(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174075
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】オーブン式加熱調理器
(51)【国際特許分類】
F24C 7/04 20210101AFI20231130BHJP
A47J 37/06 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
F24C7/04 301Z
A47J37/06 356
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086726
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】390010168
【氏名又は名称】東芝ホームテクノ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅家 優
(72)【発明者】
【氏名】木村 智志
(72)【発明者】
【氏名】小林 博明
(72)【発明者】
【氏名】三宅 一也
【テーマコード(参考)】
3L087
4B040
【Fターム(参考)】
3L087AA01
3L087AA02
3L087AB11
3L087BA09
3L087BB05
3L087BC12
3L087CC01
3L087DA24
4B040AA02
4B040AB02
4B040AC03
4B040AD04
4B040AE12
4B040CA05
4B040CB05
4B040LA02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】所望の甘みおよび食感のいも類を焼き上げることが可能なオーブン式加熱調理器を提供する。
【解決手段】調理室内に収容されたさつま芋を加熱する上ヒータおよび下ヒータと、上ヒータおよび下ヒータを制御し、かつさつま芋の食感を調節するために庫内温度を焼成温度O-2に維持するように上ヒータおよび下ヒータを制御する加熱制御手段と、加熱制御手段における上ヒータおよび下ヒータの加熱調理工程の期間T-3と、酵素活性化温度O-1および焼成温度O-2と、を可変可能に設定するメイン画面および操作手段と、を備え、酵素活性化温度O-1は、40℃~80℃で可変可能に設定され、焼成温度O-2は、130℃以上で可変可能に設定され、メイン画面および操作手段により、さつま芋の加熱調理後の甘みおよび食感を任意に選択可能とした構成としている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理室内に収容されたいも類を加熱する加熱手段と、
前記調理室の庫内温度を検知する温度検知手段と、
前記いも類の甘みを調節するために前記庫内温度を第1の設定温度に維持するように前記加熱手段を制御し、かつ前記いも類の食感を調節するために前記庫内温度を第2の設定温度に維持するように前記加熱手段を制御する加熱制御手段と、
前記加熱制御手段における前記加熱手段の加熱時間と、前記第1の設定温度および前記第2の設定温度と、を可変可能に設定する設定手段と、を備え、
前記第1の設定温度は、40℃~80℃で可変可能に設定され、
前記第2の設定温度は、130℃以上で可変可能に設定され、
前記設定手段により、前記いも類の加熱調理後の甘みおよび食感を任意に選択可能としたことを特徴とするオーブン式加熱調理器。
【請求項2】
前記甘みのレベルに対応した前記加熱時間および前記第1の設定温度である第1の設定値群と、また前記食感のレベルに対応した前記加熱時間および前記第2の設定温度である第2の設定値群と、を有することを特徴とする請求項1に記載のオーブン式加熱調理器。
【請求項3】
前記いも類の銘柄に対応した前記加熱時間、前記第1の設定温度および前記第2の設定温度を有することを特徴とする請求項1または2に記載のオーブン式加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被調理物としていも類を加熱調理するオーブン式加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の加熱調理器として、例えば特許文献1には、オーブン室に収容された焼き芋を加熱調理する加熱手段と、オーブン室の温度を検出する温度センサと、「焼き芋」のメニューを選択するメニューキーおよび調理時間を設定するタイマーキーと、を備え、オーブン室に収容された焼き芋を酵素活性温度範囲の45℃~65℃に所定時間保持した後、140℃程度の焼き温度に加熱して焼き芋を焼き上げるものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
いも類は種類や品種により、その甘みや食感などの特性を引き出して美味しく焼き上げる加熱方法が異なり、例えば「焼き芋」で加熱調理される代表的ないもであるさつま芋でも、安納芋、シルクスイート、鳴門金時など様々な品種があり、そのさつま芋の特性を引き出して美味しく焼き上げる加熱方法が異なる。しかしながら特許文献1に記載の焼き芋製造機能付調理器で焼き芋を焼き上げるには、「焼き芋」のメニューを選択して調理時間を設定する必要があるが、設定で可変可能なパラメータが調理時間だけであるため単一的な加熱方法しか開示されていなかった。
【0005】
そこで本発明は、所望の甘みおよび食感のいも類を焼き上げることが可能なオーブン式加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のオーブン式加熱調理器は、調理室内に収容されたいも類を加熱する加熱手段と、前記調理室の庫内温度を検知する温度検知手段と、前記いも類の甘みを調節するために前記庫内温度を第1の設定温度に維持するように前記加熱手段を制御し、かつ前記いも類の食感を調節するために前記庫内温度を第2の設定温度に維持するように前記加熱手段を制御する加熱制御手段と、前記加熱制御手段における前記加熱手段の加熱時間と、前記第1の設定温度および前記第2の設定温度と、を可変可能に設定する設定手段と、を備え、前記第1の設定温度は、40℃~80℃で可変可能に設定され、前記第2の設定温度は、130℃以上で可変可能に設定され、前記設定手段により、前記いも類の加熱調理後の甘みおよび食感を任意に選択可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、所望の甘みおよび食感のいも類を焼き上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1の実施形態を示すオーブントースターの外観斜視図である。
【
図3】同上、主な電気的構成を示すブロック図である。
【
図5】同上、それぞれの品種のさつま芋の加熱調理後の食感情報から、それぞれの品種のさつま芋の食感に応じて、甘み食感および粘り食感で該当する座標に配置したMAPである。
【
図6】同上、「焼き芋」の調理メニュー、甘みが「3」、粘りが「2」の設定で調理コースが設定されたときの加熱調理における、庫内温度センサの検出温度と、下部温度さつま芋の内部温度と、の経時的な変化を示すグラフである。
【
図7】同上、「焼き芋」の調理メニュー、甘みが「1」、粘りが「1」の設定で調理コースが設定されたときの加熱調理における、庫内温度センサの検出温度と、下部温度さつま芋の内部温度と、の経時的な変化を示すグラフである。
【
図8】同上、「焼き芋」の調理メニュー、甘みが「2」、粘りが「4」の設定で調理コースが設定されたときの加熱調理における、庫内温度センサの検出温度と、下部温度さつま芋の内部温度と、の経時的な変化を示すグラフである。
【
図9】本発明の第1の実施形態の変形例を示すオーブントースターの加熱庫の縦断面概略図である。
【
図10】本発明の第2の実施形態を示すオーブントースターの表示手段の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明における好ましい加熱調理器の実施形態について、添付図面を参照して説明する。なお、これらの全図面にわたり、共通する部分には共通する符号を付すものとする。
【実施例0010】
図1~
図8は、本発明の第1の実施形態におけるオーブン式加熱調理器をオーブントースターに適用した構成を示している。先ず
図1に基づいて、オーブントースターの全体構成を説明すると、1は略矩形箱状に構成される本体で、この本体1は、製品となるオーブンレンジの外郭を覆う部材として、金属製のキャビネット2を備えている。本体1の左右側面と上面を形成するキャビネット2は金属製の加熱庫6を覆うように設けられ、この加熱庫6が加熱調理すべき被調理物を内部に収容する調理室7を形成している。また本体1の前面には、開閉自在な扉3と、表示や報知や操作のための操作パネル部5と、が左右に並べて配置されている。扉3の上部には、縦開きの扉3を開閉するときに手をかける開閉操作用のハンドル4を備えている。
【0011】
操作パネル部5は、調理に関わる様々な情報を表示するためのLCD(Liquid Crystal Display:液晶ディスプレイ)などで構成される表示手段11と、タッチセンサで構成されて表示手段11の上方に配設され、調理を開始させたり、時間やメニューなどを選択させたりするための操作手段12と、がそれぞれ配設される。また14は、家庭用のコンセントに挿抜が可能な電源プラグが設けられた電源コードである。
【0012】
タッチセンサで構成された操作手段12は、例えば、導電性ポリマーによる透明電極部と制御PC板に接続する接点部との間をパターン配線で繋いだ構成要素が、タッチキーとして複数配設されるものであり、表示手段11に表示される複数のボタン表示部の何れかにタッチ操作を行なうことで、そのボタン表示部の上に配設され、当該ボタン表示部に対応したタッチキーがタッチ操作されて、このボタン表示部が選択される構成となっている。
【0013】
15は、被調理物を載置する金属製の焼き網であり、扉3の開閉に連動して焼き網15が前後に移動し、扉3が閉まっているときに焼き網15が調理室7の後述する上ヒータ16と下ヒータ17との間に、略水平状態で配設されるように構成される。調理室7の前面は加熱庫6の前面を形成する前板(図示せず)に達していて、被調理物を載置した焼き網15が前後に移動するために開口しており、この開口を扉3で開閉する構成となっている。
【0014】
図2は、加熱庫6の縦断面概略図を示している。同図において、加熱庫6の天井壁6aには上ヒータ16が配設され、加熱庫6の底壁6bには下ヒータ17が配設されて、これらの上ヒータ16および下ヒータ17により焼き網15に載置された被調理物を輻射加熱する構成となっている。本実施形態では上ヒータ16が、例えば出力が325Wのシーズヒータで構成され、下ヒータ17が、例えば出力が275Wのシーズヒータで構成されており、2本の上ヒータ16と、2本の下ヒータ17とが設けられている。なお、これは一例であり、本発明では上ヒータ16や下ヒータ17の構成や出力はこれらに限定されない。
【0015】
奥壁6cの上部には調理室7の庫内温度を検出する温度検出手段としての、例えばNTC(Negative Temperature Coefficient:負の温度係数)型サーミスタなどで構成される庫内温度センサ18が設けられる。なお庫内温度センサ18は、赤外線放射温度センサなどで構成されてもよい。また天井壁6aには、上ヒータ16と庫内温度センサ18との間に温度センサ遮熱壁19が形成され、上ヒータ16からの輻射熱が庫内温度センサ18に直接放射されないようにしている。
【0016】
加熱庫6の底壁6bの中央近傍であって下ヒータ17同士の間には、温度センサ遮熱壁21が、焼き網15の配置位置近傍にまで内部に突出して設けられ、下ヒータ17から温度センサ遮熱壁21方向に放射された輻射熱を、焼き網15に載置された、被調理物としてのアルミ箔で包装されたさつまいもSの方向に反射するように温度センサ遮熱壁21が配設される。そのため温度センサ遮熱壁21は、例えばアルミニウム板やアルミニウム板を鏡面状に科学研磨した素材、アルミメッキ鋼板など、熱反射効率が高く、高温でも変色し難い材料で作成される。
【0017】
温度センサ遮熱壁21の内部には、下部温度センサ22が上下方向に移動可能に設けられて、温度センサ遮熱壁21の上部から内部方向に突出して配設される。この下部温度センサ22の下部には弾性部材23が設けられており、下部温度センサ22を上方に付勢している。そのため
図2に示されるように、オーブントースター本体1の調理室7にアルミ箔で包装されたさつまいもSが収容されたときには、さつまいもSのアルミ箔に下部温度センサ22の先端が弾性的に接触して、下部温度センサ22がアルミ箔を介してさつまいもSの温度を直接検知できるようにしている。したがって下部温度センサ22は、さつまいもSの温度を検知する温度検知手段としての機能も有している。そして下部温度センサ22および弾性部材23を覆うように温度センサ断熱体24が設けられる。
【0018】
なお焼き網15の中央近傍、下部温度センサ22の位置と対応する箇所に、下部温度センサ22が通り抜けるための孔部を設けてもよく、また焼き網15の網目の孔の大きさは下部温度センサ22が通り抜けるくらいのものであり、これらの焼き網15の網目の孔が、下部温度センサ22が通り抜けるような位置になるように焼き網15を配置するように構成してもよい。
【0019】
加熱庫6の天井壁6aの中央近傍であって上ヒータ16同士の間には、把手遮熱壁26が形成される。
図2に示されるように、この把手遮熱壁26は温度センサ遮熱壁19と略同程度の高さで形成されており、温度センサ遮熱壁21の上方に位置するように構成されて、上ヒータ16から把手遮熱壁26方向に放射された輻射熱を、焼き網15に載置されたさつまいもSの方向に反射するように把手遮熱壁26が配設されている。そのため温度センサ遮熱壁21は、例えばアルミニウム板やアルミニウム板を鏡面状に科学研磨した素材、アルミメッキ鋼板など、熱反射効率が高く、高温でも変色し難い材料で作成されている。
【0020】
図3は、本実施形態のオーブントースターの主な電気的構成を図示したものである。同図において、31はマイクロコンピュータにより構成される制御手段であり、この制御手段31は周知のように、演算処理手段としてのCPUや、メモリなどの記憶手段32や、時刻や調理に関する時間など様々な時間を計時する計時手段33や、入出力デバイスなどを備えている。
【0021】
制御手段31の入力ポートには、操作手段12や、庫内温度センサ18や、下部温度センサ22が、それぞれ電気的に接続される。また制御手段31の出力ポートには、表示手段11や、上ヒータ16や、下ヒータ17が、それぞれ電気的に接続される。
【0022】
制御手段31は、操作手段12からの操作信号と、庫内温度センサ18や下部温度センサ22からの温度検出信号を受けて、上ヒータ16や下ヒータ17に駆動用の制御信号を出力し、表示手段11に表示制御信号を出力する機能を有する。こうした機能は、記憶手段32に記憶したプログラムを、制御手段31が読み取ることで実現するが、特に本実施形態では、制御手段31を加熱調理制御部34および表示制御手段35として機能させるプログラムを備えている。
【0023】
加熱調理制御部34は、主に被調理物の加熱調理に係る各部の動作を制御するもので、操作手段12の操作に伴う操作信号を受け取ると、その操作信号に応じて、計時手段33からの計時に基づく所定のタイミングで上ヒータ16や下ヒータ17に制御信号を送出し、被調理物に対する種々の加熱調理を制御する。また表示制御手段35は、操作手段12からの操作信号に基づき、各種の制御信号を生成し、また表示手段11の表示動作を制御するものである。
【0024】
本実施形態のオーブントースターでは、それぞれの調理メニューの設定、甘みの設定、粘りの設定に応じた調理コースが記憶手段32に記憶されており、その記憶された調理コースの調理メニューの設定、甘みの設定および粘りの設定が表示手段11に選択可能に表示され、これらの設定を行なうことで、当該調理コースの選択および設定を行なっている。そして加熱調理制御部34は、この調理コースの設定ごとに上ヒータ16や下ヒータ17の制御、すなわち加熱調理の制御を行なっている。具体的には、例えば調理メニューが「焼き芋」の場合、甘みのレベルごとに、後述する酵素活性化温度O-1の設定値および酵素活性化工程の期間T-1の設定値が設定され、粘りの設定ごとに、後述する焼成温度O-2の設定値および焼成工程の期間T-2の設定値、高温期間T-4の設定値が設定されて、記憶手段32に記憶されている。したがって本実施形態では、記憶手段32が、調理コースの設定に対応した酵素活性化温度O-1の設定値および焼成温度O-2の設定値と、酵素活性化工程の期間T-1の設定値および焼成工程の期間T-2の設定値の設定値群のテーブルを有し、また甘みのレベルに対応した酵素活性化温度O-1の設定値および酵素活性化工程の期間T-1の設定値の設定値群のテーブルを有し、そして粘りのレベルに対応した焼成温度O-2の設定値および焼成工程の期間T-2の設定値の設定値群のテーブルを有しており、ユーザが調理メニューや甘みの設定や粘りの設定を選択することにより、加熱調理の各工程の加熱時間および設定温度を設定することができ、例えば調理メニューが「焼き芋」の場合は、そのいも類の特性を引き出した適切な加熱調理を行なうことができ、所望の甘みおよび食感のいも類を焼き上げることができる。
【0025】
図4は、本実施形態のオーブントースターの表示手段11の平面図を示しており、図面の上側を「上」、下側を「下」、左側を「左」、右側を「右」、手前側を「前」、奥側を「後」として説明する。
図4はメイン画面G1を示している。ユーザが予め本体1に設けた電源プラグを家庭用のコンセントに差し込むと、表示手段11や制御手段31などの各部に必要な電力が投入される。このとき表示制御手段35は、所定時間経過後または所定の起動時表示画面の表示に、表示手段11に表示される初期画面としてトップ画面(図示せず)を表示させるように表示手段11を制御し、このトップ画面で「焼き芋」の調理メニューを選択すると、表示制御手段35は、
図4に示すようなメイン画面G1の配置を表示するように表示手段11を制御する。
【0026】
図4を参照してメイン画面G1の説明をすると、その上部には、3つのボタン表示部B1~B3を左右に並べて表示したメニュー選択キー表示領域A1が形成されている。ここで「戻る」のボタン表示部B1は、「<戻る」なるテキスト表示体D1を含む。また「HOME」のボタン表示部B2は、「HOME」なるテキスト表示体D2を含む。そして「次へ」のボタン表示部B3は、「次へ>」なるテキスト表示体D3を含む。
【0027】
「戻る」のボタン表示部B1および「次へ」のボタン表示部B3は、後述する調理メニュー選択画面(図示せず)に戻ることなく、表示手段11に表示される調理メニューを切替えるのに操作されるもので、「戻る」のボタン表示部B1または「次へ」のボタン表示部B3をタッチ操作すると「戻る」のボタン表示部B1または「次へ」のボタン表示部B3の上に配設された操作手段12からの操作信号を表示制御手段35が受け付けて、表示制御手段35が、予め定められた順番で、前の順番の調理メニューまたは次の順番の調理メニューを表示するように表示手段11を制御する。
【0028】
「HOME」のボタン表示部B2は、現在の画面、例えばメイン画面G1における設定を破棄してトップ画面に戻る際に操作されるもので、「HOME」のボタン表示部B2をタッチ操作すると、表示制御手段35が、現在表示手段11に表示された設定を破棄して、トップ画面に戻って、最も直前のトップ画面で表示されていた設定を表示するように表示手段11を制御する。
【0029】
メニュー選択キー表示領域A1の下には、現在表示されている調理メニューが焼き芋であることを連想させる「焼き芋」なるテキスト表示体D4と、焼き芋が図示されたイラスト表示体D5を左右に並べて配置している。そして「焼き芋」のテキスト表示体D4およびイラスト表示体D5の下には、「甘み」のボタン表示部B6、カーソル表示体C1~C5および「濃厚」なるテキスト表示体D7を左右に並べて表示した甘み選択表示領域A2が形成される。ここで「甘み」のボタン表示部B6は、「甘み」なるテキスト表示体D6を含む。また現在選択されているカーソル表示体、例えば
図4の場合はC1~C3のカーソル表示体が点灯表示され、他のカーソル表示体C4およびC5が消灯表示されている。
【0030】
カーソル表示体C1~C5は、被調理物としての芋の甘みの設定を表示するものであり、右のカーソル表示体に行くにつれて、すなわち「濃厚」のテキスト表示体D7の方に行くにつれて、甘みを増して濃厚になるように表示され、このカーソル表示体に表示された芋の甘みの設定で調理コースが設定される。したがってカーソル表示体C1~C5は、設定される甘みのレベルとしての機能も有している。なお本実施形態では、甘みの設定がカーソル表示体C1~C5の5段階から選択可能だが、本発明はこれに限定されず、選択できる設定が5段階よりも多くても少なくてもよい。
【0031】
「甘み」のボタン表示部B6は、芋の甘みの設定を変更するのに操作されるもので、「甘み」のボタン表示部B6を1回タッチ操作すると、表示制御手段35が、現在点灯表示しているカーソル表示体に加えて、その右側に位置するカーソル表示体も点灯表示させるように表示手段11を制御し、例えば
図4の状態のときに「甘み」のボタン表示部B6を1回タッチ操作すると、表示制御手段35が、現在点灯表示しているカーソル表示体C1~C3に加えて、その右側に位置するカーソル表示体C4も点灯表示させるように表示手段11を制御する。またカーソル表示体C1~C5が点灯表示のときに「甘み」のボタン表示部B6を1回タッチ操作すると、表示制御手段35が、カーソル表示体C2~C5を消灯表示に切替え、カーソル表示体C1のみを点灯表示させるように表示手段11を制御する。なお、カーソル表示体C1~C5を直接タッチ操作して甘みの設定がされるように構成してもよい。
【0032】
甘み選択表示領域A2の下には、「粘り」のボタン表示部B8、カーソル表示体C6~C10および「濃厚」なるテキスト表示体D7を左右に並べて表示した甘み選択表示領域A2が形成される。ここで「粘り」のボタン表示部B8は、「粘り」なるテキスト表示体D8を含む。また現在選択されているカーソル表示体、例えば
図4の場合はC6~C9のカーソル表示体が点灯表示され、他のカーソル表示体C10が消灯表示されている。
【0033】
カーソル表示体C6~C10は、被調理物としての芋の粘りの設定を表示するものであり、右のカーソル表示体に行くにつれて、すなわち「ねっとり」のテキスト表示体D7の方に行くにつれて、粘りを増してねっとり感を増すように表示され、このカーソル表示体に表示された芋の粘度の設定で調理コースが設定される。したがってカーソル表示体C1~C5は、設定される食感のレベルとしての機能も有している。なお本実施形態では、粘りの設定がカーソル表示体C6~C10の5段階から選択可能だが、本発明はこれに限定されず、選択できる設定が5段階よりも多くても少なくてもよい。
【0034】
「粘り」のボタン表示部B8は、芋の粘りの設定を変更するのに操作されるもので、「粘り」のボタン表示部B8を1回タッチ操作すると、表示制御手段35が、現在点灯表示しているカーソル表示体に加えて、その右側に位置するカーソル表示体も点灯表示させるように表示手段11を制御し、例えば
図4の状態のときに「粘り」のボタン表示部B8を1回タッチ操作すると、表示制御手段35が、現在点灯表示しているカーソル表示体C6~C9に加えて、その右側に位置するカーソル表示体C10も点灯表示させるように表示手段11を制御する。またカーソル表示体C6~C10が点灯表示のときに「粘り」のボタン表示部B8を1回タッチ操作すると、表示制御手段35が、カーソル表示体C7~C10を消灯表示に切替え、カーソル表示体C6のみを点灯表示させるように表示手段11を制御する。なお、カーソル表示体C6~C10を直接タッチ操作して粘りの設定がされるように構成してもよい。
【0035】
またメイン画面G1の後部には、「メニュー」なるテキスト表示体D11を含む「メニュー」のボタン表示部B11と、「調理」なるテキスト表示体D12を含む「調理」のボタン表示部B12と、「切」なるテキスト表示体D13を含む「切」のボタン表示部B13と、を左右に並べて配置している。
【0036】
「メニュー」のボタン表示部B11は、被調理物を加熱調理する調理メニューの種類を選択するのに操作されるもので、「メニュー」のボタン表示部B11をタッチ操作すると、表示制御手段23が、例えば選択可能な調理メニューが一覧表示された調理メニュー選択画面を表示するように表示手段11を制御し、この調理メニュー選択画面で調理メニューの種類、例えば「焼き芋」の調理メニューが選択されると、表示制御手段23が、選択された調理メニューのメイン画面、例えば
図4に示されるようなメイン画面G1、を表示するように表示手段11を制御する。
【0037】
「調理」のボタン表示部B12は調理を開始する際に操作されるもので、「調理」のボタン表示部B12をタッチ操作すると、加熱調理制御部34が、現在、メイン画面G1に表示された調理メニュー、甘みの設定および粘りの設定を今回の調理コースの設定として記憶手段32に記憶し、また記憶手段32に記憶した今回の調理コースの設定で、調理室7内の被調理物に対する加熱調理開始の制御をする構成となっている。
【0038】
「切」のボタン表示部B13は加熱調理をやめる際に操作されるもので、「切」のボタン表示部B13をタッチ操作すると、加熱調理制御部34が、調理室7内の被調理物に対する加熱を中止して切状態にする制御を行ない、表示制御手段23がトップ画面を表示するように表示手段11を制御する。
【0039】
次に、本実施形態のオーブンレンジについて、その作用を説明する。先ず被調理物として使用するさつま芋について説明すると、さつま芋は、食物繊維が豊富であり、またビタミンB1、ビタミンC、ビタミンE、カロテン等のビタミン類が豊富であることが知られております。また、主に皮に含まれるクロロゲン酸などのポリフェノールや、ヤラピンなどを含有しており、特に食物繊維とヤラピンの相乗効果により、さつま芋を食べると便秘が改善されるなど、健康面でのニーズがある。ここで、さつま芋を加熱したときの主な甘みは、さつま芋を加熱することにより酵素分解されて生成される麦芽糖であるが、その他にもくせのない甘さのショ糖がある。また、ねっとりとした甘さの果糖や、さわやかな甘さのブドウ糖をも含有する品種もあり、さつま芋は美味しさの面でのニーズもある。
【0040】
また、さつま芋は、スイートポテト、焼き芋、大学芋、さつま芋の天ぷら、ふかし芋、味噌汁の具材など多様な調理法があり、さつま芋の健康効能を、手間をかけず、手軽に美味しく楽しみたいニーズは高い。そのため、さつま芋の焼き芋が老若男女問わず人気になっている。
【0041】
家庭で焼き芋を作成する場合、オーブンレンジを使用して庫内温度200℃~250℃で20分~30分加熱調理する方法が一般的であり、このとき大きいさつま芋の場合は50~60分程度加熱調理する。また市販されている石焼き芋は、じっくりと加熱することで、澱粉糖化酵素であるβ-アミラーゼにより澱粉から麦芽糖への生成を促進させて甘みを強くする方法が知られている。
【0042】
ここで、一般にさつま芋は70℃前後の温度域をじっくりと加熱することで甘みが増すと言われているが、70℃のまま加熱しても、さつま芋は柔らかくならずに硬いままである。その理由は、さつま芋を50℃~70℃で加熱すると、さつま芋に含まれる酵素であるペクチンメチルエステラーゼが活性化して、細胞間の結合物質であるペクチン質の主成分として野菜や植物に含まれる多糖類のペクチンが硬くなるからである。また、さつま芋の澱粉が保水性を持ち柔らかくなる糊化を始める温度は、品種に応じて違いがあるが65℃~75℃である。そのため焼き芋でさつま芋を柔らかくするためには、ペクチンが軟化し、かつ澱粉が糊化する温度で加熱することが必要となる。その一方で、酵素のアミラーゼは70℃の温度下では10分程度で死活してしまい、また80℃以上の温度下では壊れて働かなくなる。したがって市販の石焼き芋の焼き方として、例えば65℃~80℃の間の温度で遠赤外線によりじっくりと温度上昇させた後に、加熱温度を高温に上昇させて保持する加熱方法とされている。
【0043】
そのため、前述の家庭でオーブンレンジを使用した、200℃~250℃の高温設定かつ急速加熱で加熱調理した場合、さつま芋は、柔らかめだが甘みが少ない焼き上がりになってしまう。またオーブンレンジを使用して150℃以下の温度設定かつ緩慢加熱で加熱調理した場合、さつま芋は、甘みは感じるが硬めな焼き上がりになってしまい、さらに125℃以下の温度設定で加熱調理した場合では、さつま芋からの気化熱によってさつま芋が冷却されて、結果的にさらに低温で加熱調理されることになるため、仕上がりがさらに硬くなってしまう。その一方で、さつま芋を180℃以上で加熱すること続けた場合は、澱粉の還元糖である麦芽糖がカラメル化してしまうため、さつま芋の皮と身との間が焦げてしまい、さつま芋を切断して加熱調理した場合はこの切断面も焦げてしまう。
【0044】
これらのことより、オーブンレンジを使用してさつま芋を加熱調理するときには、庫内温度を150℃~200℃に設定し、庫内温度を上昇させる途中、庫内温度が65℃~80℃の間になったらじっくりと時間をかけて緩慢加熱させる加熱調理の方法により、適度な硬さと粘り、甘みのあるさつま芋の焼き芋を焼き上げることができる。
【0045】
図5は、それぞれの品種のさつま芋の加熱調理後の食感情報から、それぞれの品種のさつま芋の食感に応じて、甘み食感および粘り食感で該当する座標に配置したMAPである。
図5に示されるように、さつま芋の品種に応じて甘み食感および粘り食感が相違し、また、さつま芋の品種に応じて糊化温度は相違し、また甘み成分が相違する。さらにさつま芋の大きさに応じて内部への熱の入り方が異なる。そのため、さつま芋の加熱調理は適宜調整して行なうことが好ましい。しかしながら前述のように、家庭用の電気オーブンやガスオーブン、またはオーブンレンジ、オーブントースターなどのオーブンによりさつま芋を加熱調理する場合には、それぞれのオーブンごとに指定された推奨の庫内温度設定と加熱時間の、単一的な加熱方法でさつま芋を加熱調理していた。そのため自動で焼き芋を調理するためにオーブン毎に設定された加熱パターンは固定的な加熱方法であり、ユーザの好みやさつま芋の品種などに応じた呈味や食感に焼き芋を仕上げるには、自己流に手動で庫内温度設定と加熱時間を調整する必要があり、失敗ややり直しなど試行錯誤を繰り返す場合があって手間がかかっていた。
【0046】
そこで本実施形態では、さつま芋の甘みを調節するために調理室7の庫内温度を40℃~80℃で可変可能に設定可能な第1の設定温度に維持し、その後でさつま芋の食感を決定するために調理室7の庫内温度を130℃以上で可変可能に設定可能な第2の設定温度に維持して、さつま芋の加熱調理後の甘みおよび食感を任意に選択可能とする構成として、所望の甘みおよび食感のさつま芋を焼き上げることができるようにしている。
【0047】
図6は、「焼き芋」の調理メニュー、甘みが「3」、粘りが「2」の設定で調理コースが設定されたときの加熱調理における、庫内温度センサ18の検出温度である庫内温度t
1と、下部温度センサ22の検出温度から算出された、被調理物としてのさつま芋の内部温度t
2と、の経時的な変化をグラフで示したものである。またT-1は酵素活性化工程の期間、T-2は焼成工程の期間であり、加熱調理工程の期間T-3は、酵素活性化工程の期間T-1と焼成工程の期間T-2とを合わせた長さになる。
【0048】
本実施形態の加熱調理における動作を説明すると、ハンドル4に手をかけて扉3を開け、焼き網15の中央にアルミ箔で包装されたさつまいもSを載置した後に扉3を閉じると、さつまいもSのアルミ箔に下部温度センサ22の先端が弾性的に接触する。それと前後して、オーブンレンジの電源プラグをコンセントに差し込んで通電すると、オーブンレンジは加熱が行われていない初期の切(待機)状態となり、表示制御手段35はトップ画面を表示させるように表示手段11を制御する。その後、例えば調理メニュー選択画面から「焼き芋」の調理メニューを選択すると、表示制御手段35は、
図4に示されるようなメイン画面G1を表示させるように表示手段11を制御する。
【0049】
そしてメイン画面G1で「甘さ」および「粘り」の設定後に「調理」のボタン表示部B12をタッチ操作すると、加熱調理制御部34が、現在、メイン画面G1に表示された調理メニュー、甘みの設定および粘りの設定、例えば今回の場合は「焼き芋」の調理メニュー、カーソル表示体C1~C3が点灯表示しており甘みが「3」、カーソル表示体C6~C7が点灯表示しており粘りが「2」の設定であるため、この設定を今回の調理コースの設定として記憶手段32に記憶し、また設定した調理コースの加熱パターンに沿って、加熱制御手段41が、調理室7内のアルミ箔で包装されたさつまいもSに対する酵素活性化工程、焼成工程の順に加熱調理を行なう加熱調理工程を実施する。
【0050】
加熱調理工程が開始されると、庫内温度t
1が所定の温度O-1に所定期間T-1維持される酵素活性化工程に移行する。酵素活性化工程が開始されると、加熱制御手段41は、庫内温度センサ18からの検出信号を受け取って、記憶手段32に記憶された設定値群により、調理室7の庫内温度が第1の設定温度としての酵素活性化温度O-1に昇温されて維持されるように上ヒータ16や下ヒータ17を通断電制御し、さつま芋Sの甘みを濃縮する。この酵素活性化温度O-1は、前述した酵素であるアミラーゼが活性化する下限温度である40℃からアミラーゼが死活する温度である80℃までの間に設定されるように調整されている。ここで酵素活性化温度O-1は、酵素の活性が最も高く、さつま芋の甘みを最大限に引き出すのに好ましい温度である至適温度の50℃に設定されることが好ましく、
図6では50℃近傍の温度である60℃が酵素活性化温度O-1として採用されているが、これは一例である。
【0051】
図6を参照して説明すると、加熱調理が開始されて酵素活性化工程に移行すると、調理室7内の庫内温度t
1が上昇し、庫内温度t
1が設定された酵素活性化温度O-1である60℃まで上昇すると、酵素活性化工程を行なう期間である第1の加熱時間としての酵素活性化工程の期間T-1内では、それ以上庫内温度t
1が上昇せずに酵素活性化温度O-1が維持される。その一方でさつま芋の内部温度t
2は、加熱調理が開始されてしばらくすると上昇し始めて、庫内温度t
1に徐々に近づいていき、期間T-1内では至適温度の50℃近傍で維持されていることが理解されよう。
【0052】
ここで加熱制御手段41は、メイン画面G1で設定された甘みの設定の情報に基づき、記憶手段32に記憶された設定値群により期間T-1を、例えば0分~90分の間で変更して設定し、上ヒータ16や下ヒータ17を通断電制御している。具体的には、加熱制御手段41は、甘みの設定が少なくなるにつれて期間T-1を短くし、甘みの設定が多くなるにつれて期間T-1を長くするように構成されており、例えば甘みの設定が「1」の場合は期間T-1を0分に設定して、
図7に示されるように加熱調理工程が開始されると、すぐに焼成工程に移行する。また例えば甘みの設定が「4」の場合は期間T-1を、例えば75分など甘みが「3」の設定時の期間T-1よりも長く設定して、アミラーゼが活性化する時間をより多くして、さつま芋の甘みをより引き出すようにしている。例えば今回の場合、加熱制御手段41は、甘みが「3」の設定であるので、
図6に示されるように期間T-1を60分に設定しており、さつま芋S内部が50℃で30分以上保持されれば甘みを強くすることができるため、さつま芋Sの甘みを十分に強くするように焼き上げることができる。このように、澱粉糖化酵素であるβ-アミラーゼを活性化させて澱粉から麦芽糖への生成を促進して甘みを引き出す酵素活性化温度O-1が維持される期間T-1を可変させて選択することにより、さつま芋Sの甘みや旨みなどの呈味を任意に可変させて選択することができる。なお、これは一例であり、期間T-1の長さはこれらに限定されず、さつま芋Sの量や大きさにより、内部まで均一に熱が入る時間で決定されてもよい。また加熱制御手段41は、メイン画面G1で設定された甘みの設定の情報に基づき、酵素活性化工程の期間T-1に加えて酵素活性化温度O-1を、例えば40℃~80℃の間で変更して、上ヒータ16や下ヒータ17を通断電制御するように構成してもよい。
【0053】
その後、加熱制御手段41は、計時手段33の計時により、設定された期間T-1が経過したと判定すると酵素活性化工程が終了し、次の焼成工程に移行する。
【0054】
焼成工程は、庫内温度t1が所定の温度O-2に所定期間T-2維持される工程である。酵素活性化工程が開始されると、加熱制御手段41は、庫内温度センサ18からの検出信号を受け取って、記憶手段32に記憶された設定値群により、調理室7の庫内温度が焼成温度としての所定の温度O-2に昇温されて維持されるように上ヒータ16や下ヒータ17を通断電制御し、さつま芋Sを焼成する。本実施形態では、この焼成温度O-2を130℃~260℃程度の間に設定されるように調整される。
【0055】
焼成温度O-2について説明すると、焼成温度O-2が125℃以下の場合、さつま芋Sから水分が蒸発することによる気化熱でさつま芋Sが冷却されてしまい、結果的に低温で加熱したときの効果と同様になってしまうため、当該さつま芋S内の澱粉の糊化が進行せず、加熱調理後のさつま芋Sの仕上がりが硬くなってしまう。この気化熱によるさつま芋Sの冷却を抑制するため、本実施形態では焼成温度O-2の下限温度を130℃に設定している。
【0056】
なお焼成温度O-2の上限温度は260℃に設定しているが、この上限温度を、例えば200℃や250℃など、260℃よりも低く設定してもよく、あるいは300℃や350℃など、260℃よりも高く設定してもよい。ここで焼成温度O-2が高温である場合は短時間でさつま芋Sの表面や皮が焦げてしまうため、本実施形態では焼成温度O-2が、例えば250℃以上の高温の場合は、焼成温度O-2の250℃で、例えば10分~15分程度の所定期間である高温期間T-4、加熱調理した後で、焼成温度O-2を、例えば200℃程度の糊化促進温度に低下させる方法を採用しており、さつま芋Sの焦げ付きや脱水を抑制しつつ、さつま芋Sの糊化を促進させている。
【0057】
図6を参照して説明すると、焼成工程に移行すると庫内温度t
1が上昇し、設定された焼成温度O-2である240℃まで上昇すると、焼成工程の期間T-2内では、それ以上庫内温度t
1が上昇せずに焼成温度O-2が維持される。その一方でさつま芋の内部温度t
2は、焼成工程に移行して庫内温度t
1が上昇すると、少し後で庫内温度t
1と同様に上昇し、庫内温度t
1が焼成温度O-2である240℃を維持してから少し後で、庫内温度t
1と同様に焼成温度O-2に維持されていることが理解されよう。
【0058】
ここで加熱制御手段41は、メイン画面G1で設定された粘りの設定の情報に基づき、記憶手段32に記憶された設定値群により、焼成工程を行なう焼成温度O-2を130℃~260℃の間で変更することに加えて、焼成工程を行なう期間である焼成工程の期間T-2を、例えば20分~60分の間で変更して上ヒータ16や下ヒータ17を通断電制御している。具体的には、加熱制御手段41は、粘りの設定が少なくなるにつれて期間T-2を短くして焼成温度O-2を高温にし、高温で短時間に焼き上げて粘りが少なくホクホク感のある焼き上がりにする。また加熱制御手段41は、粘りの設定が多くなるにつれて焼成温度O-2を低温にし、被調理物であるさつま芋Sの糊化を長時間促進させつつ、焦げ付きや脱水を抑制して粘りが強いねっとり感を引き出している。例えば今回の場合、加熱制御手段41は、粘りが「2」の設定であるので、
図6に示されるように期間T-2の60分間、焼成温度O-2の240℃で加熱調理されるように上ヒータ16や下ヒータ17を通断電制御して、さつま芋Sを高温で短時間に焼き上げている。このように、さつま芋Sを加熱する焼成温度O-2および当該焼成温度O-2が維持される期間T-2を可変させて選択することにより、さつま芋Sの糖化の度合いや水分保持の度合いを任意に可変させて選択し、ほくほく感、しっとり感、ねっとり感などのさつま芋Sの粘り食感を任意に可変させて選択することができる。
【0059】
その後、加熱制御手段41は、計時手段33の計時により、設定された期間T-2が経過したと判定すると焼成工程が終了して加熱調理工程が完了する。ここで加熱制御手段41は、図示しない報知手段により調理が終了したことを報知するように構成してもよい。
【0060】
図7は、「焼き芋」の調理メニュー、甘みが「1」、粘りが「1」の設定で調理コースが設定されたときの加熱調理における庫内温度t
1と、下部温度センサ22の検出温度から算出された、被調理物としてのさつま芋の内部温度t
2と、の経時的な変化をグラフで示したものである。同図を参照して説明すると、加熱調理工程が開始されると酵素活性化工程に移行するが、記憶手段32に記憶された設定値群により、甘みの設定が「1」の場合は期間T-1が0分に設定されるため、次の焼成工程に移行する。焼成工程では、加熱制御手段41は、粘りが「1」の設定であるので、庫内温度センサ18からの検出信号を受け取って、記憶手段32に記憶された設定値群により、調理室7の庫内温度が焼成温度O-2である250℃に昇温されて維持されるように上ヒータ16や下ヒータ17を通断電制御する。
【0061】
図7に示されるように、粘りが「1」の設定である場合は期間T-2が60分に設定されるが、前述のように焼成温度O-2が高温である場合は、高温期間T-4加熱調理した後で焼成温度O-2を200℃程度の糊化促進温度に低下させるので、加熱制御手段41は、調理室7の庫内温度が焼成温度O-2である250℃に達したという庫内温度センサ18からの検出信号を受け取ると、計時手段33により焼成温度の期間T-2の計時および高温期間T-4の計時を開始し、かつ庫内温度が焼成温度O-2の250℃に維持されるように上ヒータ16や下ヒータ17を通断電制御する。
【0062】
その後、加熱制御手段41は、計時手段33の計時により、設定された高温期間T-4、例えば15分間、が経過したと判定すると、庫内温度センサ18からの検出信号を受け取って調理室7の庫内温度を糊化促進温度に低下させるように上ヒータ16や下ヒータ17を通断電制御する。そのためさつま芋の内部温度t2は、庫内温度t1が低下すると、庫内温度t1と同様に低下して糊化促進温度に維持されていることが理解されよう。そして加熱制御手段41は、庫内温度センサ18からの検出信号を受け取って糊化促進温度を維持するように上ヒータ16や下ヒータ17を通断電制御し、庫内温度t1および内部温度t2で糊化促進温度を維持してさつま芋Sの糊化を促進させる。そして加熱制御手段41は、計時手段33の計時により、設定された期間T-2が経過したと判定すると焼成工程が終了して加熱調理工程が完了し、さつま芋Sを甘みが少なく、粘りが少ない、ホクホク感のある焼き上がりにしている。
【0063】
図8は、「焼き芋」の調理メニュー、甘みが「2」、粘りが「4」の設定で調理コースが設定されたときの加熱調理における庫内温度t
1と、下部温度センサ22の検出温度から算出された、被調理物としてのさつま芋の内部温度t
2と、の経時的な変化をグラフで示したものである。同図を参照して説明すると、加熱調理工程が開始されると酵素活性化工程に移行し、加熱制御手段41は、甘みが「2」の設定であるので、庫内温度センサ18からの検出信号を受け取って、記憶手段32に記憶された設定値群により、調理室7の庫内温度が、例えば50℃の酵素活性化温度O-1に昇温されて維持されるように上ヒータ16や下ヒータ17を通断電制御し、さつま芋Sの甘みを濃縮して当該甘みを適度に引き出す。その後、加熱制御手段41は計時手段33の計時により、例えば30分の設定された期間T-1が経過したと判定すると酵素活性化工程が終了し、次の焼成工程に移行する。
【0064】
焼成工程に移行すると、加熱制御手段41は、粘りが「4」の設定であるので、庫内温度センサ18からの検出信号を受け取って、記憶手段32に記憶された設定値群により、調理室7の庫内温度が焼成温度O-2である例えば160℃程度の低温焼成温度に昇温されて維持されるように上ヒータ16や下ヒータ17を通断電制御する。この場合、焼成温度O-2が高温ではないので、焼成工程中に調理室7の庫内温度を糊化促進温度に変化させない。
【0065】
その後、加熱制御手段41は、計時手段33の計時により、例えば45分の設定された期間T-2が経過したと判定すると焼成工程が終了して加熱調理工程が完了し、さつま芋Sの甘みを適度に引き出しつつ、さつま芋Sの脱水を抑制して粘りを強くし、ねっとり感を引き出した焼き上がりにしている。なお粘りの設定が多くなるにつれて期間T-2を長くするように設定してもよい。
【0066】
以上のように本実施形態のオーブン式加熱調理器としてのオーブントースターは、調理室7内に収容されたいも類としてのさつま芋Sを加熱する加熱手段としての上ヒータ16および下ヒータ17と、調理室7の庫内温度を検知する温度検知手段としての庫内温度センサ18と、さつま芋Sの甘みを調節するために庫内温度を第1の設定温度としての酵素活性化温度O-1に維持するように上ヒータ16および下ヒータ17を制御し、かつさつま芋Sの食感を調節するために庫内温度を第2の設定温度としての焼成温度O-2に維持するように上ヒータ16および下ヒータ17を制御する加熱制御手段41と、加熱制御手段41における上ヒータ16および下ヒータ17の加熱時間としての加熱調理工程の期間T-3と、酵素活性化温度O-1および焼成温度O-2と、を可変可能に設定する設定手段としてのメイン画面G1および操作手段12と、を備え、酵素活性化温度O-1は、40℃~80℃で可変可能に設定され、焼成温度O-2は、130℃以上で可変可能に設定され、メイン画面G1および操作手段12により、さつま芋Sの加熱調理後の甘みおよび食感を任意に選択可能とした構成としている。
【0067】
このように構成することにより、加熱調理後のさつま芋Sの甘みや食感を任意に可変させて選択することができ、さつま芋の品種やユーザの好みに応じて、さつま芋Sの所望の甘みや食感に焼き上げることができる。
【0068】
また本実施形態のオーブントースターは、甘みのレベルとしてのカーソル表示体C1~C5ごとに加熱調理工程の期間T-3における酵素活性化工程の期間T-1と、酵素活性化温度O-1とが設定されて記憶手段32に記憶されており、カーソル表示体C1~C5に対応した酵素活性化工程の期間T-1および酵素活性化温度O-1である第1の設定値群を有し、また食感のレベルとしてのカーソル表示体C6~C10ごとに加熱調理工程の期間T-3における焼成工程の期間T-2と、焼成温度O-2とが設定されて記憶手段32に記憶されており、カーソル表示体C6~C10に対応した焼成工程の期間T-2および焼成温度O-2の第2の設定値群を有する構成としている。
【0069】
このように構成することにより、カーソル表示体C1~C5やカーソル表示体C6~C10を選択することで加熱調理後のさつま芋Sの甘みや食感を任意に可変させて設定することができ、さつま芋Sの所望の甘みや食感の選択を簡単にすることができる。
【0070】
図9は第1の実施形態の変形例を示している。本変形例ではさつま芋Sをアルミ箔で包んでおらず、容器41内にさつま芋Sを入れて、この容器41を調理室7に収容している。
【0071】
図9を参照して説明すると、41は、被調理物としてのさつま芋Sを内部に収容する容器であり、オーブントースター本体1の調理室7に容器41が収容されるときには、この容器41が焼き網15の上に載置される。容器41の底部41aは略平坦に形成され、テーブルなどの平坦な場所に容器41を載置したときに脚部となる4つの脚部下向突起41bを有して構成されている。これらの4つの脚部下向突起41bは、底部41aの前後左右にそれぞれ配設され、平坦な場所に容器41を載置したときに、底部41aが当該平坦な場所と水平になるように形成されている。なお本発明はこれに限定されず、脚部下向突起41bの数は4つに限定されない。また容器41は蓋体があるものでもよい。
【0072】
焼き網15は、容器41を載置したときに脚部下向突起41bが嵌合する位置決め部15aが、脚部下向突起41bの位置に対応して設けられる。ここで位置決め部15aは、
図9に示されるように、脚部下向突起41bの外周と略同一に形成された孔であってもよく、また脚部下向突起41bの外形と略同一に形成された凹部であってもよい。容器41を載置したときに脚部下向突起41bが位置決め部15aに嵌合することにより、容器41が焼き網15に固定されて、焼き網15に対する容器41の位置決めがされると共に、焼き網15上で容器41が前後左右に移動することを規制できるようにしている。したがって位置決め部15aは、容器41の水平方向への移動を規制する規制手段としての機能も有している。
【0073】
容器41の母材は、例えばアルミニウムからなり、溶湯鍛造やダイキャストで成形後、内外面を耐熱性塗料でコーティングして製造される。または容器41の母材は、例えば琺瑯鋼板からなり、プレス成型後に内外面を琺瑯コーティングして製造される。なお、これは一例であり、本発明はこの構成に限定されない。
【0074】
次に、本変形例のオーブンレンジについて、その作用を説明する。第1の実施形態と同様に加熱調理工程を実施し、加熱調理工程が開始されると、加熱制御手段41は、庫内温度センサ18からの検出信号を受け取って、記憶手段32に記憶された設定値群により、調理室7の庫内温度が酵素活性化温度O-1や焼成温度O-2に昇温されて維持されるように上ヒータ16や下ヒータ17を通断電制御する。これにより、上ヒータ16および下ヒータ17から輻射熱が放射されて、容器35に収納されたさつま芋Sが上ヒータ16により輻射加熱され、併せて下ヒータ17により加熱された容器41からさつま芋Sに熱が移動する。したがって、このように構成することでも加熱調理後のさつま芋Sの甘みや食感を任意に可変させて選択することができ、さつま芋の品種やユーザの好みに応じて、さつま芋Sの所望の甘みや食感に焼き上げることができる。
本実施形態のオーブントースターでは、それぞれの調理メニューの設定、甘みの設定、粘りの設定に加えて、さつま芋の銘柄の設定に応じた調理コースが記憶手段32に記憶されており、その記憶された調理コースの調理メニューの設定、甘みの設定、粘りの設定、さつま芋の銘柄の設定が表示手段11に選択可能に表示され、これらの設定を行なうことで、当該調理コースの選択および設定を行なっている。具体的には、記憶手段32が、前述した調理コースの設定、甘みのレベル、粘りのレベルに対応した設定値群のテーブルに加えて、さつま芋の銘柄の設定に対応した酵素活性化温度O-1の設定値および焼成温度O-2の設定値と、酵素活性化工程の期間T-1の設定値および焼成工程の期間T-2の設定値の設定値群のテーブルを有しており、ユーザが調理メニューや甘みの設定や粘りの設定に加えて、さつま芋の銘柄の設定を選択することにより、加熱調理の各工程の加熱時間および設定温度を設定することができる。
ここで、さつま芋の銘柄ごとに最適な酵素活性化温度O-1が設定値群として記憶手段32に記憶されてもよい。また体積が大きく重量が重い銘柄の場合は、酵素活性化工程の期間T-1や焼成工程の期間T-2を長く設定し、体積が小さく重量が軽い銘柄の場合は、酵素活性化工程の期間T-1や焼成工程の期間T-2を短く設定した設定値群として記憶手段32に記憶されてもよい。なお本発明はこれらに限定されることなく、これらの構成は一例である。
以上のように本実施形態のオーブン式加熱調理器としてのオーブントースターは、さつま芋Sの銘柄としての「銘柄」の設定表示体D22の表示ごとに加熱調理工程の期間T-3における酵素活性化工程の期間T-1および焼成工程の期間T-2と、酵素活性化温度O-1と焼成温度O-2とが設定されて記憶手段32に記憶されており、「銘柄」の設定表示体D22の表示に対応した加熱調理工程の期間T-3における酵素活性化工程の期間T-1および焼成工程の期間T-2と、酵素活性化温度O-1と焼成温度O-2である第3の設定値群を有する構成としている。
このように構成することにより、銘柄選択画面でさつま芋Sの銘柄を選択して「銘柄」の設定表示体D22に表示させることで、選択された銘柄のさつま芋の特性を引き出した適切な加熱調理を行なうことができ、その銘柄のさつま芋Sの所望の甘みや食感の設定を簡単にすることができる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更可能である。例えば、第1および第2の実施形態や変形例を組み合わせて構成してもよい。また本実施形態では被調理物としてさつま芋Sを例にして説明したが、例えばじゃが芋などのいも類でもよく、あるいは被調理物としてとうもろこし、キャッサバ、レンコン、豆類など、澱粉を含有する野菜を採用してもよい。そして本発明のオーブントースターで通信手段を備えてもよく、例えばインターネットなどを介してスマートフォンなどの携帯端末と接続可能にして、携帯端末でも調理コースの選択および設定を行なうように構成してもよい。またこの場合に、メイン画面G1やG1’を携帯端末の画面に表示させて選択および設定を行なうように構成してもよい。そしてインターネットおよびサーバを介在させて携帯端末と接続可能にしてもよく、この場合に調理メニューの設定、甘みの設定、粘りの設定、およびさつま芋の銘柄の設定に応じた調理コースをサーバに記憶させるように構成してもよい。この場合、例えばさつま芋の新しい品種が登場した場合に、当該新しい品種のさつま芋の銘柄の設定をサーバに入力すれば、オーブントースターに手を加えることなく当該さつま芋の銘柄用の調理メニューで加熱調理することができ、最適な加熱パターンで新しい品種のさつま芋を加熱調理することができる。また第1および第2の実施形態や変形例の各部の構成や形状は、図示したものに限定されず、適宜変更が可能である。