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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173979
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】水門の自動開閉制御方法
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/26 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
E02B7/26 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086560
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000168193
【氏名又は名称】株式会社ミゾタ
(74)【代理人】
【識別番号】100093687
【弁理士】
【氏名又は名称】富崎 元成
(74)【代理人】
【識別番号】100168468
【弁理士】
【氏名又は名称】富崎 曜
(72)【発明者】
【氏名】穴井 正一
(72)【発明者】
【氏名】山田 隆紹
【テーマコード(参考)】
2D019
【Fターム(参考)】
2D019BA02
2D019BA04
(57)【要約】
【課題】水門を仮閉めした際の内外水位差の変化に伴う水門の開閉制御回数を所定の回数に制限することにより、開閉用モータが過熱・焼損することを防止するようにした水門の自動開閉制御方法。
【解決手段】外水位が仮閉め開始水位H2まで上昇(ステップS2)すると、水門開閉回数カウンター22を10回に設定(ステップS3)する。同時に水門開閉タイマー(T1)23を単位時間である1時間に設定(ステップS8)する。その後、水門の自動開閉制御により水門1の開閉(ステップS5、S6)が行われる度に、水門開閉回数カウンター22の回数を1づつ減じる(ステップS7)。水門開閉タイマー(T1)23で設定された1時間に達する前(ステップS9)に、水門1の開閉回数が水門開閉回数カウンター22で設定された所定の回数に達すると、開閉用モータ6の過熱・焼損許容回数を超えたと判断して、開閉用モータ6を停止して水門1の開閉動作を中断する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水門を仮閉めして増幅させた内外水位差が大水位差d1よりも大きい場合に開閉用モータで前記水門の開動作を行って内水排除を行い、前記水門を仮閉めして増幅させた内外水位差が小水位差d2よりも小さい場合に前記開閉用モータで前記水門の閉動作を行って逆流防止を行う水門の自動開閉制御方法において、
外水位が仮閉め開始水位H2より高くなると、水門開閉回数カウンターを所定の回数に設定するとともに、水門開閉タイマーT1を所定の時間に設定し、
前記水門開閉タイマーT1で設定された所定の時間に達する前に、前記水門の開閉回数が前記水門開閉回数カウンターで設定された所定の回数に達すると、前記外水位に応じて前記水門の全開または全閉の開閉動作を行い、前記開閉用モータを停止して前記水門の開閉動作を中断することにより前記開閉用モータの過熱・焼損を防止する
ことを特徴とする水門の自動開閉制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の水門の自動開閉制御方法において、
前記外水位が仮閉め準備水位H1よりも高い場合には前記開閉用モータで前記水門を全閉して逆流防止を行った後で前記開閉用モータを所定時間停止し、
前記外水位が仮閉め準備水位H1よりも低い場合には前記開閉用モータで前記水門を全開して内水排除を行った後で前記開閉用モータを所定時間停止することにより前記開閉用モータの過熱・焼損を防止する
ことを特徴とする水門の自動開閉制御方法。
【請求項3】
請求項2に記載の水門の自動開閉制御方法において、
前記開閉用モータを所定時間停止した後に、前記水門開閉タイマーT1と前記水門開閉回数カウンターをリセットすることにより前記開閉用モータの過熱・焼損を防止する
ことを特徴とする水門の自動開閉制御方法。
【請求項4】
請求項3に記載の水門の自動開閉制御方法において、
前記水門開閉タイマーT1で設定された所定の時間に達したときに、前記水門開閉回数カウンターがゼロになっていない場合には、前記水門開閉タイマーT1と前記水門開閉回数カウンターをリセットすることにより前記開閉用モータの過熱・焼損を防止する
ことを特徴とする水門の自動開閉制御方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の水門の自動開閉制御方法において、
前記開閉用モータの駆動用電源装置がインバータであり、
前記水門を仮閉めして増幅させた内外水位差の増減量に応じて、前記開閉用モータの回転速度を制御して前記水門の開閉速度を変化させることにより前記開閉用モータの過熱・焼損を防止する
ことを特徴とする水門の自動開閉制御方法。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の水門の自動開閉制御方法において、
前記開閉用モータの駆動用電源装置がインバータであり、
前記開閉用モータの始動電流を抑制することにより前記開閉用モータの過熱・焼損を防止する
ことを特徴とする水門の自動開閉制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水門の自動開閉制御方法に関する。更に詳しくは、水門を仮閉めして増幅させた内外水位差に基づいて水門の開閉度を制御し、内水排除及び逆流防止を行う水門の自動開閉制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の水門の自動開閉制御方法は、水門を仮閉めして増幅させた内外水位差に基づいて水門の開閉度を制御し、内水排除及び逆流防止を行っている。特許文献2の水門の制御方法は、閉鎖信号にレベルを示す情報を含めて、重要性に応じて門扉を閉鎖する手段を変更するものである。特許文献3は水路の除塵用の破砕機であって、過負荷検知回数が所定回数を超えたときに、スクリーン部の運転を停止する運転方法である。特許文献4は水力発電装置の水車にからむごみを除去するために、水車にブレーキをかける回数を制御するものであって、カウンタ値が上限値に達すると、一回あたりのごみ除去運転を終了する運転方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3404484号公報
【特許文献2】特許第6334614号公報
【特許文献3】特開2020-111945号公報
【特許文献4】特許第6885778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の水門の自動開閉制御方法は、開閉制御回数(開閉用モータの始動回数)に制限回数の設定がないため、内外水位差の変化に伴う水門の開閉回数の頻度が多くなると、開閉用モータが過熱・焼損する恐れがあった。開閉用モータが過熱・焼損により停止すると、水門の自動開閉制御運転が中断するため、内水排除及び逆流防止運転が行われず、内水氾濫や逆流が発生する恐れがあった。特許文献2の水門の制御方法は、水門の開閉制御において、閉鎖信号の送信回数に応じて、水門の閉鎖手段をモータ駆動、空気圧駆動、重力を利用した駆動に順次変更するものであって、開閉用モータの過熱・焼損を防止するためのものではない。
【0005】
特許文献3の水路の除塵用の破砕機は、スクリーン部における回転レーキ部の駆動部の過負荷状態を検出し、過負荷の検知回数が所定回数を超えた際、スクリーン部の運転を停止することで、スクリーン装置を保護するものであって、駆動部の過熱・焼損を防止するためのものではない。
特許文献4の水力発電装置は、ブレーキ作動回数の上限値(制限回数の設定)は、水力発電装置の水車にからむゴミを除去するためのブレーキ(制動装置)寿命を延長するためのものであって、駆動用モータの過熱・焼損を防止するためのものではない。
【0006】
本発明は、以上のような背景により以下の目的を達成するものである。
本発明の目的は、水門を仮閉めした際の内外水位差の変化に伴う水門の開閉制御回数を所定の回数に制限することにより、開閉用モータが過熱・焼損することを防止するようにした水門の自動開閉制御方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、水門の開閉制御回数が所定の回数に達すると、開閉用モータを所定時間停止することにより開閉用モータを冷却して、開閉用モータが過熱・焼損することを防止するようにした水門の自動開閉制御方法を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、水門の開閉速度を変化させて、水門の開閉制御回数を低減させることで、開閉用モータが過熱・焼損することを防止するようにした水門の自動開閉制御方法を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、開閉用モータの始動電流を抑制することで、開閉用モータが過熱・焼損することを防止するようにした水門の自動開閉制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために、次の手段を採る。
即ち、本発明1の水門の自動開閉制御方法は、水門を仮閉めして増幅させた内外水位差が大水位差d1よりも大きい場合に開閉用モータで前記水門の開動作を行って内水排除を行い、前記水門を仮閉めして増幅させた内外水位差が小水位差d2よりも小さい場合に前記開閉用モータで前記水門の閉動作を行って逆流防止を行う水門の自動開閉制御方法において、外水位が仮閉め開始水位H2より高くなると、水門開閉回数カウンターを所定の回数に設定するとともに、水門開閉タイマーT1を所定の時間に設定し、前記水門開閉タイマーT1で設定された所定の時間に達する前に、前記水門の開閉回数が前記水門開閉回数カウンターで設定された所定の回数に達すると、前記外水位に応じて前記水門の全開または全閉の開閉動作を行い、前記開閉用モータを停止して前記水門の開閉動作を中断することにより前記開閉用モータの過熱・焼損を防止することを特徴とする。
【0008】
本発明2の水門の自動開閉制御方法は、本発明1において、前記外水位が仮閉め準備水位H1よりも高い場合には前記開閉用モータで前記水門を全閉して逆流防止を行った後で前記開閉用モータを所定時間停止し、前記外水位が仮閉め準備水位H1よりも低い場合には前記開閉用モータで前記水門を全開して内水排除を行った後で前記開閉用モータを所定時間停止することにより前記開閉用モータの過熱・焼損を防止することを特徴とする。
【0009】
本発明3の水門の自動開閉制御方法は、本発明2において、前記開閉用モータを所定時間停止した後に、前記水門開閉タイマーT1と前記水門開閉回数カウンターをリセットすることにより前記開閉用モータの過熱・焼損を防止することを特徴とする。
本発明4の水門の自動開閉制御方法は、本発明3において、前記水門開閉タイマーT1で設定された所定の時間に達したときに、前記水門開閉回数カウンターがゼロになっていない場合には、前記水門開閉タイマーT1と前記水門開閉回数カウンターをリセットすることにより前記開閉用モータの過熱・焼損を防止することを特徴とする。
【0010】
本発明5の水門の自動開閉制御方法は、本発明1から4のいずれか一項において、前記開閉用モータの駆動用電源装置がインバータであり、前記水門を仮閉めして増幅させた内外水位差の増減量に応じて、前記開閉用モータの回転速度を制御して前記水門の開閉速度を変化させることにより前記開閉用モータの過熱・焼損を防止することを特徴とする。
本発明6の水門の自動開閉制御方法は、本発明1から4のいずれか一項において、前記開閉用モータの駆動用電源装置がインバータであり、前記開閉用モータの始動電流を抑制することにより前記開閉用モータの過熱・焼損を防止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の水門の自動開閉制御方法は、水門を仮閉めした際の内外水位差の変化に伴う水門の開閉制御回数を所定の回数に制限するため、開閉用モータが過熱・焼損することを防止することが可能となる。
又、本発明の水門の自動開閉制御方法は、開閉用モータの駆動用電源装置にインバータを使用し、開閉用モータの回転速度を制御して水門の開閉速度を変化させて、開閉回数を低減させることにより、開閉用モータが過熱・焼損することを防止することが可能となる。
更に、本発明の水門の自動開閉制御方法は、開閉用モータの駆動用電源装置にインバータを使用することにより、開閉用モータの始動電流を抑制することにより、開閉用モータが過熱・焼損することを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の水門の自動開閉制御方法の原理を示す断面図である。
図2図2は、本発明の水門の自動開閉制御方法の制御装置を示すブロック図である。
図3図3は、本発明の水門の自動開閉制御方法のインバータを用いた開閉用モータの駆動用電源装置を示す実施の形態2を示す回路図である。
図4図4は、本発明の水門の開閉回数制限動作を示すフローチャートである。
図5図5は、本発明の水門の開閉度制御動作を示すフローチャートである。
図6図6は、本発明の水門の開閉速度制御動作を示すフローチャートである。
図7図7は、一般的に使用される電磁接触器を用いた開閉用モータの駆動用電源装置を示す実施の形態1の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施の形態1]
本発明を実施するための形態として、実施の形態1を以下に記す。図1は本発明の水門の自動開閉制御方法の原理を示す断面図、図2は本発明の水門の自動開閉制御方法の制御装置を示すブロック図、図7は本発明の水門の自動開閉制御方法の開閉用モータの駆動用電源装置を示す回路図である。図1に示すように、水門1により、水流は図1の右側の内水位側と図1の左側の外水位側に分断される。水流は、本流河川の水流、支流河川の水流、本流河川と支流河川の合流域の水流、海、湖と河川の合流域の水流等様々な水流がある。
【0014】
内水位側と外水位側に、各々内水位側水位計21及び外水位側水位計20が設置されて水位を計測している。このような公知の水位計の具体的な機能、構造の説明は省略するが、フロート式等の単純な水位計を用いることができる。水門1は、ラック・ピニオン機構等の公知の機構により昇降駆動される。昇降駆動機構は、水門1に固定されたラック3とピニオン4から構成されている。ピニオン4は、伝動軸5、減速機構(図示せず)を介して開閉用モータ6に連結されている。開閉用モータ6は、基準角度からの回転角度を検出する回転角度計7を備えている。回転角度計7は、公知のパルスエンコーダ等から構成されている。回転角度計7は、水門1の開閉度に対応する回転角度を検出する。負荷計8が、開閉用モータ6の出力軸の回転トルク(捩りモーメント)を検出するために設けられている。負荷計8は、種々知られているが本発明の実施の形態では、減速機内部の回転トルクの異常で検知する。
【0015】
プログラマブルコントローラ11(PC)により、水門1の開閉度の制御が行われる。プログラマブルコントローラ11と開閉用モータ6との間には、駆動用電源装置12が介設されている。本発明の実施の形態では、駆動用電源装置12は図7に示すように一般的に使用される電磁接触器を採用している。図2は、回転角度計7、負荷計8からの入力信号等に基づいて開閉用モータ6を制御するためのプログラマブルコントローラ11の構成を示している。プログラマブルコントローラ11は、中央演算処理装置(CPU)13、読出専用メモリ(ROM)19、随時読出書込メモリ(RAM)14等から構成されている。プログラマブルコントローラ11の出力端子は、駆動用電源装置12を介して開閉用モータ6に接続されている。開閉用モータ6に連結されている回転角度計7の出力信号は、随時読出書込メモリ(RAM)4に入力される。プログラマブルコントローラ11から出力された警報信号が警報器24に出力される。警報器24は、この警報信号を受けて公衆回線又は専用回線25を介して管理者の電話機26にこの警報を音声等の手段で伝達する。
【0016】
回転角度計7が出力する回転角度信号、負荷計8が出力する負荷信号、内水位側水位計21及び外水位側水位計20が出力する内水側水位信号及び外水側水位信号、後記する水門開閉回数カウンター22、水門開閉タイマー(T1)23、開閉用モータ冷却タイマー(T2)27、開閉用モータ冷却タイマー(T3)28、内外水位差検知用タイマー(T4)29が出力する信号は、随時読出書込メモリ(RAM)14を介して中央演算処理装置(CPU)13に入力される。変更プログラム、自動制御運転のスタートボタンの始動信号は、制御用操作パネル(又はキーボード)17から入力する。
【0017】
図4は、本発明の水門の開閉回数制限動作例を示すフローチャートである。制御用操作パネル17のスタートボタンを押す(ステップS1)と、外水位が仮閉め開始水位H2まで上昇(ステップS2)すると、水門開閉回数カウンター22を本例では10回に設定(ステップS3)する。開閉用モータ6が過熱・焼損しない単位時間当たりの始動回数は、製造メーカや仕様によっても若干異なるが、一般的に、10回/時間程度である。同時に水門開閉タイマー(T1)23を単位時間である1時間に設定する(ステップS8)。その後、水門の自動開閉制御(自動開閉制御の詳細は図5に示す。)により、水門1の開閉(ステップS5、S6)が行われる度に、水門開閉回数カウンター22の回数を一つずつ減じる(ステップS7)。水門開閉タイマー(T1)23で設定された1時間(所定の時間)に達する前(ステップS9)に、水門1の開閉回数が水門開閉回数カウンター22で設定された所定の回数に達する(ステップS4で水門開閉回数カウンター22が0になる)と、開閉用モータ6の過熱・焼損許容回数を超えたと判断して、外水位に応じて全開又は全閉の開閉動作を行い、開閉用モータ6を停止して水門1の開閉動作を中断する。
【0018】
外水位が仮閉め準備水位H1よりも高い(ステップS11)場合には、開閉用モータ6で水門1を全閉(ステップS12~S14)して逆流防止を行った後で、開閉用モータ冷却タイマー(T2)27に設定された所定時間(例えば30分)だけ開閉用モータ6を停止させ、開閉用モータ6を冷却する(ステップS15)。また、外水位が仮閉め準備水位H1よりも低い(ステップS11)場合には、開閉用モータ6で水門1を全開(ステップS16~S18)して内水排除を行った後で、開閉用モータ冷却タイマー(T3)28に設定された所定時間(例えば30分)だけ開閉用モータ6を停止し、開閉用モータ6を冷却する(ステップS19)。従って、開閉用モータ6の過熱・焼損を防止することができる。その後、水門開閉タイマー(T1)23と水門開閉回数カウンター22をリセット(ステップS20)する。
【0019】
図4に示すフローチャートの(ステップS5)、(ステップS6)では、水門1を仮閉めして増幅させた内外水位差に基づいて水門1の開閉度を制御し、内水排除及び逆流防止を行っているが、この開閉度の制御動作の詳細を図5のフローチャートに示す。図5のフローチャートに示すように、制御用操作パネル17のスタートボタンを押す(ステップS31)と、外水位が通常水位L1よりも低い場合には、水門1は全開位置にあり、外水位が仮閉め準備水位H1より低い場合には、水門1のゲートはそのままであり降下しない。外水位が仮閉め準備水位H1よりも増水すると(ステップS32)、プログラマブルコントローラ11が開閉用モータ6に水門1のゲートの閉動作を指示し、水門1の閉動作が開始(ステップS33)するが、仮閉め準備位置までしか降下しない。水門1のゲートは仮閉め準備位置で停止し続ける。開閉制御動作を準備して水門1のゲートが待機する位置を仮閉め準備位置という。
【0020】
この仮閉め準備位置は、随時読出書込メモリ14に記憶されている。水門1の昇降位置が仮閉め準備位置に達したら(ステップS34)、水門1は停止して開閉制御動作まで待機する(ステップS35)。外水位が仮閉め開始水位H2より高いかどうかが判断される(ステップS36)。仮閉め開始水位H2は、図1に示すように、仮閉め準備水位H1より高く設定されている。
【0021】
外水位が通常水位L1(最低位の設定水位)よりも低いならば(ステップS37)、水門1は上昇を開始し、全開状態になるまで上昇し(ステップS38)、ステップS32に戻る。外水位が仮閉め開始水位H2より高くなれば、水門1は降下を開始する(ステップS39)。内水位が外水位よりも高く、かつ、水位差が大水位差d1(例えば、=10cm)よりも大きい場合には(ステップS40)、水門1の閉動作を停止して(ステップS41)、水門1を上昇させる(ステップS42)。
【0022】
水門1の上昇により水位差が小位差d2(例えば、=3cm)よりも小さくなれば(ステップS43)、内水位=外水位であるとみなして、水門1を停止する(ステップS44)。内水位が外水位よりも高く、かつ、水位差が大水位差d1よりも大きい場合(ステップS45)にはステップS42に戻り、水位差を3cm強に維持する。水位差が小水位差d2よりも小さくなり水門1が停止して(ステップS44)、内水位が外水位よりも高く水位差が大水位差d1よりも小さい場合には、内外水位差検知用タイマー(T4)29が動作して5分間を設定し(ステップS46、S47)、ステップS39に戻り、水門1の再閉動作を行うこともできる。
【0023】
このように、水位差を3cmより大きく10cmよりも小さい範囲になるように自動調整する。ステップS40で、内水位が外水位よりも高く、かつ、水位差が大水位差d1(=10cm)よりも小さい場合には、水門1が全閉位置であれば(ステップS48)、そのまま全閉を続行する(全閉停止、ステップS49)。全閉により、ステップS40のYES条件と同じになれば(ステップS50)、ステップS42に戻り、水位差が3cmと10cmとの間になるような制御を行う。又、全閉により、ステップS40のNO条件と同じになれば(ステップS50)、外水位が通常水位L1よりも低いならば(ステップS51)、水門1を上昇させて(ステップS52)全開させる(ステップS53)。
【0024】
このような全開状態になったら、ステップS32に戻り、外水位が仮閉め準備水位H1より高くなるまで、全開状態が継続する。即ち、図5に示す水門の開閉度制御動作では、水門1の仮閉めによりオリフィスを形成し、落差分の水圧による流量を確保し、オリフィスによる流れの抵抗分だけ落差を強制的に形成するので、正確な実勢水位を増幅して検出することができる。以上のように水門の自動開閉制御方法に水門開閉回数カウンターを用いる制御を追加することにより、開閉用モータ6の過熱・焼損を防止することができる。
【0025】
[実施の形態2]
次に、実施の形態2を示すものとして、開閉用モータ6の駆動用電源装置12として、図7の電磁接触器に代えて図3に示すように開閉用モータ6の駆動用電源装置12にインバータを採用している。図6は本発明の実施の形態2の水門の開閉速度制御動作を示すフローチャートである。図6に示すように、制御用操作パネル17のスタートボタンを押す(ステップS61)と、外水位が仮閉め開始水位H2に到達すると、図5で説明した内外水位差に基づいて水門1の開閉度制御が開始されるタイミングにおいて、インバータによる多段速度制御を開始する。すなわち、内外水位差の増減量をプログラマブルコントローラ11にて演算し、増減量が小さい場合にはインバータの「低速」(90%=54Hz、27cm/分)を選択する(ステップS64、S65)。増減量が中間の場合はインバータの「中速」(100%=60Hz、30cm/分)を選択する(ステップS66、S67)。増減量が大きい場合はインバータの「高速」(110%=66Hz、33cm/分)を選択する。本例では、プログラマブルコントローラ11による内外水位差の増減量のサンプリング時間を10秒程度としている。内外水位差増減量が1cm/10秒(60cm/10分)以下の場合は「低速」、内外水位差増減量が1cm/10秒(60cm/10分)超過~3cm/10秒(180cm/10分)未満の場合は「中速」、内外水位差増減量が3cm/10秒(180cm/10分)超過の場合は「高速」を選択する。この開閉速度制御を追加することで、内外水位差の増減量に対して適切な開閉用モータ6の速度制御が実施できるため、水門1の多頻度の開閉が減少し、開閉用モータ6の過熱・焼損を防止できる。
【0026】
[他の実施の形態]
他の実施の形態として、上記実施の形態2と同様に開閉用モータ6の駆動用電源装置12としてインバータを採用し、インバータによって始動電流を抑制して、開閉用モータ6の過熱・焼損を防止しても良い。すなわち、従来のように駆動用電源装置12に、図7に示すような電磁接触器(直入れ始動方式)を使用すれば、始動電流が定格電流の500%~700%の大電流が流れることになるが、駆動電源装置12にインバータを用いることで、インバータ駆動では周波数と電圧をゼロからスタートし、徐々に上がりながらモータに供給されるので、始動トルクは定格の150%~200%に抑制されるため、始動電流も150%~200%に抑制される。なお、上記した実施の形態では、始動電流の抑制のために開閉用モータ6の駆動用電源装置12としてインバータを採用しているが、インバータを使用せず、始動時間を長くすることにより、始動電流を抑制する方法でも良い。
【符号の説明】
【0027】
1…水門
11…プログラマブルコントローラ(PC)
12…駆動用電源装置
13…中央演算処理装置(CPU)
14…随時読出書込メモリ(RAM)
17…制御用操作パネル(又はキーボード)
19…読出専用メモリ(ROM)
20…外水位側水位計
21…内水位側水位計
22…水門開閉回数カウンター
23…水門開閉タイマー(T1)
24…警報器
25…公衆回線又は専用回線
26…電話機
27…開閉用モータ冷却タイマー(T2)
28…開閉用モータ冷却タイマー(T3)
29…内外水位差検知用タイマー(T4)
3…ラック
4…ピニオン
5…伝動軸
6…開閉用モータ
7…回転角度計
8…負荷計
L1…通常水位
H1…仮閉め準備水位
H2…仮閉め開始水位
d1…大水位差
d2…小水位差
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7