(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173989
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】薬液注入の出来形管理方法及び装置
(51)【国際特許分類】
E02D 3/12 20060101AFI20231130BHJP
E02D 1/00 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
E02D3/12 101
E02D1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086575
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】591205536
【氏名又は名称】JFEシビル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002963
【氏名又は名称】弁理士法人MTS国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】榊原 淳一
(72)【発明者】
【氏名】山本 敦
(72)【発明者】
【氏名】堤 彩人
(72)【発明者】
【氏名】山下 航洋
【テーマコード(参考)】
2D040
2D043
【Fターム(参考)】
2D040AB01
2D040CA02
2D040CA10
2D043AB06
2D043AB07
2D043BA10
(57)【要約】
【課題】地盤改良における薬液注入に際して、薬液が固結する前の薬液浸透範囲の地盤内の変化を注入直後からリアルタイムで監視できるようにする。
【解決手段】地盤改良における薬液注入に際して、マイクロバブル及びナノバブルを含む薬液を地盤8に注入し、薬液注入直後から、薬液注入部分を含む地盤8中を伝搬する弾性波(例えば音波)の振幅の変化を、例えば地盤8に設けた孔(20、30、31、16)に挿入した発振器22と受信器32を用いる音響トモグラフィの技術を用いて測定して、薬液が固結する前から薬液浸透範囲(改良体A)をリアルタイムで監視する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤改良における薬液注入に際して、
マイクロバブル及びナノバブルを含む薬液を地盤に注入し、
薬液注入直後から、薬液注入部分を含む地盤中を伝搬する弾性波の振幅の変化を測定して、
薬液が固結する前から薬液浸透範囲をリアルタイムで監視することを特徴とする薬液注入の出来形管理方法。
【請求項2】
前記振幅の変化を、地盤に設けた孔に挿入した発振器と受信器を用いる音響トモグラフィの技術を用いて測定することを特徴とする請求項1に記載の薬液注入の出来形管理方法。
【請求項3】
前記発振器又は前記受信器を挿入する孔として、薬液の注入孔を用いることを特徴とする請求項2に記載の薬液注入の出来形管理方法。
【請求項4】
室内試験の結果をキャリブレーションとして用いることで、前記振幅の減衰率の分布から薬液の浸透範囲を把握し、改良率及び地盤強度を推定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の薬液注入の出来形管理方法。
【請求項5】
室内試験の結果から閾値を設け、前記振幅の変化量がこの閾値を超えたことを自動的に検知し、薬液浸透範囲を把握することを特徴とする請求項1に記載の薬液注入の出来形管理方法。
【請求項6】
地盤改良における薬液注入の出来形管理装置であって、
マイクロバブル及びナノバブルを含む薬液を生成する手段と、
該マイクロバブル及びナノバブルを含む薬液を地盤に注入する手段と、
薬液注入直後から、薬液注入部分を含む地盤中を伝搬する弾性波の振幅の変化を測定する手段とを備え、
薬液が固結する前から薬液浸透範囲をリアルタイムで監視することを特徴とする薬液注入の出来形管理装置。
【請求項7】
前記振幅の変化を、地盤に設けた孔に挿入した発振器と受信器を用いる音響トモグラフィの技術を用いて測定することを特徴とする請求項6に記載の薬液注入の出来形管理装置。
【請求項8】
前記発振器又は受信器を挿入する孔として、薬液の注入孔を用いることを特徴とする請求項7に記載の薬液注入の出来形管理装置。
【請求項9】
室内試験の結果をキャリブレーションとして用いることで、前記振幅の減衰率の分布から薬液の浸透範囲を把握し、改良率及び地盤強度を推定することを特徴とする請求項6乃至8のいずれかに記載の薬液注入の出来形管理装置。
【請求項10】
室内試験の結果から閾値を設け、前記振幅の変化量がこの閾値を超えたことを自動的に検知し、薬液浸透範囲を把握することを特徴とする請求項6に記載の薬液注入の出来形管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液注入の出来形管理方法及び装置に係り、特に、地盤改良における薬液注入の際に用いるのに好適な、かつ薬液注入直後から薬液が固結する前の薬液浸透範囲の地盤内の変化をリアルタイムで監視することが可能な、薬液注入の出来形管理方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤改良のための薬液注入工事における確認施工は、配合試験の結果と設計時に計画した注入諸元のとおりに薬液が注入できているかどうかを確認するために実施される。確実な施工を行うためには、薬液の浸透速度(圧力)・方向、シルト等の難浸透部の有無の把握が重要であるが、現状の確認ボーリングでは、ボーリング位置の情報しか把握できないため、ボーリングデータの無い地盤における浸透速度や浸透方向などの詳しいことはわからない。
【0003】
薬液の注入範囲を評価する技術として、出願人は、特許文献1で、薬液の注入範囲では弾性波の振幅減衰率が増加することを利用して、注入範囲を評価する手法を提案している。
【0004】
又、特許文献2や特許文献3には、薬液の注入範囲を監視するために、気泡(特許文献2)やマイクロバブル(特許文献3)を混入させた薬液を用いて、縦波速度Vpや横波速度Vsを測定する手法が記載されている。
【0005】
一方、薬液の注入状態を監視する技術ではないが、特許文献4や特許文献5には、液状化防止のために地盤を不飽和化することを目的として、地盤内に微細気泡(マイクロバブル)を混入したシリカ溶液を注入することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-143432号公報
【特許文献2】特許第6792117号公報(請求項2)
【特許文献3】特許第6961270号公報(段落0155、
図14)
【特許文献4】特許第5190615号公報
【特許文献5】特許第5092103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、減衰率の増加は薬液がある程度固結(3時間以上)してから発現するため、薬液注入後から固結前までの改良中の状態を監視することはできなかった。
【0008】
又、特許文献2や特許文献3に記載の技術では、マイクロバブルの混入による速度低下はわずかであり、精密な測定が可能な模型土槽などでの検知は可能であるが、測定精度に影響を与えるノイズや地盤の不均一が存在する実際の現場での実施は難しく実用的ではなかった。
【0009】
一方、特許文献4や特許文献5に記載の技術は、地盤改良を目的としており、薬液の注入範囲を監視することは考えられていなかった。
【0010】
本発明は、前記従来の問題点を解消するべくなされたもので、薬液が固結する前の薬液浸透範囲の地盤内の変化を注入直後からリアルタイムで監視できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、地盤改良における薬液注入に際して、マイクロバブル及びナノバブルを含む薬液を地盤に注入し、薬液注入直後から、薬液注入部分を含む地盤中を伝搬する弾性波の振幅の変化を測定して、薬液が固結する前から薬液浸透範囲をリアルタイムで監視することにより前記課題を解決するものである。
【0012】
本発明は、又、地盤改良における薬液注入の出来形管理装置であって、マイクロバブル及びナノバブルを含む薬液を生成する手段と、該マイクロバブル及びナノバブルを含む薬液を地盤に注入する手段と、薬液注入直後から、薬液注入部分を含む地盤中を伝搬する弾性波の振幅の変化を測定する手段とを備え、薬液が固結する前から薬液浸透範囲をリアルタイムで監視することを特徴とする薬液注入の出来形管理装置により、同様に前記課題を解決するものである。
【0013】
ここで、前記振幅の変化を、地盤に設けた孔に挿入した発振器と受信器を用いる音響トモグラフィの技術を用いて測定することができる。
【0014】
又、前記発振器又は前記受信器を挿入する孔として、薬液の注入孔を用いることができる。
【0015】
又、室内試験の結果をキャリブレーションとして用いることで、前記振幅の減衰率の分布から薬液の浸透範囲を把握し、改良率及び地盤強度を推定することができる。
【0016】
又、室内試験の結果から閾値を設け、前記振幅の変化量がこの閾値を超えたことを自動的に検知し、薬液浸透範囲を把握することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、薬液が固結する前の薬液浸透範囲の地盤内の変化を注入直後からリアルタイムで監視することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態の全体構成を示す、一部ブロック線図を含む断面図
【
図2】本発明の実施形態における注入開始直後の状態の例を示す断面図
【
図3】同じく想定改良径25%の状態の例を示す断面図
【
図4】同じく想定改良径50%の状態の例を示す断面図
【
図6】本発明の実施形態におけるマイクロバブルとナノバブルを含む薬液を注入した場合の(A)初期値からの速度の変化と(B)初期値からの振幅の変化を比較して示す線図
【
図7】同じくマイクロバブルとナノバブルを混入させる効果を示すための振幅の変化を示す線図
【
図10】本発明の比較例であるマイクロバブルとナノバブルを含まない薬液を注入した場合の(A)初期値からの速度の変化と(B)初期値からの振幅の変化を比較して示す線図
【
図11】本発明の実施例における地中の注入孔、発振器用計測孔及び受信器用計測孔の配置例を示す斜視図
【
図13】同じくリアルタイムで可視化処理する方法の例を示す線図
【
図14】減衰率と一軸圧縮強度の関係の例を示す線図
【
図15】(A)減衰率分布図と(B)一軸圧縮強度分布図の例を示す線図
【
図16】本発明の実施例において(A)浸透速度、(B)浸透方向、(C)難浸透層を検出している状態を示す断面図
【
図17】本発明を利用した出来形管理の実施手順の例を示す流れ図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態及び実施例に記載した内容により限定されるものではない。また、以下に記載した実施形態及び実施例における構成要件には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。更に、以下に記載した実施形態及び実施例で開示した構成要素は適宜組み合わせてもよいし、適宜選択して用いてもよい。
【0020】
本発明の実施形態は、
図1に全体構成を示す如く、地盤改良における薬液注入の出来形管理装置であって、マイクロバブル及びナノバブルを含む薬液を生成する手段である、薬剤供給装置10、バブル水供給装置12及びミキサー14と、前記マイクロバブル及びナノバブルを含む薬液を地盤8に注入する手段である注入孔16と、薬液注入直後から、薬液注入部分を含む地盤8中を伝搬する弾性波の振幅の変化を音響トモグラフィの技術を用いて測定する手段である発振回路18、発振器用計測孔(発振孔とも称する)20に挿入された発振器22、受信器用計測孔(受信孔とも称する)30に挿入された受信器32、受信回路34及びパソコン40とを備え、薬液が固結する前から薬液浸透範囲をリアルタイムで監視するようにされている。
【0021】
前記弾性波は、例えば疑似ランダム信号と振幅変調を組み合わせた多重発振の音波とすることができ、前記発振回路18は例えば発振信号増幅器、前記発振器22は例えば水中スピーカー、前記受信器32は例えば水中マイクロフォン、前記受信回路34は例えば受信信号フィルター、前記パソコン40は例えばデータロガーとすることができる。
【0022】
また、発振回路18、パソコン40、受信回路34間は、通信装置(図示せず)で有線又は無線で通信可能となっている。
【0023】
薬剤供給装置10で供給する薬剤は、例えば溶液型・活性シリカのような特殊シリカ系(恒久グラウト)とすることができるが、薬剤の種類はこれに限定されない。
【0024】
前記マイクロバブルのサイズは、例えば直径1μm~100μm、前記ナノバブルのサイズは、例えば直径0.0001μm~1μmとされるが、マイクロバブルやナノバブルのサイズはこれらに限定されない。
【0025】
薬液注入開始直後の状態を
図2に、想定改良径25%の状態を
図3に、想定改良径50%の状態を
図4に、注入完了時の状態を
図5に示す。図中の細線、太線は音波の波線を示すが、太線は薬液浸透範囲に対応する改良体Aの影響を受ける波線を示す。改良体Aが大きくなれば改良体Aの影響を受ける波線が増えるため、これをモニタリングすれば改良体Aの大きさを把握することができる。
【0026】
マイクロバブルとナノバブルを含む薬液を地盤8中に注入して(A)初期値からの音波の速度の変化と(B)初期値からの音波の振幅の変化を、1~10分間隔で実測した例を
図6に示す。注入は60分かけて行い、計測は注入開始から140分経過まで継続した。
図6中のAは注入完了時点での改良体を表している。速度は、
図6(A)から明らかなように、改良体Aを横切る発振1-受信1の波線B、改良体Aを横切らない発振2-受信2の波線Cのいずれもほとんど変化していない。これに対して、振幅は、
図6(B)から明らかなように、改良体Aを横切らない発振2-受信2の波線Cがほとんど変化しないのに対し、改良体Aを横切る発振1-受信1の波線Bは改良体Aが大きくなると徐々に小さくなっていくことがわかる。
【0027】
したがって、マイクロバブルとナノバブルを含む薬液を注入した際の振幅の変化を測定することにより、改良体Aの固結範囲を検出することができる。
【0028】
マイクロバブル、ナノバブルが音の伝播に与える影響を調べるため水道水を満たした水槽に、直径1μm~100μmの気泡であるマイクロバブルMBと直径0.0001μm~1μmの気泡であるナノバブルNBを含む水を注水し、発振器22と受信器32を用いて振幅を計測した結果を
図7に、同じく速度を計測した結果を
図8に示す。
【0029】
図7から明らかなように、振幅はマイクロバブルMB+ナノバブルNBを含む水の注水により大きく減少(最大変化量40dB(100分の1))した後、マイクロバブルMBが減少することで回復するが、残るナノバブルNBにより約20dB(10分の1)に低下した状態がナノバブルNBが減少し、マイクロバブルMBとナノバブルNBを含まない水道水に置換されるまで続く。これに対して速度は、
図8から明らかなように、マイクロバブルMB+ナノバブルNBを含む水の注水により少し低下(最大変化量4%)するが、マイクロバブルMBが減少することで元の状態まで回復し、ナノバブルNBは速度に大きな影響を与えないことが分かる。
【0030】
薬液にマイクロバブルとナノバブルを混入させる効果を
図9に示す。従来は、薬液の注入開始から薬液の注入がほぼ完了した状態になってからしか検知できないが、本発明によれば、注入開始後の早い段階で不具合を検知可能となり、例えば早期に注入のやり直しを行うことも可能になる。
【0031】
一方、参考例として、マイクロバブルとナノバブルを含まない薬液を地盤8中に注入した場合は、
図10に示す如く、(A)初期値からの速度、(B)初期値からの振幅のいずれもほとんど変化していない。
【0032】
実際の測定時の配置例を
図11に示す。注入孔16を囲むように、発振器22が装入される発振孔20、及び、受信器32が挿入される受信孔30が配置される。
【0033】
発振孔20及び受信孔30の平面配置の例を
図12(A)(B)(C)に示す。
【0034】
図12(A)では、注入孔16の一方側(図では上側)の発振孔20内に挿入した発振器22から発生した波線を、注入孔16の反対側(図では下側)に配置した3つの受信孔30内に配置した受信器32で検出している。
【0035】
図12(B)では、図中上側の3つの発振孔20内に挿入した発振器22から発生した波線を、図中下側に配置した3つの受信孔30内に配置した受信器32で検出している。
【0036】
図12(C)では、
図12(A)に加えて、注入孔16と並べて一方側(図中左側)に配置した発振孔20内の発振器22から発生した波線を、同じく注入孔16と並べて反対側(図中右側)に配置した受信孔30内の受信器32で検出している。
【0037】
なお、
図12は例示であって、例えば発振孔20と受信孔30を入れ替えた配置や他の配置も可能である。
【0038】
更に、薬液注入用に地盤8に例えば2m程度の間隔で多数設けられる注入孔16を利用し、その中に発振器22や受信器32を配置して、音響トモグラフィを行うことも可能である。この場合は発振孔20や受信孔30を別途設ける必要がなく、測定を容易に行うことができる。
【0039】
振幅の変化に基づいてリアルタイム可視化処理を行う方法の例を
図13に示す。
【0040】
ステップ100で発振孔内の発振器22―1~22-Nを順次発振させて、例えば2本の受信孔1内の受信器32-1~32-Nと受信孔2内の受信器33-1~33-Nで各波線経路における振幅を順次読み込み、0分経過時の初期値とする。
【0041】
同様に、ステップ110で、現時点であるT分経過後の各波線経路における振幅を順次読み込む。
【0042】
そして、ステップ120で、ノイズの影響を排除するため初期値との差分を計算し変化量として取得する。
【0043】
次いでステップ130に進み、断面をセルに区切り、振幅の変化量が閾値を超えた波線が所定数を超えたセルを薬液が浸透していると判断して着色すれば、T分経過時の薬液浸透範囲に対応する改良体Aをリアルタイムで表示して可視化することができる。更に、t1、t2、・・・、t5分後の着色セルを異なる色又は濃度で表示すれば、着色セルの変化状況から改良体Aの形成推移をリアルタイムで表示して可視化することができる。
【0044】
更にステップ140に進み、トモグラフィ解析を行って振幅減衰率の分布図を作成することで強度分布を計算することができる。
【0045】
又、
図14に示すような振幅減衰率と一軸圧縮強度の関係を示す式q
uのパラメータa、b(条件により変化)を実験で求めておき、
図15(A)に例示する減衰率分布図を、
図15(B)に示す一軸圧縮強度分布図に変換することによって圧縮強度の分布を知ることができる。
【0046】
このようにして、振幅減衰率の変化から薬液の浸透範囲を把握し、確認施工や室内試験の結果等を基に改良率や地盤強度を推定することができる。
【0047】
図16に測定例のイメージを示す。
図16(A)に示すように、薬液浸透範囲に対応する改良体Aの形状の変化から浸透速度を把握できる。又、
図16(B)に示すように、改良体Aの形状の変化から浸透方向を把握できる。更に、
図16(C)に示すように、改良体Aの形状の変化から難浸透層を把握できる。
【0048】
本発明を利用した出来形管理の実施手順を
図17に示す。
【0049】
ステップ200でボーリング調査を行った後、ステップ210で地盤改良範囲を設計し、ステップ220で注入孔16を掘削する。
【0050】
次いで、ステップ230で本発明によるマイクロバブルとナノバブルを含む薬液を注入孔16から地盤8に注入しながら、ステップ240で振幅減衰トモグラフィの物理探査等により改良体Aの形状を調査して、薬液注入対象地盤の性状に基づく注入及び固化状況を正確に把握する。
【0051】
次いで、ステップ250で前記状況を勘案して薬液注入条件を見直して、確実な改良を行う。なお、特に薬液注入条件の見直しが不要であれば、ステップ260に進む。例えば、改良体が不均質に広がる場合は注入圧により地盤が割裂していることが想定されるので注入速度を下げる。薬液が垂れながら広がる場合は事前の想定より地盤内の透水性が高いことが考えられるのでゲルタイムを短くする。地下水流の影響で薬液が拡散している場合は地下水流の上流側を先行注入して壁を作るといった内容が考えられる。
【0052】
次いで、ステップ260で本発明によるマイクロバブルとナノバブルを含む薬液を注入孔16から地盤8に注入しながら、ステップ270で例えば薬液注入量とボーリング調査、振幅減衰トモグラフィの物理探査等により改良体Aの形状を把握して正確な出来形を把握し、施工後の安心と安全を確保する。
【0053】
本実施形態においては、地盤8中を伝搬させる弾性波として疑似ランダム信号と振幅変調を組み合わせた多重発振の音波を用いているので、雑音の影響を受けにくい正確な測定が可能である。なお、弾性波の種類はこれに限定されず、例えば振幅変調を省略することもできる。
【0054】
又、前記実施形態においては、薬剤供給装置10から供給される薬剤とバブル水供給装置12から供給されるバブル水をミキサー14で混合してマイクロバブルとナノバブルを含む薬液としていたが、マイクロバブルとナノバブルを含む薬液を生成する方法はこれに限定されず、例えば薬剤供給装置10の出側に微細孔が形成されたノズルを配置してマイクロバブルとナノバブルを含む薬液が直接生成されるようにしてもよい。
【0055】
又、前記実施形態においては、発振孔20内の発振器22を順次発振させていたが、
図18に示す他の実施例のように、複数(図では10個)の発振器22-1~22-10から同時に発振させ、複数の受信孔30、31(3本以上でもよい)に設けた複数(図では10個)の受信器32-1~32-10、33-1~33-10で同時に受信することで迅速な測定を行うことも可能である。
【0056】
弾性波の振幅減衰を検出する際に用いる技術も音響トモグラフィに限定されない。測定も連続的でなく断続的であってもよい。
【符号の説明】
【0057】
8…地盤
10…薬剤供給装置
12…バブル水供給装置
14…ミキサー
16…注入孔
18…発振回路
20…発振器用計測孔(発振孔)
22、22-1~22-10…発振器
30、31…受信器用計測孔(受信孔)
32、32-1~32-10、33-1~33-10…受信器
34…受信回路
40…パソコン
A…改良体(薬液浸透範囲)