(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173998
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】乗客コンベアシステム、及び乗客コンベア
(51)【国際特許分類】
B66B 27/00 20060101AFI20231130BHJP
B66B 31/00 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B66B27/00 C
B66B31/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086587
(22)【出願日】2022-05-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-07-18
(71)【出願人】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仲田 悟
【テーマコード(参考)】
3F321
【Fターム(参考)】
3F321AA04
3F321DA05
3F321EA01
3F321EB07
3F321EC06
3F321FA12
3F321GA31
(57)【要約】
【課題】乗客コンベアに生じた非常事態を乗客に注意喚起することができる、乗客コンベアシステム、乗客コンベア用表示装置、及び乗客コンベアを提供する。
【解決手段】本発明の実施形態は、前後方向に走行する踏段30と、踏段30の左右両側に設けられた透明部材からなる欄干36と、欄干36に設けられた一又は複数の透明ディスプレイ74とを有する乗客コンベア10と、乗客コンベア10を撮影するカメラ80と、カメラ80で撮影した画像に基づいて乗客コンベア10の非常事態を検知した場合には、透明ディスプレイ74に注意喚起の表示をする制御装置50とを有する、乗客コンベアシステムとする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に走行する踏段と、前記踏段の左右両側に設けられた透明部材からなる欄干と、前記欄干に設けられた一又は複数の透明ディスプレイとを有する乗客コンベアと、
前記乗客コンベアを撮影するカメラと、
前記カメラで撮影した画像に基づいて前記乗客コンベアの非常事態を検知した場合には、前記透明ディスプレイに注意喚起の表示をする制御装置と
を有する、乗客コンベアシステム。
【請求項2】
前記制御装置が、前記非常事態を検知した位置より進行方向後側の乗客の有無を判断し、乗客がいる場合には、前記乗客の進行方向前側の前記透明ディスプレイに注意喚起の表示をする、請求項1に記載の乗客コンベアシステム。
【請求項3】
前記乗客コンベアが上階と下階とを接続するエスカレータであり、
前記制御装置が、前記非常事態を検知した位置より下階側の乗客の有無を判断し、乗客がいる場合には、前記乗客の進行方向前側の前記透明ディスプレイに注意喚起の表示をする、請求項1に記載の乗客コンベアシステム。
【請求項4】
前記非常事態が、乗客の手荷物落下、又は乗客の転倒である、請求項2又は3に記載の乗客コンベアシステム。
【請求項5】
乗客コンベアの透明部材からなる欄干に設けられた透明ディスプレイと、
前記乗客コンベアの制御装置から非常事態を知らせる信号を受信する受信部とを有し、
前記受信部が前記信号を受信した場合に、前記透明ディスプレイに注意喚起の表示をする、乗客コンベア用表示装置。
【請求項6】
前記非常事態が、乗客の手荷物落下、又は乗客の転倒である、請求項5に記載の乗客コンベア用表示装置。
【請求項7】
前後方向に走行する踏段と、
前記踏段の左右両側に設けられた透明部材からなる欄干と、
前記欄干に設けられた一又は複数の透明ディスプレイと、
乗客コンベアを撮影した画像に基づいて前記乗客コンベアの非常事態を検知した場合には、前記透明ディスプレイに注意喚起の表示をさせる制御装置と
を有する、乗客コンベア。
【請求項8】
前記制御装置が、前記非常事態を検知した位置より進行方向後側の乗客の有無を判断し、乗客がいる場合には、前記乗客の進行方向前側の前記透明ディスプレイに注意喚起の表示をする、請求項7に記載の乗客コンベア。
【請求項9】
前記乗客コンベアが上階と下階とを接続するエスカレータであり、
前記制御装置が、前記非常事態を検知した位置より下階側の乗客の有無を判断し、乗客がいる場合には、前記乗客の進行方向前側の前記透明ディスプレイに注意喚起の表示をする、請求項7に記載の乗客コンベア。
【請求項10】
前記非常事態が、乗客の手荷物落下、又は乗客の転倒である、請求項8又は9に記載の乗客コンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、乗客コンベアシステム、乗客コンベア用表示装置、及び乗客コンベアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
エスカレータや動く歩道などの乗客コンベアには、乗客の転倒や転落、また踏段とスカートガードとの隙間に挟まれたりするなどの事故が生じるおそれがある。
【0003】
そこで乗客コンベアでは、安全性を高めるためにスカートガード挟まれ検出装置、インレット挟まれ検出装置、踏段浮き上がり検出装置などの様々な安全装置が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-195289号公報
【特許文献2】特開2014-15306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、エスカレータの踏段が上昇又は下降しているときに非常事態が発生した場合、その位置より下階側の乗客に対して、落下した荷物や転倒して墜落する乗客が当たったりする二次被害が生じるおそれがある。また、エスカレータの踏段が下降しているときや動く歩道において非常事態が発生した場合、その位置より進行方向後側の乗客が、落下した荷物や転倒した乗客につまずいたりする二次被害が生じるおそれがある。ところが、このような二次被害に対する安全対策は従来とられていない。
【0006】
そこで本発明の実施形態は上記問題点に鑑み、乗客コンベアに生じた非常事態を乗客に注意喚起することができる、乗客コンベアシステム、乗客コンベア用表示装置、及び乗客コンベアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態は、前後方向に走行する踏段と、前記踏段の左右両側に設けられた透明部材からなる欄干と、前記欄干に設けられた一又は複数の透明ディスプレイとを有する乗客コンベアと、前記乗客コンベアを撮影するカメラと、前記カメラで撮影した画像に基づいて前記乗客コンベアの非常事態を検知した場合には、前記透明ディスプレイに注意喚起の表示をする制御装置とを有する、乗客コンベアシステムである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態を示すエスカレータの側面から見た説明図であり、上階から下階を見た場合に、左側の構造物を省略した図。
【
図2】本発明の一実施形態のエスカレータにおける制御方法1を説明する簡略図。
【
図3】本発明の一実施形態のエスカレータにおける電気的構成を説明するブロック図。
【
図4】本発明の一実施形態に係る制御方法1を示すエスカレータのフローチャート。
【
図5】本発明の一実施形態のエスカレータにおける制御方法2を説明する簡略図。
【
図6】本発明の一実施形態に係る制御方法2を示すエスカレータのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態のエスカレータを
図1~6に基づいて説明する。
【0010】
(1)エスカレータ10
エスカレータ10の構造について、
図1~3を参照して説明する。
【0011】
エスカレータ10の枠組みであるトラス12が、建屋1の上階と下階に跨がって支持アングル2,3を用いて支持されている。
【0012】
トラス12の上端部にある上階側の機械室14内部には、踏段30を前後方向に走行させる駆動装置18、左右一対の駆動スプロケット24,24、左右一対のベルトスプロケット27,27が設けられている。駆動装置18は、誘導電動機(インダクションモータ)よりなるモータ20と、減速機と、この減速機の出力軸に取り付けられた出力スプロケットと、この出力スプロケットにより駆動する駆動チェーン22と、モータ20の回転を停止させ、かつ、停止状態を保持するディスクブレーキとを有している。この駆動チェーン22により駆動スプロケット24が回転する。左右一対の駆動スプロケット24,24と左右一対のベルトスプロケット27,27とは、不図示の連結ベルトにより連結されて同期して回転する。また、上階側の機械室14内部には、モータ20やディスクブレーキなどを制御する制御装置50が設けられている。
【0013】
トラス12の下端部にある下階側の機械室16内部には、従動スプロケット26が設けられている。上階側の駆動スプロケット24と下階側の従動スプロケット26との間には、左右一対の無端の踏段チェーン28,28が掛け渡されている。すなわち、左右一対の踏段チェーン28,28には、複数の踏段30の車輪301が等間隔で取り付けられている。踏段30の車輪301はトラス12に固定された不図示の案内レールに沿って走行するとともに、駆動スプロケット24の外周部にある凹部と従動スプロケット26の外周部にある凹部に係合して上下に反転する。また、車輪302はトラス12に固定された案内レール25を走行する。
【0014】
トラス12の左右両側には、左右一対のスカートガード44,44と左右一対の欄干36,36が立設されている。欄干36の上部に手摺りレール39が設けられ、この手摺りレール39に沿って手摺りベルト38が移動する。欄干36の上階側の正面下部には上階側の正面スカートガード40が設けられ、下階側の正面下部には下階側の正面スカートガード42が設けられ、正面スカートガード40,42から手摺りベルト38の出入口であるインレット部46,48がそれぞれ突出している。スカートガード44は、欄干36の側面下部に設けられ、左右一対のスカートガード44,44の間を踏段30が走行する。上下階のスカートガード44の内側面には、操作盤52,56、スピーカ54,58がそれぞれ設けられている。
【0015】
欄干36はガラスやアクリルなどの透明部材からなり、
図2に示すように、その内部には後述する表示装置70を構成する透明ディスプレイ74A~Dが設けられ、透明ディスプレイ74A~Dがあっても欄干36の背後にある物体が透けて見える程度に欄干36全体が透明無色である。
図3に示すように、表示装置70は、制御装置50からの信号を受信する受信部72と、透明ディスプレイ74A~Dとを有している。透明ディスプレイは、例えば有機ELや有機発光ダイオード(Organic Light-Emitting Diode:OLED)で構成されたものであってもよく、スカートガード44内に設けた投射部から透明ディスプレイに映像を投射するものであってもよい。
【0016】
手摺りベルト38は、上階側のインレット部46から正面スカートガード40内に侵入し、案内ローラ群64を介してベルトスプロケット27に掛け渡され、その後、案内ローラ群66を介してスカートガード44内を移動し、下階側のインレット部48から正面スカートガード42外に表れる。そして、手摺りベルト38は、ベルトスプロケット27が駆動スプロケット24と共に回転することにより踏段30と同期して移動する。この走行する手摺りベルト38は回転するベルトスプロケット27に押圧部材68により押圧される。
【0017】
上階側の機械室14の天井面にある乗降口には、上階側の乗降板32が水平に設けられ、下階側の機械室16の天井面にある乗降口には、下階側の乗降板34が水平に設けられている。乗降板32の先端には櫛歯状のコム60が設けられ、このコム60から踏段30が進出、又は、侵入する。また、乗降板34にも櫛歯状のコム62が設けられている。
【0018】
図3に示すように、建屋1の天井面には、エスカレータ10の上階側から下階側までの状況を撮影することができるカメラ80が設けられている。カメラ80は、広角の画像で高解像度の撮影画像を取得できる機種であることが好ましく、エスカレータ10の全体を把握できるようにカメラ80の設置場所を決定するものとする。なお、複数台のカメラ80を用いて撮影するものであってもよい。
【0019】
(2)エスカレータ10の電気的構成
エスカレータ10の電気的構成について、
図2,3を参照して説明する。
【0020】
制御装置50は信号を送信する送信部51を有している。表示装置70は、制御装置50からの信号を受信する受信部72と、透明ディスプレイ74とを有している。制御装置50と表示装置70とは、送信部51と受信部72とを介して接続されている。また、制御装置50には、駆動装置18、操作盤52,56、スピーカ54,58、カメラ80も接続されている。
【0021】
(3)表示装置70の制御方法1
上記実施形態におけるエスカレータ10の制御方法1について
図2~4を参照して説明する。この制御方法1は、例えば、
図2に示すようにエスカレータ10の踏段30が下降しているときに非常事態が発生し、その位置より進行方向後側(上階側)の乗客の安全を確保するための制御方法である。
【0022】
図4は本実施形態に係るエスカレータの制御方法1についてのフローチャートである。ステップS1において、制御装置50は、カメラ80を制御してエスカレータ10の乗り口から降り口までを含む所定の撮影領域を撮影する。次いで、ステップS2に進む。
【0023】
ステップS2において、制御装置50は、ステップS1で取得した画像の解析を行う。この画像解析では、エスカレータ10の乗客の位置、移動方向、乗客の手荷物の有無、乗客の体勢などを把握するための情報を取得する。次いで、ステップS3に進む。
【0024】
ステップS3において、制御装置50は、ステップS2で取得した情報に基づいて、非常事態が発生していないか判断する。非常事態が発生している場合はステップS4に進み(YES)、非常事態が発生していない場合はステップS1に戻る(NO)。ここで、非常事態とは、例えば、乗客の転倒や、乗客の手荷物落下、降り口での混雑などである。
【0025】
ステップS4において、制御装置50は、ステップS2で取得した情報に基づいて、非常事態が発生した位置(例えば、上階から5m進んだ位置Xで乗客100が転倒した場合、
図2のX点の位置)を特定する。次いで、ステップS5に進む。
【0026】
ステップS5において、制御装置50は、ステップS2で取得した情報に基づいて、ステップS4で特定した非常事態が発生した位置より進行方向後側、すなわち
図2のX点の位置から上階の乗降板32(
図1参照)までの間に乗客が存在するか確認する。進行方向後側に乗客が存在する場合はステップS6に進み(YES)、進行方向後側に乗客が存在しない場合はステップS1に戻る(NO)。
【0027】
ステップS6において、制御装置50は、ステップS2で取得した情報に基づいて、ステップS5で特定した進行方向後側の乗客101の位置(例えば、上階から1m進んだ位置である、
図2のY点の位置)を特定する。次いで、ステップS7に進む。
【0028】
ステップS7において、制御装置50は、非常事態が発生していることと、乗客101の位置情報(上階から1m進んだ位置である、
図2のY点の位置)を示す信号を送信し、これを受信した表示装置70は乗客101の進行方向前側に位置する透明ディスプレイ74Cに、進行方向前側で非常事態が発生したことを知らせるために「前方注意」などの注意喚起の表示をする。次いで、ステップS8に進む。
【0029】
ステップS8において、制御装置50は、ステップS1~S3までを実施し、非常事態が解消されたか確認する。非常事態が解消された場合はステップS9に進み(YES)、非常事態が解消されていない場合はステップS5に戻る(NO)。
【0030】
ステップS9において、制御装置50は透明ディスプレイ74を非表示にし、乗客に対する注意喚起の表示を終了する。そして、ステップS1に戻る。
【0031】
(4)効果
本実施形態によれば、進行方向前側(下階側)で非常事態が発生した場合に、進行方向後側(上階側)の乗客101に対して注意喚起することができるので、その乗客101が落下した荷物や転倒した乗客100につまずくのを防止できる。特に、スピーカ54,58からの注意喚起の場合、周囲の騒音等の状況によってはスピーカ54,58付近の乗客にしか聞こえないことがあるが、欄干36の透明ディスプレイ74に表示させることにより、周囲の状況に影響を受けることなく、どの位置の乗客に対しても効果的に注意喚起することができる。
【0032】
また、非常事態が発生していないときは、透明ディスプレイ74を非表示とすることにより、意匠性を維持することができ、透明ディスプレイ74に広告や模様などを表示することで有効に活用することもできる。
【0033】
なお、この制御方法1では、エスカレータ10の踏段30が上昇しているときに非常事態が発生し、非常事態が発生した位置より下階側の乗客の安全も確保することができる。すなわち、進行方向後側(下階側)の乗客に対して注意喚起することができるので、落下した荷物や転倒して墜落する乗客が当たるのを防止できる。
【0034】
(5)表示装置70の制御方法2
上記実施形態におけるエスカレータ10の制御方法2について
図3,5,6を参照して説明する。この制御方法2は、例えば、
図5に示すようにエスカレータ10の踏段30が下降しているときに非常事態が発生し、その位置より下階側の乗客の安全を確保するための制御方法である。
【0035】
図6は本実施形態に係るエスカレータの制御方法2についてのフローチャートである。ステップS21において、制御装置50は、カメラ80を制御してエスカレータ10の乗り口から降り口までを含む所定の撮影領域を撮影する。次いで、ステップS22に進む。
【0036】
ステップS22において、制御装置50は、ステップS21で取得した画像の解析を行う。この画像解析では、エスカレータ10の乗客の位置、移動方向、乗客の手荷物の有無、乗客の体勢などを把握するための情報を取得する。次いで、ステップS23に進む。
【0037】
ステップS23において、制御装置50は、ステップS22で取得した情報に基づいて、非常事態が発生していないか判断する。非常事態が発生している場合はステップS24に進み(YES)、非常事態が発生していない場合はステップS21に戻る(NO)。ここで、非常事態とは、例えば、乗客の転倒や、乗客の手荷物落下、降り口での混雑などである。
【0038】
ステップS24において、制御装置50は、ステップS22で取得した情報に基づいて、非常事態が発生した位置(例えば、上階から1m進んだ位置Pで乗客103が転倒した場合、
図5のP点の位置)を特定する。次いで、ステップS25に進む。
【0039】
ステップS25において、制御装置50は、ステップS22で取得した情報に基づいて、ステップS24で特定した非常事態が発生した位置より下階側、すなわち
図5のP点の位置から下階の乗降板34(
図1参照)までの間に乗客が存在するか確認する。下階側に乗客が存在する場合はステップS26に進み(YES)、下階側に乗客が存在しない場合はステップS21に戻る(NO)。
【0040】
ステップS26において、制御装置50は、ステップS22で取得した情報に基づいて、ステップS25で特定した下階側の乗客104の位置(例えば、上階から5m進んだ位置、
図5のQ点の位置)を特定する。次いで、ステップS27に進む。
【0041】
ステップS27において、制御装置50は、非常事態が発生していることと、乗客104の位置情報(上階から5m進んだ位置である、
図5のQ点の位置)を示す信号を送信し、これを受信した表示装置70は上階における乗客103の転倒を知らない乗客104の進行方向前側に位置する透明ディスプレイ74Aに、上階側で非常事態が発生したことを知らせるために「上方注意」などの注意喚起の表示をする。次いで、ステップS28に進む。
【0042】
ステップS28において、制御装置50は、ステップS21~S23までを実施し、非常事態が解消されたか確認する。非常事態が解消された場合はステップS29に進み(YES)、非常事態が解消されていない場合はステップS25に戻る(NO)。
【0043】
ステップS29において、制御装置50は透明ディスプレイ74を非表示にし、乗客に対する注意喚起の表示を終了する。そして、ステップS21に戻る。
【0044】
(6)効果
踏段30が下降しているエスカレータ10において上階側で非常事態が発生すると、乗客は上階側に背を向けているため、上階側の非常事態を認識しにくいが、本実施形態によれば、上階側で非常事態が発生した場合に、下階側の乗客に対して注意喚起することができる。また、欄干36の透明ディスプレイ74に表示させることにより、周囲の騒音等の状況に影響を受けることなく、どの位置の乗客に対しても効果的に注意喚起することができる。
【0045】
なお、この制御方法2では、エスカレータ10の踏段30が上昇しているときに非常事態が発生し、非常事態が発生した位置より下階側の乗客の安全も確保することができる。すなわち、本実施形態によればエスカレータ10の運転方向に関わらず、下階側の乗客に対して注意喚起することができるので、落下した荷物や転倒して墜落する乗客が当たるのを防止できる。
【0046】
また、非常事態が発生していないときは、透明ディスプレイ74を非表示とすることにより、意匠性を維持することができ、透明ディスプレイ74に広告や模様などを表示することで有効に活用することもできる。
【0047】
(7)変更例
上記実施形態では、欄干36の全面に透明ディスプレイ74A~Dが配設されている例について説明したが、透明ディスプレイ74は一つであってもよく、その場合、例えば、エスカレータ10の高さ方向中央付近から下階側に透明ディスプレイ74を配設するのが好ましい。また、透明ディスプレイ74は左右両側に配設するものであってもよく、左右の片側に配設するものであってもよい。
【0048】
上記実施形態では、乗客の位置を特定し、乗客の位置の進行方向前側に位置する透明ディスプレイ74に注意喚起の表示をする例について説明したが、透明ディスプレイ74A~D全体に注意喚起の表示をするものであってもよい。
【0049】
上記実施形態では、表示装置70を用いて注意喚起を行う例について説明したが、これに加えてスピーカ54,58から音声による注意喚起を行うものであってもよい。
【0050】
上記実施形態では、乗客コンベアがエスカレータである例について説明したが、乗客コンベアは動く歩道であってもよく、その場合、上記制御方法1と同様の制御を行うことができる。
【0051】
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0052】
1・・・建屋、10・・・エスカレータ、12・・・トラス、30・・・踏段、36・・・欄干、38・・・手摺りベルト、39・・・手摺りレール、50・・・制御装置、51・・・送信部、70・・・表示装置、72・・・受信部、74・・・透明ディスプレイ、80・・・カメラ
【手続補正書】
【提出日】2023-04-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に走行する踏段と、前記踏段の左右両側に設けられた透明部材からなる欄干と、前記欄干に設けられた一又は複数の透明ディスプレイとを有する乗客コンベアと、
前記乗客コンベアを撮影するカメラと、
前記カメラで撮影した画像に基づいて前記乗客コンベアの非常事態を検知した場合には、前記透明ディスプレイに注意喚起の表示をする制御装置と
を有し、
前記制御装置が、前記非常事態を検知した位置より進行方向後側の乗客の有無を判断し、乗客がいる場合には、前記乗客の進行方向前側の前記透明ディスプレイに注意喚起の表示をする、乗客コンベアシステム。
【請求項2】
前後方向に走行する踏段と、前記踏段の左右両側に設けられた透明部材からなる欄干と、前記欄干に設けられた一又は複数の透明ディスプレイとを有する乗客コンベアと、
前記乗客コンベアを撮影するカメラと、
前記カメラで撮影した画像に基づいて前記乗客コンベアの非常事態を検知した場合には、前記透明ディスプレイに注意喚起の表示をする制御装置と
を有し、
前記乗客コンベアが上階と下階とを接続するエスカレータであり、
前記制御装置が、前記非常事態を検知した位置より下階側の乗客の有無を判断し、乗客がいる場合には、前記乗客の進行方向前側の前記透明ディスプレイに注意喚起の表示をする、乗客コンベアシステム。
【請求項3】
前記非常事態が、乗客の手荷物落下、又は乗客の転倒である、請求項1又は2に記載の乗客コンベアシステム。
【請求項4】
前後方向に走行する踏段と、
前記踏段の左右両側に設けられた透明部材からなる欄干と、
前記欄干に設けられた一又は複数の透明ディスプレイと、
乗客コンベアを撮影した画像に基づいて前記乗客コンベアの非常事態を検知した場合には、前記透明ディスプレイに注意喚起の表示をさせる制御装置と
を有し、
前記制御装置が、前記非常事態を検知した位置より進行方向後側の乗客の有無を判断し、乗客がいる場合には、前記乗客の進行方向前側の前記透明ディスプレイに注意喚起の表示をする、乗客コンベア。
【請求項5】
前後方向に走行する踏段と、
前記踏段の左右両側に設けられた透明部材からなる欄干と、
前記欄干に設けられた一又は複数の透明ディスプレイと、
乗客コンベアを撮影した画像に基づいて前記乗客コンベアの非常事態を検知した場合には、前記透明ディスプレイに注意喚起の表示をさせる制御装置と
を有し、
前記乗客コンベアが上階と下階とを接続するエスカレータであり、
前記制御装置が、前記非常事態を検知した位置より下階側の乗客の有無を判断し、乗客がいる場合には、前記乗客の進行方向前側の前記透明ディスプレイに注意喚起の表示をする、乗客コンベア。
【請求項6】
前記非常事態が、乗客の手荷物落下、又は乗客の転倒である、請求項4又は5に記載の乗客コンベア。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明の実施形態は、乗客コンベアに生じた非常事態を乗客に注意喚起することができる、乗客コンベアシステム、及び乗客コンベアに関するものである。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
そこで本発明の実施形態は上記問題点に鑑み、乗客コンベアに生じた非常事態を乗客に注意喚起することができる、乗客コンベアシステム、及び乗客コンベアを提供することを目的とする。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明の実施形態は、前後方向に走行する踏段と、前記踏段の左右両側に設けられた透明部材からなる欄干と、前記欄干に設けられた一又は複数の透明ディスプレイとを有する乗客コンベアと、前記乗客コンベアを撮影するカメラと、前記カメラで撮影した画像に基づいて前記乗客コンベアの非常事態を検知した場合には、前記透明ディスプレイに注意喚起の表示をする制御装置とを有し、前記制御装置が、前記非常事態を検知した位置より進行方向後側の乗客の有無を判断し、乗客がいる場合には、前記乗客の進行方向前側の前記透明ディスプレイに注意喚起の表示をする、乗客コンベアシステムである。