(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174016
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】高周波電流用の導体
(51)【国際特許分類】
H01B 5/00 20060101AFI20231130BHJP
H01B 5/02 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
H01B5/00 Z
H01B5/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086620
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】赤間 洋祐
(72)【発明者】
【氏名】松岡 祐司
【テーマコード(参考)】
5G307
【Fターム(参考)】
5G307AA01
5G307CA07
5G307CB03
5G307CC04
(57)【要約】
【課題】質量あたりの抵抗損失をより低減させることができる高周波電流用の導体を提供する。
【解決手段】所定の方向に延びる板状の第1導体部と、前記所定の方向に延びるとともに、幅方向において間隔をあけて前記第1導体部と並べて配置される板状の第2導体部と、前記所定の方向に延びるとともに、上下方向において間隔をあけて前記第1導体部の上方に配置される板状の第3導体部と、前記所定の方向に延び、前記幅方向において間隔をあけて前記第3導体部と並べて配置されるとともに、前記上下方向において間隔をあけて前記第2導体部の上方に配置される板状の第4導体部と、を備え、前記第3導体部は、前記第1導体部の上方において、前記第1導体部と交差し、前記第4導体部は、前記第2導体部の上方において、前記第2導体部と交差する高周波電流用の導体が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の方向に延びる板状の第1導体部と、
前記所定の方向に延びるとともに、幅方向において間隔をあけて前記第1導体部と並べて配置される板状の第2導体部と、
前記所定の方向に延びるとともに、上下方向において間隔をあけて前記第1導体部の上方に配置される板状の第3導体部と、
前記所定の方向に延び、前記幅方向において間隔をあけて前記第3導体部と並べて配置されるとともに、前記上下方向において間隔をあけて前記第2導体部の上方に配置される板状の第4導体部と、
を備え、
前記第1導体部、前記第2導体部、前記第3導体部、及び前記第4導体部は、前記所定の方向に延びるとともに、前記幅方向に曲がる曲がり部を有し、
前記第2導体部の前記曲がり部の曲がる方向は、前記第1導体部の前記曲がり部の曲がる方向と逆向きであり、
前記第1導体部及び前記第2導体部は、前記第1導体部と前記第2導体部との間の前記幅方向の間隔を第1間隔に設定した第1部分と、前記第1導体部と前記第2導体部との間の前記幅方向の間隔を前記第1間隔よりも広い第2間隔に設定した第2部分と、を有し、
前記第4導体部の前記曲がり部の曲がる方向は、前記第3導体部の前記曲がり部の曲がる方向と逆向きであり、
前記第3導体部及び前記第4導体部は、前記第3導体部と前記第4導体部との間の前記幅方向の間隔を第3間隔に設定した第3部分と、前記第3導体部と前記第4導体部との間の前記幅方向の間隔を前記第3間隔よりも狭い第4間隔に設定した第4部分と、を有し、
前記第3導体部及び前記第4導体部は、前記第3部分を前記第1部分の上方に配置し、前記第4部分を前記第2部分の上方に配置し、
前記第3導体部は、前記第1導体部の上方において、前記第1導体部と交差し、
前記第4導体部は、前記第2導体部の上方において、前記第2導体部と交差する高周波電流用の導体。
【請求項2】
前記第1部分において、前記第1導体部の前記幅方向における外側の端部は、前記上下方向において前記第3導体部と重なる位置に配置され、
前記第1部分において、前記第2導体部の前記幅方向における外側の端部は、前記上下方向において前記第4導体部と重なる位置に配置され、
前記第3部分において、前記第3導体部の前記幅方向における内側の端部は、前記上下方向において前記第1導体部と重なる位置に配置され、
前記第3部分において、前記第4導体部の前記幅方向における内側の端部は、前記上下方向において前記第2導体部と重なる位置に配置され、
前記第2部分において、前記第1導体部の前記幅方向における内側の端部は、前記上下方向において前記第3導体部と重なる位置に配置され、
前記第2部分において、前記第2導体部の前記幅方向における内側の端部は、前記上下方向において前記第4導体部と重なる位置に配置され、
前記第4部分において、前記第3導体部の前記幅方向における外側の端部は、前記上下方向において前記第1導体部と重なる位置に配置され、
前記第4部分において、前記第4導体部の前記幅方向における外側の端部は、前記上下方向において前記第2導体部と重なる位置に配置される請求項1記載の高周波電流用の導体。
【請求項3】
前記第1導体部、前記第2導体部、前記第3導体部、及び前記第4導体部は、同一形状の導体の向きを入れ替えて配置することで構成される請求項1又は2に記載の高周波電流用の導体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、高周波電流用の導体に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波電流をともなう大電力の電力変換器においては、主回路に用いられる導体の断面積が、主に表皮効果による抵抗損失を鑑みた電流耐量の観点から設計されている。このため、表皮効果の低減を目的に、薄く幅広の導体が用いられている。
【0003】
しかしながら、薄い幅広の導体では、導体の幅方向の中間部には高周波電流が流れ難く、導体の質量あたりの抵抗損失には改善の余地が残されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態は、質量あたりの抵抗損失をより低減させることができる高周波電流用の導体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態によれば、所定の方向に延びる板状の第1導体部と、前記所定の方向に延びるとともに、幅方向において間隔をあけて前記第1導体部と並べて配置される板状の第2導体部と、前記所定の方向に延びるとともに、上下方向において間隔をあけて前記第1導体部の上方に配置される板状の第3導体部と、前記所定の方向に延び、前記幅方向において間隔をあけて前記第3導体部と並べて配置されるとともに、前記上下方向において間隔をあけて前記第2導体部の上方に配置される板状の第4導体部と、を備え、前記第1導体部、前記第2導体部、前記第3導体部、及び前記第4導体部は、前記所定の方向に延びるとともに、前記幅方向に曲がる曲がり部を有し、前記第2導体部の前記曲がり部の曲がる方向は、前記第1導体部の前記曲がり部の曲がる方向と逆向きであり、前記第1導体部及び前記第2導体部は、前記第1導体部と前記第2導体部との間の前記幅方向の間隔を第1間隔に設定した第1部分と、前記第1導体部と前記第2導体部との間の前記幅方向の間隔を前記第1間隔よりも広い第2間隔に設定した第2部分と、を有し、前記第4導体部の前記曲がり部の曲がる方向は、前記第3導体部の前記曲がり部の曲がる方向と逆向きであり、前記第3導体部及び前記第4導体部は、前記第3導体部と前記第4導体部との間の前記幅方向の間隔を第3間隔に設定した第3部分と、前記第3導体部と前記第4導体部との間の前記幅方向の間隔を前記第3間隔よりも狭い第4間隔に設定した第4部分と、を有し、前記第3導体部及び前記第4導体部は、前記第3部分を前記第1部分の上方に配置し、前記第4部分を前記第2部分の上方に配置し、前記第3導体部は、前記第1導体部の上方において、前記第1導体部と交差し、前記第4導体部は、前記第2導体部の上方において、前記第2導体部と交差する高周波電流用の導体が提供される。
【発明の効果】
【0007】
質量あたりの抵抗損失をより低減させることができる高周波電流用の導体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る高周波電流用の導体を模式的に表す斜視図である。
【
図2】実施形態に係る高周波電流用の導体を模式的に表す平面図である。
【
図3】実施形態に係る高周波電流用の導体の一部を模式的に表す断面図である。
【
図4】実施形態に係る高周波電流用の導体の一部を模式的に表す断面図である。
【
図5】実施形態に係る高周波電流用の導体のシミュレーション結果の一例を模式的に表す説明図である。
【
図6】参考の導体のシミュレーション結果の一例を模式的に表す説明図である。
【
図7】参考の導体のシミュレーション結果の一例を模式的に表す説明図である。
【
図8】参考の導体のシミュレーション結果の一例を模式的に表す説明図である。
【
図9】参考の導体のシミュレーション結果の一例を模式的に表す説明図である。
【
図10】実施形態に係る高周波電流用の導体の特性の一例を模式的に表すグラフである。
【0009】
以下に、各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0010】
図1は、実施形態に係る高周波電流用の導体を模式的に表す斜視図である。
図2は、実施形態に係る高周波電流用の導体を模式的に表す平面図である。
図1及び
図2に表したように、高周波電流用の導体10は、第1導体部11と、第2導体部12と、第3導体部13と、第4導体部14と、を備える。なお、高周波電流とは、例えば、100Hz以上の交流電流である。
【0011】
第1導体部11は、所定の方向に延びる板状の導体である。第2導体部12は、第1導体部11と同じ所定の方向に延びるとともに、幅方向において間隔をあけて第1導体部11と並べて配置される板状の導体である。
【0012】
第3導体部13は、第1導体部11及び第2導体部12と同じ所定の方向に延びるとともに、上下方向において間隔をあけて第1導体部11の上方に配置される板状の導体である。第4導体部14は、第1導体部11~第3導体部13と同じ所定の方向に延び、幅方向において間隔をあけて第3導体部13と並べて配置されるとともに、上下方向において間隔をあけて第2導体部12の上方に配置される板状の導体である。
【0013】
なお、本願明細書において、上下方向とは、換言すれば、板状の第1導体部11~第4導体部14の厚さ方向である。上下方向は、換言すれば、板状の第1導体部11~第4導体部14の最も広い面(主面)と直交する方向である。幅方向とは、より詳しくは、第1導体部11~第4導体部14の延びる方向、及び上下方向と直交する方向である。幅方向は、換言すれば、第1導体部11~第4導体部14の延びる方向を長手方向とした時の短手方向である。
【0014】
板状とは、例えば、第1導体部11~第4導体部14の延びる所定の方向の長さが、幅方向の長さよりも長く、かつ幅方向の長さ(横幅)が、厚さ方向の長さ(厚さ)よりも長い形状のことをいう。第1導体部11~第4導体部14において、延びる所定の方向の長さは、例えば、幅方向の長さよりも2倍以上長い。また、第1導体部11~第4導体部14において、幅方向の長さは、例えば、厚さ方向の長さよりも2倍以上長い。
【0015】
導体10は、例えば、一対の支持体21、22をさらに備える。支持体21は、第1導体部11~第4導体部14のそれぞれの長手方向(所定の方向)一端を支持する。支持体22は、第1導体部11~第4導体部14のそれぞれの長手方向の他端を支持する。支持体21、22は、例えば、実質的に同じ厚さを有する板状の部材である。第1導体部11及び第2導体部12は、例えば、支持体21、22の下側の面に取り付けられる。第3導体部13及び第4導体部14は、例えば、支持体21、22の上側の面に取り付けられる。これにより、第1導体部11~第4導体部14のそれぞれを上記のように間隔をあけて並べた状態で保持することができる。
【0016】
第1導体部11~第4導体部14、及び一対の支持体21、22には、例えば、銅などの導電率の高い金属材料が用いられる。但し、第1導体部11~第4導体部14、及び一対の支持体21、22の材料は、これに限ることなく、少なくとも導電性を有する任意の材料でよい。
【0017】
但し、導体10は、必ずしも一対の支持体21、22を備えていなくてもよい。第1導体部11~第4導体部14は、例えば、上記のように間隔をあけて並べた状態で別の導体や電力変換器などの装置に取り付ける構成としてもよい。
【0018】
第1導体部11~第4導体部14は、所定の方向に延びるとともに、幅方向に曲がる曲がり部11a~14aを有する。第1導体部11~第4導体部14は、所定の方向に延びる一対の板状部の間に、幅方向に曲がる曲がり部11a~14aを有する。第1導体部11~第4導体部14の形状は、換言すれば、所定の方向に延びる一対の板状部を、幅方向に延びる部分で接続した形状である。
【0019】
第1導体部11~第4導体部14は、例えば、幅方向において略S字状に折れ曲がった板状である。第1導体部11~第4導体部14は、換言すれば、幅方向においてクランク状に屈曲した板状である。第1導体部11~第4導体部14は、換言すれば、上方から見た時に、幅方向に曲がった(湾曲もしくは屈曲)した部分を有する板状である。
【0020】
第2導体部12の曲がり部12aの曲がる方向は、第1導体部11の曲がり部11aの曲がる方向と逆向きである。これにより、第1導体部11及び第2導体部12は、第1導体部11と第2導体部12との間の幅方向の間隔を第1間隔S1に設定した第1部分P1と、第1導体部11と第2導体部12との間の幅方向の間隔を第1間隔S1よりも広い第2間隔S2に設定した第2部分P2と、を有する。
【0021】
同様に、第4導体部14の曲がり部14aの曲がる方向は、第3導体部13の曲がり部13aの曲がる方向と逆向きである。これにより、第3導体部13及び第4導体部14は、第3導体部13と第4導体部14との間の幅方向の間隔を第3間隔S3に設定した第3部分P3と、第3導体部13と第4導体部14との間の幅方向の間隔を第3間隔S3よりも狭い第4間隔S4に設定した第4部分P4と、を有する。
【0022】
第3導体部13及び第4導体部14は、第3部分P3を第1部分P1の上方に配置し、第4部分P4を第2部分P2の上方に配置する。このように、第3導体部13及び第4導体部14は、間隔の狭い部分と間隔の広い部分との位置関係を第1導体部11及び第2導体部12と入れ替えて配置する。
【0023】
これにより、第3導体部13は、第1導体部11の上方において、第1導体部11と交差する。第4導体部14は、第2導体部12の上方において、第2導体部12と交差する。第3導体部13は、例えば、曲がり部13aの部分において、第1導体部11の曲がり部11aの部分と交差する。第4導体部14は、例えば、曲がり部14aの部分において、第2導体部12の曲がり部12aの部分と交差する。
【0024】
第4間隔S4は、例えば、第1間隔S1と実質的に同じである。第3間隔S3は、例えば、第2間隔S2と実質的に同じである。第1導体部11~第4導体部14のそれぞれの形状は、例えば、実質的に同じである。例えば、同一形状に形成された導体の向きを入れ替えて配置することで、第1導体部11~第4導体部14を構成する。このように、第1導体部11~第4導体部14に共通の部材を使用できるようにすることにより、第1導体部11~第4導体部14のそれぞれの形状が異なる場合と比べて、導体10の製造を容易にすることができる。例えば、導体10の製造コストを抑制することができる。
【0025】
但し、第1導体部11~第4導体部14の形状は、必ずしも同じでなくてもよい。第4間隔S4は、第1間隔S1と異なってもよい。第3間隔S3は、第2間隔S2と異なってもよい。
【0026】
図3は、実施形態に係る高周波電流用の導体の一部を模式的に表す断面図である。
図3は、
図2のA1-A2線断面を模式的に表す。
図3に表したように、第1部分P1において、第1導体部11の幅方向における外側の端部S11は、上下方向において第3導体部13と重なる位置に配置される。換言すれば、第1部分P1において、第1導体部11の幅方向における外側の端部S11は、第3導体部13の下方に位置する。
【0027】
ここで、第1導体部11の幅方向における外側の端部S11とは、第1導体部11において、第2導体部12と反対側に位置する端部である。反対に、第1導体部11の幅方向における内側の端部は、第1導体部11において、第2導体部12側(第2導体部12と対向する側)に位置する端部である。第2導体部12~第4導体部14においても、内側及び外側の関係は、同様とする。
【0028】
第1部分P1において、第2導体部12の幅方向における外側の端部S21は、上下方向において第4導体部14と重なる位置に配置される。換言すれば、第1部分P1において、第2導体部12の幅方向における外側の端部S21は、第4導体部14の下方に位置する。
【0029】
第3部分P3において、第3導体部13の幅方向における内側の端部S31は、上下方向において第1導体部11と重なる位置に配置される。換言すれば、第3部分P3において、第3導体部13の幅方向における内側の端部S31は、第1導体部11の上方に位置する。
【0030】
第3部分P3において、第4導体部14の幅方向における内側の端部S41は、上下方向において第2導体部12と重なる位置に配置される。換言すれば、第3部分P3において、第4導体部14の幅方向における内側の端部S41は、第2導体部12の上方に位置する。
【0031】
図4は、実施形態に係る高周波電流用の導体の一部を模式的に表す断面図である。
図4は、
図2のB1-B2線断面を模式的に表す。
図4に表したように、第2部分P2において、第1導体部11の幅方向における内側の端部S12は、上下方向において第3導体部13と重なる位置に配置される。換言すれば、第2部分P2において、第1導体部11の幅方向における内側の端部S12は、第3導体部13の下方に位置する。
【0032】
第2部分P2において、第2導体部12の幅方向における内側の端部S22は、上下方向において第4導体部14と重なる位置に配置される。換言すれば、第2部分P2において、第2導体部12の幅方向における内側の端部S22は、第4導体部14の下方に位置する。
【0033】
第4部分P4において、第3導体部13の幅方向における外側の端部S32は、上下方向において第1導体部11と重なる位置に配置される。換言すれば、第4部分P4において、第3導体部13の幅方向における外側の端部S32は、第1導体部11の上方に位置する。
【0034】
第4部分P4において、第4導体部14の幅方向における外側の端部S42は、上下方向において第2導体部12と重なる位置に配置される。換言すれば、第4部分P4において、第4導体部14の幅方向における外側の端部S42は、第2導体部12の上方に位置する。
【0035】
但し、第1導体部11~第4導体部14の各端部の構成は、上記に限定されるものではない。第1導体部11の各端部S11、S12は、必ずしも第3導体部13の下方に位置しなくてもよい。第2導体部12の各端部S21、S22は、必ずしも第4導体部14の下方に位置しなくてもよい。第3導体部13の各端部S31、S32は、必ずしも第1導体部11の上方に位置しなくてもよい。第4導体部14の各端部S41、S42は、必ずしも第2導体部12の上方に位置しなくてもよい。
【0036】
図5は、実施形態に係る高周波電流用の導体のシミュレーション結果の一例を模式的に表す説明図である。
図6~
図9は、参考の導体のシミュレーション結果の一例を模式的に表す説明図である。
図5~
図9は、導体に電流を流した時の電流密度分布のシミュレーション結果の一例を模式的に表している。
図5~
図9では、導体に流れる電流の密度の高い部分を薄い色、導体に流れる電流の密度の低い部分を濃い色とした濃淡で電流密度分布を表している。
【0037】
大電力変換器用の導体は通常、導体の製造コストと組み立てコストの観点から略長方形断面の銅の平板が用いられており、低周波電流において高い電流耐量を持ち、低損失となるよう設計されている。
【0038】
図6は、略長方形断面の参考の導体に低周波電流を流した場合の電流密度分布の簡易シミュレーションの一例である。
図7は、同じ参考の導体に高周波電流を流した場合の電流密度分布の簡易シミュレーションの一例である。
図6及び
図7の参考の導体は、換言すれば、幅の広い薄い平板状の導体である。
【0039】
高周波電流をともなう電力変換器においても、主回路導体には低損失であることが要求されている。しかしながら、
図7に表したように、高周波電流である故に導体内部で表皮効果が発生し、電流は導体の幅方向の端部に集中してしまう。
図6及び
図7に表した平板状の導体では、高周波電流を流した際に、導体の質量当たりの抵抗損失が大きくなってしまう。
【0040】
例えば、なるべく薄く広い平板を用いることで、表皮効果による抵抗増加を低減し、導体の質量あたりの抵抗損失を改善することが行われている。しかしながら、導体の幅方向の中央付近には電流が流れ難いため、幅及び厚さの調整のみでは、導体の質量あたりの抵抗損失を大きく改善させることは難しい。
【0041】
図8に表したように、平板状の導体を空隙を持たせて2枚重ねにすることも検討されている。この場合には、電流の流れる端部(エッジ)を4辺に増やすことができ、抵抗増大を多少抑制することが可能である。しかし、導体を重ねる手法では、積層方向にも表皮効果が働き、3層以上は中間層の導体に電流が流れ難くなり、抵抗低減の効果を得難くなってしまう。
【0042】
図9に表したように、電流の流れ難い中間部分をくり抜くことも検討されている。換言すれば、2枚重ねの平板状の導体を2組幅方向に並べて配置することも検討されている。この場合には、くり抜いた中間部分の質量分だけ、
図8に表した構成と比べて、導体の質量あたりの抵抗損失を改善することができる。
【0043】
このように、平板状の導体を用いる手法では、
図9に表したように、電流が流れ難い中間部分をくり抜いた平板状の導体の2層構造を用いて抵抗損質量比を改善する構造が、質量あたりの抵抗損失の効率的な改善の限界と考えられていた。
【0044】
この他に、複数の導体平板を束ね、捻じりを加えてリッツ線構造を持たせることで高周波時の損失を改善する手法があるが、複雑な形状となるためプリント基板上などでの実装にしか適さない。
【0045】
本願発明者は、
図9に表したように、2枚重ねの平板状の導体を2組幅方向に並べて配置したとしても、幅方向に並ぶ一対の導体の幅方向の内側の端部には電流が流れ難いことを突き止めた。そこで、本願発明者は、幅方向に並ぶ一対の導体の幅方向の内側の端部にも高周波電流が流れるようにすることで、質量あたりの抵抗損失をより改善することを検討した。そして、鋭意の検討の結果、本願発明者は、
図1~
図4に表したように、幅方向において略S字状に折れ曲がった第1導体部11~第4導体部14を上記のように並べて配置する構成を見出した。
【0046】
図5に表したように、本実施形態に係る導体10の構成では、
図9に表した構成と比べて、第1導体部11~第4導体部14のそれぞれの幅方向の内側の端部にも電流を流し易くすることができる。本実施形態に係る導体10の構成においても表皮効果は発生するが、
図5に示すように導体中央部(第1導体部11~第4導体部14のそれぞれの幅方向の内側の端部)における電流密度分布を改善させ、周波数上昇に伴う抵抗増加を改善させることができる。
図9に表した構成と比べても、質量あたりの抵抗損失をより改善することができる。
【0047】
また、上記のように、第1部分P1において、第1導体部11の幅方向における外側の端部S11は、上下方向において第3導体部13と重なる位置に配置する。これにより、第3導体部13の内側の端部に、より高周波電流を流し易くすることができる。これは、例えば、第3導体部13が、第1導体部11の外側の端部S11に流れる高周波電流の影響を受けるためであると考えられる。
【0048】
従って、上記のように第1導体部11~第4導体部14のそれぞれの幅方向の端部を配置することにより、第1導体部11~第4導体部14のそれぞれの幅方向の内側の端部に高周波電流をより流し易くし、質量あたりの抵抗損失をより改善することができる。
【0049】
図10は、実施形態に係る高周波電流用の導体の特性の一例を模式的に表すグラフである。
図10は、導体10の直流抵抗値で正規化した抵抗値の周波数特性のシミュレーション結果の一例を周波数特性FC1として模式的に表す。また、
図10では、
図6及び
図7に表した平板状の参考の導体の抵抗値の周波数特性のシミュレーション結果の一例を周波数特性FC2として模式的に表す。
【0050】
図10に表したように、断面略長方形の平板状の参考の導体の抵抗値と比較すると、本実施形態に係る導体10の構成では、周波数の上昇にともなう抵抗値の上昇率が改善されている。抵抗値の上昇率は、例えば、第1導体部11~第4導体部14の寸法最適化計算を行うことで更なる改善を見込むことができる。
【0051】
以上、説明したように、本実施形態に係る導体10では、質量あたりの抵抗損失をより低減させることができる。また、これにより、例えば、抵抗の上昇を抑制しつつ、導体10の幅を狭め、導体10の小型化を図ることができる。抵抗の上昇を抑制しつつ、より幅の狭い導体10を適用することが可能となる。さらには、導体10のアスペクト比を改善し、導体10の空間の活用効率を高めることができる。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0053】
10…導体、 11…第1導体部、 12…第2導体部、 13…第3導体部、 14…第4導体部、 21、22…支持体