(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173944
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】ソレノイドアクチュエータおよびソレノイドアクチュエータの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 7/16 20060101AFI20231130BHJP
H01F 41/02 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
H01F7/16 E
H01F41/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086514
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000177612
【氏名又は名称】株式会社ミクニ
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 博史
【テーマコード(参考)】
5E048
【Fターム(参考)】
5E048AA08
5E048AB01
5E048AC08
5E048AD02
(57)【要約】
【課題】吸引特性に優れ、かつ、安価に製造可能なソレノイドアクチュエータおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】ソレノイドアクチュエータ1(1A,1B)は、コイル3と、コイル3の周りに磁路4を形成するように、軸方向においてエアギャップ11を隔てて配置される第1固定子10及び第2固定子20と、コイル3への通電によって生じる磁力により、第1固定子10の径方向内側の原位置から第2固定子20に向かって軸方向に移動するように構成された可動子50と、を備える。第1固定子10は、第1ヨーク14と、第1ヨーク14の内周側に固定され、エアギャップ11を形成する第1円筒部材30と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルと、
前記コイルの周りに磁路を形成するように、軸方向においてエアギャップを隔てて配置される第1固定子及び第2固定子と、
前記コイルへの通電によって生じる磁力により、前記第1固定子の径方向内側の原位置から前記第2固定子に向かって前記軸方向に移動するように構成された可動子と、
を備え、
前記第1固定子は、
第1ヨークと、
前記第1ヨークの内周側に固定され、前記エアギャップを形成する第1円筒部材と、
を含む
ソレノイドアクチュエータ。
【請求項2】
前記第1円筒部材は、
磁性体により形成される磁性筒と、
前記磁性筒の内周面に形成される非磁性層と、
を含み、
前記第1円筒部材は、前記非磁性層に前記可動子を摺接させることで前記可動子を前記軸方向に案内するように構成された
請求項1に記載のソレノイドアクチュエータ。
【請求項3】
前記第1ヨークは、前記第1円筒部材が圧入される第1貫通穴を有し、
前記第1貫通穴の内壁は、
前記第1円筒部材の外周面との接触領域と、
前記軸方向において前記接触領域を挟んで前記第2固定子とは反対側において前記接触領域の隣に位置する非接触領域と、
を含み、
前記第1貫通穴の径は、前記接触領域と前記非接触領域とで同一である
請求項1又は2に記載のソレノイドアクチュエータ。
【請求項4】
前記第2固定子は、
第2ヨークと、
前記第2ヨークの内周側に固定され、前記エアギャップを形成する第2円筒部材と、
を含む
請求項1又は2に記載のソレノイドアクチュエータ。
【請求項5】
前記第2円筒部材は、前記第2ヨークから前記第1固定子側に突出するように設けられる
請求項4に記載のソレノイドアクチュエータ。
【請求項6】
前記第2ヨークは、前記エアギャップに向かって厚さが減少する
請求項5に記載のソレノイドアクチュエータ。
【請求項7】
第1ヨークと第2固定子の少なくとも一部とをコイルの周りに配置するステップと、
前記第2固定子の少なくとも一部の基準面に対して第1円筒部材を軸方向に位置決めするステップと、
前記第1ヨークおよび前記第1円筒部材によって形成される第1固定子が前記第2固定子とともに前記コイルの周りに磁路を形成するように、前記軸方向に位置決めされた前記第1円筒部材を前記第1ヨークの内周側に固定するステップと、
前記第1固定子および前記第2固定子に対して可動子を組み付けるステップと、
を備える
ソレノイドアクチュエータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ソレノイドアクチュエータ及びソレノイドアクチュエータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コイルの周りに磁路を形成する固定子を配置し、コイルへの通電によって生じる磁力により可動子を吸引することで、可動子を軸方向に移動可能としたソレノイドアクチュエータが知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、可動子のストローク開始位置(原位置)側に設けられた第1固定子と、可動子のストローク終了位置側に設けられた第2固定子を含む電磁アクチュエータが記載されている。
特許文献1記載の電磁アクチュエータでは、可動子のストローク全長にわたってフラットな吸引特性を実現するために、可動子および第1固定子の外形が工夫されている。具体的には、可動子のストローク終了位置側への移動に伴い、第1固定子と可動子との間の空隙を狭くするようなテーパ部が可動子の外周面に設けられる。他方、第1固定子の第2固定子側の端部には、第1固定子と可動子との間の空隙を拡げるような凸状曲面が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ソレノイドアクチュエータの吸引特性は、固定子と可動子との間のギャップだけでなく、第1固定子と第2固定子との間のエアギャップの影響も受ける。このため、ソレノイドアクチュエータの所望の吸引特性を実現するために、第1固定子と第2固定子との間のエアギャップを高精度に管理することが望まれる。
【0006】
しかし、エアギャップの大きさを決める関連部品が多い場合、第1固定子と第2固定子との間のエアギャップを高精度に管理しようとすると各部品の公差が厳しくなり、ソレノイドアクチュエータの製造コストが増加してしまう。
例えば、特許文献1記載の電磁アクチュエータでは、第1固定子がベースに固定され、第2固定子(カバー部材)はケースに固定される。このため、第1固定子と第2固定子との間のエアギャップは、第1固定子及び第2固定子自体の軸方向寸法と、ベース及びケースの軸方向寸法との影響を受ける。特許文献1記載の電磁アクチュエータでは、エアギャップの大きさを決める関連部品は、第1固定子、第2固定子、ベース及びケースであり、エアギャップを高精度に管理するためには、これらの部品の寸法の公差を小さくする必要がある。
【0007】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも幾つかの実施形態は、吸引特性に優れ、かつ、安価に製造可能なソレノイドアクチュエータおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係るソレノイドアクチュエータは、
コイルと、
コイルの周りに磁路を形成するように、軸方向においてエアギャップを隔てて配置される第1固定子及び第2固定子と、
コイルへの通電によって生じる磁力により、第1固定子の径方向内側の原位置から第2固定子に向かって軸方向に移動するように構成された可動子と、
を備え、
第1固定子は、
第1ヨークと、
第1ヨークの内周側に固定され、エアギャップを形成する第1円筒部材と、
を含む。
【0009】
[2]幾つかの実施形態では、上記[1]の構成において、
第1円筒部材は、
磁性体により形成される磁性筒と、
磁性筒の内周面に形成される非磁性層と、
を含み、
第1円筒部材は、非磁性層に可動子を摺接させることで可動子を軸方向に案内するように構成される。
【0010】
[3]幾つかの実施形態では、上記[1]又は[2]の構成において、
第1ヨークは、第1円筒部材が圧入される第1貫通穴を有し、
第1貫通穴の内壁は、
第1円筒部材の外周面との接触領域と、
軸方向において接触領域を挟んで第2固定子とは反対側において接触領域の隣に位置する非接触領域と、
を含み、
第1貫通穴の径は、接触領域と非接触領域とで同一である。
【0011】
[4]幾つかの実施形態では、上記[1]~[3]の何れかの構成において、
第2固定子は、
第2ヨークと、
第2ヨークの内周側に固定され、エアギャップを形成する第2円筒部材と、
を含む。
【0012】
[5]幾つかの実施形態では、上記[4]の構成において、
第2円筒部材は、第2ヨークから第1固定子側に突出するように設けられる。
【0013】
[6]幾つかの実施形態では、上記[5]の構成において、
第2ヨークは、エアギャップに向かって厚さが減少する。
【0014】
[7]本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係るソレノイドアクチュエータの製造方法は、
第1ヨークと第2固定子の少なくとも一部とをコイルの周りに配置するステップと、
第2固定子の少なくとも一部の基準面に対して第1円筒部材を軸方向に位置決めするステップと、
第1ヨークおよび第1円筒部材によって形成される第1固定子が第2固定子とともにコイルの周りに磁路を形成するように、軸方向に位置決めされた第1円筒部材を第1ヨークの内周側に固定するステップと、
第1固定子の径方向内側の原位置に位置するように可動子を組み付けるステップと、
を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明の少なくとも幾つかの実施形態によれば、第1ヨークへの第1円筒部材の組付けに際して、第2固定子に対して第1円筒部材の軸方向の位置決めを行うことで、エアギャップに影響を与える関係部品を減らすことができる。これにより、エアギャップを高精度に管理することが可能となり、吸引特性に優れたソレノイドアクチュエータを安価に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】一実施形態に係るソレノイドアクチュエータの構成を概略的に示す断面図である。
【
図3】他の実施形態に係るソレノイドアクチュエータの構成を概略的に示す断面図である。
【
図4A】一実施形態に係るソレノイドアクチュエータの組立手順を示す図である。
【
図4B】一実施形態に係るソレノイドアクチュエータの組立手順を示す図である。
【
図4C】一実施形態に係るソレノイドアクチュエータの組立手順を示す図である。
【
図5A】他の実施形態に係るソレノイドアクチュエータの組立手順を示す図である。
【
図5B】他の実施形態に係るソレノイドアクチュエータの組立手順を示す図である。
【
図5C】他の実施形態に係るソレノイドアクチュエータの組立手順を示す図である。
【
図5D】他の実施形態に係るソレノイドアクチュエータの組立手順を示す図である。
【
図6】他の実施形態に係るソレノイドアクチュエータの具体的な構造例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0018】
図1は、一実施形態に係るソレノイドアクチュエータの構成を概略的に示す断面図である。
図2は、
図1のA部の拡大図である。
図3は、他の実施形態に係るソレノイドアクチュエータの構成を概略的に示す断面図である。
ここで、
図1及び
図3では、ソレノイドアクチュエータの樹脂モールドの図示を省略している。
なお、
図1~
図3では、コイル3が非励磁状態であり、原位置に可動子50が存在する状態を示している。可動子50の原位置は、ソレノイドアクチュエータ1A,1Bのストローク量がゼロであるストローク開始位置と言い換えることができる。また、
図1及び
図3では、コイル3の片側(図中の左側の部分)のみについて磁路4を示しているが、環状に設けられたコイル3の両側(図中の右側の部分)にも同様な磁路4が形成されている。
以下、ソレノイドアクチュエータ1A及び1Bをソレノイドアクチュエータ1と総称する場合がある。
【0019】
幾つかの実施形態では、
図1及び
図3に示すように、ソレノイドアクチュエータ1(1A,1B)は、コイル3と、コイル3の周りに磁路4を形成するための固定子10,20と、コイル3が生成する磁力により軸方向に移動可能な可動子50と、を含む。
【0020】
コイル3は、例えば銅又は銅合金等の導体により構成される線材をソレノイドアクチュエータ1の中心軸O周りに巻くことで構成される。コイル3は、全体として、中心軸Oを中心とする略環状である。コイル3には不図示のターミナルが電気的に接続されており、ターミナルを介してコイル3に電力が供給される。コイル3の通電時、可動子50を吸引するための磁力が生成される。
なお、コイル3は、不図示のボビンに収容されていてもよい。
【0021】
固定子(10,20)は、ソレノイドアクチュエータ1の軸方向においてコイル3を挟んで両側に位置する第1固定子10および第2固定子20を含む。固定子(10,20)は、例えば鉄であってもよい磁性体により構成され、コイル3を取り囲むように中心軸O周りに環状に設けられる。
【0022】
第1固定子10及び第2固定子20は、コイル3の内周側、かつ、後述の可動子50の外周側では、軸方向においてエアギャップ11を隔てて互いに対向するように配置される。
エアギャップ11は、可動子50を経由せずに第1固定子10から第2固定子20に直接向かう磁束流れを制限し、第1固定子10から可動子50を経由して第2固定子20に向かう磁路4に磁束を効率的に流すために設けられる。
【0023】
図1及び
図3に示す例では、第1固定子10と第2固定子20は、コイル3の外周側に位置する当接部12において当接する。
この場合、第1固定子10と第2固定子20が、コイル3の内周側でエアギャップ11を介して対向し、かつ、コイル3の外周側の当接部12で当接した状態で、不図示の樹脂モールドによって一体的に成形されてもよい。
なお、第1固定子10と第2固定子20との当接部12の位置は特に限定されず、
図1及び
図3の例のように軸方向におけるコイル3の中央位置に当接部12が位置してもよいし、コイル3の中央位置とは異なる位置に当接部12が存在してもよい。
【0024】
他の実施形態では、ソレノイドアクチュエータ1は第1固定子10及び第2固定子20が当接する箇所を有しない。
例えば、ソレノイドアクチュエータ1が、第1固定子10及び第2固定子20以外の1以上の他の固定子を含む場合、1以上の他の固定子は、第1固定子10と第2固定子20との間に位置し、第1固定子10及び第2固定子20とともに磁路4を形成してもよい。こうして、第1固定子10及び第2固定子の間に他の固定子が介在することで、第1固定子10及び第2固定子20が直接当接しない構成になっていてもよい。
また、第1固定子10及び第2固定子20を含む複数の固定子の間に空隙が存在してもよい。
【0025】
幾つかの実施形態では、
図1~
図3に示すように、第1固定子10は、第1ヨーク14と、第1ヨーク14の内周側に固定される第1円筒部材30とを含む。
【0026】
幾つかの実施形態では、
図1~
図3に示すように、第1円筒部材30は、軸方向において、第1固定子10と第2固定子20との間のエアギャップ11を隔てて第2固定子20と対向する。具体的には、第1円筒部材30の先端31は、第2固定子20の先端21に接しておらず、エアギャップ11によって第2固定子20から隔てられている。
ここで、エアギャップ11とは、コイル3の内周側における、第1ヨーク14及び第1円筒部材30を含む第1固定子10と第2固定子20との間の最小の間隙を意味する。
【0027】
第1円筒部材30は、第2固定子20の先端21とオーバーラップする径方向位置範囲に第1円筒部材30の先端31が位置するように配置されてもよい。
また、第1円筒部材30は、第1ヨーク14から第2固定子20側に先端31が突出するように配置されてもよい。
【0028】
このように、第1固定子10が、第1ヨーク14及び第1円筒部材30を含む構成である場合、エアギャップ11を高精度に管理しやすくなる。
すなわち、第1ヨーク14への第1円筒部材30の組付けに際して、第2固定子20に対して第1円筒部材30の軸方向の位置決めを行うことで、エアギャップ11に影響を与える関係部品を減らすことができる。これにより、エアギャップ11を高精度に管理することが可能となり、吸引特性に優れたソレノイドアクチュエータ1を安価に実現できる。
例えば、第1ヨーク14への第1円筒部材30の組付けに際して、第2固定子20のうち第1固定子10とは反対側の軸方向端面22(第2固定子20の基準面22)を基準として第1円筒部材30の先端31の軸方向位置を調整する場合について考える。この場合、エアギャップ11に実質的に影響を与えるのは、第2固定子20の寸法(基準面22から先端21までの第2固定子20の軸方向寸法)のみであるから、高精度なエアギャップ11を容易に形成できる。
なお、第1ヨーク14に対する第1円筒部材30の軸方向の位置決めの具体例は、
図4A~
図4B、及び
図5A~
図5Bを参照して、後で詳述する。
【0029】
第1固定子10の第1ヨーク14は、例えば鉄であってもよい磁性体によって形成され、第2固定子20とともにコイル3を取り囲む(環状のコイル3を覆う)ように配置される。第1ヨーク14は、コイル3の外周側で当接部12において第2固定子20と当接してもよい。
第1ヨーク14は、第1円筒部材30を受け入れるための第1貫通穴15を有する。第1貫通穴15は、ソレノイドアクチュエータ1の中心軸Oと同心の円形穴であってもよい。
【0030】
第1ヨーク14の第1貫通穴15の内壁は、
図2に示すように、第1円筒部材30の外周面と接触する接触領域15aと、第1円筒部材30の外周面と接触しない非接触領域15bとを含む。非接触領域15bは、軸方向において接触領域15aと隣り合う。非接触領域15bは、軸方向において、接触領域15aを挟んで第2固定子20とは反対側に位置する。
【0031】
幾つかの実施形態では、第1貫通穴15の内径は、接触領域15aと非接触領域15bとで同一である。すなわち、第1貫通穴15の内壁には、第1ヨーク14に対する第1円筒部材30の軸方向位置を規制してしまう段差が設けられていない。このため、第2固定子20に対する第1円筒部材30の軸方向の位置決めを第1貫通穴15の内壁の段差が阻害してしまうことがない。
よって、第1ヨーク14への第1円筒部材30の組付けに際し、第1円筒部材30の先端31の軸方向位置の調整を適切に行うことが可能となり、エアギャップ11を高精度に管理しやすくなる。
【0032】
なお、
図2に示す例示的な実施形態では、第1貫通穴15の内壁は、接触領域15aおよび非接触領域15bのみによって構成され、第1貫通穴15の内径は軸方向位置によらず一定である。
他の実施形態では、第1貫通穴15の内壁は、接触領域15aおよび非接触領域15b以外に、接触領域15aおよび非接触領域15bとは内径が異なる他の領域を含む。
【0033】
第1円筒部材30は、第1貫通穴15内に設けられ、第1ヨーク14の内周側に固定される。
第1円筒部材30の第1ヨーク14への固定手段は特に限定されず、例えば、第1円筒部材30を第1貫通穴15に圧入してもよいし、第1円筒部材30を第1貫通穴15の内壁に溶接してもよい。あるいは、第1円筒部材30と第1貫通穴15の内壁との重なる部分の全周または一部をスポットカシメによりカシメてもよい。
【0034】
幾つかの実施形態では、
図2に示すように、第1円筒部材30は、第1ヨーク14の第1貫通穴15の内壁に接触する外周面を有する磁性筒32と、磁性筒32の内周面に形成される非磁性層34と、を含む。
【0035】
磁性筒32は、例えば鉄であってもよい磁性体により構成され、エアギャップ11を隔てて第2固定子20と対向する。すなわち、第1ヨーク14及び第1円筒部材30を含む第1固定子10の磁性体部分のうち磁性筒32が、第2固定子20の先端21に最も近接して配置される。
径方向における磁性筒32の位置範囲は、磁性筒32との間にエアギャップ11を形成する第2固定子20の先端21の径方向位置範囲とオーバーラップしていてもよい。
【0036】
第1円筒部材30の非磁性層34は、可動子50の外周面に対向するように磁性筒32の内周面に設けられる。
これにより、第1円筒部材30は、非磁性層34に可動子50を摺接させることで可動子50を軸方向に案内することができる。
なお、非磁性層34は、例えば、銅やPTFE(polytetrafluoroethylene)等の低摩擦材料によって構成してもよい。非磁性層34は、例えば、焼結や含浸等の施工方法によって第1円筒部材30の内面に成膜されてもよい。例示的な実施形態では、非磁性層34は、焼結により形成される銅合金の多孔質層にPTFEを含む樹脂材を含浸することで形成される。
【0037】
このように、磁性筒32の内周面に非磁性層34を設けて、エアギャップ11を形成するための第1円筒部材30に可動子50のガイド機能も兼備させることで、部品点数の増加を抑制しながらエアギャップ11の高精度化を実現できる。
【0038】
なお、一般に、可動子の径方向位置を拘束して可動子を軸方向に案内するガイド(軸受)は、ヨークと可動子との間の径方向の磁気ギャップとは別の場所に設けられる。この場合、可動子の径方向位置を規制するガイドに対してヨークの軸心が偏芯していると、可動子と可動子の外周側のヨークとの間の磁気ギャップも偏芯の影響を受ける。このため、ガイド(軸受)に対するヨークの軸ずれの影響を考慮して、可動子と可動子の外周側のヨークとの間に比較広い磁気ギャップを確保する必要がある。
この点、
図2に示す例示的な実施形態のように、可動子50を軸方向に案内するガイド機能を具備する第1円筒部材30を第1ヨーク14の内周側に固定すれば、ガイド(第1円筒部材30)に対する第1ヨーク14の軸ずれの影響を実質的に無くすことができる。このため、第1円筒部材30と可動子50との間に確保すべき径方向隙間trは、可動子50の組付けが可能な程度の大きさで足りる。その結果、磁気ギャップt_gapを減少させることで、第1ヨーク14から可動子50に向かう磁束を増大させることができる。
図2の例では、第1固定子10から可動子50に向かう磁束流れに関する磁気ギャップt_gapは、上述の径方向隙間trと非磁性層34の厚さt_guideとの合計値である。
【0039】
幾つかの実施形態では、第2固定子20は、
図3に示すように、第2ヨーク24と、第2ヨーク24の内周側に固定される第2円筒部材40と、を含む。
【0040】
第2ヨーク24は、例えば鉄であってもよい磁性体によって形成され、第1固定子10とともにコイル3を取り囲むように配置される。第2ヨーク24は、コイル3の外周側で当接部12において第1固定子10と当接してもよい。
第2ヨーク24は、第2円筒部材40を受け入れるための第2貫通穴25を有する。第2貫通穴25は、ソレノイドアクチュエータ1の中心軸Oと同心の円形穴であってもよい。
【0041】
図3に示す例示的な実施形態では、第2円筒部材40は、第1固定子10との間にエアギャップ11を形成する第2固定子20の先端21を有する。
【0042】
このように、第2固定子20のうちエアギャップ11に直接関係する第2円筒部材40を第2ヨーク24とは別に設けることで、第2固定子20全体が一体物で構成される場合に比べて、エアギャップ11をより高精度に管理しやすくなる。
例えば、第1ヨーク14への第1円筒部材30の組付けに際して、第2固定子20の基準面22(すなわち、第2ヨーク24のうち第1固定子10とは反対側の軸方向端面22)を基準として第1円筒部材30の先端31の位置を調整する場合について考える。この場合、第2ヨーク24の軸方向端面22に対して第1円筒部材30の先端31の軸方向位置を調整した後、第2ヨーク24への第2円筒部材40の組付けに際して第2ヨーク24の軸方向端面22に対して第2円筒部材40を軸方向に位置合わせしてもよい。これにより、エアギャップ11に実質的に影響を与えるのは、第2固定子20のうち第2円筒部材40の寸法(第2ヨーク24の基準面22からエアギャップ11までの第2円筒部材40の軸方向寸法)のみとなり、高精度なエアギャップ11を容易に形成できる。
なお、第2ヨーク24に対する第2円筒部材40の軸方向の位置決めは、
図5Cを参照して後で詳述する。
【0043】
幾つかの実施形態では、
図3に示すように、第2円筒部材40は、第2ヨーク24から第1固定子10側に突出するように設けられる。
すなわち、第2円筒部材40が形成する第2固定子20の先端21は、軸方向において、第2ヨーク24の先端を越えて第1固定子10側に位置する。
【0044】
ソレノイドアクチュエータには、例えばリニアソレノイドのように、電流に対する吸引力の変化がリニアな特性を持つことが望ましいものがある。このリニア特性を実現するためには、コイルへの通電時における原位置からの可動子の移動方向の下流側に配置される第2固定子の先端はエアギャップに向かって先細状とするのが有利である。
この点、上述のように、エアギャップ11を形成する第2円筒部材40を第2ヨーク24から軸方向に突出させることで、第2ヨーク24及び第2円筒部材40によって形成される第2固定子20の全体形状を前述の先細状に近づけることができる。
【0045】
図3に示す例示的な実施形態では、第2ヨーク24は、エアギャップ11に向かって厚さtが減少する。すなわち、第2ヨーク24は、エアギャップ11側の先端領域に、エアギャップ11に向かって厚さtが減少する先細部26を有する。
ここで、第2ヨーク24の厚さtとは、第2ヨーク24の径方向における寸法である。
【0046】
このように、エアギャップ11に近づくにつれて減少する厚さ分布を第2ヨーク24が有することで、第2円筒部材40が第2ヨーク24から第1固定子10側に突出する構成と相まって、第2固定子20の全体形状を前述の先細状により一層近づけることができる。
【0047】
コイル3への通電時、上記構成の第1固定子10及び第2固定子20によりコイル3の周りに形成される磁路4に磁束が流れる。磁路4には、第1固定子10(第1ヨーク14及び第1円筒部材30)および第2固定子20だけでなく、可動子50も含まれる。このため、磁路4を流れる磁束により可動子50は吸引され、第1固定子10の径方向内側の原位置から、第2固定子20側に軸方向に移動する。
【0048】
第2固定子20は、コイル3への通電時に軸方向に接近してくる可動子50を受け容れるためのキャビティ28を第2固定子20の径方向内側に形成する。
図1に示す実施形態では、キャビティ28は、一体物である第2固定子20によって画定される。
図3に示す実施形態では、キャビティ28は、第2固定子20のうち第2円筒部材40によって画定される。
【0049】
幾つかの実施形態では、可動子50は、
図1及び
図3に示すように、ソレノイドアクチュエータ1の出力軸であるシャフト54の端部に設けられるプランジャ52である。
プランジャ52は、シャフト54が圧入される貫通穴を有する。シャフト54は、シャフト54の軸芯とプランジャ52の軸芯とが一致するように、プランジャ52の貫通穴に圧入される。
【0050】
可動子50としてのプランジャ52は、例えば鉄であってもよい磁性体により形成され、シャフト54の外周側に取り付けられる。
プランジャ52の直径は、シャフト54の直径よりも大きく、第1固定子10の第1円筒部材30の内径よりも小さい。また、プランジャ52の直径は、第2固定子20によって形成されるキャビティ28の直径よりも小さい。
【0051】
コイル3が非励磁状態であるとき、不図示のスプリングによってシャフト54は矢印Bとは反対方向に付勢され、可動子50としてのプランジャ52は第1固定子10(第1円筒部材30)の径方向内側に位置する。このとき、プランジャ52は、実質的に第1円筒部材30の径方向内側に位置していればよく、プランジャ52の端部が、第1固定子10(第1円筒部材30)から第2固定子20側に突出していてもよい。
これに対し、コイル3への通電時、可動子50としてのプランジャ52は、第2固定子20の径方向内側に形成されるキャビティ28に侵入する。このとき、プランジャ52は、少なくとも一部がキャビティ28内に位置していればよく、プランジャ52の残りの部分が、キャビティ28から第1固定子10側に突出していてもよい。
【0052】
上記構成のプランジャ52が固定されるシャフト54は、第2固定子20を貫通してソレノイドアクチュエータ1の外部へと延びる。シャフト54は、ソレノイドアクチュエータ1の作動によって矢印Bの方向へと移動し、不図示の外部機器にソレノイドアクチュエータ1の駆動力を伝達する。
ソレノイドアクチュエータ1によって駆動される外部機器は特に限定されないが、例えば、車両のエンジンの吸気バルブや排気バルブのバルブタイミングを油圧によって制御するスプールであってもよい。
【0053】
シャフト54は、軸受によって第2固定子20側に摺動可能に支持されてもよい。
図1に示す実施形態では、ソレノイドアクチュエータ1は、シャフト54を第2固定子20に摺動自在に支持する軸受53Aを有する。軸受53Aは、軸受ホルダ56を介して第2固定子20に取り付けられてもよい。
図3に示す実施形態では、第2固定子20の一部を構成する第2円筒部材40のうち径方向内側の部位が軸受部53Bとして機能し、シャフト54は第2円筒部材40の軸受部53Bによって摺動自在に支持される。
【0054】
続けて、
図4A~
図5Dを参照し、ソレノイドアクチュエータ1(1A,1B)の製造方法について述べる。
【0055】
図4A~
図4Cは、一実施形態に係るソレノイドアクチュエータ1Aの組立手順を示す図である。
ソレノイドアクチュエータ1Aの組立に際して、第1ヨーク14および第2固定子20をコイル3の周りに配置しておく。この後、
図4A~
図4Bに示すように、第2固定子20の基準面22に対して第1円筒部材30を軸方向に位置決めする。
【0056】
第1円筒部材30の位置決めに際して、治具110を用いて、基準面22に対して第1円筒部材30の先端31が所望の軸方向位置に存在する状態を実現してもよい。
図4Aに示す実施形態では、第1ヨーク14の第1貫通穴15に対する第1円筒部材30の挿入に先立って、略円筒形状の治具110を第2固定子20の内周側に配置しておく。このとき、第2固定子20の基準面22、および、治具110の下端面112は、基台の上面(平坦面100)に接触させる。この場合、治具110の上端面114は、第2固定子20の基準面22に対して治具110の寸法だけ高い位置に存在する。
この後、
図4Aに示すように、第2固定子20とは反対側から第1ヨーク14の第1貫通穴15に第1円筒部材30を挿入する。第1円筒部材30の先端31が治具110の上端面114に接触したとき、
図4Bに示すように、第1円筒部材30の挿入を停止する。
こうして、第2固定子20の基準面22に対して第1円筒部材30が軸方向に位置決めされる。
【0057】
位置決めされた第1円筒部材30は、第1ヨーク14に対して不動となるように、第1ヨーク14の内周側に固定される。その結果、第1ヨーク14および第1円筒部材30を含む第1固定子10と第2固定子20とにより、コイル3の周りに磁路4(
図1参照)が形成される。
第1ヨーク14に対する第1円筒部材30の固定は、圧入または溶接により行うことができる。第1円筒部材30を第1ヨーク14の第1貫通穴15に圧入する場合、上述した第1円筒部材30の位置決めと、第1ヨーク14に対する第1円筒部材30の固定とが同時に実施される。これに対し、第1ヨーク14に対して第1円筒部材30を溶接で固定する場合、第1円筒部材30の位置決めの後、第1ヨーク14に対する第1円筒部材30の固定が実施される。
【0058】
なお、第1円筒部材30の位置決め及び固定の完了後、治具110は任意の方法により取り外される。
例えば、治具110が分解可能な構造を有する場合、治具110を複数のパーツに分解したうえで、各々のパーツを第2固定子20の開口から取り出してもよい。あるいは、治具110が変形可能な構造を有する場合、治具110の寸法が小さくなるように治具110を変形させたうえで、治具110を第2固定子20の開口から取り出してもよい。
【0059】
この後、
図4Cに示すように、第1固定子10および第2固定子20に対して、可動子50としてのプランジャ52を組み付ける。
なお、この段階での可動子50(プランジャ52)の軸方向位置は特に限定されない。可動子50(プランジャ52)は、不図示のスプリングを組み付けることで、第1固定子10(第1円筒部材30)の径方向内側の原位置に位置するように取り付けられてもよい。
また、
図4Cに示す例では、軸受ホルダ56を介して軸受53Aを第2固定子20に組付けることで、シャフト54を軸受53Aによって摺動自在に支持している。
【0060】
この後、第1固定子10及び第2固定子20を不図示の樹脂モールドで一体的に成形し、ソレノイドアクチュエータ1Aを得ることができる。
【0061】
図5A~
図5Dは、他の実施形態に係るソレノイドアクチュエータ1Bの組立手順を示す図である。
【0062】
他の実施形態では、はじめに、第1ヨーク14と、第2固定子20の一部である第2ヨーク24とをコイル3の周りに配置しておく(
図5A参照)。そして、第2ヨーク24の基準面22に対して第1円筒部材30を軸方向に位置決めする。
【0063】
第1円筒部材30の位置決めに際して、治具120を用いて、基準面22に対して第1円筒部材30の先端31が所望の軸方向位置に存在する状態を実現してもよい。
図5Aに示す実施形態では、第1ヨーク14の第1貫通穴15に対する第1円筒部材30の挿入に先立って、第1円筒部材30の位置決め用の治具120を予め設置しておく。
治具120は、平坦面100および略円筒形状の凸部122を有する。凸部122は、平坦面100の内周側に位置し、平坦面100から上方に突出して設けられる。治具120は、治具120の平坦面100が第2ヨーク24の基準面22に接触し、かつ、治具120の凸部122が第2ヨーク24の内周側に位置するように設置される。このとき、治具120の凸部122の上端面124は、第2ヨーク24の基準面22に対して、平坦面100からの凸部122の突出量だけ高い位置に存在する。
この後、
図5Aに示すように、第2ヨーク24とは反対側から第1ヨーク14の第1貫通穴15に第1円筒部材30を挿入する。第1円筒部材30の先端31が治具120の凸部122の上端面124に接触したとき、
図5Bに示すように、第1円筒部材30の挿入を停止する。
こうして、第2固定子20の一部を構成する第2ヨーク24の基準面22に対して第1円筒部材30が軸方向に位置決めされる。
【0064】
その後、位置決めされた第1円筒部材30は、第1ヨーク14に対して不動となるように、第1ヨーク14の内周側に固定される。
第1ヨーク14に対する第1円筒部材30の固定は、圧入または溶接により行うことができる。第1円筒部材30を第1ヨーク14の第1貫通穴15に圧入する場合、上述した第1円筒部材30の位置決めと、第1ヨーク14に対する第1円筒部材30の固定とが同時に実施される。
【0065】
次に、
図5Cに示すように、第2固定子20の一部を構成する第2円筒部材40を、第2ヨーク24の第2貫通穴25に挿入し、第2ヨーク24に対して第2円筒部材40を位置決め及び固定する。
ここで、第2円筒部材40の位置決めに際して、治具130を用いて、第2ヨーク24の基準面22に対して第2円筒部材40の先端(すなわち、第2固定子20の先端21)が所望の軸方向位置に存在する状態を実現してもよい。
治具130は、平坦面132と、平坦面132によって取り囲まれた凹部134を有する。凹部134の深さは、第2円筒部材40の軸受部53Bを受け入れ可能な寸法に設定される。治具130は、治具130の平坦面132が、第2ヨーク24の基準面22、および、第2円筒部材40の肩部42に接触するように設置される。
このように治具130の平坦面132に、第2ヨーク24の基準面22と、第2円筒部材40の肩部42とを接触させることで、第2ヨーク24に対して第2円筒部材40の先端(すなわち、第2固定子20の先端21)が軸方向に位置決めされる。
【0066】
こうして位置決めされた第2円筒部材40は、第2ヨーク24に対して不動となるように、第2ヨーク24の内周側に固定される。その結果、第1固定子10(第1ヨーク14及び第1円筒部材30)と、第2固定子20(第2ヨーク24及び第2円筒部材40)とにより、コイル3の周りに磁路4(
図3参照)が形成される。
第2ヨーク24に対する第2円筒部材40の固定は、圧入または溶接により行うことができる。第1円筒部材30を第1ヨーク14の第1貫通穴15に圧入する場合、上述した第1円筒部材30の位置決めと、第1ヨーク14に対する第1円筒部材30の固定とが同時に実施される。
【0067】
その後、
図5Dに示すように、第1固定子10および第2固定子20に対して、可動子50としてのプランジャ52を組み付ける。
なお、この段階での可動子50(プランジャ52)の軸方向位置は特に限定されない。可動子50(プランジャ52)は、不図示のスプリングを組み付けることで、第1固定子10(第1円筒部材30)の径方向内側の原位置に位置するように取り付けられてもよい。
また、
図5Dに示す例では、第2固定子20の第2円筒部材40によってシャフト54を摺動自在に支持している。
【0068】
最後に、第1固定子10及び第2固定子20を不図示の樹脂モールドで一体的に成形し、ソレノイドアクチュエータ1Bを得ることができる。
【0069】
図4A~
図5Dを参照して説明した上述の方法によれば、第1ヨーク14への第1円筒部材30の組付けに際して、第2固定子20の基準面22に対して第1円筒部材30の軸方向の位置決めを行うことで、エアギャップ11に影響を与える関係部品を減らすことができる。これにより、エアギャップ11を高精度に管理することが可能となり、吸引特性に優れたソレノイドアクチュエータ1(1A,1B)を安価に実現できる。
【0070】
続いて、
図3に示したソレノイドアクチュエータ1Bの具体的な構造例に関して
図6を参照して説明する。
なお、以下では、
図3に示したソレノイドアクチュエータ1Bと共通する構成については説明を省略する。
【0071】
図6は、一実施形態に係るソレノイドアクチュエータを示す断面図である。
同図に示すように、ソレノイドアクチュエータ1は、コイル3と、第1固定子10及び第2固定子20と、可動子50(プランジャ52)とを含む。
コイル3は、銅又は銅合金等の導体により構成される線材をボビン60に巻き回して形成される。ボビン60は、第1固定子10及び第2固定子20に実質的に囲まれる。しかし、第1固定子10(第1ヨーク14)には一部の周方向範囲において切欠きが設けられており、第1ヨーク14の切欠きにおいてボビン60のターミナル保持部62が露出する。ボビン60のターミナル保持部62は、ターミナル64の基端部が埋設される。ターミナル64は、ボビン60の内部においてコイル3を構成する線材と電気的に接続される。
また、ソレノイドアクチュエータ1Bでは、コイル3及びボビン60と、第1固定子10及び第2固定子20とが、樹脂モールド70に一体的に成形されて、樹脂モールド70に埋設される。なお、ターミナル64は、ボビン60のターミナル保持部62から樹脂モールド70を貫通し、樹脂モールド70に設けられた凹部72に突出しており、凹部72に嵌合する外部端子と電気的に接続可能となっている。
なお、樹脂モールド70は、原位置にある可動子50(プランジャ52)の後端面に接触する凸部(不図示)を有していてもよい。
【0072】
本明細書において、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
また、本明細書において、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
また、本明細書において、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【符号の説明】
【0073】
1,1A,1B ソレノイドアクチュエータ
3 コイル
10 第1固定子
11 エアギャップ
14 第1ヨーク
15 第1貫通穴
15a 接触領域
15b 非接触領域
20 第2固定子
22 基準面
24 第2ヨーク
30 第1円筒部材
32 磁性筒
34 非磁性層
40 第2円筒部材
50 可動子