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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174005
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】出没式筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 25/02 20060101AFI20231130BHJP
   B43K 24/04 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B43K25/02 190
B43K24/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086596
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】有坂 優希
【テーマコード(参考)】
2C041
2C353
【Fターム(参考)】
2C041CC02
2C353HA09
2C353HC10
2C353HG04
2C353HL03
(57)【要約】
【課題】筆記時にクリップ体ががたつくおそれがない出没式筆記具を提供する。
【解決手段】クリップ体8を前方に押圧操作することにより筆記体10のペン先を軸筒2の前端孔31から突出状態にする出没機構を備える。クリップ本体81の内面に凸部81aが形成される。スライド孔21より前方の軸筒2の側壁に、径方向に貫通する挿入孔41が形成される。ペン先突出状態において、挿入孔41にクリップ本体81の凸部81aが挿入されるとともに、回転部材7の外面の外向突起72とクリップ本体81の凸部81aとが圧接される。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒内に筆記体が前後方向に移動可能に収容され、前記軸筒の側壁に前後方向に延びるスライド孔が形成され、前記スライド孔に前後方向に移動可能にクリップ体が設けられ、ペン先没入状態から前記クリップ体を前方に押圧操作することにより前記筆記体のペン先を前記軸筒の前端孔から突出状態にし、前記ペン先突出状態から前記クリップ体を前方に押圧操作することにより前記ペン先を没入状態にする出没機構を備えた出没式筆記具であって、
前記出没機構が、前記軸筒内部に形成されたカム部と、前記カム部に係合し且つ前記筆記体の後端部を支持する回転部材と、前記回転部材に回転を付与するカム歯と、前記カム歯を備え且つ前記スライド孔より前記軸筒の外部に突出する前記クリップ体と、前記軸筒内部に収容され且つ前記筆記体を後方に付勢する弾発体と、を備え、
前記クリップ体と前記回転部材とが連動して前後方向に移動可能に構成され、
前記クリップ体は、前記軸筒外部に配置される前後方向に延びるクリップ本体を備え、前記クリップ本体の径方向の内面に凸部が形成され、
前記スライド孔より前方の前記軸筒の側壁に、径方向に貫通する挿入孔が形成され、
ペン先突出状態において、前記挿入孔に前記クリップ本体の凸部が挿入され且つ前記回転部材の外面と前記クリップ本体の凸部とが圧接されることを特徴とする出没式筆記具。
【請求項2】
前記回転部材の外面に複数の外向突起が形成され、
ペン先没入状態及びペン先突出状態において、前記挿入孔に前記凸部が挿入され、
ペン先突出状態において、前記外向突起と前記凸部とが圧接され、
ペン先没入状態において、前記凸部が前記外向突起の相互間の回転部材の外面の径方向外方に配置され且つ前記外向突起と前記凸部とが非接触状態にされる請求項1に記載の出没式筆記具。
【請求項3】
前記挿入孔の前端部に後方に突出する解除壁部が形成され、ペン先突出状態からペン先没入状態に移行する過程で、前記解除壁部が前記凸部と前記外向突起との間に挿入されることにより前記凸部と前記外向突起との圧接が解除される請求項2に記載の出没式筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出没式筆記具に関する。詳細には、クリップ体を前方に押圧操作することによって、ペン先を軸筒の前端孔より出没可能に構成した出没式筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1には、軸筒の側壁に前後方向に延びるスライド孔を設け、スライド孔に配設したクリップ体を前方にスライド操作することによって、筆記体のペン先を、軸筒の前端孔から出没自在に構成した筆記具が開示されている。また、前記特許文献1には、回転カム機構を用いた出没機構を備え、クリップ体の軸部と回転部材とが、互いに回転可能且つ互いに前後方向のあそびを有した状態で前後方向に係止され、それによって、ペン先突出状態において、クリップ体の不用意な前後方向の移動が抑えられることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2011/096357号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1の構成は、ペン先突出状態において、摩擦操作時のクリップ体の前後方向の大きな移動は抑えられるとしても、筆記時にクリップ体ががたつくおそれがある。
【0005】
本願発明は、前記従来の問題点を解決するものであって、筆記時にクリップ体ががたつくおそれがない出没式筆記具を提供しようとするものである。
本願発明で、「前」とはペン先側を指し、「後」とはその反対側を指す。本発明で「ペン先没入状態」とは、ペン先が軸筒内に没入された状態である。本発明で「ペン先突出状態」とは、ペン先が軸筒の前端孔より外部に突出した状態である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の第1の発明は、軸筒内に筆記体が前後方向に移動可能に収容され、前記軸筒の側壁に前後方向に延びるスライド孔が形成され、前記スライド孔に前後方向に移動可能にクリップ体が設けられ、ペン先没入状態から前記クリップ体を前方に押圧操作することにより前記筆記体のペン先を前記軸筒の前端孔から突出状態にし、前記ペン先突出状態から前記クリップ体を前方に押圧操作することにより前記ペン先を没入状態にする出没機構を備えた出没式筆記具であって、前記出没機構が、前記軸筒内部に形成されたカム部と、前記カム部に係合し且つ前記筆記体の後端部を支持する回転部材と、前記回転部材に回転を付与するカム歯と、前記カム歯を備え且つ前記スライド孔より前記軸筒の外部に突出する前記クリップ体と、前記軸筒内部に収容され且つ前記筆記体を後方に付勢する弾発体と、を備え、前記クリップ体と前記回転部材とが連動して前後方向に移動可能に構成され、前記クリップ体は、前記軸筒外部に配置される前後方向に延びるクリップ本体を備え、前記クリップ本体の径方向の内面に凸部が形成され、前記スライド孔より前方の前記軸筒の側壁に、径方向に貫通する挿入孔が形成され、ペン先突出状態において、前記挿入孔に前記クリップ本体の凸部が挿入され且つ前記回転部材の外面と前記クリップ本体の凸部とが圧接されることを要件とする。
【0007】
前記第1の発明の出没式筆記具は、前記構成により、筆記時のクリップ体のがたつきを防止できる。

【0008】
本願の第2の発明は、前記第1の発明の出没式筆記具において、前記回転部材の外面に複数の外向突起が形成され、ペン先没入状態及びペン先突出状態において、前記挿入孔に前記凸部が挿入され、ペン先突出状態において、前記外向突起と前記凸部とが圧接され、ペン先没入状態において、前記凸部が前記外向突起の相互間の回転部材の外面の径方向外方に配置され且つ前記外向突起と前記凸部とが非接触状態にされることを要件とする。
【0009】
前記第2の発明の出没式筆記具は、前記構成により、回転部材とクリップ本体の凸部とが常時圧接することを回避でき、回転部材の円滑な回転が得られ、その結果、クリップ体のスムーズな前後の操作性を維持できる。
【0010】
本願の第3の発明は、前記第2の発明の出没式筆記具において、前記挿入孔の前端部に後方に突出する解除壁部が形成され、ペン先突出状態からペン先没入状態に移行する過程で、前記解除壁部が前記凸部と前記外向突起との間に挿入されることにより前記凸部と前記外向突起との圧接が解除されることを要件とする。
【0011】
前記第3の発明の出没式筆記具は、前記構成により、ペン先突出状態からペン先没入状態に移行する際の回転部材の円滑な回転が得られ、その結果、クリップ体のスムーズな前後の操作性を維持できる。仮に、ペン先突出状態からペン先没入状態に移行するための押圧操作時、凸部と外向突起とが圧接状態のままで前方に移動した場合、回転部材が円滑に回転できず、クリップ体のスムーズな操作性が得られないおそれがある。
【発明の効果】
【0012】
本発明の出没式筆記具は、筆記時にクリップ体ががたつくおそれがない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態のペン先没入状態を示す縦断面図である。
図2図1の出没式筆記具のペン先突出状態を示す縦断面図である。
図3図1の内部構造を示す一部縦断面図である。
図4図2の内部構造を示す一部縦断面図である。
図5】(a)は図3のA-A線断面図であり、(b)は図4のB-B線断面図である。
図6図4の要部拡大縦断面図である。
図7図1の中間軸の縦断面図、図1の回転部材及び円筒体の正面図である。
図8図1のクリップ体を省略した軸筒の要部正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態の出没式筆記具1を図1乃至図8に示す。
【0015】
本実施の形態の出没式筆記具1は、軸筒2と、該軸筒2内に収容される筆記体10と、該筆記体10のペン先101を軸筒2の前端孔31から出没自在にさせる出没機構と、を備える。
【0016】
・筆記体
前記筆記体10は、ペン先101と、該ペン先101が前端開口部に圧入固着されたインキ収容管102と、該インキ収容管102内に充填されるインキ(例えば熱変色性インキ)と、該インキの後端に充填され且つ該インキの消費に伴い前進する追従体(例えば高粘度流体)とからなる。インキ収容管102の後端開口部に、インキ収容管102と外部とが通気可能な通気孔を備えた尾栓103が取り付けられる。
【0017】
前記ペン先101は、例えば、前端に回転可能にボールを抱持した金属製のボールペンチップのみからなる構成、または前記ボールペンチップの後部外面を保持した合成樹脂製のペン先ホルダーからなる構成のいずれであってもよい。前記ペン先101の内部には、前端のボールを前方に押圧するスプリングが収容される。前記スプリングは、圧縮コイルスプリングの前端部にストレート状のロッド部を備えた構成であり、前記ロッド部の前端がボール後面に接触している。非筆記時、前記スプリングの前方付勢によりボールがボールペンチップ前端の内向きの前端縁部内面に密接され、ペン先の前端からのインキの漏出及びインキの蒸発を防止できる。
【0018】
・軸筒
前記軸筒2は、先細円筒状の前軸3と、該前軸3の後端部に連結される円筒状の中間軸4と、該中間軸4の後端部に連結される円筒状の後軸5とからなる。
【0019】
・前軸
前記前軸3は、合成樹脂(例えば、ポリカーボネート樹脂)の成形体からなる先細円筒状の本体と、該本体外面に設けられる弾性材料からなる把持部とからなる。前記把持部は、2色成形または本体外面への装着により設けられる。前記前軸3の後端部は縮径され、その外面にはオネジ部が形成される。前記前軸3の前端には、前端孔31が前後方向に貫設される。前軸3内部に弾発体11(圧縮コイルスプリング)が収容される。
【0020】
・中間軸
前記中間軸4は、円筒状の合成樹脂(例えば、ポリカーボネート樹脂)の成形体からなる。前記中間軸4の前端部内面には、メネジ部が形成される。前記メネジ部に前記前軸3のオネジ部が螺合可能である。前記中間軸4の後端部には、縮径部が一体に形成される。前記中間軸4の後端部側壁には、前端が閉鎖され且つ後端が開放された、前後方向に延びる第1の長孔42が形成される。また、前記第1の長孔42より前方の中間軸4の外面には、前後方向に延びる挿入孔41が形成される。第1の長孔42及び挿入孔41は径方向に貫通される。挿入孔41は、第1の長孔42から軸方向前方に延びる仮想延長線上に形成される。
【0021】
・カム部
図7に示すように、前記縮径部より前方の前記中間軸4の内周面には、カム部6が一体に形成される。カム部6は、前方且つ径方向内方に突出する鋸歯状の複数(例えば4個)のカム歯61と、該カム歯61間に形成される、前後方向に延びる複数(例えば4本)のカム溝62とを備える。前記カム部6のカム歯61は、第1カム斜面61aと、第2カム斜面61bと、第1カム斜面61aと第2カム斜面61bとの間に形成される係止面61cとを備える。係止面61cは、軸方向に延びる面からなる。各々の第1カム斜面61aと係止面61cとの間のカム歯61には、軸方向に延びる凹溝63が形成される。凹溝63はカム溝62よりも浅い深さを有する。即ち、凹溝63の径方向の底面は、カム溝62の径方向の底面より径方向内方に位置している。尚、本実施の形態では、カム部6が軸筒2を構成する部材(例えば中間軸4)の内周面に一体に形成される構成であるが、これ以外に、カム部6を有する別部材を軸筒2の内周面に取り付ける構成でもよい。
【0022】
・後軸
後軸5は、円筒状の合成樹脂(例えば、ポリカーボネート樹脂)の成形体からなる。前記後軸5の前端部側壁には、前端が開放され且つ後端が閉鎖された、前後方向に延びる第2の長孔51が形成される。第2の長孔51は径方向に貫通される。後軸5の後端には、ゴム弾性材料からなる摩擦体12が取り付けられる。摩擦体12を用いて、被筆記面上の熱変色性インキによる筆跡を摩擦することによって、該筆跡を熱変色させることができる。
【0023】
・回転部材
図3乃至図7に示すように、前記回転部材7は、その外周面に前後方向に延びる複数本(例えば4本)の突条71が等間隔に一体に形成される。各々の突条71の後端にはカム斜面71aが形成される。前記突条71が、カム部6のカム歯61(第1カム斜面61a、第2カム斜面61b、及び係止面61c)及びカム部6のカム溝62に係合される。回転部材7の内部には前後方向に貫通する内孔が形成される。回転部材7は合成樹脂(例えばポリアセタール樹脂)の成形体により得られる。
【0024】
・外向突起
前記突条71より前方の回転部材7の外周面に、軸方向に延びる複数本(例えば4本)のリブからなる外向突起72が等間隔に一体に形成される。外向突起72は、突条71と突条71との中点位置から軸方向前方に延びる仮想延長線上に形成される。各々の外向突起72の外面と中間軸4の内面とが摺接可能に構成される。尚、本実施の形態では、外向突起72は回転部材7の外周面に一体に形成される構成であるが、これ以外にも、外向突起72を有する別部材を回転部材7に取り付ける構成でもよい。
【0025】
各々の外向突起72の外面は、横断面が凸曲面となっている。それにより、各々の外向突起72の外面とクリップ本体81の凸部81aとの周方向の円滑な摺接が可能となり、且つ、各々の外向突起72の外面と中間軸4(軸筒2)の内面との周方向の円滑な摺接が可能となり、回転部材7の円滑な回転が得られ、その結果、クリップ体8のスムーズな前後の操作性が維持される。
【0026】
各々の外向突起72の外面は、縦断面において前端面及び後端面に、傾斜面または曲面からなる面取り部が形成される。それにより、各々の外向突起72の外面と軸筒2内面(中間軸4内面)との軸方向の円滑な摺接が可能である。
【0027】
・クリップ体
図6に示すように、前記クリップ体8は、前後方向に延びるクリップ本体81と、該クリップ本体81の後部に一体に連設される径方向に延びる基部82と、該基部82と一体に連設され且つ基部82より前方に延びる軸部83とを備える。さらに、クリップ体8は、軸部83の外周面に取り付けられる円筒体9を備える。クリップ体8は、合成樹脂(例えば、ポリカーボネート樹脂)の成形体により得られる。クリップ本体81と軸筒2外面との間に衣服のポケット等の被挟持物を挿入した際、クリップ本体81は径方向外方に弾性変形され、それにより、クリップ本体81と軸筒2外面との間で被挟持物が挟持される。
【0028】
・凸部
前記クリップ本体81の径方向内面に径方向内方に突出する凸部81aが一体に突設される。凸部81aは軸方向に延びる板状に形成される。凸部81aの表面の頂部は、縦断面が凸曲面となっており、それにより、衣服のポケット等の被挟持物にスムーズが挿入及び取り外しが可能となる。また、凸部81aの表面の頂部の周方向の両側縁部には、傾斜面またはR曲面からなる面取りが設けられ、凸部81aと外向突起72との円滑な摺接が可能となる。これ以外に、凸部81aの表面の頂部は、球面状であってもよい。凸部81aは、挿入孔41に挿入される。凸部81aは、軸筒2の内面(中間軸4の内面)より径方向内方に僅かに突出される。それにより、凸部81aが外向突起72に圧接可能に構成される。
【0029】
・円筒体
図3図4及び図6に示すように、前記円筒体9の前端には、V状状のカム斜面からなるカム歯91が周状に一体に形成される。前記円筒体9の内部には、内孔が前後方向に貫通される。クリップ体8と円筒体9とは、一体となって前後方向に移動可能となる。前記円筒体9の外周面には、複数のガイド突起92が一体に形成され、前記ガイド突起92が、カム部6のカム溝62及び凹溝63に沿って前後方向に移動可能に係合し、それによって、軸筒2内での円筒体9の回転が阻止される。前記円筒体9は合成樹脂(例えばポリアセタール樹脂)の成形体により得られる。本実施の形態では、カム歯91が、クリップ体8の軸部83に取り付ける別部材(即ち円筒体9)に一体に形成される構成であるが、これ以外にも、カム歯91がクリップ体8の軸部83に一体に形成される構成でもよい。
【0030】
前記中間軸4と前記後軸5とが連結され、前記第1の長孔42と第2の長孔51とにより、前後方向に延びるスライド孔21が形成される。スライド孔21より径方向外方にクリップ体8(クリップ本体81及び基部82の一部)が突出され、前記クリップ体8がスライド孔21に沿って前後方向にスライド可能に構成される。
【0031】
・出没機構
前記出没機構は、軸筒2側壁より径方向外方に突出するクリップ体8を前方に押圧操作(スライド操作)するものであり、回転カム機構を用いたサイドスライド式出没機構である。前記出没機構は、中間軸4内周面に形成されたカム部6と、該カム部6に係合し且つ筆記体10の後端に当接する回転部材7と、該回転部材7に係合し回転部材7に回転を付与するカム歯91と、該カム歯91を備え且つスライド孔21より径方向外方に突出するクリップ体8と、軸筒2内部(前軸3内部)に収容され且つ筆記体10を後方に付勢する弾発体11(例えば圧縮コイルスプリング)とからなる。本実施の形態の出没機構は、ペン先を突出させる操作及びペン先を没入させる操作のいずれもがクリップ体8を前方にスライド操作するダブルノック式である。
【0032】
前記カム部6は、前方且つ径方向内方に突出する鋸歯状の複数(例えば4個)のカム歯61と、該カム歯61間に形成される、前後方向に延びる複数(例えば4本)のカム溝62とを備える。前記回転部材7は、その外周面に長手方向に延びる複数本(例えば4本)の突条71を備える。前記回転部材7の突条71が、カム部6のカム歯61及びカム部6のカム溝62に係合される。前記クリップ体8の軸部83に取り付けられた円筒体9の前端には、回転部材7の突条71の後端のカム斜面71aと係合するカム歯91が周状に一体に形成される。
【0033】
・ペン先の出没
ペン先没入状態からクリップ体8を、弾発体11による後方付勢に抗して前方にスライド操作すると、クリップ体8の軸部83に取り付けられた円筒体9によって回転部材7が前方に押圧され、前記回転部材7の突条71がカム溝62に沿って前方に移動する。それに伴って、前記回転部材7が筆記体10の後端を前方に押圧し、ペン先が前端孔31より外部に突出される。このとき、前記軸部83に取り付けられた円筒体9のカム歯91と前記回転部材7の突条71後端のカム斜面71aとの当接によって回転部材7がカム部6に対して一定角度だけ回転する。それにより、前記回転部材7の突条71後端部がカム部6のカム歯61の係止面61cに係止され、ペン先突出状態が維持される。
【0034】
ペン先突出状態からクリップ体8を、弾発体11による後方付勢に抗して前方にスライド操作すると、クリップ体8の軸部83に取り付けられた円筒体9が回転部材7を前方に押圧し、前記円筒体9のカム歯91と前記回転部材7の突条71後端との当接によって回転部材7がカム部6に対して一定角度だけ回転する。それによって、前記突条71後端部とカム部6のカム歯61との係止状態が解除され、弾発体11による後方付勢により、前記突条71がカム部6のカム溝62に沿って後方に移動する。前記回転部材7が後方に移動することに伴って、筆記体10が後方に移動し、ペン先没入状態となる。
【0035】
・凸部と外向突起の作用
次に凸部81aと外向突起72の作用について順に説明する。
図3及び図5(a)に示すように、ペン先没入状態において、回転部材7の外向突起72の相互間の外周面とクリップ本体81の凸部81aとが近接し、回転部材7の外向突起72とクリップ本体81の凸部81aとが非接触状態にある。
【0036】
ペン先没入状態からクリップ体8を前方にスライド操作し、回転部材7の突条71とカム溝62との係合が解除されてから、突条71後端のカム斜面71aが、第1カム斜面61aに沿って移動し係止面61cに係止されるまでに、回転部材7が回転する(即ちペン先突出状態になるまで回転部材7が回転する)。それにより、図4及び図5(b)に示すように、外向突起72が凸部81aに周方向から接触し、ペン先突出状態になると同時に外向突起72と凸部81aとが径方向に圧接された状態となる。
【0037】
さらに、ペン先突出状態からクリップ体8を前方にスライド操作し、回転部材7の突条71とカム歯61の係止面61cとの係合が解除されてから、突条71後端のカム斜面71aが、第2カム斜面61bに沿って移動しカム溝62に係合されるまでに、回転部材7が回転する(即ちペン先没入状態になるまで回転部材7が回転する)。それにより、図3及び図5(a)に示すように、ペン先没入状態になると同時に外向突起72と凸部81aとが非接触状態となる。
【0038】
外向突起72は回転部材7の外周面に等間隔に偶数個(例えば、4個)が設けられることが好ましい。それにより、何れの外向突起72の軸心対称位置にも他の外向突起72が形成される。凸部81aと外向突起72が圧接状態において、凸部81aと圧接状態にある外向突起72の軸心対称位置の他の外向突起72が、軸筒2の内面に圧接支持され、凸部81aと外向突起72との径方向の確実な圧接が可能となる。
【0039】
挿入孔41の前端部には後方に突出する解除壁部43が一体に形成される。挿入孔41の前端部には凸部81aが乗り上げて摺接可能なガイド溝44が連設される。ガイド溝44の底壁が解除壁部43となる。解除壁部43の後端には、前方に向かうに従い径方向外方に移動する傾斜面が形成される。ガイド溝44後端の短手方向の溝幅は挿入孔41前端の短手方向の溝幅と等しい。
【0040】
ペン先突出状態からペン先没入状態に移行する際に、クリップ体8を前方に押圧操作をし始めると、凸部81aが挿入孔41から一時的にガイド溝44に挿入されると同時に、凸部81aと外向突起72との間にガイド溝44の径方向の底壁(解除壁部43)が挿入される。それにより、凸部81aと外向突起72との圧接状態が容易に解除され、カム部に沿った回転部材の円滑な回転が得られる。
【0041】
本実施の形態の出没式筆記具1は、軸筒2内に筆記体10が前後方向に移動可能に収容され、前記軸筒2の側壁に前後方向に延びるスライド孔21が形成され、前記スライド孔21に前後方向に移動可能にクリップ体8が設けられ、ペン先没入状態から前記クリップ体8を前方に押圧操作することにより前記筆記体10のペン先を前記軸筒2の前端孔31から突出状態にし、前記ペン先突出状態から前記クリップ体8を前方に押圧操作することにより前記ペン先を没入状態にする出没機構を備えた出没式筆記具であって、前記出没機構が、前記軸筒2内部に形成されたカム部6と、前記カム部6に係合し且つ前記筆記体10の後端部を支持する回転部材7と、前記回転部材7に回転を付与するカム歯91と、前記カム歯91を備え且つ前記スライド孔21より前記軸筒2の外部に突出する前記クリップ体8と、前記軸筒2内部に収容され且つ前記筆記体10を後方に付勢する弾発体11と、を備え、前記クリップ体8と前記回転部材7とが連動して前後方向に移動可能に構成され、前記クリップ体8は、前記軸筒2外部に配置される前後方向に延びるクリップ本体81を備え、前記クリップ本体81の径方向の内面に凸部81aが形成され、前記スライド孔21より前方の前記軸筒2の側壁に、径方向に貫通する挿入孔41が形成され、ペン先突出状態において、前記挿入孔41に前記クリップ本体81の凸部81aが挿入され且つ前記回転部材7の外面と前記クリップ本体81の凸部81aとが圧接されてなる。前記構成により、筆記時のクリップ体8のがたつきを防止できる。
【0042】
本実施の形態の出没式筆記具1は、前記回転部材7の外面に複数の外向突起72が形成され、ペン先没入状態及びペン先突出状態において、前記挿入孔41に前記凸部81aが挿入され、ペン先突出状態において、前記外向突起72と前記凸部81aとが圧接され、ペン先没入状態において、前記凸部81aが前記外向突起72の相互間の回転部材7の外面の径方向外方に配置され且つ前記外向突起72と前記凸部81aとが非接触状態にされてなる。前記構成により、回転部材7とクリップ本体81の凸部81aとが常時圧接することを回避でき、回転部材7の円滑な回転が得られ、その結果、クリップ体8のスムーズな前後の操作性を維持できる。
【0043】
本実施の形態の出没式筆記具1は、前記挿入孔41の前端部に後方に突出する解除壁部43が形成され、ペン先突出状態からペン先没入状態に移行する過程で、前記解除壁部43が前記凸部81aと前記外向突起72との間に挿入されることにより、前記凸部81aと前記外向突起72との圧接が解除される。前記構成により、ペン先突出状態からペン先没入状態に移行する際の回転部材7の円滑な回転が得られ、その結果、クリップ体8のスムーズな前後の操作性を維持できる。
【符号の説明】
【0044】
1 出没式筆記具
2 軸筒
21 スライド孔
3 前軸
31 前端孔
4 中間軸
41 挿入孔
42 第1の長孔
43 解除壁部
44 ガイド溝
5 後軸
51 第2の長孔
6 カム部
61 カム歯
61a 第1カム斜面
61b 第2カム斜面
61c 係止面
62 カム溝
63 凹溝
7 回転部材
71 突条
71a カム斜面
72 外向突起
8 クリップ体
81 クリップ本体
81a 凸部
82 基部
83 軸部
9 円筒体
91 カム歯
92 ガイド突起
10 筆記体
101 ペン先
102 インキ収容管
103 尾栓
11 弾発体
12 摩擦体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8