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特開2023-174034移動体制御装置、移動体制御システム、移動体システム、移動体制御方法及び移動体制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174034
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】移動体制御装置、移動体制御システム、移動体システム、移動体制御方法及び移動体制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B66D 1/44 20060101AFI20231130BHJP
   E04G 3/30 20060101ALI20231130BHJP
   B66D 1/46 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B66D1/44 A
E04G3/30 303B
B66D1/46 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086642
(22)【出願日】2022-05-27
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)「令和3年度、国立研究開発法人科学技術振興機構研究成果最適展開支援プログラム 産学共同(本格型)事業「パラレルワイヤ機構を利用した建物外壁タイル診断の高精度化・自動化」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願」
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】菅原 雄介
(72)【発明者】
【氏名】熱海 七都
(72)【発明者】
【氏名】武田 行生
(72)【発明者】
【氏名】片村 立太
(72)【発明者】
【氏名】水谷 亮
(72)【発明者】
【氏名】柳田 克巳
(72)【発明者】
【氏名】三谷 哲史
【テーマコード(参考)】
2E003
【Fターム(参考)】
2E003EB01
2E003EB03
2E003EB06
(57)【要約】
【課題】位置決めの制御と張力の制御とを両立させる。
【解決手段】移動体制御装置1は、移動体8の移動目標に関する情報を受けて移動体8を所望の位置に配置するための制御信号をウインチ5に与えるトルク計算部2と、予め与えられる目標平均張力φ31(fc,avg)と、所望の位置に移動体8があるときに複数のワイヤ7のそれぞれに発生する計測張力φ16(f)と、の差異に起因する張力誤差の評価値φ34を小さくするための条件を、ワイヤ長修正値φ36(ΔlFB)としてトルク計算部2に与える平均張力積分フィードバック部3と、を備える。平均張力積分フィードバック部3は、ワイヤ長修正値φ36(ΔlFB)を、所望の位置にある移動体8に作用する力のつり合いを維持するためのつり合い条件から導いた分配比ベクトルφ35(ρΔl)を利用して複数のワイヤ7ごとに算出する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のワイヤの一方の端部のそれぞれに連結された複数の駆動部の動作に起因して前記駆動部から繰り出されたワイヤの長さであるワイヤ長が調整されることによって、前記複数のワイヤの他方の端部に連結された1個の移動体を移動させるための移動体制御装置であって、
前記移動体の移動目標に関する情報を受けて前記移動体を所望の位置に配置するための制御信号を前記駆動部に与える第1演算手段と、
目標平均張力と、前記所望の位置に前記移動体があるときに前記複数のワイヤのそれぞれに発生する計測張力と、の差異に起因する張力誤差の評価値を小さくするための条件を、前記ワイヤ長の修正値として前記第1演算手段に与える第2演算手段と、を備え、
前記第2演算手段は、前記ワイヤ長の前記修正値を、前記所望の位置にある前記移動体に作用する力のつり合いを維持するためのつり合い条件を利用して前記複数のワイヤごとに算出する、移動体制御装置。
【請求項2】
前記第2演算手段は、
前記張力誤差の評価値を得る手段と、
前記つり合い条件から導かれる分配比を得る手段と、
前記張力誤差の評価値及び前記分配比を利用して、前記ワイヤ長の前記修正値を得る手段と、を含む、請求項1に記載の移動体制御装置。
【請求項3】
前記張力誤差を得る手段は、
前記複数のワイヤのそれぞれに発生した複数の前記計測張力の平均である計測平均張力を得る手段と、
目標平均張力と前記計測平均張力の差分である平均張力誤差を得る手段と、
前記平均張力誤差を時間で積分した値を前記張力誤差の評価値として得る手段と、を有する、請求項2に記載の移動体制御装置。
【請求項4】
前記第1演算手段は、
前記移動体の移動目標に関する情報を逆運動学モデルに当てはめることによって目標ワイヤ長を得る手段と、
前記目標ワイヤ長と計測によって得た前記ワイヤ長である計測ワイヤ長に関する値との差分を得る手段と、
前記目標ワイヤ長に対して前記修正値を足し合わせる手段と、を含み、
前記第1演算手段は、前記計測ワイヤ長に関する値との差分を得る手段を含む第1のフィードバック系を構成し、
前記第1演算手段及び前記第2演算手段は、前記修正値を足し合わせる手段を含む第2のフィードバック系を構成する、請求項1に記載の移動体制御装置。
【請求項5】
前記第1演算手段が含む前記ワイヤ長との差分を得る手段に与えられる計測によって得た前記ワイヤ長を補正する第3演算手段をさらに備え、
前記第3演算手段は、
前記計測ワイヤ長に対応する補正ワイヤ剛性を、前記複数のワイヤのそれぞれについて得る手段と、
前記補正ワイヤ剛性と前記計測ワイヤ長とを利用して、前記複数のワイヤのそれぞれについて補正ワイヤ長を得る手段と、を含み、
前記第1演算手段の前記計測ワイヤ長に関する値との差分を得る手段は、前記計測ワイヤ長に関する値として前記補正ワイヤ長を受ける、請求項4に記載の移動体制御装置。
【請求項6】
複数のワイヤの一方の端部のそれぞれに連結された複数の駆動部の動作に起因して前記駆動部から繰り出されたワイヤの長さであるワイヤ長が調整されることによって、前記複数のワイヤの他方の端部に連結された1個の移動体を移動させるための移動体制御システムであって、
前記ワイヤ長を得るワイヤ長センサと、
所望の位置に前記移動体があるときに前記複数のワイヤのそれぞれに発生する張力を得る張力センサと、
前記複数の駆動部に制御信号を与える移動体制御部と、を備え、
前記移動体制御部は、
前記移動体の移動目標に関する情報を受けて前記移動体を所望の位置に配置するための制御信号を前記駆動部に与える第1演算手段と、
目標平均張力と、前記所望の位置に前記移動体があるときに前記複数のワイヤのそれぞれに発生する計測張力と、の差異に起因する張力誤差を小さくするための条件を、前記ワイヤ長の修正値として前記第1演算手段に与える第2演算手段と、を有し、
前記第2演算手段は、前記ワイヤ長の前記修正値を、前記所望の位置にある前記移動体に作用する力のつり合いを維持するためのつり合い条件を利用して前記複数のワイヤごとに算出する、移動体制御システム。
【請求項7】
複数のワイヤと、
前記複数のワイヤの一方の端部のそれぞれに連結された複数の駆動部と、
前記複数のワイヤの他方の端部に連結された1個の移動体と、
前記複数の駆動部に制御信号を与える移動体制御部と、を備え、
前記移動体制御部は、
前記移動体の移動目標に関する情報を受けて前記移動体を所望の位置に配置するための制御信号を前記駆動部に与える第1演算手段と、
目標平均張力と、前記所望の位置に前記移動体があるときに前記複数のワイヤのそれぞれに発生する計測張力と、の差異に起因する張力誤差を小さくするための条件を、前記ワイヤ長の修正値として前記第1演算手段に与える第2演算手段と、を有し、
前記第2演算手段は、前記ワイヤ長の前記修正値を、前記所望の位置にある前記移動体に作用する力のつり合いを維持するためのつり合い条件を利用して前記複数のワイヤごとに算出する、移動体システム。
【請求項8】
複数のワイヤの一方の端部のそれぞれに連結された複数の駆動部の動作に起因して前記駆動部から繰り出されたワイヤの長さであるワイヤ長が調整されることによって、前記複数のワイヤの他方の端部に連結された1個の移動体を移動させるための移動体制御方法であって、
前記移動体の移動目標に関する情報を受けて前記移動体を所望の位置に配置するための制御信号を前記駆動部に与える第1ステップと、
目標平均張力と、前記所望の位置に前記移動体があるときに前記複数のワイヤのそれぞれに発生する計測張力と、の差異に起因する張力誤差を小さくするための条件を、前記ワイヤ長の修正値として前記第1ステップの処理に返す第2ステップと、を有し、
前記第2ステップは、前記ワイヤ長の前記修正値を、前記所望の位置にある前記移動体に作用する力のつり合いを維持するためのつり合い条件を利用して前記複数のワイヤごとに算出する、移動体制御方法。
【請求項9】
複数のワイヤの一方の端部のそれぞれに連結された複数の駆動部の動作に起因して前記駆動部から繰り出されたワイヤの長さであるワイヤ長が調整されることによって、前記複数のワイヤの他方の端部に連結された1個の移動体を移動させるための制御をコンピュータに実行させる移動体制御プログラムであって、
前記コンピュータを、
前記移動体の移動目標に関する情報を受けて前記移動体を所望の位置に配置するための制御信号を前記駆動部に与える第1演算手段と、
目標平均張力と、前記所望の位置に前記移動体があるときに前記複数のワイヤのそれぞれに発生する計測張力と、の差異に起因する張力誤差を小さくするための条件を、前記ワイヤ長の修正値として前記第1演算手段に与える第2演算手段と、して動作させ、
前記第2演算手段は、前記ワイヤ長の前記修正値を、前記所望の位置にある前記移動体に作用する力のつり合いを維持するためのつり合い条件を利用して前記複数のワイヤごとに算出する、移動体制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体制御装置、移動体制御システム、移動体システム、移動体制御方法及び移動体制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
パラレルワイヤ機構は、移動体に複数本のワイヤを連結し、ウインチなどを用いて当該ワイヤの繰り出し長さを制御することによって、対象物を所望の位置まで移動させる。特許文献1は、パラレルワイヤ機構に関する技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-270321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
移動体を所望の位置まで移動させるための位置決めには、ワイヤの繰り出し長さを制御する方式がある。具体的には、まず、ウインチに設けたロータリエンコーダなどを用いて目標位置に移動する前のワイヤの繰り出し長さを計測する。次に、移動体を目標位置に移動させるためのワイヤの繰り出し長さを算出する。そして、ワイヤの繰り出し長さに基づいて得られる目標トルクを満たすような繰り出しパターンに従うようにウインチを駆動する。
【0005】
上記の制御によって移動体が目標位置までの移動を完了し、目標位置において静止したとき、移動体に作用する力の合力は、釣り合っている。移動体には、ワイヤから作用する力だけではなく、そのほかの要因に起因する外力も作用する。その結果、ワイヤの本数やシステムの自由度によっては、目標位置において静止した移動体に作用する力の態様は、一通りではなく、複数の態様を取り得る。この力の態様は、上述したワイヤの繰り出し長さのみによっては、管理することができない場合があり得る。例えば、弱いワイヤの張力によってつり合いがとれている場合には、移動体に作用する外力によって移動体が意図しない動きを生じてしまう。また、強いワイヤの張力によってつり合いがとれている場合には、パラレルワイヤ機構を構成する滑車などの部品に過剰な負荷が生じてしまう。
【0006】
そこで、ワイヤの繰り出し長さに変えて、ワイヤの張力に基づいて移動体の移動を制御する方式も検討されている。具体的には、ウインチに設けたロータリエンコーダなどを用いて目標位置に移動する前のワイヤの繰り出し長さを計測する。次に、移動体を目標軌道に沿って移動させるためのワイヤの繰り出しトルクを算出する。そして、ワイヤに発生する張力を力センサによって計測しながら、ワイヤの繰り出しトルクを制御する。この制御では、ワイヤの張力の制御は、ワイヤごとに調整される。
【0007】
このような張力を利用した制御では、個別のワイヤごとにワイヤの張力を制御する。その結果、移動体に作用する力の合力としてみたとき、目標位置では移動体を静止させるための力の釣り合いがとれない場合も生じる。この場合には、力の釣り合いがとれる位置まで、移動体が移動する。従って、移動体の位置が目標位置からずれてしまうことになる。
【0008】
つまり、位置を優先させようとすると張力の釣り合いの状態を所望の状態にできなくなり、張力の釣り合いの状態を優先させようとすると所望の位置に配置することができなくなってしまう。要するに、所望の位置に配置することと、当該位置における移動体に作用する力の釣り合いの状態を制御することと、を両立させる技術は存在していなかった。
【0009】
そこで、本発明は、位置決めの制御と張力の制御とを両立させることができる移動体制御装置、移動体制御システム、移動体システム、移動体制御方法及び移動体制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一形態は、複数のワイヤの一方の端部のそれぞれに連結された複数の駆動部の動作に起因して駆動部から繰り出されたワイヤの長さであるワイヤ長が調整されることによって、複数のワイヤの他方の端部に連結された1個の移動体を移動させるための移動体制御装置であって、移動体の移動目標に関する情報を受けて移動体を所望の位置に配置するための制御信号を駆動部に与える第1演算手段と、目標平均張力と、所望の位置に移動体があるときに複数のワイヤのそれぞれに発生する計測張力と、の差異に起因する張力誤差の評価値を小さくするための条件を、ワイヤ長の修正値として第1演算手段に与える第2演算手段と、を備え、第2演算手段は、ワイヤ長の修正値を、所望の位置にある移動体に作用する力のつり合いを維持するためのつり合い条件を利用して複数のワイヤごとに算出する。
【0011】
この移動体制御装置では、あらかじめ与えられる目標張力と計測張力の差が小さくなるように、第2演算手段がワイヤ長の修正値を算出する。第2演算手段は、ワイヤ長の修正値を算出するときに、所望の位置にある移動体に作用する力のつり合いを維持するためのつり合い条件を利用する。つまり、第2演算手段は、ワイヤ長の修正値を算出するに際して、所望の位置にある移動体に作用する力のつり合いを維持することを条件として取り入れている。その結果、第2演算手段が算出するワイヤ長の修正値によれば、移動体の位置を維持しながら、張力のずれを小さくすることができる。従って、移動体制御装置は、移動体に関する位置決めの制御と張力の制御とを両立させることができる。
【0012】
上述の移動体制御装置の第2演算手段は、張力誤差の評価値を得る手段と、つり合い条件から導かれる分配比を得る手段と、張力誤差の評価値及び分配比を利用して、ワイヤ長の修正値を得る手段と、を含んでもよい。この構成によれば、好適なワイヤ長の修正値を得ることができる。
【0013】
上述の移動体制御装置の張力誤差を得る手段は、複数のワイヤのそれぞれに発生した複数の計測張力の平均である計測平均張力を得る手段と、目標平均張力と計測平均張力の差分である平均張力誤差を得る手段と、平均張力誤差を時間で積分した値を張力誤差の評価値として得る手段と、を有してもよい。この構成によっても、好適なワイヤ長の修正値を得ることができる。
【0014】
上述の移動体制御装置の第1演算手段は、移動体の移動目標に関する情報を逆運動学モデルに当てはめることによって目標ワイヤ長を得る手段と、目標ワイヤ長と計測によって得たワイヤ長である計測ワイヤ長に関する値との差分を得る手段と、目標ワイヤ長に対して修正値を足し合わせる手段と、を含んでもよい。第1演算手段は、計測ワイヤ長に関する値との差分を得る手段を含む第1のフィードバック系を構成してもよい。第1演算手段及び第2演算手段は、修正値を足し合わせる手段を含む第2のフィードバック系を構成してもよい。この構成によっても、移動体の位置を維持しながら、張力のずれを小さくすることができる。
【0015】
上述の移動体制御装置の第1演算手段が含むワイヤ長との差分を得る手段に与えられる計測によって得たワイヤ長を補正する第3演算手段をさらに備えてもよい。第3演算手段は、計測ワイヤ長に対応する補正ワイヤ剛性を、複数のワイヤのそれぞれについて得る手段と、補正ワイヤ剛性と計測ワイヤ長とを利用して、複数のワイヤのそれぞれについて補正ワイヤ長を得る手段と、を含んでもよい。第1演算手段の計測ワイヤ長に関する値との差分を得る手段は、計測ワイヤ長に関する値として補正ワイヤ長を受けてもよい。
【0016】
ワイヤは、張力に応じて伸びる弾性伸びが生じることがあるし、時間の経過と共に伸びが大きくなる張力緩和が生じることもある。この構成によれば、ワイヤの伸びに起因する位置決め精度の低下を抑制することができる。
【0017】
本発明の別の形態は、複数のワイヤの一方の端部のそれぞれに連結された複数の駆動部の動作に起因して駆動部から繰り出されたワイヤの長さであるワイヤ長が調整されることによって、複数のワイヤの他方の端部に連結された1個の移動体を移動させるための移動体制御システムであって、ワイヤ長を得るワイヤ長センサと、所望の位置に移動体があるときに複数のワイヤのそれぞれに発生する張力を得る張力センサと、複数の駆動部に制御信号を与える移動体制御部と、を備え、移動体制御部は、移動体の移動目標に関する情報を受けて移動体を所望の位置に配置するための制御信号を駆動部に与える第1演算手段と、目標平均張力と、所望の位置に移動体があるときに複数のワイヤのそれぞれに発生する計測張力と、の差異に起因する張力誤差を小さくするための条件を、ワイヤ長の修正値として第1演算手段に与える第2演算手段と、を有し、第2演算手段は、ワイヤ長の修正値を、所望の位置にある移動体に作用する力のつり合いを維持するためのつり合い条件を利用して複数のワイヤごとに算出する。
【0018】
本発明のさらに別の形態である移動体システムは、複数のワイヤと、複数のワイヤの一方の端部のそれぞれに連結された複数の駆動部と、複数のワイヤの他方の端部に連結された1個の移動体と、複数の駆動部に制御信号を与える移動体制御部と、を備え、移動体制御部は、移動体の移動目標に関する情報を受けて移動体を所望の位置に配置するための制御信号を駆動部に与える第1演算手段と、目標平均張力と、所望の位置に移動体があるときに複数のワイヤのそれぞれに発生する計測張力と、の差異に起因する張力誤差を小さくするための条件を、ワイヤ長の修正値として第1演算手段に与える第2演算手段と、を有し、第2演算手段は、ワイヤ長の修正値を、所望の位置にある移動体に作用する力のつり合いを維持するためのつり合い条件を利用して複数のワイヤごとに算出する。
【0019】
本発明のさらに別の形態は、複数のワイヤの一方の端部のそれぞれに連結された複数の駆動部の動作に起因して駆動部から繰り出されたワイヤの長さであるワイヤ長が調整されることによって、複数のワイヤの他方の端部に連結された1個の移動体を移動させるための移動体制御方法であって、移動体の移動目標に関する情報を受けて移動体を所望の位置に配置するための制御信号を駆動部に与える第1ステップと、目標平均張力と、所望の位置に移動体があるときに複数のワイヤのそれぞれに発生する計測張力と、の差異に起因する張力誤差を小さくするための条件を、ワイヤ長の修正値として第1ステップの処理に返す第2ステップと、を有し、第2ステップは、ワイヤ長の修正値を、所望の位置にある移動体に作用する力のつり合いを維持するためのつり合い条件を利用して複数のワイヤごとに算出する。
【0020】
本発明のさらに別の形態は、複数のワイヤの一方の端部のそれぞれに連結された複数の駆動部の動作に起因して駆動部から繰り出されたワイヤの長さであるワイヤ長が調整されることによって、複数のワイヤの他方の端部に連結された1個の移動体を移動させるための制御をコンピュータに実行させる移動体制御プログラムであって、コンピュータを、移動体の移動目標に関する情報を受けて移動体を所望の位置に配置するための制御信号を駆動部に与える第1演算手段と目標平均張力と、所望の位置に移動体があるときに複数のワイヤのそれぞれに発生する計測張力と、の差異に起因する張力誤差を小さくするための条件を、ワイヤ長の修正値として第1演算手段に与える第2演算手段と、して動作させ、第2演算手段は、ワイヤ長の修正値を、所望の位置にある移動体に作用する力のつり合いを維持するためのつり合い条件を利用して複数のワイヤごとに算出する。
【0021】
本発明の別の形態である、移動体制御システム、移動体システム、移動体制御方法及び移動体制御プログラムによっても、移動体制御装置と同様に、位置決めの制御と張力の制御とを両立させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、位置決めの制御と張力の制御とを両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、実施形態の移動体システムの構成要素を模式的に示す図である。
図2図2は、実施形態の移動体システムのブロック図である。
図3図3は、実施形態の移動体制御装置の物理的な構成要素を示すブロック図である。
図4図4は、実施形態の移動体制御装置の機能ブロック図である。
図5図5は、図4に示されたトルク計算部の機能ブロック図である。
図6図6は、図4に示された平均張力積分フィードバック部の機能ブロック図である。
図7図7は、図4に示された静的ワイヤ伸び補償部の機能ブロック図である。
図8図8は、実施形態に係る移動体制御装置の具体的な制御ブロック図の例示である。
図9図9は、移動体制御装置が実行する移動体制御方法を示すフローチャートである。
図10図10は、変形例の移動体制御装置の機能ブロック図である。
図11図11は、変形例に係る移動体制御装置の具体的な制御ブロック図の例示である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して、本開示を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0025】
図1及び図2に示すように、移動体システム101は、移動体制御装置1(移動体制御部)と、複数のウインチ5(駆動部)と、複数のプーリユニット6と、複数のワイヤ7と、移動体8と、を有する。移動体システム101は、複数のワイヤ7の繰り出し長さを制御することによって、移動体8を所望の位置まで移動させる。このような機構を、パラレルワイヤ駆動機構と称する。
【0026】
移動体制御装置1は、壁面に吊り下げる各種の検査装置である移動体8に対する位置決めの制御と張力の制御とを両立させることができる。移動体制御装置1を含む移動体システム101は、一例として、タイル剥離検査装置を移動体8としたシステムに適用することができる。タイル剥離検査装置は、壁面から0.5mから1m程度離れた位置から水撃を加える。その水撃によって生じる音に基づいてタイルの剥離の有無を検査する。集音された音は、音響解析システムに提供され、AIや機械学習を用いて欠陥の有無を判別する。タイル剥離検査装置は、水撃のためウォーターガンと、集音のためのガンマイクと、画像による確認のためのカメラと、を備えてよい。
【0027】
移動体制御装置1は、移動体8の位置を維持したまま、ワイヤ7に作用する張力を大きくすることもできるし、張力を小さくすることもできる。このような張力は、目標平均張力φ31として移動体制御装置1に入力することができる。例えば、移動体8に風などに起因する外力が作用するとき、移動体8を静止させるために、ワイヤ7の張力を高める必要がある。このような場合に、移動体制御装置1は、外力に対抗できるだけの剛性をワイヤ7の張力制御によって実現できる。また、外力が作用しないような場合には、ワイヤ7の張力制御によって実現できる剛性は、必ずしも高くなくてもよい。このような場合に、移動体制御装置1は、プーリユニット6などに過度な負荷が作用しない程度にワイヤ7の張力を緩めることもできる。
【0028】
ウインチ5は、モータドライバ51と、モータ52と、ロータリエンコーダ53(ワイヤ長センサ)と、を有する(図2参照)。モータドライバ51は、移動体制御装置1から出力される指令トルクφ14(τc)に基づいて、モータ52を動作させるためのモータ制御信号を発生する。モータ52は、ワイヤ長を調整する。
【0029】
ロータリエンコーダ53は、計測ワイヤ長φ15(l)を出力する。ロータリエンコーダ53は、モータ52の出力軸の回転角度を計測する。また、ロータリエンコーダ53は、モータ52により回転するウインチドラムに設けられてもよい。モータ52の出力軸の回転角度を利用することによって、モータ52が繰り出したワイヤ長を得ることができる。
【0030】
なお、ワイヤ長を得る手段は、ロータリエンコーダ53に限定されない。ワイヤ長を得る手段は、ロータリエンコーダ53とは別の手段によって得てもよい。
【0031】
プーリユニット6は、プーリ61と、張力センサ62と、を有する。図1は、モータ52から移動体8までの間に1個のプーリユニット6を配置した構成を例示する。モータ52から移動体8までの間には、2以上のプーリユニット6が配置されてもよい。また、ウインチ5と移動体8は、プーリユニット6を介することなく接続されてもよい。つまり、プーリユニット6は、省略することもできる。プーリユニット6を省略した場合には、所望の位置に張力センサを設ければよい。
【0032】
プーリ61は、モータ52から移動体8までに張られたワイヤ7が延びる方向を変更する。張力センサ62は、計測張力φ16(f)を出力する。張力センサ62は、例えば、中間シーブ軸にせん断ロードセルとして設けることができる。なお、張力センサ62は、プーリユニット6とは別の部位に設けられてもよい。
【0033】
ワイヤ長センサであるロータリエンコーダ53、張力センサ62及び移動体制御装置1は、移動体制御システム100を構成する。
【0034】
<移動体制御装置>
図3を参照して、移動体制御装置1のハードウェア構成について説明する。移動体制御装置1は、例えば、コンピュータ500によって移動体制御プログラムPGが実行されることによって実現される。移動体制御プログラムPGは、コンピュータ500に移動体制御方法を実行させるためのものである。
【0035】
移動体制御装置1は、1又は複数のコンピュータ500を含む。コンピュータ500は、プロセッサであるCPU(Central Processing Unit)501と、主記憶部502と、補助記憶部503と、通信制御部504と、入力装置505と、出力装置506とを有する。移動体制御装置1は、これらのハードウェアと、プログラム等のソフトウェアとにより構成された1又は複数のコンピュータ500によって構成される。
【0036】
移動体制御装置1が複数のコンピュータ500によって構成される場合には、これらのコンピュータ500はローカルで接続されてもよいし、インターネット又はイントラネットなどの通信ネットワークを介して接続されてもよい。この接続によって、論理的に1つの移動体制御装置1が構築される。
【0037】
CPU501は、オペレーティングシステムやアプリケーション・プログラムなどを実行する。主記憶部502は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)により構成される。補助記憶部503は、ハードディスク及びフラッシュメモリなどにより構成される記憶媒体である。補助記憶部503は、一般的に主記憶部502よりも大量のデータを記憶する。通信制御部504は、ネットワークカード又は無線通信モジュールにより構成される。入力装置505は、キーボード、マウス、タッチパネル、及び、音声入力用マイクなどにより構成される。出力装置506は、ディスプレイ及びプリンタなどにより構成される。
【0038】
補助記憶部503は、あらかじめ、移動体制御プログラムPG及び処理に必要なデータを格納している。移動体制御プログラムPGは、移動体制御装置1の各機能要素をコンピュータ500に実行させる。例えば、移動体制御プログラムPGは、CPU501又は主記憶部502によって読み込まれ、CPU501、主記憶部502、補助記憶部503、通信制御部504、入力装置505、及び出力装置506の少なくとも1つを動作させる。例えば、移動体制御プログラムPGは、主記憶部502及び補助記憶部503におけるデータの読み出し及び書き込みを行う。
【0039】
移動体制御プログラムPGは、例えば、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリなどの有形の記録媒体に記録された上で提供されてもよい。移動体制御プログラムPGは、データ信号として通信ネットワークを介して提供されてもよい。
【0040】
ここで、移動体制御装置1が実行する制御について説明する。まず、このパラレルワイヤ駆動機構の移動体8における力のつり合い式は、式(1)~(3)のとおりである。
【数1】

【数2】

【数3】

ω:移動体8にかかる外力のレンチベクトル。
f:4本のワイヤ7の張力ベクトル。
:構造行列。
:i番目のワイヤ7の方向を表す単位ベクトル。
:移動体8の代表点からみたi番目のワイヤ取付点の位置ベクトル。
【0041】
移動体8の目標位置と、姿勢と、この時にかかる外力と、が式(1)~(3)に与えられたとき、これらとつり合うワイヤ張力の組合せを求めることは可能である。ただし、これらを満たす張力ベクトルの組合せは無数に存在する。
【0042】
移動体8がつり合いの状態にあるとき、ワイヤ張力の合力は「外力とつり合う力」と、「内力」と、を合わせたものと考えることができる。いま、移動体8がつり合いの状態にあり、「外力とつり合う力」と、「内力」と、がそれぞれ目標値からある誤差を持っていると仮定する。この状態で各ワイヤの張力を目標値に一致するように制御したとすると、つり合いの式が成り立たなくなることがある。その結果、移動体8は新たにつり合う位置まで移動してしまうドリフトが発生する可能性が生じる。
【0043】
そこで、移動体制御装置1は、式(3)を満たしながら内力を制御することで、ワイヤ張力の合力を維持したまま、間接的に内力のみを制御する。内力を間接的に表現する物理量としてワイヤ7の平均張力に着目する。そして、ワイヤ7の平均張力の積分フィードバックによう目標平均張力に一致させる。このとき、ワイヤ張力の合力を維持するために、つり合いの式を満たすそれそれのワイヤ7の繰出量を計算する。
【0044】
次に、ワイヤ剛性の計算と静的ワイヤ伸び補償とについて述べる。まず、張力が作用したときのワイヤ7の静的な伸びについて、ワイヤ7の剛性を用いた簡便な補償を行う。このとき、i番目のワイヤ7の剛性(k[N/m])は、単位長さのワイヤ7の剛性(k[N/m])を用いると、式(4)により示される。
【数4】

:i番目のワイヤ7の剛性。
:単位長さのワイヤ7の剛性。
λm,i、λsp,i:ワイヤ長(lm,i、lsp,i[m])が単位長さの何倍かを表す無次元数。
【0045】
なお、「lsp,i」は、i番目のワイヤ7について、ウインチ5のワイヤ繰出し点から最終プーリまでのワイヤ長である。「l」は、最終プーリから移動体8までのワイヤ長、又は、最終プーリから移動体8とワイヤ7の接続点までのワイヤ長である。「lm,i」は、ロータリエンコーダ53の計測値から計算されるワイヤ長(l)の計測値(計測ワイヤ長)である。
【0046】
ワイヤ7の剛性を示す対角行列(K)を考える。そして、ある張力(f)が作用したときの計測ワイヤ長(l)は、式(5)に示す伸び補償後の補正ワイヤ長(lm,cmp)として得られる。
【数5】

m,cmp:伸び補償後の補正ワイヤ長。
:計測ワイヤ長。
:ワイヤ7の剛性を示す対角行列。
f:張力。
【0047】
次に、平均張力の積分フィードバックについて説明する。後述するように、この制御系では計算トルク法により指令張力(f)を計算する。指令張力(f)と張力センサ62が出力する計測張力(f)との差の積分値にゲインを乗算することによって張力の修正値を得る。ただし、ワイヤ7の剛性行列(K)と構造行列(A)とを用いて、張力の合力が変化しないよう修正する。まず、張力の合力を変化させない張力の変化(Δf)は、式(6)または式(7)によって示される。
【数6】

:構造行列。
Δf:張力の変化。
【数7】
【0048】
次に、第iのワイヤ7の張力変化に関する分配比の成分を、式(8)に示す。
【数8】

ρΔf,i:第iのワイヤ7の張力変化に関する分配比。
Δf:第iのワイヤ7の張力変化。
【0049】
そして、式(7)の両辺を第4のワイヤ7の張力変化(Δf)で除する。その結果を分配比を定義する式(8)などを用いれば、式(9)を得る。
【数9】
【0050】
さらに、式(8)に示す定義を用いると、第4のワイヤ7の張力変化(Δf)に対する第1、第2、第3のワイヤ7の張力変化(Δf、Δf、Δf)の比率は、張力変化に関する分配比をベクトルにまとめた分配比ベクトル(ρΔf)として式(10)のようにまとめられる。
【数10】

この張力変化に関する分配比ベクトル(ρΔf)を満たすように張力を変化させれば、張力の合力は変化しない。この条件において、第4のワイヤ7の繰出量に対する第1、第2、第3のワイヤ7の繰出量のそれぞれの比率は、ワイヤ長に関する分配比ベクトル(ρΔl)として式(11)に示される。
【数11】

ρΔl:ワイヤ長に関する分配比ベクトル。
:ワイヤ7の剛性を示す対角行列。
ρΔf:張力変化に関する分配比ベクトル。
【0051】
続いて、計測張力(f)の平均値とあらかじめ与える目標平均張力(fc,avg)について、式(12)に示される差(平均張力誤差:Δfavg)を得る。
【数12】

Δfavg:平均張力誤差。
c,avg:目標平均張力。
【0052】
平均張力誤差の積分とワイヤ長に関する分配比ベクトル(ρΔl)とを用いてワイヤ長の修正値(ΔlFB)を式(13)により得る。
【数13】

ΔlFB:ワイヤ長の修正値。
Δfavg:平均張力誤差。
ρΔl:ワイヤ長に関する分配比ベクトル。
【0053】
次に、計算トルク法による指令張力の計算について説明する。まず、あらかじめ与えられた移動体8の目標位置と、目標姿勢と、目標速度と、目標加速度と、を用いた逆運動学計算により、目標ワイヤ長(l)と、目標ワイヤ長の一階微分(目標ワイヤ長速度)と、目標ワイヤ長の二階微分(目標ワイヤ長加速度)と、を得る。
【0054】
次に、これらを踏まえて、指令ワイヤ長(l)の二階微分を得る。指令ワイヤ長(l)の二階微分は、式(14)に示すように、逆運動学計算から得られる目標ワイヤ長の二階微分の項と、伸び補償後の計測ワイヤ長(lm,cmp)を含む項と、平均張力の積分フィードバックで得たワイヤ長修正値(ΔlFB)によって修正された項と、を含む。
【数14】

m,cmp:伸び補償後の計測ワイヤ長。
d,FB:修正目標ワイヤ長。=ld+ΔlFB
【0055】
次に、移動体8の運動方程式(式(15)参照)を用いた逆動力学計算により、目標平均張力(fc,avg)を与えたときの張力解を導出する。張力解は、式(16)に示す指令張力(f)である。
【数15】

M:移動体8の慣性行列。
ω:移動体8に作用する外力のレンチベクトル。
:構造行列。
:指令張力。
【数16】

:指令張力。
【0056】
目標平均張力(fc,avg)について式(17)を得る。
【数17】

c,avg:目標平均張力。
【0057】
式(17)を式(15)に代入して整理すると式(18)を得る。式(18)に含まれる項は、式(19)及び式(20)により示される。
【数18】

【数19】

【数20】
【0058】
ここで、移動体8の指令加速度(Xの二階微分)は、ヤコビ行列(J)と指令ワイヤ長(l)を用いて式(21)及び式(22)により示される。
【数21】

【数22】
【0059】
以上をまとめると、指令張力(f)は、式(23)により示される。
【数23】
【0060】
次に、ウインチ5の動力学を考慮した指令トルク(τ)について説明する。ウインチ5の運動方程式と、張力のフィードフォワード項と慣性及び粘性の補償項とによれば、指令トルク(τc)は、式(24)により示される。
【数24】

ξ:ウインチ5の減速比。
:ウインチ5のスパイラルプーリのピッチ円半径。
:ウインチ5の慣性モーメント。
D:ウインチ5の粘性係数。
:指令張力。
τ:指令トルク。
【0061】
<移動体制御装置>
以下、上述した制御を実現する移動体制御装置1について説明する。移動体制御装置1は、ウインチ5に指令トルクφ14(τc)を出力する。移動体制御装置1は、ウインチ5に指令トルクφ14(τc)を出力できる態様であれば、その設置位置や接続態様は問わない。移動体制御装置1は、ウインチ5と有線で接続されてもよい。移動体制御装置1は、ネットワークを介して無線で接続されてもよい。図4に示すように、移動体制御装置1は、第1装置入力N11と、第2装置入力N12と、第3装置入力N13と、第4装置入力N14と、第1装置出力T11と、を有する。
【0062】
第1装置入力N11は、目標位置φ11(X)と、目標速度φ12と、目標加速度φ13と、を受ける。第2装置入力N12は、計測ワイヤ長φ15(l)を受ける。第3装置入力N13は、計測張力φ16(f)を受ける。第4装置入力N14は、目標平均張力φ31(fc,avg)を受ける。第1装置出力T11は、指令トルクφ14(τc)(制御信号)を出力する。
【0063】
移動体制御装置1は、トルク計算部2(第1演算手段)と、平均張力積分フィードバック部3(第2演算手段)と、静的ワイヤ伸び補償部4(第3演算手段)と、を有する。
【0064】
<トルク計算部>
図5に示すように、トルク計算部2は、目標位置φ11(X)と、目標速度φ12と、目標加速度φ13と、補正ワイヤ長φ42(lm,cmp)と、ワイヤ長修正値φ36(ΔlFB)と、を受ける。そして、トルク計算部2は、指令トルクφ14(τc)を移動体制御装置1の外部に出力する。さらに、トルク計算部2は、指令張力φ28(f)と、構造行列φ29(A)と、を出力する。指令張力φ28(f)及び構造行列φ29(A)は、移動体制御装置1の内部処理に用いられる。
【0065】
トルク計算部2は、移動体8の目標軌道から「計算トルク法」と称される制御則によりモータ52への指令トルクφ14(τc)を得る。計算トルク法は、ワイヤ長とワイヤ速度とのフィードバックと、ワイヤ加速度のフィードフォワードを併用する動的な制御系である。
【0066】
トルク計算部2は、第1計算入力N21と、第2計算入力N22と、第3計算入力N23と、第1計算出力T21と、第2計算出力T22と、第3計算出力T23と、を有する。
【0067】
第1計算入力N21は、目標位置φ11(X)と、目標速度φ12と、目標加速度φ13と、を受ける。第2計算入力N22は、ワイヤ長修正値φ36(ΔlFB)を受ける。第3計算入力N23は、補正ワイヤ長φ42(lm,cmp)を受ける。第1計算出力T21は、指令トルクφ14(τc)を出力する。第2計算出力T22は、指令張力φ28(f)を出力する。第3計算出力T23は、構造行列φ29(A)を出力する。
【0068】
トルク計算部2は、逆運動学計算部21(目標ワイヤ長を得る手段)と、ワイヤ長修正値加算部22(修正値を足し合わせる手段)と、指令張力計算部23と、指令トルク計算部24と、を有する。
【0069】
逆運動学計算部21は、第1計算入力N21を介して目標位置φ11(X)と、目標速度φ12と、目標加速度φ13と、を受ける。逆運動学計算部21は、目標ワイヤ加速度φ21と、目標ワイヤ速度φ22と、目標ワイヤ長φ23(l)と、を計算によって得る。逆運動学計算部21は、指令張力計算部23へ目標ワイヤ加速度φ21と、目標ワイヤ速度φ22と、を出力する。逆運動学計算部21は、ワイヤ長修正値加算部22へ目標ワイヤ長φ23(l)を出力する。
【0070】
ワイヤ長修正値加算部22は、逆運動学計算部21から目標ワイヤ長φ23(l)を受ける。ワイヤ長修正値加算部22は、第2計算入力N22を介して平均張力積分フィードバック部3からワイヤ長修正値φ36(ΔlFB)を受ける。ワイヤ長修正値加算部22は、修正目標ワイヤ長φ24(ld,FB)を計算によって得る。具体的には、ワイヤ長修正値加算部22は、目標ワイヤ長φ23(l)にワイヤ長修正値φ36(ΔlFB)を加算することにより、修正目標ワイヤ長φ24(ld,FB)を得る。ワイヤ長修正値加算部22は、指令張力計算部23へ修正目標ワイヤ長φ24(ld,FB)を出力する。
【0071】
指令張力計算部23は、逆運動学計算部21から目標ワイヤ加速度φ21と、目標ワイヤ速度φ22と、を受ける。指令張力計算部23は、ワイヤ長修正値加算部22から修正目標ワイヤ長φ24(ld,FB)を受ける。指令張力計算部23は、第3計算入力N23を介して静的ワイヤ伸び補償部4から補正ワイヤ長φ42(lm,cmp)を受ける。指令張力計算部23は、指令ワイヤ加速度φ26と、指令ワイヤ速度φ27と、指令張力φ28(f)と、を計算によって得る。指令張力φ28(f)は、式(25)により得る。
【数25】
【0072】
指令張力計算部23は、指令トルク計算部24へ指令ワイヤ加速度φ26と、指令ワイヤ速度φ27と、指令張力φ28(f)と、を出力する。指令張力計算部23は、第2計算出力T22を介して静的ワイヤ伸び補償部4へ指令張力φ28(f)を出力する。指令張力計算部23は、第3計算出力T23を介して平均張力積分フィードバック部3へ構造行列φ29(A)を出力する。
【0073】
指令トルク計算部24は、指令張力計算部23から指令ワイヤ加速度φ26と、指令ワイヤ速度φ27と、指令張力φ28(f)と、を受ける。指令トルク計算部24は、指令トルクφ14(τc)を式(26)を用いた計算によって得る。指令トルク計算部24は、第1計算出力T21を介してウインチ5へ指令トルクφ14(τc)を出力する。
【数26】
【0074】
<平均張力積分フィードバック部>
平均張力積分フィードバック部3は、ワイヤ7の平均張力(各ワイヤ7に掛ける張力の平均値)が目標値になるように、かつワイヤの張力バランスを崩さないように、各ワイヤ張力をウインチ5で同時に調整するためのものである。具体的には、あらかじめ与える目標平均張力φ31(fc,avg)と、張力センサ62で計測した実際の計測張力φ16(f)の平均値(計測平均張力φ32(fm,avg))について、それぞれの差を時間積分した値(評価値φ34)を計算する。一方、移動体8に作用する力のつり合いの式(3)を変形することで、ワイヤ7の張力バランスを崩さないために満たすべき式(分配比ベクトルの式(11))を求めることができる。分配比ベクトルの式(11)を用いながら、前述の張力の平均値の誤差の積分値を各ワイヤ7に配分してワイヤ長修正値φ36(ΔlFB)を求める。
【0075】
図6に示すように平均張力積分フィードバック部3は、第1フィードバック入力N31と、第2フィードバック入力N32と、目標値入力N33と、第4フィードバック入力N34と、第1フィードバック出力T31と、を有する。
【0076】
第1フィードバック入力N31は、補正ワイヤ剛性φ41(K)を受ける。第2フィードバック入力N32は、構造行列φ29(A)を受ける。目標値入力N33は、目標平均張力φ31(fc,avg)を受ける。第4フィードバック入力N34は、計測張力φ16(f)を受ける。第1フィードバック出力T31は、ワイヤ長修正値φ36(ΔlFB)を出力する。
【0077】
なお、目標平均張力φ31(fc,avg)は、ワイヤ7の張力の目標値である。目標値入力N33は、一つの目標平均張力φ31(fc,avg)の値を直接に受ける。つまり、第1~第4のワイヤ7ごとに目標値を設定することはせず、1つの目標平均張力φ31(fc,avg)の値が目標値入力N33に与えられる。本実施形態では、目標平均張力φ31(fc,avg)の値そのものを目標として与える構成を例示する。
【0078】
平均張力積分フィードバック部3は、張力誤差評価値取得部31(張力誤差の評価値を得る手段)と、分配比ベクトル計算部32(分配比を得る手段)と、ワイヤ長修正値計算部33(ワイヤ長の修正値を得る手段)と、を有する。
【0079】
張力誤差評価値取得部31は、目標値入力N33を介して第4装置入力N14から目標平均張力φ31(fc,avg)を受ける。張力誤差評価値取得部31は、第4フィードバック入力N34を介してプーリユニット6の張力センサ62から計測張力φ16(f)を受ける。張力誤差評価値取得部31は、張力誤差の評価値φ34を計算によって得る。張力誤差評価値取得部31は、ワイヤ長修正値計算部33へ張力誤差の評価値φ34を出力する。
【0080】
張力誤差評価値取得部31は、計測平均張力計算部311(計測平均張力を得る手段)と、平均張力誤差計算部312(平均張力誤差を得る手段)と、平均張力誤差積分部313(張力誤差の評価値として得る手段)と、を有する。
【0081】
計測平均張力計算部311は、第4フィードバック入力N34を介してプーリユニット6の張力センサ62から計測張力φ16(f)を受ける。計測平均張力計算部311は、計測平均張力φ32(fm,avg)を計算によって得る。具体的には、計測平均張力φ32(fm,avg)とは、4本のワイヤ7のそれぞれに実際に発生する計測張力φ16(f)の合計値をワイヤ7の数(4本)で除したものである。計測平均張力計算部311は、平均張力誤差計算部312へ計測平均張力φ32(fm,avg)を出力する。
【0082】
平均張力誤差計算部312は、目標値入力N33から目標平均張力φ31(fc,avg)を受ける。平均張力誤差計算部312は、計測平均張力計算部311から計測平均張力φ32(fm,avg)を受ける。平均張力誤差計算部312は、平均張力誤差φ33(Δfavg)を計算によって得る。具体的には、平均張力誤差計算部312は、計測平均張力φ32(fm,avg)から目標平均張力φ31(fc,avg)を減算する。平均張力誤差計算部312は、平均張力誤差積分部313へ平均張力誤差φ33(Δfavg)を出力する。
【0083】
上述した計測平均張力計算部311及び平均張力誤差計算部312の処理をまとめて表すと、式(29)のとおりである。
【数27】
【0084】
平均張力誤差積分部313は、平均張力誤差計算部312から平均張力誤差φ33(Δfavg)を受ける。平均張力誤差積分部313は、張力誤差の評価値φ34を計算によって得る。平均張力誤差積分部313は、第1フィードバック出力T31を介してワイヤ長修正値計算部33へ張力誤差の評価値φ34を出力する。
【0085】
分配比ベクトル計算部32は、第1フィードバック入力N31を介して静的ワイヤ伸び補償部4から補正ワイヤ剛性φ41(K)を受ける。分配比ベクトル計算部32は、第2フィードバック入力N32を介してトルク計算部2から構造行列φ29(A)を受ける。分配比ベクトル計算部32は、分配比ベクトルφ35(ρΔl)を式(27)及び式(28)を用いた計算によって得る。分配比ベクトル計算部32は、ワイヤ長修正値計算部33へ分配比ベクトルφ35(ρΔl)を出力する。
【数28】

【数29】
【0086】
ワイヤ長修正値計算部33は、張力誤差評価値取得部31から張力誤差の評価値φ34を受ける。ワイヤ長修正値計算部33は、分配比ベクトル計算部32から分配比ベクトルφ35(ρΔl)を受ける。ワイヤ長修正値計算部33は、ワイヤ長修正値φ36(ΔlFB)を計算によって得る。ワイヤ長修正値計算部33は、トルク計算部2へワイヤ長修正値φ36(ΔlFB)を出力する。
【0087】
上述した平均張力誤差積分部313及びワイヤ長修正値計算部33の処理をまとめて表すと、式(30)のとおりである。
【数30】
【0088】
<静的ワイヤ伸び補償部>
静的ワイヤ伸び補償部4は、移動体8の位置精度を高めるため、ウインチ5のモータ52のトルクバランスを得るときに、ワイヤ7のバネ定数による弾性伸びを考慮したワイヤ張力を利用することによって、トルクバランスを得るためのものである。ワイヤ7のバネ定数による弾性伸びを考慮するとは、例えば、計算上、ワイヤ7の伸び分だけワイヤ7を余計に巻き取るような制御を行うことを意味する。ウインチ5から先のワイヤ長が弾性伸びによって長くなる量(伸び量)は、バネ定数で決まる。バネ定数は、ワイヤ7のワイヤ長によって異なる。例えば、ワイヤ長が2倍になったとすると、バネ定数は半分になる。この関係は、「ワイヤ長=元のワイヤ長×(1+バネ定数1/K×張力T)」として示すことができる。
【0089】
図7に示すように、静的ワイヤ伸び補償部4は、第1補償入力N41と、第2補償入力N42と、第1補償出力T41と、第2補償出力T42と、を有する。
【0090】
第1補償入力N41は、計測ワイヤ長φ15(l)を受ける。第2補償入力N42は、指令張力φ28(f)を受ける。第1補償出力T41は、補正ワイヤ剛性φ41(K)を出力する。第2補償出力T42は、補正ワイヤ長φ42(lm,cmp)を出力する。
【0091】
静的ワイヤ伸び補償部4は、補正ワイヤ剛性計算部41と、補正ワイヤ長計算部42(補正ワイヤ長を得る手段)と、を有する。
【0092】
補正ワイヤ剛性計算部41は、第1補償入力N41を介してウインチ5から計測ワイヤ長φ15(l)を受ける。補正ワイヤ剛性計算部41は、補正ワイヤ剛性φ41(K)を式(31)を用いた計算によって得る。
【数31】
【0093】
補正ワイヤ剛性計算部41は、第1補償出力T41を介して補正ワイヤ長計算部42へ補正ワイヤ剛性φ41(K)を出力する。補正ワイヤ剛性計算部41は、第1補償出力T41を介して平均張力積分フィードバック部3にも補正ワイヤ剛性φ41(K)を出力する。
【0094】
補正ワイヤ長計算部42は、補正ワイヤ剛性計算部41から補正ワイヤ剛性φ41(K)を受ける。補正ワイヤ長計算部42は、ウインチ5から計測ワイヤ長φ15(l)を受ける。補正ワイヤ長計算部42は、トルク計算部2から指令張力φ28(f)を受ける。補正ワイヤ長計算部42は、補正ワイヤ長φ42(lm,cmp)を式(32)を用いた計算によって得る。補正ワイヤ長計算部42は、第2補償出力T42を介してトルク計算部2へ補正ワイヤ長φ42(lm,cmp)を出力する。
【数32】
【0095】
上述した弾性伸び補正のための静的ワイヤ伸び補償部4は、移動体8の位置と剛性の精度を向上させることができる。静的ワイヤ伸び補償部4を備える移動体制御装置1は、弾性伸びを考慮した平均張力積分フィードバックを行うことができる。
【0096】
なお、移動体制御装置1は、静的ワイヤ伸び補償部4を省略することも可能である。静的ワイヤ伸び補償部4を備えない移動体制御装置1Aは、弾性伸びを考慮しない平均張力積分フィードバックを行うことができる。静的ワイヤ伸び補償部4を備えない移動体制御装置1Aは、後述する。
【0097】
図8は、具体的な移動体制御装置1のブロック図の例示である。このブロック図に示す動作の詳細は、上述のとおりであるが、概説をすると、移動体8の目標軌道(位置・姿勢、この1階微分である速度・角速度、2階微分である加速度・角加速度)から、逆運動学により目標ワイヤ長、ワイヤ巻取り速度、ワイヤ巻取り加速度を求める。このうち、ワイヤ長とワイヤ巻取り速度についてロータリエンコーダ53で計測されたそれぞれの計測ワイヤ長φ15(l)との差にゲイン(Kp、Kd)を乗算したものをワイヤ巻取り加速度に加えたものを指令ワイヤ加速度φ26とする。この指令ワイヤ加速度φ26とパラレルワイヤ駆動機構の運動方程式より逆動力学計算を行い、指令張力φ28(f)を求める。この指令張力φ28(f)とウインチ5の運動方程式から逆動力学計算を行い、指令トルクφ14(τc)を求める。
【0098】
例えば、指令張力計算部23は、構造行列計算部231と、微分部232と、第1演算部233と、第1ゲイン部234と、第2演算部235と、第2ゲイン部236と、第3演算部237と、動力学計算部238と、を有する。
【0099】
構造行列計算部231は、目標位置φ11(X)を受ける。構造行列計算部231は、目標位置φ11(X)を利用して構造行列φ29(A)を生成する。構造行列計算部231は、動力学計算部238に構造行列φ29(A)を出力する。さらに、構造行列計算部231は、第3計算出力T23を介して平均張力積分フィードバック部3にも構造行列φ29(A)を出力する。構造行列計算部231は、逆運動学計算部21にも構造行列φ29(A)を出力する。
【0100】
微分部232は、第3計算入力N23を介して補正ワイヤ長φ42(lm,cmp)を受ける。微分部232は、補正ワイヤ長φ42(lm,cmp)を微分した結果である補正ワイヤ長φ42(lm,cmp)の一階微分を第1演算部233と、動力学計算部238と、指令トルク計算部24と、に出力する。
【0101】
第1演算部233は、目標ワイヤ長φ23(l)の一階微分(目標ワイヤ速度)と、補正ワイヤ長φ42(lm,cmp)の一階微分と、を受ける。第1演算部233は、目標ワイヤ長φ23(l)の一階微分(目標ワイヤ速度)から補正ワイヤ長φ42(lm,cmp)の一階微分を減算する。第1演算部233は、減算した結果(ワイヤ速度差分)を、第1ゲイン部234に出力する。
【0102】
第1ゲイン部234は、第1演算部233から受けたワイヤ速度差分に第1ゲイン(K)を乗算する。第1ゲイン部234は、第1ゲイン(K)を乗算した結果を第3演算部237に出力する。
【0103】
第2演算部235は、修正目標ワイヤ長φ24(ld,FB)と、補正ワイヤ長φ42(lm,cmp)と、を受ける。第2演算部235は、修正目標ワイヤ長φ24(ld,FB)から補正ワイヤ長φ42(lm,cmp)を減算する。第2演算部235は、減算した結果(ワイヤ長差分)を、第2ゲイン部236に出力する。
【0104】
第2ゲイン部236は、第2演算部235から受けたワイヤ長差分に第2ゲイン(K)を乗算する。第2ゲイン部236は、第2ゲイン(K)を乗算した結果を第3演算部237に出力する。
【0105】
第3演算部237は、目標ワイヤ長φ23(l)の二階微分と、第1ゲイン部234の出力結果(ワイヤ速度の差分の1階微分)と、第2ゲイン部236の出力結果(ワイヤ長差分の2階微分)と、を受ける。第3演算部237は、目標ワイヤ長φ23(l)の二階微分と、第1ゲイン部234の出力結果(ワイヤ速度の差分の1階微分)と、第2ゲイン部236の出力結果(ワイヤ長差分の2階微分)と、を足し合わせる。これらを足し合わせた結果は、目標ワイヤ加速度である。
【0106】
動力学計算部238は、構造行列φ29(A)と、目標ワイヤ長加速度と、計測ワイヤ長φ15(l)の一階微分(計測ワイヤ速度)と、を受ける。動力学計算部238は、指令張力φ28(f)を得る。動力学計算部238は、指令トルク計算部24に指令張力φ28(f)を出力する。
【0107】
<移動体制御方法>
次に、図9に示すフローチャートを参照しながら、移動体制御装置1が行う移動体制御方法を説明する。
【0108】
移動体制御装置1は、指令トルクφ14(τc)をウインチ5に与える動作(ステップS1)と、補正ワイヤ長φ42(lm,cmp)を得る動作(ステップS2)と、ワイヤ長修正値φ36(ΔlFB)を得る動作(ステップS3)と、を繰り返す。以下、それぞれのステップS1、S2、S3を説明する。
【0109】
<指令トルクφ14(τc)をウインチ5に与える動作(ステップS1)>
指令トルクφ14(τc)をウインチ5に与える動作(ステップS1)は、トルク計算部2が実行する。ステップS1は、第1の指令トルク計算動作(ステップS11)と、第1のワイヤ長補正動作(ステップS12)と、第2のワイヤ長補正動作(ステップS13)と、第2の指令トルク計算動作(ステップS14)と、第3の指令トルク計算動作(ステップS15)と、を含む。
【0110】
まず、第1の指令トルク計算動作(ステップS11)を実行する。第1の指令トルク計算動作(ステップS11)では、目標位置φ11(X)と、目標速度φ12と、目標加速度φ13を利用して、目標ワイヤ加速度φ21と、目標ワイヤ速度φ22と、目標ワイヤ長φ23(l)と、を得る。ステップS11は、逆運動学計算部21が実行する。
【0111】
次に、第1のワイヤ長補正動作(ステップS12)を実行する。第1のワイヤ長補正動作(ステップS12)では、ワイヤ長修正値φ36(ΔlFB)を用いて目標ワイヤ長φ23(l)を修正する。ステップS12は、ワイヤ長修正値加算部22が実行する。
【0112】
次に、第2のワイヤ長補正動作(ステップS13)を実行する。第2のワイヤ長補正動作(ステップS13)では、補正ワイヤ長φ42(lm,cmp)を用いて目標ワイヤ長φ23(l)をさらに補正する。ステップS13は、指令張力計算部23が実行する。
【0113】
なお、ステップS1、S2、S3を繰り返す動作において、1回目のステップS1を実行するときは、ステップS2、S3が実行されていない。つまり、ワイヤ長修正値φ36(ΔlFB)及び補正ワイヤ長φ42(lm,cmp)が存在しない。従って、1回目のステップS1を実行するときは、ステップS12、S13において、ワイヤ長修正値φ36(ΔlFB)及び補正ワイヤ長φ42(lm,cmp)をゼロとして実行してよい。
【0114】
次に、第2の指令トルク計算動作(ステップS14)を実行する。第2の指令トルク計算動作(ステップS14)では、目標ワイヤ加速度φ21と、目標ワイヤ速度φ22と、修正目標ワイヤ長φ24(ld,FB)と、を利用して、指令ワイヤ加速度φ26と、指令ワイヤ速度φ27と、指令張力φ28(f)と、を得る。ステップS14は、指令張力計算部23が実行する。
【0115】
そして、第3の指令トルク計算動作(ステップS15)を実行する。第3の指令トルク計算動作(ステップS15)では指令ワイヤ加速度φ26と、指令ワイヤ速度φ27と、指令張力φ28(f)と、を利用して指令トルクφ14(τc)を得る。ステップS15は、指令トルク計算部24が実行する。
【0116】
<補正ワイヤ長φ42(lm,cmp)を得る動作(ステップS2)>
補正ワイヤ長φ42(lm,cmp)を得る動作(ステップS2)は、静的ワイヤ伸び補償部4が実行する。ステップS2は、第1のワイヤ伸び補償計算動作(ステップS21)と、第2のワイヤ伸び補償計算動作(ステップS22)と、を含む。
【0117】
まず、第1のワイヤ伸び補償計算動作(ステップS21)を実行する。第1のワイヤ伸び補償計算動作(ステップS21)では、補正ワイヤ剛性φ41(K)を得る。ステップS21は、補正ワイヤ剛性計算部41が実行する。
【0118】
次に、第2のワイヤ伸び補償計算動作(ステップS22)を実行する。第2のワイヤ伸び補償計算動作(ステップS22)では、補正ワイヤ長φ42(lm,cmp)を得る。ステップS22は、補正ワイヤ長計算部42が実行する。
【0119】
<ワイヤ長修正値φ36(ΔlFB)を得る動作(ステップS3)>
ワイヤ長修正値φ36(ΔlFB)を得る動作(ステップS3)は、平均張力積分フィードバック部3が実行する。ステップS3は、第1のワイヤ長修正値計算動作(ステップS31)と、第2のワイヤ長修正値計算動作(ステップS32)と、第3のワイヤ長修正値計算動作(ステップS33)と含む。
【0120】
まず、第1のワイヤ長修正値計算動作(ステップS31)を実行する。第1のワイヤ長修正値計算動作(ステップS31)では、張力誤差の評価値φ34を得る。ステップS31は、張力誤差評価値取得部31が実行する。
【0121】
より詳細には、まず、目標平均張力φ31(fc,avg)を入力する。目標平均張力φ31(fc,avg)は、例えば、移動体制御装置1を操作するオペレータが入力装置505を用いて入力してもよい。また、目標平均張力φ31(fc,avg)は、移動体システム101が備える各種のセンサによって得た計測値(例えば、加速度)などを利用して得た演算値として、オペレータを介することなく入力されてもよい。次に、計測平均張力φ32(fm,avg)を得る。この動作は、計測平均張力計算部311が実行する。次に、平均張力誤差φ33(Δfavg)を得る。この動作は、平均張力誤差計算部312が実行する。そして、張力誤差の評価値φ34を得る。この動作は、平均張力誤差積分部313が実行する。
【0122】
次に、第2のワイヤ長修正値計算動作(ステップS32)を実行する。第2のワイヤ長修正値計算動作(ステップS32)では、分配比ベクトルφ35(ρΔl)を得る。ステップS32は、分配比ベクトル計算部32が実行する。
【0123】
そして、第3のワイヤ長修正値計算動作(ステップS33)を実行する。第3のワイヤ長修正値計算動作(ステップS33)では、ワイヤ長修正値φ36(ΔlFB)を得る。ステップS33は、ワイヤ長修正値計算部33が実行する。
【0124】
ここまで詳細に説明した移動体制御装置1、移動体制御システム100、移動体システム101、移動体制御方法及び移動体制御プログラムPGの構成とその作用効果は、要するに、以下のとおりである。
【0125】
移動体制御装置1は、複数のワイヤ7の一方の端部のそれぞれに連結された複数のウインチ5の動作に起因してウインチ5から繰り出されたワイヤ7の長さであるワイヤ長が調整されることによって、複数のワイヤ7の他方の端部に連結された1個の移動体8を移動させる。
【0126】
移動体制御装置1は、移動体8の移動目標に関する情報を受けて移動体8を所望の位置に配置するための制御信号をウインチ5に与えるトルク計算部2と、目標平均張力φ31(fc,avg)と、所望の位置に移動体8があるときに複数のワイヤ7のそれぞれに発生する計測張力φ16(f)の平均である計測平均張力φ32(fm,avg)と、の差異に起因する張力誤差の評価値φ34を小さくするための条件を、ワイヤ長修正値φ36(ΔlFB)としてトルク計算部2に与える平均張力積分フィードバック部3と、を備える。平均張力積分フィードバック部3は、ワイヤ長修正値φ36(ΔlFB)を、所望の位置にある移動体8に作用する力のつり合いを維持するためのつり合い条件から導いた分配比ベクトルφ35(ρΔl)を利用して複数のワイヤ7ごとに算出する。
【0127】
この移動体制御装置1では、目標平均張力φ31(fc,avg)と計測平均張力φ32(fm,avg)の差が小さくなるように、平均張力積分フィードバック部3がワイヤ長修正値φ36(ΔlFB)を算出する。平均張力積分フィードバック部3は、ワイヤ長修正値φ36(ΔlFB)を算出するときに、所望の位置にある移動体8に作用する力のつり合いを維持するためのつり合い条件から導いた分配比ベクトルφ35(ρΔl)を利用する。つまり、平均張力積分フィードバック部3は、ワイヤ長修正値φ36(ΔlFB)を算出するに際して、所望の位置にある移動体8に作用する力のつり合いを維持することを条件として取り入れている。その結果、平均張力積分フィードバック部3が算出するワイヤ長修正値φ36(ΔlFB)によれば、移動体8の位置を維持しながら、張力のずれを小さくすることができる。従って、移動体制御装置1は、移動体8に関する位置決めの制御と張力の制御とを両立させることができる。
【0128】
また、移動体制御装置1によれば、複数のワイヤ7の張力バランスを保ったまま、ワイヤ7の目標平均張力を上げたり下げたりすることで、面内変位の剛性及び面外変位の剛性を上げることができる。その結果、移動体8の移動を安定的に制御することができる。
【0129】
さらに、移動体制御装置1によれば、各ワイヤ7のバネ乗数による弾性伸びを考慮したトルク制御を行うことで、移動体8の位置精度を向上することができる。
【0130】
移動体制御装置1の平均張力積分フィードバック部3は、張力誤差の評価値φ34を得る張力誤差評価値取得部31と、つり合い条件から導かれる分配比ベクトルφ35(ρΔl)を得る分配比ベクトル計算部32と、張力誤差の評価値φ34を及び分配比ベクトルφ35(ρΔl)を利用して、ワイヤ長修正値φ36(ΔlFB)を得るワイヤ長修正値計算部33と、を含む。この構成によれば、好適なワイヤ長修正値φ36(ΔlFB)を得ることができる。
【0131】
上述の移動体制御装置1の張力誤差評価値取得部31は、複数のワイヤ7のそれぞれに発生した複数の計測張力φ16(f)の平均である計測平均張力φ32(fm,avg)を得る計測平均張力計算部311と、目標平均張力φ31(fc,avg)と計測平均張力φ32(fm,avg)の差分である平均張力誤差φ33(Δfavg)を得る平均張力誤差計算部312と、平均張力誤差φ33(Δfavg)を時間で積分した値を張力誤差の評価値φ34として得る平均張力誤差積分部313と、を有する。この構成によっても、好適なワイヤ長修正値φ36(ΔlFB)を得ることができる。
【0132】
上述の移動体制御装置1のトルク計算部2は、移動体8の移動目標に関する情報を逆運動学モデルに当てはめることによって目標ワイヤ長φ23(l)を得る逆運動学計算部21と、目標ワイヤ長φ23(l)と計測によって得たワイヤ長である計測ワイヤ長φ15(l)に関する値との差分を得る第2演算部235と、目標ワイヤ長φ23(l)に対してワイヤ長修正値φ36(ΔlFB)を足し合わせるワイヤ長修正値加算部22と、を含む。トルク計算部2は、計測ワイヤ長φ15(l)に関する値との差分を得る第2演算部235を含む第1のフィードバック系を構成する。トルク計算部2及び平均張力積分フィードバック部3は、ワイヤ長修正値φ36(ΔlFB)を足し合わせるワイヤ長修正値加算部22を含む第2のフィードバック系を構成する。この構成によっても、移動体8の位置を維持しながら、張力のずれを小さくすることができる。
【0133】
上述の移動体制御装置1のトルク計算部2が含むワイヤ長との差分を得る第2演算部235に与えられる計測によって得たワイヤ長を補正する静的ワイヤ伸び補償部4をさらに備える。静的ワイヤ伸び補償部4は、計測ワイヤ長φ15(l)に対応する補正ワイヤ剛性φ41(K)を、複数のワイヤ7のそれぞれについて得る補正ワイヤ剛性計算部41と、補正ワイヤ剛性φ41(K)と計測ワイヤ長φ15(l)とを利用して、複数のワイヤ7のそれぞれについて補正ワイヤ長φ42(lm,cmp)を得る補正ワイヤ長計算部42と、を含む。トルク計算部2の計測ワイヤ長φ15(l)に関する値との差分を得る第2演算部235は、計測ワイヤ長φ15(l)に関する値として補正ワイヤ長φ42(lm,cmp)を受ける。
【0134】
ワイヤ7は、張力に応じて伸びる弾性伸びが生じることがあるし、時間の経過と共に伸びが大きくなる張力緩和が生じることもある。この構成によれば、ワイヤ7の伸びに起因する位置決め精度の低下を抑制することができる。
【0135】
移動体制御システム100は、ワイヤ長を得るワイヤ長センサであるロータリエンコーダ53と、所望の位置に移動体8があるときに複数のワイヤ7のそれぞれに発生する張力を得る張力センサ62と、複数のウインチ5に制御信号を与える移動体制御装置1と、を備える。
【0136】
移動体システム101は、複数のワイヤ7と、複数のワイヤ7の一方の端部のそれぞれに連結された複数のウインチ5と、複数のワイヤ7の他方の端部に連結された1個の移動体8と、複数のウインチ5に制御信号を与える移動体制御装置1と、を備える。
【0137】
移動体制御方法は、複数のワイヤ7の一方の端部のそれぞれに連結された複数のウインチ5の動作に起因してウインチ5から繰り出されたワイヤ7の長さであるワイヤ長が調整されることによって、複数のワイヤ7の他方の端部に連結された1個の移動体8を移動させる。そして、移動体制御方法は、移動体8の移動目標に関する情報を受けて移動体8を所望の位置に配置するための制御信号をウインチ5に与える第1ステップ(ステップS1)と、移動体8の移動目標に関する情報に基づいて得た複数のワイヤ7のそれぞれに要求される指令張力φ28(f)と、所望の位置に移動体8があるときに複数のワイヤ7のそれぞれに発生する計測張力φ16(f)と、の差異に起因する張力誤差を小さくするための条件を、ワイヤ長修正値φ36(ΔlFB)としてトルク計算部2に与える第2ステップ(ステップS3)と、を有する。第2ステップは、ワイヤ長修正値φ36(ΔlFB)を、所望の位置にある移動体8に作用する力のつり合いを維持するためのつり合い条件を利用して複数のワイヤ7ごとに算出する。
【0138】
移動体制御プログラムPGは、複数のワイヤ7の一方の端部のそれぞれに連結された複数のウインチ5の動作に起因してウインチ5から繰り出されたワイヤ7の長さであるワイヤ長が調整されることによって、複数のワイヤ7の他方の端部に連結された1個の移動体8を移動させるための制御をコンピュータ500に実行させる。そして、移動体制御プログラムPGは、コンピュータ500を、移動体8の移動目標に関する情報を受けて移動体8を所望の位置に配置するための制御信号をウインチ5に与えるトルク計算部2と、移動体8の移動目標に関する情報に基づいて得た複数のワイヤ7のそれぞれに要求される指令張力φ28(f)と、所望の位置に移動体8があるときに複数のワイヤ7のそれぞれに発生する計測張力φ16(f)と、の差異に起因する張力誤差を小さくするための条件を、ワイヤ長修正値φ36(ΔlFB)としてトルク計算部2に与える平均張力積分フィードバック部3と、して動作させる。平均張力積分フィードバック部3は、ワイヤ長修正値φ36(ΔlFB)を、所望の位置にある移動体8に作用する力のつり合いを維持するためのつり合い条件を利用して複数のワイヤ7ごとに算出する。
【0139】
移動体制御システム100、移動体システム101、移動体制御方法及び移動体制御プログラムPGによっても、移動体制御装置1と同様に、位置決めの制御と張力の制御とを両立させることができる。
【0140】
本発明の移動体制御装置、移動体制御システム、移動体システム、移動体制御方法及び移動体制御プログラムは、上述した実施形態に限定されない。
【0141】
例えば、図10及び図11に示す変形例の移動体制御装置1Aのように、静的ワイヤ伸び補償部4を省略してもよい。つまり、変形例の移動体制御装置1Aは、トルク計算部2と、平均張力積分フィードバック部3Aと、を備える。
【0142】
トルク計算部2は、補正ワイヤ長φ42(lm,cmp)に代えて計測ワイヤ長φ15(l)を受ける。そのほかの構成は、実施形態のトルク計算部2と同じである。
【0143】
平均張力積分フィードバック部3Aは、補正ワイヤ剛性φ41(K)を受けない。つまり、平均張力積分フィードバック部3Aの分配比ベクトル計算部32は、構造行列φ29(A)のみを用いて分配比ベクトルφ35(ρΔl)を得る。そのほかの構成は、実施形態の平均張力積分フィードバック部3と同じである。
【0144】
変形例の移動体制御装置1Aも、実施形態の移動体制御装置1と同様に、位置決めの制御と張力の制御とを両立させることができる。
【符号の説明】
【0145】
1,1A…移動体制御装置(移動体制御部)、2…トルク計算部(第1演算手段)、21…逆運動学計算部(目標ワイヤ長を得る手段)、22…ワイヤ長修正値加算部(修正値を足し合わせる手段)、23…指令張力計算部、24…指令トルク計算部、3…平均張力積分フィードバック部(第2演算手段)、31…張力誤差評価値取得部(張力誤差の評価値を得る手段)、32…分配比ベクトル計算部(分配比を得る手段)、33…ワイヤ長修正値計算部(ワイヤ長の修正値を得る手段)、4…静的ワイヤ伸び補償部(第3演算手段)、41…補正ワイヤ剛性計算部、42…補正ワイヤ長計算部(補正ワイヤ長を得る手段)、5…ウインチ(駆動部)、51…モータドライバ、52…モータ、53…ロータリエンコーダ(ワイヤ長センサ)、6…プーリユニット、61…プーリ、62…張力センサ、7…ワイヤ、8…移動体、100…移動体制御システム、101…移動体システム、501…CPU、311…計測平均張力計算部(計測平均張力を得る手段)、312…平均張力誤差計算部(平均張力誤差を得る手段)、313…平均張力誤差積分部(張力誤差の評価値として得る手段)、500…コンピュータ、501…CPU、502…主記憶部、503…補助記憶部、504…通信制御部、505…入力装置、506…出力装置、PG…移動体制御プログラム、φ11…目標位置(X)、φ12…目標速度、φ13…目標加速度、φ14…指令トルク(τc)、φ15…計測ワイヤ長(l)、φ16…計測張力(f)、φ21…目標ワイヤ加速度、φ22…目標ワイヤ速度、φ23…目標ワイヤ長(l)、φ24…修正目標ワイヤ長(ld,FB)、φ26…指令ワイヤ加速度、φ27…指令ワイヤ速度、φ28…指令張力(f)、φ29…構造行列(A)、φ31…目標平均張力(fc,avg)、φ32…計測平均張力(fm,avg)、φ33…平均張力誤差(Δfavg)、φ34…評価値、φ35…分配比ベクトル(ρΔl)、φ36…ワイヤ長修正値(ΔlFB)、φ41…補正ワイヤ剛性(K)、φ42…補正ワイヤ長(lm,cmp)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11