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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173942
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】光源装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20231130BHJP
   H05G 2/00 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
G03F7/20 503
H05G2/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086512
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺本 雄介
【テーマコード(参考)】
2H197
4C092
【Fターム(参考)】
2H197CA10
2H197GA01
2H197GA04
2H197GA05
2H197GA20
2H197GA24
4C092AA05
4C092AB10
4C092AB19
4C092AC09
(57)【要約】
【課題】放射線を取り出す方向へのデブリの進入を抑制することができる光源装置を提供する。
【解決手段】本発明の一形態に係る光源装置は、円盤状の回転体と、原料供給機構と、チャンバ本体と、ホイルトラップとを具備する。前記原料供給機構は、エネルギービームが照射されることでプラズマを生成させる液体原料を前記回転体の表面に供給する。前記チャンバ本体は、前記エネルギービームを取り込むビーム取り込み部と、生成された前記プラズマからの放射線を取り出す放射線取り出し部と、前記回転体を収容するプラズマ生成部とを有する。前記ホイルトラップは、前記チャンバ本体に回転可能に設置された軸部材と、前記軸部材を中心に放射状に配置された複数のホイルとを有し、前記回転体と前記放射線取り出し部との間に配置され、前記プラズマから発生するデブリを捕捉する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円盤状の回転体と、
エネルギービームが照射されることでプラズマを生成させる液体原料を前記回転体の表面に供給する原料供給機構と、
前記エネルギービームを取り込むビーム取り込み部と、生成された前記プラズマからの放射線を取り出す放射線取り出し部と、前記回転体を収容するプラズマ生成部とを有するチャンバ本体と、
前記チャンバ本体に回転可能に設置された軸部材と、前記軸部材を中心に放射状に配置された複数のホイルとを有し、前記回転体と前記放射線取り出し部との間に配置され、前記プラズマから発生するデブリを捕捉するホイルトラップと
を具備する光源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光源装置であって、
前記回転体の表面は、前記回転体の回転軸心に垂直な平面であり、
前記軸部材は、前記回転体の回転軸心と平行な方向に沿って配置される
光源装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光源装置であって、
前記ホイルトラップは、前記複数のホイルを回転可能に収容する空間部を有するカバー部材をさらに有し、
前記カバー部材は、前記空間部へ前記放射線を入射させる第1開口部と、前記空間部と連通し前記第1開口部へ入射した放射線を前記放射線取出し部へ向けて出射させる第2開口部とを有する
光源装置。
【請求項4】
請求項3に記載の光源装置であって、
前記カバー部材は、前記空間部から前記カバー部材の外部へ向けて捕集したデブリを排出するための排出管をさらに有する
光源装置。
【請求項5】
請求項3に記載の光源装置であって、
前記チャンバ本体に設置され、前記放射線を分析する診断部をさらに具備し、
前記カバー部材は、前記空間部へ前記放射線を入射させる第3開口部と、前記空間部と連通し前記第3開口部へ入射した放射線を前記診断部へ向けて出射させる第4開口部とをさらに有する
光源装置。
【請求項6】
請求項5に記載の光源装置であって、
前記軸部材は、前記回転体から前記放射線取り出し部へ向かって出射する放射線の主軸である第1の軸と、前記回転体から前記診断部へ向かって出射する放射線の主軸である第2の軸との間の軸間領域に配置される
光源装置。
【請求項7】
請求項6に記載の光源装置であって、
前記複数のホイルは、前記軸部材から前記第1の軸および前記第2の軸にそれぞれ直交する方向に延びる
光源装置。
【請求項8】
請求項1に記載の光源装置であって、
前記軸部材は、前記ビーム取り込み部から前記回転体へ入射する前記エネルギービーム光軸と、前記回転体から前記放射線取り出し部へ向かって出射する前記放射線の主軸とにそれぞれ異なる方向に沿って配置される
光源装置。
【請求項9】
請求項8に記載の光源装置であって、
前記ホイルトラップと前記放射線取り出し部との間に、前記放射線取り出し部から前記軸部材に向かう気流の流れを形成する第1ガス供給部をさらに具備する
光源装置。
【請求項10】
請求項8に記載の光源装置であって、
前記軸部材の軸方向、前記エネルギービームの光軸方向、および、前記放射線の主軸方向を横断する気流の流れを形成する第2ガス供給部をさらに具備する
光源装置。
【請求項11】
請求項1に記載の光源装置であって、
前記ビーム取り込み部は、前記チャンバ本体の内側に向かって突出し先端に入射側アパーチャが設けられた筒状の入射側突出部を有する
光源装置。
【請求項12】
請求項11に記載の光源装置であって、
前記入射側突出部は、突出側に進むにつれて断面積が小さくなるコーン形状からなる
光源装置。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の光源装置であって、
前記プラズマ生成部は、前記ビーム取り込み部よりも減圧された雰囲気に維持される
光源装置。
【請求項14】
請求項1に記載の光源装置であって、
前記放射線取り出し部は、前記チャンバ本体の外側に向かって突出する筒状の外側突出部を有する
光源装置。
【請求項15】
請求項14に記載の光源装置であって、
前記外側突出部は、突出側に進むにつれて断面積が小さくなるコーン形状からなる
光源装置。
【請求項16】
請求項14又は15に記載の光源装置であって、
前記プラズマ生成部は、前記放射線取り出し部よりも減圧された雰囲気に維持される
光源装置。
【請求項17】
請求項1に記載の光源装置であって、
前記ホイルトラップは、前記エネルギービーム及び前記放射線の経路が開口し前記回転体を収容するケース部をさらに有する
光源装置。
【請求項18】
請求項1に記載の光源装置であって、
前記放射線は、X線、又は極端紫外光である
光源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線や極端紫外光等の放射線の出射に適用可能な光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、X線は、医療用用途、工業用用途、研究用用途に用いられてきた。医療用分野においては、X線は、胸部X線写真撮影、歯科X線写真撮影や、CT(Computer Tomogram)といった用途に用いられる。工業用分野においては、X線は、構造物や溶接部などの物質内部を観察する非破壊検査、断層非破壊検査といった用途に用いられる。研究用分野においては、X線は、物質の結晶構造を解析するためのX線回折、物質の構成元素を分析するためのX線分光(蛍光X線分析)といった用途に用いられる。
【0003】
X線は、X線管を用いて発生させることができる。X線管は、その内部に一対の電極(陽極、陰極)を有する。陰極フィラメントに電流を流して加熱しておき、陽極と陰極間に高電圧を印加すると、フィラメントから発生するマイナスの熱電子が陽極表面にあるターゲットに高速で衝突し、当該ターゲットからX線が発生する。またX線管において、陽極側のターゲットを液体金属ジェットとし、このターゲットに電子ビームを照射することにより、高輝度のX線を取り出す技術も知られている。
【0004】
X線のうち比較的波長の長い軟X線領域にある波長13.5nmの極端紫外光(以下、「EUV(Extreme Ultra Violet)光」ともいう)は、近年露光光として使用されている。ここで、微細パターンが構成されているEUVリソグラフィ用のマスクの基材は、積層構造として、低熱膨張性ガラスから成る基板の上に、EUV光を反射させるための多層膜(例えば、モリブデンとシリコン)が設けられてなる反射ミラーである。そして、多層膜上に波長13.5nmの放射線を吸収する材料をパターニングすることで、EUVマスクが構成される。
【0005】
EUVマスクにおける許容できない欠陥の大きさは、従来のArFマスクの場合に比べると大幅に小さくなっており検出することが困難となっている。そこで、EUVマスクの検査として、通常はアクティニック検査(Actinic inspection)と呼ばれる、リソグラフィの作業波長と一致する波長の放射線を用いた検査が行われる。例えば、波長13.5nmの放射線を用いて検査を行うと、l0nmよりも良好な分解能で欠陥を検出することが可能となる。
【0006】
一般にEUV光源装置としては、DPP(Discharge Produced Plasma)光源装置、LDP(Laser Assisted Discharge Produced Plasma)光源装置、及びLPP(Laser Produced Plasma)光源装置が挙げられる。DPP方式のEUV光源装置は、EUV放射種(気相のプラズマ原料)を含む放電ガスが供給された電極間に高電圧を印加して、放電により高密度高温プラズマを生成し、そこから放射される極端紫外光を利用するものである。
【0007】
LDP光源装置は、DPP光源装置が改良されたものであり、例えば、放電を発生させる電極(放電電極)表面にEUV放射種を含む液体状の高温プラズマ原料(例えば、Sn(スズ)やLi(リチウム)等)を供給し、当該原料に対してレーザビーム等のエネルギービーム(例えば、電子ビームやレーザビーム等)を照射して当該原料を気化し、その後、放電によって高温プラズマを生成するものである。
【0008】
LPP光源装置は、EUV放射用ターゲット材料である微小な液滴状に噴出されたスズ(Sn)、または、リチウム(Li)等のドロップレットに対して、レーザ光を集光することにより当該ターゲット材料を励起してプラズマを発生させるものである。
【0009】
このように、軟X線領域にあるEUV光を発生させるEUV光源装置として、DPP方式(LDP方式)や、LPP方式の光源装置を使用することが可能である。一方で、EUV光源装置において、DPP方式(LDP方式)のものは、最終的には電極間の放電によってプラズマを生成しているので、EUV原料に起因するデブリが発生しやすい。LPP方式のものは、EUV原料である微細なスズのドロップレットをターゲットとし、それに励起用レーザ光を集光させるため、光源の構造が複雑である。また、スズのドロップレットを安定して落下・供給することが難しく、EUV光を安定して生成することが困難である。
【0010】
特許文献1には、円盤状の回転体に液体状のX線発生用のターゲット原料を塗布し、当該塗布された液体状原料にエネルギービーム(レーザビーム)を照射してX線を得る方法が提案されている。この方法によれば、比較的簡易な構成で、高輝度のX線を得ることが可能となる。特許文献1に記載の方法をEUV光源装置に適用した場合、所謂LPP方式に相当するが、液体状のEUV原料をドロップレットとして供給する必要がない。そのため、EUV原料供給が容易で、かつ、確実に液体状のEUV原料にレーザビームを照射することが可能となり、比較的簡易な構成の装置でEUV放射を得ることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第6658324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
LPP方式においては、上記したように放射線(X線またはEUV)原料にエネルギービーム(電子ビームまたはレーザビーム)が照射してプラズマを生成し、当該プラズマから放射線が取り出されるが、DPP方式、LDP方式と同様、プラズマ生成の際にデブリが生じる。一般に平面上の液体原料がエネルギービームによって気化する際に放出される液体原料からなるデブリは、上記平面の法線方向に一番多く放出される。よって、この法線方向と放射線を取り出す方向とを相違させることにより、放射線を取り出す方向へのデブリの進入を抑制することができる。
【0013】
しかしながら、デブリは発生地点から空間内で広がるので、デブリの一部は、放射線を取り出す方向へと進入してしまう。取り出した放射線を利用する検査装置などの利用装置へデブリが到達すると、利用装置内を汚染したり利用装置内の光学素子等を損傷させたりするおそれがあるため、放射線の取り出し方向へのデブリの進入を極力抑える必要がある。
【0014】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、放射線を取り出す方向へのデブリの進入を抑制することができる光源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一形態に係る光源装置は、円盤状の回転体と、原料供給機構と、チャンバ本体と、ホイルトラップとを具備する。
前記原料供給機構は、エネルギービームが照射されることでプラズマを生成させる液体原料を前記回転体の表面に供給する。
前記チャンバ本体は、前記エネルギービームを取り込むビーム取り込み部と、生成された前記プラズマからの放射線を取り出す放射線取り出し部と、前記回転体を収容するプラズマ生成部とを有する。
前記ホイルトラップは、前記チャンバ本体に回転可能に設置された軸部材と、前記軸部材を中心に放射状に配置された複数のホイルとを有し、前記回転体と前記放射線取り出し部との間に配置され、前記プラズマから発生するデブリを捕捉する。
【0016】
この光源装置では、回転体の表面に供給されたプラズマ原料にエネルギービームが照射される。これによりプラズマが生成され、放射線が出射されるとともに、放射線取り出し部に向かって液体原料のデブリが飛散する。この光源装置は、回転体と放射線取り出し部との間に、プラズマから発生するデブリを捕捉するホイルトラップを備えているため、放射線取り出し部へのデブリの進入を抑制することができる。
【0017】
前記回転体の表面は、前記回転体の回転軸心に垂直な平面であってもよい。この場合、前記軸部材は、前記回転体の回転軸心と平行な方向に沿って配置される。
【0018】
前記ホイルトラップは、前記複数のホイルを回転可能に収容する空間部を有するカバー部材をさらに有してもよい。前記カバー部材は、前記空間部へ前記放射線を入射させる第1開口部と、前記空間部と連通し前記第1開口部へ入射した放射線を前記放射線取出し部へ向けて出射させる第2開口部とを有する。
【0019】
前記カバー部材は、前記空間部から前記カバー部材の外部へ向けて捕集したデブリを排出するための排出管をさらに有してもよい。
【0020】
前記光源装置は、前記チャンバ本体に設置され前記放射線を分析する診断部をさらに具備してもよい。この場合、前記カバー部材は、前記空間部へ前記放射線を入射させる第3開口部と、前記空間部と連通し前記第3開口部へ入射した放射線を前記診断部へ向けて出射させる第4開口部とをさらに有する。
【0021】
前記軸部材は、前記回転体から前記放射線取り出し部へ向かって出射する放射線の主軸である第1の軸と、前記回転体から前記診断部へ向かって出射する放射線の主軸である第2の軸との間の軸間領域に配置されてもよい。
【0022】
前記複数のホイルは、前記軸部材から前記第1の軸および前記第2の軸にそれぞれ直交する方向に延びてもよい。
【0023】
前記軸部材は、前記ビーム取り込み部から前記回転体へ入射する前記エネルギービーム光軸と、前記回転体から前記放射線取り出し部へ向かって出射する前記放射線の主軸とにそれぞれ異なる方向に沿って配置されてもよい。
【0024】
前記光源装置は、前記ホイルトラップと前記放射線取り出し部との間に、前記放射線取り出し部から前記軸部材に向かう気流の流れを形成する第1ガス供給部をさらに具備してもよい。
【0025】
前記光源装置は、前記軸部材の軸方向、前記エネルギービームの光軸方向、および、前記放射線の主軸方向を横断する気流の流れを形成する第2ガス供給部をさらに具備してもよい。
【0026】
前記ビーム取り込み部は、前記チャンバ本体の内側に向かって突出し先端に入射側アパーチャが設けられた筒状の入射側突出部を有してもよい。
前記入射側突出部は、突出側に進むにつれて断面積が小さくなるコーン形状であってもよい。
前記プラズマ生成部は、前記ビーム取り込み部よりも減圧された雰囲気に維持されてもよい。
【0027】
前記放射線取り出し部は、前記チャンバ本体の外側に向かって突出する筒状の外側突出部を有してもよい。
前記外側突出部は、突出側に進むにつれて断面積が小さくなるコーン形状であってもよい。
前記プラズマ生成部は、前記放射線取り出し部よりも減圧された雰囲気に維持されてもよい。
【0028】
前記ホイルトラップは、前記エネルギービーム及び前記放射線の経路が開口し前記回転体を収容するケース部をさらに有してもよい。
【0029】
前記放射線は、X線、又は極端紫外光であってもよい。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、放射線を取り出す方向へのデブリの進入を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の一実施形態に係る光源装置の構成例を示す模式図である。
図2】上記光源装置における原料供給機構の構成例を示す模式図である。
図3】上記原料供給機構の他の構成例を示す模式図である。
図4】上記光源装置におけるホイルトラップの構成例を示す拡大断面図である。
図5図4の矢印B方向からみた矢視図(カバー部材の図示は省略)である。
図6図4におけるC-C断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0033】
図1は、本発明の一実施形態に係る光源装置の構成例を示す模式図である。
【0034】
図1は、光源装置1を設置面から所定の高さの位置で水平方向に沿って切断した場合の模式的な断面を、上方から見た場合の図である。図1では、光源装置1の構成及び動作を理解しやすいように、断面の構成等を説明する必要のない部分については、断面の図示を省略している。以下、X方向を左右方向(X軸の正側が右側、負側が左側)、Y方向を前後方向(Y軸の正側が前方側、負側が後方側)、Z方向を高さ方向(Z軸の正側が上方側、負側が下方側)として説明を行う。もちろん、本技術の適用について、光源装置1が使用される向き等が限定される訳ではない。
【0035】
光源装置1は、エネルギービームEBによりプラズマ原料23をプラズマ化して放射線Rを取り出すLPP方式の光源装置である。光源装置1は、例えば波長30nm以下の硬X線から軟X線(EUV光含む)までの放射線Rを放出することが可能である。従って光源装置1を、X線発生装置、又はEUV光源装置(EUV放射発生装置)として使用することが可能である。もちろん、他の波長帯域の放射線を出射する光源装置に、本技術を適用することも可能である。
【0036】
光源装置1は、筐体2と、真空チャンバ3と、エネルギービーム入射チャンバ4と、放射線出射チャンバ5と、原料供給機構6と、制御部7とを含む。
筐体2は、おおよその外形が立方体形状となるように構成される。筐体2は、前方面に形成される出射孔8と、右側面に形成される入射孔9と、後方面に形成される2つの貫通孔10及び11と、左側面に形成される貫通孔12とを有する。筐体2の材料は限定されず、例えば金属製の筐体が用いられる。
【0037】
本実施形態では、前方面の出射孔8を通り、Y方向(前後方向)に延在するように、放射線Rの出射軸EAが設定される。X線やEUV光等の放射線Rは、出射軸EAに沿って取り出され、出射孔8から前方側に向かって放出される。また本実施形態では、右側面の入射孔9から、後方側に向かって左斜めに延在するように、エネルギービームEBの入射軸IAが設定される。
【0038】
図1に示すように、筐体2の外部に、エネルギービームEBを出射するビーム源13が設置される。ビーム源13は、入射軸IAに沿ってエネルギービームEBが筐体2の内部に入射するように設置される。エネルギービームEBとしては、電子ビームやレーザビームを使用することが可能である。ビーム源13の構成としては、これらのエネルギービームEBを出射可能な任意の構成が採用されてよい。
【0039】
光源装置1は、金属製のチャンバ本体14を有する。チャンバ本体14は、真空チャンバ3、エネルギービーム入射チャンバ(以下、単に入射チャンバという)4、及び放射線出射チャンバ(以下、単に出射チャンバという)5を有する。真空チャンバ3、入射チャンバ4および出射チャンバ5は、互いに空間的に接続される。すなわち、真空チャンバ3と入射チャンバ4とは互いに連結される。同様に、真空チャンバ3と出射チャンバ5とは互いに連結される。
【0040】
本実施形態では、チャンバ本体14は、チャンバ本体14の前方側に突出する筒状の外側突出部15と、チャンバ本体14の内周面から内部側に突出する筒状の内側突出部17とを有し、外側突出部15により出射チャンバ5が、内側突出部17により入射チャンバ4が、それぞれ構成される。
【0041】
なお、真空チャンバ3により、エネルギービームEBの照射によりプラズマ原料23のプラズマを生成する「プラズマ生成部」が実現される。
また、入射チャンバ4、内側突出部17等により、エネルギービームを取り込む「ビーム取り込み部」が実現される。入射チャンバ4は、エネルギービームEBの入射軸IA上に位置するように形成される。また、本実施形態において、内側突出部17は、入射側突出部として機能する。
さらに、出射チャンバ5、外側突出部15等により、生成されたプラズマから放射線を取り出して出射する「放射線取り出し部」が実現される。出射チャンバ5は、放射線Rの出射軸EA上に配置される。
【0042】
図1に示すように、チャンバ本体14の前方面には、出射孔18が形成される。出射孔18は、放射線Rの出射軸EA上で、筐体2の前方面の出射孔8と並ぶ位置に形成される。チャンバ本体14の出射孔18の周縁部から、前方側に突出するように外側突出部15が構成される。外側突出部15は、筐体2の出射孔8に内接するように、筐体2の出射孔8よりも前方側に大きく突出するように構成される。
外側突出部15に囲まれた空間が、出射チャンバ5として機能する。出射チャンバ5を構成する部材である外側突出部自体を、出射チャンバと呼ぶことも可能である。外側突出部15は、チャンバ本体14と一体的に形成されるが、チャンバ本体14とは別個に形成されたのちにチャンバ本体14に接続されてもよい。
【0043】
出射チャンバ5は、放射線Rの出射軸EAを中心軸として、コーン形状となるように構成される。出射チャンバ5は、放射線Rの出射軸EAの方向において、中央部分の断面積が大きく、前後の端部に近づくにつれて断面積が小さくなるように構成される。すなわち、出射チャンバ5は、前後の端部に近づくにつれて絞られるような形状となる。
【0044】
チャンバ本体14の右前角部には、入射窓19が形成される。入射窓19は、エネルギービームEBの入射軸IA上で、筐体2の右側面の入射孔9と並ぶ位置に形成される。チャンバ本体14の右前角部の内部側において、入射窓19を囲む位置からエネルギービームEBの入射軸IAの方向に沿って突出するように、内側突出部17が構成される。
チャンバ本体14の内部空間のうち、内側突出部17に囲まれた空間が、入射チャンバ4として機能する。入射チャンバ4を構成する内側突出部17及びチャンバ本体14の右前角部の部分自体を、入射チャンバと呼ぶことも可能である。内側突出部17は、チャンバ本体14と一体的に形成されるが、チャンバ本体14とは別個に形成されたのちにチャンバ本体14に接続されてもよい。
【0045】
入射チャンバ4は、エネルギービームEBの入射軸IAを中心軸として、コーン形状となるように構成される。入射チャンバ4は、エネルギービームEBの入射軸IAの方向において、チャンバ本体14の内部側の端部に近づくにつれて断面積が小さくなるように構成される。すなわち、入射チャンバ4は、内部側の端部に近づくにつれて絞られるような形状となる。
【0046】
チャンバ本体14の内部空間のうち、入射チャンバ4として機能する内側突出部17の内部空間を除く空間が、真空チャンバ3として機能する。真空チャンバ3を構成する部分自体を、真空チャンバと呼ぶことも可能である。
【0047】
図1に示すように、チャンバ本体14は、筐体2の左側面の貫通孔12から筐体2の外部に突出する部分を有し、その先端が排気用ポンプ(真空ポンプ)20に接続される。排気用ポンプ20により真空チャンバ3内が排気され、真空チャンバ3およびこれに連通する入射チャンバ4および出射チャンバ5が減圧される。これにより、真空チャンバ3内にて生成される放射線Rの減衰が抑制される。
【0048】
入射チャンバ4および出射チャンバ5は、真空チャンバ3を通して排気されることで、真空チャンバ3との間に形成される差圧によって真空チャンバ3よりも高い圧力に維持される。真空チャンバ3は、入射チャンバ4及び出射チャンバ5よりも減圧された雰囲気(低い圧力)であればよく、必ずしも高真空雰囲気でなくてもよい。また、真空チャンバ3内に不活性ガスが供給されていてもよい。
【0049】
原料供給機構6は、真空チャンバ3内のプラズマ生成領域21にてプラズマPを生成し、放射線R(X線、EUV光)を放出するための機構である。原料供給機構6は、真空チャンバ3の内部に配置される、原料供給用の円盤状の回転体22、及び液相のプラズマ原料(放射線原料)23を収容するコンテナ24を含む。
【0050】
図1に示すように、円盤状の回転体22には、エネルギービームEBが入射する入射領域25が設定されている。回転体22は、入射領域25が入射軸IAと出射軸EAとの交点の位置に配置されるように、真空チャンバ3内に配置される。回転体22の入射領域25にはプラズマ原料23が供給され、入射領域25にエネルギービームEBが入射することで、プラズマPが生成される。真空チャンバ3内のプラズマPが生成される領域(空間)が、プラズマ生成領域21となる。従って、プラズマ生成領域21は、回転体22の入射領域25の位置に対応した領域となる。
その他、原料供給機構6の詳細については、後述する。
【0051】
制御部7は、光源装置1が有する各構成要素の動作を制御する。例えば、制御部7により、ビーム源13や排気用ポンプ20の動作が制御される。また制御部7により、後に説明する各種モータ、プラズマ原料循環装置、デブリ低減装置(ホイルトラップ60)、外部電圧源等の動作が制御される。
制御部7は、例えばCPUやメモリ(RAM、ROM)等のコンピュータに必要なハードウェア回路を有する。CPUがメモリに記憶されている制御プログラムをRAMにロードして実行することにより、種々の処理が実行される。制御部7として、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)等のPLD(Programmable Logic Device)、その他ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のデバイスが用いられてもよい。
図1では、制御部7は機能ブロックとして模式的に図示されているが、制御部7が構成される位置等は任意に設計されてよい。本実施形態では、制御部7のCPUが本実施形態に係るプログラムを実行することで、本実施形態に係るプラズマ生成方法及び放射線出射方法が実行される。
【0052】
以下、光源装置1を構成する各種チャンバ、及び原料供給機構6について、詳しく説明する。
【0053】
[入射チャンバ]
入射チャンバ4は、チャンバ本体14の右前角部において、内側突出部17により構成される。チャンバ本体14の右前角部には入射窓19が配置され、ビーム源13から出射されるエネルギービームEBは、入射窓19を通って、入射軸IAに沿って、入射チャンバ4の内部に入射する。なお、エネルギービームEBの入射軸IAは、入射チャンバ4の内部に入射するエネルギービームEBの光軸(主軸)とも言える。
【0054】
入射窓19は、エネルギービームEBを透過可能な材料からなり、入射チャンバ4の内外の圧力差に耐え得る厚さで設計される。エネルギービームEBが電子ビームの場合、例えば、チタンやアルミニウムといった金属の膜を用いることができる。エネルギービームEBがレーザビームの場合、例えば、ガラス材料(石英ガラス)を用いることができる。その他、入射窓19にはエネルギービームEBを透過可能な任意の材料が用いられてよい。また、入射窓19は、真空チャンバ3の内外の圧力差に耐え得る厚さを有していればよい。
【0055】
内側突出部17は、プラズマ生成領域21に向かって突出し、突出側の先端に入射側アパーチャ26が形成される。入射側アパーチャ26は、エネルギービームEBの入射軸IA上にて、入射窓19と並ぶように配置される。入射側アパーチャ26は、エネルギービームEBを入射チャンバ4から真空チャンバ3内に入射する。すなわち入射窓19から入射軸IAに沿って進行するエネルギービームEBは、入射側アパーチャ26を通って、真空チャンバ3内に配置された回転体22に入射する。
【0056】
入射チャンバ4の内部には、飛散したプラズマ原料23やデブリを捕捉するための捕捉機構が配置される。図1に示す例では、捕捉機構として、エネルギービームEBを透過し、プラズマ原料23やデブリを捕捉する板状の回転部材である回転式窓27が配置される。回転式窓27は、例えば、円盤状に構成される。回転式窓27中心部には、図示を省略したモータの回転軸が取り付けられている。モータが回転軸を回転させることにより、回転式窓27は回転する。モータは、制御部7によって駆動制御される。
モータは、筐体2の外部に配置され、筐体2及びチャンバ本体14に形成された図示しない貫通孔を通って回転軸が回転式窓27に接続される。チャンバ本体14に回転軸を導入する際にはメカニカルシールが用いられ、入射チャンバ4内の雰囲気(後述するガス雰囲気)を維持しつつ、回転式窓27の回転が許容される。
また、回転式窓27を回転させる回転軸は、エネルギービームEBの入射軸IAとはオフセットされた位置に配置される。これにより、エネルギービームEBは、回転式窓27の回転軸に干渉されず、回転式窓27のビーム透過領域を通って進行することが可能となる。
回転式窓27を回転させることで、回転式窓27のビーム透過領域の実質的な面積を増大させることが可能となり、回転式窓27の長寿命化を図ることが可能となり、回転式窓27の交換頻度を低減することが可能となる。
【0057】
図1に示すように、チャンバ本体14には、入射チャンバ4に連結するように、ガス注入路28が設置される。ガス注入路28を介して、図示を省略したガス供給装置から、入射チャンバ4内にガスが供給される。供給されるガスは、エネルギービームEBに対して透過率の高いガスであり、例えばアルゴン(Ar)やヘリウム(He)といった希ガス等が採用される。ガスは、入射チャンバ4の内部の圧力を増加させるために供給される。すなわちガス注入路28から入射チャンバ4内にガスが供給されることにより、入射チャンバ4の内部圧力を、真空チャンバ3の内部圧力よりも十分に高い圧力に維持することが可能となる。
【0058】
内側突出部17は、突出側(入射側アパーチャ26が形成されている側)に進むにつれて断面積が小さくなるコーン形状からなる。そして、その先端部には入射側アパーチャ26が設けられている。これにより、ガスを供給して入射チャンバ4の内部圧力を増加させることに有利な構成となっている。また内側突出部17がコーン形状に構成されることで、チャンバ本体14内において内側突出部17が占める空間を小さくすることが可能となり、他の部材の配置設計等の自由度を向上させることが可能となる。この結果、装置の小型化を図ることが可能となる。
【0059】
[出射チャンバ]
出射チャンバ5は、出射軸EAを中心軸とするコーン形状からなり、前方側の端部(外側突出部15の前方側の端部)にマスク検査装置等の利用装置が接続される。図1に示す例では、利用装置の一部をなすチャンバとして、アプリケーションチャンバ30が接続される。アプリケーションチャンバ30内の圧力は大気圧であってもよい。また、アプリケーションチャンバ30の内部は、必要に応じてガス注入路31よりガス(例えば、不活性ガス)を導入してパージしてもよい。またアプリケーションチャンバ30の内部のガスは図示を省略した排気手段により排気されていてもよい。
【0060】
図1に示すように、外側突出部15には、出射チャンバ5に連結するように、ガス注入路32が設置される。ガス注入路32を介して、図示を省略したガス供給装置から、出射チャンバ5内にガスが供給される。供給されるガスは、放射線Rに対して透過率の高いガスであり、例えばアルゴンやヘリウムといった希ガス等が採用される。アルゴンやヘリウムは、エネルギービームEB及び放射線Rの両方に対して透過率の高いガスとして用いることが可能である。従って、入射チャンバ4及び出射チャンバ5の両方に同じガスが供給されてもよい。この場合、ガス供給装置を共通して用いることが可能となるので、装置の簡素化を図ることが可能である。もちろん入射チャンバ4に供給されるガスと、出射チャンバ5に供給されるガスとして、互いに異なるガスが用いられてもよい。ガスは、出射チャンバ5の内部の圧力を増加させるために供給される。すなわち、ガス注入路32から出射チャンバ5内にガスが供給されることにより、出射チャンバ5の内部圧力を、真空チャンバ3の内部圧力よりも十分に高い圧力に維持することが可能となる。
【0061】
出射チャンバ5の内部には、出射チャンバ5の内に入射した放射線Rを利用装置内(アプリケーションチャンバ30内)に導光して集光するためのコレクタ(集光鏡)33が配置されている。図1では、出射チャンバ5に入射し集光される放射線Rの成分がハッチングにて図示されている。コレクタ33の外表面は、冷却と位置合わせの目的で出射チャンバ5の内面(外側突出部15の内面)に接触している。コレクタ33としては、例えば、単一シェルの斜入射反射鏡が用いられる。コレクタ33本体は、金属部材(例えば、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、ステンレス)で構成される。
【0062】
コレクタ33の内側の反射面の反射コーティングは任意であるが、放射線Rを反射する反射コーティング材料としては、例えばルテニウム(Ru)が好適である。なお、コレクタ33を、本体に高価なRuをコーティングした構造とする代わりに、本体をガラス(二酸化ケイ素:SiO)とし、内側を研磨して放射線反射面を形成するように構成してもよい。このガラス製コレクタは、反射面の反射率はRuコーティングが施された金属部材製コレクタと比較すると反射率は低いものの、当該Ruコーティングコレクタと比較すると材料コストが非常に低く、頻繁な交換が可能となる。
【0063】
図1に示すように、出射チャンバ5とアプリケーションチャンバ30との間には、フィルタ膜35が設けられる。フィルタ膜35は、真空チャンバ3内のプラズマ生成領域21と、アプリケーションチャンバ30とを物理的に分離する(物理的に空間を分離する)ためのものであり、飛散するプラズマ原料23やデブリのアプリケーションチャンバ30への進入を防止する。フィルタ膜35は、プラズマ生成領域21で発生する放射線Rを透過する材料からなる。放射線RがX線の場合、フィルタ膜35は例えば、X線に対する透過率が非常に高いベリリウム薄膜により構成される。放射線RがEUV光の場合は、例えば、ジルコニウム(Zr)により構成される。
【0064】
なお、出射チャンバ5内はガスが供給されるものの真空チャンバ3と空間的に接続されるので減圧雰囲気である。一方、アプリケーションチャンバ30内は、上記したように大気圧であってもよい。この場合、出射チャンバ5とアプリケーションチャンバ30との間には圧力差が生じる。よって、フィルタ膜35の厚みは、この圧力差に耐え得る厚みとなる。すなわち、フィルタ膜35は、真空チャンバ3と空間的に接続される出射チャンバ5内の減圧雰囲気を破壊しないように構成される。
【0065】
出射チャンバ5の内部には、遮蔽部材(中央掩蔽)36が配置される。遮蔽部材36は、放射線Rの出射軸EA上にて、チャンバ本体14の出射孔18、筐体2の出射孔8、及びフィルタ膜35と並ぶように配置される。プラズマPから放出され出射チャンバ5に入射する放射線Pの中には、コレクタ33により集光されずに、出射チャンバ5内を進行する放射線成分も存在し得る。この集光されない放射線成分の少なくとも一部は広がりながら進行する。このような放射線成分は、通常、利用装置では利用されず、不要な場合が多い。本実施形態では、遮蔽部材36により、コレクタ33により集光されない放射線成分を遮光することが可能である。
【0066】
さらに図1に示すように、本実施形態では、入射チャンバ4の後方側に、左右方向に延在するようにガスノズル37が設置される。ガスノズル37は、チャンバ本体14の右側面に、シール部材等を介して設置される。ガスノズル37は、図示を省略したガス供給装置に接続され、チャンバ本体14内にガスを供給する。
ガスノズル37は、後述する第2ガス供給部に相当し、ガスノズル37から、入射軸IAと出射軸EAとの間の軸間領域の右側から左右方向に沿って左側に向かってガスが吹き付けられる。これにより、プラズマPから放出されるデブリを、入射軸IA及び出射軸EAから遠ざかる方向に移動させることが可能となる。
【0067】
[原料供給機構]
図2は、原料供給機構6の構成例を示す模式図である。
図2には、図1の矢印Aの方向から回転体22及びコンテナ24を見た場合が図示されている。従って図2には、回転体22の表面22a側が図示されている。
【0068】
図1及び図2に示すように、原料供給機構6は、円盤状の回転体22と、コンテナ24と、モータ38と、スキマー40と、プラズマ原料循環装置41とを含む。
【0069】
円盤状の回転体22は、表面22a及び裏面22bを有し、表面22aの所定の位置に、エネルギービームEBが入射する入射領域25が設定される。逆に言えば、回転体22の2つの主面のうち、エネルギービームEBが入射する入射領域25が設定される主面が表面22aとなる。そして反対側の主面が、裏面22bとなる。回転体22の表面22a及び裏面22bは、回転体22の回転軸心(回転軸39)に垂直な平面である。
回転体22は、例えばタングステン(W)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)等の高融点金属で構成される。回転体22は、下方側の一部が、コンテナ24に貯留されたプラズマ原料23に浸漬されている。
【0070】
放射線RとしてX線が出射される場合は、プラズマ原料23としてX線原料が用いられる。X線原料は常温で液体状である金属であり、例えば、ガリウム(Ga)や、ガリウム、インジウム(In)及びスズ(Sn)の共晶合金であるガリンスタン(登録商標)などのガリウム合金を用いることができる。
放射線RとしてEUV光が出射される場合は、プラズマ原料23としてEUV原料が用いられる。EUV光を放出するための原料としては、例えば、液体状のスズ(Sn)やリチウム(Li)が用いられる。Sn、Liは常温では固体であるので、コンテナ24には図示を省略した温調手段が設けられる。例えば、EUV原料がSnの場合は、コンテナ24はSnの融点以上の温度に維持される。
【0071】
回転体22の裏面22bの中心部には、モータ38の回転軸39が接続される。制御部7によりモータ38の動作が制御され回転軸39を介して回転体22が回転される。回転軸39は、回転体22の表面22aに直交する方向に延在するように配置される。従って、回転体22は、表面22aに直交する方向を回転方向として回転する。回転軸39は、筐体2の貫通孔10を通り、メカニカルシール42を介して、真空チャンバ3内に導入される。メカニカルシール42は、真空チャンバ3内の減圧雰囲気を維持しつつ、回転軸39の回転を許容する。
【0072】
回転体22の下方側の一部がコンテナ24に貯留されたプラズマ原料23に浸漬した状態で、回転体22が回転軸39を中心に回転する。これにより、プラズマ原料23は、回転体22の表面22aとの濡れ性により回転体22の表面22aになじむようにコンテナ24の原料貯留部分から引き上げられ、輸送される。従って、モータ38及び回転軸39は、回転体22の表面22aの少なくとも一部に原料を塗布する原料供給部として機能する。
図2に示すように、本実施形態では、回転体22の表面22aの周縁部の近傍に、エネルギービームEBが入射する入射領域25が設定される。この入射領域25にプラズマ原料23が供給されるように、原料供給部(モータ38及び回転軸39)の構成及び動作が適宜設計される。
【0073】
スキマー40は、回転体22の表面22a上に供給されるプラズマ原料23の膜厚を所定の膜厚に調整するための膜厚調整部材として、回転体22の周縁部の所定の位置に設けられる。スキマー40は、例えばチャネル構造を有する構造体であって、その内側に回転体22を挟むように所定の間隙をもって配置される。スキマー40は、回転体22の表面22aに塗布されたプラズマ原料23の一部を削ぎとるスクレーパーとして機能する。
【0074】
回転体22の表面22aとスキマー40との間隔は、回転体22の表面22aのエネルギービームEBが入射する入射領域25におけるプラズマ原料23の膜厚に対応する。そして、スキマー40は、回転体22の表面22aの入射領域25におけるプラズマ原料23の膜厚を、所定の膜厚に調整可能な位置に配置される。回転体22の表面22aとスキマー40との間隔を適宜設定する。これにより、コンテナ24の原料貯留部分において回転体22に塗布された液体状のプラズマ原料23は、回転体22の回転によってスキマー40を通過する際に、回転体22上における膜厚が所定の膜厚となるように調整される。
【0075】
スキマー40によって膜厚が調整された回転体22上のプラズマ原料23は、回転体22の回転とともにエネルギービームEBが入射する入射領域25に輸送される。すなわち、回転体22の回転方向は、回転体22上のプラズマ原料23がスキマー40を通過後、入射領域25に輸送される方向である。そして、入射領域25において、回転体22上のプラズマ原料23にエネルギービームEBが照射され、プラズマPが発生される。
スキマー40により、入射領域25にほぼ均一にプラズマ原料23を供給することが可能となる。入射領域25におけるプラズマ原料23の厚みを安定させることにより、プラズマPから放射される放射線Rの強度を安定させることが可能となる。
本実施形態では、スキマー40により、表面に供給されるプラズマ原料の厚みを調整する厚み調整機構が実現される。
【0076】
プラズマ原料循環装置41は、放射線Rの発生動作によりプラズマ原料23が消費された場合に、適宜コンテナ24にプラズマ原料23を補充する。また、プラズマ原料循環装置41は、プラズマ原料23の温度調整機構(冷却機構)としても機能する。
【0077】
図2に示すように、プラズマ原料循環装置41は、原料流入管路44と、原料排出管路45と、原料貯留槽46と、原料駆動部(ポンプ)47と、温度調整機構48とを含む。
原料貯留槽46には、プラズマ原料23が貯留される。
原料流入管路44及び原料排出管路45は、原料貯留槽46とコンテナ24とを連通するように、原料貯留槽46とコンテナ24との間に設置される。
原料駆動部47は、原料流入管路44に設置される。原料駆動部47が駆動することにより、原料貯留槽46に貯留されたプラズマ原料23が原料流入管路44に流出し、原料貯留槽46、原料流入管路44、コンテナ24、及び原料排出管路45の循環系にて、プラズマ原料23を循環させることが可能となる。原料駆動部47としては、例えば磁力により液体金属(プラズマ原料23)を輸送することが可能な電磁ポンプが用いられる。もちろん、他の種類のポンプが用いられてもよい。
【0078】
本実施形態では、原料貯留槽46及び原料駆動部47は、真空チャンバ3の外部であって、さらに筐体2の外部に配置される。プラズマ原料循環装置41からコンテナ24へと延びる原料流入管路44及び原料排出管路45は、筐体2の貫通孔11を通り、シール部材49を介して真空チャンバ3内に導入され、コンテナ24に接続される。シール部材49は、真空チャンバ3内の減圧雰囲気を維持しつつ、原料流入管路44及び原料排出管路45を真空チャンバ3の外側から内側へ貫通するのを許容する。
【0079】
回転体22の表面22aに塗布されたプラズマ原料23のうち、エネルギービームEBが照射された部分は消費される。そのため、放射線R(X線又はEUV光)の発生動作を長期間安定して行うためには、大容量のプラズマ原料23をコンテナ24に貯留する必要がある。
一方で、光源装置1の真空チャンバ3の大きさとの兼ね合いから、真空チャンバ3の内部に収容可能なコンテナ24の大きさには制約があり、大容量のプラズマ原料23をコンテナ24に貯留することが困難な場合も多い。
そこで、大容量のプラズマ原料23を貯留可能な原料貯留槽46を真空チャンバ3の外部に設置し、原料流入管路44を介してコンテナ24の原料貯留部分にプラズマ原料23を補充可能に構成する。
これにより、コンテナ24の原料貯留部分のプラズマ原料23の量は長期間一定に保たれ、結果として放射線Rの発生動作を長期間安定して行うことが可能となる。
すなわち、プラズマ原料循環装置41は、コンテナ24の原料貯留部分のプラズマ原料23の量が一定となるように、コンテナ24の原料貯留部分と原料貯留槽46との間でプラズマ原料23を循環する。
【0080】
また、回転体22の表面22aに塗布されたプラズマ原料23にエネルギービームEBが照射されると、当該プラズマ原料23(ターゲット)より放射線Rが発生すると同時に、回転体22自体が加熱される。この加熱された回転体22は、プラズマ原料23が貯留されているコンテナ24の原料貯留部分を通過する度に、コンテナ24内のプラズマ原料23との間で熱交換を行う。
そのため、そのままではコンテナ24内のプラズマ原料23の温度は徐々に変化してしまう。プラズマ原料23の粘度が温度により変化する場合、プラズマ原料23の温度の変化により回転体22に対するプラズマ原料23の濡れ性が変化し、回転体22へのプラズマ原料23の付着状態が変化する。その結果、放射線Rの出力も変化するおそれがある。
【0081】
本実施形態に係るプラズマ原料循環装置41は、比較的大型の原料貯留槽46を真空チャンバ3の外部(筐体2の外部)に備える。そのため、コンテナ24の原料貯留部分において温度変化したプラズマ原料23が原料排出管路45を介して原料貯留槽46に流入したとしても、原料貯留槽46内のプラズマ原料23の温度はさほど変化せず、ほぼ一定に保たれる。そして、ほぼ一定に温度が保たれたプラズマ原料23が、原料流入管路44を介してコンテナ24に流入される。
このように、プラズマ原料循環装置41によりプラズマ原料23を循環させることで、コンテナ24内のプラズマ原料23の温度はほぼ一定に保たれる。従って、回転体22へのプラズマ原料23の付着状態も安定し、放射線Rの出力を安定させることが可能となる。
【0082】
さらに、原料貯留槽46内のプラズマ原料23の温度が、原料貯留槽46の内部に設けられた温度調整機構48によって調整されてもよい。原料貯留槽46は、真空チャンバ3の外部(筐体2の外部)に設置されているため、真空チャンバ3の大きさに左右されない大容量の温度調整機構48を用いることができる。これにより、プラズマ原料23の温度を短時間で確実に所定の温度に調整することが可能となる。
【0083】
このように、温度調整機構48を有するプラズマ原料循環装置41を用いることにより、プラズマ原料23の温度を一定に保ったまま、コンテナ24の原料貯留部分にプラズマ原料23を供給することが可能となる。例えば、液体状態における温度が常温よりも低い液体金属が、プラズマ原料23として用いられるとする。この場合でも、常温よりも低い温度に保ったまま、液相のプラズマ原料23を、コンテナ24に供給することが可能である。
また、液体状態における温度が常温よりも低い液体金属が、プラズマ原料23として用いられるとする。この場合でも、常温より高い温度に保ったまま、液相のプラズマ原料23を、コンテナ24に供給することが可能である。
【0084】
図3は、光源装置1に適用可能なコンテナの他の構成例を示す模式図である。
図3に示す例では、コンテナ24がカバー状構造体として構成されており、回転体22のほぼ全体を囲むことが可能である。コンテナ24には、回転体22の表面22aに設定される入射領域25に対応する位置に、開口部52が形成される。開口部52を介して、入射領域25にエネルギービームEBが入射され、プラズマPが生成される。また開口部52を介してプラズマPから放射線Rが取り出され、出射チャンバ5を介して出射される。
【0085】
コンテナ24をカバー状構造体として構成することで、回転体22から飛散したプラズマ原料23は、コンテナ24の開口部52を除き、コンテナ24の内壁に付着する。そして、内壁に付着したプラズマ原料23は、コンテナ24下部の原料貯留部分に移動する。従って、コンテナ24の外部であって、真空チャンバ3の内部である空間には、プラズマ原料23が飛散することは殆どない。この結果、飛散したプラズマ原料23が真空チャンバ3の内壁に付着することを十分に抑制することが可能となる。
【0086】
また図1に示すように、本実施形態では、チャンバ本体14の前面側にて、真空チャンバ3と空間的に接続される領域に、放射線診断部29が構成される。放射線診断部29は、放射線Rの出射軸EAとは異なる方向に放射される放射線Rが入射する位置に構成される。放射線診断部29は、放射線Rの物理的状態を診断する部分であり、例えば、放射線Rの有無を検出する検出器や、放射線の出力を測定する測定器により構成される。
【0087】
[放射線Rの発生プロセス]
[原料供給]
回転体22の下方側の一部がコンテナ24に貯留されたプラズマ原料23に浸漬した状態で、当該回転体22が回転軸39を中心に回転する。プラズマ原料23は、回転体22の表面22aとの濡れ性により回転体22の表面22aになじむようにコンテナ24の原料貯留部分から引き上げられる。そして、回転体22の表面22aに塗布された状態で、エネルギービームEBが入射する入射領域25に輸送される。回転体22の回転方向は、図2に示すように、回転体22の表面22aに供給されるプラズマ原料がコンテナの原料貯留部分から引き上げられたのち、スキマー40を通過してプラズマ生成領域21(入射領域25)に到達するような方向である。
【0088】
[プラズマ生成]
スキマー40を通過して回転体22上での厚みが所定の厚みに調整されたプラズマ原料23が、回転体22の入射領域25に到達する。ビーム源13から入射軸IAに沿って、入射領域25に向かってエネルギービームEBが出射される。エネルギービームEBは、入射孔9、入射窓19、回転式窓27、入射側アパーチャ26を通って、プラズマ原料23が供給された入射領域25に入射する。入射領域25へエネルギービームEBが入射すると、入射領域25に存在するプラズマ原料23は加熱励起され、高温プラズマPが生成される。プラズマ生成領域21に生成される高温プラズマPから、所定の波長の放射線Rが放出される。
【0089】
[放射線Rの取り出し]
高温プラズマPから放出される放射線Rは、様々な方向に向かって進行する。このうち、出射チャンバ5に入射した放射線Rは、出射チャンバ5を通過してマスク検査装置等の利用装置(アプリケーションチャンバ30)に導光される。すなわち、高温プラズマPから放出される放射線Rのうち、出射チャンバ5に入射した成分が、出射軸EAに沿って外部へと取り出される。
【0090】
[プラズマ原料の飛散、及びデブリの対策]
プラズマ原料23の供給工程において、回転体22が回転すると遠心力により回転体22の表面22aに付着したプラズマ原料23が飛散する場合があり得る。また、プラズマPの生成工程において、回転体22に塗布されているプラズマ原料23にエネルギービームEBが照射されるとプラズマ原料23の一部が気化する。その際に、プラズマ原料23の一部(プラズマ原料23の粒子)がデブリとして放出される。
例えばデブリとして、イオン、中性粒子、電子等が、放射線Rととともに放出される。また、プラズマPの発生にともない回転体22がスパッタリングされ、回転体22の材料粒子が、デブリとして放出される場合もあり得る。
【0091】
プラズマ原料(EUV放射の場合、例えばスズ(Sn))からなるデブリが放射線Rの出射軸EA方向に入射して最終的に利用装置(アプリケーションチャンバ30)に到達すると、利用装置内の光学素子の反射膜を損傷または汚染させ性能を低下させることがある。そのため、このようなデブリが利用装置に到達しないように、当該デブリが放射線Rの出射軸EA方向に進行することを抑制したり、進行方向を変えたり、出射軸EA方向に進行するデブリの量を低減することが重要となる。
【0092】
そのために上記した例では、ガス注入路32から出射チャンバ5内部に放射線R(X線やEUV)に透明なガスが注入される。これにより、真空チャンバ3(プラズマ生成部)が出射チャンバ5(放射線取り出し部)よりも減圧された雰囲気に維持されるため、デブリが放射線出射部に進入することを抑制している。
【0093】
また、一般に平面上の液体原料がエネルギービームによって気化する際に放出される液体原料からなるデブリは、上記平面の法線方向に一番多く放出される。そこで図1に示すように、放射線Rの取り出し方向の光軸(出射軸EA)と、回転体22のエネルギービームが照射される表面22aの法線NAとを互いに相違させることで、出射チャンバ5側へのデブリの進入を抑制することができる。
【0094】
また、光源装置1は、ガスノズル37を用いて、少なくとも上記法線NA方向と放射線Rの出射軸EA方向を横断する方向であって、上記法線NA方向に最後に到達するような方向に向かってガスを供給する。このガスにより、法線NA方向に放出されるデブリの少なくとも一部は、放射線Rの出射軸EAより遠ざかる方向に移動させられる(デブリの進行方向が変えられる)ので、放射線Rの出射軸EA方向(出射チャンバ5側)へのデブリの入射が更に抑制される。
【0095】
一方、デブリは発生地点から空間内で広がるので、デブリの一部は、放射線Rの出射軸EA方向(出射チャンバ5側)へも進入する。そこで、本実施形態においては、出射チャンバ5へ進入するデブリの量を低減するデブリ低減装置(DMT(Debris Mitigation Tool)とも言う)が、出射チャンバ5および放射線診断部29と、プラズマ生成領域21との間に配置される。DMTとしては、本実施形態ではホイルトラップ(foil trap)60が採用される。以下、ホイルトラップ60の詳細について説明する。
【0096】
[ホイルトラップ]
一般に、ホイルトラップは、空間を細かく分割するように配置されている複数のホイル(薄膜や薄い平板)を有する。複数のホイルにより細かく分割された各空間においては、当該空間でのコンダクタンスを下げて圧力を上げる機能が奏される。デブリがこれらのホイルにより分割された各空間(圧力が上昇した領域)を進行すると、この圧力が上昇した領域におけるデブリと雰囲気ガスとの衝突確率が上がる。その結果、デブリの飛散速度が低下し、またデブリの進行方向が変わるため、デブリはデブリ低減装置に捕捉される。
【0097】
ホイルトラップとしては、複数のホイルの位置が固定された固定式ホイルトラップと、複数のホイルがデブリと能動的に衝突する作用を加えた回転式ホイルトラップがある。回転式ホイルトラップは、中央に配置された回転軸を中心として、半径方向に複数のホイルが放射状に配置され、上記回転軸を中心に複数のホイルを回転させることでプラズマから飛来するデブリと当該ホイルとを衝突させる。回転式ホイルトラップは、比較的低速で飛散するデブリの捕捉に特に有効である。なお、一つのデブリ低減装置は、回転式ホイルトラップと固定式ホイルトラップとの双方を備えていてもよいし、いずれか一方のみを備えていてもよい。本実施の形態においては、回転式ホイルトラップのみが採用されている。
【0098】
図4は、本実施形態におけるホイルトラップ60の構成例を示す拡大断面図、図5は、図4の矢印B方向からみた矢視図(カバー部材70の図示は省略)、図6は、図4におけるC-C断面図である。
【0099】
図4図6に示すように、ホイルトラップ60は、チャンバ本体14に回転可能に設置された軸部材61と、軸部材61を中心に放射状に配置された複数のホイル(ブレード)62とを有する。
軸部材61は、メカニカルシール63を介してチャンバ本体14に支持されている。メカニカルシール63は、真空チャンバ3内の減圧雰囲気を維持しつつ、軸部材61の回転を許容する。軸部材61は、筐体2の外側に設置されたモータ66の回転軸である。
複数のホイル62は、薄膜または薄い平板であり、軸部材61の先端部に取り付けられたハブ64の周面に等角度間隔で配置される。各ホイル62は、軸部材61およびハブ64の中心軸線を含む平面上にある。
【0100】
ハブ64は、先端側がその反対側よりも小径の円錐台形状を有し、複数のホイル62はそれぞれハブ64の周面に直交する方向に延びる。このため図4および図6に示すように、各ホイル62は、軸部材63の軸方向に対して回転体22側に向かって所定角度傾斜するように配置される。
ホイルトラップ60はさらに、複数のホイル62の先端部が内接する外側リング65を有する。外側リング65は、ハブ64と同心的であり、先端側がその反対側よりも小径の円錐台形状を有する。各ホイル62は、ハブ64と外側リング65との間に配置されている。
軸部材61、各ホイル62、ハブ64および外側リング65は、例えば、タングステンおよび/またはモリブデンなどの高融点金属である。
【0101】
ホイルトラップ60の軸部材61は、回転体22の回転軸心(回転軸39)に平行な方向、すなわち、回転体22の表面22aの法線NA方向に沿って配置される。これにより、ホイルトラップ60の複数のホイル62は、プラズマ生成領域21から放射線出射部(出射チャンバ5)に向かって進む放射線R(X線またはEUV)を遮らないように、出射チャンバ5に向かって進む放射線の光線方向に平行またはほぼ平行に配置される。
すなわち、図4に示すように、各ホイル62がハブ64の中心軸線を含む平面上に配置されたホイルトラップ60は、ハブ64の中心軸線の延長線上にプラズマP(発光点)が存在するように配置される。これにより、ハブ64および外側リング65を除けば、放射線は各ホイル62の厚みの分のみ遮光され、ホイルトラップ60を通過する放射線Rの割合(透過率ともいう)を最大にすることが可能となる。
【0102】
図4に示すように、ハブ64は、モータ66の駆動により軸部材61の軸まわりに回転する。ハブ64の中心軸線は、軸部材61の中心軸線に合致する。ホイルトラップ60は、モータ66に駆動されて回転し、回転する各ホイル62は、プラズマPから到来するデブリに衝突してデブリを捕捉し、当該デブリが出射チャンバ5やその先の利用装置(アプリケーションチャンバ30)に侵入するのを阻止する。
【0103】
ホイルトラップ60は、真空チャンバ3に配置されるのに対して、モータ66は、真空チャンバ3を包囲する筐体2の外に配置される。筐体2の壁には、軸部材61が通過する貫通孔67が形成されている。
【0104】
ホイルトラップ60は、プラズマPからの放射により高温となる。このため、ホイルトラップ60の過熱を防止するために、軸部材61を中空にして冷却水を流通させることで、ホイルトラップ60を冷却可能に構成してもよい。また、回転時のモータ66自体も発熱するため、モータ66の周囲に水冷配管68を巻き付けて除熱してもよい。水冷配管68には水が流され、熱交換によりモータ66を冷却する。
【0105】
図1図4図6に示すように、ホイルトラップ60は、カバー部材70をさらに備える。カバー部材70は、複数のホイル62およびハブ64を包囲し、ホイル62により捕捉されたデブリが真空チャンバ3の内部に飛散するのを防止する。
【0106】
カバー部材70は、回転体22の表面22aに対向する正面部70aと、正面部70aとは反対側の背面部70bと、正面部70aの周縁部と背面部70bの周縁部との間に設けられ外側リング65に対向する周面部70cと、背面部70bの中央部に設けられ軸部材61の一部を包囲する筒状部70dとを有する。
正面部70a、背面部70bおよび周面部70cは、複数のホイル62およびハブ64を回転可能に収容する空間部71を形成する。筒状部70dは、軸部材61と同心的に形成され、カバー部材70からモータ66側へ突出する軸部材61を所定の長さにわたって包囲する。
【0107】
カバー部材70は、例えばタングステン(W)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)等の高融点金属で構成される。カバー部材70は、図示しない支持部材を用いてチャンバ本体14に固定されることで、真空チャンバ3内に静的に配置される。
【0108】
カバー部材70は、第1開口部701、第2開口部702、第3開口部703および第4開口部704を有する。
第1開口部701および第3開口部703は、カバー部材70の正面部70aに設けられ、第2開口部702および第4開口部704は、カバー部材70の背面部70bに設けられる。
第1~第4開口部701~704の形状は特に限定されず、典型的には円形であるが、楕円形や矩形等の他の形状で形成されてもよい。
【0109】
第1開口部701は、プラズマPの発光点から放射される放射線Rのうち出射チャンバ5へ向かう(出射軸EA方向の)放射線R1(図4参照)を空間部71へ入射させる。
第2開口部702は、空間部71と連通し、第1開口部701へ入射した放射線R1を出射チャンバ5へ向けて出射させる。
第3開口部703は、プラズマPの発光点から放射される放射線Rのうち放射線診断部29へ向かう放射線R2(図4参照)を空間部71へ入射させる。
第4開口部704は、空間部71と連通し、第3開口部703へ入射した放射線R2を放射線診断部29へ向けて出射させる。
【0110】
ホイルトラップ60のホイル62と衝突したデブリの一部は、ホイル62に堆積する。各ホイル62は、プラズマPからの放射により加熱されおり、適切に除熱を行なうことでデブリの融点以上に保持することができる。例えば、デブリがスズ(Sn)の場合、ホイル62の温度をスズの融点(約232℃)以上に保持することができる。そのため、ホイル62上にデブリが堆積し続けることはない。図6に示すように、ホイル62上の液状のデブリDは、ホイル62の回転により発生する遠心力によりホイル62上を移動し、やがてホイル62の端部からホイルトラップ60の外部に離脱する。
【0111】
すなわち、ホイルトラップ60により捕捉されたデブリDの少なくとも一部は、遠心力によりホイルトラップ60のホイル62上を径方向に移動し、ホイル62の端部から離脱して空間部71へ飛散し、カバー部材70の内面に付着する。
カバー部材70は、図示を省略した加熱手段(カバー加熱部)によって加熱され、当該加熱によりカバー部材70の内面に付着したデブリDは固化せず、液相状態を保持する。カバー部材70の内面に付着したデブリDは、重力によりカバー部材70の下部に集まり、カバー部材70の下部に設けられた排出管73を介してカバー部材70の外に排出されて廃原料となる。
【0112】
排出管73は、空間部71からカバー部材70の外部へ向けて捕集したデブリDを排出するためのものであり、本実施形態ではカバー部材70の底部に空間部71と連通する管状に形成される。排出管73からカバー部材70の外部に排出される廃原料(デブリD)は、真空チャンバ3の下側に設けられたデブリ収容部74に収容される。これにより、カバー部材70は、ホイルトラップ60の各ホイル62の端部から離脱したデブリDが真空チャンバ3の内部に飛散するのを防止することができる。
【0113】
デブリ収容部74は、チャンバ本体14の底部における排出管73と対向する位置に設けられた貫通孔75をチャンバ本体14の外側から気密に覆うように配置された容器である。デブリ収容部74内に収容されたデブリDは、冷却されて固相の状態で収容されてもよいし、デブリ収容部74をデブリDの融点以上に加熱する加熱機構を備える場合は、液相の状態でデブリDを蓄えておくことができる。
【0114】
ここで、例えばLDP方式のEUV光源装置において回転式ホイルトラップからなるデブリ低減装置を採用する場合、当該回転式ホイルトラップ(ハブ)の中心軸線(回転軸)は、上記中心軸線の延長線上にプラズマ(発光点)が存在するように配置される。プラズマを通過する仮想線は無数にあるので、回転式ホイルトラップのプラズマに対する姿勢は、利用装置側に出射する放射線が回転式ホイルトラップのブレード(ホイル)間を経由して上記利用装置側に到達するのであれば、上記仮想線のうち任意の仮想線に上記中心軸線に一致させることで決定される。すなわち、比較的任意に上記姿勢を設定することができる。上記LDP方式のEUV光源装置においては、EUVを放出するプラズマが、一対の電極の間の空間に生成される。
【0115】
一方、本実施の形態に係る光源装置1においては、回転体22の表面22aに供給した放射線原料(プラズマ原料23)にエネルギービームEBを照射して当該表面近傍に高温プラズマPを生成するLPP方式が採用されている。この場合、プラズマPの発生と同時に放出されるデブリは、回転体22の表面22aの法線方向に多く分布する。
そこで、本実施形態におけるホイルトラップ60は、その中心軸線を回転体22の表面22a(放射線原料供給平面)の法線方向と略一致させている。更に複数のホイル62を包囲するカバー部材70は、プラズマPと対向する面において、上記中心軸線と交差する地点およびその地点の比較的近傍を閉塞していて、かつ、出射チャンバ5ならびに放射線診断部29に入射する放射線のみを通過させる第1~第4開口部701~704が設けられている。
このように構成することで、比較的多量に放出されるデブリをカバー部材70のプラズマPと対向する面でブロックすることが可能となり、デブリが各開口部701~704に進入するのを抑制することができる。
【0116】
また、カバー部材70は加熱手段(カバー加熱部)によって加熱されているので、図6に示すように、カバー部材70のプラズマPと対向する面に到着して付着したデブリDは固化せず、液相状態を保持する。この付着したデブリDは、重力によりカバー部材70の表面(正面部70a)の下部に移動して、カバー部材70から下方へ離脱する。カバー部材70を離脱したデブリDは、例えば液滴状となって、真空チャンバ3の下側に設けられたデブリ収容部74に収容される。
【0117】
このように構成することで、出射チャンバ5に入射する放射線R1ならびに放射線診断部29に入射する放射線R2は、必然的にホイルトラップ60におけるホイル62の外周面側近傍を通過することになる(すなわち、軸部材61より離れた領域を通過する)。
そのため、放射線R1,R2の出射方向に進入するデブリDも、ホイルトラップ60の軸部材61に近い側のホイル62表面ではなく、軸部材61より離れた遠い側のホイル62表面に付着することになる。そのため、付着したデブリDに作用する遠心力が大きくなるので、ホイル62上を移動する液体状のデブリDの移動速度が速くなり、当該デブリDが速やかにホイル62の端部から離脱して、カバー部材70の内面に付着する。すなわち、より短時間でホイル62に捕捉されたデブリDをカバー部材70側に離脱させることができる。
【0118】
さらに、図1に示すように、出射チャンバ5とホイルトラップ60の背面部70bとの間の空間に比較的高速なガスを放出可能なガスノズル77を設けても良い。ガスノズル77は、ホイルトラップ60と出射チャンバ5との間に、出射チャンバ5から軸部材61(回転体22の表面22aの法線(NA)方向)に向かう気流の流れを形成するガス供給部(第1ガス供給部)として構成される。
【0119】
ガスノズル77は、例えば、出射チャンバ5側から放射線診断部29側へ向かうガスの流れを形成するようにチャンバ本体14に設置される。ガスノズル77からガスを放出することで、カバー部材70の第2開口部702から外部に放出されるデブリ(ホイルトラップ60で補足できなかったデブリ)が出射チャンバ5に入射するのを更に抑制することが可能となる。
また、ガスノズル77から放出されたガスが、第2開口部702からカバー部材70の内部へ進入することで、空間部71の圧力を真空チャンバ3の圧力よりも高めて、空間部71内へのデブリの進入を抑制する効果も期待できる。
【0120】
また、本実施形態のホイルトラップ60においては、軸部材61が、図4に示すように、回転体22から出射チャンバ5へ向かって出射する放射線R1の主軸である第1の軸(出射軸EA)と、回転体22から放射線診断部29へ向かって出射する放射線R2の主軸である第2の軸との間の軸間領域に配置される。これにより、1つのホイルトラップ60で、出射チャンバ5および放射線診断部29へ向けて進行するデブリを同時に捕捉することができる。
【0121】
また、上述のように、ホイルトラップ60のハブ64は円錐台形状に形成されるため、ハブ64の周面に取り付けられた複数のホイル62は、軸部材63の軸方向に対して回転体22側に向かって所定角度傾斜するように配置される。上記所定角度は、図4に示すように、複数のホイル62が、軸部材61から上記第1の軸(放射線R1の主軸)および上記第2の軸(放射線R2の主軸)にそれぞれ直交する方向に延びる。これにより、各ホイル62をプラズマPの発光点に近づけることができるため、出射チャンバ5および放射線診断部29へ向けて飛散するデブリの捕捉に必要な各ホイル62の径方向への突出長を極力短くできる。その結果、ホイルトラップ60の小型化を図ることができ、真空チャンバ3内の限られたスペースへのホイルトラップ60の設置自由度を高めることができる。
【0122】
さらに本実施形態の光源装置1は、図1に示すように、プラズマ原料23が塗布された回転体22へ照射されるエネルギービームEBの光軸(入射軸IA)と、コレクタ33側(出射チャンバ5側)に出射する放射線R(X線またはEUV)の光軸または主軸(出射軸EA)と、回転体22のプラズマ原料23が塗布された面22aに対する法線方向とは、全て互いに相違している。
【0123】
一般に平面上の液体原料がエネルギービームによって気化する際に放出される液体原料からなるデブリは、上記平面の法線方向に一番多く放出される。本実施の形態においては、上記したようにエネルギービームEBの光軸(入射軸IA)と、放射線Rの取出し方向の光軸(出射軸EA)と、上記法線方向とは全て互いに相違しているので、エネルギービームEBの入射チャンバ4側および出射チャンバ5側へのデブリの進入を抑制することが可能となる。
【0124】
更に、図1に示すように、本実施形態における光源装置1においては、互いに相違するエネルギービームEBの光軸(入射軸IA)と、放射線Rの光軸(出射軸EA)と、回転体22の表面22aの法線方向(軸部材61の軸方向)と相違し、上記3つの方向を横断する方向であって、上記法線方向に最後に到達するような方向に向かってガスを放出する、ガス供給部(第2のガス供給部)としてのガスノズル37が設けられている。
ガスノズル37からは比較的高速にガスが出射され、当該ガスは、エネルギービームEBの光軸(入射軸IA)、放射線Rの光軸(出射軸EA)を横断後に回転体22の表面22aの法線方向に到達するので、上記ガスにより上記法線方向に放出されるデブリの少なくとも一部は、エネルギービームEBの光軸(入射軸IA)、放射線Rの光軸(出射軸EA)より遠ざかる方向に移動させられる。よって、エネルギービームEBの入射方向(入射チャンバ4側)、放射線Rの出射方向(出射チャンバ5側)へのデブリの入射を更に抑制することが可能となる。
【0125】
<その他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。
【0126】
例えば以上の実施形態では、ホイルトラップ60の軸部材61(回転軸)が回転体22の表面22aの法線(NA)方向に平行に配置されたが、軸部材61の位置は、出射チャンバ5へ進入する放射線R1の主軸(第1の軸、出射軸EA)と放射線診断部29へ進入する放射線R2の主軸(第2の軸)との軸間距離であれば、特に限定されない。
【0127】
また以上の実施形態では、第1ガス供給部としてのガスノズル77と、第2ガス供給部としてのガスノズル37の双方を備えた光源装置1を例に挙げて説明したが、ホイルトラップ60と第1ガス供給部としてのガスノズル77から供給されるガスで出射チャンバ5へ進入するデブリの抑制効果が実現できる場合は、第2ガス供給部としてのガスノズル37は省略されてもよい。この場合で、ガス注入路32から出射チャンバ5へのガス供給も省略可能である。
【符号の説明】
【0128】
EA…放射線の出射軸
EB…エネルギービーム
IA…エネルギービームの入射軸
NA…回転体の表面の法線
R、R1,R2…放射線
1…光源装置
3…真空チャンバ
4…エネルギービーム入射チャンバ
5…放射線出射チャンバ
6…原料供給機構
15…外側突出部
17…内側突出部
21…プラズマ生成領域
22…回転体
22a…回転体の表面
23…プラズマ原料
24…コンテナ
37,77…ガスノズル
60…ホイルトラップ
61…軸部材
62…ホイル
64…ハブ
70…カバー部材
71…空間部
73…排出管
701…第1開口部
702…第2開口部
703…第3開口部
704…第4開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6