(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173969
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】帯電散布ヘッドの組立方法
(51)【国際特許分類】
B05B 1/00 20060101AFI20231130BHJP
A62C 31/02 20060101ALI20231130BHJP
B05B 5/025 20060101ALI20231130BHJP
B05B 5/08 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B05B1/00 Z
A62C31/02
B05B5/025 A
B05B5/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086546
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】辻 利秀
(72)【発明者】
【氏名】吉田 哲雄
【テーマコード(参考)】
2E189
4F033
4F034
【Fターム(参考)】
2E189CF00
2E189KA00
2E189KB04
4F033AA12
4F033BA04
4F033DA01
4F033EA01
4F033FA01
4F033MA00
4F033NA01
4F034AA08
4F034BA01
4F034BA31
4F034BB12
4F034BB15
4F034CA24
4F034CA25
4F034DA08
4F034DA30
(57)【要約】 (修正有)
【課題】帯電散布ヘッドの主要部の組立作業を簡単且つ容易に行えるようにする。
【解決手段】帯電散布ヘッドは主要部として本体部12、水側電極部14、液体導管部18及び電極連結部16を備え、その組立方法として、本体部12の電極取付穴1210に流出側から水側電極部14を挿入して、電極取付穴1210の六角開口部1220と水側電極部14の六角ボルト面1420により本体部12に水側電極部14を保持させる第1工程と、電極取付穴1210から流入側に露出した水側電極部14に合わせて液体導管部18を配置する第2工程と、液体導管部18に流入側から電極連結部16を通して、電極連結部16の内ねじ部1630を水側電極部14の外ねじ部1430に嵌合させることで、液体導管部18と共に水側電極部14を電極取付穴1210に取付固定する第3工程と、を含む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯電液体粒子を散布対象領域へ散布する帯電散布ヘッドの組立方法であって、
前記帯電散布ヘッドは、少なくとも
本体部と、
所定の電圧を印加して散布する液体粒子を帯電させる場合に一方の電極となる水側電極部と、
外部から散布するための液体を流入する液体導管部と、
所定の電圧を印加するための電源と前記水側電極部を接続する電極連結部と、
を備え、
前記本体部に貫通して形成された空間の電極取付穴に流出側から前記水側電極部を挿入して、前記本体部の前記電極取付穴に対して前記水側電極部の抜け及び回動を防止する構造により前記本体部に前記水側電極部を保持させる第1工程と、
前記電極取付穴から流入側に露出した前記水側電極部の端部に合わせて前記液体導管部を配置する第2工程と、
前記液体導管部に流入側から前記電極連結部の嵌合部が形成された開口を通して、前記電極連結部の嵌合部を前記水側電極部の端部の嵌合受部に嵌合させることで、前記電極取付穴に前記水側電極部を取付固定すると共に前記水側電極部に前記液体導管部を連結固定する第3工程と、
含むことを特徴とする帯電散布ヘッドの組立方法。
【請求項2】
請求項1記載の帯電散布ヘッドの組立方法において、
前記本体部の前記電極取付穴に対して前記水側電極部の抜け及び回動を防止する構造は、
前記水側電極部の流出側と流入側との間の所定位置に形成された六角ボルト面と、
前記六角ボルト面を嵌合させる前記電極取付穴の流出側に形成された六角開口部と、
で構成されることを特徴とする帯電散布ヘッドの組立方法。
【請求項3】
帯電液体粒子を散布対象領域へ散布する帯電散布ヘッドの組立方法であって、
前記帯電散布ヘッドは、少なくとも
本体部と、
所定の電圧を印加して散布する液体粒子を帯電させる場合に一方の電極となる水側電極部と、
外部から散布するための液体を流入する液体導管部と、
所定の電圧を印加するための電源と前記水側電極部を接続する電極連結部と、
を備え、
前記本体部は、貫通して形成された空間に、流入側に円筒開口部を有すると共に流出側に六角開口部を有する電極取付穴が形成され、
前記水側電極部は、貫通して内部流路が形成され、流入側の端部に嵌合受部が形成され、流出側と流入側との間の所定位置に前記電極取付穴の前記六角開口部に嵌合する六角ボルト面が形成され、
前記液体導管部は、組立後に前記水側電極部の前記内部流路の軸と同軸上に配置される内部流路が貫通して形成され、
前記電極連結部は、前記水側電極部の前記嵌合受部に嵌合する嵌合部を流出側に有する通し穴が貫通して形成され、外周を前記電極取付穴の前記円筒開口部に収納可能な六角ナット面とし、
前記本体部の前記電極取付穴に流出側から前記水側電極部を挿入して、前記水側電極部の前記六角ボルト面を前記電極取付穴の前記六角開口部に嵌合させて、前記電極取付穴に対する前記水側電極部の抜け及び回動を防止して前記本体部に前記水側電極部を保持させる第1工程と、
前記電極取付穴の前記円筒開口部に露出した前記水側電極部の端部に、前記水側電極部の前記内部流路の軸と液体導管部の前記内部流路の軸が同軸となるように前記液体導管部を配置する第2工程と、
前記液体導管部に流入側から前記電極連結部の前記通し穴を通し、前記電極連結部の前記六角ナット面に対して所定の工具を使用することにより、前記電極連結部の前記嵌合部を前記水側電極部の前記嵌合受部に嵌合させることで、前記電極取付穴に前記水側電極部を取付固定すると共に前記水側電極部に前記液体導管部を連結固定する第3工程と、
を含むことを特徴とする帯電散布ヘッドの組立方法。
【請求項4】
請求項3記載の帯電散布ヘッドの組立方法において、
前記水側電極部の挿入方向となる前記電極連結部の前記六角ナット面の高さを、前記電極取付穴の前記円筒開口部の前記挿入方向の深さを超え、前記円筒開口部から露出した前記六角ナット面に対して前記所定の工具を使用可能とする所定の高さとしたことを特徴とする帯電散布ヘッドの組立方法。
【請求項5】
請求項3記載の帯電散布ヘッドの組立方法において、更に、
前記本体部に貫通して形成された空間の前記電極取付穴よりも流入側に、嵌合受部を有する端子室が形成され、
前記帯電散布ヘッドは、前記端子室の流入側の開口を閉鎖する本体カバー部を備え、
前記本体カバー部は、貫通して通し穴が形成され、前記端子室の前記嵌合受部に嵌合する嵌合部が流出側に形成され、外周を六角ナット面とした箇所を有した蓋部が流入側に形成され、
前記液体導管部に流入側から前記本体カバー部の前記通し穴を通し、前記本体カバー部の前記六角ナット面に対して所定の工具を使用することにより、前記端子室の嵌合受部に前記本体カバー部の嵌合部を嵌合させて前記端子室の流入側の開口を閉鎖する第4工程を含むことを特徴とする帯電散布ヘッドの組立方法。
【請求項6】
請求項3乃至5何れかに記載の帯電散布ヘッドの組立方法において、
前記所定の工具としてスパナを使用することを特徴とする帯電散布ヘッドの組立方法。
【請求項7】
請求項3乃至5何れかに記載の帯電散布ヘッドの組立方法において、
前記本体部及び前記液体導管部は軟質の絶縁体であり、前記水側電極部及び前記電極連結部は導電体であることを特徴とする帯電散布ヘッドの組立方法。
【請求項8】
請求項5記載の帯電散布ヘッドの組立方法において、
前記本体カバー部は軟質の絶縁体であることを特徴とする帯電散布ヘッドの組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の微粒子を帯電させて散布する帯電散布ヘッドの組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水等の液体の微粒子を帯電させて散布する帯電散布ヘッドにあっては、平均粒子径が10~300μmの帯電液体粒子を散布させることができ、散布対象区画となる例えば建物等の消火設備に設けられ、火災で発生した煙を散布した帯電液体粒子に電気的に吸着させることで消煙し、また帯電液体粒子が消火対象物に電気的に付着することで消火効率を高めることを可能とする。また、建物の解体現場等において空気中に浮遊した粉塵を帯電液体粒子に電気的に吸着させることで、粉塵を空気中から除去することを可能とする。
【0003】
図17は従来の帯電散布ヘッドの構造を断面図で示している。
図17に示すように、帯電散布ヘッド100は、本体部120、水側電極部140、電極連結部160、液体導管部180、本体カバー部200、ノズル部220、誘導電極部240、アーム部260を備える。
【0004】
ここで、
図17の説明では、X-Y-Z方向が互いに直交する方向であり、具体的には、Y軸方向を帯電散布ヘッド100を通過する水の流通方向及び上下方向とし、X方向を左右方向とし、Z方向を前後方向とする。また、X方向における+X側を右側、-X側を左側とし、Y方向における+Y側を上側、-Y側を下側とし、Z方向における+Z側を前側、-Z側を後側とする。
【0005】
また、上下方向となるY軸方向は、ヘッド内を通過する水の流通方向となることから、上側となる+Y側を流入側といい、下側となる-Y側を流出側という場合がある。この点は本発明の実施形態となる
図1~
図16、
図18、
図19におけるX-Y-Z方向においても同様となる。尚、X-Y-Z方向は散布対象領域での帯電散布ヘッド100の取付状態に応じ変わる相対的な方向である。
【0006】
本体部120、液体導管部180、本体カバー部200、ノズル部220及びアーム部260は、例えばポリ塩化ビニル樹脂等の絶縁材質により製造された絶縁体である。水側電極部140及び電極連結部160は金属等の導電材質により製造された導電体である。
【0007】
本体部120の内部にはヘッド軸350方向となる流水方向(上下方向)に電極取付穴121が貫通して形成され、電極取付穴121に流出側から水側電極部140が嵌め込まれ、本体部120の流入側に形成された端子室124を介して本体部120に対して流入側から液体導管部180が嵌め込まれ、液体導管部180に電極連結部160を通して水側電極部140に電極連結部160がねじ込まれることで、水側電極部140を電極取付穴121に取付固定すると共に水側電極部140に液体導管部180を連結固定している。
【0008】
電極連結部160には複数のねじ穴164が設けられ、端子室124の左右方向に形成された電極コネクタ取付穴127から防水コネクタを介して挿入されたアースケーブルの端子を接続可能としている。また、液体導管部180の上部は本体カバー部200を介して外部に取り出され、外部の給水ポンプ等から水が供給される。
【0009】
本体部102のヘッド軸方向(上下方向)に沿って配置された水側電極部140の流出側の端部にはノズル部220が設けられ、ノズル部220から平均粒子径が10~300μmの水粒子を放出させる。ノズル部220の流出側の開放空間には、アーム部260により誘導電極部240が保持され、放出された水粒子を帯電させる。誘導電極部240は、導電性のある電極芯材を絶縁被覆して形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009-106405号公報
【特許文献2】特開2018-183712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、従来の帯電散布ヘッドを製造する際の組立作業にあっては、
図18の組立分解図に示すように、本体部120の電極取付穴121の流出側から水側電極部140を嵌め入れ、続いて、液体導管部180を水側電極部140の流入側に配置した状態で、液体導管部180に電極連結部160の通し穴を通して電極連結部160を本体部120の流入側に嵌め入れ、電極取付穴121の上側開口部に露出した水側電極部140の先端のねじ部に電極連結部160をねじ込み固定することで、電極取付穴121に水側電極部140を取付固定すると共に、水側電極部140に液体導管部180を連結固定する。その後、液体導管部180を本体カバー部200の通し穴に通して本体カバー部200を本体部120にねじ込むことにより取付固定することで、
図19に示す帯電散布ヘッドの主要部(本体部120、水側電極部140、電極連結部160、液体導管部180及び本体カバー部200)を組み立てている。
【0012】
しかしながら、このような従来の帯電散布ヘッドにおける本体部120の電極取付穴121に電極連結部160により液体導管部180と共に水側電極部140を取付固定する組立作業にあっては、電極取付穴121に水側電極部140を挿入した場合に本体部120の下側に僅かに飛び出している水側電極部140の下端部を、ラジオペンチ等の工具で回らないように保持した状態で、水側電極部140の上側に配置した液体導管部180に通した電極連結部160をねじ込む作業が必要となり、更に、電極連結部160は円筒形状であることから、電極連結部160の上側に僅かに飛び出した部分を別のラジオペンチ等の工具で挟んで回す作業が必要となり、煩雑な組立作業で手間と時間が掛かる問題がある。
【0013】
また、本体部120の電極取付穴121に、電極連結部160を用いて液体導管部180と共に水側電極部140を取付固定した後に、液体導管部180に本体カバー部200を通して本体カバー部200を本体部120に取付固定する場合にも、本体カバー部200は円形状であることから、プライヤー等の工具で挟んで回すことが必要なため煩雑な組立作業となり、また、注意して作業を行わないと本体カバー部200を傷付けたり破損させたりするおそれがある。
【0014】
本発明は、帯電散布ヘッドの主要部の組立作業を簡単且つ容易に行える帯電散布ヘッドの組立方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(帯電散布ヘッドの組立方法1)
本発明は、帯電液体粒子を散布対象領域へ散布する帯電散布ヘッドの組立方法であって、
帯電散布ヘッドは、少なくとも
本体部と、
所定の電圧を印加して散布する液体粒子を帯電させる場合に一方の電極となる水側電極部と、
外部から散布するための液体を流入する液体導管部と、
所定の電圧を印加するための電源と水側電極部を接続する電極連結部と、
を備え、
本体部に貫通して形成された空間の電極取付穴に流出側から水側電極部を挿入して、本体部の電極取付穴に対して水側電極部の抜け及び回動を防止する構造により本体部に水側電極部を保持させる第1工程と、
電極取付穴から流入側に露出した水側電極部の端部に合わせて液体導管部を配置する第2工程と、
液体導管部に流入側から電極連結部の嵌合部が形成された開口を通して、電極連結部の嵌合部を水側電極部の端部の嵌合受部に嵌合させることで、電極取付穴に水側電極部を取付固定すると共に水側電極部に液体導管部を連結固定する第3工程と、
を含むことを特徴とする。
【0016】
(抜け及び回動を防止する構造)
本体部の電極取付穴に対して水側電極部の抜け及び回動を防止する構造は、
水側電極部の流出側と流入側との間の所定位置に形成された六角ボルト面と、
六角ボルト面を嵌合させる電極取付穴の流出側に形成された六角開口部と、
で構成される。
【0017】
(帯電散布ヘッドの組立方法2)
本発明は、帯電液体粒子を散布対象領域へ散布する帯電散布ヘッドの組立方法であって、
帯電散布ヘッドは、少なくとも
本体部と、
所定の電圧を印加して散布する液体粒子を帯電させる場合に一方の電極となる水側電極部と、
外部から散布するための液体を流入する液体導管部と、
所定の電圧を印加するための電源と水側電極部を接続する電極連結部と、
を備え、
本体部は、貫通して形成された空間に、流入側に円筒開口部を有すると共に流出側に六角開口部を有する電極取付穴が形成され、
水側電極部は、貫通して内部流路が形成され、流入側の端部に嵌合受部が形成され、流出側と流入側との間の所定位置に電極取付穴の六角開口部に嵌合する六角ボルト面が形成され、
液体導管部は、組立後に水側電極部の内部流路の軸と同軸上に配置される内部流路が貫通して形成され、
電極連結部は、水側電極部の嵌合受部に嵌合する嵌合部を流出側に有する通し穴が貫通して形成され、外周を電極取付穴の円筒開口部に収納可能な六角ナット面とし、
本体部の電極取付穴に流出側から水側電極部を挿入して水側電極部の六角ボルト面を電極取付穴の六角開口部に嵌合させて、電極取付穴に対する水側電極部の抜け及び回動を防止して本体部に水側電極部を保持させる第1工程と、
電極取付穴の円筒開口部に露出した水側電極部の端部に、水側電極部の内部流路の軸と液体導管部の内部流路の軸が同軸となるように液体導管部を配置する第2工程と、
液体導管部に流入側から電極連結部の通し穴を通し、電極連結部の六角ナット面に対して所定の工具を使用することにより、電極連結部の嵌合部を水側電極部の嵌合受部に嵌合させることで、電極取付穴に水側電極部を取付固定すると共に水側電極部に液体導管部を連結固定する第3工程と、
を含むことを特徴とする。
【0018】
(電極連結部の六角ナット面の高さ)
水側電極部の挿入方向となる電極連結部の六角ナット面の高さを、電極取付穴の円筒開口部の前記挿入方向の深さを超え、円筒開口部から露出した六角ナット面に対して所定の工具を使用可能とする所定の高さとする。
【0019】
(本体カバー部の組立)
更に、
本体部に貫通して形成された空間の電極取付穴よりも流入側に、嵌合受部を有する端子室が形成され、
帯電散布ヘッドは、端子室の流入側の開口を閉鎖する本体カバー部を備え、
本体カバー部は、貫通して通し穴が形成され、端子室の嵌合受部に嵌合する嵌合部が流出側に形成され、外周を六角ナット面とした箇所を有した蓋部が流入側に形成され、
液体導管部に流入側から本体カバー部の通し穴を通し、本体カバー部の六角ナット面に対して所定の工具を使用することにより、端子室の嵌合受部に本体カバー部の嵌合部を嵌合させて端子室の流入側の開口を閉鎖する第4工程を含む。
【0020】
(スパナ)
所定の工具としてスパナを使用する。
【0021】
(本体部、液体導管部、水側電極部、電極連結部及び本体カバー部の材質)
本体部、液体導管部及び本体カバー部は軟質の絶縁体であり、水側電極部及び電極連結部は導電体である。
【発明の効果】
【0022】
(帯電散布ヘッドの組立方法1の効果)
帯電散布ヘッドの組立方法1にあっては、本体部に貫通して形成された空間の電極取付穴に流出側から水側電極部を挿入して、本体部の電極取付穴に対して水側電極部の抜け及び回動を防止する構造により本体部に水側電極部を保持させる第1工程と、電極取付穴から流入側に露出した水側電極部の端部に合わせて液体導管部を配置する第2工程と、液体導管部に流入側から電極連結部の嵌合部が形成された開口を通して、電極連結部の嵌合部を水側電極部の端部の嵌合受部に嵌合させることで、電極取付穴に水側電極部を取付固定すると共に水側電極部に液体導管部を連結固定する第3工程と、を含むようにしたため、本体部の電極取付穴に挿入された水側電極部は、本体部の電極取付穴に対して水側電極部の抜け及び回動を防止する構造として、例えば電極取付穴の六角開口部と水側電極部の六角ボルト面とで構成され、六角開口部に六角ボルト面が嵌合することで、本体部の電極取付穴に対して水側電極部の抜け及び回動が防止され、従来の組立作業のように水側電極部が抜けないように且つ回動しないように工具で水側電極部の流入側を保持する必要がなくなり、従来の組立作業よりも簡単且つ容易に組立作業することを可能とする。
【0023】
(帯電散布ヘッドの組立方法2の効果)
また、帯電散布ヘッドの組立方法2にあっては、本体部の電極取付穴に流出側から水側電極部を挿入して水側電極部の六角ボルト面を電極取付穴の六角開口部に嵌合させて、電極取付穴に対する水側電極部の抜け及び回動を防止して本体部に水側電極部を保持させる第1工程と、電極取付穴の円筒開口部に露出した水側電極部の端部に、水側電極部の内部流路の軸と液体導管部の内部流路の軸が同軸となるように液体導管部を配置する第2工程と、液体導管部に流入側から電極連結部の通し穴を通し、電極連結部の六角ナット面に対して所定の工具を使用することにより、電極連結部の嵌合部を水側電極部の嵌合受部に嵌合させることで、電極取付穴に水側電極部を取付固定すると共に水側電極部に液体導管部を連結固定する第3工程と、を含むようにしたため、帯電散布ヘッドの組立方法1の場合と同様に、水側電極部が抜けないように且つ回動しないように工具で水側電極部の流入側を保持する必要がなくなり、更に、電極連結部を取付作業が困難な従来の円筒形状ではなく、電極連結部の外周を六角ナット面としたことで、六角ナット面に対して所定の工具、例えばスパナを使用することができ、従来の組立作業よりも簡単且つ容易に組立作業することを可能とする。
【0024】
(電極連結部の六角ナット面の高さによる効果)
また、水側電極部の挿入方向となる電極連結部の六角ナット面の高さを、電極取付穴の円筒開口部の前記挿入方向の深さを超え、円筒開口部から露出した六角ナット面に対して所定の工具を使用可能とする所定の高さとしたため、電極連結部の嵌合部を水側電極部の嵌合受部に嵌合するために六角ナット面に対して所定の工具を使用する際に、六角ナット面の上側が常に電極取付穴の円筒開口部から工具を使用するのに十分に露出した状態にあり、従来の水側電極部が僅かにしか飛び出していない構造に比べて確実に組立作業を行うことを可能とする。
【0025】
(本体カバー部の組立の効果)
更に、液体導管部に流入側から本体カバー部の通し穴を通し、本体カバー部の六角ナット面に対して所定の工具を使用することにより、端子室の嵌合受部に本体カバー部の嵌合部を嵌合して端子室の流入側の開口を閉鎖する第4工程を含むようにした場合でも、本体カバー部に外周を六角ナット面とした箇所を有した蓋部が形成されていることから、六角ナット面に対して所定の工具を使用することができ、簡単且つ容易に本体カバー部の組立を可能とする。
【0026】
(スパナの効果)
また、所定の工具としてスパナを使用するようにしたため、電極連結部の六角ナット面又は本体カバー部の六角ナット面のサイズに対応したスパナを用意して回すという簡単且つ容易な作業で組立作業することを可能とする。
【0027】
(本体部、液体導管部、水側電極部、電極連結部及び本体カバー部の材質の効果)
本体部、液体導管部及び本体カバー部は軟質の絶縁体であり、水側電極部及び電極連結部は導電体であることから、水側電極部及び電極連結部が硬質の金属等の導電体であっても、軟質の絶縁体である液体導管部及び本体カバー部の僅かな変形による反力により、ワッシャ等を必要とすることなく、より確実な取付固定を可能とする。また、本体部と本体カバー部といった軟質の絶縁体同士であっても、僅かな変形による摩擦抵抗の増加により、より確実な取付固定を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】帯電散布ヘッドの正面を示した説明図である。
【
図2】帯電ヘッドの平面及び底面を示した説明図である。
【
図3】帯電散布ヘッドを散布側から見て示した斜視図である。
【
図4】帯電散布ヘッドの内部構造を断面で示した説明図である。
【
図5】帯電ヘッドを組立分解状態で示した説明図である。
【
図8】水側電極部を取り出して示した説明図である。
【
図9】液体導管部を取り出して示した説明図である。
【
図10】電極連結部を取り出して示した説明図である。
【
図11】本体カバー部を取り出して示した説明図である。
【
図12】本体部に対する水側電極部の組立を示した説明図である。
【
図13】
図12の組立後の液体導管部の組立を示した説明図である。
【
図14】
図13の組立後の電極連結部の組立を示した説明図である。
【
図15】
図14の組立後の本体カバー部の組立を示した説明図である。
【
図16】本体部、水側電極部、液体導管部、電極連結部及び本体カバー部の組立が完了した主要部を示した説明図である。
【
図17】従来の帯電散布ヘッドの内部構造を示した断面図である。
【
図18】従来の帯電散布ヘッドの主要部を組立分解状態で示した説明図である。
【
図19】従来の帯電散布ヘッドの主要部を取り出して示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、本発明に係る帯電散布ヘッドの組立方法の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態により、この発明が限定されるものではない。
【0030】
[実施形態の基本的な概念]
まず、実施形態の基本的概念について説明する。実施形態は、概略的に帯電液体粒子を散布対象領域へ散布する帯電散布ヘッドの組立方法に関するものである。
【0031】
ここで、「帯電散布ヘッド」とは、帯電液体粒子を散布対象領域へ散布するものであり、本発明に関する帯電散布ヘッドの組立方法に関する構成として、少なくとも本体部と、所定の電圧を印加して散布する液体粒子を帯電させる場合に一方の電極となる水側電極部と、外部から散布するための液体が流入する液体導管部と、所定の電圧を印加するための電源と水側電極部を接続する電極連結部と、を備える。
【0032】
また、「帯電液体粒子」とは、帯電散布ヘッドから散布される液体粒子を帯電させたものであり、例えば電源としての高圧電源装置から帯電散布ヘッドの水側電極部ともう一方の電極となる誘導電極部との間に所定の高電圧を印加し、水側電極部に対する誘導電極部の電位を調整して誘導電極部に発生した高電界中を通過させる誘導帯電方式で帯電させた液体粒子である。また、散布される液体は、消煙効果、消火効果、粉塵除去効果等を有する任意の液体であり、例えば液体導管部に配管接続して外部の給水ポンプ等で加圧されて供給される水等が含まれる。
【0033】
ここで、帯電散布ヘッドの組立方法1は、
本体部に貫通して形成された空間の電極取付穴に流出側から水側電極部を挿入して、本体部の電極取付穴に対して水側電極部の抜け及び回動を防止する構造により本体部に水側電極部を保持させる第1工程と、
電極取付穴から流入側に露出した水側電極部の端部に合わせて液体導管部を配置する第2工程と、
液体導管部に流入側から電極連結部の嵌合部が形成された開口を通して、電極連結部の嵌合部を水側電極部の端部の嵌合受部に嵌合させることで、電極取付穴に水側電極部を取付固定すると共に水側電極部に液体導管部を連結固定する第3工程と、
を含むことを特徴とする。
【0034】
ここで「流入側」とは、組み立てられた帯電散布ヘッドにおいて、外部から液体が帯電散布ヘッドに流入する側のことであり、「流出側」とは、組み立てられた帯電散布ヘッドにおいて、帯電散布ヘッドから帯電液体粒子が流出する側のことである。
【0035】
また、「本体部の電極取付穴に対して水側電極部の抜け及び回動を防止する構造」は、従来の組立作業における工具で水側電極部の流入側を保持する作業を不要にできる構造であれば任意の構造で良く、例えば水側電極部の流出側と流入側との間の所定位置に形成された六角ボルト面と、六角ボルト面を嵌合させる電極取付穴の流出側に形成された六角開口部と、で構成されるものである。
【0036】
また、水側電極部の「嵌合受部」、電極連結部の「嵌合部」とは、嵌合部と嵌合受部が互いに篏合できるのであればその構造は任意であり、例えば嵌合部を雄ねじ構造とし、篏合受部を雌ねじ構造としたねじ部としたものを含む。そして嵌合部及び篏合受部をねじ部とした場合において、外周面にねじが切られたものを「外ねじ部」とし、内周面にねじが切られたものを「内ねじ部」と呼ぶ。尚、他の「嵌合部」及び「嵌合受部」についても同様である。
【0037】
また、帯電散布ヘッドの組立方法2の帯電散布ヘッドにあっては、「本体部」は、貫通して形成された空間に、流入側に円筒開口部を有すると共に流出側に六角開口部を有する電極取付穴が形成されたものである。また、「水側電極部」は、貫通して内部流路が形成され、流入側の端部に嵌合受部が形成され、流出側と流入側との間の所定位置に電極取付穴の六角開口部に嵌合する六角ボルト面が形成されたものである。また、「液体導管部」は、組立後に水側電極部の内部流路の軸と同軸上に配置される内部流路が貫通して形成されたものである。また、「電極連結部」は、水側電極部の嵌合受部に嵌合する嵌合部を流出側に有する通し穴が貫通して形成され、外周を電極取付穴の円筒開口部に収納可能な六角ナット面としたものである。
【0038】
また、「円筒開口部」とは、内周が円筒面の開口部であり、例えば電極取付穴に対して拡径して形成されたものである。また、「六角開口部」とは、内周が六角面の開口部であり、例えば電極取付穴に対して拡径して形成されたものである。
【0039】
また、帯電散布ヘッドの組立方法2は、
本体部の電極取付穴に流出側から水側電極部を挿入して、水側電極部の六角ボルト面を電極取付穴の六角開口部に嵌合させて、電極取付穴に対する水側電極部の抜け及び回動を防止して本体部に水側電極部を保持させる第1工程と、
電極取付穴の円筒開口部に露出した水側電極部の端部に、水側電極部の内部流路の軸と液体導管部の内部流路の軸が同軸となるように液体導管部を配置する第2工程と、
液体導管部に流入側から電極連結部の通し穴を通し、電極連結部の六角ナット面に対して所定の工具として、例えばスパナを使用することにより、電極連結部の嵌合部を水側電極部の嵌合受部に嵌合させることで、電極取付穴に水側電極部を取り付け固定すると共に水側電極部に液体導管部を連結固定する第3工程と、
を含むことを特徴とする。
【0040】
また、水側電極部の挿入方向となる電極連結部の六角ナット面の高さを、電極取付穴の円筒開口部の前記挿入方向の深さを超え、円筒開口部から露出した六角ナット面に対して所定の工具を使用可能とする所定の高さとする。
【0041】
また、「帯電散布ヘッド」の組立方法は、本体部、水側電極部、液体導管部及び電極連結部の組立に加えて、更に、本体カバー部の組立を含み、これは前述した第1乃至第3工程に続く第4工程となる。
【0042】
ここで、第4工程の組立にあたり、本体部に貫通して形成された空間の電極取付穴よりも流入側に、嵌合受部を有する端子室が形成され、本体カバー部は、貫通して通し穴が形成され、端子室の嵌合受部に嵌合する嵌合部が流出側に形成され、外周を六角ナット面とした箇所を有した蓋部が流入側に形成されたものである。
【0043】
そして、第4工程は、液体導管部に流入側から本体カバー部の通し穴を通し、本体カバー部の六角ナット面に対して所定の工具、例えばスパナを使用することにより、端子室の嵌合受部に本体カバー部の嵌合部を嵌合させて端子室の流入側の開口を閉鎖するものである。
【0044】
また、「本体部」、「液体導管部」及び「本体カバー部」は、絶縁材質で作られた絶縁体であり、また、「水側電極部」及び「電極連結部」は、導電材質で作られた導電体であり、絶縁体である「本体部」、「液体導管部」及び「本体カバー部」は、軟質の絶縁体であっても良い。
【0045】
また、本発明の帯電散布ヘッドの組立方法において、帯電散布ヘッドが備える「本体部」、「水側電極部」、「液体導管部」、「電極連結部」及び「本体カバー部」は、帯電散布ヘッドの主要部として扱う。
【0046】
以下、実施形態を説明する。以下に示す実施形態では、「帯電散布ヘッド」が「本体部、水側電極部、液体導管部、電極連結部、本体カバー部、ノズル部、誘導電極部及びアーム部で構成されるもの」であり、「本体部の電極取付穴に対して水側電極部の抜け及び回動を防止する構造」が「水側電極部の六角ボルト面と電極取付穴の六角開口部で構成された構造」であり、「嵌合部及び篏合受部」が「ねじ部」であり、「散布する帯電液体粒子」が「帯電水粒子」である場合について説明する。
【0047】
[実施形態の具体的内容]
実施形態の具体的内容について、以下のように分けて説明する。
a.帯電散布ヘッドの構造
b.帯電散布ヘッドの主要部を構成する各構成部
b1.本体部
b2.水側電極部
b3.液体導管部
b4.電極連結部
b5.本体カバー部
c.帯電散布ヘッドの主要部の組立方法
c1.本体部に対する水側電極部の組立
c2.液体導管部の組立
c3.電極連結部の組立
c4.本体カバー部の組立
d.本発明の変形例
【0048】
[a.帯電散布ヘッドの構造」
まず、帯電散布ヘッドの構造について説明する。当該説明にあっては、帯電散布ヘッドの正面(前面)を示した
図1、帯電ヘッドの平面(上面)及び底面(下面)を示した
図2、帯電散布ヘッドを流出側から見て示した斜視図である
図3及び帯電散布ヘッドの内部構造を断面で示した
図4を参照する。尚、
図2(A)は平面を示し、
図2(B)は底面を示す。また、
図4は
図2(A)の切断線a-aの断面を示す。
【0049】
図1乃至
図4に示すように、実施形態の帯電散布ヘッド10は、本体部12、水側電極部14、電極連結部16、液体導管部18、本体カバー部20、ノズル部22、誘導電極部24、アーム部26で構成される。
【0050】
本体部12、液体導管部18、本体カバー部20、ノズル部22及びアーム部26は絶縁材質の材料により製造された絶縁体であり、絶縁材質の材料として、例えばポリ塩化ビニル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ウレタン樹脂、ポリテトラフロオロエチレン樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂、セラミックス(アルミナセラミックス)、ガラス琺瑯等を用いている。
【0051】
水側電極部14及び電極連結部16は導電材質の材料により製造された導電体であり、導電材質の材料として、金属が用いられ、金属以外に導電性を有する樹脂、繊維束、ゴム等を用いても良く、これらの材料を組み合わせた複合体を用いても良い。
【0052】
図4の断面に示すように、本体部12の内部には流水方向となるヘッド軸35の方向(上下方向)に電極取付穴1210が貫通して形成され、電極取付穴1210に流出側(下側)から水側電極部14が挿入され、電極取付穴1210の流入側(上側)に形成された端子室1240に液体導管部18が配置され、電極取付穴1210から端子室1240に露出した水側電極部14の上端部には、液体導管部18を通して挿入された電極連結部16が螺合され、電極取付穴1210に水側電極部14を取付固定すると共に水側電極部14の流入側に液体導管部18の流出側を連結固定している。
【0053】
電極連結部16には複数のねじ穴1640が形成され、本体部12の端子室1240に対し横方向(上下方向に対して直交する方向であり、
図4では右方向)に形成された電極コネクタ取付穴1270に取り付けられる防水コネクタを介して挿入されたアースケーブルの端子が、何れかのねじ穴1640にねじにより固定され接続される。
【0054】
液体導管部18は、端子室1240の流入側の開口に設けられた本体カバー部20を介して外部に露出し、外部の給水ポンプ等で加圧された水が供給される。液体導管部18に供給される水の圧力は、例えば0.1~1.0MPaの範囲で調整される。
【0055】
本体部12のヘッド軸35方向に沿って取り付けられた水側電極部14の流出側(下端側)にはノズル部22が取り付けられる。ノズル部22は、
図3に示すように、ノズル孔2210が形成され、所定の平均粒子径として、例えば平均粒子径が10~300μmの水粒子を放出する。
【0056】
ノズル部22の流出側の開放空間には、例えば
図3に示すように3本のアーム部26を用いて誘導電極部24が配置される。誘導電極部24は、例えばリング形状であり、
図4の断面に示すように、導電性のある電極芯材2410を絶縁被覆2420にて被覆して形成され、支持部2440がリング部の所定位置から横方向(上下方向に対して直交する方向であり、
図1では左方向)に取り出された後に上向きに延在するように形成され、支持部2440の先端からリング内の電極芯材2410に接続して引き出されたケーブル接続部2450が露出し、ケーブル接続部2450には電圧印加ケーブルが接続される。
【0057】
誘導電極部24の電極芯材2410は導電材質の材料により製造された導電体であり、導電材質の材料として、金属が用いられ、金属以外に導電性を有する樹脂、繊維束、ゴム等を用いても良く、これらの材料を組み合わせた複合体を用いても良い。
【0058】
また、誘導電極部24における絶縁被覆2420の絶縁材質として、例えばポリ塩化ビニル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ウレタン樹脂、ポリテトラフロオロエチレン樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂、セラミックス(アルミナセラミックス)、ガラス琺瑯等を用いている。
【0059】
誘導電極部24のリング部は、
図4の断面に示すように、アーム部26、固定部28及び固定プレート部30によりノズル部22の流出側の開放空間の所定位置に保持される。アーム部26の上端外側の支点部2610が本体部12の溝部1280の外側コーナー部に当接しており、アーム部26の上端内側の押圧部2620は溝部1280から浮いた状態となっている。
【0060】
固定部28を回して溝部1280側(上側)にねじ込むと、固定プレート部30が上側に押圧され、アーム部26の押圧部2620が溝部1280に向かって押圧される。このためアーム部26は、支点部2610を中心に回転し、保持部2630が内側に向かうように傾倒する。そして、3本設けられたアーム部26の傾倒により、誘導電極部24のリング部がアーム部26の保持部2630の3点で押され、誘導電極部24はリング中心軸がヘッド軸35にセンタリングされた状態に保持される。
【0061】
アースケーブルの端子が電極連結部16の何れかのねじ穴1640に接続され、電圧印加ケーブルが誘導電極部24のケーブル接続部2450に接続されることで、水粒子を帯電させることが可能な電圧範囲中の所定調整範囲として、例えば水側電極部14と誘導電極部24の間に+0.5kV~+20kV又は-0.5Kv~-20kVの範囲の所定電圧を直流電圧、交流電圧、パルス電圧等として印加し、誘導電極部24のリング部の周囲に所定の外部電界を形成して、ノズル部22から放出され誘導電極部24のリング部を通過した水粒子を帯電させて散布させる。
【0062】
例えば、水側電極部14と誘導電極部24の間に直流電圧を印加した場合には、水側電極部14を基準電位(アース電位、0V)とした場合の誘導電極部24の極性が正(プラス)極性であれば負(マイナス)に帯電した水粒子が生成され、水側電極部14を基準電位(アース電位、0V)とした場合の誘導電極部24の極性が負(マイナス)極性であれば正(プラス)に帯電した水粒子が生成される。また、水側電極部14と誘導電極部24の間に印加する電圧を、+0.5kV~+20kV又は-0.5Kv~-20kVの範囲にすると、火花放電の発生が防止され、安全を確保しながら帯電した水粒子が生成される。
【0063】
粉塵を空気中から除去するために、例えば建物の解体現場等で帯電散布ヘッド10を使用する場合には、帯電散布ヘッド10から散布した帯電水粒子に、空気中に浮遊した粉塵を電気的に吸着させて捕捉して粉塵を落下させて空気中から除去することが可能になる。また、帯電散布ヘッド10を消火設備に設けた場合には、帯電散布ヘッド10から散布した帯電水粒子に、空気中に浮遊している煙粒子を電気的に吸着させて捕捉して煙粒子を落下させることで消煙効果が得られると共に、消火対象物に帯電水粒子が電気的に吸着することで消火性能を高めることが可能になる。
【0064】
[b.帯電散布ヘッドの主要部を構成する各構成部]
本実施形態は、帯電散布ヘッドの組立方法を説明するためのものであるが、特に、帯電散布ヘッドの主要部の組立方法について提供するものである。そこで、実施形態の主要部を構成する各構成部について説明する。尚、実施形態の組立方法の対象となる帯電散布ヘッド10の主要部を構成する各構成部は、
図5の帯電散布ヘッド10の組立分解図に示すように、本体部12、水側電極部14、電極連結部16、液体導管部18及び本体カバー部20である。
【0065】
(b1.本体部)
まず、帯電散布ヘッドの本体部について説明する。当該説明にあっては、本体部を取り出して示した
図6及び
図7を参照する。尚、
図6(A)は本体部の平面(上面)を示し、
図6(B)は本体部の正面(前面)を示し、
図6(C)は本体部の底面(下面)を示し、
図6(D)は
図6(A)の切断線b-bの断面を示す。また、
図7(A)は本体部を流出側から見た斜視図を示し、
図7(B)は本体部を流入側から見た斜視図を示す。
【0066】
図6及び
図7に示すように、本体部12は絶縁材質として、例えばポリ塩化ビニル樹脂を用いて射出成型で製造され、本体部12の流入側(上側)には端子室1240が形成され、端子室1240の下側にはヘッド軸方向(上下方向)に貫通して水側電極部14を取付固定するための電極取付穴1210が形成されている。電極取付穴1210の形状は任意であるが、少なくとも流入側となる上端側に円筒開口部1230が形成され、流出側となる下端側に六角開口部1220が形成されている。また、六角開口部1220の下端面にはシール1222が配置され、六角開口部1220の下端面の外周にはアーム部26を溝部1280に保持するために使用されるアーム固定用ねじ部1290が形成されている。
【0067】
六角開口部1220は内周面を6角面とした所定の深さを持つ開口部である。円筒開口部1230は内周面を円筒面とした所定の深さ(H1)を持つ開口部である。端子室1240は円筒開口部1230に対し拡径された内周面を円筒面とした所定の深さを持つ開口部であり、開口の内側に内ねじ部1250が形成されている。
【0068】
このように電極取付穴1210に形成された六角開口部1220及び円筒開口部1230が本実施形態の組立方法を実現するために必要な構造となる。
【0069】
また、本体部12には、アースケーブルの接続に使用される電極コネクタ取付穴1270が端子室1240の横方向(上下方向に対して直交する方向、
図6では右方向)に形成され、本体部12の流出側となる下端面に誘導電極部24の保持に使用されるアーム部26を保持するための溝部1280が形成される。更に、本体部12の外周面の前後及び左側の3箇所に分けて固定面部1260が形成され、固定面部1260には4つのねじ穴1262が設けられている。
【0070】
(b2.水側電極部)
続いて、帯電散布ヘッドの水側電極部について説明する。当該説明にあっては、水側電極部を取り出して示した
図8を参照する。尚、
図8(A)は平面(上面)を示し、
図8(B)は正面(前面)を示し、
図8(C)は底面(下面)を示し、
図8(D)は
図8(B)の切断線c-cの断面を示す。
【0071】
図8に示すように、水側電極部14は導電材質として、例えば導電性の金属により製造され、その内部に、ヘッド軸方向(上下方向)に内部流路1410が貫通して形成され、流入側となる上端側の外周に外ねじ部1430が形成され、外周の中間となる所定位置に六角ボルト面1420が形成されている。六角ボルト面1420は、水側電極部14を
図6及び
図7に示した本体部12の電極取付穴1210に流出側(下側)から挿入した場合に、本体部12の電極取付穴1210に形成された六角開口部1220に嵌合して、電極取付穴1210に対して水側電極部14が抜けること及び回動することを防止するための構造を実現するものである。
【0072】
また、水側電極部14の外ねじ部1430は、水側電極部14を
図6及び
図7に示した本体部12の電極取付穴1210に流出側(下側)から挿入した場合に、本体部12の円筒開口部1230に露出し、後述する電極連結部16のねじ込みを受けるものである。
【0073】
このように水側電極部14に形成された六角ボルト面1420と外ねじ部1430が本実施形態の組立方法を実現するために必要な構造となる。また、水側電極部14の下端側にはノズル部22の取付固定に使用される外ねじ部1440と内ねじ部1450が形成されている。
【0074】
(b3.液体導管部)
続いて、帯電散布ヘッドの液体導管部について説明する。当該説明にあっては、液体導管部を取り出して示した
図9を参照する。尚、
図9(A)は正面(前面)を示し、
図9(B)は底面(下面)を示し、
図9(C)は
図9(A)の切断線d-dの断面を示す。
【0075】
図9に示すように、液体導管部18は、絶縁材質として、例えばポリ塩化ビニル樹脂を用いて射出成型により製造され、その内部に、ヘッド軸方向(上下方向)に内部流路1810が貫通して形成され、流入側となる上端側から流出側となる下端側に向けて、まず上端に外ねじ部1850が形成され、続いて段部1820により拡径され、続いて外周に形成されたシール溝にシール1840が配置され、下端に鍔部1830と鍔部1830の下側にシール溝が形成され、シール溝にシール1840が配置される。
【0076】
鍔部1830とその下側に位置するシール1840は、
図8に示した水側電極部14の内部流路1430の流入開口(上端開口)に対する液体導管部18の下端側を密閉配置するために使用される。段部1820とその下側に位置するシール1840は、後述する本体カバー部20を液体導管部18に通して本体部12の端子室1240に取付固定して端子室1240の流入側の開口を閉鎖する場合の位置決めと密閉するために使用される。
【0077】
(b4.電極連結部)
続いて、帯電散布ヘッドの電極連結部について説明する。当該説明にあっては、電極連結部を取り出して示した
図10を参照する。尚、
図10(A)は平面(上面)を示し、
図10(B)は正面(前面)を示し、
図10(C)は
図10(A)の切断線e-eの断面を示す。
【0078】
図10に示すように、電極連結部16は導電材質として、例えば導電性の金属により製造され、その外周を六角ナット面1610とし、内部に内ねじ部1630が切られた通し穴1620が貫通して形成される。電極連結部16は、
図6及び
図7の本体部12の電極取付穴1210に形成された円筒開口部1230に収納されるサイズとなるように六角ナット面1610を形成し、ヘッド軸方向(上下方向)の所定の高さ(H2)は、円筒開口部1230のヘッド軸方向(上下方向)の深さ(H1)を超える所定の高さとしており、例えばH2=1.5*H1となる高さとしている。
【0079】
電極連結部16は、
図6及び
図7に示した本体部12の電極取付穴1210に水側電極部14を流出側から挿入した場合に電極取付穴1210の流入側に形成された円筒開口部1230に露出した水側電極部14の上端部の外ねじ部1430に内ねじ部1630を螺合することで、電極取付穴1210に対して液体導管部18と共に水側電極部14を取付固定するものであり、円筒開口部1230の深さH1を超える高さH2を持つことで、六角ナット面1610の上側を常に円筒開口部1230から十分に露出した状態とし、スパナ等の工具を常に使用可能な状態とする。
【0080】
このように電極連結部16に形成された筒開口部1230の深さよりも高い高さH2を持つ六角ナット面1610が本実施形態の組立方法を実現するために必要な構造となる。また、電極連結部16には、防水コネクタを介して引き込まれたアースケーブルの端子を接続するためのねじ穴1640が複数箇所、例えば6箇所に形成されている。このため、引き込んだアースケーブルのケーブル長が一定でなくとも、ケーブル長に合った任意のねじ穴1640への端子接続を可能としている。
【0081】
(b5.本体カバー部)
最後に、帯電散布ヘッドの本体カバー部について説明する。当該説明にあっては、本体カバー部を取り出して示した
図11を参照する。尚、
図11(A)は平面(上面)を示し、
図11(B)は正面(前面)を示し、
図11(C)は
図11(B)の切断線f-fの断面を示す。
【0082】
図11に示すように、本体カバー部20は、絶縁材質として、例えばポリ塩化ビニル樹脂の射出成型により製造され、通し穴2020が貫通して形成され、外周を六角ナット面2012として形成された突出部が設けられた蓋部2010を流入側に形成し、流出側の側面に
図6及び
図7に示した本体部12の端子室1240の開口内側に設けた内ねじ部1250に螺合する外ねじ部2030を形成し、蓋部2010と外ねじ部2030の間に形成されたシール溝にシール2040を配置している。
【0083】
本体カバー部20は、
図9に示した液体導管部18を通し穴2020に通して、
図6及び
図7に示した本体部12の端子室1240の開口内側の内ねじ部1250に外ねじ部2030を螺合させて端子室1240の流入側の開口を閉鎖するものであり、蓋部2010の上部に形成された六角ナット面2012が本実施形態の組立方法を実現するために必要な構造となる。
【0084】
[c.帯電散布ヘッドの主要部の組立方法]
次に、本実施形態の帯電散布ヘッドにおける主要部の組立方法について説明する。当該説明にあっては、本体部に対する水側電極部の組立を示した
図12、
図12の組立後の液体導管部の組立を示した
図13、
図13の組立後の電極連結部の組立を示した
図14、
図14の組立後の本体カバー部の組立を示した
図15、及び本体部、水側電極部、液体導管部、電極連結部及び本体カバー部の組立が完了した主要部を示した
図16を参照する。
【0085】
(c1.本体部に対する水側電極部の組立)
まず、第1工程となる本体部に対する水側電極部の組立について説明する。
図12に示すように、本体部12に対する水側電極部14の組立は、本体部12の電極取付穴1210に、水側電極部14を流出側(下側)から挿入する。これにより、水側電極部14の六角ボルト面1420が電極取付穴1210の下端側に形成された六角開口部1220に嵌り込み、
図13に示すように、本体部12の電極取付穴1210に対して水側電極部14の抜けとヘッド軸回りの回動が防止される。電極取付穴1210に水側電極部14の挿入後、本体部12の電極取付穴1210の上端側に形成された円筒開口部1230に水側電極部14の上端部の外ねじ部1430が露出した状態となる。
【0086】
(c2.液体導管部の組立)
続いて、第2工程となる液体導管部の組立について説明する。
図13に示すように、液体導管部18の組立は、本体部12の円筒開口部1230に露出している水側電極部14の上端側の内部流路1410に、液体導管部18の鍔部1830の下側にシール1840を配置した下端側を挿入し、
図14に示すように、液体導管部18を水側電極部14の流入側(上側)に水側電極部14の内部流路1410と液体導管部18の内部流路1810が同軸となるように配置する。
【0087】
(c3.電極連結部の組立)
続いて、第3工程となる電極連結部の組立について説明する。
図14に示すように、電極連結部16の組立は、本体部12の電極取付穴1210に取り付けられた水側電極部14と同軸となるように配置された液体導管部18に対し、上側から液体導管部18を電極連結部16の通し穴1620に通して電極連結部16を嵌め入れ、水側電極部14の上端部の外ねじ部1430に対し電極連結部16の内ねじ部1630を螺合する。
【0088】
この際、水側電極部14は、本体部12の六角開口部1220に対し六角ボルト面1420を嵌合させてヘッド軸回りの回動が防止されているため、従来の組立方法のように水側電極部14の下端側を工具で抑えることを必要とせず、電極連結部16の六角ナット面1610に対しスパナ等の工具を嵌めて電極連結部16を回すことで、本体部12に対して液体導管部18と共に水側電極部14を簡単且つ容易に取付固定することが可能となる。
【0089】
また、電極連結部16の軸方向(上下方向)の高さH2は、円筒開口部1230の軸方向(上下方向)の深さH1よりも高いため、電極連結部16の六角ナット面1610の上側は円筒開口部1230から上側に十分に露出し、六角ナット面1610に対しスパナ等の工具を嵌め入れて回すことが容易であり、
図15に示すように、水側電極部14に電極連結部16を螺合させて本体部12の電極取付穴1210に水側電極部14を取付固定すると共に、水側電極部14の上側に液体導管部16を連結固定する作業を簡単且つ容易に行うことを可能とする。
【0090】
(c4.本体カバー部の組立)
最後に、第4工程となる本体カバー部の組立について説明する。
図15に示すように、本体カバー部20の組立は、電極連結部16により取付固定された液体導管部18を通し穴2020に通して上側から本体カバー部20を嵌め入れ、本体カバー部20の外ねじ部2030を本体部12の端子室1240の内ねじ部1250に螺合させる。
【0091】
この際、本体カバー部20の蓋部2010の外周に六角ナット面2012が形成されていることから、六角ナット面2012に対しスパナ等の工具を嵌め入れて回すことができ、また本体カバー部20をラジオペンチ等の工具で挟んで回す必要がないことから本体カバー部20や外部に露出している液体導管部18を傷付けることなく、簡単且つ容易に本体カバー部20の外ねじ部2030を端子室1240の内ねじ部1250に螺合して端子室1240の流入側の開口を閉鎖し、
図16に示すように、帯電散布ヘッドの主要部の組立作業が完了する。
【0092】
このように組み立てられた帯電散布ヘッド10の主要部に対して、
図4の断面に示したように、ノズル部22が水側電極部14の流出側となる下端側に取付固定され、また、本体部12の流出側となる下端側のアーム固定用ねじ部1290に固定プレート部30と共に固定部28を螺合してアーム部26を傾倒支持し、アーム部26により誘導電極部24のリング部をノズル部22の流出側の開放空間に保持する組立作業が行われ、帯電散布ヘッド10の組立が完了する。
【0093】
[d.本発明の変形例]
本発明による帯電散布ヘッドの組立方法の変形例について説明する。本発明による帯電散布ヘッドの組立方法は、上記の実施形態以外に、以下の変形を含むものである。
【0094】
(水側電極部)
上記の実施形態の水側電極部14にあっては、その内部の上下方向に形成した内部流路1410の中間に絞り形状を持つ段付き穴形状としているが、穴形状は任意であり、例えばストレートな穴形状としても良い。
【0095】
(六角形の開口部、ナット面及びボルト面)
上記の実施形態にあっては、所定の工具としてスパナを使用して組み立てるために、対応する開口部、ボルト面及びナット面を六角形としているが、これに限定されず、使用する所定の工具に対応した形状として、例えば四角形、五角形、七角形などの多角形等の形状としても良い。
【0096】
(その他)
また本発明は上記の実施形態に限定されず、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0097】
10:帯電散布ヘッド
12:本体部
1210:電極取付穴
1220:六角開口部
1230:円筒開口部
1240:端子室
1250:内ねじ部
1260:固定面部
1270:電極コネクタ取付穴
1280:溝部
1290:アーム固定用ねじ部
14:水側電極部
1410:内部流路
1420:六角ボルト面
1430,1440:外ねじ部
1450:内ねじ部
16:電極連結部
1610:六角ナット面
1620:通し穴
1630:内ねじ部
1640:ねじ穴
18:液体導管部
1810:内部流路
1820:段部
1830:鍔部
1840:シール
1850:外ねじ部
20:本体カバー部
2010:蓋部
2012:六角ナット面
2020:通し穴
2030:外ねじ部
2040:シール
22:ノズル部
2210:ノズル孔
24:誘導電極部
2410:電極芯材
2420:絶縁被覆
2440:支持部
2450:ケーブル接続部
26:アーム部
2610:支点部
2620:押圧部
2630:保持部
28:固定部
30:固定プレート部