(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173949
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】ガスマニホールド
(51)【国際特許分類】
F23D 14/08 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
F23D14/08 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086520
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】志知 和幸
【テーマコード(参考)】
3K017
【Fターム(参考)】
3K017AB02
3K017AB08
3K017AC02
3K017AD01
(57)【要約】
【課題】前方に開口する複数のノズル室511を有するノズルブロック51と、ノズル室51を前方から覆う仕切板52と、前方に凹入するガス流入室531と有し、仕切板52に形成した複数の連通孔521を介しての複数のノズル室511へのガス供給を制御する複数の電磁弁533を取付けたバルブブロック53とを備えるガスマニホールドであって、ロール材から成る仕切板52を用いても、電磁弁533の閉弁時のシール不良を確実に防止できるようにする。
【解決手段】仕切板52の各透孔521に臨む弁孔535aが開設された、各電磁弁533の弁体533bが着座可能な弁座535が、当該弁座の上下に張り出す上下のブリッジ部535bを介してガス流入室531の上下の壁部に接合する状態で、バルブブロック53に一体に形成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前端下部にガス流入口を有するバーナを横方向に複数並設して成るバーナユニットに燃料ガスを供給するガスマニホールドであって、
前方に開口する、横方向に並設された複数のノズル室を有し、各ノズル室の後壁部の外面に、各ノズル室に連通し、各バーナのガス流入口に臨むノズルが設けられたノズルブロックと、ノズルブロックの前面側に複数のノズル室を前方から覆うようにして設けられ、これらノズル室に夫々連通する複数の透孔が形成された仕切板と、仕切板の前面側に設けられ、前方に凹入するガス流入室を有し、ガス流入室の前壁部に、ガス流入室から複数のノズル室への透孔を介してのガス供給を制御する複数の電磁弁のソレノイド部を取付けたバルブブロックとを備えるものにおいて、
仕切板の各透孔に臨む弁孔が開設された、各電磁弁の弁体が着座可能な弁座が、当該弁座の上下に張り出す上下のブリッジ部を介してガス流入室の上下の壁部に接合する状態で、バルブブロックに一体に形成されることを特徴とするガスマニホールド。
【請求項2】
前記ガス流入室の前壁部に開設する前記各電磁弁の弁体の挿入用の穴の径よりも前記各弁座の外径が小さいことを特徴とする請求項1記載のガスマニホールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前端下部にガス流入口を有するバーナを横方向に複数並設して成るバーナユニットに燃料ガスを供給するガスマニホールドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のガスマニホールドとして、特許文献1により、前方に開口する、横方向に並設された複数のノズル室を有し、各ノズル室の後壁部の外面に、各ノズル室に連通し、各バーナのガス流入口に臨むノズルが設けられたノズルブロックと、ノズルブロックの前面側に複数のノズル室を前方から覆うようにして設けられ、これらノズル室に夫々連通する複数の透孔が形成された仕切板と、仕切板の前面側に設けられ、前方に凹入するガス流入室を有し、ガス流入室の前壁部に、ガス流入室から複数のノズル室への透孔を介してのガス供給を制御する複数の電磁弁のソレノイド部を取付けたバルブブロックとを備えるものが知られている。
【0003】
ところで、コストダウンのためには、仕切板としてロール材をプレス成形して成るものを用いることが望まれる。然し、ロール材は、プレス成形してもスプリングバックで反りを生ずる。そのため、ロール材から成る仕切板を用いると、仕切板に電磁弁の弁体を当接させて、透孔を開閉するようにした場合、即ち、仕切板を電磁弁の弁座に兼用した場合、電磁弁の閉弁時のシール不良を生じやすくなる。
【0004】
そこで、特許文献1に記載のものでは、ノズルブロックに、各ノズル室の後壁部内面に位置させて、横方向に延在するリブを突設して、ノズルブロックの曲げ剛性を高くしている。そして、特許文献1には、ノズルブロックの前面にロール材から成る仕切板を挟んでバルブブロックを締結することにより、高剛性のノズルブロックに倣って仕切板の反りが矯正され、電磁弁の閉弁時のシール不良を改善できると記載されている。然し、実際には、電磁弁の閉弁時のシール不良を十分には改善できていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、ロール材から成る仕切板を用いても、電磁弁の閉弁時のシール不良を確実に防止できるようにしたガスマニホールドを提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、前端下部にガス流入口を有するバーナを横方向に複数並設して成るバーナユニットに燃料ガスを供給するガスマニホールドであって、前方に開口する、横方向に並設された複数のノズル室を有し、各ノズル室の後壁部の外面に、各ノズル室に連通し、各バーナのガス流入口に臨むノズルが設けられたノズルブロックと、ノズルブロックの前面側に複数のノズル室を前方から覆うようにして設けられ、これらノズル室に夫々連通する複数の透孔が形成された仕切板と、仕切板の前面側に設けられ、前方に凹入するガス流入室を有し、ガス流入室の前壁部に、ガス流入室から複数のノズル室への透孔を介してのガス供給を制御する複数の電磁弁のソレノイド部を取付けたバルブブロックとを備えるものにおいて、仕切板の各透孔に臨む弁孔が開設された、各電磁弁の弁体が着座可能な弁座が、当該弁座の上下に張り出す上下のブリッジ部を介してガス流入室の上下の壁部に接合する状態で、バルブブロックに一体に形成されることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、ロール材から成る仕切板を用いることで、仕切板に反りを生じても、電磁弁の閉弁時、バルブブロックに一体に形成されて面精度が確保された弁座に弁体が確実に密着する。従って、電磁弁の閉弁時のシール不良を確実に防止することができる。
【0009】
尚、バルブブロックは、ガス流入室の前壁部外面及び周壁部外面を成形する雌型であって、ガス流入室の前壁部に開設する各電磁弁の弁体の挿入用の穴を通して弁座の内面に達する中子型部を有するものと、ガス流入室の前壁部内面及び周壁部内面を成形する雄型であって、弁座及びブリッジ部の脇を通ってガス流入室の前壁部内面に達するものとを用いてダイカスト成形することができる。但し、バルブブロックのダイカスト成形時に、雌型の中子型部と雄型との合せ部に侵入する溶湯によってバリを生ずる。
【0010】
そのため、本発明においては、ガス流入室の前壁部に開設する各電磁弁の弁体の挿入用の穴の径よりも各弁座の外径が小さいことが望ましい。これによれば、バルブブロックのダイカスト成形後、弁体挿入用の穴から工具を挿入して弁座の内面を仕上げ加工する際に、この工具によって上記バリを除去することができ、加工コストを削減する上で有利である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態のガスマニホールドを具備する燃焼装置の切断側面図。
【
図2】実施形態のガスマニホールドの斜め後方から見た斜視図。
【
図3】実施形態のガスマニホールドの斜め前方から見た斜視図。
【
図4】実施形態のガスマニホールドの斜め前方から見た分解斜視図。
【
図5】実施形態のガスマニホールドを構成するノズルブロックの斜め後方から見た斜視図。
【
図6】
図5のVI―VIで切断したノズルブロックの切断平面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1を参照して、1は燃焼筐であり、燃焼筐1内に、バーナ2を横方向(
図1の紙面垂直方向)に複数並設して成るバーナユニットが配置されている。各バーナ2は、上端に、図示しないが、理論空燃比よりも燃料濃度が希薄な淡混合気を噴出する淡炎口と、淡混合気よりも燃料濃度が濃い濃混合気を噴出する濃炎口とを有し、下部前端に、淡炎口に連なる第1ガス流入口21と、濃炎口に連なる、第1ガス流入口21の上側の第2ガス流入口22とを有する公知の濃淡バーナで構成されている。尚、燃焼筐1内には、燃焼筐の上方に設置する給湯用の熱交換器を加熱する第1バーナユニットと、暖房用の熱交換器を加熱する第2バーナユニットとが配置される。
【0013】
燃焼筐1内の下部には、バーナユニットの配置部に対し区画板3で区画された給気室4が設けられている。給気室4には、図外のファンから空気が供給される。給気室4に供給された空気の一部は、区画板3に形成した多数の小孔(図示せず)を介してバーナユニットの配置部に燃焼用二次空気として供給される。また、区画板3の前端には、起立板部3aが設けられている。起立板部3aの前方には、第1と第2の両バーナユニットに燃料ガスを供給する本発明の実施形態のガスマニホールド5が配置されている。起立板部3aとガスマニホールド5との間には、給気室4に連なる一次空気室4aが画成される。起立板部3aには、各バーナ2の第1と第2の両ガス流入口21,22に夫々合致する開口が設けられている。そして、両ガス流入口21,22に一次空気室4aを介して燃焼用一次空気が供給される。
【0014】
ガスマニホールド5は、後側のノズルブロック51と、中間の仕切り板52と、前側のバルブブロック53とを備えている。また、ノズルブロック51と仕切り板52との間をシールする第1パッキン54と、仕切り板2とバルブブロック53との間をシールする第2パッキン55とが設けられている。以下、その詳細について、
図2乃至
図4も参照して説明する。
【0015】
ノズルブロック51は、ダイカスト品であり、前方に開口する、横方向に並設された♯1~♯4の4個のノズル室511を有している。♯1~♯3のノズル室511は、第1バーナユニットに対応するものであって、横方向に隣接しているが、♯4のノズル室511は、第2バーナユニットに対応するものであって、♯3のノズル室511から離れている。これらノズル室511の後壁部の外面には、各バーナ2の第1と第2の各ガス流入口21,22に臨む第1と第2の各ノズル512,513が横方向に複数並設されている。ノズルブロック51には、更に、♯1~♯4のノズル室511の上下両外側と♯1のノズル室511の横方向一方の外側と♯4のノズル室511の横方向他方の外側とに位置する複数のボス部514が設けられており、各ボス部514にネジ孔514aが形成されている。
【0016】
仕切板52は、ロール材から成るものであり、ノズルブロック51の前面側に♯1~♯4のノズル室511を前方から覆うようにして設けられる。仕切り板52には、♯1~♯4のノズル室511に夫々連通する4個の透孔521が形成されている。また、仕切板52の上下両側と横方向両側には、上記ネジ孔514aに対応する複数の取付孔522が形成されている。
【0017】
バルブブロック53は、ダイカスト品であり、
図4、
図5に示す如く、前方に凹入する横長のガス流入室531と、ガス流入室531の中間部下端から下方にのびる流入管部532とを有している。ガス流入室531には、図外のガス管から流入管部532を介して燃料ガスが供給される。ガス流入室531の前壁部には、ガス流入室531から♯1~♯4のノズル室511への仕切板52に形成した4個の透孔521を介してガス供給を夫々制御する4個の電磁弁533のソレノイド部533aが取付けられている。また、バルブブロック53には、ガス流入室531の上下両外側と横方向両外側とに位置させて、上記ネジ孔514aに対応する複数の取付孔534が形成されている。
【0018】
バルブブロック53には、更に、仕切板52の各透孔521に臨む弁孔535aが開設された、各電磁弁533の弁体533bが着座可能な弁座535が4個の透孔521に対応して4個設けられている。ここで、各弁座535は、当該各弁座535の上下に張り出す上下のブリッジ部535bを介してガス流入室531の上下の壁部に接合する状態で、バルブブロック53に一体に形成されている。尚、ガス流入室531の横方向一方と他方の各端部近傍に位置する弁座535は、上下のブリッジ部535bだけでなく、横方向外側の周縁部でガス流入室531の横方向各端の端壁部に接合している。また、バルブブロック53のガス流入室531の前壁部には、各電磁弁533の弁体533bの挿入用の穴536が開設されている。
【0019】
第1パッキン54は、ノズルブロック51の前面、即ち、♯1~♯4のノズル室511の周壁部の前端面と仕切板52の後面との間に介設されて、各ノズル室511を気密にシールする。また、第2パッキン55は、バルブブロック53の後面、即ち、ガス流入室531の周辺部後面と仕切板52の前面との間に介設されて、ガス流入室531を気密にシールする。第2パッキン55には、各弁座535の後面と仕切板52の各透孔521の周縁部前面との間に介設されるシール部551も設けられている。
【0020】
ノズルブロック51の前面には、♯1のノズル室511の横方向一方の外側上部と♯4のノズル室511の横方向他方の外側上部とに位置させて、第1パッキン54の対応する位置に形成した位置決め孔541と仕切板52の対応する位置に形成した位置決め孔523とに嵌合して第1パッキン54及び仕切板52を位置決めする位置決め突起515が突設されている。また、バルブブロック53の後面には、ガス流入室531の横方向両外側の下部に位置させて、第2パッキン55の対応する位置に形成した位置決め孔552と仕切板52の対応する位置に形成した位置決め孔524とに嵌合して第2パッキン54及び仕切板52を位置決めする位置決め突起537が突設されている。そして、ノズルブロック51とバルブブロック53との間に第1パッキン54と仕切板52と第2パッキン55とを挟んだ状態で、取付ネジ56をバルブブロック53の取付孔534と仕切板52の取付孔522とを通してネジ孔514aに締め込むことによりバルブブロック53をノズルブロック51に締結して、ガスマニホールド5を組立てる。
【0021】
本実施形態では、上記の如く各電磁弁533の弁体533bが着座する弁座535をバルブブロック53に一体に形成するため、弁座53の面精度を容易に確保できる。従って、ロール材から成る仕切板52を用いることで、仕切板52に反りを生じても、電磁弁533の閉弁時、弁体533bが弁座535に確実に密着する。その結果、電磁弁533の閉弁時のシール不良を確実に防止することができる。
【0022】
ところで、バルブブロック53は、ガス流入室531の前壁部外面及び周壁部外面を成形する雌型であって、ガス流入室531の前壁部の弁体挿入用の穴536を通して弁座535及びブリッジ部535bの内面に達する中子型部を有するものと、ガス流入室531の前壁部内面及び周壁部内面を成形する雄型であって、弁座535及びブリッジ部535bの脇を通ってガス流入室531の前壁部内面に達するものとを用いてダイカスト成形することができる。但し、バルブブロック53のダイカスト成形時に、雌型の中子型部と雄型との合せ部に侵入する溶湯によって
図6に仮想線で示す如くバリaを生ずる。
【0023】
ここで、本実施形態では、各弁座535の外径を弁体挿入用の穴536の径よりも小さくしている。これによれば、、バルブブロック53のダイカスト成形後、弁体挿入用の穴536から工具を挿入して弁座535の内面を仕上げ加工する際に、この工具によって上記バリaを除去することができる。そのため、バリaを除去する特別な工程が不要になり、加工コストを削減することがきる。
【0024】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記実施形態は、給湯兼暖房用の燃焼装置のガスマニホールド5に本発明を適用したものであるが、給湯専用の燃焼装置やそれ以外の燃焼装置のガスマニホールドにも本発明は適用できる。
【符号の説明】
【0025】
2…バーナ、21,22…ガス流入口、5…ガスマニホールド、51…ノズルブロック、511…ノズル室、512,513…ノズル、52…仕切板、521…透孔、53…バルブブロック、531…ガス流入室、533…電磁弁、533a…ソレノイド部、533b…弁体、535…弁座、535a…弁孔、535b…ブリッジ部、536…弁体挿入用の穴。