(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173957
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】光学系及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 13/04 20060101AFI20231130BHJP
G02B 13/18 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
G02B13/04 D
G02B13/04 C
G02B13/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086534
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000133227
【氏名又は名称】株式会社タムロン
(72)【発明者】
【氏名】荒川 明男
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 允基
【テーマコード(参考)】
2H087
【Fターム(参考)】
2H087KA02
2H087KA03
2H087LA03
2H087MA04
2H087PA09
2H087PA10
2H087PA11
2H087PA18
2H087PA19
2H087PB11
2H087PB12
2H087QA02
2H087QA07
2H087QA12
2H087QA17
2H087QA22
2H087QA26
2H087QA34
2H087QA42
2H087QA45
2H087RA05
2H087RA12
2H087RA13
2H087RA32
2H087RA42
2H087RA43
2H087RA44
(57)【要約】
【課題】 広角で高い光学性能を得ることが可能な光学系及び撮像装置を提供する。
【解決手段】 物体側から像側へ順に、負の屈折力を有する前群、開口絞り、正の屈折力を有する後群で構成され、前記前群は、第1負レンズと、第2負レンズと、第3負レンズと、第1正レンズとがこの順で隣り合う構成を有し、前記第1負レンズ及び前記第2負レンズは、負メニスカスレンズであり、前記第3負レンズは、物体側に凹面を有し、所定の式を満足する光学系。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から像側へ順に、負の屈折力を有する前群と、開口絞りと、正の屈折力を有する後群とで構成され、
前記前群は、第1負レンズと、第2負レンズと、第3負レンズと、第1正レンズとが、この順で隣り合う構成を有し、
前記第1負レンズ及び前記第2負レンズは、物体側に凸面を有する負メニスカスレンズであり、前記第3負レンズは、物体側に凹面を有し、
以下の式を満足する光学系。
ΔΘgF(FM)>0.0120・・・・(1)
ΔΘgF(FP)>0.0020・・・・(2)
ΔΘgF(RM)>0.0000・・・・(3)
ΔΘgF(RP)>0.0100・・・・(4)
但し、
ΔΘgF(FM):前記前群に含まれる負レンズのΔΘgFの平均値
ΔΘgF=ΘgF―(-0.00162×νd + 0.641594)
ΘgF=(ng―nF)/(nF―nC)
νd:レンズのd線におけるアッベ数
ng:レンズのg線における屈折率
nF:レンズのF線における屈折率
nC:レンズのC線における屈折率
ΔΘgF(FP):前記前群に含まれる正レンズのΔΘgFの平均値
ΔΘgF(RM):前記後群に含まれる負レンズのΔΘgFの平均値
ΔΘgF(RP):前記後群に含まれる正レンズのΔΘgFの平均値
【請求項2】
前記後群は、最も像側に正の屈折力を有する最終レンズ、及び、当該最終レンズより物体側に配置される負レンズAを有し、前記最終レンズと前記負レンズAのレンズ面のうち少なくとも1面は非球面である請求項1に記載の光学系。
【請求項3】
以下の式を満足する請求項1に記載の光学系。
Y/TK<0.110・・・・・・・(5)
但し、
Y:最大像高
TK:射出瞳位置と像面の光軸上の距離の絶対値
【請求項4】
以下の式を満足する請求項1に記載の光学系。
EXIT/f<-9.0・・・・・(6)
但し、
EXIT:射出瞳位置と像面の光軸上の距離
f:無限遠合焦時の当該光学系の焦点距離
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の光学系と、当該光学系の像側に当該光学系によって形成された光学像を電気的信号に変換する撮像素子とを備えた撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、光学系及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルスチルカメラの等の固体撮像素子を用いた撮影装置が普及している。それに伴い、光学系の高性能化、小型化が進み、小型の撮像装置システムが急速に普及してきている。従来のレンズにおいて、特に全長が短く小型な光学系が望まれるFA用レンズ、監視カメラ用レンズ、車載用レンズ、ビデオカメラ用レンズ、デジタルスチルカメラ用レンズ、一眼レフレックスカメラ用レンズ、ミラーレス一眼カメラ用レンズ等では、広角で高い光学性能を有することが課題となる。
【0003】
特許文献1には、物体側から像側へ順に、3枚の負レンズを有する光学系が開示されている。しかしながら特許文献1は、軸上色収差の補正及び倍率色収差補正が不十分で、広角で高い光学性能を得ることが困難である。
【0004】
特許文献2には、物体側から像側へ順に、3枚の負レンズ、正レンズと負レンズの接合レンズを有する光学系が開示されている。しかしながら特許文献2は、軸上色収差の補正及び倍率色収差補正が不十分で、広角で高い光学性能を得ることが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-197095号公報
【特許文献2】特開2019-159188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本件発明の課題は、広角で高い光学性能を得ることが可能な光学系を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
物体側から像側へ順に、負の屈折力を有する前群と、開口絞りと、正の屈折力を有する後群とで構成され、
前記前群は、第1負レンズと、第2負レンズと、第3負レンズと、第1正レンズとが、この順で隣り合う構成を有し、
前記第1負レンズ及び前記第2負レンズは、物体側に凸面を有する負メニスカスレンズであり、前記第3負レンズは、物体側に凹面を有し、
以下の条件を満足する光学系。
ΔΘgF(FM)>0.0120・・・・(1)
ΔΘgF(FP)>0.0020・・・・(2)
ΔΘgF(RM)>0.0000・・・・(3)
ΔΘgF(RP)>0.0100・・・・(4)
但し、
ΔΘgF(FM):前記前群に含まれる負レンズの ΔΘgFの平均値
ΔΘgF=ΘgF―(-0.00162×νd + 0.641594)
ΘgF=(ng―nF)/(nF―nC)
νd:レンズのd線におけるアッベ数
ng:レンズのg線における屈折率
nF:レンズのF線における屈折率
nC:レンズのC線における屈折率
ΔΘgF(FP):前記前群に含まれる正レンズの ΔΘgFの平均値
ΔΘgF(RM):前記後群に含まれる負レンズの ΔΘgFの平均値
ΔΘgF(RP):前記後群に含まれる正レンズの ΔΘgFの平均値
【0008】
また、上記課題を解決するために本件発明に係る撮像装置は、上記光学系と、当該光学系によって形成された光学像を電気的信号に変換にする撮像素子とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本件発明によれば、広角で高い光学性能を得ることが可能な光学系を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1の無限遠合焦時の光学系の断面図である。
【
図2】実施例1の無限遠合焦時の光学系における縦収差図である。
【
図3】実施例1の無限遠合焦時の光学系における横収差図である。
【
図4】実施例2の無限遠合焦時の光学系の断面図である。
【
図5】実施例2の無限遠合焦時の光学系における縦収差図である。
【
図6】実施例2の無限遠合焦時の光学系における横収差図である。
【
図7】実施例3の無限遠合焦時の光学系の断面図である。
【
図8】実施例3の無限遠合焦時の光学系における縦収差図である。
【
図9】実施例3の無限遠合焦時の光学系における横収差図である。
【
図10】実施例4の無限遠合焦時の光学系の断面図である。
【
図11】実施例4の無限遠合焦時の光学系における縦収差図である。
【
図12】実施例4の無限遠合焦時の光学系における横収差図である。
【
図13】実施例5の無限遠合焦時の光学系の断面図である。
【
図14】実施例5の無限遠合焦時の光学系における縦収差図である。
【
図15】実施例5の無限遠合焦時の光学系における横収差図である。
【
図16】本発明の一実施形態に係る撮像装置の構成の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本件発明に係る光学系及び撮像装置の実施の形態を説明する。但し、以下に説明する光学系及び撮像装置は、本件発明に係る光学系及び撮像装置の一態様であって、本件発明に係る光学系及び撮像装置は以下の態様に限定されるものではない。
【0012】
1.光学系
1-1.光学構成
本件発明に係る光学系は物体側から像側へ順に、負の屈折力を有する前群と、開口絞りと、正の屈折力を有する後群とで構成される。この構成によって、広角で高い光学性能を有する光学系を実現することが容易となる。
【0013】
(1)前群
前群は、負の屈折力を有するレンズ群であり、第1負レンズと、第2負レンズと、第3負レンズと、第1正レンズとが、この順で隣り合う構成を有する限り、その具体的な構成は特に限定されるものではない。第1負レンズ及び第2負レンズは、物体側に凸面を有する負メニスカスレンズであり、第3負レンズは、物体側に凹面を有することが、広角で高い光学性能を得る上で、好ましい。また前群は、第1負レンズの物体側に1枚以上のレンズを有してもよい。また第1正レンズの像側に1枚以上のレンズを有してもよい。これにより収差をより効果的に補正することができる。
【0014】
上述のように前群は、第1負レンズの物体側に2枚のレンズを有してもよい。具体的には、前群は、第1負レンズの物体側に2枚の正レンズを有していても良いし、2枚の負レンズを有していても良いし、正レンズと負レンズをそれぞれ有していても良い。さらに、前群は、第1負レンズの物体側に3枚以上のレンズを有していても良い。この場合にも、3枚以上のレンズの配置は特に限定されるものではない。
【0015】
また、上述のように前群は、第1正レンズの像側に2枚のレンズを有してもよい。具体的には、前群は、第1正レンズの像側に2枚の正レンズを有していても良いし、2枚の負レンズを有していても良いし、正レンズと負レンズをそれぞれ有していても良い。さらに、前群は、第1正レンズの像側に1枚のみレンズを有していても良いし、3枚以上のレンズを有していても良い。3枚以上の場合にも、レンズの配置は特に限定されるものではない。
【0016】
ここで、「レンズ群」とは、1枚又は互いに隣接する複数枚のレンズから構成される。
【0017】
(2)後群
後群は、正の屈折力を有するレンズ群である限り、その具体的な構成は特に限定されるものではない。後群は、最も像側の最終レンズが正レンズで構成されることが、収差を補正する上で、好ましい。また、最終レンズより物体側に負レンズAを有することが、収差を補正する上で、好ましい。なお、負レンズAの配置位置は特に限定されるものではなく、負レンズAと最終レンズとの間に1枚以上のレンズが配置されていても良いが、負レンズAは最終レンズの物体側に隣接することが、収差を補正する上で好ましい。さらに、最終レンズ又は負レンズAのレンズ面のうち少なくとも1面は非球面であることが、収差を補正する上で好ましい。
【0018】
(3)開口絞り
当該光学系において、前群と後群の間である限り、開口絞りの配置は特に限定されるものではない。
【0019】
1-2.合焦動作
当該光学系は、無限遠から近距離への合焦に際し、レンズ全体で移動することが、構成を簡易とし小型化する上で、好ましい。
【0020】
1-3. 式
当該光学系は、上述した構成を採用すると共に、次に説明する式を少なくとも1つ以上満足することが望ましい。
【0021】
1-3-1.式(1)
ΔΘgF(FM)>0.0120 ・・・・(1)
但し、
ΔΘgF(FM):前群に含まれる負レンズのΔΘgFの平均値
ΔΘgF=ΘgF―(-0.00162×νd + 0.641594)
ΘgF=(ng―nF)/(nF―nC)
νd:レンズのd線におけるアッベ数
ng:レンズのg線における屈折率
nF:レンズのF線における屈折率
nC:レンズのC線における屈折率
【0022】
式(1)は、前群に含まれる負レンズのΔΘgFの平均値を規定するための式である。ここでΔΘgFは、g線(波長λ=435.83nm)とF線(波長λ=486.13nm)の異常分散性を示す。また、ΘgFは、g線とF線の部分分散比を示す。また、νdはd線(λ=587.56nm)のアッベ数を示す。式(1)を満足することで、前群の色収差を抑制し、高い光学性能を得ることが容易となる。
【0023】
式(1)の下限値を下回ると、軸上の色収差及び倍率の色収差を補正が困難となり、高い光学性能を有することが困難となる。
【0024】
上記効果を得る上で、式(1)の下限値は0.0123であることが好ましく、0.0125であることがより好ましい。なお、これらの好ましい下限値又は上限値を採用する場合、式(1)において等号付不等号(≦)を不等号(<)に置換してもよい。他の式についても原則として同様である。
【0025】
1-3-2.式(2)
ΔΘgF(FP)>0.0020・・・・(2)
但し、
ΔΘgF(FP):前群に含まれる正レンズのΔΘgFの平均値
【0026】
式(2)は、前群に含まれる正レンズのΔΘgFの平均値を規定するための式である。式(2)を満足することで、前群の色収差を抑制し、高い光学性能を得ることが容易となる。
【0027】
式(2)の下限値を下回ると、軸上の色収差及び倍率の色収差を補正が困難となり、高い光学性能を得ることが困難となる。
【0028】
上記効果を得る上で、式(2)の下限値は0.0021であることが好ましく、0.020であることがより好ましい。
【0029】
1-3-3.式(3)
ΔΘgF(RM)>0.0000・・・・(3)
但し、
ΔΘgF(RM):後群に含まれる負レンズのΔΘgFの平均値
【0030】
式(3)は、後群に含まれる負レンズのΔΘgFの平均値を規定するための式である。式(3)を満足することで、後群の色収差を抑制し、高い光学性能を得るが容易となる。
【0031】
式(3)の下限値を下回ると、軸上の色収差及び倍率の色収差を補正が困難となり、高い光学性能を得ることが困難となる。
【0032】
上記効果を得る上で、式(3)の下限値は0.0010であることが好ましく、0.0050であることがさらに好ましい。
【0033】
1-3-4.式(4)
ΔΘgF(RP)>0.0100 ・・・・(4)
但し、
ΔΘgF(RP):後群に含まれる正レンズのΔΘgFの平均値
【0034】
式(4)は、後群に含まれる正レンズのΔΘgFの平均値を規定するための式である。式(4)を満足することで、後群の色収差を抑制し、高い光学性能を得ることが容易となる。
【0035】
式(4)の下限値を下回ると、軸上の色収差及び倍率の色収差を補正が困難となり、高い光学性能を得ることが困難となる。
【0036】
上記効果を得る上で、式(4)の下限値は0.0110であることが好ましく、0.0120であることがより好ましい。
【0037】
式(1)から式(4)を同時に満足することで、軸上色収差、倍率色収差が十分に少ない光学系を得ることができる。
【0038】
1-3-5.式(5)
Y/TK<0.110・・・・・・・(5)
但し、
Y:最大像高
TK:射出瞳位置と像面の光軸上の距離の絶対値
【0039】
式(5)は、最大像高と、射出瞳位置と像面の光軸上の距離の比を規定するための式である。式(5)を満足することで、収差を補正し、周辺光量比を増やすことが容易となる。
【0040】
式(5)の上限値を超えると、収差を補正し、周辺光量比を増やすことが困難となる。
【0041】
上記効果を得る上で、式(5)の下限値は0.020であることが好ましく、0.040であることがより好ましい。また、式(5)の上限値は0.109であることが好ましく、0.108であることがより好ましい。
【0042】
1-3-6.式(6)
EXIT/f<-9.0・・・・・(6)
但し、
EXIT:射出瞳位置と像面の光軸上の距離
f:無限遠合焦時の当該光学系の焦点距離
【0043】
式(6)は、射出瞳位置と、無限遠合焦時の当該光学系の焦点距離の比を規定するための式である。式(6)を満足することで、収差を補正し、周辺光量比を増やすことが容易となる。射出瞳位置と像面の光軸上の距離は、像面を基準とし、物体側に向かう方向をマイナス方向とする。
【0044】
式(6)の上限値を超えると、収差を補正し、周辺光量比を増やすことが困難となる。
【0045】
上記効果を得る上で、式(6)の下限値は-20.00であることが好ましく(6)の上限値は-9.05であることが好ましく、-10.50であることがより好ましい。
【0046】
2.撮像装置
次に、本件発明に係る撮像装置について説明する。本件発明に係る撮像装置は、上記本件発明に係る光学系と、当該光学系によって形成された光学像を電気的信号に変換する撮像素子とを備えたことを特徴とする。なお、撮像素子は光学系の像側に設けられることが好ましい。
【0047】
ここで、撮像素子等に特に限定はなく、CCD(Charge Coupled Device)センサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサなどの固体撮像素子等も用いることができる。本件発明に係る撮像装置は、デジタルカメラやビデオカメラ等のこれらの固体撮像素子を用いた撮像装置に好適である。また、当該撮像装置は、一眼レフカメラ、ミラーレス一眼カメラ、デジタルスチルカメラ、監視カメラ、車載用カメラ、ドローン搭載用カメラ等の種々の撮像装置に適用することができる。また、これらの撮像装置はレンズ交換式の撮像装置であってもよいし、レンズが筐体に固定されたレンズ固定式の撮像装置であってもよい。特に本発明に係る光学系はフルサイズ等のサイズの大きな撮像素子を搭載した撮像装置の光学系に好適である。当該光学系は全体的に小型で軽量、且つ、高い光学性能を有するため、このような撮像装置用の光学系としたときにも高画質な撮像画像を得ることができる。
【0048】
図16は、本実施形態に係る撮像装置の構成の一例を模式的に示す図である。
図16に示されるように、カメラ1は、本体2及び本体2に着脱可能な鏡筒3を有している。カメラ1は、撮像装置の一態様である。
【0049】
本体2は、撮像素子としてのCCDセンサ21及び光学フィルター22を有している。CCDセンサ21は、本体2中における、本体2に装着された鏡筒3内の光学系30の光軸が中心軸となる位置に配置されている。本体2は、光学フィルター22の代わりに、カバーガラス等を有していてもよい。
【0050】
次に、実施例を示して本件発明を具体的に説明する。但し、本件発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例0051】
(1)光学構成
図1は、本件発明に係る実施例1の光学系の無限遠合焦時の断面図である。当該光学系は、物体側から像側へ順に、負の屈折力を有する前群G1と、開口絞りSと、正の屈折力を有する後群G2とから構成されている。
【0052】
無限遠物体から近接物体への合焦の際、レンズ全体が移動する。
【0053】
前群G1は、物体側から像側へ順に、物体側に凸面を有する負メニスカスレンズ(第1負レンズ)と、物体側に凸面を有する負メニスカスレンズ(第2負レンズ)と、物体側に凹面を有する両凹レンズ(第3負レンズ)と、両凸レンズ(第1正レンズ)とから構成されている。
【0054】
後群G2は、物体側から像側へ順に、両凸レンズと、両凸レンズと両凹レンズが接合された接合レンズと、負メニスカスレンズと、両凸レンズと、負メニスカスレンズ(負レンズA)と、両凸レンズ(最終レンズ)とから構成されている。
【0055】
ΔΘgF(FM)は、前群G1に含まれる負レンズ(第1負レンズと、第2負レンズと、第3負レンズ)のΔΘgFの平均値である。また、ΔΘgF(FP)は、前群G1に含まれる第1正レンズのΔΘgFである。
【0056】
ΔΘgF(RM)は、後群G2n含まれる負レンズ(両凹レンズと負レンズA)のΔΘgFの平均値である。また、ΔΘgF(RP)は、後群G2に含まれる正レンズ(3つの両凸レンズと、最終レンズ)のΔΘgFの平均値である。
【0057】
なお、
図1において、「IMG」は像面であり、具体的には、CCDセンサやCMOSセンサなどの固体撮像素子の撮像面、或いは、銀塩フィルムのフィルム面等を示す。また、像面IMGの物体側には光学フィルターCGを備える。この点は、他の実施例で示す各レンズ断面図においても同様であるため、以後説明を省略する。
【0058】
(2)数値実施例
次に、当該光学系の具体的数値を適用した数値実施例について説明する。以下に、「レンズデータ」、「諸元表」、「非球面係数」、「各レンズ群の焦点距離」を示す。また、各式の値(表1)は実施例4の後にまとめて示す。なお、以下の各数値実施例において、長さの単位が記載されていない数値の単位は全て「mm」であり、角度の単位は全て「°」である。
【0059】
(レンズデータ)において、「面NO.」は物体側から数えたレンズ面の順番、「r」はレンズ面の曲率半径、「D」は光軸上のレンズ肉厚又は空気間隔、「Nd」はd線(波長λ=587.56nm)における屈折率、「νd」はd線におけるアッベ数、「Θgf」はg線とF線に対する部分分散比を示す。また、「面NO.」の欄において数字の次に付した「*」はそのレンズ面が非球面であることを示し、「S」はその面が開口絞りであることを示す。また、曲率半径の欄の「0.0000」は、そのレンズ面が平面であることを意味する。
【0060】
(諸元表)において、「f」は当該光学系の焦点距離、「FNO」はFナンバー、「ω」は半画角である。無限遠合焦時における値を示す。
【0061】
(非球面係数)は、次のようにして非球面形状を定義したときの非球面係数を示す。但し、xは光軸方向の基準面からの変位量、rは近軸曲率半径、Hは光軸に垂直な方向の光軸からの高さ、Kは円錐係数、Anはn次の非球面係数とする。また「非球面係数」の表において「E±XX」は指数表記を表し「×10±XX」を意味する。
【0062】
【0063】
これらの各数値実施例における事項は他の実施例においても同様であるため、以後説明を省略する。
【0064】
また、
図2、
図3に当該光学系の無限遠物体合焦時における縦収差図及び横収差図を示す。
図2に示す縦収差図は、図面に向かって左側から順に、それぞれ球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)である。球面収差図は実線がd線(波長587.56nm)、破線がg線(波長435.83nm)における球面収差をそれぞれ示す。非点収差図は縦軸が半画角(ω)、横軸がデフォーカスであり、実線がd線のサジタル像面を示し、破線がd線のメリディオナル像面をそれぞれ示す。歪曲収差図は、縦軸が半画角(ω)、横軸が歪曲収差である。
図3に示す横収差図は、各画角における収差を示し、横軸はメリディオナル方向の入射瞳の割合であり、縦軸がデフォーカスである。これらの事項は、他の実施例において示す各収差図においても同じであるため、以後説明を省略する。
【0065】
(レンズデータ)
面No. r D Nd νd Θgf
1 17.5370 0.8000 1.61800 63.33 0.5441
2 7.2129 1.0000
3* 9.4375 0.8000 1.55332 71.68 0.5402
4* 4.8135 3.4857
5 -7.4656 0.8000 1.49700 81.61 0.5387
6 28.6749 0.5000
7* 56.3393 2.4000 1.82115 24.06 0.6237
8* -14.7084 1.8066
9S 0.0000 0.2000
10 53.0688 3.0496 1.69680 55.53 0.5433
11 -8.0159 0.2000
12 13.0923 4.2201 1.61800 63.33 0.5442
13 -6.4914 0.8000 1.85478 24.80 0.6123
14 13.3907 0.8000
15 35.4634 0.8000 1.69895 30.13 0.6030
16 22.4627 0.3000
17 12.3549 4.4031 1.49700 81.61 0.5387
18 -16.1515 1.2610
19* -7.2340 1.0000 1.68893 31.16 0.6038
20* -17.4756 0.5000
21 44.1094 4.7038 1.92286 20.88 0.6390
22 -15.9933 1.0000
23 0.00000 0.8220 1.51633 64.14 0.5353
24 0.00000 2.3295
【0066】
(諸元表)
無限遠
f 7.096
FNO 2.40
ω 62.94
【0067】
(非球面係数)
面NO. K A4 A6 A8 A10
3 0.00000E+00 1.70260E-03 -8.31438E-05 2.75018E-07 2.10586E-08
4 0.00000E+00 2.19902E-03 -5.50456E-05 -5.17592E-06 7.35943E-08
7 0.00000E+00 -4.63885E-04 -2.50044E-05 -8.13559E-07 2.40928E-09
8 0.00000E+00 -7.10782E-05 1.26133E-06 -1.05936E-06 6.31091E-08
19 0.00000E+00 6.85178E-04 -1.03390E-05 3.22008E-07 6.57502E-10
20 0.00000E+00 8.17566E-04 -1.39008E-05 2.25797E-07 -1.28097E-09
【0068】
(各レンズ群の焦点距離)
群 面NO. 焦点距離
G1 1- 8 -10.3328
G2 10-22 13.0549
前群G1は、物体側から像側へ順に、物体側に凸面を有する負メニスカスレンズ(第1負レンズ)と、物体側に凸面を有する負メニスカスレンズ(第2負レンズ)と、物体側に凹面を有する負メニスカスレンズ(第3負レンズ)と、両凸レンズ(第1正レンズ)とから構成されている。
後群G2は、物体側から像側へ順に、正メニスカスレンズと、両凸レンズと、両凸レンズ及び両凹レンズが接合された接合レンズと、両凸レンズと、負メニスカスレンズ(負レンズA)と、両凸レンズ(最終レンズ)とから構成されている。
ΔΘgF(FM)は、前群G1に含まれる負レンズ(第1負レンズと、第2負レンズと、第3負レンズ)のΔΘgFの平均値である。また、ΔΘgF(FP)は、前群G1に含まれる第1正レンズのΔΘgFである。
ΔΘgF(RM)は、後群G2に含まれる負レンズ(両凹レンズと負レンズA)のΔΘgFの平均値である。また、ΔΘgF(RP)は、後群G2に含まれる正レンズ(正メニスカスレンズと、3つの両凸レンズと、最終レンズ)のΔΘgFの平均値である。