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特開2023-17397リサイクル可能な綿不織シート及び綿不織シートの製造方法
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  • 特開-リサイクル可能な綿不織シート及び綿不織シートの製造方法 図1
  • 特開-リサイクル可能な綿不織シート及び綿不織シートの製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023017397
(43)【公開日】2023-02-07
(54)【発明の名称】リサイクル可能な綿不織シート及び綿不織シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/425 20120101AFI20230131BHJP
   D04H 1/488 20120101ALI20230131BHJP
   D04H 1/587 20120101ALI20230131BHJP
【FI】
D04H1/425
D04H1/488
D04H1/587
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021121647
(22)【出願日】2021-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】521327840
【氏名又は名称】田中 明雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084375
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 康夫
(74)【代理人】
【識別番号】100125221
【弁理士】
【氏名又は名称】水田 愼一
(74)【代理人】
【識別番号】100142077
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 真之
(72)【発明者】
【氏名】田中 明雄
【テーマコード(参考)】
4L047
【Fターム(参考)】
4L047AA08
4L047BA03
4L047BA12
4L047BC01
4L047CC10
4L047CC15
(57)【要約】
【課題】全ての素材が自然に還るものを使用して廃棄処理の問題のない、リサイクル可能な綿不織シート及び綿不織シートの製造方法を提供する。
【解決手段】リサイクル可能な綿不織シート1は、綿素材2と、綿素材を固定するための米糊又は麦糊樹脂3と、米糊又は麦糊樹脂に混ぜ込んだ紫外線遮断用の木炭粉末4と、から成る。綿素材にスフ(木綿)わたを混紡してもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
綿素材と、前記綿素材を固定するための米糊又は麦糊樹脂と、前記米糊又は麦糊樹脂に混ぜ込んだ紫外線遮断用の木炭粉末と、から成ることを特徴とするリサイクル可能な綿不織シート。
【請求項2】
前記綿素材は、糸生産で発生する落下綿と再利用される綿とを混ぜ込んだものを原料とし、前記米糊又は麦糊樹脂は、古米又は発育不良米を原料としたことを特徴とする請求項1に記載のリサイクル可能な綿不織シート。
【請求項3】
紫外線遮断用の木炭粉末を混ぜ込んだ米糊又は麦糊樹脂を綿素材に吹き付け、その後、前記米糊又は麦糊樹脂を乾燥させ、次いで、前記米糊又は麦糊樹脂がアルファー澱粉に変わるように加熱処理することを特徴とするリサイクル可能な綿不織シートの製造方法。
【請求項4】
綿素材の原料を混錬する混錬工程と、
前記混錬工程を経た綿素材の原料に空気を送り撹拌させる撹拌工程と、
前記撹拌工程を経た原料をシート状に形成するローラー工程と、
前記ローラー工程によりシート状に形成された綿を積層して搬送するコンベア工程と、
前記コンベア工程の後、積層された綿の繊維を絡めるニードルパンチ工程と、
前記ニードルパンチ工程を経た綿素材に、木炭粉末を混ぜ込んだ米糊又は麦糊樹脂を吹き付けて前記綿素材を固定する噴射工程と、
前記噴射工程の後、前記綿素材を乾燥させる乾燥工程と、
前記乾燥工程の後、前記綿素材を熱圧着処理する熱圧着工程と、
前記熱圧着工程の後、前記綿素材を所定寸法にカットするカット工程と、を有することを特徴とする請求項3に記載のリサイクル可能な綿不織シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用の苗床、畦カバー、家庭菜園、ビル屋上緑化等に使用可能な綿不織シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の用途に用いられる不織布は、ポリエステル又はポリプロピレンを原料としたものが多く、また、リサイクルした綿を用いたエコなコットン不織布も知られている。また、用途は上記とは異なるが、電磁波を遮蔽し、静電気が蓄積するのを防止する繊維構造物として、綿に炭素繊維を分散させた構造や、その構造にフェノール樹脂を含侵させたシート材が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-350319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような不織布にあって、ポリエステル等を原料としたものは廃棄の時に処理に問題があり、保水効果も少ない。また、従来のコットン不織布は、綿に樹脂を吹き付け強度確保するための樹脂が化学素材、例えばアクリル樹脂を用いているため、自然に還る素材とならないため、環境破壊をもたらす。また、特許文献1に示される繊維構造物から成るシート材は、含侵樹脂が化学素材であるため、上記の問題がある。
【0005】
本発明は、上記問題を解消するものであり、全ての素材が自然に還るものを使用して廃棄処理の問題のない、リサイクル可能な綿不織シート及び綿不織シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、綿素材と、前記綿素材を固定するための米糊又は麦糊樹脂と、前記米糊又は麦糊樹脂に混ぜ込んだ紫外線遮断用の木炭粉末と、から成るリサイクル可能な綿不織シートである。
また、本発明は、紫外線遮断用の木炭粉末を混ぜ込んだ米糊又は麦糊樹脂を綿素材に吹き付け、その後、前記米糊又は麦糊樹脂を乾燥させ、次いで、前記米糊又は麦糊樹脂がアルファー澱粉に変わるように加熱処理することを特徴とするリサイクル可能な綿不織シートの製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の綿不織シートによれば、特に農業用の苗床、畦カバー等に用いたとき保水効果が良く、木炭粉末による紫外線遮断により雑草生育抑え効果、消臭効果が高く、また、再利用により経費の節約、廃棄経費の節約ができ、土壌に埋めることで土に還るため地球に優しいものとなる。また、本発明の綿不織シートの製造方法によれば、上記特徴を持つシートを製造でき、かつ強固な接着性により高い安定感を持つ素材が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る綿不織シートの斜視図。
図2】本発明の一実施形態に係る綿不織シートの製造方法の工程図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態に係るリサイクル可能な綿不織シート及び綿不織シートの製造方法について図面を参照して説明する。図1は綿不織シートの構成を示す。綿不織シート1は、綿素材2と、綿素材2を固定するための米糊又は麦糊樹脂3と、米糊又は麦糊樹脂3に混ぜ込んだ紫外線遮断用の木炭粉末4と、から成る。綿素材2は、シート状にした綿を複数積層し、木炭粉末4を混ぜ込んだ米糊又は麦糊樹脂3で固定したものである。綿素材2にスフ(木綿)わたを混紡したものであってもよい。綿不織シート1は、完成品はロール状に形成され、用途に応じた寸法にカットされる。同図にはカットしたシートを示し、例えば幅寸法が1800mm、厚みが5~6mmである。平米重量は100~400grとされる。なお、家庭菜園やベランダ菜園等、小規模用途に対応する場合は、幅50cm×奥行15cm×厚み6~7mmに裁断した小シート(不織シート)とする。
【0010】
綿素材2は、紡績(糸生産)で発生する落下綿と、再利用される綿(30%~40%)とを混ぜ込んだものを原料とすることが望ましい。米糊又は麦糊樹脂3は、古米又は多くが廃棄されている発育不良米や動物用飼育肥料とされている米を原料とすることが望ましい。これら米又は麦から作った糊(樹脂)は、熱加工でアルファー澱粉に変わり、強度な接着性が有る。また、廃棄で土壌に埋めた後は、土中に生息している昆虫やバクテリア生育に役立ち、昆虫やバクテレアの排泄物によって土壌が肥える効果もある。
【0011】
木炭粉末4は、練炭、豆炭、発熱機能製品の使用後の炭素材の粉末を用い、これを米糊又は麦糊樹脂3に混ぜて炭の黒い色で紫外線遮断効果があり、雑草不育成、炭素材の吸収(匂い、水分)機能による脱臭効果と保水効果が得られる。
【0012】
綿不織シート1は、苗床への使用後、苗発育補助、紫外線遮断利用、雑草未成育補助に利用される。また、土壌作り、燃化後の灰利用、土に埋めることで3~5年で土に還る。また、寒冷地の保温効果、霜防ぎ、寒暖差克服に有効である。また、綿不織シート1の廃棄は、通常ゴミと同扱い(焼却炉対応)であり、土壌に埋めることで土に還る。
【0013】
綿不織シート1は、シート巾によって異なるが、巾90cmx50mで、3.5kg~4kgと、軽量(1平米60g~80g)である。また、材料が、綿、米、炭であって、アレルギー対象材料でもっともアレルギー発生率の少ない素材であるので、直接肌に触れても問題がなく安心して使用できる。
【0014】
(綿不織シートの製造方法)
綿不織シート1は、紫外線遮断用の木炭粉末4を混ぜ込んだ米糊又は麦糊樹脂3を綿素材2に吹き付け、その後、米糊又は麦糊樹脂3を乾燥させ、次いで、米糊又は麦糊樹脂3がアルファー澱粉に変わるように加熱処理することにより製造される。図2は、綿不織シート1の製造に用いられる設備を用いた製造方法(工程)を示す。各工程について設備と共に説明する。
【0015】
先ず、綿素材の原料を混錬する混錬工程(S1)が混打綿機により実施される。この工程では、綿原料(リサイクル+バージン綿)を調合する。平米当たりの重量に合わせて2種類の原料を混綿する。全体的に平均混綿することで品質が確定される。綿原料調合では、さらにスフ(木綿)を混合してもよい。スフ(木綿)も綿と同様に土に還る。綿の綿(わた)繊維原料長が短いと不織布の縦・横の引っ張り強度が弱く、作業時に破損する虞があり、強度を増すために、スフ(木綿)を混合する。家庭菜園やベランダプランタンに用いる場合は、強度上の問題はないが、広い農地やハウス栽培棟等に用いる場合に、強度上の製品品質を安定するために、スフ(木綿)混合は有効である。
【0016】
次に、綿素材の原料に空気を送り撹拌させる撹拌工程(S2)がミキサーにより実施される。この工程では、混打綿機から空気搬送された原料に空気を送り攪拌させ、品質維持のため均等に混ぜ合わせる。異物や繊維長の極端に短い原料は除外する。
【0017】
次に、原料をシート状に形成するローラー工程(S3)がカード機により実施される。この工程では、針が無数に植えられたローラーで原料の縦方向、横方向を整えて一定の厚み、重量感を統一する。
【0018】
次に、シート状に形成された綿を積層して搬送するコンベア工程(S4)がラチスコンベアーにより実施される。ラチスコンベアーは、シート状に成った綿を積層して次の工程に送る為の機械であり、主体材料に竹や木材が使われており、綿に優しく、無駄な力を加えないようにしている。
【0019】
次に、積層された綿の繊維を絡めるニードルパンチ工程(S5)がニードルパンチにより実施される。ローラー工程(S3)のローラーの針は混ぜる工程が主体の機械であるのに対し、ニードルパンチは針を植えたボードが上下に動き、繊維材料を絡める機能を持つ。
【0020】
次に、木炭粉末を混ぜ込んだ米糊又は麦糊樹脂を吹き付けて綿素材を固定する噴射工程(S6)が樹脂スプレー噴射機により実施される。この工程では、米糊又は麦糊樹脂を3段階で吹き付け、樹脂濃度により強度重量等を調整し、素材の安定感を固定する。ここに、家庭菜園やベランダプランタン菜園用として、米糊又は麦糊樹脂のスプレー噴射で素材を仕上げ、その後、用途に応じてカットシートにカットされた各々の不織布に、木炭粉で種を蒔く位置や苗植え間隔を記す手捺染加工をした、小分けしたシート(不織布)としてもよい。
【0021】
次に、綿素材を乾燥させる乾燥工程(S7)が乾燥機により実施される。樹脂スプレー後の乾燥は、米糊又は麦糊樹脂に速乾性成分を入れていないので、送風機能の調節により温度管理、乾燥時間を調整する。
【0022】
次に、綿素材を熱圧着処理する熱圧着工程(S8)がカレンダーロールにより実施される。カレンダーロールは、熱圧着機乾燥機であり、樹脂乾燥の後、安定させるために熱処理する。これにより、素材の肉感安定や風合い安定、均等品質等を確保する。
【0023】
次に、綿素材を所定寸法にカットするカット工程(S9)がスリッターにより実施される。この工程では、最大180cmに仕上げたシートを使用目的に合わせた必要巾にカットする。その後、検品、検反、自動ロール巻き取り、包装を行う。
【0024】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限られず、種々の変形が可能である。例えば、上記工程のいずれかは統廃合も可能である。
【符号の説明】
【0025】
1 綿不織シート
2 綿素材
3 米糊又は麦糊樹脂
4 紫外線遮断用の木炭粉末
図1
図2