(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174022
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】速度測定装置及び速度測定方法
(51)【国際特許分類】
G01P 3/36 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
G01P3/36 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086628
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】古谷 雅
(57)【要約】
【課題】対象物と速度測定装置の間の距離が変動しても対象物の速度を正確に測定することができる速度測定装置を提供する。
【解決手段】移動する測定対象物10からの反射光を第1の光と第2の光に分割するスプリッタ20と、反射光を受ける物体側テレセントリックレンズ又は両側テレセントリックレンズ4と、スプリッタ20から第1の距離Lにおける第1の光を空間フィルタリングして得られる第1の信号の振幅と、スプリッタ20から第2の距離L+Dにおける第2の光を空間フィルタリングして得られる第2の信号の振幅と、を比較する比較部301と、第1の信号と第2の信号のうち、振幅が大きい方の信号に基づき、測定対象物10の移動速度を算出する移動速度算出部302と、を備える速度測定装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動する測定対象物からの反射光を第1の光と第2の光に分割するスプリッタと、
前記反射光を受ける物体側テレセントリックレンズ又は両側テレセントリックレンズと、
前記スプリッタから第1の距離における前記第1の光を空間フィルタリングして得られる第1の信号の振幅と、前記スプリッタから第2の距離における前記第2の光を空間フィルタリングして得られる第2の信号の振幅と、を比較する比較部と、
前記第1の信号と前記第2の信号のうち、前記振幅が大きい方の信号に基づき、前記測定対象物の移動速度を算出する移動速度算出部と、
を備える、
速度測定装置。
【請求項2】
前記スプリッタから前記第1の距離における前記第1の光を空間フィルタリングするための第1の空間フィルタと、
前記スプリッタから前記第2の距離における前記第2の光を空間フィルタリングするための第2の空間フィルタと、
をさらに備える、請求項1に記載の速度測定装置。
【請求項3】
前記第1の空間フィルタ及び前記第2の空間フィルタのそれぞれが、所定のピッチで縞状に配置された光検出器を備える、請求項2に記載の速度測定装置。
【請求項4】
前記第1の空間フィルタ及び前記第2の空間フィルタのそれぞれが、所定のピッチで縞状に配置された遮光部を備える格子と、前記格子を通過した光を受光する光検出器と、を備える、請求項2に記載の速度測定装置。
【請求項5】
前記スプリッタから前記第1の距離における前記第1の光を撮像する第1の撮像素子と、
前記スプリッタから前記第2の距離における前記第2の光を撮像する第2の撮像素子と、
前記第1及び第2の撮像素子のそれぞれが撮像した画像を空間フィルタリングする画像処理部と、
をさらに備える、請求項1に記載の速度測定装置。
【請求項6】
前記物体側テレセントリックレンズ又は前記両側テレセントリックレンズが、前記反射光の進行方向において、前記スプリッタの前に配置されている、請求項1に記載の速度測定装置。
【請求項7】
前記物体側テレセントリックレンズ又は前記両側テレセントリックレンズが、前記反射光の進行方向において、前記スプリッタの後に配置されている、請求項1に記載の速度測定装置。
【請求項8】
前記測定対象物に光を照射する光源をさらに備える、請求項1に記載の速度測定装置。
【請求項9】
移動する測定対象物からの反射光を第1の光と第2の光にスプリッタで分割することと、
前記反射光を物体側テレセントリックレンズ又は両側テレセントリックレンズで受けることと、
前記スプリッタから第1の距離における前記第1の光を空間フィルタリングして得られる第1の信号の振幅と、前記スプリッタから第2の距離における前記第2の光を空間フィルタリングして得られる第2の信号の振幅と、を比較することと、
前記第1の信号と前記第2の信号のうち、前記振幅が大きい方の信号に基づき、前記測定対象物の移動速度を算出することと、
を含む、
速度測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、速度測定装置及び速度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物の移動速度を非接触で測定する方法が提案されてきている。特許文献1は、対象物からの光路長が互いに異なる位置に2つの空間フィルタを配置し、対象物からの反射光を2つの空間フィルタの両方に結像し、2つの空間フィルタでフィルタリングされた2つの信号の両方の周波数を用いて、対象物の移動速度を算出することを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の非接触速度測定装置は、対象物と速度測定装置の間の距離が変動すると、対象物からの反射光が結像する位置が空間フィルタからずれるために、対象物の速度を正確に測定することができない。そこで、本発明は、対象物と速度測定装置の間の距離が変動しても対象物の速度を正確に測定することができる速度測定装置及び速度測定方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の態様に係る速度測定装置は、移動する測定対象物からの反射光を第1の光と第2の光に分割するスプリッタと、反射光を受ける物体側テレセントリックレンズ又は両側テレセントリックレンズと、スプリッタから第1の距離における第1の光を空間フィルタリングして得られる第1の信号の振幅と、スプリッタから第2の距離における第2の光を空間フィルタリングして得られる第2の信号の振幅と、を比較する比較部と、第1の信号と第2の信号のうち、振幅が大きい方の信号に基づき、測定対象物の移動速度を算出する移動速度算出部と、を備える。
【0006】
上記の速度測定装置が、スプリッタから第1の距離における第1の光を空間フィルタリングするための第1の空間フィルタと、スプリッタから第2の距離における第2の光を空間フィルタリングするための第2の空間フィルタと、をさらに備えていてもよい。
【0007】
上記の速度測定装置において、第1の空間フィルタ及び第2の空間フィルタのそれぞれが、所定のピッチで縞状に配置された光検出器を備えていてもよい。
【0008】
上記の速度測定装置において、第1の空間フィルタ及び第2の空間フィルタのそれぞれが、所定のピッチで縞状に配置された遮光部を備える格子と、格子を通過した光を受光する光検出器と、を備えていてもよい。
【0009】
上記の速度測定装置が、スプリッタから第1の距離における第1の光を撮像する第1の撮像素子と、スプリッタから第2の距離における第2の光を撮像する第2の撮像素子と、第1及び第2の撮像素子のそれぞれが撮像した画像を空間フィルタリングする画像処理部と、をさらに備えていてもよい。
【0010】
上記の速度測定装置において、物体側テレセントリックレンズ又は両側テレセントリックレンズが、反射光の進行方向において、スプリッタの前に配置されていてもよい。
【0011】
上記の速度測定装置において、物体側テレセントリックレンズ又は両側テレセントリックレンズが、反射光の進行方向において、スプリッタの後に配置されていてもよい。
【0012】
上記の速度測定装置が、測定対象物に光を照射する光源をさらに備えていてもよい。
【0013】
本発明の態様に係る速度測定方法は、移動する測定対象物からの反射光を第1の光と第2の光にスプリッタで分割することと、反射光を物体側テレセントリックレンズ又は両側テレセントリックレンズで受けることと、スプリッタから第1の距離における第1の光を空間フィルタリングして得られる第1の信号の振幅と、スプリッタから第2の距離における第2の光を空間フィルタリングして得られる第2の信号の振幅と、を比較することと、第1の信号と第2の信号のうち、振幅が大きい方の信号に基づき、測定対象物の移動速度を算出することと、を含む。
【0014】
上記の速度測定方法において、第1の光を空間フィルタリングして得られる第1の信号及び第2の光を空間フィルタリングして得られる第2の信号のそれぞれが、所定のピッチで縞状に配置された光検出器によって得られてもよい。
【0015】
上記の速度測定方法において、第1の光を空間フィルタリングして得られる第1の信号及び第2の光を空間フィルタリングして得られる第2の信号のそれぞれが、所定のピッチで縞状に配置された遮光部を備える格子と、格子を通過した光を受光する光検出器と、によって得られてもよい。
【0016】
上記の速度測定方法が、スプリッタから第1の距離における第1の光を撮像することと、スプリッタから第2の距離における第2の光を撮像することと、第1及び第2の撮像素子のそれぞれが撮像した画像を空間フィルタリングすることと、をさらに含んでもよい。
【0017】
上記の速度測定方法において、物体側テレセントリックレンズ又は両側テレセントリックレンズが、反射光の進行方向において、スプリッタの前に配置されていてもよい。
【0018】
上記の速度測定方法において、物体側テレセントリックレンズ又は両側テレセントリックレンズが、反射光の進行方向において、スプリッタの後に配置されていてもよい。
【0019】
上記の速度測定方法が、測定対象物に光を照射することをさらに含んでもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、対象物と速度測定装置の間の距離が変動しても対象物の速度を正確に測定することができる速度測定装置及び速度測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、実施形態に係る速度測定装置を示す模式図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る光検出器を示す模式図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る信号の強度の時間変化を示す模式的なグラフである。
【
図4】
図4は、実施形態に係る信号の周波数スペクトルを示す模式的なグラフである。
【
図5】
図5は、実施形態に係る速度測定装置を示す模式図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る光検出器を示す模式図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る2つの信号の強度の時間変化を示す模式的なグラフである。
【
図8】
図8は、実施形態に係る信号の2つの強度の差分の時間変化を示す模式的なグラフである。
【
図9】
図9は、実施形態に係る速度測定装置を示す模式図である。
【
図10】
図10は、実施形態に係る速度測定装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号で表している。ただし、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法等は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0023】
実施形態に係る速度測定装置は、
図1に示すように、移動する測定対象物10からの反射光を第1の光と第2の光に分割するスプリッタ20と、反射光を受ける物体側テレセントリックレンズ又は両側テレセントリックレンズ4と、スプリッタ20から第1の距離Lにおける第1の光を空間フィルタリングして得られる第1の信号の振幅と、スプリッタ20から第2の距離L+Dにおける第2の光を空間フィルタリングして得られる第2の信号の振幅と、を比較する比較部301と、第1の信号と第2の信号のうち、振幅が大きい方の信号に基づき、測定対象物10の移動速度を算出する移動速度算出部302と、を備える。比較部301及び移動速度算出部302は、例えば、中央演算処理装置(CPU)300に含まれる。
【0024】
測定対象物10は、平行に移動する。測定対象物10は、速度測定装置に対して相対的に移動する。例えば、速度測定装置が静置され、測定対象物10が移動してもよいし、測定対象物10が静置され、速度測定装置が移動してもよい。速度測定装置が静置され、測定対象物10が移動する場合、測定対象物10の例としては、フィルム、及び不織布等が挙げられるが、特に限定されない。測定対象物10が静置され、速度測定装置が移動する場合、測定対象物10の例としては、路面が挙げられるが、特に限定されない。
【0025】
実施形態に係る速度測定装置は、測定対象物10に光を照射する光源30をさらに備えていてもよい。光源30としては、レーザー及び発光ダイオード(LED)が使用可能であるが、特に限定されない。光の強度は、例えば、一定である。実施形態に係る速度測定装置は、光源30が発した光を平行光にする照射用レンズ31をさらに備えていてもよい。光源30が光を照射することにより、測定対象物10から反射光が生じる。ただし、光源30が光を照射しなくとも、太陽光や周囲の照明光により測定対象物10から反射光が生じる場合は、光源30はなくてもよい。
【0026】
両側テレセントリックレンズ4は、反射光を集光する第1のレンズ40と、第1のレンズ40で集光された反射光を平行光にする第2のレンズ41を備える。第1のレンズ40の物体側の主光線は平行である。これにより、第1のレンズ40と測定対象物10の間の距離が変わっても、結像倍率は一定である。第1のレンズ40は、光軸が測定対象物10に対して略垂直になるように配置される。第2のレンズ41は、光軸が測定対象物10に対して略垂直になるように配置される。例えば、第1のレンズ40の光軸と第2のレンズ41の光軸は一致する。第1のレンズ40と第2のレンズ41の間に絞り61が配置されていてもよい。第1のレンズ40、第2のレンズ41、及び絞り61は、鏡筒71内に配置されていてもよい。両側テレセントリックレンズ4は、例えば、測定対象物10とスプリッタ20の間に配置される。なお、両側テレセントリックレンズ4の代わりに、物体側テレセントリックレンズを用いてもよい。
【0027】
スプリッタ20は、反射光を第1の光と第2の光に分割する。第1の光と第2の光のそれぞれは、測定対象物10からの反射光であることには変わりがない。実施形態に係る速度測定装置は、スプリッタ20から第1の距離Lにおける第1の光を空間フィルタリングするための第1の空間フィルタ50と、スプリッタ20から第2の距離L+Dにおける第2の光を空間フィルタリングするための第2の空間フィルタ51と、をさらに備えていてもよい。第1の距離Lと第2の距離L+Dは異なる。第1の距離と第2の距離の起点は、例えば、両側テレセントリックレンズ4の光軸とスプリッタ20との交点である。
【0028】
第1の距離Lと第2の距離L+Dが異なるため、第1の空間フィルタ50に測定対象物10の像が結像する場合、第2の空間フィルタ51において測定対象物10の像はぼやける。また、第2の空間フィルタ51に測定対象物10の像が結像する場合、第1の空間フィルタ50において測定対象物10の像はぼやける。
【0029】
第1の空間フィルタ50及び第2の空間フィルタ51のそれぞれは、
図2に示すように、所定のピッチPで縞状に配置された光検出器52を備えていてもよい。第1の空間フィルタ50のピッチPと第2の空間フィルタ51のピッチPは同じである。
図1に示す第1の空間フィルタ50を構成する光検出器は、空間フィルタリングされた第1の光を電気信号である第1の信号に変換する。第2の空間フィルタ51を構成する光検出器は、空間フィルタリングされた第2の光を電気信号である第2の信号に変換する。第1の信号及び第2の信号のそれぞれは、増幅器により増幅され、比較部301に送られる。
【0030】
第1の信号及び第2の信号のそれぞれは、
図3に示すように、測定対象物10の速度と第1の空間フィルタ50及び第2の空間フィルタ51のそれぞれのピッチPに比例する周波数を有する交流成分を含む。ここで、第1の空間フィルタ50に測定対象物10の像がクリアに結像し、第2の空間フィルタ51に測定対象物10の像がぼやけて結像している場合、第1の信号の振幅は
図3Aに示すように相対的に大きくなり、第2の信号の振幅は
図3Bに示すように相対的に小さくなる。第2の空間フィルタ51に測定対象物10の像がクリアに結像し、第1の空間フィルタ50に測定対象物10の像がぼやけて結像している場合、第1の信号の振幅は
図3Bに示すように相対的に小さくなり、第2の信号の振幅は
図3Aに示すように相対的に大きくなる。
【0031】
第1の信号及び第2の信号をそれぞれ所定の時間蓄積し、高速フーリエ変換(FFT)処理すると、
図4に示すような周波数スペクトル(振幅スペクトル)が得られる。周波数スペクトルにおいて、ゼロ付近を除いて振幅のピークを与える正の周波数が、信号の周波数である。ここで、第1の空間フィルタ50に測定対象物10の像がクリアに結像し、第2の空間フィルタ51に測定対象物10の像がぼやけて結像している場合、第1の信号の周波数スペクトルにおけるピークの振幅は
図4Aに示すように相対的に大きくなり、第2の信号の周波数スペクトルにおけるピークの振幅は
図4Bに示すように相対的に小さくなる。第2の空間フィルタ51に測定対象物10の像がクリアに結像し、第1の空間フィルタ50に測定対象物10の像がぼやけて結像している場合、第1の信号の周波数スペクトルにおけるピークの振幅は
図4Bに示すように相対的に小さくなり、第2の信号の周波数スペクトルにおけるピークの振幅は
図4Aに示すように相対的に大きくなる。大きい振幅のピークを与える周波数スペクトルのほうが、小さい振幅のピークを与える周波数スペクトルよりも、S/N比が高く、信号の周波数を特定する際には、信頼性が高い。なお、スペクトルはパワースペクトルでもよい。
【0032】
したがって、
図1に示す比較部301は、第1の信号の振幅と、第2の信号の振幅と、を比較し、振幅が大きい方の信号を選択する。あるいは、比較部301は、第1の信号の周波数スペクトルと、第2の信号の周波数スペクトルと、を比較し、ピークの振幅が大きい方の信号を選択してもよい。また、周波数スペクトルにおいて、ピークの半値幅が狭いほどピークの振幅は大きいため、比較部301は、第1の信号の周波数スペクトルと、第2の信号の周波数スペクトルと、を比較し、ピークの半値幅が小さい方の信号を選択してもよい。比較部301及び移動速度算出部302の少なくともいずれかは、選択された信号の周波数Fを算出する。さらに、移動速度算出部302は、例えば下記(1)式を用いて、測定対象物10の移動速度Vを算出する。
V=FP/M (1)
ここで、Pは第1の空間フィルタ50及び第2の空間フィルタ51のピッチである。Mは、両側テレセントリックレンズ4による倍率である。なお、移動速度Vの算出には、信号の周波数Fの代わりに信号の周期を用いてもよい。
【0033】
第2のレンズ41がある場合は、第1の信号を用いても第2の信号を用いても、(1)式の倍率Mは同じである。しかし、第2のレンズ41がない場合は、第1のレンズ40の倍率は、第1の空間フィルタ50の位置と第2の空間フィルタ51の位置で異なる。そのため、第2のレンズ41がなく、第1の信号を用いる場合は、第1の空間フィルタ50の位置における倍率を用い、第2のレンズ41がなく、第2の信号を用いる場合は、第2の空間フィルタ51の位置における倍率を用いる。
【0034】
速度測定装置と測定対象物の間の距離が一定である場合、1つの空間フィルタに測定対象物を結像させれば、測定対象物の移動速度を安定的に計測可能である。しかし、速度測定装置及び測定対象物のいずれかの揺れ等により、速度測定装置と測定対象物の間の距離を一定に保てない場合が生じ得る。空間フィルタが1つしかない場合、1つの空間フィルタ上における測定対象物の像がぼやけると、測定対象物の移動速度の算出が不可能になり得る。これに対し、実施形態に係る速度測定装置は、測定対象物10からの光路長が異なる第1及び第2の空間フィルタ50、51を備え、移動速度の算出のために、空間フィルタリングされた第1及び第2の信号のうち、振幅が大きい信号を選択して、測定対象物の移動速度を算出する。そのため、速度測定装置と測定対象物10の間の距離が、短くなったり、長くなったりして変動しても、測定対象物10の移動速度を正確に算出することが可能である。なお、実施形態に係る速度測定装置は、3以上の複数の空間フィルタを備え、空間フィルタリングされた3以上の複数の信号のうち、振幅が最も大きい信号を選択して、測定対象物の移動速度を算出してもよい。
【0035】
図1においては、反射光の進行方向において、スプリッタ20の前にテレセントリックレンズを配置する例を示したが、スプリッタ20の後にテレセントリックレンズを配置してもよい。例えば、
図5に示すように、実施形態に係る速度測定装置は、第1の光を受光する両側テレセントリックレンズ4Aと、第2の光を受光する両側テレセントリックレンズ4Bを備えていてもよい。両側テレセントリックレンズ4Aと両側テレセントリックレンズ4Bは、それぞれの光軸の交点がスプリッタ20に位置するように配置される。
【0036】
両側テレセントリックレンズ4Aは、第1の光を集光する第1のレンズ40Aと、第1のレンズ40Aで集光された第1の光を平行光にする第2のレンズ41Aを備える。例えば、第1のレンズ40Aの光軸と第2のレンズ41Aの光軸は一致する。第1のレンズ40Aと第2のレンズ41Aの間に絞り61Aが配置されていてもよい。第1のレンズ40A、第2のレンズ41A、及び絞り61Aは、鏡筒71A内に配置されていてもよい。
【0037】
両側テレセントリックレンズ4Bは、第2の光を集光する第1のレンズ40Bと、第1のレンズ40Bで集光された第2の光を平行光にする第2のレンズ41Bを備える。例えば、第1のレンズ40Bの光軸と第2のレンズ41Bの光軸は一致する。第1のレンズ40Bと第2のレンズ41Bの間に絞り61Bが配置されていてもよい。第1のレンズ40B、第2のレンズ41B、及び絞り61Bは、鏡筒71B内に配置されていてもよい。
【0038】
なお、両側テレセントリックレンズ4A、4Bの代わりに、物体側テレセントリックレンズを用いてもよい。
【0039】
反射光の進行方向において、スプリッタ20の後にテレセントリックレンズを配置した場合も、比較部301と移動速度算出部302は上記と同じである。
【0040】
図1及び
図5に示す第1の空間フィルタ50及び第2の空間フィルタ51のそれぞれは、
図6に示すように、所定のピッチPで縞状に配置された第1の光検出器53と、所定のピッチPで縞状に配置された第2の光検出器54と、を備えていてもよい。第2の光検出器54は、第1の光検出器53の間隙に配置され、第1の光検出器53の縞状部分と第2の光検出器54の縞状部分は交互に配置される。
【0041】
第1の光検出器53と第2の光検出器54には、差動増幅器303が接続されている。
図7に示すように、第1の光検出器53で光電変換された信号の位相は、第2の光検出器54で光電変換された信号の位相に対して反転している。差動増幅器303は、第1の光検出器53で光電変換された信号と第2の光検出器54で光電変換された信号の
図8に示す差分信号を得る。差分信号においては、バイアス成分が除去される。第1の空間フィルタ50の差動増幅器は、差分信号を増幅して、増幅した差分信号を第1の信号として比較部301に送る。第2の空間フィルタ51の差動増幅器は、差分信号を増幅して、増幅した差分信号を第2の信号として比較部301に送る。バイアス成分を除去することにより、信号の増幅倍率を上げることが可能である。
【0042】
図9に示すように、第1の空間フィルタ50は、所定のピッチPで縞状に配置された遮光部を備える格子150と、格子150を通過した光を集光するレンズ151と、格子150を通過してレンズ151で集光された光を受光する光検出器152と、を備えていてもよい。光検出器152が、第1の信号を比較部301に送る。また、第2の空間フィルタ51は、所定のピッチPで縞状に配置された遮光部を備える格子250と、格子250を通過した光を集光するレンズ251と、格子250を通過してレンズ251で集光された光を受光する光検出器252と、を備えていてもよい。光検出器252が、第2の信号を比較部301に送る。この場合、光検出器152、252は、縞状でなくてよい。
【0043】
図10に示すように、実施形態に係る速度測定装置は、スプリッタ20から第1の距離Lにおける第1の光を撮像する第1の撮像素子255と、スプリッタ20から第2の距離L+Dにおける第2の光を撮像する第2の撮像素子256と、第1及び第2の撮像素子のそれぞれが撮像した画像を空間フィルタリングする画像処理部304と、を備えていてもよい。画像処理部304は、スプリッタ20から第1の距離Lにおける第1の光を空間フィルタリングすることに相当する処理を第1の撮像素子255が撮像した画像に対して行い、第1の信号を生成する。また、画像処理部304は、スプリッタ20から第2の距離L+Dにおける第2の光を空間フィルタリングすることに相当する処理を第2の撮像素子256が撮像した画像に対して行い、第2の信号を生成する。
【0044】
上記のように本発明を実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす記述及び図面はこの発明を限定するものであると理解するべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかになるはずである。例えば、空間フィルタは、格子と、格子に密着又は近接する面状の光検出器と、を備えていてもよい。本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を包含するということを理解すべきである。
【符号の説明】
【0045】
4・・・両側テレセントリックレンズ、4A・・・両側テレセントリックレンズ、4B・・・両側テレセントリックレンズ、10・・・測定対象物、20・・・スプリッタ、30・・・光源、31・・・照射用レンズ、40・・・第1のレンズ、40A・・・第1のレンズ、40B・・・第1のレンズ、41・・・第2のレンズ、41A・・・第2のレンズ、41B・・・第2のレンズ、50・・・空間フィルタ、51・・・空間フィルタ、52・・・光検出器、53・・・光検出器、54・・・光検出器、71・・・鏡筒、71A・・・鏡筒、71B・・・鏡筒、150・・・格子、151・・・レンズ、152・・・光検出器、250・・・格子、251・・・レンズ、252・・・光検出器、255・・・撮像素子、256・・・撮像素子、301・・・比較部、302・・・移動速度算出部、303・・・差動増幅器、304・・・画像処理部