(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173945
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】ソレノイドアクチュエータ及びソレノイドアクチュエータの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 7/16 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
H01F7/16 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086516
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000177612
【氏名又は名称】株式会社ミクニ
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 博史
【テーマコード(参考)】
5E048
【Fターム(参考)】
5E048AA08
5E048AD02
(57)【要約】
【課題】製造コストを抑制しながら所望の電磁特性が得られるソレノイドアクチュエータ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ソレノイドアクチュエータ1は、コイル3と、コイル3の周りに磁路4を形成するように、軸方向においてエアギャップ11を隔てて配置される第1固定子10及び第2固定子20と、コイル3への通電によって生じる磁力により、第1固定子10の径方向内側の原位置から第2固定子20に向かって軸方向に移動するように構成された可動子50と、を備える。第2固定子20は、第2ヨーク24と、磁性体により形成されるとともに、第1固定子10に向かって軸方向に第2ヨーク24から突出するように第2ヨーク24の内周側に設けられた第2プレス部品40と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルと、
前記コイルの周りに磁路を形成するように、軸方向においてエアギャップを隔てて配置される第1固定子及び第2固定子と、
前記コイルへの通電によって生じる磁力により、前記第1固定子の径方向内側の原位置から前記第2固定子に向かって前記軸方向に移動するように構成された可動子と、
を備え、
前記第2固定子は、
第2ヨークと、
磁性体により形成されるとともに、前記第1固定子に向かって前記軸方向に前記第2ヨークから突出するように前記第2ヨークの内周側に設けられた第2プレス部品と、
を含む
ソレノイドアクチュエータ。
【請求項2】
前記第2プレス部品は、前記軸方向において前記第1固定子に向かって厚さが減少する
請求項1に記載のソレノイドアクチュエータ。
【請求項3】
前記第2プレス部品は、前記第2ヨークの先端よりも前記第1固定子側の軸方向位置から前記第1固定子に向かって前記厚さが減少する
請求項2に記載のソレノイドアクチュエータ。
【請求項4】
前記第2ヨークは、前記軸方向において前記第1固定子に向かって厚さが減少する
請求項1乃至3の何れか一項に記載のソレノイドアクチュエータ。
【請求項5】
前記第2ヨークは、プレス部品によって形成される
請求項1乃至3の何れか一項に記載のソレノイドアクチュエータ。
【請求項6】
コイルと、
前記コイルの周りに磁路を形成するように、軸方向においてエアギャップを隔てて配置される第1固定子及び第2固定子と、
前記コイルへの通電によって生じる磁力により、前記第1固定子の径方向内側の原位置から前記第2固定子に向かって前記軸方向に移動するように構成された可動子と、
を備えるソレノイドアクチュエータの製造方法であって、
前記第1固定子に向かって前記軸方向に第2ヨークから突出するように前記第2ヨークの内周側に磁性体製の第2プレス部品を取り付けることで前記第2固定子を形成する
ソレノイドアクチュエータの製造方法。
【請求項7】
絞り加工により磁性材に凹部を形成し、
前記凹部の外周縁に沿った打ち抜き加工により、前記磁性材から前記凹部を有する磁性筒を分離し、
前記打ち抜き加工における前記磁性筒の前記凹部の前記外周縁の破断面に対して面取り加工を施すことで、前記可動子を受け容れるためのキャビティとしての前記凹部を有し、且つ、前記軸方向において前記第1固定子に向かって厚さが減少する前記第2プレス部品を得る
請求項6に記載のソレノイドアクチュエータの製造方法。
【請求項8】
絞り加工によりヨーク材に凹部を形成し、
前記凹部の外周縁に沿った打ち抜き加工により、前記外周縁を残して前記凹部を前記ヨーク材から除去し、前記軸方向において前記第1固定子に向かって厚さが減少する前記第2ヨークを得る
請求項6又は7に記載のソレノイドアクチュエータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ソレノイドアクチュエータ及びソレノイドアクチュエータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コイルの周りに磁路を形成する固定子を配置し、コイルへの通電によって生じる磁力により可動子を吸引することで、可動子を軸方向に移動可能としたソレノイドアクチュエータが知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、可動子のストローク開始位置(原位置)側に設けられた第1固定子と、可動子のストローク終了位置側に設けられた第2固定子を含む電磁アクチュエータが記載されている。
特許文献1記載の電磁アクチュエータでは、可動子のストローク全長にわたってフラットな吸引特性を実現するために、可動子および第1固定子の外形が工夫されている。具体的には、可動子のストローク終了位置側への移動に伴い、第1固定子と可動子との間の空隙を狭くするようなテーパ部が可動子の外周面に設けられる。他方、第1固定子の第2固定子側の端部には、第1固定子と可動子との間の空隙を拡げるような凸状曲面が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、コイルへの通電時における原位置からの可動子の移動方向の下流側に配置される第2固定子の先端形状は、ソレノイドアクチュエータの特性に影響する。例えば、電流に対する吸引力の変化がリニアな特性を実現するために、第1固定子に向かって先端形状が先細となる第2固定子が望まれる場合がある。
しかしながら、第2固定子の先細の外形を専ら切削加工により実現しようとすると、ソレノイドアクチュエータの製造コストが増加してしまう。
【0006】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも幾つかの実施形態は、製造コストを抑制しながら所望の電磁特性が得られるソレノイドアクチュエータ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係るソレノイドアクチュエータは、
コイルと、
コイルの周りに磁路を形成するように、軸方向においてエアギャップを隔てて配置される第1固定子及び第2固定子と、
コイルへの通電によって生じる磁力により、第1固定子の径方向内側の原位置から第2固定子に向かって軸方向に移動するように構成された可動子と、
を備え、
第2固定子は、
第2ヨークと、
磁性体により形成されるとともに、第1固定子に向かって軸方向に第2ヨークから突出するように第2ヨークの内周側に設けられた第2プレス部品と、
を含む。
【0008】
[2]幾つかの実施形態では、上記[1]の構成において、
第2プレス部品は、軸方向において第1固定子に向かって厚さが減少する。
【0009】
[3]幾つかの実施形態では、上記[2]の構成において、
第2プレス部品は、第2ヨークの先端よりも第1固定子側の軸方向位置から第1固定子に向かって厚さが減少する。
【0010】
[4]幾つかの実施形態では、上記[1]~[3]の何れかの構成において、
第2ヨークは、軸方向において第1固定子に向かって厚さが減少する。
【0011】
[5]幾つかの実施形態では、上記[1]~[4]の何れかの構成において、
第2ヨークは、プレス部品によって形成される。
【0012】
[6]本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係るソレノイドアクチュエータの製造方法は、
コイルと、
コイルの周りに磁路を形成するように、軸方向においてエアギャップを隔てて配置される第1固定子及び第2固定子と、
コイルへの通電によって生じる磁力により、第1固定子の径方向内側の原位置から第2固定子に向かって軸方向に移動するように構成された可動子と、
を備えるソレノイドアクチュエータの製造方法であって、
第1固定子に向かって軸方向に第2ヨークから突出するように第2ヨークの内周側に磁性体製の第2プレス部品を取り付けることで第2固定子を形成する。
【0013】
[7]幾つかの実施形態では、上記[6]の方法において、
絞り加工により磁性材に凹部を形成し、
凹部の外周縁に沿った打ち抜き加工により、磁性材から凹部を有する磁性筒を分離し、
打ち抜き加工における磁性筒の凹部の外周縁の破断面に対して面取り加工を施すことで、可動子を受け容れるためのキャビティとしての凹部を有し、且つ、軸方向において第1固定子に向かって厚さが減少する第2プレス部品を得る。
【0014】
[8]幾つかの実施形態では、上記[6]又は[7]の方法において、
絞り加工によりヨーク材に凹部を形成し、
凹部の外周縁に沿った打ち抜き加工により、外周縁を残して凹部をヨーク材から除去し、軸方向において第1固定子に向かって厚さが減少する第2ヨークを得る。
【発明の効果】
【0015】
本発明の少なくとも幾つかの実施形態によれば、磁性体により形成される第2プレス部品が、第1固定子に向かって軸方向に第2ヨークから突出することで、第2ヨーク及び第2プレス部品によって形成される第2固定子の全体形状を前述の先細状に近づけることができる。また、第2プレス部品を利用して先細状の第2固定子の全体形状を実現することで、専ら切削加工により先細状の第2固定子を得る場合に比べてソレノイドアクチュエータの製造コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】一実施形態に係るソレノイドアクチュエータの構成を概略的に示す断面図である。
【
図2】一実施形態に係る、固定子と可動子との間の磁束の受け渡し領域におけるソレノイドアクチュエータの詳細な構造を示す断面図である。
【
図3A】一実施形態に係るソレノイドアクチュエータの組立手順を示す図である。
【
図3B】一実施形態に係るソレノイドアクチュエータの組立手順を示す図である。
【
図3C】一実施形態に係るソレノイドアクチュエータの組立手順を示す図である。
【
図3D】一実施形態に係るソレノイドアクチュエータの組立手順を示す図である。
【
図4A】一実施形態に係る第2プレス部品の加工手順を示す図である。
【
図4B】一実施形態に係る第2プレス部品の加工手順を示す図である。
【
図4C】一実施形態に係る第2プレス部品の加工手順を示す図である。
【
図5】一実施形態に係るソレノイドアクチュエータを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0018】
図1は、一実施形態に係るソレノイドアクチュエータの構成を概略的に示す断面図である。
図2は、一実施形態に係る、固定子と可動子との間の磁束の受け渡し領域におけるソレノイドアクチュエータの詳細な構造を示す断面図である。
【0019】
図1では、ソレノイドアクチュエータの樹脂モールドの図示を省略している。また、コイル3の片側(図中の左側の部分)のみについて磁路4を示しているが、環状に設けられたコイル3の両側(図中の右側の部分)にも同様な磁路4が形成されている。
【0020】
幾つかの実施形態では、
図1に示すように、ソレノイドアクチュエータ1は、コイル3と、コイル3の周りに磁路4を形成するための固定子10,20と、コイル3が生成する磁力により軸方向に移動可能な可動子50と、を含む。
【0021】
コイル3は、例えば銅又は銅合金等の導体により構成される線材をソレノイドアクチュエータ1の中心軸O周りに巻くことで構成される。コイル3は、全体として、中心軸Oを中心とする略環状である。コイル3には不図示のターミナルが電気的に接続されており、ターミナルを介してコイル3に電力が供給される。コイル3の通電時、可動子50を吸引するための磁力が生成される。
なお、コイル3は、不図示のボビンに収容されていてもよい。
【0022】
固定子10,20は、ソレノイドアクチュエータ1の軸方向においてコイル3を挟んで両側に位置する第1固定子10および第2固定子20を含む。固定子10,20は、例えば鉄であってもよい磁性体により構成され、コイル3を取り囲むように中心軸O周りに環状に設けられる。
【0023】
第1固定子10及び第2固定子20は、コイル3の内周側、かつ、後述の可動子50の外周側では、軸方向においてエアギャップ11を隔てて互いに対向するように配置される。
エアギャップ11は、可動子50を経由せずに第1固定子10から第2固定子20に直接向かう磁束流れを制限し、第1固定子10から可動子50を経由して第2固定子20に向かう磁束を効率的に流すために設けられる。
【0024】
図1に示す例では、第1固定子10と第2固定子20は、コイル3の外周側に位置する当接部12において当接する。
この場合、第1固定子10と第2固定子20が、コイル3の内周側でエアギャップ11を介して対向し、かつ、コイル3の外周側の当接部12で当接した状態で、不図示の樹脂モールドによって一体的に成形されてもよい。
なお、第1固定子10と第2固定子20との当接部12の位置は特に限定されず、
図1の例のように軸方向におけるコイル3の中央位置に当接部12が位置してもよいし、コイル3の中央位置とは異なる位置に当接部12が存在してもよい。
【0025】
他の実施形態では、ソレノイドアクチュエータ1は第1固定子10及び第2固定子20が当接する箇所を有しない。
例えば、ソレノイドアクチュエータ1が、第1固定子10及び第2固定子20以外の1以上の他の固定子を含む場合、1以上の他の固定子は、第1固定子10と第2固定子20との間に位置し、第1固定子10及び第2固定子20とともに磁路4を形成してもよい。こうして、第1固定子10及び第2固定子の間に他の固定子が介在することで、第1固定子10及び第2固定子20が直接当接しない構成になっていてもよい。
また、第1固定子10及び第2固定子20を含む複数の固定子の間に空隙が存在してもよい。
【0026】
幾つかの実施形態では、
図1及び
図2に示すように、第1固定子10は、第1ヨーク14と、第1ヨーク14の内周側に固定される筒状ガイド30とを含む。
他の実施形態では、第1固定子10の全体が一体物で形成される。
【0027】
第1ヨーク14の内周側に固定される筒状ガイド30は、軸方向において、第1固定子10と第2固定子20との間のエアギャップ11を隔てて第2固定子20と対向する。すなわち、筒状ガイド30の先端31は、第2固定子20の先端21に接しておらず、エアギャップ11によって隔てられている。
ここで、エアギャップ11とは、コイル3の内周側における、第1ヨーク14及び筒状ガイド30を含む第1固定子10と第2固定子20との間の最小の間隙を意味する。
【0028】
筒状ガイド30は、
図1及び
図2に示すように、第2固定子20の先端21と少なくとも部分的にオーバーラップする径方向位置範囲に筒状ガイド30の先端31が位置するように配置されてもよい。
【0029】
幾つかの実施形態では、
図1及び
図2に示すように、筒状ガイド30は、第1ヨーク14から第2固定子20側に先端31が突出するように配置される。すなわち、筒状ガイド30は、第1ヨーク14の先端位置を越えて第2固定子20側へ軸方向に延在する。
このように、第1ヨーク14の先端位置を越えて第2固定子20側へ筒状ガイド30を延ばすことで、筒状ガイド30(後述する磁性筒32)と可動子50との間の磁気受け渡し面積を確保しやすくなり、原位置にある可動子50と第2固定子20との間を流れる磁束を増大させることができる。
【0030】
また、筒状ガイド30は、原位置における可動子50の後端51まで、または、可動子50の後端51を越えて第2固定子20とは反対側へと軸方向に延在してもよい。
図1に示す例示的な実施形態では、筒状ガイド30は、原位置における可動子50の後端51を越えて第2固定子20とは反対側へと軸方向に延在している。すなわち、筒状ガイド30の先端31とは反対側の基端33は、原位置における可動子50の後端51から第2固定子20とは反対側へ軸方向に突出している。このように、原位置における可動子50の後端51を越えて第2固定子20とは反対側まで筒状ガイド30を延ばすことで、筒状ガイド30(後述する磁性筒32)と可動子50との間の磁気受け渡し面積を確保しやすくなる。その結果、可動子50を経由する磁路4の全体としての磁気抵抗が低下し、原位置にある可動子50と第2固定子20との間を流れる磁束を増大させることができる。
【0031】
幾つかの実施形態では、
図2に示すように、筒状ガイド30は、第1ヨーク14の第1貫通穴15の内壁に接触する外周面を有する磁性筒32と、磁性筒32の内周面に形成される非磁性層34と、を含む。
【0032】
磁性筒32は、例えば鉄であってもよい磁性体により構成され、エアギャップ11を隔てて第2固定子20と対向する。すなわち、第1ヨーク14及び筒状ガイド30を含む第1固定子10の磁性体部分のうち磁性筒32が、第2固定子20の先端21に最も近接して配置される。
径方向における磁性筒32の位置範囲は、磁性筒32との間にエアギャップ11を形成する第2固定子20の先端21の径方向の位置範囲と少なくとも部分的にオーバーラップしていてもよい。
【0033】
筒状ガイド30の非磁性層34は、可動子50の外周面に対向するように磁性筒32の内周面に設けられる。
これにより、筒状ガイド30は、非磁性層34に可動子50を摺接させることで可動子50を軸方向に案内することができる。
なお、非磁性層34は、例えば、銅やPTFE(polytetrafluoroethylene)等の低摩擦材料によって構成してもよい。非磁性層34は、例えば、焼結や含浸等の施工方法によって筒状ガイド30の内面に成膜されてもよい。例示的な実施形態では、非磁性層34は、焼結により形成される銅合金の多孔質層にPTFEを含む樹脂材を含浸することで形成される。
【0034】
一般に、可動子の径方向位置を拘束して可動子を軸方向に案内するガイド(軸受)は、ヨークと可動子との間の径方向の磁気ギャップとは別の場所に設けられる。この場合、可動子の径方向位置を規制するガイドに対してヨークの軸心が偏芯していると、可動子と可動子の外周側のヨークとの間の磁気ギャップもその影響を受ける。このため、ガイド(軸受)に対するヨークの軸ずれの影響を考慮して、可動子と可動子の外周側のヨークとの間に比較広い磁気ギャップを確保する必要がある。
この点、
図2に示す実施形態のように、非磁性層34によって可動子50を軸方向に案内するガイド機能を実現可能な筒状ガイド30を第1ヨーク14の内周側に固定すれば、筒状ガイド30に対する第1ヨーク14の軸ずれの影響を実質的に無くすことができる。このため、筒状ガイド30と可動子50との間に確保すべき径方向隙間trは、可動子50の組付けが可能な程度の大きさで足りる。その結果、第1固定子10と可動子50との間の磁気ギャップを減少させ、第1固定子10から可動子50に向かう磁束を増大させることができる。
なお、この場合における第1固定子10と可動子50との間の磁気ギャップとは、上述の径方向隙間trと、非磁性層34の厚さとの合計である。
【0035】
図2に示すように、筒状ガイド30の磁性筒32と第2固定子20(第2プレス部品40)との間の最小距離d1は、原位置における可動子50と第2固定子20(第2プレス部品40)との最小距離d2よりも大きい。
【0036】
このように、d1>d2の関係を満たすことで、磁性筒32と第2固定子20とのギャップにおける磁気抵抗が、原位置にある可動子50と第2固定子20との間のギャップにおける磁気抵抗よりも大きくなる。その結果、原位置にある可動子50と第2固定子20との間を流れる磁束を増大させることができる。
なお、従来、環状の可動子を内周側からガイドを介してヨークに支持する構成も提案されている。この点、ソレノイドアクチュエータ1では、可動子50の径方向外側に筒状ガイド30が位置するので、上述した従来の提案構造に比べて、筒状ガイド30の磁性筒32と可動子50との間の環状の磁気ギャップの面積を大きく確保できる。これは、磁気ギャップの面積が、磁気ギャップの周長と軸方向長さとの積で表されるところ、磁気ギャップが径方向外側に形成される場合に磁気ギャップの周長が相対的に大きくなるためである。こうして、磁性筒32と可動子50との間の磁気受け渡し面積(磁気ギャップの面積)が増加することで、磁路4の全体としての磁気抵抗が低下し、原位置にある可動子50と第2固定子20との間を流れる磁束も増大させることができる。
よって、原位置における可動子50と第1固定子10及び第2固定子20との磁気の受け渡し(
図2の矢印参照)を効果的に行うことが可能となり、コンパクトかつ高推力のソレノイドアクチュエータ1を実現できる。
【0037】
幾つかの実施形態では、
図2に示すように、筒状ガイド30は、第1ヨーク14の先端位置X_yokeを越えて第2固定子20側へ軸方向に延在する。筒状ガイド30の磁性筒32と第2固定子20(第2プレス部品40)との間の最小距離d1は、第1ヨーク14と第2固定子20(第2プレス部品40)との間の最小距離d3よりも小さくてもよい。
第1ヨーク14の先端位置Xを越えて第2固定子20側へ筒状ガイド30を延ばすことで、筒状ガイド30の磁性筒32と可動子50との間の磁気受け渡し面積を確保しやすくなり、原位置にある可動子50と第2固定子20との間を流れる磁束を増大させることができる。
他方、筒状ガイド30の先端を第2固定子20に近づけ過ぎると、可動子50を経由せずに磁性筒32と第2固定子20との間を流れる磁束が増大し、結果的に可動子50と第2固定子20との間における磁束が減少してしまうおそれがある。この点、上述したd1>d2の関係を満たすように筒状ガイド30(磁性筒32)の先端位置について制限を課すことで、原位置にある可動子50と第2固定子20との間を流れる磁束を十分に確保できる。
【0038】
幾つかの実施形態では、原位置(X=0)における可動子50(後述するプランジャ52)は、筒状ガイド30の先端31の位置を越えて第2固定子20側へ軸方向に延在する。すなわち、原位置における可動子50の先端部は、筒状ガイド30から第2固定子20側へ軸方向に突出している。
これにより、磁性筒32と第2固定子20との間の最小距離d1よりも、可動子50と第2固定子20との最小距離d2が小さいという上述の関係(d1>d2)を成立させやすくなる。
【0039】
図2に示す例示的な実施形態では、原位置(X=0)における可動子50の先端部は、軸方向に関して第2固定子20とオーバーラップする。すなわち、原位置(X=0)における可動子50の先端部は、第2固定子20(第2プレス部品40)によって画定されるキャビティ28内に侵入している。
これにより、磁性筒32と第2固定子20との間の最小距離d1よりも、可動子50と第2固定子20との最小距離d2が小さいという上述の関係(d1>d2)をより一層成立させやすくなる。
【0040】
図2に示す例示的な実施形態では、可動子50(プランジャ52)の外周面は、基準点55よりも先端側において、先端に向って外径が減少するテーパ状であるテーパ面56を含む。
可動子50が原位置X0にあるとき、可動子50の外周面のうちテーパ状の先端領域(テーパ面56)の境界を示す基準点55は筒状ガイド30の径方向内側に位置する。
【0041】
第1固定子10の第1ヨーク14は、例えば鉄であってもよい磁性体によって形成され、第2固定子20とともにコイル3を取り囲むように配置される。第1ヨーク14は、コイル3の外周側で当接部12において第2固定子20と当接してもよい。
第1ヨーク14は、筒状ガイド30を受け入れるための第1貫通穴15を有する。第1貫通穴15は、ソレノイドアクチュエータ1の中心軸Oと同心の円形穴であってもよい。
【0042】
第1ヨーク14の第1貫通穴15の内壁は、
図1に示すように、筒状ガイド30の外周面と接触する接触領域15aと、筒状ガイド30の外周面と接触しない非接触領域15bとを含む。非接触領域15bは、軸方向において接触領域15aと隣り合う。非接触領域15bは、軸方向において、接触領域15aを挟んで第2固定子20とは反対側に位置する。
【0043】
幾つかの実施形態では、第1貫通穴15の内径は、接触領域15aと非接触領域15bとで同一である。すなわち、第1貫通穴15の内壁には、第1ヨーク14に対する筒状ガイド30の軸方向位置を規制してしまう段差が設けられていない。
このため、第2固定子20に対する筒状ガイド30の軸方向の位置決めを第1貫通穴15の内壁の段差が阻害してしまうことがない。よって、第1ヨーク14への筒状ガイド30の組付けに際し、筒状ガイド30の先端31の軸方向位置の調整を適切に行うことが可能となり、エアギャップ11を高精度に管理することが容易になる。
【0044】
幾つかの実施形態では、第2固定子20は、
図1及び
図2に示すように、第2ヨーク24と、第2ヨーク24の内周側に固定される第2プレス部品40と、を含む。
【0045】
第2ヨーク24は、例えば鉄であってもよい磁性体によって形成され、第1固定子10とともにコイル3を取り囲むように配置される。第2ヨーク24は、コイル3の外周側で当接部12において第1固定子10と当接してもよい。
第2ヨーク24は、第2プレス部品40を受け入れるための第2貫通穴25を有する。第2貫通穴25は、ソレノイドアクチュエータ1の中心軸Oと同心の円形穴であってもよい。
【0046】
図1に示す例示的な実施形態では、第2プレス部品40は、円筒部41と、肩部42とを含むプレス成形品である。
【0047】
図1に示す実施形態のように、第2固定子20のうちエアギャップ11に直接関係する第2プレス部品40を第2ヨーク24とは別に設けることで、第2固定子20全体が一体物で構成される場合に比べて、エアギャップ11をより高精度に管理しやすくなる。
例えば、第1ヨーク14への筒状ガイド30の組付けに際して、第2固定子20の基準面22(すなわち、第2ヨーク24のうち第1固定子10とは反対側の軸方向端面22)を基準として筒状ガイド30の先端31の位置を調整する場合について考える。この場合、第2ヨーク24の軸方向端面22に対して筒状ガイド30の先端31の軸方向位置を調整した後、第2ヨーク24への第2プレス部品40の組付けに際して第2ヨーク24の軸方向端面22に対して第2プレス部品40を軸方向に位置合わせしてもよい。それにより、エアギャップ11に実質的に影響を与えるのは、第2固定子20のうち第2プレス部品40の寸法(第2ヨーク24の基準面22からエアギャップ11までの第2プレス部品40の軸方向寸法)のみとなり、高精度なエアギャップ11を容易に形成できる。
【0048】
図2に示す例示的な実施形態では、第2プレス部品40の円筒部41の先端部分は凸状の湾曲面44と、テーパ面46とを含む。
円筒部41の頂点45は、第2プレス部品40のうち、軸方向において、第1固定子10に最も近い部位である。湾曲面44は、頂点45において、テーパ面46に接続される。第2固定子20の先端21は、径方向内側に位置する湾曲面44と、径方向外側に位置するテーパ面46とを含む円筒部41の先端部分によって形成される。
【0049】
湾曲面44は、例えば、第2プレス部品40の絞り加工に起因しただれ(shear droop)によって形成してもよい。また、テーパ面46は、例えば、抜き打ち加工に起因した破断面を面取りすることで形成してもよい。
湾曲面44及びテーパ面46の形成方法については、後で詳述する。
【0050】
幾つかの実施形態では、
図1及び
図2に示すように、第2プレス部品40は、第2ヨーク24から第1固定子10側に突出するように設けられる。
すなわち、第2プレス部品40の円筒部41が形成する第2固定子20の先端21は、軸方向において、第2ヨーク24の先端と第1固定子10との間に位置する。
【0051】
ソレノイドアクチュエータには、例えばリニアソレノイドのように、電流に対する吸引力の変化がリニアな特性を持つことが望ましいものがある。このリニア特性を実現するためには、コイルへの通電時における原位置からの可動子の移動方向の下流側に配置される第2固定子の先端はエアギャップに向かって先細状とするのが有利である。
この点、上述のように、エアギャップ11を形成する第2プレス部品40を第2ヨーク24から軸方向に突出させることで、第2ヨーク24及び第2プレス部品40によって形成される第2固定子20の全体形状を前述の先細状に近づけることができる。
【0052】
図2に示す実施形態では、第2プレス部品40は、軸方向において第1固定子10に向かって厚さが減少する。すなわち、第2プレス部品40の先端部分は、第1固定子10に近づくにつれて厚さが減少する。
これにより、第2プレス部品40が第2ヨーク24から軸方向に突出する構成と相まって、第2固定子20の全体形状を前述の先細状により一層近づけることができる。なお、
図2に示す例では、第2プレス部品40の上記厚さ分布は、湾曲面44及びテーパ面46によって実現される。
【0053】
なお、第2プレス部品40の厚さ減少の開始点P1は、第2ヨーク24の先端よりも第1固定子10側に位置してもよい。すなわち、第2プレス部品40は、第2ヨーク24の先端よりも第1固定子10側の軸方向位置から第1固定子10に向かって厚さが減少してもよい。
図2に示す例では、湾曲面44の軸方向範囲がテーパ面46よりも広く、第2プレス部品40の厚さ減少の開始点P1は、湾曲面44の頂点45とは反対側の端である。他の実施形態では、テーパ面46の軸方向範囲が湾曲面44よりも広く、第2プレス部品40の厚さ減少の開始点P1は、テーパ面46の頂点45とは反対側の端である。
【0054】
第2ヨーク24の先端を境として第2ヨーク24の厚さがゼロとなることで第2固定子20全体としての厚さが第1固定子10に向かって減少する。さらに、上述のように、第2ヨーク24の先端よりも第1固定子10側においても、第2プレス部品40の厚さの減少によって、第2固定子20全体としての厚さが第1固定子10に向かって減少する。
よって、第2ヨーク24及び第2プレス部品40によって形成される第2固定子20の全体形状を前述の先細状により一層近づけることができる。
【0055】
幾つかの実施形態では、
図1及び
図2に示すように、第2ヨーク24は、エアギャップ11に向かって厚さtが減少する。すなわち、第2ヨーク24は、エアギャップ11側の先端領域に、エアギャップ11に向かって厚さtが減少する先細部26を有する。
ここで、第2ヨーク24の厚さtとは、第2ヨーク24の径方向における寸法である。
【0056】
このように、エアギャップ11に近づくにつれて減少する厚さ分布を第2ヨーク24が有することで、第2プレス部品40が第2ヨーク24から第1固定子10側に突出する構成と相まって、第2固定子20の全体形状を前述の先細状により一層近づけることができる。
【0057】
第2ヨーク24は、プレス成形によって形成可能である。すなわち、第2プレス部品40だけでなく、第2ヨーク24もプレス部品によって構成してもよい。
第2プレス部品40とともに第2固定子20を構成する第2ヨーク24もプレス部品により形成されることで、専ら切削加工により先細状の第2固定子20を得る場合に比べてソレノイドアクチュエータ1の製造コストをより一層低減できる。
【0058】
コイル3への通電時、上記構成の第1固定子10及び第2固定子20によりコイル3の周りに形成される磁路4に磁束が流れる(
図2の矢印参照)。
その結果、可動子50は、
図1の矢印Bで示すように、第1固定子10の径方向内側の原位置から、第2固定子20側に軸方向に移動する。第2固定子20は、コイル3への通電時に軸方向に接近してくる可動子50を受け容れるためのキャビティ28を第2固定子20の径方向内側に形成する。
図1に示す実施形態では、キャビティ28は、第2固定子20のうち第2プレス部品40によって画定される。
【0059】
幾つかの実施形態では、可動子50は、
図1に示すように、ソレノイドアクチュエータ1の出力軸であるシャフト54の端部に設けられるプランジャ52である。
プランジャ52は、シャフト54が圧入される貫通穴を有する。シャフト54は、シャフト54の軸芯とプランジャ52の軸芯とが一致するように、プランジャ52の貫通穴に圧入される。
【0060】
可動子50としてのプランジャ52は、例えば鉄であってもよい磁性体により形成され、シャフト54の外周側に取り付けられる。
プランジャ52の直径は、シャフト54の直径よりも大きく、第1固定子10の筒状ガイド30の内径よりも小さい。また、プランジャ52の直径は、第2固定子20によって形成されるキャビティ28の直径よりも小さい。
【0061】
コイル3が非励磁状態であるとき、不図示のスプリングによってシャフト54は矢印Bとは反対方向に付勢され、可動子50としてのプランジャ52は第1固定子10(筒状ガイド30)の径方向内側に位置する。このとき、プランジャ52は、実質的に筒状ガイド30の径方向内側に位置していればよく、プランジャ52の端部が、第1固定子10(筒状ガイド30)から第2固定子20側に突出していてもよい。
これに対し、コイル3への通電時、可動子50としてのプランジャ52は第2固定子20の径方向内側に形成されるキャビティ28に侵入する。このとき、プランジャ52は、少なくとも一部がキャビティ28内に位置していればよく、プランジャ52の残りの部分が、キャビティ28から第1固定子10側に突出していてもよい。
【0062】
上記構成のプランジャ52が固定されるシャフト54は、第2固定子20を貫通してソレノイドアクチュエータ1の外部へと延びる。シャフト54は、ソレノイドアクチュエータ1の作動によって矢印Bの方向へと移動し、不図示の外部機器にソレノイドアクチュエータ1の駆動力を伝達する。
ソレノイドアクチュエータ1によって駆動される外部機器は特に限定されないが、例えば、車両のエンジンの吸気バルブや排気バルブのバルブタイミングを油圧によって制御するスプールであってもよい。
【0063】
シャフト54は、軸受によって第2固定子20側に摺動可能に支持されてもよい。
図1に示す実施形態では、第2固定子20の一部を構成する第2プレス部品40のうち径方向内側の部位が軸受部53として機能し、シャフト54は第2プレス部品40の軸受部53によって摺動自在に支持される。
【0064】
続けて、
図3A~
図3Dを参照して、上記構成のソレノイドアクチュエータ1の製造方法について述べる。
【0065】
図3A~
図3Dは、一実施形態に係るソレノイドアクチュエータ1の製造方法の一部の工程を示す図である。
【0066】
はじめに、第1ヨーク14と、第2固定子20の一部である第2ヨーク24とをコイル3の周りに配置しておく(
図3A参照)。そして、第2ヨーク24の基準面22に対して筒状ガイド30を軸方向に位置決めする。
【0067】
筒状ガイド30の位置決めに際して、治具120を用いて、基準面22に対して筒状ガイド30の先端31が所望の軸方向位置に存在する状態を実現してもよい。
図3Aに示す実施形態では、第1ヨーク14の第1貫通穴15に対する筒状ガイド30の挿入に先立って、筒状ガイド30の位置決め用の治具120を予め設置しておく。
治具120は、平坦面100および略円筒形状の凸部122を有する。凸部122は、平坦面100の内周側に位置し、平坦面100から上方に突出して設けられる。治具120は、治具120の平坦面100が第2ヨーク24の基準面22に接触し、かつ、治具120の凸部122が第2ヨーク24の内周側に位置するように設置される。このとき、治具120の凸部122の上端面124は、第2ヨーク24の基準面22に対して、平坦面100からの凸部122の突出量だけ高い位置に存在する。
この後、
図3Aに示すように、第2ヨーク24とは反対側から第1ヨーク14の第1貫通穴15に筒状ガイド30を挿入する。筒状ガイド30の先端31が治具120の凸部122の上端面124に接触したとき、
図3Bに示すように、筒状ガイド30の挿入を停止する。
こうして、第2固定子20の一部を構成する第2ヨーク24の基準面22に対して筒状ガイド30が軸方向に位置決めされる。
【0068】
位置決めされた筒状ガイド30は、第1ヨーク14に対して不動となるように、第1ヨーク14の内周側に固定される。
第1ヨーク14に対する筒状ガイド30の固定は、圧入または溶接により行うことができる。筒状ガイド30を第1ヨーク14の第1貫通穴15に圧入する場合、上述した筒状ガイド30の位置決めと、第1ヨーク14に対する筒状ガイド30の固定とが同時に実施される。これに対し、第1ヨーク14に対して第1円筒部材30を溶接で固定する場合、第1円筒部材30の位置決めの後、第1ヨーク14に対する第1円筒部材30の固定が実施される。
【0069】
次に、
図3Cに示すように、第2固定子20の一部を構成する第2プレス部品40を、第2ヨーク24の第2貫通穴25に挿入し、第2ヨーク24に対して第2プレス部品40を位置決め及び固定する。
具体的には、第2プレス部品40は、第1固定子10に向かって軸方向に第2ヨーク24から突出するように、第2ヨーク24の内周側に取り付けられる。
【0070】
ここで、第2プレス部品40の位置決めに際して、治具130を用いて、第2ヨーク24の基準面22に対して第2プレス部品40の先端部分(すなわち、第2固定子20の先端21)が所望の軸方向位置に存在する状態を実現してもよい。
治具130は、平坦面132と、平坦面132によって取り囲まれた凹部134を有する。凹部134の深さは、第2プレス部品40の軸受部53を受け入れ可能な寸法に設定される。治具130は、治具130の平坦面132が、第2ヨーク24の基準面22、および、第2プレス部品40の肩部42に接触するように設置される。
このように治具130の平坦面132に、第2ヨーク24の基準面22と、第2プレス部品40の肩部42とを接触させることで、第2ヨーク24に対して第2プレス部品40の先端部分(すなわち、第2固定子20の先端21)が軸方向に位置決めされる。
【0071】
こうして位置決めされた第2プレス部品40は、第2ヨーク24に対して不動となるように、第2ヨーク24の内周側に固定される。その結果、第1固定子10(第1ヨーク14及び筒状ガイド30)と、第2固定子20(第2ヨーク24及び第2プレス部品40)とにより、コイル3の周りに磁路4(
図3参照)が形成される。
第2ヨーク24に対する第2プレス部品40の固定は、圧入または溶接により行うことができる。筒状ガイド30を第1ヨーク14の第1貫通穴15に圧入する場合、上述した筒状ガイド30の位置決めと、第1ヨーク14に対する筒状ガイド30の固定とが同時に実施される。
【0072】
その後、
図3Dに示すように、第1固定子10および第2固定子20に対して、可動子50としてのプランジャ52を組み付ける。
なお、この段階での可動子50(プランジャ52)の軸方向位置は特に限定されない。可動子50(プランジャ52)は、不図示のスプリングを組み付けることで、第1固定子10(筒状ガイド30)の径方向内側の原位置に位置するように取り付けられてもよい。
また、
図3Dに示す例では、第2固定子20の第2プレス部品40によってシャフト54を摺動自在に支持している。
【0073】
最後に、第1固定子10及び第2固定子20を不図示の樹脂モールドで一体的に成形し、ソレノイドアクチュエータ1を得ることができる。
【0074】
図3A~
図3Dを参照して説明した上述の方法によれば、第1ヨーク14への筒状ガイド30の組付けに際して、第2固定子20の基準面22に対して筒状ガイド30の軸方向の位置決めを行うことで、エアギャップ11に影響を与える関係部品を減らすことができる。これにより、エアギャップ11を高精度に管理することが可能となり、吸引特性に優れたソレノイドアクチュエータ1を安価に実現できる。
【0075】
次に、第2固定子20を構成する第2プレス部品40及び第2ヨーク24の加工方法について述べる。
【0076】
図4A~
図4Cは、一実施形態に係る第2プレス部品40の加工手順を示す図である。
最初に、
図4Aに示すように、板状の磁性材200に対して絞り加工により凹部202を形成する。具体的には、ダイ300上に載置した磁性材200に対してパンチ302を下降させる。パンチ302は、磁性材200を押圧しながら、ダイ300の空洞部へと侵入していく。この際、ダイ300の空洞部の周辺の磁性材200が空洞部内へと引き込まれ、凹部202が形成される。凹部202は、完成後の第2プレス部品40の円筒部41が画定するキャビティ28に相当する。
次に、
図4Bに示すように、凹部202の外周縁に沿った打ち抜き加工を行い、凹部202を有する磁性筒210を磁性材200の他の部分から分離する。具体的には、ダイ310上に載置した絞り加工後の磁性材200に対してパンチ312を下降させる。ダイ310は、
図4Aに示すダイ300よりも内径が大きく、磁性筒210の外周面との間に僅かなクリアランスCが形成される。パンチ312は、ダイ310の内径に略一致する外径を有し、
図4Aに示すパンチ302よりも外径が大きい。ダイ310とパンチ312とによって、凹部202の外周縁において破断されて、破断面212が形成される。
続けて、
図4Cに示すように、必要に応じて、磁性筒210の破断面212の面取りを行う。これにより、凸状の湾曲面44とテーパ面46とが頂点45において接続された円筒部41が形成される。湾曲面44は、
図4Aに示す絞り加工の際に磁性筒210の凹部202の内周縁に生じるだれ(shear droop)に起因する。テーパ面46は、破断面212の面取り加工に起因する。この後、肩部42及び軸受部53が形成され、第2プレス部品40が完成する。
【0077】
絞り加工におけるだれ(shear droop)に起因した湾曲面44は、第1固定子10に近づくにつれて径方向外側に向かって湾曲し、第1固定子10に近づくにつれて減少する第2プレス部品40の厚さ分布の実現に寄与する。
こうして、低コストであるプレス成形によって第2プレス部品40の上述した厚さ分布の実現が可能となり、第2プレス部品40が第2ヨーク24から軸方向に突出する構成と相まって、第2固定子20の全体形状を前述の先細状により一層近づけることができる。また、上記
図4A~
図4Cに示す例では、順送プレスを用いた第2プレス部品40の加工が可能であり、第2プレス部品40の製造コストをさらに低減できる。
【0078】
第2プレス部品40と同様に、第2ヨーク24もプレス成形によって作製してもよい。
例えば、
図4A及び
図4Bに示した手順と同様に、磁性体により構成されるヨーク材に絞り加工を施して凹部を形成し、凹部の外周縁に沿った打ち抜き加工により、外周縁を残して凹部をヨーク材から除去し、軸方向において第1固定子10に向かって厚さが減少する第2ヨーク24を得てもよい。
こうして、低コストであるプレス成形によって第2ヨーク24の上述した厚さ分布の実現が可能となり、第2プレス部品40が第2ヨーク24から軸方向に突出する構成と相まって、第2固定子20の全体形状を前述の先細状により一層近づけることができる。
【0079】
以上述べたソレノイドアクチュエータ1の具体的な構造例について、
図5を参照して説明する。
【0080】
図5は、一実施形態に係るソレノイドアクチュエータを示す断面図である。
同図に示すように、ソレノイドアクチュエータ1は、コイル3と、第1固定子10及び第2固定子20と、可動子50(プランジャ52)とを含む。
コイル3は、銅又は銅合金等の導体により構成される線材をボビン60に巻き回して形成される。ボビン60は、第1固定子10及び第2固定子20に実質的に囲まれる。しかし、第1固定子10(第1ヨーク14)には一部の周方向範囲において切欠きが設けられており、第1ヨーク14の切欠きにおいてボビン60のターミナル保持部62が露出する。ボビン60のターミナル保持部62は、ターミナル64の基端部が埋設される。ターミナル64は、ボビン60の内部においてコイル3を構成する線材と電気的に接続される。
また、ソレノイドアクチュエータ1では、コイル3及びボビン60と、第1固定子10及び第2固定子20とが、樹脂モールド70に一体的に成形されて、樹脂モールド70に埋設される。なお、ターミナル64は、ボビン60のターミナル保持部62から樹脂モールド70を貫通し、樹脂モールド70に設けられた凹部72に突出しており、凹部72に嵌合する外部端子と電気的に接続可能となっている。
なお、樹脂モールド70は、原位置にある可動子50(プランジャ52)の後端51に接触する凸部(不図示)を有していてもよい。
【0081】
本明細書において、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
また、本明細書において、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
また、本明細書において、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【符号の説明】
【0082】
1 ソレノイドアクチュエータ
3 コイル
4 磁路
10 第1固定子
11 エアギャップ
20 第2固定子
24 第2ヨーク
28 キャビティ
40 第2プレス部品
41 円筒部
42 肩部
44 湾曲面
50 可動子
200 磁性材
210 磁性筒
212 破断面