(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174013
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/12 20060101AFI20231130BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20231130BHJP
【FI】
H02M7/12 A
H02M7/12 X
H02M7/12 W
H02M7/48 S
H02M7/48 R
H02M7/48 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086615
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】田中 功太郎
(72)【発明者】
【氏名】慶本 裕史
【テーマコード(参考)】
5H006
5H770
【Fターム(参考)】
5H006BB01
5H006BB06
5H006CA01
5H006CA02
5H006CB01
5H006CB08
5H006CC08
5H006DB01
5H006DC05
5H770DA01
5H770DA03
5H770DA10
5H770DA12
5H770DA21
5H770DA22
5H770DA24
5H770DA30
5H770DA41
5H770EA01
5H770HA03Z
5H770HA14Z
(57)【要約】
【課題】複数の変換器の直流電圧のアンバランスをより適切に抑制できる変圧器直列多重かつ直流回路分割変換器の電力変換装置を提供する。
【解決手段】交流の電力系統に対して直列に接続された複数の一次巻線と、複数の一次巻線と磁気的に結合した複数の二次巻線と、を有する変圧器と、複数の二次巻線のいずれかに接続され、変圧器を介して電力系統と接続されるとともに直流回路と接続され、電力系統の交流電力を直流電力に変換して直流回路に供給するとともに、直流回路側の直流電力を交流電力に変換して電力系統に供給する動作を行う複数の変換器と、複数の変換器の動作を制御する制御部と、を備え、制御部は、複数の変換器のそれぞれに所定の大きさの電流を交流側に出力させながら、複数の変換器のそれぞれの電荷蓄積素子の電圧値が一定になるように、複数の変換器の動作を制御する電力変換装置が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流の電力系統に対して直列に接続された複数の一次巻線と、前記複数の一次巻線と磁気的に結合した複数の二次巻線と、を有する変圧器と、
前記複数の二次巻線のいずれかに接続され、前記変圧器を介して前記電力系統と接続されるとともに、直流回路と接続され、前記電力系統の交流電力を直流電力に変換して前記直流回路に供給するとともに、前記直流回路側の直流電力を交流電力に変換して前記電力系統に供給する動作を行う複数の変換器と、
前記複数の変換器のそれぞれの動作を制御する制御部と、
を備え、
前記複数の変換器は、三相ブリッジ接続又は単相ブリッジ接続された複数のスイッチング素子と、前記複数のスイッチング素子に逆並列に接続された複数の整流素子と、前記複数のスイッチング素子のそれぞれと並列に接続された電荷蓄積素子と、前記電荷蓄積素子の電圧を検出する電圧検出器と、を有し、
前記制御部は、前記複数の変換器のそれぞれに所定の大きさの電流を交流側に出力させながら、前記複数の変換器のそれぞれの前記電荷蓄積素子の電圧値が一定になるように、前記複数の変換器のそれぞれの動作を制御する電力変換装置。
【請求項2】
前記電力系統の交流電力は、三相交流電力であり、
前記複数の変換器は、三相ブリッジ変換器であり、
前記制御部は、前記複数の変換器のそれぞれに所定の大きさの無効電流を交流側に出力させながら、前記複数の変換器のそれぞれの前記電荷蓄積素子の電圧値が一定になるように、前記複数の変換器のそれぞれの動作を制御する請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記電力系統の交流電力は、単相交流電力であり、
前記複数の変換器は、単相ブリッジ変換器であり、
前記制御部は、前記複数の変換器のそれぞれに所定の大きさの無効電流を交流側に出力させながら、前記複数の変換器のそれぞれの前記電荷蓄積素子の電圧値が一定になるように、前記複数の変換器のそれぞれの動作を制御する請求項1記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記電力系統の交流電力は、三相交流電力であり、
前記変圧器の前記複数の一次巻線は、前記電力系統の各相のそれぞれの間に複数設けられ、前記電力系統の各相のそれぞれの間に直列に接続されるとともに、前記電力系統の各相に対してデルタ結線され、
前記複数の変換器は、3台の単相ブリッジ変換器を有し、前記3台の単相ブリッジ変換器によって三相回路を構成し、
前記制御部は、前記変圧器の前記複数の一次巻線に対して零相電流を出力するように、前記複数の変換器のそれぞれに所定の大きさの電流を交流側に出力させながら、前記複数の変換器のそれぞれの前記電荷蓄積素子の電圧値が一定になるように、前記複数の変換器のそれぞれの動作を制御する請求項1記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
変圧器と、複数の変換器と、を備えた電力変換装置がある。変圧器は、直列に接続された複数の一次巻線と、複数の一次巻線のそれぞれと磁気的に結合した複数の二次巻線と、を有する。複数の一次巻線は、交流の電力系統と接続される。複数の変換器は、複数の二次巻線のいずれかに接続され、変圧器を介して電力系統と接続される。複数の変換器は、電力系統の交流電力を直流電力に変換して直流回路(負荷)に供給するとともに、直流回路側の直流電力を交流電力に変換して電力系統に供給する動作を行う。こうした電力変換装置は、例えば、変圧器直列多重かつ直流回路分割変換器の電力変換装置と呼ばれる。
【0003】
変圧器直列多重かつ直流回路分割変換器の電力変換装置において、複数の変換器のそれぞれの直流電圧が一定になるように各変換器の動作を制御するバランス制御を行う場合がある。バランス制御では、各変換器の直流電圧が直流電圧の平均値(基準値)に近付くように各変換器の動作を制御する。しかしながら、上記のような制御では、例えば、無負荷時(直流回路側に電流を流すことができない状態の時)などに、直流電圧のアンバランスを解消することが難しくなってしまう可能性がある。
【0004】
このため、変圧器直列多重かつ直流回路分割変換器の電力変換装置では、複数の変換器の直流電圧のアンバランスをより適切に抑制できるようにすることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の実施形態は、複数の変換器の直流電圧のアンバランスをより適切に抑制できる変圧器直列多重かつ直流回路分割変換器の電力変換装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態によれば、交流の電力系統に対して直列に接続された複数の一次巻線と、前記複数の一次巻線と磁気的に結合した複数の二次巻線と、を有する変圧器と、前記複数の二次巻線のいずれかに接続され、前記変圧器を介して前記電力系統と接続されるとともに、直流回路と接続され、前記電力系統の交流電力を直流電力に変換して前記直流回路に供給するとともに、前記直流回路側の直流電力を交流電力に変換して前記電力系統に供給する動作を行う複数の変換器と、前記複数の変換器のそれぞれの動作を制御する制御部と、を備え、前記複数の変換器は、三相ブリッジ接続又は単相ブリッジ接続された複数のスイッチング素子と、前記複数のスイッチング素子に逆並列に接続された複数の整流素子と、前記複数のスイッチング素子のそれぞれと並列に接続された電荷蓄積素子と、前記電荷蓄積素子の電圧を検出する電圧検出器と、を有し、前記制御部は、前記複数の変換器のそれぞれに所定の大きさの電流を交流側に出力させながら、前記複数の変換器のそれぞれの前記電荷蓄積素子の電圧値が一定になるように、前記複数の変換器のそれぞれの動作を制御する電力変換装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態によれば、複数の変換器の直流電圧のアンバランスをより適切に抑制できる変圧器直列多重かつ直流回路分割変換器の電力変換装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態に係る電力変換装置を模式的に表す回路図である。
【
図2】第1の実施形態に係る制御部の一例を模式的に表すブロック図である。
【
図3】第2の実施形態に係る電力変換装置を模式的に表す回路図である。
【
図4】第2の実施形態に係る制御部の一例を模式的に表すブロック図である。
【
図5】第3の実施形態に係る電力変換装置を模式的に表す回路図である。
【
図6】第3の実施形態に係る制御部の一例を模式的に表すブロック図である。
【0010】
以下に、各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る電力変換装置を模式的に表す回路図である。
図1に表したように、電力変換装置10は、変圧器12と、複数の変換器14と、制御部16と、を備える。
【0012】
変圧器12は、直列に接続された複数の一次巻線12aと、複数の一次巻線12aと磁気的に結合した複数の二次巻線12bと、を有する。複数の二次巻線12bの数は、例えば、複数の一次巻線12aの数と同じである。但し、例えば、1つの一次巻線12aに対して複数の二次巻線12bを磁気的に結合させてもよい。複数の二次巻線12bの数は、複数の一次巻線12aの数と異なってもよい。
【0013】
複数の一次巻線12aは、交流の電力系統2と接続される。電力系統2の交流電力は、三相交流電力である。より詳しくは、平衡三相交流電力である。複数の一次巻線12aは、電力系統2の各相のそれぞれの間に複数設けられ、電力系統2の各相のそれぞれの間に直列に接続されている。複数の一次巻線12aは、例えば、電力系統2の各相に対してデルタ結線されている。なお、電力系統2の交流電力は、三相交流電力に限ることなく、単相交流電力などでもよい。また、電力系統2の交流電力が三相交流電力である場合、複数の一次巻線12aは、例えば、電力系統2の各相に対してスター結線としてもよい。
【0014】
複数の変換器14は、複数の二次巻線12bのいずれかに接続され、変圧器12を介して電力系統2と接続される。また、複数の変換器14のそれぞれは、電力系統2と接続されるとともに、直流回路4(負荷)と接続される。
【0015】
複数の変換器14は、電力系統2の交流電力を直流電力に変換して直流回路4に供給するとともに、直流回路4側の直流電力を交流電力に変換して電力系統2に供給する動作を行う。
【0016】
電力変換装置10では、変圧器12の一次側(電力系統側)が直列に接続されている。また、電力変換装置10では、複数の変換器14のそれぞれが、直流回路4側に出力する電力の大きさを個別に制御可能である。こうした電力変換装置10は、例えば、変圧器直列多重かつ直流回路分割変換器の電力変換装置と呼ばれる。
【0017】
なお、この例では、複数の直流回路4が設けられ、複数の変換器14のそれぞれの直流側が、複数の直流回路4のそれぞれと接続されている。これに限ることなく、例えば、複数の変換器14のそれぞれの直流側を直列に接続し、複数の変換器14のそれぞれの直流側を1つの直流回路4に接続してもよい。複数の変換器14に接続される直流回路4の数は、任意の数でよい。
【0018】
変圧器12は、例えば、1台の変換器14に対して3つの一次巻線12aと、3つの二次巻線12bと、を有する。1台の変換器14に対する3つの一次巻線12aは、例えば、オープンデルタ結線されている。3つの二次巻線12bのそれぞれは、3つの一次巻線12aのそれぞれと個別に磁気的に結合している。3つの二次巻線12bは、クローズデルタ結線されている。なお、1台の変換器14に対する3つの二次巻線12bは、例えば、スター結線としてもよい。
【0019】
各変換器14は、例えば、三相ブリッジ接続された6つのスイッチング素子20と、各スイッチング素子20のそれぞれに逆並列に接続された6つの整流素子21と、各スイッチング素子20のそれぞれと並列に接続された電荷蓄積素子22と、電荷蓄積素子22の電圧を検出する電圧検出器23と、を有する。
【0020】
各スイッチング素子20は、一対の主端子と、制御端子と、を有し、制御端子に入力される信号(電圧)に応じて、一対の主端子間に電流を流すオン状態と、一対の主端子間に流れる電流を遮断するオフ状態と、を切り替える。各変換器14は、各スイッチング素子20のオン状態及びオフ状態を切り替えることにより、交流電力から直流電力への変換及び直流電力から交流電力への変換を行う。各スイッチング素子20は、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの自励式のスイッチング素子である。各変換器14は、例えば、自励式の変換器である。なお、オフ状態は、一対の主端子間に全く電流が流れない状態に限ることなく、変換器14の動作に影響の無い範囲の微弱な電流が主端子間に流れる状態でもよい。
【0021】
各変換器14は、いわゆる三相ブリッジ変換器である。各変換器14では、ハイサイド側のスイッチング素子20とローサイド側のスイッチング素子20との接続点が交流出力点となり、ハイサイド側のスイッチング素子20及びローサイド側のスイッチング素子20の両端が直流出力点となる。
【0022】
各変換器14は、一対の直流出力点において直流回路4と接続され、3つの交流出力点において3つの二次巻線12bと接続される。この例では、3つの交流出力点のそれぞれが、クローズデルタ結線された3つの二次巻線12bの3つの接続点のそれぞれと接続される。これにより、電力系統2から各変換器14への交流電力の供給、及び各変換器14から電力系統2への交流電力の供給が、変圧器12を介して可能となる。
【0023】
但し、変圧器12の構成及び各変換器14の構成は、上記に限定されるものではない。変圧器12の構成は、一次側を直列に接続し、電力系統2と各変換器14との間での交流電力の授受を可能とする任意の構成でよい。各変換器14の構成は、交流電力から直流電力への変換及び直流電力から交流電力への変換を複数の変換器14のそれぞれにおいて個別に行うことが可能な任意の構成でよい。
【0024】
制御部16は、各変換器14のそれぞれの動作を制御する。制御部16は、例えば、信号線を介して各変換器14と接続され、各変換器14に制御信号を入力し、各スイッチング素子20のオン状態及びオフ状態の切り替えを制御することにより、各変換器14の動作を制御する。
【0025】
各変換器14は、電圧検出器23で検出した電荷蓄積素子22の電圧値を制御部16に送信する。制御部16は、各変換器14から受信した電荷蓄積素子22の電圧値などを基に、制御信号の生成を行う。これにより、制御部16は、各変換器14の電荷蓄積素子22の電圧値が実質的に同じ値となるように各変換器14の動作を制御するバランス制御を行う。
【0026】
図2は、第1の実施形態に係る制御部の一例を模式的に表すブロック図である。
図2に表したように、制御部16は、平均値演算回路40と、直流平均電圧制御器41と、電流制御器42と、減算回路43と、直流バランス制御器44と、符号判定回路45、46と、乗算回路47、48と、加算回路50a~50n、51a~51nと、変換回路52a~52nと、制御信号生成回路53a~53nと、を有する。
【0027】
制御部16は、各変換器14から受信した電荷蓄積素子22の電圧値の情報を平均値演算回路40に入力する。平均値演算回路40は、入力された各変換器14の電荷蓄積素子22の電圧値の平均値を演算し、演算した平均値を直流平均電圧制御器41及び減算回路43に入力する。
【0028】
直流平均電圧制御器41には、各変換器14の電荷蓄積素子22の電圧値の平均値が入力されるとともに、目標とする平均値を表す平均値の指令値が入力される。平均値の指令値は、直流平均電圧制御器41に予め入力されていてもよいし、上位のコントローラなどから直流平均電圧制御器41に入力することにより、任意に変更できるようにしてもよい。直流平均電圧制御器41への平均値の指令値の入力方法は、平均値の指令値を直流平均電圧制御器41に適切に入力可能な任意の方法でよい。
【0029】
直流平均電圧制御器41は、平均値演算回路40から入力された各変換器14の電荷蓄積素子22の電圧値の平均値と、平均値の指令値と、の差分を演算するとともに、演算した差分をゼロにするために各変換器14から出力する有効電流の大きさを表す有効電流指令値を演算する。換言すれば、直流平均電圧制御器41は、各変換器14の電荷蓄積素子22の電圧値の平均値を平均値の指令値に近付けるための有効電流指令値を演算する。
【0030】
有効電流指令値は、換言すれば、三相の電流信号を回転座標系の信号に変換(dq変換)した際のd軸成分の電流指令値である。直流平均電圧制御器41は、例えば、比例積分の演算により、差分から有効電流指令値を演算する。但し、有効電流指令値の演算方法は、これに限ることなく、差分から有効電流指令値を適切に演算することが可能な任意の演算方法でよい。直流平均電圧制御器41は、演算した有効電流指令値を電流制御器42及び符号判定回路45に入力する。
【0031】
電流制御器42には、直流平均電圧制御器41で演算された有効電流指令値が入力されるとともに、各変換器14から出力する無効電流の大きさを表す無効電流指令値が入力される。無効電流指令値は、換言すれば、三相の電流信号を回転座標系の信号に変換した際のq軸成分の電流指令値である。無効電流指令値は、電流制御器42に予め入力されていてもよいし、上位のコントローラなどから電流制御器42に入力することにより、任意に変更できるようにしてもよい。電流制御器42への無効電流指令値の入力方法は、無効電流指令値を電流制御器42に適切に入力可能な任意の方法でよい。
【0032】
各変換器14から出力する無効電流は、例えば、変圧器12の励磁電流に応じて設定される。無効電流指令値は、例えば、変圧器12の励磁電流分を各変換器14側から供給するように設定される。この例では、変圧器12の複数の一次巻線12aが、電力系統2の各相に対してデルタ結線されている。このため、各変換器14の交流側に所定の大きさの無効電流を出力すると、変圧器12を介して電力系統2にも無効電力が出力される。
【0033】
各変換器14から電力系統2に出力可能な無効電流の大きさは、制限されている場合がある。変圧器12の励磁電流分程度は、許容されている場合が多いが、このように、電力系統2に出力可能な無効電力の大きさが制限されている場合には、各変換器14から出力する無効電流の大きさは、許容された範囲内に設定する必要がある。換言すれば、無効電流指令値は、電力系統2への出力が許容された範囲内に設定される。
【0034】
但し、無効電流指令値は、上記に限ることなく、各変換器14から所定の大きさの無効電流を出力させる任意の値に設定すればよい。なお、電力変換装置10では、変圧器12の一次側が直列に接続されているため、各変換器14の交流側には、実質的に同じ大きさの電流が流れる。無効電流指令値は、より詳しくは、各変換器14のそれぞれから出力する無効電流の大きさを表す。
【0035】
電流制御器42は、入力された有効電流指令値及び無効電流指令値を基に、各変換器14から交流側に出力する有効成分の電圧の大きさを表す電圧指令値及び無効成分の電圧の大きさを表す電圧指令値を演算する。すなわち、電流制御器42は、有効電流指令値に応じた大きさの有効電流及び無効電流指令値に応じた大きさの無効電流を各変換器14の交流側に出力するための有効成分の電圧指令値及び無効成分の電圧指令値を演算する。有効成分の電圧指令値は、換言すれば、d軸成分の電圧指令値である。無効成分の電圧指令値は、換言すれば、q軸成分の電圧指令値である。電流制御器42は、例えば、比例演算などにより、有効電流指令値及び無効電流指令値から有効成分の電圧指令値及び無効成分の電圧指令値を演算する。但し、電圧指令値の演算方法は、これに限ることなく、任意の方法でよい。
【0036】
電流制御器42は、演算した有効成分の電圧指令値を複数の加算回路50a~50nに入力し、演算した無効成分の電圧指令値を複数の加算回路51a~51nに入力する。なお、
図2では、便宜的に図示を簡略化しているが、加算回路50a~50n、加算回路51a~51n、変換回路52a~52n、及び制御信号生成回路53a~53nは、複数の変換器14のそれぞれに対応して設けられる。これらの各回路の数は、例えば、各変換器14の数と同じである。
【0037】
減算回路43には、各変換器14の電荷蓄積素子22の電圧値の平均値が入力されるとともに、各変換器14から受信した電荷蓄積素子22の電圧値が入力される。減算回路43は、各変換器14のそれぞれについて、電荷蓄積素子22の電圧値と平均値との差分を演算する。減算回路43は、演算した各変換器14の差分を直流バランス制御器44に入力する。なお、減算回路43に入力される平均値は、平均値演算回路40で演算された平均値に限ることなく、直流平均電圧制御器41に入力される平均値の指令値でもよい。
【0038】
直流バランス制御器44は、複数の変換器14のそれぞれについて、減算回路43から入力された差分をゼロにするために該当する変換器14から出力する有効成分の電圧の補正値及び無効成分の電圧の補正値を演算する。すなわち、直流バランス制御器44は、各変換器14のそれぞれの電荷蓄積素子22の電圧値を平均値に近付けるための補正値を演算する。
【0039】
電力変換装置10では、上記のように、各変換器14の交流側に実質的に同じ大きさの電流が流れるため、各変換器14から出力する電流の大きさを個別に調整することは難しい。従って、電力変換装置10では、各変換器14から交流側に出力する電圧の大きさ(振幅)を個別に調整する。換言すれば、交流側に所定の大きさの電流を流す場合に、各変換器14の分担する電圧の大きさを調整する。
【0040】
制御部16は、電荷蓄積素子22の電圧値が平均値よりも大きい変換器14については、分担する有効成分の電圧の大きさが大きくなるようにし、電荷蓄積素子22の電圧値が平均値よりも小さい変換器14については、分担する有効成分の電圧の大きさが小さくなるように、各変換器14の分担する電圧の大きさを調整する。これにより、分担の大きい変換器14の電荷蓄積素子22の電圧値を低下させ、分担の小さい変換器14の電荷蓄積素子22の電圧値を上昇させる。これにより、複数の変換器14のそれぞれの電荷蓄積素子22の電圧値(直流電圧)が一定になるように、各変換器14の動作を制御するバランス制御を行うことができる。複数の変換器14の直流電圧のアンバランスを抑制することができる。
【0041】
直流バランス制御器44は、例えば、比例積分の演算により、差分から有効成分の電圧の補正値及び無効成分の電圧の補正値を演算する。但し、各補正値の演算方法は、これに限ることなく、差分から各補正値を適切に演算することが可能な任意の演算方法でよい。
【0042】
直流バランス制御器44は、演算した各変換器14の有効成分の電圧の補正値を乗算回路47に入力する。また、直流バランス制御器44は、演算した各変換器14の無効成分の電圧の補正値を乗算回路48に入力する。
【0043】
符号判定回路45は、直流平均電圧制御器41から入力された有効電流指令値の符号を判定し、判定結果を乗算回路47に入力する。符号判定回路45は、例えば、-1、0、1のいずれかを判定結果として乗算回路47に入力する。この際、符号判定回路45は、符号の判定に不感帯を設ける。符号判定回路45は、有効電流指令値の0±所定の範囲を0として出力する。これにより、例えば、有効電流指令値の0付近において、符号が頻繁に変化してしまうことを抑制することができる。これにより、各変換器14の動作をより安定させることができる。例えば、電荷蓄積素子22の電圧値が増減を繰り返して安定しなくなってしまうことなどを抑制することができる。但し、不感帯は、必ずしも設けなくてもよい。
【0044】
制御部16は、無効電流指令値を電流制御器42に入力するとともに、符号判定回路46に入力する。符号判定回路46は、入力された無効電流指令値の符号を判定し、判定結果を乗算回路48に入力する。符号判定回路46は、例えば、-1、0、1のいずれかを判定結果として乗算回路48に入力する。また、符号判定回路46は、符号判定回路45と同様に、符号の判定に不感帯を設ける。符号判定回路46においても、不感帯は、必ずしも設けなくてもよい。
【0045】
乗算回路47は、直流バランス制御器44から入力された各変換器14の有効成分の電圧の補正値のそれぞれに対し、符号判定回路45から入力された符号を乗算する。乗算回路47は、乗算後の各補正値を各加算回路50a~50nに入力する。
【0046】
乗算回路47は、1段目の変換器14に対応する補正値を、1段目の変換器14に対応する加算回路50aに入力する。乗算回路47は、2段目以降の変換器14に対応する加算回路にも同様に補正値を入力し、n段目の変換器14に対応する補正値を、n段目の変換器14に対応する加算回路50nに入力する。
【0047】
乗算回路48は、直流バランス制御器44から入力された各変換器14の無効成分の電圧の補正値のそれぞれに対し、符号判定回路46から入力された符号を乗算する。乗算回路48は、乗算後の各補正値を各加算回路51a~51nに入力する。
【0048】
乗算回路48は、1段目の変換器14に対応する補正値を、1段目の変換器14に対応する加算回路51aに入力する。乗算回路48は、2段目以降の変換器14に対応する加算回路にも同様に補正値を入力し、n段目の変換器14に対応する補正値を、n段目の変換器14に対応する加算回路51nに入力する。
【0049】
各加算回路50a~50nは、電流制御器42から入力された有効成分の電圧指令値に、乗算回路47から入力された有効成分の電圧の補正値を加算する。これにより、各変換器14の電荷蓄積素子22の電圧値と平均値との差分に応じて、各変換器14のそれぞれの有効成分の電圧指令値を補正することができる。各加算回路50a~50nは、補正値を加算した後の有効成分の電圧指令値を、各変換器14のそれぞれに対応する変換回路52a~52nに入力する。例えば、加算回路50aは、有効成分の電圧指令値を変換回路52aに入力する。
【0050】
各加算回路51a~51nは、電流制御器42から入力された無効成分の電圧指令値に、乗算回路48から入力された無効成分の電圧の補正値を加算する。これにより、各変換器14の電荷蓄積素子22の電圧値と平均値との差分に応じて、各変換器14のそれぞれの無効成分の電圧指令値を補正することができる。各加算回路51a~51nは、補正値を加算した後の無効成分の電圧指令値を、各変換器14のそれぞれに対応する変換回路52a~52nに入力する。例えば、加算回路51aは、無効成分の電圧指令値を変換回路52aに入力する。
【0051】
各変換回路52a~52nは、加算回路50a~50nから入力された有効成分の電圧指令値と、加算回路51a~51nから入力された無効成分の電圧指令値と、を基に、各変換器14から出力する三相の瞬時値電圧信号を演算する。各変換回路52a~52nは、例えば、逆dq変換(逆Park変換、逆Clarke変換)などの演算を行うことにより、有効成分の電圧指令値及び無効成分の電圧指令値から三相の瞬時値電圧信号を演算する。各変換回路52a~52nは、演算した三相の瞬時値電圧信号を各変換器14のそれぞれに対応する制御信号生成回路53a~53nに入力する。例えば、変換回路52aは、三相の瞬時値電圧信号を制御信号生成回路53aに入力する。
【0052】
各制御信号生成回路53a~53nは、各変換回路52a~52nから入力された三相の瞬時値電圧信号に応じた電圧を各変換器14から出力するための制御信号を生成し、生成した制御信号を各変換器14に入力する。これにより、各制御信号生成回路53a~53nは、三相の瞬時値電圧信号に応じた電圧を各変換器14に出力させる。
【0053】
各制御信号生成回路53a~53nは、例えば、三相の瞬時値電圧信号を基に、正弦波パルス幅変調制御を行うことにより、各変換器14の各スイッチング素子20のスイッチングを制御するための制御信号を生成する。但し、各制御信号生成回路53a~53nの構成は、これに限ることなく、三相の瞬時値電圧信号に応じた電圧を各変換器14から出力するための制御信号を生成可能な任意の構成でよい。
【0054】
以上、説明したように、本実施形態に係る電力変換装置10では、制御部16が、複数の変換器14のそれぞれに所定の大きさの電流を交流側に出力させながら、複数の変換器14のそれぞれの電荷蓄積素子22の電圧値が一定になるように、複数の変換器14のそれぞれの動作を制御する。この例では、制御部16は、複数の変換器14のそれぞれに無効電流指令値に応じた所定の大きさの無効電流を交流側に出力させながら、複数の変換器14のそれぞれの電荷蓄積素子22の電圧値が一定になるように、複数の変換器14のそれぞれの動作を制御する。
【0055】
これにより、例えば、無負荷時(直流回路4側に電流を流すことができない状態の時)などにおいても、交流側に出力する電流に基づいて、複数の変換器14のそれぞれの電荷蓄積素子22の電圧値のアンバランスを適切に抑制することができる。例えば、電力変換装置10の運用の安定性をより向上させることができる。このように、本実施形態によれば、変圧器直列多重かつ直流回路分割変換器の電力変換装置10において、複数の変換器14の直流電圧のアンバランスをより適切に抑制できる電力変換装置10を提供することができる。
【0056】
なお、電流制御器42及び符号判定回路46に入力される無効電流指令値は、一定でもよいし、変化させてもよい。換言すれば、制御部16は、各変換器14に所定の大きさの電流を交流側に連続的に出力させてもよいし、断続的に出力させてもよい。制御部16は、例えば、各変換器14の出力などに応じて、各変換器14に所定の大きさの電流を交流側に出力させたり、出力させなかったりしてもよい。
【0057】
制御部16は、例えば、各変換器14の電荷蓄積素子22の電圧値の偏差(バラツキ)が所定の閾値未満の際に、各変換器14に交流側に電流を出力させないようにし、各変換器14の電荷蓄積素子22の電圧値の偏差が所定の閾値以上の際に、各変換器14に交流側に電流を出力させるようにしてもよい。
【0058】
また、制御部16は、例えば、直流回路4側に電流を流すことで複数の変換器14の直流電圧のアンバランスを抑制できる場合に、各変換器14に交流側に電流を出力させないようにし、直流回路4側に電流を流すことができない場合に、各変換器14に交流側に電流を出力させるようにしてもよい。
【0059】
(第2の実施形態)
図3は、第2の実施形態に係る電力変換装置を模式的に表す回路図である。
図3に表したように、電力変換装置110は、変圧器112と、複数の変換器114と、制御部116と、を備える。
【0060】
変圧器112は、直列に接続された複数の一次巻線112aと、複数の一次巻線112aと磁気的に結合した複数の二次巻線112bと、を有する。なお、上記第1の実施形態と同様に、複数の二次巻線112bの数は、複数の一次巻線112aの数と同じでもよいし、異なってもよい。
【0061】
複数の一次巻線112aは、交流の電力系統102と接続される。この例において、電力系統102の交流電力は、単相交流電力である。複数の一次巻線112aは、電力系統102の線間に直列に接続されている。
【0062】
複数の変換器114は、複数の二次巻線112bのいずれかに接続され、変圧器112を介して電力系統102と接続される。また、複数の変換器114のそれぞれは、電力系統102と接続されるとともに、直流回路104(負荷)と接続される。
【0063】
複数の変換器114は、上記第1の実施形態の変換器14と同様に、電力系統102の交流電力を直流電力に変換して直流回路104に供給するとともに、直流回路104側の直流電力を交流電力に変換して電力系統102に供給する動作を行う。電力変換装置110も、上記第1の実施形態の電力変換装置10と同様に、変圧器直列多重かつ直流回路分割変換器の電力変換装置である。
【0064】
変圧器112は、例えば、1台の変換器114に対して1つの一次巻線112aと、1つの二次巻線112bと、を有する。各一次巻線112aは、上記のように、電力系統102の線間に直列に接続されている。複数の二次巻線112bのそれぞれは、複数の一次巻線112aのそれぞれと個別に磁気的に結合している。
【0065】
各変換器114は、例えば、単相ブリッジ接続された4つのスイッチング素子120と、各スイッチング素子120のそれぞれに逆並列に接続された4つの整流素子121と、各スイッチング素子120のそれぞれと並列に接続された電荷蓄積素子122と、電荷蓄積素子122の電圧を検出する電圧検出器123と、を有する。各スイッチング素子120には、各スイッチング素子20と同様の素子が用いられる。
【0066】
各変換器114は、いわゆる単相ブリッジ変換器である。各変換器114では、ハイサイド側のスイッチング素子120とローサイド側のスイッチング素子120との接続点が交流出力点となり、ハイサイド側のスイッチング素子120及びローサイド側のスイッチング素子120の両端が直流出力点となる。
【0067】
各変換器114は、一対の直流出力点において直流回路104と接続され、一対の交流出力点において二次巻線112bの両端と接続される。これにより、電力系統102から各変換器114への交流電力の供給、及び各変換器114から電力系統102への交流電力の供給が、変圧器112を介して可能となる。
【0068】
制御部116は、各変換器114のそれぞれの動作を制御する。上記第1の実施形態と同様に、制御部116は、信号線を介して各変換器114と接続され、各変換器114に制御信号を入力し、各スイッチング素子120のオン状態及びオフ状態の切り替えを制御することにより、各変換器114の動作を制御する。各変換器114は、電圧検出器123で検出した電荷蓄積素子122の電圧値を制御部116に送信する。制御部116は、各変換器114から受信した電荷蓄積素子122の電圧値などを基に、制御信号の生成を行い、各変換器114の電荷蓄積素子122の電圧値が実質的に同じ値となるように各変換器114の動作を制御するバランス制御を行う。
【0069】
図4は、第2の実施形態に係る制御部の一例を模式的に表すブロック図である。
図4に表したように、制御部116では、上記第1の実施形態の制御部16の複数の変換回路52a~52n及び複数の制御信号生成回路53a~53nが、複数の変換回路152a~152n及び複数の制御信号生成回路153a~153nにそれぞれ置き換えられている。なお、制御部116において、上記第1の実施形態の制御部16と機能・構成上実質的に同じものについては、同符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0070】
各変換回路152a~152nは、加算回路50a~50nから入力された有効成分の電圧指令値と、加算回路51a~51nから入力された無効成分の電圧指令値と、を基に、各変換器114から出力する単相の瞬時値電圧信号を演算する。各変換回路152a~152nは、例えば、逆dq変換(逆Park変換)などの演算を行うことにより、有効成分の電圧指令値及び無効成分の電圧指令値から単相の瞬時値電圧信号を演算する。各変換回路152a~152nは、演算した単相の瞬時値電圧信号を各変換器114のそれぞれに対応する制御信号生成回路153a~153nに入力する。例えば、変換回路152aは、単相の瞬時値電圧信号を制御信号生成回路153aに入力する。
【0071】
各制御信号生成回路153a~153nは、各変換回路152a~152nから入力された単相の瞬時値電圧信号に応じた電圧を各変換器114から出力するための制御信号を生成し、生成した制御信号を各変換器114に入力する。これにより、各制御信号生成回路153a~153nは、単相の瞬時値電圧信号に応じた電圧を各変換器114に出力させる。
【0072】
各制御信号生成回路153a~153nは、例えば、単相の瞬時値電圧信号を基に、正弦波パルス幅変調制御を行うことにより、各変換器114の各スイッチング素子120のスイッチングを制御するための制御信号を生成する。但し、各制御信号生成回路153a~153nの構成は、これに限ることなく、単相の瞬時値電圧信号に応じた電圧を各変換器114から出力するための制御信号を生成可能な任意の構成でよい。
【0073】
このように、制御部116の構成は、有効成分の電圧指令値及び無効成分の電圧指令値に対する瞬時値電圧信号の演算の仕方が異なるのみで、第1の実施形態の制御部16の構成とほぼ同じとすることができる。
【0074】
この例では、変圧器112の複数の一次巻線112aが、電力系統102の線間に直列に接続されている。このため、各変換器114の交流側に所定の大きさの無効電流を出力すると、変圧器112を介して電力系統102にも無効電力が出力される。
【0075】
制御部116は、上記第1の実施形態の制御部16と同様に、複数の変換器114のそれぞれに無効電流指令値に応じた所定の大きさの無効電流を交流側に出力させながら、複数の変換器114のそれぞれの電荷蓄積素子122の電圧値が一定になるように、複数の変換器114のそれぞれの動作を制御する。
【0076】
これにより、電力変換装置110でも、無負荷時(直流回路104側に電流を流すことができない状態の時)などにおいても、複数の変換器114のそれぞれの電荷蓄積素子122の電圧値のアンバランスを適切に抑制することができる。
【0077】
このように、各変換器114の構成は、三相ブリッジ変換器に限ることなく、単相ブリッジ変換器でもよい。複数の変換器の構成は、三相ブリッジ接続又は単相ブリッジ接続された複数のスイッチング素子と、複数のスイッチング素子に逆並列に接続された複数の整流素子と、複数のスイッチング素子のそれぞれと並列に接続された電荷蓄積素子と、電荷蓄積素子の電圧を検出する電圧検出器と、を有する構成でよい。
【0078】
電力変換装置110においても、電流制御器42及び符号判定回路46に入力される無効電流指令値は、一定でもよいし、変化させてもよい。制御部116は、各変換器114に所定の大きさの電流を交流側に連続的に出力させてもよいし、断続的に出力させてもよい。
【0079】
(第3の実施形態)
図5は、第3の実施形態に係る電力変換装置を模式的に表す回路図である。
図5に表したように、電力変換装置210は、変圧器212と、複数の変換器214と、制御部216と、を備える。
【0080】
変圧器212は、直列に接続された複数の一次巻線212aと、複数の一次巻線212aと磁気的に結合した複数の二次巻線212bと、を有する。なお、上記各実施形態と同様に、複数の二次巻線212bの数は、複数の一次巻線212aの数と同じでもよいし、異なってもよい。
【0081】
複数の一次巻線212aは、交流の電力系統202と接続される。この例において、電力系統202の交流電力は、三相交流電力である。複数の一次巻線212aは、電力系統202の各相のそれぞれの間に複数設けられ、電力系統202の各相のそれぞれの間に直列に接続されている。複数の一次巻線212aは、例えば、電力系統202の各相に対してデルタ結線されている。
【0082】
複数の変換器214は、複数の二次巻線212bのいずれかに接続され、変圧器212を介して電力系統202と接続される。また、複数の変換器214のそれぞれは、電力系統202と接続されるとともに、直流回路204(負荷)と接続される。
【0083】
複数の変換器214は、上記各実施形態と同様に、電力系統202の交流電力を直流電力に変換して直流回路204に供給するとともに、直流回路204側の直流電力を交流電力に変換して電力系統202に供給する動作を行う。電力変換装置210も、上記各実施形態と同様に、変圧器直列多重かつ直流回路分割変換器の電力変換装置である。
【0084】
変圧器212は、例えば、1台の変換器214に対して3つの一次巻線212aと、3つの二次巻線212bと、を有する。3つの二次巻線212bのそれぞれは、3つの一次巻線212aのそれぞれと個別に磁気的に結合している。
【0085】
各変換器214は、3台の単相ブリッジ変換器214a~214cと、電荷蓄積素子222と、電圧検出器223と、を有する。このように、各変換器214は、3台の単相ブリッジ変換器214a~214cによって三相回路を構成する。
【0086】
各単相ブリッジ変換器214a~214cは、単相ブリッジ接続された4つのスイッチング素子220と、各スイッチング素子220のそれぞれに逆並列に接続された4つの整流素子221と、を有する。各スイッチング素子220には、各スイッチング素子20などと同様の素子が用いられる。
【0087】
各単相ブリッジ変換器214a~214cの一対の直流出力点は、並列に接続されている。各単相ブリッジ変換器214a~214cは、一対の直流出力点を介して直流回路204と接続される。
【0088】
電荷蓄積素子222は、各単相ブリッジ変換器214a~214cのそれぞれの直流側に設けられ、各スイッチング素子220のそれぞれと並列に接続される。電荷蓄積素子222は、各単相ブリッジ変換器214a~214cのそれぞれの一対の直流出力点の間に設けられる。電圧検出器223は、電荷蓄積素子222の電圧を検出する。
【0089】
各単相ブリッジ変換器214a~214cのそれぞれの一対の交流出力点は、3つの二次巻線112bの両端とそれぞれ接続される。これにより、電力系統202から各変換器214への交流電力の供給、及び各変換器214から電力系統202への交流電力の供給が、変圧器212を介して可能となる。
【0090】
制御部216は、各変換器214のそれぞれの動作を制御する。上記各実施形態と同様に、制御部216は、信号線を介して各変換器214と接続され、各変換器214に制御信号を入力し、各スイッチング素子220のオン状態及びオフ状態の切り替えを制御することにより、各変換器214の動作を制御する。各変換器214は、電圧検出器223で検出した電荷蓄積素子222の電圧値を制御部216に送信する。制御部216は、各変換器214から受信した電荷蓄積素子222の電圧値などを基に、制御信号の生成を行い、各変換器214の電荷蓄積素子222の電圧値が実質的に同じ値となるように各変換器214の動作を制御するバランス制御を行う。
【0091】
電力変換装置210では、制御部216は、変圧器212の複数の一次巻線212aに対して零相電流を出力するように、複数の変換器214のそれぞれに所定の大きさの電流を交流側に出力させながら、複数の変換器214のそれぞれの電荷蓄積素子222の電圧値が一定になるように、複数の変換器214のそれぞれの動作を制御する。制御部16は、変圧器212の各一次巻線212aに出力する零相成分の電流を利用して、複数の変換器214のそれぞれの電荷蓄積素子222の電圧値のアンバランスを抑制する。
【0092】
上記のように、電力変換装置210では、変圧器212の複数の一次巻線212aが、電力系統202の各相に対してデルタ結線され、複数の変換器214が、3台の単相ブリッジ変換器214a~214cによって三相回路を構成している。
【0093】
このように変圧器212及び各変換器214が構成されている場合、各変換器214の動作を制御することにより、変圧器212の各一次巻線212aに零相電流を出力することができる。すなわち、デルタ結線した各一次巻線212aを循環させるように、各一次巻線212aに電流を流すことができる。これにより、各変換器214の交流側に電流を出力しつつも、電力系統202側に電流が流れてしまうことを抑制することができる。例えば、電力系統202に無効電流が出力され、電力系統202の電圧や周波数に影響を与えてしまうことを抑制することができる。
【0094】
図6は、第3の実施形態に係る制御部の一例を模式的に表すブロック図である。
図6に表したように、制御部216は、積分回路260と、正弦関数回路261と、乗算回路262と、加算回路263と、加算回路264a~264nと、を有する。また、制御部216では、上記第1の実施形態の制御部16の電流制御器42、直流バランス制御器44、符号判定回路46、及び乗算回路48が、電流制御器242、直流バランス制御器244、符号判定回路246、及び乗算回路248にそれぞれ置き換えられている。また、制御部216では、各加算回路51a~51nが省略されている。なお、制御部216において、上記第1の実施形態の制御部16と機能・構成上実質的に同じものについては、同符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0095】
制御部216は、変圧器212の複数の一次巻線212aに出力する零相電流の周波数を表す零相電流周波数指令値を積分回路260に入力する。零相電流周波数指令値は、制御部216に予め入力されていてもよいし、上位のコントローラなどから制御部216に入力することにより、任意に変更できるようにしてもよい。零相電流周波数指令値の表す周波数の値は、任意の値でよい。
【0096】
積分回路260は、入力された零相電流周波数指令値を積分することにより、零相電流周波数指令値から角周波数ωを演算する。積分回路260は、演算した角周波数ωを正弦関数回路261に入力する。
【0097】
正弦関数回路261は、積分回路260から入力された角周波数ωを基に、sinωを演算し、演算したsinωを乗算回路262及び符号判定回路246に入力する。
【0098】
制御部216は、変圧器212の複数の一次巻線212aに出力する零相電流の振幅Aを表す零相電流振幅指令値を乗算回路262に入力する。零相電流振幅指令値は、制御部216に予め入力されていてもよいし、上位のコントローラなどから制御部216に入力することにより、任意に変更できるようにしてもよい。零相電流振幅指令値の表す振幅Aの値は、任意の値でよい。
【0099】
乗算回路262は、零相電流振幅指令値、及び正弦関数回路261から入力されたsinωを基に、Asinωを演算し、演算したAsinωを零相電流指令値として電流制御器242に入力する。Asinωは、換言すれば、各一次巻線212aに出力する零相電流の瞬時値である。
【0100】
電流制御器242には、直流平均電圧制御器41で演算された有効電流指令値、及び乗算回路262で演算された零相電流指令値が入力されるとともに、各変換器214から出力する無効電流の大きさを表す無効電流指令値が入力される。この例では、無効電流指令値は、ゼロに設定される。すなわち、この例では、各変換器214から交流側に無効電流を出力しないように設定される。但し、無効電流指令値は、必ずしもゼロでなくてもよい。
【0101】
電流制御器242は、入力された有効電流指令値、無効電流指令値、及び零相電流指令値を基に、各変換器14から交流側に出力する有効成分の電圧の大きさを表す電圧指令値、無効成分の電圧の大きさを表す電圧指令値、及び零相成分の電圧の大きさを表す電圧指令値を演算する。電流制御器242は、例えば、比例演算などにより、有効電流指令値、無効電流指令値、及び零相電流指令値から有効成分の電圧指令値、無効成分の電圧指令値、及び零相成分の電圧指令値を演算する。但し、各電圧指令値の演算方法は、これに限ることなく、任意の方法でよい。
【0102】
電流制御器242は、演算した有効成分の電圧指令値を複数の加算回路50a~50nに入力し、演算した無効成分の電圧指令値を複数の変換回路52a~52nに入力し、演算した零相成分の電圧指令値を加算回路263に入力する。
【0103】
直流バランス制御器244は、複数の変換器214のそれぞれについて、減算回路43から入力された差分をゼロにするために該当する変換器214から出力する有効成分の電圧の補正値及び零相成分の電圧の補正値を演算する。すなわち、直流バランス制御器244は、各変換器214のそれぞれの電荷蓄積素子222の電圧値を平均値に近付けるための補正値を演算する。
【0104】
直流バランス制御器244は、例えば、比例積分の演算により、差分から有効成分の電圧の補正値及び零相成分の電圧の補正値を演算する。但し、各補正値の演算方法は、これに限ることなく、差分から各補正値を適切に演算することが可能な任意の演算方法でよい。
【0105】
直流バランス制御器244は、演算した各変換器214の有効成分の電圧の補正値を乗算回路47に入力する。また、直流バランス制御器244は、演算した各変換器14の零相成分の電圧の補正値を乗算回路248に入力する。
【0106】
符号判定回路246は、正弦関数回路261から入力されたsinωの符号を判定し、判定結果を乗算回路248に入力する。符号判定回路246は、例えば、-1、0、1のいずれかを判定結果として乗算回路248に入力する。また、符号判定回路246は、符号の判定に不感帯を設ける。符号判定回路246においても、不感帯は、必ずしも設けなくてもよい。
【0107】
乗算回路248は、直流バランス制御器244から入力された各変換器214の零相成分の電圧の補正値のそれぞれに対し、符号判定回路246から入力された符号を乗算する。乗算回路248は、乗算後の各補正値を加算回路263に入力する。
【0108】
加算回路263は、乗算回路248から入力された各変換器214の零相成分の電圧の補正値のそれぞれに、電流制御器242から入力された零相成分の電圧指令値を加算する。これにより、加算回路263は、各変換器214のそれぞれの零相成分の電圧指令値を演算する。加算回路263は、演算した各変換器214のそれぞれの零相成分の電圧指令値を対応する加算回路264a~264nに入力する。
【0109】
各加算回路50a~50nは、電流制御器242から入力された有効成分の電圧指令値に、乗算回路47から入力された有効成分の電圧の補正値を加算する。これにより、各変換器214の電荷蓄積素子222の電圧値と平均値との差分に応じて、各変換器214のそれぞれの有効成分の電圧指令値を補正することができる。各加算回路50a~50nは、補正値を加算した後の有効成分の電圧指令値を、各変換器214のそれぞれに対応する変換回路52a~52nに入力する。例えば、加算回路50aは、有効成分の電圧指令値を変換回路52aに入力する。
【0110】
各変換回路52a~52nは、加算回路50a~50nから入力された有効成分の電圧指令値と、電流制御器242から入力された無効成分の電圧指令値と、を基に、各変換器214から出力する三相の瞬時値電圧信号を演算する。各変換回路52a~52nは、演算した三相の瞬時値電圧信号を各変換器214のそれぞれに対応する加算回路264a~264nに入力する。
【0111】
各加算回路264a~264nは、各変換回路52a~52nから入力された三相の瞬時値電圧信号に、加算回路263から入力された各変換器214のそれぞれの零相成分の電圧指令値を加算する。これにより、各変換器214の電荷蓄積素子222の電圧値と平均値との差分に応じて、各変換器214のそれぞれの零相成分の電圧を補正することができる。各加算回路264a~264nは、零相成分の電圧指令値を加算した後の三相の瞬時値電圧信号を各変換器214のそれぞれに対応する制御信号生成回路53a~53nに入力する。
【0112】
各制御信号生成回路53a~53nは、各加算回路264a~264nから入力された三相の瞬時値電圧信号に応じた電圧を各変換器214から出力するための制御信号を生成し、生成した制御信号を各変換器214に入力する。これにより、各制御信号生成回路53a~53nは、三相の瞬時値電圧信号に応じた電圧を各変換器214に出力させる。
【0113】
これにより、上記のように、変圧器212の複数の一次巻線212aに対して零相電流を出力するように、複数の変換器214のそれぞれに所定の大きさの電流を交流側に出力させながら、複数の変換器214のそれぞれの電荷蓄積素子222の電圧値が一定になるように、複数の変換器214のそれぞれの動作を制御することができる。
【0114】
このように、複数の変換器から交流側に出力させる所定の大きさの電流は、無効電流でもよいし、零相電流でもよい。なお、電力変換装置210の構成においては、零相電流に限ることなく、複数の変換器214から交流側に無効電流を出力させてもよい。この場合には、制御部216の構成は、第1の実施形態の制御部16の構成と同様とすることができる。また、電力変換装置210の構成においては、複数の変換器214から交流側に無効電流と零相電流とを出力させてもよい。
【0115】
なお、電力変換装置210においても、制御部216は、各変換器214に所定の大きさの電流を交流側に連続的に出力させてもよいし、断続的に出力させてもよい。積分回路260に入力される零相電流周波数指令値、及び乗算回路262に入力される零相電流振幅指令値は、一定でもよいし、変化させてもよい。
【0116】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0117】
2、102、202…電力系統、 4、104、204…直流回路、 10、110、210…電力変換装置、 12、112、212…変圧器、 14、114、214…変換器、 16、116、216…制御部、 20、120、220…スイッチング素子、 21、121、221…整流素子、 22、122、222…電荷蓄積素子、 23、123、223…電圧検出器、 40…平均値演算回路、 41…直流平均電圧制御器、 42、242…電流制御器、 43…減算回路、 44、244…直流バランス制御器、 45、46、246…符号判定回路、 47、48、248、262…乗算回路、 50a~50n、51a~51n、263、264a~264n…加算回路、 52a~52n、152a~152n…変換回路、 53a~53n、153a~153n…制御信号生成回路、 260…積分回路、 261…正弦関数回路