウム(Li)等)を供給し、当該原料に対してレーザビーム等のエネルギービームを照射して当該原料を気化し、その後、放電によってプラズマを生成する方法が提案されている。このような方式は、LDP(Laser Assisted Gas Discharge Produced Plasma)方式と称されることもある。
一方、LPP方式のEUV光源装置は、レーザ光をターゲット材料に照射し、当該ターゲット材料を励起させてプラズマを生成する。
【0005】
EUV光源装置は、半導体デバイス製造における半導体露光装置(リソグラフィ装置)の光源装置として使用される。あるいは、EUV光源装置は、リソグラフィに使用されるマスクの検査装置の光源装置として使用される。すなわち、EUV光源装置は、EUV光を利用する他の光学系装置(利用装置)の光源装置として使用される。EUV光は大気中では著しく減衰するので、プラズマから利用装置までのEUV光が通過する空間領域は、EUV光の減衰を抑制するために減圧雰囲気、つまり真空環境に維持されたチャンバ(筐体)の内部に形成される。
【0006】
一方、EUV光源装置においては、プラズマからはデブリが高速で放散される。デブリは、プラズマ原料の粒子(プラズマ原料がスズの場合は、スズ粒子)を含む。また、DPP方式またはLDP方式でプラズマが生成される場合、デブリは、プラズマの発生に伴いスパッタリングされる放電電極の材料粒子も含むことがある。デブリは、利用装置に到達すると、利用装置内の光学素子の反射膜を損傷または汚染させ、その性能を低下させることがある。そのため、デブリが利用装置に侵入しないように、放散されたデブリを捕捉するデブリ低減装置(DMT(Debris Mitigation Tool)とも言う)が提案されている。
【0007】
LDP方式のEUV光源装置においては、放電領域に生成されるプラズマからデブリがあらゆる方向に飛散する。利用装置側に飛散するデブリは、上述したデブリ低減装置により捕捉されるが、それ以外の方向に進行するデブリは、そのままだとEUV光源装置内部に付着する。このようなデブリの内部付着を抑制するために、例えば特許文献2には、放電電極を収容する電極ハウジングを備えた光源装置が開示されている。
【0008】
上述したEUV光源装置内部に付着する可能性のあるデブリの大部分は、電極ハウジング内部にて捕集される。また、放電領域に供給されるプラズマ原料(スズ)の一部が漏出することがある。このような漏出原料は、プラズマ発生に寄与しないため廃原料となり、電極ハウジング内部にて捕集される。
【0009】
電極ハウジングは、プラズマの近傍に配置されるので、プラズマからのEUV等の放射により、デブリ(スズ)および廃材料(スズ)の融点以上に加熱される。よって、電極ハウジング内面に付着したデブリおよび廃材料は固化することなく液体状態に維持される。電極ハウジング内面に付着したデブリおよび廃材料は、重力により電極ハウジング下部に集まり、電極ハウジング下部に設けられた排出口より外部に排出され、重力方向に落下する。
【0010】
重力方向に落下したデブリおよび廃材料は、受け板部材により受け取られ、この受け板部材を介してデブリ収容容器(プラズマ原料がスズの場合は、スズ回収容器(Tin Dump))に溜められる。デブリ収容容器には、当該デブリ収容容器をプラズマ原料の融点以上に加熱する加熱部が設けられている。すなわち、デブリ収容容器によって受け止められた廃原料は直ちに溶融され、液化した状態でデブリ収容容器に溜まる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2017-219698号公報
【特許文献2】US2015/0090907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記したように、デブリにはプラズマ原料の粒子(プラズマ原料がスズの場合は、スズ粒子)が含まれる。デブリであるプラズマ原料の粒子の少なくとも一部は、放電電極や電極ハウジングが設置される空間に気相状態で存在する。プラズマを生成してEUVを放射させる動作が継続中の場合、電極ハウジングはプラズマによりデブリ(スズ)の融点以上に加熱される。このため、電極ハウジングに進入した気相状態のデブリ(スズ)が当該電極ハウジングの内部表面に接触して液化したとしても、そのまま液体状態が維持され、電極ハウジング下部に設けられた排出口より外部に排出される。
【0013】
一方、電極ハウジング外に浮遊する気相状態のデブリ(スズ)の一部は、電極ハウジングを支持するチャンバの内壁面や電極ハウジングの外表面と接触して液化する。特に、比較的温度が低いチャンバの内壁面では、液化したデブリがそのまま固化する。電極ハウジングに近接するチャンバの内壁面領域においては、当該内壁面領域に付着し固化したデブリ(スズ)が電極ハウジングの外表面と接触することで、電気的な短絡を生じさせる場合がある。特に、高電圧が印加される放電電極を内包する電極ハウジングは、当該電極と電気的に接続されているので、上記電極ハウジングにも高電圧が印加される。よって、高電圧が印加される電極ハウジングとこれに近接するチャンバの内壁面領域との間に上記短絡が発生すると、短絡箇所に大電流が流れてしまい、EUV光源装置の故障が発生する。
【0014】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、デブリの固化に起因する電極ハウジングとチャンバとの間の短絡の発生を抑制することができる光源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一形態に係る光源装置は、光源ユニットと、チャンバと、遮蔽部材とを具備する。
前記光源ユニットは、円盤状の第1の放電電極と、前記第1の放電電極を収容する第1の電極ハウジングと、円盤状の第2の放電電極と、前記第2の放電電極を収容する第2の電極ハウジングとを有し、前記第1の放電電極と前記第2の放電電極との間の放電領域に導電性の液体原料のプラズマを発生させることで所定波長の光を放出させる。
前記チャンバは、前記第1の電極ハウジングおよび前記第2の電極ハウジングを収容し、前記光源ユニットを固定する第1の側壁部を有する。
前記遮蔽部材は、前記第1の側壁部の内壁面に設置され、前記光源ユニットと前記第1の側壁部との間に形成された間隙部の少なくとも一部を遮蔽する。
【0016】
上記光源装置において、遮蔽部材は、電極ハウジング外に浮遊する気相状態のデブリがチャンバの第1の側壁部と光源ユニットとの間に形成された間隙部へ進入することを抑制する。これにより、上記間隙部へ進入したデブリに起因する電極ハウジングとチャンバとの間の短絡の発生を抑制することができる。
【0017】
前記第2の電極ハウジングおよび前記チャンバは、グランド電位に接続され、前記第1の電極ハウジングは、前記第2の電極ハウジングよりも高電位または低電位の電圧供給源に接続されてもよい。この場合、前記遮蔽部材は、少なくとも、前記第1の電極ハウジングと前記第1の側壁部との間に形成された間隙部の一部を遮蔽する。
これにより、高電圧が印加される第1の電極ハウジングとグランド電位に接続されるチャンバとの間におけるデブリに起因する短絡を抑制することができる。
【0018】
前記第1の側壁部は、前記第1の電極ハウジングおよび前記第2の電極ハウジングを前記チャンバの内部に配置するための貫通孔を有してもよい。この場合、前記間隙部は、前記第1の電極ハウジングおよび前記第2の電極ハウジングと前記貫通孔の内周面との間に形成される。
【0019】
前記光源ユニットは、ユニット基板をさらに有してもよい。前記ユニット基板は、前記第1の側壁部の外壁面に取り付けられ、前記第1の電極ハウジングおよび前記第2の電極ハウジングを共通にまたは個別に支持する。この場合、前記光源ユニットは、前記ユニット基板を介して第1の側壁部に固定される。
【0020】
前記第1の側壁部は、前記第1の側壁部の内壁面に設けられ前記貫通孔の上縁周縁部から前記チャンバの内部に向かって突出する突出部をさらに有してもよい。この場合、前記遮蔽部材は、前記突出部と前記第1の電極ハウジングとの間を遮蔽する。
【0021】
前記光源ユニットは、第1の材料供給部と、第2の材料供給部と、第1のモータと、第2のモータとをさらに有してもよい。前記第1の材料供給部は、前記第1の電極ハウジングに収容され、前記第1の放電電極の周縁部に前記液体原料を供給する。前記第2の材料供給部は、前記第2の電極ハウジングに収容され、前記第2の放電電極の周縁部に前記液体原料を供給する。前記第1のモータは、前記第1の支持部材を貫通し前記第1の放電電極を回転させる回転軸を有する。前記第2のモータは、前記第2の支持部材を貫通し前記第2の放電電極を回転させる回転軸を有する。
【0022】
前記チャンバは、前記第1の電極ハウジングおよび前記第2の電極ハウジングを収容するチャンバ本体をさらに有し、前記第1の側壁部は前記チャンバ本体に着脱可能に取り付けられてもよい。
これにより、チャンバ本体への光源ユニットおよび遮蔽部材の設置を容易に行うことができる。
【0023】
前記光源装置は、回収容器と、受け板部材とをさらに具備してもよい。前記回収容器は、前記遮蔽部材に付着し前記遮蔽部材から落下する前記液体原料を収容する。前記受け板部材は、前記遮蔽部材からの前記液体原料の落下経路上に配置され、前記液体原料を前記回収容器へ導く。
これによりデブリの回収が容易となるとともに、チャンバの底部がデブリの落下物で汚染されることを防止できる。
【0024】
前記遮蔽部材は、前記遮蔽部材に付着した前記液体原料を前記受け板部材へ向けて落下させる離脱部と、前記液体原料を前記離脱部へ導くガイド部とを有する板部材であり、前記ガイド部は、前記遮蔽部材の下面を含んでもよい。
【0025】
前記ガイド部は、前記離脱部へ向かって下向きに形成されてもよい。
これによりデブリの自重を利用して遮蔽部材に付着したデブリを離脱部へ導くことができる。
【0026】
前記離脱部は、前記遮蔽部材の下面に設けられた角部であってもよい。
【0027】
前記光源装置は、前記液体原料を気化させるエネルギービームを前記放電領域へ照射するエネルギービーム照射源をさらに具備してもよい。前記離脱部は、前記落下経路と前記放電領域への前記エネルギービームの入射経路とが交わらない位置に設けられる。
これにより遮蔽部材から落下するデブリでエネルギービームの照射が遮られることを防止できるため、プラズマを安定に発生させることができる。
【0028】
前記第1の電極ハウジングおよび前記第2の電極ハウジングは、前記第1の電極ハウジングおよび前記第2の電極ハウジング各々の内壁面に付着した前記液体原料を前記受け板部材へ向けて排出する排出口をそれぞれ有してもよい。
【0029】
前記チャンバは、前記プラズマから放出される光が通過する窓部を有する第2の側壁部をさらに有し、前記光源装置は、前記プラズマから放出され前記窓部を通過するデブリを捕捉するホイルトラップをさらに具備してもよい。
【0030】
前記所定波長の光は、極端紫外光であってもよい。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、デブリの固化に起因する電極ハウジングとチャンバとの間の短絡の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の一実施形態に係る光源装置を水平方向に切断して示す概略断面図である。
【
図2】上記光源装置における要部の概略側断面図である。
【
図3】上記光源装置における光源ユニットの基本構成を示す要部の概略斜視図である。
【
図4】上記光源ユニットの基本構成を示す正面図である。
【
図7】遮蔽部材を備えた光源ユニットの一構成例を示す正面図である。
【
図9】遮蔽部材の一作用を説明する部分正面図である。
【
図10】遮蔽部材を備えた光源ユニットの他の構成例を示す正面図である。
【
図11】
図10に示す遮蔽部材の一作用を説明する部分正面図である。
【
図12】遮蔽部材を備えた光源ユニットのさらに他の構成例を示す正面図である。
【
図13】
図12に示す遮蔽部材の一作用を説明する部分正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお以下の説明に用いる図面は、各構成を分かり易くするため、実際の構造と縮尺および形状などと異なることがある。
【0034】
図1は、本発明の一実施形態に係るEUV光源装置1を水平方向に切断して示す概略断面図である。
図2は、EUV光源装置1における要部の概略側断面図である。
図3は、EUV光源装置1における光源ユニット2の基本構成を示す要部の概略斜視図である。各図においてX軸、Y軸およびZ軸は相互に直交する3軸であり、X軸およびY軸は水平方向を示し、Z軸は垂直方向(高さ方向)を示している。本実施形態では、光源装置として、LDP方式の極端紫外光光源装置(EUV光源装置)を例に挙げて説明する。
【0035】
[全体構成]
まず、EUV光源装置1の全体構成について説明する。EUV光源装置1は、極端紫外光(EUV光)を放出する。極端紫外光の波長は、例えば、13.5nmである。具体的には、EUV光源装置1は、放電を発生させる一対の放電電極EA、EBの表面にそれぞれ供給された液相のプラズマ原料SA、SBにレーザビームLB等のエネルギービームを照射して当該プラズマ原料SA、SBを気化させる。その後、放電電極EA、EB間の放電領域Dの放電によってプラズマPを発生させる。プラズマPからはEUV光が放出される。
【0036】
EUV光源装置1は、例えば、半導体デバイス製造におけるリソグラフィ装置の光源装置またはリソグラフィに使用されるマスクの検査装置の光源装置として使用可能である。例えば、EUV光源装置1がマスク検査装置用の光源装置と使用される場合、プラズマPから放出されるEUV光の一部が取り出され、マスク検査装置に導光される。マスク検査装置は、EUV光源装置1から放出されるEUV光を検査光として、マスクのブランクス検査またはパターン検査を行う。EUV光を用いることにより、5~7nmプロセスに対応することができる。なお、EUV光源装置1から取り出されるEUV光は、
図2の遮熱板23に設けられた開口KAにより規定される。
【0037】
図1および
図2に示すように、EUV光源装置1は、光源ユニット2、デブリ低減部3、デブリ収容部4およびデブリ案内部5を備える。光源ユニット2は、LDP方式に基づいてEUV光を発生させる。デブリ低減部3は、光源ユニット2から放射されるEUV光とともに飛散するデブリを捕獲する。デブリ収容部4は、光源ユニット2で発生したデブリおよびデブリ低減部3で捕捉されたデブリなどを収容する。デブリ案内部5は、プラズマ原料SA、SBの融液およびプラズマPから放散されるデブリDBをデブリ収容部4に案内する。
【0038】
EUV光源装置1は、内部で発生されるプラズマPを外部と隔離するチャンバ11を備える。チャンバ11は、剛体、例えば、金属から形成される。チャンバ11は、真空筐体であり、その内部は、プラズマ原料SA、SBを加熱励起するための放電を良好に発生させ、その際に生成されるEUV光の減衰を抑制するために、減圧雰囲気にされる。
【0039】
(光源ユニット)
光源ユニット2は、チャンバ11内部に配置される。
図1および
図3に示すように、光源ユニット2は、一対の放電電極EA、EBを備える。放電電極EA、EBは、同形同大の円板状部材であり、例えば、放電電極EA(第1の放電電極)がカソードとして使用され、放電電極EB(第2の放電電極)がアノードとして使用される。放電電極EA、EBは、例えば、タングステン、モリブデンまたはタンタル等の高融点金属から形成される。放電電極EA、EBは、互いに離隔した位置に配置され、放電電極EA、EBの周縁部が近接している。このとき、プラズマPが生成される放電領域Dは、放電電極EA、EBの周縁部が互いに最も接近した放電電極EA、EB間の間隙に位置する。
【0040】
チャンバ11の内部には、液相のプラズマ原料SAが貯留されるコンテナCAと、液相のプラズマ原料SBが貯留されるコンテナCBとが配置される。各コンテナCA,CBには、加熱された液相のプラズマ原料SA,SBが供給される。液相のプラズマ原料SA,SBは、導電性の液体原料であり、例えば、スズ(Sn)であるが、リチウム(Li)であってもよい。
【0041】
コンテナCAは、第1の材料供給部として構成され、放電電極EAの下部が液相のプラズマ原料SAに浸されるようにプラズマ原料SAを収容する。コンテナCBは、第2の材料供給部として構成され、放電電極EBの下部が液相のプラズマ原料SBに浸されるようにプラズマ原料SBを収容する。従って、放電電極EA,EBの下部には、液相のプラズマ原料SA,SBが付着する。放電電極EA,EBの下部に付着した液相のプラズマ原料SA,SBは、放電電極EA,EBの回転に伴って、プラズマPが生成される放電領域Dに輸送される。
【0042】
放電電極EAは、モータMAの回転軸JAに連結され、放電電極EAの軸線周りに回転する。放電電極EBは、モータMBの回転軸JBに連結され、放電電極EBの軸線周りに回転する。モータMA,MBは、チャンバ11の外部に配置され、各モータMA,MBの回転軸JA,JBは、チャンバ11の外部から内部に延びる。回転軸JAとチャンバ11の壁の間の隙間は、シール部材PAで封止され、回転軸JBとチャンバ11の壁の間の隙間は、シール部材PBで封止される。シール部材PA,PBは、例えば、メカニカルシールである。各シール部材PA,PBは、チャンバ11内の減圧雰囲気を維持しつつ、回転軸JA,JBを回転自在に支持する。
【0043】
図1に示すように、EUV光源装置1は、さらに、制御部12と、パルス電力供給部13と、レーザ源(エネルギービーム照射源)14と、可動ミラー16をさらに備える。制御部12、パルス電力供給部13、レーザ源14および可動ミラー16は、チャンバ11の外部に設置される。
【0044】
制御部12は、EUV光源装置1の各部の動作を制御する。例えば、制御部12は、モータMA,MBの回転駆動を制御し、放電電極EA,EBを所定の回転数で回転させる。また、制御部12は、パルス電力供給部13の動作、レーザ源14からのレーザビームLBの照射タイミングなどを制御する。
【0045】
パルス電力供給部13から延びる2つの給電線QA,QBは、フィードスルーFA,FBを通過して、チャンバ11の内部に配置されたコンテナCA,CBにそれぞれ接続される。フィードスルーFA,FBは、チャンバ11の壁に埋設されてチャンバ11内の減圧雰囲気を維持するシール部材である。
【0046】
コンテナCA,CBは、導電性材料から形成され、各コンテナCA,CBの内部に収容されるプラズマ原料SA,SBもスズなどの導電性材料である。各コンテナCA,CBの内部に収容されているプラズマ原料SA,SBには、放電電極EA,EBの下部がそれぞれ浸されている。従って、パルス電力供給部13からパルス電力がコンテナCA,CBに供給されると、そのパルス電力は、プラズマ原料SA,SBをそれぞれ介して放電電極EA,EBに供給される。
【0047】
パルス電力供給部13は、放電電極EA,EBへパルス電力を供給することにより、放電領域Dで放電を発生させる。そして、各放電電極EA,EBの回転に基づいて放電領域Dに輸送されたプラズマ原料SA,SBが放電時に放電電極EA,EB間に流れる電流により加熱励起されることで、EUV光を放出するプラズマPが生成される。
【0048】
レーザ源14は、放電領域Dに輸送された放電電極EAに付着したプラズマ原料SAにエネルギービームを照射して、当該プラズマ原料SAを気化させる。レーザ源14は、例えば、Nd:YVO4(Neodymium-doped Yttrium Orthovanadate)レーザ装置である。レーザ源14は、波長1064nmの赤外領域のレーザビームLBを発する。なお、エネルギービーム照射源は、プラズマ原料SAの気化が可能であれば、レーザビームLB以外のエネルギービームを発する装置であってもよい。
【0049】
レーザ源14から放出されたレーザビームLBは、例えば、集光レンズ15を含む集光手段を介して可動ミラー16に導かれる。集光手段は、放電電極EAのレーザビーム照射位置におけるレーザビームLBのスポット径を調整する。集光レンズ15および可動ミラー16は、チャンバ11の外部に配置される。
【0050】
集光レンズ15で集光されたレーザビームLBは、可動ミラー16により反射され、チャンバ11の側壁11aに設けられた透明窓20を通過して、放電領域D付近の放電電極EAの周縁部に照射される。可動ミラー16の姿勢を調整することにより、放電電極EAにおけるレーザビームLBの照射位置が調整される。
【0051】
放電領域D付近の放電電極EAの周縁部にレーザビームLBを照射するのを容易にするため、放電電極EA,EBの軸線は平行ではない。回転軸JA,JBの間隔は、モータMA,MB側が狭く、放電電極EA,EB側が広くなっている。これにより、放電電極EA,EBの対向面側を接近させつつ、放電電極EA,EBの対向面側とは反対側をレーザビームLBの照射経路から退避させることができ、放電領域D付近の放電電極EAの周縁部にレーザビームLBを照射するのを容易にすることができる。
【0052】
放電電極EBは、放電電極EAと可動ミラー16との間に配置される。可動ミラー16で反射されたレーザビームLBは、放電電極EBの外周面付近を通過した後、放電電極EAの外周面に到達する。このとき、レーザビームLBが放電電極EBで遮光されないように、放電電極EBは、放電電極EAよりも、モータMB側の方向(
図1の左側)に退避される。放電領域D付近の放電電極EAの外周面に付着された液相のプラズマ原料SAは、レーザビームLBの照射により気化され、気相のプラズマ原料SAとして放電領域Dに供給される。
【0053】
放電領域DでプラズマPを発生させるため(気相のプラズマ原料SAをプラズマ化するため)、パルス電力供給部13は、放電電極EA,EBに電力を供給する。そして、レーザビームLBの照射により放電領域Dに気相のプラズマ原料SAが供給されると、放電領域Dにおける放電電極EA,EB間で放電が生じる。放電電極EA、EB間で放電が発生すると、放電領域Dにおける気相のプラズマ材料SAが電流により加熱励起されて、プラズマPが発生する。生成されたプラズマPから放射されるEUV光は、チャンバ11の側壁11b(第2の側壁部)に設けられた貫通孔である第1窓部17を通ってデブリ低減部3へ入射する。
【0054】
デブリ低減部3は、チャンバ11の側壁11bに配置された接続チャンバ21を有する。接続チャンバ21は、剛体、例えば、金属製の真空筐体であり、その内部は、チャンバ11と同様、EUV光の減衰を抑制するために所定圧力以下の減圧雰囲気に維持される。接続チャンバ21は、チャンバ11と利用装置42(例えばリソグラフィ装置やマスク検査装置)との間に接続される。
【0055】
接続チャンバ21の内部空間は、第1窓部17を介してチャンバ11と連通する。接続チャンバ21は、第1窓部17から入射したEUV光を利用装置42へ導入する光取出し部としての第2窓部27を有する。第2窓部27は、接続チャンバ21の側壁21aに形成された所定形状の貫通孔である。放電領域DのプラズマPから放出されたEUV光は、第1窓部17及び第2窓部27を通じて利用装置42に導入される。
【0056】
(デブリ低減部)
一方、プラズマPからはEUV光とともにデブリが高速で様々な方向に放散される。デブリは、プラズマ原料SA、SBであるスズ粒子及びプラズマPの発生に伴いスパッタリングされる放電電極EA、EBの材料粒子を含む。デブリはさらに、高速で移動するイオン、中性粒子および電子を含む。これらのデブリは、プラズマPの収縮および膨張過程を経て、大きな運動エネルギーを得る。このようなデブリは、利用装置42に到達すると、利用装置42内の光学素子の反射膜を損傷または汚染させ、性能を低下させることがある。
【0057】
このようなデブリを捕捉するために、デブリ低減部3が接続チャンバ21内に設けられる。
図2に示す例では、デブリ低減部3として、ハブ50と、ハブ50と同心的に配置された外側リング52と、ハブ50と外側リング52との間に放射状に配列された複数のホイル51とを有し、回転することで複数のホイル51をデブリと能動的に衝突させる回転式ホイルトラップ22が配置される。回転式ホイルトラップ22は、接続チャンバ21の内部にて、接続チャンバ21から利用装置42へと進行するEUV光の光路上に配置される。
【0058】
回転式ホイルトラップ22の複数のホイル51は、プラズマP(発光点)から第2窓部27に向かって進むEUV光を遮らないように、第2窓部27に向かって進むEUV光の光線方向に平行に配置される。すなわち、
図2に示すように、各ホイル51がハブ50の中心軸線を含む平面上に配置された回転式ホイルトラップ22は、ハブ50の中心軸線の延長線上にプラズマPが存在するように配置される。これにより、ハブ50および外側リング52を除けば、EUV光は各ホイル51の厚みの分のみ遮光され、回転式ホイルトラップ22を通過するEUV光の割合(透過率とも言う)を最大にすることが可能となる。
【0059】
ハブ50は、モータ(回転駆動装置)MCの回転軸JCに連結され、ハブ50の中心軸線は、回転軸JCの中心軸線JMに合致する。このとき、モータMCの回転軸JCは、回転式ホイルトラップ22の回転軸とみなすことができる。回転式ホイルトラップ22は、モータMCに駆動されて回転し、回転するホイル51は、プラズマPから到来するデブリDBに衝突してデブリDBを捕捉し、当該デブリDBが利用装置42に侵入するのを阻止する。
【0060】
回転式ホイルトラップ22は、接続チャンバ21内に配置されるのに対して、モータMCは、接続チャンバ21の外に配置される。接続チャンバ21の壁には、回転軸JCが通過する貫通孔が形成される。回転軸JCと接続チャンバ21の壁の間の隙間は、例えば、メカニカルシールからなるシール部材PCで封止される。シール部材PCは、接続チャンバ21内の減圧雰囲気を維持しつつ、モータMCの回転軸JCを回転自在に支持する。
【0061】
本実施形態では
図2に示すように、デブリ低減部3として、回転式ホイルトラップ22と、複数のホイルの位置が固定された固定式ホイルトラップ24の双方が設けられる。なお、回転式ホイルトラップ22に代えて、固定式ホイルトラップ24が配置されてもよい。
【0062】
回転式ホイルトラップ22は、プラズマPから放散されるデブリDBのうち比較的低速のデブリDBを捕捉する。一方、固定式ホイルトラップ24は、プラズマPから放散されるデブリDBのうち、回転式ホイルトラップ22で捕捉できなかった高速で進行するデブリDBを捕捉する。
図2に示すように、固定式ホイルトラップ24は、EUV取出光の主光線UL上に配置される。また、固定式ホイルトラップ24は、遮熱板23の開口部KAにより進行方向が制限されたEUV光であるEUV取出光が通過する領域に対応させた形状を備える。
【0063】
図2に示すように、接続チャンバ21内には、カバー部材25が配置される。カバー部材25は、回転式ホイルトラップ22を包囲し、回転式ホイルトラップ22により捕捉されたデブリDBが接続チャンバ21の内部に飛散するのを防止する。カバー部材25は、入射側開口部KIおよび出射側開口部KOA、KOBを備える。入射側開口部KIは、回転式ホイルトラップ22に入射するEUV光が遮光されない位置に設けられる。出射側開口部KOAは、入射側開口部KAおよび回転式ホイルトラップ22を通過して固定式ホイルトラップ24に入射するEUV光が遮光されない位置に設けられる。出射側開口部KOBは、入射側開口部KIおよび回転式ホイルトラップ22を通過して監視装置43に入射するEUV光が遮光されない位置に設けられる。
【0064】
回転式ホイルトラップ22により捕捉されたデブリDBの少なくとも一部は、遠心力により回転式ホイルトラップ22のホイル51上を径方向に移動し、ホイル51の端部から離脱して、カバー部材25の内面に付着する。カバー部材25は、図示を省略した加熱手段またはEUV放射を受ける遮熱板23からの二次輻射によって加熱され、当該加熱によりカバー部材25の内面に付着したデブリDBは固化せず、液相状態を保持する。カバー部材25の内面に付着したデブリDBは、重力によりカバー部材25の下部に集まり、カバー部材25の下部から排出管26を介してカバー部材25の外に排出されて廃原料となり、デブリ収容部4に収容される。これにより、カバー部材25は、回転式ホイルトラップ22のホイル51の端部から離脱したデブリDBが接続チャンバ21の内部に飛散するのを防止することができる。
【0065】
(デブリ収容部)
デブリ収容部4は、
図2に示すように、デブリ収容容器31を備える。デブリ収容容器31は、接続チャンバ21の外部に配置され、接続チャンバ21に取り付けられる。デブリ収容容器31は、デブリDBおよび廃原料を含む収容物SUを貯蔵する。
【0066】
接続チャンバ21の底壁には、デブリ収容容器31の内部空間と接続チャンバ21の内部空間を連通させる貫通孔37が形成されている。デブリ収容容器31は、上部にフランジ32を備える。フランジ32で囲まれたデブリ収容容器31の開口部は、接続チャンバ21の貫通孔37に重ねられる。そして、フランジ32が接続チャンバ21の底壁に、例えば、ネジで固定されることで、デブリ収容容器31が接続チャンバ21に取り付けられる。フランジ32と接続チャンバ21の底壁の間の間隙は、ガスケット33により封止される。遮熱板23は、直立した状態で貫通孔37の上方に配置される。排出管26の排出口は、貫通孔37の上方に配置される。このとき、遮熱板23および排出管26からのデブリDBの落下位置にデブリ収容容器31が配置される。
【0067】
排出管26を介してカバー部材25の外に排出された廃原料は、重力方向に落下し、接続チャンバ21の下方(
図2の下側)に配置されているデブリ収容容器31に溜められる。一方、プラズマPから様々な方向に放散されるデブリDBの一部は、チャンバ11の窓部17を通じて接続チャンバ21に侵入すると、窓部17と対面する遮熱板23の面に堆積する。遮熱板23に堆積したデブリDBは、プラズマPからの放射により溶融し、ある程度の量に達すると、液滴となって重力(自重)により遮熱板23の下方に移動する。そして、遮熱板23の下方に移動したデブリDBが遮熱板23から離脱し、接続チャンバ21の下方へ落下することで、デブリ収容容器31に収容される。
【0068】
このように遮熱板23は、プラズマPから回転式ホイルトラップ22へのEUV放射を制限して回転式ホイルトラップ22の過熱を防止し、開口部KAによりプラズマPから放出されるEUV光の一部を取り出し可能とするのみならず、回転式ホイルトラップ22に向けて進行するデブリDBをできるだけ少なくし、回転式ホイルトラップ22の負荷を減少させる。
【0069】
ここで、デブリDBの大部分はスズであり、廃材料もスズであるので、デブリ収容容器31は、プラズマ原料であるスズの回収容器と呼ぶこともできる。デブリ収容容器31の周囲には、デブリ収容容器31を加熱する加熱手段としてのヒータ配線34が巻き付けられている。加熱手段は、デブリ収容容器31に埋設されていてもよい。
EUV光源装置1の稼働中では、ヒータ配線34に給電することによって、デブリ収容容器の内部は、スズの融点(約232℃)以上に加熱され、デブリ収容容器31内部に蓄積されたスズは液相にされる。
【0070】
デブリ収容容器31の内部のスズを液相とする理由は、デブリ収容容器31の内部に蓄積されるデブリDBに含まれるスズが固化すると、デブリDBが落下しやすい地点での蓄積物が、あたかも鍾乳洞の石筍のように成長するからである。デブリDBの蓄積物が石筍状に成長すると、例えば、カバー部材25の排出管26がデブリDBにより封鎖されてカバー部材25内にデブリDBが蓄積される。このとき、カバー部材25内に蓄積されたデブリDBの少なくとも一部が回転式ホイルトラップ22に接触し、回転式ホイルトラップ22の回転を妨げたり、回転式ホイルトラップ22を損傷したりすることがある。あるいは、カバー部材25に設けられている出射側開口部KOA、KOBの一部がカバー部材25内に蓄積されたデブリDBにより封鎖されて、出射側開口部KOA、KOBを通過するEUV光の一部が遮られることもある。よって、デブリ収容容器31の内部の収容物であるスズを液相にすることで、デブリ収納容器31内でスズを平坦化し、石筍のような成長を回避しながらデブリ収納容器31内にスズを貯蔵することが可能となる。
【0071】
デブリ収容容器31に蓄積されたスズを回収する場合、ヒータ配線34への給電を止めてデブリ収容容器31内部の加熱を停止する。そして、デブリ収容容器31の温度が常温に到達してデブリ収容容器31に貯蔵されるスズを固化させた上で、接続チャンバ21内部を大気圧に戻す。その後、デブリ収容容器31を接続チャンバ21から取り外し、スズの溜まっていない新しいデブリ収容容器を接続チャンバ21に取り付ける。接続チャンバ21から取り外されたデブリ収容容器31の内部のスズは固相になっているが、そのデブリ収容容器31を再加熱して内部のスズを再度液相とすることによって、デブリ収容容器31からスズを取り出すことができる。接続チャンバ21から取り外し、内部からスズを除去したデブリ収容容器31は再利用することができる。
【0072】
さらに、接続チャンバ21の外部には、EUV光を監視する監視装置43が配置される。監視装置43は、EUV光を検出する検出器またはEUV光の強度を測定する測定器である。接続チャンバ21の側壁21aには、EUV光が通過する貫通孔であるEUV光案内孔28が形成され、EUV光案内孔28と監視装置43と間には、EUV光が接続チャンバ21の外に漏れずに通過する案内管29が設けられている。
【0073】
遮熱板23には、開口部KAとは別の位置に、プラズマPから放出されるEUV光の一部を取り出すための任意の形状(例えば、円形)の開口部KBが設けられる。プラズマPと開口部KBの中心部を結ぶ直線の延長線上には、監視装置43、EUV光案内孔28および案内管29が配置されている。従って、プラズマPから放出されるEUV光の一部は、チャンバ11の窓部17、遮熱板23の開口部KB、カバー部材25の入射側開口部KI、回転式ホイルトラップ22の複数のホイル51の隙間、カバー部材25の出射側開口部KOB、接続チャンバ21の壁のEUV光案内孔28および案内管29の内腔を順次通過して、監視装置43に到達する。このようにして、EUV光を監視装置43によって監視することができる。
【0074】
[光源ユニットの詳細]
続いて、光源ユニット2の詳細について説明する。
【0075】
上述したように、LDP方式のEUV光源装置1においては、放電領域Dに生成されるプラズマPからデブリDBがあらゆる方向に飛散する。利用装置42側に飛散するデブリDBは上述したデブリ低減部3により捕捉されるが、それ以外の方向に進行するデブリDBは、そのままだとEUV光源装置1の内部に付着し、内部汚染を引き起こす。
【0076】
このようなデブリDBの飛散による内部汚染をできるだけ抑制するように、光源ユニット2は、
図1に示すように、電極ハウジングHA(第1の電極ハウジング)と、電極ハウジングHB(第2の電極ハウジング)とを有する。電極ハウジングHAは、放電電極EA、コンテナCAおよび回転軸JAの一部を収容あるいは包囲する。電極ハウジングHBは、放電電極EB、コンテナCBおよび回転軸JBの一部を収容あるいは包囲する。なお、各回転軸JA,JBは、電極ハウジングHA、HBに設けられる不図示の孔部をそれぞれ介して放電電極EA、EBと接続される。電極ハウジングHA、HBは、互いに隣り合うようにチャンバ11内に配置される。
【0077】
図4は、光源ユニット2の基本構成を示すX軸方向から見た正面図である。
図5は、
図4におけるA-A線断面図である。
【0078】
光源ユニット2は、固定用基板11cに固定される。固定用基板11cは、真空チャンバ11の側壁部(第1の側壁部)であり、チャンバ11の一部を構成する。固定用基板11cの平面形状は特に限定されず、円形状でもよいし矩形状であってもよい。固定用基板11cは、
図5に示すように、チャンバ11の本体であるチャンバ本体110に形成された開口110aを閉塞する着脱可能な蓋部として機能する。固定用基板11cは、チャンバ本体110に図示しないシール材等で気密に取り付けられる。
【0079】
なお、光源ユニット2は上述したように、放電領域D付近の放電電極EAの周縁部にレーザビームLBを照射するのを容易にするため、放電電極EA,EBの軸線は平行ではなく、回転軸JA,JBの間隔は、モータMA,MB側が狭く、放電電極EA,EB側が広くなっている(
図1参照)。しかしながら、ここでは理解を容易にするため、
図4以下の各図においては、放電電極EA,EBの軸線は互いに平行に描かれている。
【0080】
光源ユニット2は、電極ハウジングHA,HBを支持するユニット基板61をさらに有する。電極ハウジングHAは、
図5に示すように、導電性あるいは絶縁性の支持部材71を介してユニット基板61の内壁面に支持される。コンテナCAは、導電性あるいは絶縁性の支持部材72を介して電極ハウジングHAの内面に固定される。回転軸JAは、ユニット基板61を貫通し、シール部材PAを介してユニット基板61に支持される。電極ハウジングHBも電極ハウジングHAと同様に、ユニット基板61の内壁面に固定される。回転軸JBは、ユニット基板61を貫通し、シール部材PBを介してユニット基板61に支持される。電極ハウジングHA,HBは、空隙を挟んでY軸方向に相互に隣接している。
【0081】
固定用基板11cには、電極ハウジングHA,HBをチャンバ11の内部に配置するための貫通孔11dが形成される。また、ユニット基板61は、その外壁面の周縁部にフランジ61aが設けられており、そのフランジ部61aが絶縁性のシール部材63を介して貫通孔11dの周囲に複数のボルト等を介して固定される。この際、フランジ部61aによってユニット基板61の周面に形成された段差部61bが、貫通孔11dの内周面に隙間をおいて対向する。
【0082】
このようにユニット基板61は、貫通孔11dを閉塞するように固定用基板11cの外壁面11c2に取り付けられる。これにより、ユニット基板61の一方の面側(外面側)からは、放電電極EA,EBを回転駆動するためのモータMA,MBが突出しており、他方の面側(内面側)には、放電電極EA,EBやコンテナCA,CBを内包する電極ハウジングHA,HBがチャンバ11の内部側に突出した状態で固定される。このようにユニット基板61を介して電極ハウジングHA,HBをチャンバ11から取り外し可能に構成されているため、チャンバ11に対する光源ユニット2の設置作業やメンテナンス作業を容易に行うことができる。
【0083】
なお本実施形態においてユニット基板61は、電極ハウジングHA,HBを共通に支持する単一の基板で構成される。これに代えて、ユニット基板61は、電極ハウジングHAおよび電極ハウジングHBを個別に支持する2つの基板で構成されてもよい。この場合、固定用基板11cには、電極ハウジングHAをチャンバ11の内部に配置するための貫通孔と、電極ハウジングHBをチャンバ11の内部に配置するための貫通孔とを含む支持するユニット基板により閉塞される貫通孔がそれぞれ形成される。
【0084】
さらに固定用基板11cは、その内壁面11c1に、貫通孔11dの上縁周縁部からチャンバ11の内部に向かって突出する突出部11eをさらに有する。この突出部11eは、電極ハウジングHA,HBを装着したユニット基板61を固定用基板11cの貫通孔11dへ組み付ける際に、電極ハウジング11A,11Bの上縁部をチャンバ11内へ導くためのガイド部として機能する。
【0085】
一方、
図4および
図5に示すように、電極ハウジングHA、HBには、プラズマPから放出されるEUV光が利用装置42に向かうように、EUV光取出し用開口部KLが設けられる。EUV光取出し用開口部KLは、放電領域Dに輸送された放電電極EAに付着したプラズマ原料SAに照射されるレーザビームLBの入射口としても用いられる。また、各電極ハウジングHA、HBの下部には、電極ハウジングHA、HB内面に付着したデブリDBおよび廃材料を外部に排出する排出口QA、QBが設けられる。
【0086】
EUV光源装置1の内部に付着する可能性のあるデブリDBの大部分は、デブリ飛散方向D1、D2に飛散し、電極ハウジングHA、HB内部にて捕集される。また、放電領域Dに輸送された放電電極EAに付着したプラズマ原料SAのうち、レーザビームLBが照射されて気化しプラズマ生成に利用される量は僅かである。このため、放電電極EAに付着したプラズマ原料SAの大部分は未使用のままコンテナCAに戻されるが、そのうちの一部は重力により落下してコンテナCAに戻らず、電極ハウジングHA内部にて捕集される。さらに、何等かの不具合により、コンテナCA、CBに貯留された液相のプラズマ原料SA、SBの一部がコンテナCA、CBより溢れる場合がある。この溢れたプラズマ原料SA、SBも、原料漏出方向D3に漏出し、廃原料として電極ハウジングHA、HB内部にて捕集される。
【0087】
電極ハウジングHA、HBは、プラズマPの近傍に配置されるので、プラズマPからのEUV光などの放射によりデブリDBおよび廃材料の融点以上に加熱される。なお、本明細書で融点というときは、スズなどのプラズマ原料SA、SBの融点を指す。このため、例えば、放電電極EA、EBがタングステン、モリブデン、タンタル等の高融点金属から形成されるときに、放電電極EA、EBの材料粒子がデブリDBに含まれる場合においても、デブリDBの融点には、放電電極EA、EBの融点は含まない。よって、電極ハウジングHA、HB内面に付着したデブリDBおよび廃材料に含まれるスズは固化することなく液体状態に維持される。電極ハウジングHA、HB内面に付着したデブリDBおよび廃材料は、重力により電極ハウジングHA、HB下部に集まり、排出口QA、QBより外部に排出され、重力方向に落下する。
【0088】
排出口QA、QBより重力方向に落下したデブリDBおよび廃材料は、受け板部材18より受け取られる。受け板部材18は、廃原料(スズ)貯蔵部であるデブリ収容容器41(
図2参照)に溜められるように、接続チャンバ21の底部に設置された受台44の上に傾斜して配置されている。受け板部材18は、加熱手段により加熱され、その温度はスズの融点以上の温度に維持される。よって、排出口QA、QBより受け板部材18に落下したデブリDBおよび廃材料は液相のまま、傾斜した受け板部材18の受け面に沿って移動し、受け板部材18の排出部へ送られる。
【0089】
放電電極EA,EBや電極ハウジングHA,HBが設置される空間(チャンバ11内)に気相状態で存在するプラズマ原料の一部は、開口部KLを介して電極ハウジングHA,HB内に進入する。プラズマを生成してEUV放射させる動作が継続中の場合、電極ハウジングHA,HBはプラズマによりデブリ(スズ)の融点以上に加熱される。よって、電極ハウジングHA,HBに進入した気相状態のデブリ(スズ)が当該電極ハウジングの内部表面に接触して液化したとしても、そのまま液体状態が維持され、上記したように、電極ハウジング下部に設けられた排出口QA、QBより外部に排出される。
【0090】
一方、電極ハウジングHA,HB外であって、チャンバ11内に浮遊する気相状態のデブリ(スズ)の一部は、固定用基板11cや電極ハウジングHA,HBの外表面と接触して液化する。特に、比較的温度が低い固定用基板11cの表面では、上記液化したデブリ(スズ)は、そのまま固化する。例えば、
図5の要部拡大図である
図6に示すように、固定用基板11cの構造物(例えば、突出部11eあるいは貫通孔11dの内周面)とユニット基板61の段差部61bといった互いの距離が比較的近い部分においては、固定用基板11cの構造物上に固化したデブリ(スズ)はやがて電極ハウジングHA,HBの外表面と接触する。
【0091】
ここで、高電圧(ここでは負の高電位(-HV)であるが、正の高電位(+HV)であってもよい)が印加される放電電極EAを内包する電極ハウジングHAは、当該放電電極EAと電気的に接続されているので、電極ハウジングHAにも高電圧が印加される。一方、チャンバ11およびその一部である固定用基板11cはグランド電位に接続される。そのため、高電圧が印加されている電極ハウジングHAの外表面と固定用基板11cの上記構造物上で成長する固化したデブリDBとが接触すると、電極ハウジングHAの外表面と固定用基板11cの構造物との間に電気的短絡が発生し、短絡箇所に大電流が流れてしまい、EUV光源装置1の故障が発生する。
【0092】
[遮蔽部材]
このような問題を解決するため、本実施形態のEUV光源装置1は、遮蔽部材80を備える。
図7は、遮蔽部材80を備えた光源ユニット2のX軸方向から見た正面図、
図8は、
図7におけるB-B線断面図である。
【0093】
図7および
図8に示すように光源ユニット2は、電極ハウジングHA側のEUV光取出し用開口部KLの上部に遮蔽部材80が設けられる。遮蔽部材80は、電極ハウジングHA側の開口部KLの上側に位置する固定用基板11cの構造物(突出部11eおよび貫通孔11dの内周面)と電極ハウジングHAとの間に形成された間隙部GAの少なくとも一部を遮るように構成されている。これにより、上記したような短絡を引き起こすような気相状態のデブリ(スズ)の間隙部GAへの進入が抑制される。
【0094】
すなわち、
図8に示すように、固定用基板11cの貫通孔11dの表面(内壁)に進入しようとする気相状態のスズの少なくとも一部は、遮蔽部材80により進入を妨げられ、当該遮蔽部材80の表面に付着して液化する。遮蔽部材80は、プラズマPを生成してEUVを放射させる動作が継続中の場合、プラズマPによりデブリ(スズ)の融点以上に加熱される。よって、遮蔽部材80の表面に付着して液化したデブリDBは、そのまま液体状態が維持され、最終的には遮蔽部材80の下端から液滴となって重力方向に落下する。落下する液滴状デブリ(スズ)DBは、受け板部材18により受け取られ、この受け板部材18を介してデブリ収容容器31に溜められる。
【0095】
遮蔽部材80は、例えば
図8に示すように、遮蔽部81と、支持部82とを有する。遮蔽部81は、チャンバ11内に浮遊する気相状態のデブリが固定用基板11cの貫通孔11dの表面(内壁)へ進入するのを遮蔽する。遮蔽部81は、例えばYZ平面に平行な平板状であり、電極ハウジングHAの開口部KLが設けられている表面より前方に突出した位置に配置される。特に、遮蔽部81は、固定用基板11cの貫通孔11dの表面(内壁)の上部やそれに近接するユニット基板61の段差部61bの上部がチャンバ11内において電極ハウジングHAの外部空間に直接露出されるのを遮る位置に配置される。
【0096】
支持部82は、例えば、XY平面に平行な平板上であり、遮蔽部81の上縁部に一体的に設けられる。支持部82は、例えば、固定用基板11cの突出部11eの上面に固定され、遮蔽部81を上記位置に設置する。支持部82の固定位置は、突出部11eの上面に限られず、突出部11eよりも上部の固定用基板11cの内壁面11cに固定されてもよい。
【0097】
なお、支持部82と遮蔽部81は一体に構成されていても、別体として構成されていてもよい。両者が一体に構成される場合、例えば
図8に断面で示されているように、一枚の平板がL字に折り曲げられた山形鋼(アングル)形状であってもよい。また、遮蔽部81は平板状であってもよいし、波型プレート形状等の凹凸部を有する平板状であってもよい。遮蔽部材80は、例えば、タングステン、モリブデンまたはタンタル等の高融点金属から形成される。
【0098】
なお、電極ハウジングHB側には、遮蔽部材80は設けなくてもよい。これは、電極ハウジングHBが包囲する電極EB(アノード側)の電位は接地電位に保たれ、同じく接地されている固定用基板11cと同電位となるので、電極ハウジングHBの外表面と固定用基板11の構造物(突出部11eおよび貫通孔11d)との間が固化したデブリを介して接触しても、短絡箇所に電流が流れず、EUV光源装置1の故障は発生しないためである。
【0099】
これに限られず、電極ハウジングHB側にも遮蔽部材80が設けられてもよい。この場合、電極ハウジングHBと固定用基板11cの突出部11eとの間に形成された間隙部GBを経由して電極ハウジングHA側の間隙部GAへ気相状態のデブリが進入するのを抑えることができる。
【0100】
以上のように、本実施形態のEUV光源装置1によれば、少なくとも高電位の電極(電極EA:カソード)を内包する電極ハウジングHAのEUV光取出し用開口部KLの上部に遮蔽部材80が取り付けられているため、チャンバ11内部を浮遊する気相状態のデブリの少なくとも一部が、電極ハウジングHAと固定用基板11cとの間に形成された間隙部GAの内部に進入することを抑制できる。これにより、間隙部GAに進入した気相状態でデブリが突出部11eや貫通孔11dの内面に接触して固化し堆積することで発生し得る、固定用基板11cと電極ハウジングHAとの間の電気的短絡を防ぐことができる。したがってEUV光源装置1において安定したプラズマPの生成が可能となり、EUV光を継続して放出させることができる。
【0101】
[遮蔽部材の他の構成例1]
図7に示した光源ユニット2においては、遮蔽部材80の遮蔽部81表面に付着して液化したデブリDBは、
図9に示すように、遮蔽部81の下面81aから重力方向に落下する。ここで、受け板部材18側に落下する液滴状のデブリDB(スズ)は、遮蔽部81の下面81aの特定位置を始点として落下するわけではなく、遮蔽部81の下面81aの不特定の位置を始点として落下する。そのため、
図9に示すように、遮蔽部81の下面81aの始点の位置によっては、落下する液滴状のデブリDBが、受け板部材18により捕集されない位置に落下する場合が生じ、装置内部が液体状のデブリDBにより汚染されるおそれがある。
【0102】
なお、遮蔽部81の幅(
図9における左右方向)を狭くして、遮蔽部81の下面81aの任意の位置でデブリDBが落下しても落下する液滴状デブリが全て受け板部材18で捕集されるようにすると、装置内部が液体状のデブリにより汚染されるという不具合は解消される。しかしながら遮蔽部81の幅が狭くなるので、気相状態のデブリが固定用基板11cと電極ハウジングHAとの間の間隙部GAへ進入するのを抑制するという効果が不十分になるというおそれがある。
【0103】
そこで本構成例は、
図10に示すように、電極ハウジングHA側のEUV光取出し用開口部KLの上部に位置する固定用基板11cの構造物(突出部11eあるいは貫通孔の表面)と電極ハウジングHAとの間に形成された間隙部GAの一部を遮るように設けられる遮蔽部材801を備え、この遮蔽部材801が
図7に示す水平位置から傾斜して配置される。具体的には、遮蔽部材801は、遮蔽部81の下面81aにおける受け板部材18に近い側の一端部(角部81b)が、受け板部材18に遠い側の他端部(角部81c)より下側に位置するように配置され、遮蔽部81の下面81aは、角部81bへ向かう傾斜面として形成される。
【0104】
遮蔽部材801を上記のように配置することにより、
図11に示すように、遮蔽部材801の遮蔽部81に接触して液化したデブリ(スズ)DBは、自重により、遮蔽部81の下面81aに移動し、更に、下面81a上を角部81c側から角部81b側に移動して、角部81bより重力方向に液滴状デブリとして落下する。
【0105】
すなわち、液滴状デブリDBは、遮蔽部材801の遮蔽部81の下面81aにおける所定の離脱位置(角部81b)より落下する。遮蔽部81の下面81aは、液滴状デブリDBを角部81bへ導くガイド面として機能する。角部81bを遮蔽部材801からのデブリの離脱位置とすることで、角部81bから落下する液滴状デブリDBが下方に位置する受け板部材18の表面に確実に落下するように当該遮蔽部材801の角部81bの位置を設定することにより、落下する液滴状のデブリDBは、確実に受け板部材18により捕集される。これにより、落下する液滴状のデブリDBが受け板部材18により捕集されない位置に落下することを抑えて、装置内部が液体状のデブリDBにより汚染されないようにすることができる。
【0106】
[遮蔽部材の他の構成例2]
図7に示した光源ユニット2においては、遮蔽部材801の遮蔽部81における下面81aの受け板部材18に近い側の一端部(角部81b)が、受け板部材18に遠い側の他端部(角部81c)より下側に位置するように配置される。上記のように遮蔽部材801を配置することにより、液滴状デブリDBは、遮蔽部81の下面81aの所定の位置(角部81b)より落下するようにすることが可能となる。
【0107】
このとき、遮蔽部材801の角部81bから落下し、受け板部材18の表面に到達するまでの液滴状スズの軌跡は、できるだけプラズマPから放出されるEUV光の光路より遠ざかっている方が好ましい。液滴状スズの軌跡がEUV光の光路と重なっていると、EUV光の発光タイミングによっては、EUV光の一部が液滴状スズにより遮光されてしまい、EUV光の利用効率が低下するおそれがある。
【0108】
そこで本構成例では、
図12および
図13に示すように、電極ハウジングHA側のEUV光取出し用開口部KLの上部に位置する固定用基板11cの構造物(突出部11eあるいは貫通孔の表面)と電極ハウジングHAとの間に形成された間隙部GAの一部を遮るように設けられる遮蔽部材802を備え、この遮蔽部材802が
図7に示す水平位置から傾斜して配置されるとともに、遮蔽部81の下面81aの一端側の角部81bの位置を、液滴状スズの軌跡(落下経路)が放電領域Dへ向かうEUV光の光路(入射経路)と重ならないような位置に設定される。これにより、EUV光の一部が液滴状スズにより遮光されることがなくなり、EUV光の利用効率の低下を回避することが可能となる。
【0109】
なお、上記構成例1,2において、遮蔽部材からの液滴状デブリDBの離脱位置を遮蔽部81の一端側の角部81bとしたが、角部81bは、遮蔽部81の一端側の隅部である場合に限られず、遮蔽部81の下面81aの任意の位置に設けられた突起状の角部であってもよい。
【0110】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。
【0111】
例えば以上の実施形態では、光源装置としてEUV光を放出させるEUV光源装置を例に挙げて説明したが、X線や他の波長領域の光などの他の放射線を発生させることが可能な光源装置にも、本発明は適用可能である。
【0112】
また以上の実施形態では、光源ユニット2がユニット基板61を介してチャンバ11の側壁(固定用基板11c)に着脱可能に構成されたが、チャンバ11に対する光源ユニット2の設置形態は任意に設計可能である。
【符号の説明】
【0113】
1…EUV光源装置
2…光源ユニット
3…デブリ低減部
4…デブリ収容部
11…チャンバ
11c…固定用基板
11d…貫通孔
11e…突出部
18…受け板部材
22…回転式ホイルトラップ
23…遮熱板
24…固定式ホイルトラップ
31…デブリ収容容器
42…利用装置
43…監視装置
61…ユニット基板
80,801,802…遮蔽部材
81…遮蔽部
81b…角部
CA…コンテナ(第1の材料供給部)
CB…コンテナ(第2の材料供給部)
D…放電領域
DB…デブリ
EA…放電電極(第1の放電電極)
EB…放電電極(第2の放電電極)
GA,GB…間隙部
HA…電極ハウジング(第1の電極ハウジング)
HB…電極ハウジング(第2の電極ハウジング)
LB…レーザビーム(エネルギービーム)
P…プラズマ
SA,SB…プラズマ原料