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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174060
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】車体挙動制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/02 20120101AFI20231130BHJP
   B60W 40/11 20120101ALI20231130BHJP
   B60G 17/016 20060101ALI20231130BHJP
   B60G 17/0195 20060101ALI20231130BHJP
   B60T 8/1755 20060101ALI20231130BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B60W30/02
B60W40/11
B60G17/016
B60G17/0195
B60T8/1755 Z
B60L15/20 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086701
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123696
【弁理士】
【氏名又は名称】稲田 弘明
(74)【代理人】
【識別番号】100100413
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 温
(72)【発明者】
【氏名】小西 伸哉
【テーマコード(参考)】
3D241
3D246
3D301
5H125
【Fターム(参考)】
3D241BA18
3D241BA51
3D241BC01
3D241BC06
3D241CC03
3D241CC08
3D241CC18
3D241DA61Z
3D241DB02Z
3D241DB05Z
3D241DB12Z
3D246DA01
3D246EA05
3D246EA17
3D246GB04
3D246HA81A
3D246HA84B
3D246HA86A
3D246HA94A
3D246JB03
3D246JB32
3D301AA03
3D301AA05
3D301CA04
3D301EA03
5H125AA01
5H125AB01
5H125AC12
5H125BA05
5H125CA02
5H125CB02
5H125EE58
(57)【要約】
【課題】車体のピッチング挙動を効果的に抑制可能な車体挙動制御装置を提供する。
【解決手段】車体挙動制御装置を、車輪RWR,RWLを車体Bに対してバウンド方向及びリバウンド方向にストローク可能に支持するとともに、リバウンド方向のストロークに応じて車輪の中心が車体に対して前方側へ変位するジオメトリを有するサスペンション装置210を有する車両1に設けられ、車体のピッチング方向の挙動を検出するピッチング挙動検出部141と、ピッチング挙動が検出された場合に、サスペンション装置のリバウンド側へのストローク変化時に、バウンド側へのストローク変化時に対して、車輪の制動力を周期的に増加させ又は車輪の駆動力を周期的に減少させるピッチング抑制制御を行う制駆動力制御部130,140とを備える構成とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪を車体に対してバウンド方向及びリバウンド方向にストローク可能に支持するとともに、リバウンド方向のストロークに応じて前記車輪の中心が前記車体に対して前方側へ変位するジオメトリを有するサスペンション装置を有する車両に設けられ、
前記車体のピッチング方向の挙動を検出するピッチング挙動検出部と、
前記ピッチング挙動が検出された場合に、前記サスペンション装置のリバウンド側へのストローク変化時に、バウンド側へのストローク変化時に対して、前記車輪の制動力を周期的に増加させ又は前記車輪の駆動力を周期的に減少させるピッチング抑制制御を行う制駆動力制御部と
を備えることを特徴とする車体挙動制御装置。
【請求項2】
前記サスペンション装置は、後輪を支持するリアサスペンション装置であり、
前記制駆動力制御部は、前記車体のノーズダイブ方向への姿勢変化と同期して前記ピッチング抑制制御による前記制動力の増加又は前記駆動力の減少を行うこと
を特徴とする請求項1に記載の車体挙動制御装置。
【請求項3】
車輪を車体に対してバウンド方向及びリバウンド方向にストローク可能に支持するとともに、バウンド方向のストロークに応じて前記車輪の中心が前記車体に対して前方側へ変位するジオメトリを有するサスペンション装置を有する車両に設けられ、
前記車体のピッチング方向の挙動を検出するピッチング挙動検出部と、
前記ピッチング挙動が検出された場合に、前記サスペンション装置のバウンド側へのストローク変化時に、リバウンド側へのストローク変化時に対して、前記車輪の制動力を周期的に増加させ又は前記車輪の駆動力を周期的に減少させるピッチング抑制制御を行う制駆動力制御部と
を備えることを特徴とする車体挙動制御装置。
【請求項4】
前記制駆動力制御部は、前記車輪の制動装置の制動力を利用して前記ピッチング抑制制御を行うとともに、前輪と後輪とのうち前記ピッチング抑制制御を行っていない側の車輪の駆動力を増加させる車速補完制御を行うこと
を特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の車体挙動制御装置。
【請求項5】
前記車両には、前記車輪に駆動力と制動力との少なくとも一方を与える電動モータが設けられ、
前記制駆動力制御部は、前記ピッチング抑制制御を、前記電動モータが発生する駆動トルク又は前記電動モータが吸収する回生発電トルクを周期的に変動させることによって行うこと
を特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の車体挙動制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のピッチング挙動を抑制する車体挙動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車などのサスペンション装置を有する車両において、車体が車幅方向に沿った軸回りに動揺するピッチング挙動が発生する場合がある。
車体のピッチング挙動の抑制に関する技術として、例えば、特許文献1には、車両制動時における車両のピッチ角の変動を抑制するため、車両制動の開始時から、目標前後制動力配分比率に基づいて前輪及び後輪の制動力を調整し、車両のピッチ角が目標ピッチ角から乖離してから、目標前後制動力配分比率に基づいた前輪及び後輪の制動力の調整が開始される場合と比較し、車両のピッチ角の変動を抑制することが記載されている。
特許文献2には、自動制動制御に対するオーバーライドの制動操作が行われ制動力の制御が切り替えられる際における車体のピッチ姿勢の変動を抑制するため、自動制動制御の実行中に運転者により制動操作が開始されたときには、自動制動の目標制動力を第一の前後配分比R1にて前後輪に配分して前後輪の第一の目標制動力を演算し、制動力に起因する車体のピッチモーメントが0になるよう第一の前後配分比とは異なる値に予め設定された第二の前後配分比R2にて運転者が要求する制動力を前後輪に配分して第二の目標制動力を演算し、前輪及び後輪の制動力がそれぞれ前輪及び後輪の第一及び第二の目標制動力の和になるように制御することが記載されている。
特許文献3には、制動時の自動車の姿勢の変化に対応して前輪と後輪の制動力の配分を動的に調整して乗り心地の快適性を向上するため、自動車の実ピッチ角を検出すると共に、検出された実ピッチ角と予め定めた目標ピッチ角とを比較して、実ピッチ角が目標ピッチ角に近づくように前輪と後輪の制動力の配分を調整することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-177736号公報
【特許文献2】特開2020-124960号公報
【特許文献3】特開2019- 77221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1乃至3に記載された技術は、いずれも車両の制動時に制動力によって発生するピッチング挙動の抑制を図るものであるが、減速時(制動時)以外であってもピッチング挙動が発生する場合がある。
例えば、車両が波状の凹凸路面を走行する場合には、車体が周期的にノーズアップ方向、ノーズダイブ方向に繰り返し揺動するピッチング挙動が発生する場合があり、このような挙動が過大となると、乗員の不快感や不安感につながることが懸念される。
上述した問題に鑑み、本発明の課題は、車体のピッチング挙動を効果的に抑制可能な車体挙動制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するため、本発明の第1の態様に係る車体挙動制御装置は、車輪を車体に対してバウンド方向及びリバウンド方向にストローク可能に支持するとともに、リバウンド方向のストロークに応じて前記車輪の中心が前記車体に対して前方側へ変位するジオメトリを有するサスペンション装置を有する車両に設けられ、前記車体のピッチング方向の挙動を検出するピッチング挙動検出部と、前記ピッチング挙動が検出された場合に、前記サスペンション装置のリバウンド側へのストローク変化時に、バウンド側へのストローク変化時に対して、前記車輪の制動力を周期的に増加させ又は前記車輪の駆動力を周期的に減少させるピッチング抑制制御を行う制駆動力制御部とを備えることを特徴とする。
これによれば、サスペンション装置のリバウンド側(伸側)へのストローク変化時に、制動力の増加又は駆動力の減少によって車輪に後引き力を与えることにより、車輪が車体に対して前進する動きを抑制することができる。
ここで、サスペンション装置が、リバウンド側へのストローク変化時に車輪が車体に対して前進するジオメトリを有する場合には、このような車輪の後引き力により、リバウンド側へのストローク変化を抑制することができる。
一方、このようなジオメトリの場合、車輪への後引き力は、バウンド側(縮側)へのストローク変化を促進することになる。そこで、バウンド側へのストローク変化時には、制動力の増加又は駆動力の減少を停止することにより、車輪の後引き力がバウンド側へのストローク変化を促進することを防止することができる。
以上説明したように、本発明によれば、車体のピッチング挙動の発生時には、サスペンション装置におけるリバウンド側へのストローク変化を抑制するとともに、バウンド側へのストローク変化が助長されることを防止することができ、これによって車体のピッチング挙動を制駆動力の制御のみによる簡単な構成で効果的に抑制することができる。
【0006】
本発明において、前記サスペンション装置は、後輪を支持するリアサスペンション装置であり、前記制駆動力制御部は、前記車体のノーズダイブ方向への姿勢変化と同期して前記ピッチング抑制制御による前記制動力の増加又は前記駆動力の減少を行う構成とすることができる。
一般に、ノーズダイブ方向への姿勢変化を抑制するためには、車両の減速度を抑制し、あるいは車両に加速度を発生させる対策が一般的である。
しかし、本発明によれば、制動力の増加又は駆動力の減少という、通常の技術的常識とは異なる手法を用いて効果的に車体のピッチング挙動を抑制することができる。
【0007】
上述した課題を解決するため、本発明の第2の態様に係る車体挙動制御装置は、車輪を車体に対してバウンド方向及びリバウンド方向にストローク可能に支持するとともに、バウンド方向のストロークに応じて前記車輪の中心が前記車体に対して前方側へ変位するジオメトリを有するサスペンション装置を有する車両に設けられ、前記車体のピッチング方向の挙動を検出するピッチング挙動検出部と、前記ピッチング挙動が検出された場合に、前記サスペンション装置のバウンド側へのストローク変化時に、リバウンド側へのストローク変化時に対して、前記車輪の制動力を周期的に増加させ又は前記車輪の駆動力を周期的に減少させるピッチング抑制制御を行う制駆動力制御部とを備えることを特徴とする。
これによれば、サスペンション装置のバウンド側(縮側)へのストローク変化時に、制動力の増加又は駆動力の減少によって車輪に後引き力を与えることにより、車輪が車体に対して前進する動きを抑制することができる。
ここで、サスペンション装置が、バウンド側へのストローク変化時に車輪が車体に対して前進するジオメトリを有する場合には、このような車輪の後引き力により、バウンド側へのストローク変化を抑制することができる。
一方、このようなジオメトリの場合、車輪への後引き力は、リバウンド側(伸側)へのストローク変化を促進することになる。そこで、リバウンド側へのストローク変化時には、制動力の増加又は駆動力の減少を停止することにより、車輪の後引き力がリバウンド側へのストローク変化を促進することを防止することができる。
以上説明したように、本発明によれば、車体のピッチング挙動の発生時には、サスペンション装置におけるバウンド側へのストローク変化を抑制するとともに、リバウンド側へのストローク変化が助長されることを防止することができ、これによって車体のピッチング挙動を制駆動力の制御のみによる簡単な構成で効果的に抑制することができる。
【0008】
上記各発明において、前記制駆動力制御部は、前記車輪の制動装置の制動力を利用して前記ピッチング抑制制御を行うとともに、前輪と後輪とのうち前記ピッチング抑制制御を行っていない側の車輪の駆動力を増加させる車速補完制御を行う構成とすることができる。
これによれば、制動力を用いてピッチング挙動を抑制する場合における車速の低下を抑制し、あるいは、車速を維持して、意図しない減速により乗員に違和感、不安感を与えることや、再加速のためのアクセル操作が必要となることを防止できる。
【0009】
上記各発明において、前記車両には、前記車輪に駆動力と制動力との少なくとも一方を与える電動モータが設けられ、前記制駆動力制御部は、前記ピッチング抑制制御を、前記電動モータが発生する駆動トルク又は前記電動モータが吸収する回生発電トルクを周期的に変動させることによって行う構成とすることができる。
これによれば、電動モータのみを制御する簡単な構成により、ピッチング挙動を抑制するとともに、車速の低下抑制又は維持を行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明によれば、車体のピッチング挙動を効果的に抑制可能な車体挙動制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明を適用した車体挙動制御装置の第1実施形態を有する車両の構成を模式的に示す図である。
図2】第1実施形態の車体挙動制御装置を有する車両のリアサスペンション装置の構成を模式的に示す図である。
図3】第1実施形態の車体挙動制御装置を有する車両、及び、本発明の比較例の車両におけるピッチ角推移の一例を示す図である。
図4】第1実施形態の車体挙動制御装置を有する車両におけるピッチング挙動発生時の前輪片輪駆動トルク、後輪片輪制動トルク、及び、車速の推移の一例を示す図である。
図5】第1実施形態の車体挙動制御装置を有する車両におけるピッチング挙動発生時の前輪片輪駆動トルク、後輪片輪制動トルク、及び、車速の推移の他の一例を示す図である。
図6】本発明を適用した車体挙動制御装置の第2実施形態を有する車両におけるピッチング挙動発生時の前輪片輪駆動トルク、後輪片輪制動トルク、及び、車速の推移の一例を示す図である。
図7】第2実施形態の車体挙動制御装置を有する車両におけるピッチング挙動発生時の前輪片輪駆動トルク、後輪片輪制動トルク、及び、車速の推移の他の一例を示す図である。
図8】第2実施形態の車体挙動制御装置を有する車両、及び、本発明の比較例の車両におけるピッチ角推移の一例を示す図である。
図9】本発明を適用した車体挙動装置の第3実施形態を有する車両のリアサスペンション装置の構成を模式的に示す図である。
図10】本発明を適用した車体挙動装置の第4実施形態を有する車両のリアサスペンション装置の構成を模式的に示す図である。
図11】本発明を適用した車体挙動制御装置の第5実施形態を有する車両の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
以下、本発明を適用した車体挙動制御装置の第1実施形態について説明する。
第1実施形態の車体挙動制御装置は、例えば、前後左右に車輪を有する4輪の乗用車等の自動車に設けられ、車体(ここではサスペンション装置のバネ上部分を意味するものとする)のピッチング挙動を抑制する機能を有する。
図1は、第1実施形態の車体挙動制御装置を有する車両の構成を模式的に示す図である。
【0013】
図1に示すように、車両1は、右前輪FWR、左前輪FWL、右後輪RWR、左後輪RWLを有する4輪の乗用車等の自動車である。
車両1は、エンジン10、トランスミッション20、右フロントブレーキ31R、左フロントブレーキ31L、右リアブレーキ32R、左リアブレーキ32L、ハイドロリックコントロールユニット40等を有する。
【0014】
エンジン10は、車両1の走行用動力源であって、一例としてガソリン等を燃料とするレシプロ内燃機関である。
トランスミッション20は、エンジン10の出力を、ドライブシャフト21を介して、右前輪FWR、左前輪FWLに伝達する動力伝達装置である。
トランスミッション20は、例えば、トルクコンバータ等の発進デバイス、前後進切替機構、変速機構(一例としてチェーン式CVTのバリエータ)、最終減速装置、フロントディファレンシャル等を、エンジン10の後方側に締結されるトランスミッションケース内に収容して構成されている。
第1実施形態においては、車両1は、エンジン10の出力を右前輪FWR、左前輪FWLのみに伝達する前輪駆動(FWD)車である。
【0015】
右フロントブレーキ31R、左フロントブレーキ31L、右リアブレーキ32R,左リアブレーキ32Lは、右前輪FWR、左前輪FWL、右後輪RWR、左後輪RWLにそれぞれ設けられ、制動力を発生する液圧式サービスブレーキ(制動装置)である。
右フロントブレーキ31R、左フロントブレーキ31L、右リアブレーキ32R,左リアブレーキ32Lは、各車輪に固定され、車輪とともに回転する円盤状のブレーキディスク(ロータ)と、ブレーキディスクを、摩擦材を有するブレーキパッドで挟持するキャリパとを有する。
キャリパは、ブレーキフルードの液圧により、ブレーキパッドを押圧するピストンが収容されるホイルシリンダを有する。
各ブレーキは、ホイルシリンダに伝達されるブレーキフルード液圧に応じた制動力(制動トルク)を発生する。
【0016】
ハイドロリックコントロールユニット40は、ブレーキ制御ユニット130からの指令に応じて、右フロントブレーキ31R、左フロントブレーキ31L、右リアブレーキ32R,左リアブレーキ32Lのホイルシリンダに伝達されるブレーキフルード液圧を個別に制御可能な液圧発生装置である。
ハイドロリックコントロールユニット40は、例えば、ブレーキフルード加圧用の電動ポンプ、各ホイルシリンダの液圧を制御するための供給弁、保持弁、減圧弁などを有して構成されている。
ハイドロリックコントロールユニット40は、ドライバのブレーキペダル操作に応じて図示しないマスタシリンダが発生するブレーキフルード液圧にオーバーライドし、各ホイルシリンダのブレーキフルード液圧を個別に加減することができる。
【0017】
車両1は、さらに、エンジン制御ユニット110、トランスミッション制御ユニット120、ブレーキ制御ユニット130、車体挙動制御ユニット140等を備えている。
これらの各ユニットは、それぞれCPU等の情報処理部、RAMやROMなどの記憶部、入出力インターフェイス、及び、これらを接続するバス等を有するマイコンとして構成することができる。
また、各ユニットは、例えばCAN通信システムなどの車載LANを介して、あるいは、直接に、通信可能に接続されている。
【0018】
エンジン制御ユニット110は、エンジン10及びその補機類を統括的に制御するものである。
エンジン制御ユニット110は、例えば、図示しない加速操作部(典型的にはアクセルペダル)の操作量等に基づいて要求トルクを設定するとともに、エンジン10の実際の出力(実トルク)が要求トルクと一致するようエンジン10を制御する機能を有する。
【0019】
トランスミッション制御ユニット120は、トランスミッション20及びその補機類を統括的に制御するものである。
トランスミッション制御ユニット120は、変速機構における変速比の制御、トルクコンバータに設けられるロックアップクラッチの締結力制御などを行う。
【0020】
ブレーキ制御ユニット130は、ハイドロリックコントロールユニット40に指令を与え、右フロントブレーキ31R、左フロントブレーキ31L、右リアブレーキ32R,左リアブレーキ32Lのホイルシリンダを個別に制御させる機能を有する。
ブレーキ制御ユニット130は、アンチロックブレーキ制御、車両安定化制御、トルクベクタリング制御などを行う機能を有する。
【0021】
アンチロックブレーキ制御は、制動時に車輪のロックが生じた場合に、当該車輪の制動力を断続的に低下させて車輪の回転を回復させるものである。
車両安定化制御は、アンダーステア挙動又はオーバステア挙動の発生に応じて、左右車輪の制動力差を発生させて挙動を抑制する方向のヨーモーメントを発生させるものである。
トルクベクタリング制御は、旋回開始時に旋回内輪側の車輪に制動力を与え、ヨー挙動を促進するヨーモーメントを発生させるものである。
また、ブレーキ制御ユニット130は、車体挙動制御ユニット140からの指令に応じて右リアブレーキ32R、左リアブレーキ32Lに制動力を発生させる機能を有する。
この点、後に詳しく説明する。
ブレーキ制御ユニット130は、車体挙動制御ユニット140等を共同して、本発明の制駆動力制御部として機能する。
【0022】
ブレーキ制御ユニット130には、車速センサ131、加速度センサ132、ヨーレートセンサ133等が接続されている。
車速センサ131は、各車輪を支持するハブ部に設けられ、各車輪の回転速度に応じた車速信号を発生する。
ブレーキ制御ユニット130は、車速センサ131の出力に基づいて、各車輪の回転速度を車輪毎に演算することができる。
加速度センサ132は、車体に作用する前後方向、及び、車幅方向の加速度をそれぞれ検出するものである。
ヨーレートセンサ133は、車両のヨーレート(鉛直軸回りの回転速度)を検出するジャイロセンサである。
【0023】
車体挙動制御ユニット140は、右リアブレーキ32R、左リアブレーキ32Lに制動力を周期的に発生させることにより、車体(バネ上)のピッチング挙動を抑制する車体挙動制御(ピッチング抑制制御)を行うものである。
ピッチング抑制制御の具体的内容については、後に詳しく説明する。
車体挙動制御ユニット140には、サスペンションストロークセンサ141が接続されている。
サスペンションストロークセンサ141は、右前輪FWR、左前輪FWLを支持するフロントサスペンション、及び、右後輪RWR,左後輪RWLを支持するリアサスペンションのストローク量を検出するピッチング挙動検出部である。
【0024】
図2は、第1実施形態の車体挙動制御装置を有する車両のリアサスペンション装置の構成を模式的に示す図である。
図2は、右後輪RWRを支持するリアサスペンション装置を車幅方向外側から見た状態を示している。
図2においては、理解を容易にするために、リアサスペンション装置の構成のうち、車幅方向から見たときのストローク時の車輪中心Cの挙動に支配的な要素のみを図示している。(後述する図9乃至図10において同様)
【0025】
第1実施形態において、リアサスペンション装置210は、例えば、トレーリングリンクアーム式のものである。
右後輪RWRが取り付けられる図示しないハブベアリングハウジングは、トレーリングアーム211を介して、車体Bに取り付けられている。
トレーリングアーム211は、後輪RWの車輪中心Cから前方側かつ斜め上方側へ突出している。
トレーリングアーム211の前端部212は、車輪中心Cに対して前方側かつ上方側において、車体Bに対し、車幅方向に沿った中心軸回りに揺動可能に連結されている。
【0026】
このようなトレーリングアーム式のリアサスペンション装置210においては、ストローク時における車輪中心Cの軌跡は、図2に一点鎖線で示すように、トレーリングアーム211の前端部212を中心とする円弧状となる。
この場合、リアサスペンション装置210がバウンド方向(縮方向)にストロークした場合、車輪中心Cは、車体Bに対して上昇しつつ後退する。
また、リアサスペンション装置210がリバウンド方向(伸方向)にストロークした場合、車輪中心Cは、車体Bに対して下降しつつ前進する。
【0027】
第1実施形態の車体挙動制御装置は、例えば路面の凹凸などに起因して、車体Bのピッチング挙動(ピッチング振動)が発生した場合に、ピッチング挙動を抑制するため、リアサスペンション装置210のリバウンド方向へのストローク変化を抑制するピッチング抑制制御を実行する。
図3は、第1実施形態の車体挙動制御装置を有する車両、及び、本発明の比較例の車両におけるピッチ角推移の一例を示す図である。
図3においては、車両が波状の凹凸を有する路面(一例として、車速60km/hでの走行時に約1.7Hz)を通過する際の状態を示している。
図3において、横軸は時間を示し、上段の縦軸は車体のピッチ角(正(上方)がノーズダイブ方向、負(下方)がノーズアップ方向)を示し、下段の縦軸は前輪片輪駆動トルク及び後輪片輪駆動トルクを示している。(後述する図8において同じ)
なお、ここではエンジン10の出力トルクは一定であるが、駆動輪である右前輪FWR、左前輪FWLが、波状の凹凸を通過することに伴い、駆動系の軸部材の捻じれ等に起因して、前輪の駆動トルクも周期的に変動している。
【0028】
第1実施形態においては、車体挙動制御ユニット140がサスペンションストロークセンサ141の出力に基づいて車体Bのピッチ角を演算する。
車体挙動制御ユニット140は、車体Bが車幅方向に沿って揺動するピッチング挙動(ピッチング振動)の発生を検出した場合に、ピッチング挙動に応じて周期的に右リアブレーキ32R、左リアブレーキ32Lに、例えば100Nmの制動トルクが発生するよう、制動力BF(図2参照)を発生させる制御を行う。
この制動力BFは、車体Bがノーズアップ方向からノーズダイブ方向へ推移する時期と同期して発生させられる。
このとき、フロントサスペンション装置は、バウンド側(縮側)へストローク変化し、リアサスペンション装置210は、リバウンド側(伸側)へストローク変化する。
【0029】
ここで、図2に示すように、第1実施形態においては、リアサスペンション装置210は、リバウンド側へストローク変化する場合には、右後輪RWRの車輪中心Cが車体Bに対して前進する。
このとき、右リアブレーキ32Rによって制動力BFを発生させて右後輪RWRに後引き力BFを与えると、トレーリングアーム211をバウンド方向(図2における時計回り方向)側に回動させるモーメントM、及び、アンチダイブ力Faを発生させ、リササスペンション装置210のリバウンド側へのストローク変化を抑制することができる。(なお、左後輪RWLについても同様である。)
アンチダイブ力Faは、トレーリングアーム211の前端部212に下向きに作用する力である。
アンチダイブ力Faは、車体後部の上昇を抑制することにより、上述したモーメントMと協働して、ピッチング挙動を低減する効果を有する。
アンチダイブ力Faは、図2に示す側面視において、トレーリングアーム211の前端部212と車輪中心Cを結んだ直線の傾斜をθとした場合、Fa=BF×tanθとなる。
【0030】
比較例及び後述する各実施形態において、従前の実施形態と共通する箇所には同じ符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
本発明の比較例の車両においては、上述したピッチング挙動に応じた制動力の周期的発生(ピッチング抑制制御)を行っていない。
図3の上段に示すように、第1実施形態によれば、ピッチング振動に応じて制動力を周期的に発生させることにより、比較例に対して、車体のピッチング挙動を抑制できることがわかる。
【0031】
以上説明した第1実施形態によれば、リアサスペンション装置210のリバウンド側へのストローク変化時に、制動力BFの増加によって右後輪RWR、左後輪RWLに後引き力を与えることにより、右後輪RWR、左後輪RWLが車体Bに対して前進する動きを抑制することができる。
ここで、リアサスペンション装置210は、リバウンド側へのストローク変化時に後輪が車体Bに対して前進するジオメトリを有するため、このような後輪への後引き力により、リバウンド側へのストローク変化を抑制することができる。
一方、このようなジオメトリの場合、右後輪RWR、左後輪RWLへの後引き力は、バウンド側へのストローク変化を促進することになる。そこで、バウンド側へのストローク変化時には、制動力の増加を停止することにより、右後輪RWR、左後輪RWLへの後引き力がバウンド側へのストローク変化を促進することを防止することができる。
このため、第1実施形態によれば、車体Bのピッチング挙動の発生時には、リアサスペンション装置210におけるリバウンド側へのストローク変化を抑制するとともに、バウンド側へのストローク変化が助長されることを防止することができ、これによって車体Bのピッチング挙動を制動力の制御のみによる簡単な構成で効果的に抑制することができる。
なお、一般に、ノーズダイブ方向への姿勢変化を抑制するためには、車両の減速度を抑制し、あるいは車両に加速度を発生させる対策が一般的である。
しかし、第1実施形態によれば、制動力BFの増加という、通常の技術的常識とは異なる手法を用いて効果的に車体Bのピッチング挙動を抑制することができる。
【0032】
<第2実施形態>
次に、本発明を適用した車体挙動制御装置の第2実施形態について説明する。
第2実施形態の車体挙動制御装置は、第1実施形態と同様のピッチング抑制制御に加えて、以下説明する車速補完制御を行うものである。
図4は、第1実施形態の車体挙動制御装置を有する車両におけるピッチング挙動発生時の前輪片輪駆動トルク、後輪片輪制動トルク、及び、車速の推移の一例を示す図である。
図5は、第1実施形態の車体挙動制御装置を有する車両におけるピッチング挙動発生時の前輪片輪駆動トルク、後輪片輪制動トルク、及び、車速の推移の他の一例を示す図である。
図4図5において、横軸は時間を示し、縦軸は、車速、前輪片輪駆動トルク、後輪片輪制動トルクを示している。(後述する図6図7において同じ)
ピッチング挙動に応じて右リアブレーキ32R、左リアブレーキ32Lに周期的に発生させる制動トルクが、図4は、100Nmである場合を示し、図5は、600Nmである場合を示している。
【0033】
図4,5に示すように、ピッチング挙動に応じて、右リアブレーキ32R、左リアブレーキ32Lに制動力を周期的に発生させることによって、車速の低下が生じている。
このような車速の低下は、特に、図5のように制動力を大きくした場合に顕著となる。
そこで、第2実施形態においては、ピッチング抑制制御の実行時に、車体挙動制御ユニット140からエンジン制御ユニット110、トランスミッション制御ユニット120に指令を与え、右前輪FWR、左前輪FWLに伝達される駆動力を増加させ、車速の低下を抑制する車速補完制御を行っている。
具体的には、エンジン制御ユニット110は、エンジン10の発生トルクを増加させる制御を行う。
このとき、エンジン10のトルクアップのみでは車速維持が難しい場合には、トランスミッション制御ユニット120は、トランスミッション20の変速比(減速比)が大きくなるように変速を行い、右前輪FWR、左前輪FWLにおけるトルクを増大させる。
【0034】
図6は、第2実施形態の車体挙動制御装置を有する車両におけるピッチング挙動発生時の前輪片輪駆動トルク、後輪片輪制動トルク、及び、車速の推移の一例を示す図である。
図7は、第2実施形態の車体挙動制御装置を有する車両におけるピッチング挙動発生時の前輪片輪駆動トルク、後輪片輪制動トルク、及び、車速の推移の他の一例を示す図である。
ピッチング挙動に応じて右リアブレーキ32R、左リアブレーキ32Lに周期的に発生させる制動トルクが、図6は、100Nmである場合を示し、図7は、600Nmである場合を示している。
【0035】
第2実施形態においては、図6図7に示すように、車速補完制御によって前輪の駆動力を増加させることにより、制動力を用いたピッチング抑制制御を行った場合であっても、車速の低下を抑制し、あるいは、車速を維持することが可能となる。
図8は、第2実施形態の車体挙動制御装置を有する車両、及び、本発明の比較例の車両におけるピッチ角推移の一例を示す図である。
図8においては、ピッチング抑制制御において、後輪片輪あたり600Nmの制動トルクを発生させる場合を示している。
図8に示すように、第2実施形態においては、ピッチング抑制制御時に車速補完制御を行うことにより、車速の低下を抑制することができるため、ピッチング抑制制御において発生させる制動トルクを大きくした場合であっても、乗員に意図しない減速に違和感、不安感を与えることや、再加速のためのアクセル操作が必要となって運転操作が煩雑となることを防止できる。
また、ピッチング抑制制御において発生させる制動トルクを大きく設定することができるため、ピッチング挙動の抑制効果を向上することができる。
【0036】
以上説明した第2実施形態によれば、上述した第1実施形態の効果と同様の効果に加えて、制動力BFを用いてピッチング挙動を抑制する場合における車速の低下を抑制し、あるいは、車速を維持して、意図しない減速により乗員に違和感、不安感を与えることや、再加速のためのアクセル操作が必要となることを防止できる。
【0037】
<第3実施形態>
次に、本発明を適用した車体挙動制御装置の第3実施形態について説明する。
第3実施形態の車体挙動制御装置は、第1、第2実施形態のトレーリングアーム式のサスペンション装置に代えて、以下説明するストラット式のサスペンション装置220を有する車両に設けられる。
図9は、第3実施形態の車体挙動制御装置を有する車両のリアサスペンション装置の構成を模式的に示す図である。
【0038】
リアサスペンション装置220は、ストラット221を有する。
ストラット221は、サスペンションのストローク速度に応じた減衰力を発生する油圧式のショックアブソーバ(ダンパ)を有する。
ストラット221は、伸縮方向(ショックアブソーバのロッド軸線方向)を、鉛直方向に対して、上端部が下端部に対して車両後方側となるように後傾させて配置される。
【0039】
ストラット211の上端部は、例えばゴム等の弾性体マウントを介して車体Bに取り付けられる。
ストラット211の下端部は、右後輪RWR、左後輪RWLを支持するハブベアリングハウジングに結合される。
このようなリアサスペンション装置220においても、第1実施形態のリアサスペンション装置210と同様に、バウンド方向(縮方向)にストロークした場合、車輪中心Cは、車体Bに対して上昇しつつ後退する。
また、リアサスペンション装置220がリバウンド方向(伸方向)にストロークした場合、車輪中心Cは、車体Bに対して下降しつつ前進する。
【0040】
以上説明した第3実施形態においても、上述した第1実施形態、第2実施形態と同様のピッチング抑制制御を行うことにより、第1実施形態、第2実施形態の効果と同様の効果を得ることができる。
【0041】
<第4実施形態>
次に、本発明を適用した車体挙動制御装置の第4実施形態について説明する。
第4実施形態の車体挙動制御装置は、第1、第2実施形態のトレーリングアーム式のサスペンション装置に代えて、以下説明するダブルウィッシュボーン式のリアサスペンション装置230を有する車両に設けられる。
図10は、第4実施形態の車体挙動制御装置を有する車両のリアサスペンション装置の構成を模式的に示す図である。
【0042】
リアサスペンション装置230は、フロントアッパリンク231、リアアッパリンク232、フロントロワリンク233、リアロワリンク234を有する。
各リンクは、車幅方向内側の端部が車体Bに対して揺動可能に連結され、車幅方向外側の端部が、右後輪RWR、左後輪RWLを支持するハブベアリングハウジングHに揺動可能に連結されている。
【0043】
フロントアッパリンク231、リアアッパリンク232は、右後輪RWR,左後輪RWLの車輪中心Cに対して上方に配置され、車両前方側から順次配列されている。
フロントロワリンク233、リアロワリンク234は、右後輪RWR,左後輪RWLの車輪中心Cに対して下方に配置され、車両前方側から順次配列されている。
【0044】
フロントアッパリンク231の車体B側の端部は、リアアッパリンク232の車体B側の端部よりも高い位置に配置されている。
フロントアッパリンク231のハウジングH側の端部は、リアアッパリンク232のハウジングH側の端部よりも高い位置に配置されている。
フロントロワリンク233の車体B側の端部は、リアロワリンク234の車体B側の端部よりも高い位置に配置されている。
フロントロワリンク233のハウジングH側の端部は、リアロワリンク234のハウジングH側の端部よりも高い位置に配置されている。
【0045】
このような配置によって、リアサスペンション装置230は、第1実施形態のリアサスペンション装置210と同様に、バウンド方向(縮方向)にストロークした場合、車輪中心Cは、車体Bに対して上昇しつつ後退するジオメトリとなっている。
また、リアサスペンション装置230がリバウンド方向(伸方向)にストロークした場合、車輪中心Cは、車体Bに対して下降しつつ前進する。
【0046】
以上説明した第4実施形態においても、上述した第1実施形態、第2実施形態と同様のピッチング抑制制御を行うことにより、第1実施形態、第2実施形態の効果と同様の効果を得ることができる。
【0047】
<第5実施形態>
次に、本発明を適用した車体挙動制御装置の第5実施形態について説明する。
第5実施形態において、車両1Aは、前輪側、後輪側にそれぞれ独立したモータジェネレータを有する、例えばバッテリ電気自動車(BEV)、エンジン-電気シリーズハイブリッド車両(HEV)、燃料電池車(FCV)等の電動車両である。
図11は、第5実施形態の車体挙動制御装置を有する車両の構成を模式的に示す図である。
第5実施形態の車両1Aは、第1実施形態の車両1のエンジン10、トランスミッション20、エンジン制御ユニット110、トランスミッション制御ユニット120に代えて、以下説明するフロントモータジェネレータ50F、リアモータジェネレータ50R、モータジェネレータ制御ユニット150等を備えている。
【0048】
フロントモータジェネレータ50Fは、右前輪FWR,左前輪FWLの駆動力を発生する永久磁石同期電動機などの回転電機を有する。
フロントモータジェネレータ50Fは、右前輪FWR,左前輪FWLからトルクを吸収し、回生発電を行う機能を有する。
リアモータジェネレータ50Rは、右後輪RWR、左後輪RWLの駆動力を発生する永久磁石同期電動機などの回転電機を有する。
リアモータジェネレータ50Rは、右後輪RWR、左後輪RWLからトルクを吸収し、回生発電を行う機能を有する。
フロントモータジェネレータ50F、リアモータジェネレータ50Rは、ドライブシャフト51を介して左右の各車輪に連結されている。
フロントモータジェネレータ50F、リアモータジェネレータ50Rは、旋回時等の左右車輪の回転速度差を吸収する図示しないディファレンシャルを有する。
【0049】
モータジェネレータ制御ユニット150は、フロントモータジェネレータ50F、リアモータジェネレータ50Rの駆動時における目標トルク、及び、回生発電時における回生発電量(回生発電ブレーキの制動力(制動トルク))を、個別に制御する機能を有する。
第5実施形態においては、第1、第2実施形態と同様の右前輪FWR,左前輪FWLの駆動力制御、及び、右後輪RWR、左後輪RWLの周期的な制動力付与制御(ピッチング抑制制御)を、フロントモータジェネレータ50Fの駆動トルク制御、及び、リアモータジェネレータ50Rの回生発電量制御により行っている。
以上説明した第5実施形態においても、上述した第1、第2実施形態の効果と同様のピッチング挙動の抑制効果を得ることができる。
【0050】
(変形例)
本発明は、以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
(1)車体挙動制御装置、サスペンション装置、車両等の構成は、上述した各実施形態に限定されず、適宜変更することができる。
(2)各実施形態は、サスペンション装置のストロークを検出することでピッチング挙動を検出しているが、ピッチング挙動を検出する手法はこれに限らず、適宜変更することができる。例えば、各車輪の車輪速、車体の前後方向加速度、上下方向加速度に基づいてピッチング挙動を検出してもよい。また、車体のピッチ方向の角速度、各加速度等を検出するジャイロセンサ等のセンサを設けてもよい。
(3)各実施形態は、後輪への制動力付与によってピッチング挙動の抑制を図っているが、ピッチング抑制制御の対象となる車輪が駆動輪である場合には、駆動力を周期的に減少させる構成や、駆動状態から周期的に制動状態へ切り替える構成としてもよい。
(4)各実施形態では、後輪の制駆動力制御によってピッチング挙動の抑制を図っているが、前輪に対して制駆動力制御を行う構成としてもよい。この場合にも、前輪用のサスペンション装置のストローク時における車輪の車体に対する前進、後退に応じて、制駆動力の周期的な制御を行うことにより、ピッチング挙動の抑制を図ることができる。この場合、前輪、後輪それぞれに、ピッチング抑制制御を独立あるいは協調して行うようにしてもよい。
(5)第1乃至第4実施形態において、車両は一例として前輪駆動車であったが、本発明はこれに限らず、後輪駆動者や四輪駆動車(AWD車)にも適用することができる。
なお、AWD車において、前輪側駆動機構と後輪側駆動機構との回転速度差を拘束する拘束機構(一例として、AWDトランスファに設けられる湿式多板クラッチ等のカップリング)を有する場合には、前輪側駆動機構と後輪側駆動機構との間で伝達される内部循環トルクの影響を抑制するため、拘束機構における拘束力を通常時よりも低下させ、好ましくは解放状態とする構成とすることができる。
(6)第5実施形態では、左右の車輪をともに駆動するモータジェネレータを用いているが、本発明はこれに限らず、例えば左右の車輪に独立したモータジェネレータを設ける構成(典型的にはインホイールモータ)としてもよい。
また、前輪、後輪の一方にのみモータジェネレータを設け、他方は例えば内燃エンジンなどの他の動力源によって駆動する構成や、他方には駆動用動力源を設けない構成としてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 車両(第1実施形態) 1A 車両(第6実施形態)
B 車体
FWR 右前輪 FWL 左前輪
RWR 右後輪 RWL 左後輪
C 車輪中心 BF 制動力
10 エンジン 20 トランスミッション
21 ドライブシャフト
31R 右フロントブレーキ 31L 左フロントブレーキ
32R 右リアブレーキ 32L 左リアブレーキ
40 ハイドロリックコントロールユニット
50F フロントモータジェネレータ 50R リアモータジェネレータ
51 ドライブシャフト
110 エンジン制御ユニット 120 トランスミッション制御ユニット
130 ブレーキ制御ユニット 131 車速センサ
132 加速度センサ 133 ヨーレートセンサ
140 車体挙動制御ユニット 141 サスペンションストロークセンサ
150 モータジェネレータ制御ユニット
210 リアサスペンション装置(第1実施形態)
211 トレーリングアーム 212 前端部
220 リアサスペンション装置(第3実施形態)
221 ストラット
230 リアサスペンション装置(第4実施形態)
231 フロントアッパリンク 232 リアアッパリンク
233 フロントロワリンク 234 リアロワリンク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11