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特開2023-174027ボロメータ型赤外線検出器及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174027
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】ボロメータ型赤外線検出器及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01J 1/02 20060101AFI20231130BHJP
   B82Y 20/00 20110101ALI20231130BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALI20231130BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20231130BHJP
   C01B 32/168 20170101ALI20231130BHJP
【FI】
G01J1/02 C
B82Y20/00
B82Y30/00
B82Y40/00
C01B32/168
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086633
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】田中 朋
(72)【発明者】
【氏名】石田 真彦
(72)【発明者】
【氏名】弓削 亮太
【テーマコード(参考)】
2G065
4G146
【Fターム(参考)】
2G065AA04
2G065AB02
2G065BA02
2G065BA12
2G065BA34
2G065BA40
2G065BC01
2G065BE08
4G146AA11
4G146AB06
4G146AB07
4G146BA04
4G146CB10
4G146CB17
(57)【要約】
【課題】 本発明の目的の一つは、高いTCR値を有するボロメータ型赤外線検出器及びその製造方法を提供することである。
【解決手段】 本発明は、基板、半導体型カーボンナノチューブを含むボロメータ膜、及び前記ボロメータ膜に、間隔をおいて接合されている2つの電極を少なくとも備え、前記2つの電極の少なくとも1つは、Li、Be、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Ba、La、Hf、Ta、Ir、Pt、Au、及びBiからなる群から選択される少なくとも2種の金属を含む合金で形成されている、ボロメータ型赤外線検出器に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板、
半導体型カーボンナノチューブを含むボロメータ膜、及び
前記ボロメータ膜に、間隔をおいて接合されている2つの電極
を少なくとも備え、
前記2つの電極の少なくとも1つは、Li、Be、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Ba、La、Hf、Ta、Ir、Pt、Au、及びBiからなる群から選択される少なくとも2種の金属を含む合金で形成されている、ボロメータ型赤外線検出器。
【請求項2】
前記2つの電極が、同一の合金で形成されている、請求項1に記載のボロメータ型赤外線検出器。
【請求項3】
前記2つの電極が、互いに異なる合金で形成されている、請求項1に記載のボロメータ型赤外線検出器。
【請求項4】
前記2つの電極の少なくとも1つが、
・Alと、Pd、Pt、及びAuから選択される1種以上、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Sb、Ir、Pt、及びAuから選択される1種以上、Be、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Ag、In、Sn、Sb、Hf、Ta、及びBiから選択される1種以上、又はLi、Y、Zr、Ba、La、Hf、及びTaから選択される1種以上と、の合金
・Cuと、Pd、Pt、及びAuから選択される1種以上、Be、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Hf、Ta、Ir、Pt、Au、及びBiから選択される1種以上、Li、Al、Mn、Zn、Y、Nb、In、Ba、La、及びTaから選択される1種以上、又はLi及びBaから選択される1種以上と、の合金
・Agと、Pd、Pt、及びAuから選択される1種以上、Be、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、In、Sn、Sb、Hf、Ta、Ir、Pt、Au、及びBiから選択される1種以上、Li、Be、Al、Ti、Mn、Zn、Y、Zr、Ba、La、Hf、及びTaから選択される1種以上、Li及びBaから選択される1種以上と、の合金、並びに
・Auと、Be、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Ta、Ir、及びPtから選択される1種以上、Li、Be、Al、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Y、Nb、Mo、Rh、Ag、In、及びBaから選択される1種以上、又はLi及びBaから選択される1種以上と、の合金
からなる群より選択される合金で形成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のボロメータ型赤外線検出器。
【請求項5】
前記ボロメータ膜が、カーボンナノチューブと、負の熱膨張材料とを含む複合材料で構成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のボロメータ型赤外線検出器。
【請求項6】
前記負の熱膨張材料が、Li、Al、Fe、Ni、Co、Mn、Bi、La、Cu、Sn、Zn、V、Zr、Pb、Sm、Y、W、Si、P、Ru、Ti、Ge、Ca、Ga、Cr、及びCdからなる群から選択される1種又は2種以上を含んだ酸化物、窒化物、硫化物、又は多元素化合物である、請求項5に記載のボロメータ型赤外線検出器。
【請求項7】
前記ボロメータ膜が、半導体型カーボンナノチューブを、カーボンナノチューブの総量の90質量%以上含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のボロメータ型赤外線検出器。
【請求項8】
基板を用意する工程、
基板上に半導体型カーボンナノチューブを含むボロメータ膜を形成する工程、
前記ボロメータ膜を形成する工程の前又は後に、2つの電極を、該2つの電極が前記ボロメータ膜に間隔をおいて接合するように形成する工程であって、該2つの電極の少なくとも1つがLi、Be、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Ba、La、Hf、Ta、Ir、Pt、Au、及びBiからなる群から選択される少なくとも2種の金属を含む合金で形成されている、工程
を含む、ボロメータ型赤外線検出器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボロメータ型赤外線検出器及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
赤外線センサーは、セキュリティ用の監視カメラだけでなく、人体のサーモグラフィー、車載用カメラ、及び構造物、食品等の検査など非常に広い範囲の応用性があることから、近年、産業応用が活発になっている。特に、IoT(Internet of Things)との連携による生体情報の取得可能な安価で且つ、高性能な非冷却型赤外線センサーの開発が期待されている。従来の非冷却型の赤外線センサーは、主にボロメータ部分にVO(酸化バナジウム)が使用されているが、真空下での熱処理が必要であるため、プロセスが高コストになる点と抵抗温度係数(TCR:Temperature Coefficient Resistance)が小さい点(約-2.0%/K)が課題である。
【0003】
TCR向上には、温度変化に対して抵抗変化が大きく、且つ、導電性が大きい材料が必要であるため、大きなバンドギャップとキャリア移動度を持つ半導体性単層カーボンナノチューブをボロメータ部分に適用することが期待されている。また、カーボンナノチューブは、化学的に安定なため印刷技術など安価なデバイス作製プロセスが適用でき、低コスト・高性能な赤外線センサーが実現できる可能性がある。
【0004】
例えば、特許文献1では、通常の単層カーボンナノチューブをボロメータ部分に適用し、且つ、単層カーボンナノチューブの化学的安定性を利用して、有機溶媒に混ぜた分散液を作製し、電極上に塗布する安価な薄膜プロセスでのボロメータの作製が提案されている。その際、単層カーボンナノチューブを空気中でアニール処理をすることで、TCRを約-1.8%/Kまで向上させることに成功している。
【0005】
単層カーボンナノチューブには通常、半導体型の性質のカーボンナノチューブと金属型の性質のカーボンナノチューブが2:1で含まれるため、分離が必要であるという課題がある。そこで、特許文献2では、単層カーボンナノチューブには、金属的・半導体的成分が混在しているため、イオン性の界面活性剤によりカイラリティの揃った半導体型単層カーボンナノチューブを抽出し、ボロメータ部分に適用することで、-2.6%/KのTCRの実現に成功している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2012/049801号
【特許文献2】特開2015-49207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された赤外線センサーに用いるカーボンナノチューブ薄膜には、カーボンナノチューブに金属型カーボンナノチューブが多く混在するため、TCRが室温領域において低く、赤外線センサーの性能向上に限界があった。
また、特許文献2に記載された半導体型カーボンナノチューブを使った赤外線センサーのTCR値は、高感度化には充分とは言えず、更なるカーボンナノチューブ膜の改善が必要であるという課題があった。
【0008】
上述した課題に鑑み、本発明では、高いTCR値を実現可能なボロメータ型赤外線検出器及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、
基板、
半導体型カーボンナノチューブを含むボロメータ膜、及び
前記ボロメータ膜に、間隔をおいて接合されている2つの電極
を少なくとも備え、
前記2つの電極の少なくとも1つは、Li、Be、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Ba、La、Hf、Ta、Ir、Pt、Au、及びBiからなる群から選択される少なくとも2種の金属を含む合金で形成されている、ボロメータ型赤外線検出器
に関する。
【0010】
本発明の別の一態様は、
基板を用意する工程、
基板上に半導体型カーボンナノチューブを含むボロメータ膜を形成する工程、
前記ボロメータ膜を形成する工程の前又は後に、2つの電極を、該2つの電極が前記ボロメータ膜に間隔をおいて接合するように形成する工程であって、該2つの電極の少なくとも1つがLi、Be、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Ba、La、Hf、Ta、Ir、Pt、Au、及びBiからなる群から選択される少なくとも2種の金属を含む合金で形成されている、工程
を含む、ボロメータ型赤外線検出器の製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高いTCR値が得られるボロメータ型検出器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態のボロメータ素子の平面図である。
図2】IV特性が線形に近い素子における、電圧と電流の関係(293K)、及び電圧とTCRの関係(293K-303K)を示すグラフである。
図3】IV特性が非線形な素子における、電圧と電流の関係(293K)、及び電圧とTCRの関係(293K-303K)を示すグラフである。
図4】本発明の一実施形態のボロメータのセル構造を示す縦断正面図である。
図5】本発明の一実施形態のボロメータのセル構造を示す縦断正面図である。
図6】本発明の一実施形態のボロメータアレイの構造を示す平面図である。
図7】本発明の一実施形態のボロメータのセル構造を示す縦断正面図である。
図8】本発明の一実施形態のボロメータの製造方法を示す縦断正面図である。
図9】本発明の一実施形態のボロメータアレイの製造方法を示す工程図である。
図10】本発明の一実施形態のボロメータアレイの構造を示す平面図である。
図11】本発明の一実施形態のボロメータのセル構造を示す縦断正面図及びアレイの構造を示す平面図である。
図12】機械学習モデルにより予測した2元合金の組成である。
図13】機械学習モデルにより予測した2元合金の組成である。
図14】機械学習モデルにより予測した2元合金の組成である。
図15】機械学習モデルにより予測した2元合金の組成である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明者らは、カーボンナノチューブを含むボロメータ膜を用いたボロメータ型検出器において、カーボンナノチューブとコンタクト電極との接合の具合が、TCRに大きく影響すること、特に、ボロメータ膜にコンタクトする電極の材料を、Li、Be、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Ba、La、Hf、Ta、Ir、Pt、Au、及びBiからなる群から選択される2種以上の金属の合金とすることで、より高いTCRが得られることを見出した。
【0014】
以下に、本実施形態に係るコンタクト電極を備えたボロメータ型赤外線検出器の構成を説明する。
図1に示すとおり、本実施形態のボロメータ型赤外線検出器は、基板1、基板1上に形成されたボロメータ膜3(CNT膜)、及びボロメータ膜3(CNT膜)に接触して設けられた2つのコンタクト電極2、4を少なくとも備える。従来、CNTトランジスタなどでは、コンタクト電極の材料としては、良いオーミック接合が得られるAu、Ti、Ptなどの金属が使用される。CNT膜とコンタクト電極との間にオーミック接合が形成されている場合の電流電圧特性(IV特性)において、一般に図2左に示すように正方向のバイアス電圧におけるIV曲線と負方向のバイアス電圧におけるIV曲線が対称であり、TCRは、通常、図2右に示すように電圧に依存せず一定である。
一方、本発明者らは、CNT膜とコンタクト電極との接合がショットキー接合となるようにコンタクト電極の材料を選択した場合に、図3左に示すようにIV特性が正電圧と負電圧で非対称性を示し、そのときのTCRは図3右に示すように電圧に依存して変化し、例えば、電流の流れにくい負側で特に大きなTCRが得られることを発見した。CNT膜とコンタクト電極との接合は、材料の仕事関数の他、界面状態(表面状態)などにより複雑に影響されるが、2種以上の金属を組み合わせた合金を電極に用いることで、大きなTCRが得られるように適切に調整することが可能であることが解った。
【0015】
(コンタクト電極)
ボロメータ膜に接続された2つのコンタクト電極のうち、少なくとも1つが合金で形成されればよいが、通常は両方が合金で形成されることが好ましい。また、2つのコンタクト電極には、同じ合金を用いてもよいし、異なる合金を用いてもよい。
【0016】
電極を構成する合金として、本発明者らは、実験とシミュレーションから得られた仕事関数及び電気抵抗率のデータを目的変数として、Random Forest、MLPregressor、sklern_fabnなどの機械学習モデルを構築し、両方の目的変数の値が好ましい値となる2元合金の組成を予測することで(図12~15)、本実施形態のボロメータ型赤外線検出器の電極に用いるのに適した合金組成を特定した。
具体的には、電極を構成する合金は、Li、Be、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Ba、La、Hf、Ta、Ir、Pt、Au、及びBiから選択される2種以上の金属を含むことが好ましく、Al、Cu、Ag、及びAuから選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。
合金組成は特に限定されないが、例えば、2端子型の素子において、2つそれぞれの電極におけるショットキー障壁の高さ等を制御した接合状態を作成するために、それぞれの電極の合金組成を決めることができる。
【0017】
また、ボロメータ型赤外線検出器の電極に用いる合金は、所望の仕事関数を有すると同時に、電気抵抗率が低いことも望まれる。所望の仕事関数と電気抵抗率を満たす合金の例を以下に示す。
【0018】
<Alを含む合金>
電気抵抗率が500nΩm以下、好ましくは100nΩm以下で、かつ合金の仕事関数を5.0eVよりも高くする目的では、Pd、Pt、Auから選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
電気抵抗率が500nΩm以下で、合金の仕事関数を4.5eVから5.0eVの間とする目的ではFe、Co、Ni、Cu、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、Ir、Pt、Au、Biから選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、より好ましくは、電気抵抗率が100nΩm以下で、合金の仕事関数を4.5eVから5.0eVの間とする目的ではFe、Co、Ni、Cu、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Sb、Ir、Pt、Auから選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
おなじく電気抵抗率が500nΩm以下、好ましくは100nΩm以下で、合金の仕事関数を4.0eVから4.5eVの間にする目的では、Be、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Ag、In、Sn、Sb、Hf、Ta、Biから選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
おなじく電気抵抗率が500nΩm以下、好ましくは100nΩm以下で、合金の仕事関数を4.0eVよりも低くする目的では、Li、Y、Zr、Ba、La、Hf、Taから選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0019】
<Cuを含む合金>
電気抵抗率が500nΩm以下、好ましくは100nΩm以下で、かつ合金の仕事関数を5.0eVよりも高くする目的ではPd、Pt、Auから選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
電気抵抗率が500nΩm以下、好ましくは100nΩm以下で、合金の仕事関数を4.5eVから5.0eVの間とする目的ではBe、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Hf、Ta、Ir、Pt、Au、Biから選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
おなじく電気抵抗率が500nΩm以下で、合金の仕事関数を4.0eVから4.5eVの間にする目的では、Li、Al、Ti、V、Mn、Zn、Y、Zr、Nb、In、Ba、La、Hf、Taから選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、より好ましくは、電気抵抗率が100nΩm以下で、合金の仕事関数を4.0eVから4.5eVの間にする目的では、Li、Al、Mn、Zn、Y、Nb、In、Ba、La、Taから選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
おなじく電気抵抗率が500nΩm以下で、合金の仕事関数を4.0eVよりも低くする目的では、Li、Y、Zr、Ba、La、Hfから選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、より好ましくは、電気抵抗率が100nΩm以下で、合金の仕事関数を4.0eVよりも低くする目的では、Li、Baから選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0020】
<Agを含む合金>
電気抵抗率が500nΩm以下、好ましくは100nΩm以下で、かつ合金の仕事関数を5.0eVよりも高くする目的ではPd、Pt、Auから選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
電気抵抗率が500nΩm以下、好ましくは100nΩm以下で、合金の仕事関数を4.5eVから5.0eVの間とする目的ではBe、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、In、Sn、Sb、Hf、Ta、Ir、Pt、Au、Biから選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
おなじく電気抵抗率が500nΩm以下で、合金の仕事関数を4.0eVから4.5eVの間にする目的では、Li、Be、Al、Ti、V、Mn、Zn、Y、Zr、Nb、In、Ba、La、Hf、Taから選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、より好ましくは、電気抵抗率が100nΩm以下で、合金の仕事関数を4.0eVから4.5eVの間にする目的では、Li、Be、Al、Ti、Mn、Zn、Y、Zr、Ba、La、Hf、Taから選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
おなじく電気抵抗率が500nΩm以下で、合金の仕事関数を4.0eVよりも低くする目的では、Li、Y、Zr、Ba、La、Hfから選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、より好ましくは、電気抵抗率が100nΩm以下で、合金の仕事関数を4.0eVよりも低くする目的では、Li、Baから選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0021】
<Auを含む合金>
電気抵抗率が500nΩm以下で、かつ合金の仕事関数を5.0eVよりも高くする目的ではBe、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Hf、Ta、Ir、Pt、Biから選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、より好ましくは、電気抵抗率が100nΩm以下で、かつ合金の仕事関数を5.0eVよりも高くする目的では、Be、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Ta、Ir、Ptから選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
電気抵抗率が500nΩm以下で、合金の仕事関数を4.5eVから5.0eVの間とする目的ではLi、Be、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Ag、In、Sn、Sb、Ba、La、Hf、Ta、Ir、Biから選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、より好ましくは、電気抵抗率が100nΩm以下で、合金の仕事関数を4.5eVから5.0eVの間とする目的ではLi、Be、Al、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Y、Nb、Mo、Rh、Ag、In、Baから選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
おなじく電気抵抗率が500nΩm以下で、合金の仕事関数を4.0eVから4.5eVの間にする目的では、Li、Ti、Y、Zr、Ba、La、Hf、Taから選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、より好ましくは、電気抵抗率が100nΩm以下で、合金の仕事関数を4.0eVから4.5eVの間にする目的では、Li、Baを含むことが好ましい。
おなじく電気抵抗率が500nΩm以下で、合金の仕事関数を4.0eVよりも低くする目的ではLi、Y、Zr、Ba、La、Hfから選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、より好ましくは、電気抵抗率が100nΩm以下で、合金の仕事関数を4.0eVよりも低くする目的ではLi、Baから選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0022】
一実施形態では、合金材料の電気抵抗率は、500nΩm以下、好ましくは400nΩm以下、より好ましくは300nΩm以下、さらに好ましくは200nΩm以下、特に好ましくは100nΩm以下である。
【0023】
なお、合金材料の組成は、電気抵抗率や仕事関数以外にも、表面酸化膜の形成によるトンネル障壁の厚さを制御する目的や、受光部分から電極材料への熱拡散を最適化する目的、抵抗率の温度依存性制御の目的などを満たすためにも最適化することが出来る。
【0024】
コンタクト電極の大きさ、厚み等は、特に限定されないが、厚みは例えば、10nm~1mmが好ましく、50nm~1μmがより好ましい。
【0025】
2つのコンタクト電極は互いに間隔をおいて設けられ、コンタクト電極間の距離は、1μm~500μmが好ましく、小型化のためには、5~200μmがより好ましい。5μm以上であると、例えば金属型カーボンナノチューブを僅かに含む場合でも、TCRの特性の低下を抑制することができる。また、500μm以下であると、二次元アレイ化による画像センサーの適用に有利である。
【0026】
コンタクト電極の製造方法は特に限定されないが、同時蒸着、同時スパッタリング、印刷法等で形成してもよいし、予め形成した合金膜等を用いてもよい。コンタクト電極は、図1に示すように基板上にボロメータ膜を形成した後に形成してもよいし、基板上にコンタクト電極を形成した後にボロメータ膜を形成してもよい。
【0027】
(ボロメータ膜)
本実施形態のボロメータ型赤外線検出器では、ボロメータ膜に半導体型カーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブ膜を用いる。
【0028】
ボロメータ膜としてのカーボンナノチューブ膜(CNT膜)は、2つのコンタクト電極を電気的に接続する導電パスを形成する複数のカーボンナノチューブから構成される薄膜である。カーボンナノチューブは、例えば、ネットワーク状の構造であることが好ましく、凝集し難く、均一な導電パスが得られる三次元的ネットワーク状の構造を形成していることが好ましい。
また、カーボンナノチューブのネットワークにおいて、カーボンナノチューブは、配向していてもよいし、配向していなくてもよいが、ある程度配向していることが好ましい。
【0029】
カーボンナノチューブは、単層、二層、多層カーボンナノチューブを使用することができるが、半導体型を分離する場合は、単層又は数層(例えば、2層又は3層)のカーボンナノチューブが好ましく、単層カーボンナノチューブがより好ましい。カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブを80質量%以上含むことが好ましく、90質量%以上(100質量%を含む)含むことがより好ましい。
【0030】
カーボンナノチューブの直径は、バンドギャップを大きくしてTCRを向上する観点で、0.6~1.5nmの間が好ましく、0.6nm~1.2nmがより好ましく、0.7~1.1nmがさらに好ましい。また、一実施形態では、特に1nm以下が好ましい場合もある。0.6nm以上であれば、カーボンナノチューブの製造がより容易である。1.5nm以下であれば、バンドギャップを適切な範囲に維持し易く、高いTCRを得ることができる。
【0031】
本明細書において、カーボンナノチューブの直径は、カーボンナノチューブ膜を原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope(AFM))を用いて観察して100箇所程度の直径を計測し、その60%以上、好ましくは70%以上、場合により好ましくは80%以上、より好ましくは100%が0.6~1.5nmの範囲内にあることを意味する。好ましくは、その60%以上、好ましくは70%以上、場合により好ましくは80%以上、より好ましくは100%が0.6~1.2nmの範囲内、さらに好ましくは0.7~1.1nmの範囲内にある。また、一実施形態では、その60%以上、好ましくは70%以上、場合により好ましくは80%以上、より好ましくは100%が0.6~1nmの範囲内にある。
【0032】
また、カーボンナノチューブの長さは、100nm~5μmの間が、分散しやすく、塗布性も優れているためより好ましい。またカーボンナノチューブの導電性の観点でも、長さが100nm以上であることが好ましい。また、5μm以下であれば成膜時の凝集を抑制し易い。カーボンナノチューブの長さは、より好ましくは500nm~3μm、さらに好ましくは700nm~1.5μmである。
【0033】
本明細書において、カーボンナノチューブの長さは、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope(AFM))を用いて少なくとも100本を観察し、数え上げることでカーボンナノチューブの長さの分布を測定し、その60%以上、好ましくは70%以上、場合により好ましくは80%以上、より好ましくは100%が100nm~5μmの範囲内にあることを意味する。好ましくは、その60%以上、好ましくは70%以上、場合により好ましくは80%以上、より好ましくは100%が500nm~3μmの範囲内にある。より好ましくは、その60%以上、好ましくは70%以上、場合により好ましくは80%以上、より好ましくは100%が700nm~1.5μmの範囲内にある。
【0034】
カーボンナノチューブの直径及び長さが上記範囲内であると、半導体性の影響が大きくなり、且つ、大きな電流値を得られるため、ボロメータ膜として用いた場合に高いTCR値が得られやすい。
【0035】
ボロメータ膜には、大きなバンドギャップとキャリア移動度を持つ半導体型カーボンナノチューブを用いることが好ましい。カーボンナノチューブ中、半導体型カーボンナノチューブ、好ましくは半導体型単層カーボンナノチューブの含有率は、一般に67質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上であり、特に90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上(100質量%を含む)がさらに好ましい。
【0036】
ボロメータ膜の厚みは特に限定されないが、例えば1nm以上、例えば数nm~100μm、好ましくは10nm~10μm、より好ましくは50nm~1μmの範囲である。一実施形態では、好ましくは20nm~500nm、より好ましくは50nm~200nmの範囲である。
ボロメータ膜の厚みが1nm以上であると、良好な光吸収率を得ることができる。
また、ボロメータ膜の厚みが10nm以上、好ましくは50nm以上であると、光反射層や光吸収材層を設けなくても十分な光吸収率が得られるため、素子構造を簡略にすることができる。
また、ボロメータ膜の厚みが1μm以下、好ましくは500nm以下であると、製造方法の簡便化の観点で好ましい。また、ボロメータ膜が厚過ぎると、上から蒸着等により形成されたコンタクト電極が、ボロメータ膜の下の方のカーボンナノチューブと十分にコンタクトせず、実効的な抵抗値が高くなる場合があるが、上記範囲内であれば、抵抗値の上昇を抑制することができる。
また、ボロメータ膜の厚みが上記のとおり10nm~1μmの範囲内であると、ボロメータ膜の製造方法として、印刷技術を好適に適用することができるという点でも好ましい。
なお、光反射層や光吸収材層を設ける場合は、ボロメータ膜の厚みを上記範囲よりも薄くして、製造プロセスの更なる簡便化及び抵抗値の改善を図ってもよい。
【0037】
ボロメータ膜の厚みは、ボロメータ膜の任意の10点で測定した厚みの平均値として求めることができる。
【0038】
また、ボロメータ膜の密度は、例えば0.3g/cm以上、好ましくは0.8g/cm以上、より好ましくは1.1g/cm以上である。上限は特に限定されないが、用いたカーボンナノチューブの真密度の上限値(例えば約1.4g/cm)とすることができる。
ボロメータ膜の密度が0.3g/cm以上であると、良好な光吸収率を得ることができる。
また、ボロメータ膜の密度が0.5g/cm以上であると、光反射層や光吸収材層を設けなくても十分な光吸収率が得られ、素子構造を簡略にすることができると言う点で好ましい。
なお、光反射層や光吸収材層を設ける場合は、ボロメータ膜の密度として、上記より低い密度を適宜選択してもよい。
【0039】
ボロメータ膜の密度は、ボロメータ膜の重量、面積、及び上で求めた厚みから算出することができる。
【0040】
また、ボロメータ膜において、上述の成分以外に、例えば、後述の負の熱膨張材料、イオン導電剤(界面活性剤、アンモニウム塩、無機塩)、樹脂、有機結着剤等を適宜用いてもよい。
【0041】
ボロメータ膜中のカーボンナノチューブの含有量は適宜選択できるが、好ましくは、ボロメータ膜の総質量を基準として0.1質量%以上が効果的で、より好ましくは、1質量%以上が効果的であり、例えば30質量%、さらには50質量%以上とすることが好ましく、場合により60質量%以上が好ましい場合もある。
【0042】
以下、カーボンナノチューブ膜の製造方法の一例を詳述する。
【0043】
カーボンナノチューブは、不活性雰囲気下、真空中において熱処理を行うことで、表面官能基やアモルファスカーボン等の不純物、触媒等を除去したものを用いてもよい。熱処理温度は、適宜選択できるが、800-2000℃が好ましく、800-1200℃がより好ましい。
【0044】
非イオン性界面活性剤は、適宜選択できるが、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系に代表されるポリエチレングリコール構造を有する非イオン性界面活性剤や、アルキルグルコシド系非イオン性界面活性剤など、イオン化しない親水性部位とアルキル鎖など疎水性部位で構成されている非イオン性界面活性剤を1種類若しくは複数組み合わせて用いることが好ましい。このような非イオン性界面活性剤としては、式(1)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテルが好適に用いられる。また、アルキル部が1又は複数の不飽和結合を含んでもよい。
【0045】
2n+1(OCHCHOH (1)
(式中、n=好ましくは12~18、m=10~100、好ましくは20~100である)
【0046】
特に、ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(10)オレイルエーテル、ポリオキシエチレン(10)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(10)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(20)オレイルエーテル、ポリオキシエチレン(100)ステアリルエーテルなどポリオキシエチレン(n)アルキルエーテル(nが20以上100以下、アルキル鎖長がC12以上C18以下)で規定される非イオン性界面活性剤がより好ましい。また、N,N-ビス[3-(D-グルコンアミド)プロピル]デオキシコールアミド、n-ドデシルβ-D-マルトシド、オクチルβ-D-グルコピラノシド、ジギトニンも使用することができる。
【0047】
非イオン性界面活性剤として、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアラート(分子式:C6412626、商品名:Tween 60、シグマアルドリッチ社製等)、ポリオキシエチレンソルビタントリオレアート(分子式:C2444、商品名:Tween 85、シグマアルドリッチ社製等)、オクチルフェノールエトキシレート(分子式:C1422O(CO)、n=1~10、商品名:Triton X-100、シグマアルドリッチ社製等)、ポリオキシエチレン(40)イソオクチルフェニルエーテル(分子式:C1740(CHCH2040H、商品名:Triton X-405、シグマアルドリッチ社製等)、ポロキサマー(分子式:C10、商品名:Pluronic、シグマアルドリッチ社製等)、ポリビニルピロリドン(分子式:(CNO)、n=5~100、シグマアルドリッチ社製等)等を用いることもできる。
【0048】
カーボンナノチューブの分散溶液を得る方法は特に制限されず、従来公知の方法を適用できる。例えば、カーボンナノチューブ混合物、分散媒、及び非イオン性界面活性剤を混合してカーボンナノチューブを含む溶液を調製し、この溶液を超音波処理することでカーボンナノチューブを分散させ、カーボンナノチューブ分散液(ミセル分散溶液)を調製する。分散媒としては、分離工程の間、カーボンナノチューブを分散浮遊できる溶媒であれば特に限定されず、例えば水、重水、有機溶媒、イオン液体、又はこれらの混合物等を用いることができるが、水及び重水が好ましい。前記超音波処理に加えて、又は代えて、機械的な剪断力によるカーボンナノチューブ分散手法を用いてもよい。機械的な剪断は気相中で行ってもよい。カーボンナノチューブと非イオン性界面活性剤によるミセル分散水溶液においてカーボンナノチューブは孤立した状態であることが好ましい。そのため、必要に応じて、超遠心分離処理を用いてバンドル、アモルファスカーボン、不純物触媒等の除去を行ってもよい。分散処理の際、カーボンナノチューブを切断することができ、カーボンナノチューブの粉砕条件、超音波出力、超音波処理時間等を変えることで、長さを制御することができる。例えば、未処理のカーボンナノチューブをピンセット、ボールミル等で粉砕し、凝集体サイズを制御できる。これらの処理後、超音波ホモジナイザーにより、出力40~600W、場合により100~550W、20~100KHz、処理時間1~5時間、好ましくは~3時間にすることで、長さを100nm~5μmに制御することできる。1時間より短いと、条件によってはほとんど分散せず、ほとんど元の長さのままである場合がある。また、分散処理時間の短縮及びコスト減の観点では3時間以下が好ましい。本実施形態は、非イオン性界面活性剤を用いたことにより切断の調整が容易であるという利点も有し得る。また、除去が困難なイオン性界面活性剤を含有しないという利点もある。
【0049】
カーボンナノチューブの分散及び切断により、表面官能基がカーボンナノチューブの表面あるいは端に生成される。生成される官能基は、カルボキシル基、カルボニル基、水酸基等が生成される。液相での処理であれば、カルボキシル基、水酸基が生成され、気相であれば、カルボニル基が生成される。
【0050】
また、前記重水又は水、及び非イオン性界面活性剤を含む液体における界面活性剤の濃度は、臨界ミセル濃度~10質量%が好ましく、臨界ミセル濃度~3質量%がより好ましい。臨界ミセル濃度未満であると分散できないため好ましくない。また、10質量%以下であれば、分離後、界面活性剤の量を低減しながら十分な密度のカーボンナノチューブを塗布することができる。本明細書において、臨界ミセル濃度(critical micelle concentration(CMC))とは、例えば一定温度下、Wilhelmy式表面張力計等の表面張力計を用い、界面活性剤水溶液の濃度を変えて表面張力を測定し、その変極点となる濃度のことを言う。本明細書において「臨界ミセル濃度」は、大気圧下、25℃での値とする。
【0051】
上記切断及び分散工程におけるカーボンナノチューブの濃度(カーボンナノチューブの重量/(カーボンナノチューブと分散媒と界面活性剤との合計重量)×100)は、特に限定されないが、例えば0.0003~10質量%、好ましくは0.001~3質量%、より好ましくは0.003~0.3質量%とすることができる。
【0052】
上述の切断・分散工程を経て得られた分散液を、後述する分離工程にそのまま用いてもよいし、分離工程の前に、濃縮、希釈等の工程を行ってもよい。
【0053】
カーボンナノチューブの分離は、例えば、電界誘起層形成法(ELF法:例えば、K.Ihara et al. J.Phys.Chem.C.2011、115、22827~22832、日本特許第5717233号明細書を参照、これらの文献は参照により本明細書に組み込まれる)により行うことができる。ELF法を用いた分離方法の一例を説明する。カーボンナノチューブ、好ましくは単層カーボンナノチューブを非イオン性界面活性剤により分散し、その分散液を縦型の分離装置に入れ、上下に配置された電極に電圧を印加することで、無担体電気泳動により分離する。分離のメカニズムは例えば以下のように推定できる。カーボンナノチューブを非イオン性界面活性剤により分散した場合、半導体型カーボンナノチューブのミセルは負のゼータ電位を有し、一方金属型カーボンナノチューブのミセルは逆符号(正)のゼータ電位(近年では、僅かに負のゼータ電位を有するかほとんど帯電していないとも考えられている)を持つ。そのため、カーボンナノチューブ分散液に電界を印加すると、ゼータ電位の差などにより、導体型カーボンナノチューブミセルは陽極(+)方向へ、金属型カーボンナノチューブミセルは陰極(-)方向へ電気泳動する。最終的には陽極付近に半導体型カーボンナノチューブが濃縮された層が、陰極付近に金属型カーボンナノチューブが濃縮された層が分離槽内に形成される。分離の電圧は、分散媒の組成及びカーボンナノチューブの電荷量等を考慮して適宜設定できるが、1V以上200V以下が好ましく、10V以上200V以下がより好ましい。分離工程の時間短縮の観点では100V以上が好ましい。また、分離中の泡の発生を抑制して分離効率を維持する観点では200V以下が好ましい。分離は、繰り返すことで純度が向上する。分離後の分散液を初期濃度に再設定して同様の分離操作を行ってもよい。それにより、さらに高純度化することができる。
【0054】
上述のカーボンナノチューブの分散・切断工程及び分離工程により、所望の直径・長さを有する半導体型カーボンナノチューブが濃縮された分散液を得ることができる。なお、本明細書において、半導体型カーボンナノチューブが濃縮されているカーボンナノチューブ分散液を「半導体型カーボンナノチューブ分散液」と呼ぶ場合がある。分離工程により得られる半導体型カーボンナノチューブ分散液は、カーボンナノチューブの総量中、半導体型カーボンナノチューブを、一般に67質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上であり、特に好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上(上限は100質量%であってもよい)含む分散液を意味する。金属型及び半導体型のカーボンナノチューブの分離傾向については、顕微Ramanスペクトル分析法と紫外可視近赤外吸光光度分析法により分析することができる。
【0055】
上述のカーボンナノチューブの分散・切断工程後、且つ、分離工程前のカーボンナノチューブ分散液のバンドル、アモルファスカーボン、金属不純物等を除去するため遠心分離処理を行ってもよい。遠心加速度は適宜調整できるが、10000×g~500000×gが好ましく、50000×g~300000×gがより好ましく、場合により100000×g~300000×gであってもよい。遠心分離時間は0.5時間~12時間が好ましく、1~3時間がより好ましい。遠心分離温度は、適宜調整できるが、4℃~室温が好ましく、10℃~室温がより好ましい。
【0056】
分離後のカーボンナノチューブ分散液の界面活性剤の濃度は適宜制御することができる。カーボンナノチューブ分散液の界面活性剤の濃度は、臨界ミセル濃度~5質量%程度が好ましく、より好ましくは、0.001質量%~3質量%、塗布後の再凝集等を抑えるために、0.01~1質量%が特に好ましい。
【0057】
上述の工程により得られた半導体型カーボンナノチューブ分散液を所定の基材(基板や後述する断熱層等)上に塗布して乾燥させ、場合により熱処理を行うことにより、ボロメータ膜を形成することができる。
【0058】
半導体型カーボンナノチューブ分散液を所定の基材に塗布する方法としては、特に限定されず、滴下法、スピンコート、印刷、インクジェット、スプレー塗布、ディップコート等が挙げられる。製造コストの低減の観点では、印刷法が好ましい。印刷法としては、塗布(ディスペンサー、インクジェット等)、転写(マイクロコンタクトプリント、グラビア印刷等)等が挙げられる。
【0059】
所定の基材に塗布した半導体型カーボンナノチューブ分散液は、熱処理により界面活性剤や溶媒を除去することができる。熱処理の温度は界面活性剤の分解温度以上で適宜設定できるが、150~500℃が好ましく、200~500℃、例えば200~400℃がより好ましい。200℃以上であれば界面活性剤の分解物の残留を抑制し易いためより好ましい。また、500℃以下、例えば400℃以下であれば、基板や他の構成要素の変質を抑制することができるため好ましい。また、カーボンナノチューブの分解やサイズ変化、官能基の離脱等を抑制することができる。
【0060】
(負の熱膨張材料)
一実施形態では、ボロメータ膜は、カーボンナノチューブに加えて負の熱膨張材料を含むことができる。
本実施形態に係るボロメータ膜は、分散したカーボンナノチューブが絡み合って集合して形成されたネットワーク構造を構成する三次元的な網目構造を有するカーボンナノチューブ集合体中に、負熱膨張材料が分散しているカーボンナノチューブ複合材料である。このようなカーボンナノチューブの三次元的な導電ネットワークは、ボロメータ材料中において、すべて接続され導電に寄与しているわけではなく、一部のカーボンナノチューブは、導電機構に寄与していない。これらのカーボンナノチューブは、温度上昇に伴う負熱膨張材料の体積減少の効果で、新たな導電パスを構築する。又は、体積減少の効果で、カーボンナノチューブ同士の接触面積が増え、さらに、導電パスも増加する。これにより、温度上昇に伴う電流増加がより大きくなり、TCR値が向上する。つまり、半導体型カーボンナノチューブに混合する負熱膨張材料は、温度上昇に伴って収縮するので、その際離れていたカーボンナノチューブ同士のネットワークが追加生成され、導電パスが多くなり、電流が多く流れる。また、一実施形態では、半導体型カーボンナノチューブより、抵抗の大きな負熱膨張材料を使用することで、より効率的に半導体型カーボンナノチューブの導電パスを形成することができる。
【0061】
本明細書において、負熱膨張材料とは、温度上昇に伴い収縮する負の膨張率を有する材料を意味する。負熱膨張材料としては、例えば、-100~+200℃の任意の温度領域、例えば-100~+100℃の領域、好ましくはボロメータの使用温度領域、例えば少なくとも-50~100℃において、温度差1Kあたりの線熱膨張率ΔL/L((膨張後の長さ-膨張前の長さ)/膨張前の長さ)が好ましくは-1×10-6/K~-1×10-3/K、より好ましくは-1×10-5/K~-1×10-3/Kである材料が挙げられる。
熱膨張率は、例えばJIS Z 2285(金属材料の線膨張係数の測定方法)又はJIS R 1618(ファインセラミックスの熱機械分析による熱膨張の測定方法)等に準拠して測定することができる。
【0062】
一実施形態では、負熱膨張材料は、ボロメータの使用環境において、十分な負の熱膨張を示す材料であることが好ましい。ボロメータの使用環境の温度としては、例えば、例えば、-350℃~100℃、好ましくは-40℃~80℃、場合によりさらに好ましくは20℃~30℃、例えば21℃~30℃である。
また、ボロメータの使用環境の湿度としては、例えば、ボロメータ部が大気開放されているような構造で使用する場合、環境湿度であってよく、例えば75%RH以下が好ましい。また、真空パッケージされていたり、パッケージ内に不活性ガスが重点されているような構造で使用する場合は、例えば5%RH以下が好ましいが、真空度等によっては上記範囲外であってもよい。なお、デバイスの長期安定性の観点からは湿度は低い方が好ましいため、いずれの場合も下限は特に限定されず、0%RH以上、例えば0%RH超である。
【0063】
また、前記負熱膨張材料の抵抗率は、特に限定されるものではないが、-100~+100℃の任意の温度領域、好ましくはボロメータの使用温度、例えば室温(約23℃)において、10-1Ωcm~、例えば1Ωcm~10Ωcm、好ましくは10Ωcm~10Ωcm、より好ましくは10Ωcm~10Ωcmであり得る。抵抗率は、例えばJIS K 7194、JIS K 6911等、定法に従って測定することができる。
【0064】
本明細書において、負熱膨張材料としては、Li、Al、Fe、Ni、Co、Mn、Bi、La、Cu、Sn、Zn、V、Zr、Pb、Sm、Y、W、Si、P、Ru、Ti、Ge、Ca、Ga、Cr、Cdのいずれか1種又は2種以上を含んだ酸化物、窒化物、硫化物、又は多元素化合物が挙げられるがこれらに限定されない。2種以上の化合物の混合物を用いてもよい。
負熱膨張材料としては、バナジウム酸化物、β-ユークリプタイト、ビスマス・ニッケル酸化物、タングステン酸ジルコニウム、ルテニウム酸化物、マンガン窒化物、チタン酸鉛、一硫化サマリウム等(これらの化合物の元素を1種以上の上記元素で置き換えたものも含む)が挙げられるがこれらに限定されない。例えば、LiAlSiO、ZrW、ZrWO(PO、BiNi0.85Fe0.15、Bi0.95La0.05NiO、Pb0.76La0.04Bi0.20VO、Sm0.780.22S、Cu1.8Zn0.2、Cu、0.4PbTiO-0.6BiFeO、MnCo0.98Cr0.02Ge、CaRuO3.74、MnGa0.7Ge0.30.880.12、Cd(CN)・xCCl、LaFe10.5Co1.0Si1.5、CaRuO、Mn3.27Zn0.45Sn0.28N、MnGa0.9Sn0.10.9、MnZnNが適当である。
【0065】
一実施形態では、負熱膨張材料の中でも、合成・入手の容易さの観点から、酸化物、窒化物、硫化物が好ましい。
【0066】
本明細書において、負熱膨張材料のサイズは、適宜選択できる。好ましくは、10nm~100μm、より好ましくは、15nm~10μmであり、また場合により50nm~5μmであることも好ましい。
また、負熱膨張材料の形態は、特に限定されるものではないが、例えば、球状、針状、棒状、板状、繊維状、鱗片状等が挙げられ、成膜性の観点では、球状が好ましい。
【0067】
また、ボロメータ膜中の負熱膨張材料の含有量は適宜選択できるが、ボロメータ膜の総質量を基準として1~99質量%含まれていることが好ましく、1~70質量%であることがより好ましく、例えば1~50質量%、場合により10~50質量%であることも好ましく、また40質量%以下が好ましい場合もある。
【0068】
また、ボロメータ膜は、カーボンナノチューブ及び任意成分としての負熱膨張材料に加えて、結着剤、さらに所望により他の成分を含んでもよいが、カーボンナノチューブと負熱膨張材料の総質量が、ボロメータ膜の質量を基準として70質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましい。
【0069】
カーボンナノチューブと負の熱膨張材料を含むボロメータ膜は、上記のカーボンナノチューブ分散液を用いたボロメータ膜の製造方法において、カーボンナノチューブ分散液に負の熱膨張材料、必要により結着剤などを添加した分散液を用いることにより製造することができる。
【0070】
(基板)
基板は、フレキシブル基板及びリジッド基板のいずれであっても良く、適宜選択できるが、少なくとも素子形成表面が絶縁性のもの、半導体性のものが好ましい。例えば、Si、SiOを被膜したSi、SiO、SiN、ガラス等の無機材料、及び、ポリマー、樹脂、プラスチック等の有機材料、例えばパリレン、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリルスチレン樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、フッ素樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート等が使用できるが、これらに限定されない。
【0071】
(ボロメータ型赤外線検出器の製造方法)
本実施形態のボロメータ型赤外線検出器は、例えば以下のようにして製造することができる。基板上に半導体型カーボンナノチューブを含む分散液を塗布、乾燥、熱処理する。これらの操作により基板上にボロメータ膜層が形成される。その後、蒸着、スパッタ法、又は塗布等により、ボロメータ膜層に重ねて、50μmの間隔で2つのコンタクト電極(第1、2電極)を作製する。
【0072】
本実施形態のボロメータ型赤外線検出器は、また、以下のようにしても製造することができる。基板としてSiO被膜したSiを使用し、それらをアセトン、イソプロピルアルコール、水により順に洗浄し、その後、酸素プラズマ処理で表面の有機物等を除去する。次に3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)水溶液中に基板を浸漬、乾燥後する。非イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレン(100)ステアリルエーテル又はポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル溶液に分散した半導体型カーボンナノチューブを含む分散液を作製し、基板上に塗布、乾燥する。大気中において200℃以上で焼成することで非イオン性界面活性剤等を除去する。これらの操作により基板上にボロメータ膜層が形成される。その後、蒸着、スパッタ法、又は塗布等により、ボロメータ膜層に重ねて、50μmの間隔で2つのコンタクト電極(第1、2電極)を作製する。形成されたボロメータ膜層上の電極間の領域にアクリル樹脂(PMMA)溶液を塗布してPMMAの保護層を形成する。この後、基板全体を酸素プラズマ処理することにより、ボロメータ膜層以外の領域にある余分なカーボンナノチューブ等を除去する。大気中において200℃以上で加熱することで、余分な溶媒、不純物等を除去する。
【0073】
得られた図1のボロメータ型赤外線検出器は、光照射による電気抵抗の温度依存性を利用して温度を検出する。そのため、他の周波数領域においても、光照射により温度が変化すれば同様に使用でき、例えば、テラヘルツ領域を検出することもできる。また、温度変化による電気抵抗の変化の検出は、図1の構造だけでなく、ゲート電極を備えることで電界効果トランジスタにすることで抵抗値変化を増幅することによって行うこともできる。
【0074】
以上、本実施形態のボロメータ型赤外線検出器の基本的な構成を示したが、本実施形態のボロメータ型赤外線検出器には、赤外線検出器に用いることができる素子構造及びアレイ構造を特に制限なく適用することができる。以下に、好適な素子構造及びアレイ構造の例を説明するが、本実施形態のボロメータ型赤外線検出器はこれらに限定されるものではない。
【0075】
[1]MEMS型の素子構造
図4、5は、本実施形態のボロメータ型赤外線検出器の素子の縦断断面図である。この構造では、読出回路113が形成された基板(シリコン基板等)101上に、支持脚106をささえとして基板101から間隙102を隔てて隔離させた赤外線検知部(受光部)110を有している。赤外線114が照射されると、赤外線検知部110のボロメータ膜104が熱せられる。このときの温度変化を抵抗変化として検出する。本実施形態では、ボロメータ膜に接続して設けられたコンタクト電極103の少なくとも一方に2種以上の金属からなる合金を用いることで、高いTCRを実現できるため、検出感度を高めることができる。
本実施形態のボロメータ型赤外線検出器には、また、図4に示すように、赤外線の吸収率を高めるために、光反射層109を設けて、ボロメータ膜104に吸収されきれずに透過した赤外光115を反射させ、再度ボロメータ膜に入射させてもよい。また、図4に示すようにボロメータ膜の直上に赤外線吸収層107を別途用意したり、あるいは、画素に入射する赤外線を効率良く吸収させるために、ヒサシと呼ばれる赤外線吸収構造107(図示せず)をさらに設けてもよい。
【0076】
[1-1]ボロメータ素子の構成要素
以下に、本実施形態のMEMS型の素子の構成要素の各々について詳述する。
【0077】
基板101、コンタクト電極103及びボロメータ膜104は、基板1、ボロメータ膜3、及びコンタクト電極2、4について上に説明したものを用いることができる。その他の構成要素について以下に説明する。
【0078】
(間隙)
本実施形態のボロメータ型赤外線検出器では、上記ボロメータ膜104を備える赤外線検知部110と基板101との間には間隙102が設けられている。図4のような光反射層109を備えるボロメータでは、吸収しようとする赤外線の波長を考慮して間隙の高さdを決定することが好ましい。また、図5のような光反射層を有しないボロメータでは、間隙の高さdを、吸収しようとする赤外線の波長を考慮することなく、所望の値に設定してもよい。作製の容易さの観点では、間隙の高さdを0.5μm以上とすることが好ましい。なお、間隙の高さdは、基板101の上面(基板上に絶縁保護膜等が存在する場合は、その上面)から赤外線検知部110の下面までの距離を表す。
なお、素子全体を真空パッケージングして当該間隙102を真空に保つことで、赤外線検知部と基板との間の断熱性を高めることもできる。
【0079】
(赤外線吸収構造)
本実施形態のボロメータ型赤外線検出器では、赤外線吸収構造を設けることができる。
例えば、入射する赤外線を効率良く吸収させるために、ヒサシ状の赤外線吸収構造107を設けて、フィルファクターの更なる向上を図ってもよい。このような構造としては、例えばSiNからなるものが挙げられるが、これに限定されず、当該技術分野で用いられるものを特に制限なく適用できる。
また、図4に示すように、ボロメータ膜104より上層、すなわち、赤外線が入射する側に、赤外線吸収層107を設けてもよい。赤外線吸収層は、ボロメータ膜104上に直接設けてもよいし、後述する保護層の上に設けてもよい。
赤外線吸収層の厚みは、材料によって適宜設定できるが、例えば50nm~1μmとすることができる。
ボロメータ膜104上に直接赤外線吸収層107を設ける場合は、限定されるものではないが、例えばポリイミドの塗布膜等が挙げられる。保護層の上に設ける赤外線吸収層107としては、限定されるものではないが、例えば窒化チタン薄膜等が挙げられる。
【0080】
(光反射層)
本実施形態のボロメータ型赤外線検出器では、図4に示すように、ボロメータ膜104と基板101の間、例えば基板101上に光反射層109を設けてもよい。光反射層109としては、ボロメータにおいて光反射層として用いられる材料を制限なく用いることができ、一般には金属、例えば、金、銀、アルミニウム等が挙げられる。
【0081】
図4のように光反射層109を設けた場合には、光反射層109とボロメータ膜104との距離d、すなわち間隙102の高さを、吸収しようとする赤外線の波長λを考慮してd=λ/4とすることが好ましい。
【0082】
なお、本実施形態に係る半導体型カーボンナノチューブを含むボロメータ膜は、従来のボロメータ膜と比較して、高い赤外線吸収率を有する。このため、光反射層や赤外線吸収層を必ずしも設ける必要がないため、図5に示すように、これらの構成要素の一方又は両方を省略することもできる。これにより、素子構造をより簡素化することができ、製造プロセスを低コスト化することが可能となる。
【0083】
(保護層)
本実施形態のボロメータ型赤外線検出器では、図4図5に示すように、ボロメータ膜104上及び配線105の上下に、保護層108が存在することが好ましい。保護層は、絶縁保護層として機能することができ、また、ボロメータ膜の上側に存在する保護層は、酸素等の吸着によるカーボンナノチューブへのドーピングの抑制、あるいはボロメータ膜だけでなく保護層も赤外線を吸収することによる赤外線吸収率の増加等の効果を有し得る。
保護層108としては、ボロメータにおいて保護層として用いられる材料を制限なく用いることができ、検知したい赤外線波長域において透明性の高い材料が好ましく、例えば窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、後述の断熱層に用いられる樹脂、例えばパリレンの他、PMMA、PMMAアニソール等のアクリル樹脂、エポキシ樹脂、テフロン(登録商標)等が挙げられるがこれらに限定されない。保護層の厚みは、材料にもよるが、例えば5nm~50nmとすることができる。
【0084】
[1-2]アレイの構造
上記実施形態では一セル(単素子)のボロメータを示したが、複数の素子をアレイ状に並べて、ボロメータアレイとすることもできる。図6図4、5のセンサセルがアレイ状に並べられているボロメータアレイを示す平面図である。各素子のコンタクト電極103を列毎に複数の列配線112とコンタクト105で接続するとともに、行毎に複数の行配線111とコンタクト105で接続することにより、二次元のイメージセンサを構成することができる。このような構造では、各セルに対応する行配線111と列配線112に電気信号を与えて、セルの抵抗変化を読み出す。すべてのセルの抵抗変化を順次読み出すことにより、赤外線イメージセンサを構成することができる。
【0085】
[1-3]ボロメータ素子及びボロメータアレイの構造及び製造方法
本実施形態に係るボロメータ素子及びボロメータアレイの製造方法としては、ボロメータ膜に半導体型のカーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブ膜を用い、当該ボロメータ膜に接続されるコンタクト電極の少なくとも一方を2種以上の金属からなる合金で形成する他は、ボロメータの製造に通常用いられる製造プロセスを制限なく用いることができる。
【0086】
図4、5のような素子の作製には通常シリコンMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)プロセスが用いられる。MEMSプロセスでは、先ず、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ等で構成された読出回路113を作成した半導体基板101上に、層間絶縁膜をCVD法で形成し、その上層に金属の光反射層109、層間絶縁膜、犠牲層を形成する。その後、窒化シリコン膜の保護絶縁膜をCVD法により形成し、その上に本実施形態に係る2種以上の金属からなる合金を用いたコンタクト電極103を形成する。次いで、コンタクト電極103と接続されたボロメータ膜104、第2の窒化シリコン膜108を形成する。最後に、犠牲層をエッチングにより除去して間隙102を形成し、ダイアフラム構造のセルを得る。ここでボロメータ膜104は、前述のとおり、印刷法で形成することができ、その厚さと密度は、例えば、厚みが100nm、密度が1.1g/cmである。
【0087】
上記の構成要素に加えて、赤外線吸収層107を設ける場合は、上記のボロメータ膜104又は窒化シリコン膜の上に、印刷法等により成膜してもよいし、あらかじめ成膜した赤外線吸収層を積層してもよい。
【0088】
また、本実施形態のボロメータアレイには、トランジスタアレイを適用することも好ましい。トランジスタアレイを適用することにより、高速にスキャンすることが可能となる等の利点がある。トランジスタアレイの形態は特に限定されず、例えばトランジスタアレイを受光部の下に作りこむ等、当技術分野で用いられる形態を特に制限なく適用することができる。
【0089】
[2]印刷型の素子構造
図7は本実施形態のボロメータ型赤外線検出器の素子の縦断断面図である。この構造では、基板(ポリイミド基板等)201上に断熱層(パリレン層等)202が設けられ、断熱層202上にボロメータ膜(カーボンナノチューブ膜)204が設けられている。このようなボロメータ型赤外線検出器では、ボロメータ膜の温度上昇による抵抗変化を電極から読み出すことによって赤外線の強度を検知する。本実施形態では、ボロメータ膜204に接続して設けられているコンタクト電極203の少なくとも一方を2種以上の金属からなる合金で形成することで、高いTCRを実現でき、検出感度を高めることができる。
【0090】
本実施形態のボロメータ型赤外線検出器では、ボロメータ膜204と基板201が断熱層202で熱的に分離されているため、ボロメータ膜204から熱が逃げにくく検出感度を向上できる。さらに、基板201とボロメータ膜204の間に間隙を有するダイアフラム型構造のボロメータと比べて、素子構造が単純であり、また間隙を真空にするための真空パッケージングが必要ないという利点もある。
さらに、これらのボロメータ膜204及び断熱層202は、印刷技術を用いて作製することが可能であるため、MEMSプロセスを用いた場合に比べて、製造コストを低コスト化することが可能であるという利点もある。
【0091】
[2-1]ボロメータ素子の構成要素
以下に、本実施形態のボロメータ素子の構成要素の各々について詳述する。
【0092】
基板201、コンタクト電極203及びボロメータ膜204は、基板1、ボロメータ膜3及びコンタクト電極2、4について上に説明したものを用いることができる。その他の構成要素について以下に説明する。
【0093】
(断熱層)
断熱層202は、ボロメータ膜204から基板201への熱の伝達を遮断する層である。従来のボロメータでは、ボロメータ膜から基板への熱の伝達を遮断する構造として間隙が設けられており、その形成には、上述のように複雑な製造プロセスが必要となる。しかし、本実施形態における断熱層は、印刷プロセスなどで形成可能であるため、複雑な製造プロセスが不要となる。また、従来のボロメータでは、間隙を真空に保つために素子全体を真空パッケージングする必要があるが、本実施形態のボロメータでは真空パッケージングが必要ないという利点もある。
【0094】
断熱層には、熱伝導性の低い樹脂成分を用いることが好ましい。断熱層に用いる樹脂成分の熱伝導率は、基板201の熱伝導率より低く、例えば0.02~0.3(W/mK)、好ましくは0.05~0.15(W/mK)の範囲である。このような樹脂成分としては、パリレンが挙げられるがこれに限定されない。パリレンはパラキシリレン系ポリマーの総称で、ベンゼン環がCHを介して連結した構造を有する。パリレンの例としては、例えば、下記式で表されるダイマーから形成されるものが挙げられる:
【0095】
【化1】
(式中、少なくとも1つのベンゼン環の少なくとも1つの水素原子が、ハロゲン原子で置換されていてもよい。ハロゲンとしては、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)が挙げられ、塩素が好ましい。)。
パリレンとしては、パリレンN、パリレンC、パリレンD、パリレンHT等が挙げられるが、中でもパリレンC(熱伝導率:0.084(W/mK))が最も熱伝導率が低いため好適である。
【0096】
断熱層の厚みは、用いる成分の熱伝導性を考慮して適宜設定すればよいが、例えば、パリレンCを用いた場合、5μm~50μmの範囲が好ましく、10μm~20μmの範囲がより好ましい。
なお、赤外線吸収率の向上のために光反射層を設ける場合、上述のとおり、吸収しようとする赤外線の波長λを考慮してボロメータ膜204と光反射層との距離をd=λ/4とすることが好ましい。一方、光反射層を省略する場合には、吸収しようとする赤外線の波長λを考慮せずに、所望の断熱性が得られる範囲で断熱層の厚みを自由に設定してよく、この場合、より広域の波長帯の電磁波の検知に用いることができるという利点もある。
【0097】
(赤外線吸収層)
本実施形態のボロメータ型赤外線検出器では、図7に示したように、ボロメータ膜204より上層、すなわち、赤外線が入射する側に、赤外線吸収層209を設けてもよい。赤外線吸収層は、後述の保護層208上に設けてもよいし、ボロメータ膜204上に直接設けてもよい。
図7に示すように赤外線吸収層209を設ける場合、赤外線吸収層としては、例えば上述のMEMS型の素子において例示したものを用いることができる。
【0098】
(光反射層)
本実施形態のボロメータ型赤外線検出器では、図7に示したように、上方から入射し、吸収されずにボロメータ膜を透過した赤外線を吸収するために、ボロメータ膜204と基板201の間に光反射層(赤外線反射層)210を設けてもよい。
光反射層を設ける場合、光反射層210とボロメータ膜204との距離を、吸収しようとする赤外線の波長λを考慮してd=λ/4とすることが好ましい。
光反射層210としては、例えば、MEMS型の素子において例示したものを用いることができる。
【0099】
なお、本実施形態に係る半導体型カーボンナノチューブを含むボロメータ膜は、従来のボロメータ膜と比較して、高い赤外線吸収率を有する。このため、光反射層や赤外線吸収層を必ずしも設ける必要がないため、これらの構成要素の一方又は両方を省略することもできる。これにより、素子構造をより簡素化することでき、製造プロセスを低コスト化することが可能となる。
【0100】
(保護層)
本実施形態のボロメータ型赤外線検出器では、ボロメータ膜204上に、図7に示すように、保護層208が存在することが好ましい。
保護層208としては、例えば、MEMS型の素子において例示したものを用いることができる。
【0101】
[2-2]アレイの構造
印刷型の素子も、MEMS型の素子構造について図6で説明したように、複数の素子をアレイ状に並べて、ボロメータアレイとすることもできる。
【0102】
[2-3]ボロメータの製造方法
本実施形態に係るボロメータの製造方法は特に限定されず、ボロメータの製造に用いられる方法を適宜採用することができる。製造プロセスの簡略化及び低コスト化の観点からは、所望の基板上に、断熱層及びボロメータ膜を印刷法等を用いて形成することが好ましいが、必ずしも印刷法に限定されるものではない。
【0103】
(1)ボロメータ膜
上述の工程により得られた半導体型カーボンナノチューブを含む分散液を上述の断熱層上に塗布して乾燥させ、ボロメータ膜を形成することができる。また、カーボンナノチューブを含む分散液を所望の基材上で塗布して成膜したボロメータ膜を上述の断熱層と積層してもよい。成膜には、上述の基板上に成膜する場合と同様の工程及び条件を適用してもよい。
【0104】
(2)断熱層
断熱層の製造方法は、上記の断熱層を製造し得る方法であれば特に限定されない。例えば、断熱層としてパリレン膜を用いる場合、真空蒸着装置を用いて所望の領域をパリレンコーティングすることによりパリレン膜を形成することができる。具体的には、固体のダイマーを真空下で加熱すると、気化してダイマー気体となる。この気体が熱分解してダイマーが開裂し、モノマー形態になる。室温の蒸着チャンバ内で、このモノマー気体がすべての表面で重合し、薄く透明なポリマーフィルムが形成される。
必要により、蒸着プロセスを行う前に、基体の前処理、基体の清浄、蒸着すべきでない領域のマスキングなどを行ってもよい。
【0105】
(3)ボロメータアレイの構造及び製造方法
本実施形態に係るボロメータアレイの構造及び製造方法の一例を図を参照して説明するが、ボロメータアレイの構造及び製造方法はこれらに限定されるものではない。
【0106】
[例1]
図8(a)において、メタルマスクを通して基板201上にアルミニウム膜(1000Å)を蒸着して列配線206を形成する。次に、ポリイミドを塗布することにより、絶縁膜211を形成する。その上に列配線と同様に行配線207を形成する。さらにその上にポリイミドを塗布することにより、第2の絶縁膜211を形成する。
次に、図8(b)に示すように、断熱層202として、パリレン膜を蒸着により例えば約20μmの厚さで形成する。パリレンは通常ダイマーの状態であるが、蒸着装置内で約700℃まで加熱され、モノマー状態となり、基板に蒸着された後にポリマー状態となる。
次に、図8(c)に示すように、コンタクト孔205をリソグラフィとドライエッチングにより開口する。
次に、図8(d)に示すように、コンタクト孔205を介して行配線と列配線に接続された本実施形態に係るコンタクト電極203を形成する。電極203は、蒸着、スパッタ法、印刷法等により形成することができる。また、コンタクト電極203は、ボロメータ膜204の成膜後に形成してもよい。
その後、ボロメータ膜204を形成する。ボロメータ膜204は、印刷法により、例えば上述のカーボンナノチューブ分散液をディスペンサ装置で塗布することで形成することが好ましい。ここでボロメータ膜の厚さと密度は、例えば、厚みが100nm、密度が1.1g/cmである。
【0107】
光反射層を設ける場合は、断熱層202としてパリレン膜を形成した後、その上に光反射層210としてアルミニウム(1000Å)の蒸着によって形成し、その上に第2の断熱層202をパリレンの蒸着により約2.5μm(距離d)の厚さで形成する。
上記の構成要素に加えて、保護膜208を設ける場合は、例えば、形成されたボロメータ膜204上に保護層に用いる樹脂溶液を塗布して保護層を形成することができる。この後、基板全体を酸素プラズマ処理することにより、ボロメータ膜204以外の領域にある余分なカーボンナノチューブ等を除去してもよい。
上記の構成要素に加えて、赤外線吸収層209を設ける場合は、印刷法等により、上記のボロメータ膜204又は保護膜208上に成膜してもよいし、あらかじめ成膜した赤外線吸収層を積層又は転写してもよい。
【0108】
なお、以下の例では、光反射層、赤外線吸収層、保護層等を有しないボロメータの製造方法の例を示すが、当然ながら、これらの製造方法において、光反射層、赤外線吸収層、保護層等を形成する工程をさらに含んでもよい。
【0109】
[例2]
別の一例を図9を参照して説明する。
先ず、図9(a)に示すように、基板201上に断熱層202を形成し、その上に第1電極203-1と列配線206を形成する。
次に、列配線206の一部、後工程で行配線と交差する部分を絶縁するために、絶縁膜211を形成する。絶縁膜の形成方法としては、印刷法を用いて、ポリイミドを塗布形成する方法がある。
次に、図9(b)に示すように、第1電極と列配線と同様にして、第2電極203-2と行配線207を形成する。
なお、第1電極及び第2電極の少なくとも一方は本実施形態に係る2種以上の金属からなる合金を用いたコンタクト電極であり、蒸着やスパッタ法により形成することができる。列配線及び行配線は、それぞれ、第1電極及び第2電極と同じ材料でもよいし、異なっていてもよいが、列配線及び行配線には、金、アルミニウム、チタン、それらの合金などの通常CMOSプロセスの配線層に使われる材料を用いることがより好ましい。列配線及び行配線がそれぞれ第1電極及び第2電極と同じ材料である場合は、第1電極及び第2電極と同時に形成してもよい。
次に、図9(c)に示すように、第1、第2電極と接続するボロメータ膜204を形成する。
このような方法によれば、ボロメータアレイを、コンタクト形成を行わずに印刷プロセス等を用いて製造可能となり、更なる低コスト化が可能となる。
【0110】
[例3]
別の一例を図10を参照して説明する。
図10のボロメータアレイでは、樹脂基板等の第1基板212上にボロメータアレイが形成され、半導体基板である第2基板213上には通常のシリコンCMOSプロセスを用いて読出回路が形成されている(図示せず)。読出回路上には絶縁層が形成され、第1基板は第2基板上に貼り付けられている。本実施形態のボロメータアレイは、第2基板上の読出し回路中の列選択回路216及び行選択回路217に繋がる端子に、第1基板の列端子214及び行端子215を、ボンディングワイヤ218等を用いて電気的に接続することにより形成することができる。
【0111】
[例4]
別の一例を図11を参照して説明する。
本実施形態に係るボロメータアレイには、TFT(薄膜トランジスタ)アレイを適用することも好ましい。TFTアレイを適用することにより、高速にスキャンすることが可能となる。TFTアレイの形態は特に限定されないが、図11にその一例を示す。図11(a)に示したTFTアレイでは、基板上201上にゲート電極219が配置され、その上層に絶縁層を介して、コンタクト電極(ソース電極220、ドレイン電極222)が形成されている。その上層に断熱層202、ボロメータ膜204、及び保護膜208が形成されている。ドレイン電極222は、断熱層202を貫通するビア223を介して、ボロメータ膜204に接触して形成されている画素電極203に接続されている。もう一方の電極203は、コモン電極224に接続される。ボロメータ膜204に接合する電極203の少なくとも一方を本実施形態の合金を用いて形成することが好ましい。このTFTアレイの画素回路の二次元配置を図11(b)に示す。
【0112】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、本出願の開示事項は以下の付記に限定されない。
【0113】
(付記1)
基板、
半導体型カーボンナノチューブを含むボロメータ膜、及び
前記ボロメータ膜に、間隔をおいて接合されている2つの電極
を少なくとも備え、
前記2つの電極の少なくとも1つは、Li、Be、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Ba、La、Hf、Ta、Ir、Pt、Au、及びBiからなる群から選択される少なくとも2種の金属を含む合金で形成されている、ボロメータ型赤外線検出器。
(付記2)
前記2つの電極が、同一の合金で形成されている、付記1に記載のボロメータ型赤外線検出器。
(付記3)
前記2つの電極が、互いに異なる合金で形成されている、付記1に記載のボロメータ型赤外線検出器。
(付記4)
前記2つの電極の少なくとも1つが、
・Alと、Pd、Pt、及びAuから選択される1種以上、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Sb、Ir、Pt、及びAuから選択される1種以上、Be、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Ag、In、Sn、Sb、Hf、Ta、及びBiから選択される1種以上、又はLi、Y、Zr、Ba、La、Hf、及びTaから選択される1種以上と、の合金
・Cuと、Pd、Pt、及びAuから選択される1種以上、Be、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Hf、Ta、Ir、Pt、Au、及びBiから選択される1種以上、Li、Al、Mn、Zn、Y、Nb、In、Ba、La、及びTaから選択される1種以上、又はLi及びBaから選択される1種以上と、の合金
・Agと、Pd、Pt、及びAuから選択される1種以上、Be、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、In、Sn、Sb、Hf、Ta、Ir、Pt、Au、及びBiから選択される1種以上、Li、Be、Al、Ti、Mn、Zn、Y、Zr、Ba、La、Hf、及びTaから選択される1種以上、Li及びBaから選択される1種以上と、の合金、並びに
・Auと、Be、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Ta、Ir、及びPtから選択される1種以上、Li、Be、Al、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Y、Nb、Mo、Rh、Ag、In、及びBaから選択される1種以上、又はLi及びBaから選択される1種以上と、の合金
からなる群より選択される合金で形成されている、付記1~3のいずれか1項に記載のボロメータ型赤外線検出器。
(付記5)
前記ボロメータ膜が、カーボンナノチューブと、負の熱膨張材料とを含む複合材料で構成されている、付記1~4のいずれか1項に記載のボロメータ型赤外線検出器。
(付記6)
前記負の熱膨張材料が、Li、Al、Fe、Ni、Co、Mn、Bi、La、Cu、Sn、Zn、V、Zr、Pb、Sm、Y、W、Si、P、Ru、Ti、Ge、Ca、Ga、Cr、及びCdからなる群から選択される1種又は2種以上を含んだ酸化物、窒化物、硫化物、又は多元素化合物である、付記5に記載のボロメータ型赤外線検出器。
(付記7)
前記ボロメータ膜が、半導体型カーボンナノチューブを、カーボンナノチューブの総量の90質量%以上含む、付記1~6のいずれか1項に記載のボロメータ型赤外線検出器。
(付記8)
基板を用意する工程、
基板上に半導体型カーボンナノチューブを含むボロメータ膜を形成する工程、
前記ボロメータ膜を形成する工程の前又は後に、2つの電極を、該2つの電極が前記ボロメータ膜に間隔をおいて接合するように形成する工程であって、該2つの電極の少なくとも1つがLi、Be、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Ba、La、Hf、Ta、Ir、Pt、Au、及びBiからなる群から選択される少なくとも2種の金属を含む合金で形成されている、工程
を含む、ボロメータ型赤外線検出器の製造方法。
【符号の説明】
【0114】
1 基板
2 コンタクト電極
3 ボロメータ膜(カーボンナノチューブ膜)
4 コンタクト電極
101 基板
102 間隙
103 電極
104 ボロメータ膜
105 配線
106 支持脚
107 赤外線吸収層/赤外線吸収構造
108 保護層(絶縁保護層)
109 光反射層(赤外線反射層)
110 赤外線検知部
111 行配線
112 列配線
113 読出回路
114 入射光
115 ボロメータ膜を透過した光
201 基板
202 断熱層
203 電極
204 ボロメータ膜
205 コンタクト
206 列配線
207 行配線
208 保護層
209 赤外線吸収層
210 光反射層
211 絶縁膜
212 第1基板
213 第2基板
214 列端子
215 行端子
216 列選択回路
217 行選択回路
218 ボンディングワイヤ
219 ゲート電極
220 ソース電極
221 半導体
222 ドレイン電極
223 ビア
224 コモン電極
225 ソース線
226 ゲート線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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