(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174082
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】感光性組成物及び半導体基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/023 20060101AFI20231130BHJP
G03F 7/038 20060101ALI20231130BHJP
G03F 7/40 20060101ALI20231130BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
G03F7/023 501
G03F7/038 601
G03F7/40 521
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086740
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 修平
(72)【発明者】
【氏名】林 優弥
(72)【発明者】
【氏名】米田 英司
【テーマコード(参考)】
2H196
2H197
2H225
【Fターム(参考)】
2H196AA25
2H196BA10
2H196HA40
2H197CA05
2H197CE10
2H197HA03
2H225AC17
2H225AE04P
2H225AE05P
2H225AF04P
2H225AF05P
2H225AF16P
2H225AF33P
2H225AF35P
2H225AF43P
2H225AF44P
2H225AF82P
2H225AM13P
2H225AM15P
2H225AM79P
2H225AN26P
2H225AN28P
2H225AN39P
2H225BA22P
2H225CA12
2H225CB06
2H225CC01
2H225CC03
2H225CC17
2H225CC21
(57)【要約】
【課題】耐熱性、イオン遮蔽性及び解像度に優れるイオン注入マスクを簡便に形成可能な感光性組成物及びこれを用いる半導体基板の製造方法を提供する。
【解決手段】イオン注入工程におけるマスク形成用の感光性組成物であって、芳香環を有する化合物と、溶媒とを含有し、上記芳香環を有する化合物が、主鎖に芳香環を有する重合体、分子量が600以上3000以下の芳香環含有化合物又はこれらの組み合わせである、感光性組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン注入工程におけるマスク形成用の感光性組成物であって、
芳香環を有する化合物と、
溶媒と
を含有し、
上記芳香環を有する化合物が、主鎖に芳香環を有する重合体、分子量が600以上3000以下の芳香環含有化合物又はこれらの組み合わせである、感光性組成物。
【請求項2】
架橋剤をさらに含有する、請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項3】
上記芳香環を有する化合物が、下記式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体である、請求項1又は2に記載の感光性組成物。
【化1】
(式(1)中、Ar
1は、環員数5~40の芳香環を有する2価の基である。R
0は、水素原子又は炭素数1~40の1価の有機基である。R
1は、炭素数1~40の1価の有機基である。)
【請求項4】
上記Ar1、R0及びR1のうちの少なくとも1つが、ヒドロキシ基を有する、請求項3に記載の感光性組成物。
【請求項5】
上記Ar
1、R
0及びR
1のうちの少なくとも1つが、下記式(2-1)で表される基及び下記式(2-2)で表される基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基を有する、請求項3に記載の感光性組成物。
【化2】
(式(2-1)及び(2-2)中、R
7は、それぞれ独立して、炭素数1~20の2価の有機基又は単結合である。*は芳香環における炭素原子との結合手である。)
【請求項6】
ナフトキノンジアジド化合物をさらに含有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【請求項7】
光酸発生剤、光塩基発生剤、熱酸発生剤及び熱塩基発生剤からなる群より選ばれる少なくとも1種をさらに含有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【請求項8】
上記芳香環が、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナレン環、フェナントレン環、ピレン環、フルオレン環及びペリレン環からなる群より選ばれる少なくとも1つの芳香族炭化水素環である、請求項1~7のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【請求項9】
基板に感光性組成物を塗工する工程と、
上記塗工工程により形成された感光性膜を放射線により露光する工程と、
少なくとも上記露光された感光性膜を現像する工程と、
上記現像工程により形成されたパターンをマスクとして上記基板にイオン注入する工程と
を備え、
上記感光性組成物が、
芳香環を有する化合物と、
溶媒と
を含有し、
上記芳香環を有する化合物が、主鎖に芳香環を有する重合体、分子量が600以上3000以下の芳香環含有化合物又はこれらの組み合わせである、半導体基板の製造方法。
【請求項10】
上記イオン注入工程前に、上記パターンを300℃以上で加熱する工程をさらに備える、請求項9に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項11】
上記基板が、炭化ケイ素、窒化ガリウム及びダイヤモンドからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項9又は10に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項12】
上記感光性組成物が架橋剤をさらに含有する、請求項9~11のいずれか1項に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項13】
上記芳香環を有する化合物が、下記式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体である、請求項9~12のいずれか1項に記載の半導体基板の製造方法。
【化3】
(式(1)中、Ar
1は、環員数5~40の芳香環を有する2価の基である。R
0及びR
1は、それぞれ独立して、炭素数1~40の1価の有機基である。)
【請求項14】
上記Ar1、R0及びR1のうちの少なくとも1つが、ヒドロキシ基を有する、請求項13に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項15】
上記Ar
1、R
0及びR
1のうちの少なくとも1つが、下記式(2-1)で表される基及び下記式(2-2)で表される基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基を有する、請求項13に記載の半導体基板の製造方法。
【化4】
(式(2-1)及び(2-2)中、R
7は、それぞれ独立して、炭素数1~20の2価の有機基又は単結合である。*は芳香環における炭素原子との結合手である。)
【請求項16】
上記感光性組成物が、ナフトキノンジアジド化合物をさらに含有する、請求項9~14のいずれか1項に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項17】
光酸発生剤、光塩基発生剤、熱酸発生剤及び熱塩基発生剤からなる群より選ばれる少なくとも1種をさらに含有する、請求項9~15のいずれか1項に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項18】
上記芳香環が、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナレン環、フェナントレン環、ピレン環、フルオレン環及びペリレン環からなる群より選ばれる少なくとも1つの芳香族炭化水素環である、請求項9~17のいずれか1項に記載の半導体基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性組成物及び半導体基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
次世代の小型、低損失、かつ、高出力のパワー半導体材料として、炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)などのワイドバンドギャップ半導体が注目されている。SiC等に対する不純物の拡散係数は極めて小さいことから、効率的な局所ドーピング法としてイオン注入時に試料を200~800℃程度に加熱する高温イオン注入技術が利用されている。高温注入技術に用いられるイオン注入マスクとしては、耐熱性の点から、化学気相成長法(CVD法)により形成されたSiO2(二酸化ケイ素)膜が多用されている(特開2006-324585号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記SiO2膜を用いるイオン注入マスクプロセスは、非常に複雑で高コストプロセスであるため、これに代えて、高耐熱性等の良好なマスク性能を発揮しつつ、より簡便で低コストのマスクプロセスが求められている。
【0005】
本発明は以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、耐熱性、イオン遮蔽性及び解像度に優れるイオン注入マスクを簡便に形成可能な感光性組成物及びこれを用いる半導体基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、一実施形態において、
イオン注入工程におけるマスク形成用の感光性組成物であって、
芳香環を有する化合物(以下、「[A]化合物」ともいう。)と、
溶媒(以下、「[B]溶媒」ともいう。)と
を含有し、
上記芳香環を有する化合物が、主鎖に芳香環を有する重合体(以下、「[A1]重合体」ともいう。)、分子量が600以上3000以下の芳香環含有化合物(以下、「[A2]芳香環含有化合物」ともいう。)又はこれらの組み合わせである、感光性組成物に関する。
【0007】
本発明は、他の実施形態において、
基板に感光性組成物を塗工する工程と、
上記塗工工程により形成された感光性膜を放射線により露光する工程と、
少なくとも上記露光された感光性膜を現像する工程と、
上記現像工程により形成されたパターンをマスクとして上記基板にイオン注入する工程と
を備え、
上記感光性組成物が、
芳香環を有する化合物と、
溶媒と
を含有し、
上記芳香環を有する化合物が、主鎖に芳香環を有する重合体、分子量が600以上3000以下の芳香環含有化合物又はこれらの組み合わせである、半導体基板の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
当該感光性組成物によれば、耐熱性、イオン遮蔽性及び解像度に優れるイオン注入マスクを簡便に形成することができる。当該半導体基板の製造方法によれば、耐熱性、イオン遮蔽性及び解像度に優れたイオン注入マスク層を形成することができるため、従来のイオン注入マスクプロセスと比較して、生産性が高く、低コストのパワー半導体製造プロセスを提供することができる。従って、これらは、今後さらに微細化が進行すると予想される半導体デバイスの製造等に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の各実施形態に係る感光性組成物及び半導体基板の製造方法について詳説する。実施形態における好適な態様の組み合わせもまた好ましい。
【0010】
《感光性組成物》
当該感光性組成物は、イオン注入工程におけるマスク形成用であり、[A]化合物と[B]溶媒とを含有する。当該組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、任意成分を含有していてもよい。
【0011】
以下、当該組成物が含有する各成分について説明する。
【0012】
<[A]化合物>
[A]化合物は、芳香環を有する化合物であり、[A1]重合体、[A2]芳香環含有化合物(ただし、[A1]重合体に該当する化合物を除く。)又はこれらの組み合わせである。[A1]重合体及び[A2]芳香環含有化合物はそれぞれ1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0013】
上記芳香環としては、環員数5~40の芳香環が好ましく、例えばベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナレン環、フェナントレン環、ピレン環、フルオレン環、ペリレン環、コロネン環等の芳香族炭化水素環、フラン環、ピロール環、チオフェン環、ホスホール環、ピラゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環等の複素芳香環、又はこれらの組み合わせ等が挙げられる。上記芳香環は、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナレン環、フェナントレン環、ピレン環、フルオレン環及びペリレン環からなる群より選ばれる少なくとも1つの芳香族炭化水素環であることが好ましい。
【0014】
本明細書において、「環員数」とは、環を構成する原子の数をいう。例えば、ビフェニル環の環員数は12であり、ナフタレン環の環員数は10であり、フルオレン環の環員数は13である。
【0015】
([A1]重合体)
[A1]重合体は、主鎖に芳香環を有する重合体である。主鎖に含まれる芳香環としては、上記環員数5~40の芳香環を好適に採用することができる。上記主鎖に芳香環を有する樹脂としては、耐熱性及びイオン遮蔽性の観点から、重縮合化合物が好ましい。
【0016】
[A]化合物としての[A1]重合体は、下記式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体(以下、「[A11]重合体」ともいう。)であることが好ましい。[A11]重合体は、下記式(1)で表される繰り返し単位を2種以上有していてもよい。
【化1】
(式(1)中、Ar
1は、環員数5~40の芳香環を有する2価の基である。R
0は、水素原子又は炭素数1~40の1価の有機基である。R
1は、炭素数1~40の1価の有機基である。)
【0017】
上記式(1)中、Ar1における環員数5~40の芳香環としては、上記環員数5~40の芳香環を好適に採用することができる。中でも、Ar1の芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、ピレン環、フルオレン環又はこれらの組み合わせであることが好ましい。
【0018】
上記式(1)中、Ar1で表される環員数5~40の芳香環を有する2価の基としては、上記Ar1における環員数5~40の芳香環又は当該芳香環と鎖状構造との組み合わせから2個の水素原子を除いた基等が好適に挙げられる。芳香環を組み合わせる場合、芳香環同士は縮合環構造のほか、単結合で結合していてもよい。
【0019】
鎖状構造としては、炭素数1~20の鎖状炭化水素を好適に採用することができる。炭素数1~20の2価の鎖状炭化水素としては、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ヘキサン、オクタン等が挙げられる。これらは直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。中でも、炭素数1~8の直鎖状又は分岐状のアルカンが好ましい。
【0020】
上記式(1)中、R0及びR1で表される炭素数1~40の1価の有機基としては、例えば、炭素数1~20の1価の炭化水素基、この炭化水素基の炭素-炭素間若しくは炭素鎖末端に2価のヘテロ原子含有基を有する基、上記炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部を1価のヘテロ原子含有基で置換した基又はこれらの組み合わせ等があげられる。
【0021】
炭素数1~20の1価の炭化水素基としては、例えば、炭素数1~20の1価の鎖状炭化水素基、炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基、炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基又はこれらの組み合わせ等があげられる。
【0022】
本明細書において、「炭化水素基」には、鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基が含まれる。この「炭化水素基」には、飽和炭化水素基及び不飽和炭化水素基が含まれる。「鎖状炭化水素基」とは、環構造を含まず、鎖状構造のみで構成された炭化水素基を意味し、直鎖状炭化水素基及び分岐鎖状炭化水素基の両方を含む。「脂環式炭化水素基」とは、環構造としては脂環構造のみを含み、芳香環構造を含まない炭化水素基を意味し、単環の脂環式炭化水素基及び多環の脂環式炭化水素基の両方を含む(ただし、脂環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造を含んでいてもよい)。「芳香族炭化水素基」とは、環構造として芳香環構造を含む炭化水素基を意味する(ただし、芳香環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に脂環構造や鎖状構造を含んでいてもよい)。
【0023】
炭素数1~20の1価の鎖状炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等のアルキル基;エテニル基、プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基;エチニル基、プロピニル基、ブチニル基等のアルキニル基などが挙げられる。
【0024】
炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;シクロプロペニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等のシクロアルケニル基;ノルボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基等の橋かけ環飽和炭化水素基;ノルボルネニル基、トリシクロデセニル基等の橋かけ環不飽和炭化水素基などが挙げられる。
【0025】
炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基、アントラセニル基、ピレニル基等が挙げられる。
【0026】
2価又は1価のヘテロ原子含有基を構成するヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、ケイ素原子、ハロゲン原子等があげられる。ハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子があげられる。
【0027】
2価のヘテロ原子含有基としては、例えば、-CO-、-CS-、-NH-、-O-、-S-、-SO-、-SO2-、又はこれらを組み合わせた基等があげられる。
【0028】
1価のヘテロ原子含有基としては、例えば、ヒドロキシ基、スルファニル基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子等があげられる。
【0029】
上記R0は水素原子であることが好ましい。
【0030】
上記Ar1、R0及びR1のうちの少なくとも1つは、ヒドロキシ基を有することが好ましい。少なくともAr1がヒドロキシ基を有することが好ましい。
【0031】
上記Ar
1、R
0及びR
1のうちの少なくとも1つは、ヒドロキシ基とともに又はこれに代えて、下記式(2-1)で表される基及び下記式(2-2)で表される基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基(以下、「基(α)」ともいう。)を有することが好ましい。少なくともAr
1が上記基(α)を有することが好ましい。上記基(α)を導入することにより、当該感光性組成物を用いるネガ型パターンの形成が容易となる。
【化2】
(式(2-1)及び(2-2)中、R
7は、それぞれ独立して、炭素数1~20の2価の有機基又は単結合である。*は芳香環における炭素原子との結合手である。)
【0032】
上記式(2-1)及び(2-2)中、R7で表される炭素数1~20の2価の有機基としては、上記式(1)のR0及びR1で表される炭素数1~40の1価の有機基のうち炭素数1~20に対応する構造から水素原子を1個除いた基を好適に採用することができる。
【0033】
R7としてはメタンジイル基、エタンジイル基、フェニレン基等の炭素数1~10の2価の炭化水素基、-O-又はこれらの組み合わせが好ましく、メタンジイル基、又はメタンジイル基と-O-との組み合わせがより好ましい。
【0034】
上記Ar
1、R
0及びR
1のうちの少なくとも1つは、上記式(2-1)で表される基を有し、該基は下記式(2-1-1)で表されることが好ましい。
【化3】
【0035】
Ar1、R0及びR1は、上記式(2-1)で表される基、上記式(2-2)で表される基及びヒドロキシ基以外の置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば炭素数1~10の1価の鎖状炭化水素基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等のアリールオキシ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基、メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基等のアルコキシカルボニルオキシ基、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基等のアシル基、シアノ基、ニトロ基などが挙げられる。
【0036】
上記式(1)で表される繰り返し単位としては、例えば下記式(1-1)~(1-28)で表される繰り返し単位等が挙げられる。
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
中でも、上記式(1-1)~(1-12)、(1-21)~(1-24)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0042】
([A11]重合体の製造方法)
[A11]重合体は、代表的に、上記式(1)のAr1を与えるフェノール性水酸基を有する前駆体としての芳香環化合物と、上記式(1)のR0を与える前駆体としてのアルデヒド誘導体との酸付加縮合により製造することができる。さらに、上記式(2-1)又は(2-2)で表される基(α)に対応するハロゲン化炭化水素へのフェノール性水酸基による求核置換反応により、置換基として基(α)を導入した[A11]重合体を製造することができる。酸触媒としては特に限定されず、公知の無機酸及び有機酸を用いることができる。反応後、分離、精製、乾燥等を経て[A11]重合体を得ることができる。反応溶媒としては、後述の[B]溶媒を好適に採用することができる。
【0043】
(その他の[A1]重合体)
[A1]重合体として、[A11]重合体以外に、レゾール系樹脂、ポリアリーレン系樹脂、トリアジン系樹脂、カリックスアレーン系樹脂等を用いることができる。これらの樹脂は公知の方法により製造することができる。
【0044】
(レゾール系樹脂)
レゾール系樹脂は、フェノール性化合物と、アルデヒド類とをアルカリ性触媒を用いて反応させて得られる樹脂である。
【0045】
フェノール性化合物としては、例えば、
フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、ビスフェノールA等のフェノール類;
1-ナフトール、2-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、9,9-ビス(6-ヒドロキシナフチル)フルオレン等のナフトール類;
9-アントロール等のアントロール類;
1-ヒドロキシピレン、2-ヒドロキシピレン等のヒドロキシピレン類などが挙げられる。
【0046】
アルデヒド類としては、例えば
ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、1-ピレンカルボキシアルデヒド等のアルデヒド;
パラホルムアルデヒド、トリオキサン、パラアルデヒド等のアルデヒド源などが挙げられる。
【0047】
(ポリアリーレン系樹脂)
ポリアリーレン系樹脂は、アリーレン骨格を含む化合物に由来する構造単位を有する樹脂である。アリーレン骨格としては、例えばフェニレン骨格、ナフチレン骨格、ビフェニレン骨格等が挙げられる。
【0048】
ポリアリーレン系樹脂としては、例えばポリアリーレンエーテル、ポリアリーレンスルフィド、ポリアリーレンエーテルスルホン、ポリアリーレンエーテルケトン、ビフェニレン骨格を含む構造単位とアセナフチレン骨格を含む化合物に由来する構造単位とを有する樹脂等が挙げられる。
【0049】
(トリアジン系樹脂)
トリアジン系樹脂は、トリアジン骨格を有する化合物に由来する構造単位を有する樹脂である。トリアジン骨格を有する化合物としては、例えばメラミン化合物、シアヌル酸化合物等が挙げられる。
【0050】
(カリックスアレーン系樹脂)
カリックスアレーン系樹脂は、ヒドロキシ基が結合する芳香環が炭化水素基を介して複数個環状に結合した環状オリゴマー又はこのヒドロキシ基、芳香環及び炭化水素基が有する水素原子の一部若しくは全部が置換された化合物である。
【0051】
[A1]重合体が、[A11]重合体、レゾール系樹脂、ポリアリーレン系樹脂又はトリアジン系樹脂である場合、[A1]重合体の重量平均分子量の下限としては、500が好ましく、1000がより好ましく、1500がさらに好ましい。上記分子量の上限としては、10000が好ましく、7000がより好ましく、5000がさらに好ましい。なお、重量平均分子量の測定方法は、実施例の記載による。
【0052】
[A1]重合体がカリックスアレーン系樹脂である場合、[A1]重合体の分子量の下限としては、500が好ましく、700がより好ましく、1,000がさらに好ましい。上記分子量の上限としては、5,000が好ましく、3,000がより好ましく、1,500がさらに好ましい。
【0053】
([A2]芳香環含有化合物)
[A2]芳香環含有化合物は、芳香環を有し、かつ分子量が600以上3000以下の化合物である限り特に限定されない(ただし、[A1]重合体に該当する化合物を除く。)。
【0054】
[A2]芳香環含有化合物は、下記式(3)で表される化合物(以下、「[A21]芳香環含有化合物」ともいう。)であることが好ましい。
【化8】
(上記式(3)中、
Wは、置換又は非置換の環員数5~60の芳香環を含むq価の基である。
R
aは、環員数5~40の芳香環を含む1価の基である。
qは1~10の整数である。qが2以上である場合、複数のR
aは、互いに同一又は異なる。)
【0055】
上記Wにおける環員数5~60の芳香環としては、[A]化合物が有し得るとする上記環員数5~40の芳香環を環員数60まで拡張した芳香環を好適に採用することができる。Wで表される置換又は非置換の環員数5~60の芳香環を含むq価の基としては、上記環員数5~60の芳香環からq個の水素原子を除いた基が挙げられる。Wが置換基を有する場合の置換基としては、上記基(α)及びこれら以外の置換基として挙げた上記置換基を好適に採用することができる。
【0056】
上記Wの芳香環は、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナレン環、フェナントレン環、ピレン環、フルオレン環、ペリレン環及びコロネン環からなる群より選ばれる少なくとも1つの芳香族炭化水素環であることが好ましい。
【0057】
上記Raにおける環員数5~40の芳香環としては、[A]化合物が有し得るとする上記環員数5~40の芳香環を好適に採用することができる。Raで表される環員数5~40の芳香環を含む1価の基としては、上記環員数5~40の芳香環から1個の水素原子を除いた基が挙げられる。上記R4の芳香環は、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナレン環、フェナントレン環、ピレン環、フルオレン環、ペリレン環及びコロネン環からなる群より選ばれる少なくとも1つの芳香族炭化水素環であることが好ましい。Raが置換基を有する場合の置換基としては、上記基(α)及びこれら以外の置換基として挙げた上記置換基を好適に採用することができる。
【0058】
上記R
aは、下記式(3-1)又は(3-2)で表される基であることが好ましい。
【化9】
(式(3-1)及び(3-2)中、X
1及びX
2は、それぞれ独立して、下記式(i)、(ii)、(iii)又は(iv)で表される基である。Ar
5、Ar
6及びAr
7は、それぞれ独立して、上記式(3-1)及び(3-2)における隣接する2つの炭素原子とともに縮合環構造を形成する置換又は非置換の環員数6~20の芳香環である。L
1及びL
2は、それぞれ独立して、単結合又は芳香環を有する2価の有機基である。*は、上記式(3)のWにおける炭素原子との結合手である。)
【化10】
(式(i)中、R
11及びR
12は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~20の1価の有機基である。
式(ii)中、R
13は、水素原子又は炭素数1~20の1価の有機基である。R
14は、炭素数1~20の1価の有機基である。
式(iii)中、R
15は、炭素数1~20の1価の有機基である。
式(iv)中、R
16は、水素原子又は炭素数1~20の1価の有機基である。)
【0059】
【0060】
上記式(i)、(ii)、(iii)及び(iv)において、R11、R12、R13、R14、R15及びR16(以下、「R11~R16」と表記することもある。)で表される炭素数1~20の1価の有機基としては、上記式(1)のR0及びR1で表される炭素数1~40の1価の有機基のうち炭素数1~20に対応する基が挙げられる。
【0061】
上記式(3-1)及び(3-2)中、Ar5、Ar6及びAr7(以下、「Ar5~Ar7」と表記することもある。)は、それぞれ独立して、上記式(3-1)及び(3-2)における隣接する2つの炭素原子とともに縮合環構造を形成する置換又は非置換の環員数6~20の芳香環である。Ar5~Ar7における環員数6~20の芳香環としては、[A]化合物が有し得るとする上記環員数5~40の芳香環のうち環員数6~20に対応する芳香環を好適に採用することができる。
【0062】
Ar5~Ar7が置換基を有する場合の置換基としては、上記基(α)及びこれら以外の置換基として挙げた上記置換基を好適に採用することができる。
【0063】
上記式(3-1)及び(3-2)中、L1及びL2における芳香環を有する2価の有機基としては、[A]化合物が有し得るとする上記環員数5~40の芳香環から2個の水素原子を除いた置換又は非置換の基(以下、「基(β)」ともいう。)が好適に挙げられる。L1及びL2で表される芳香環を有する2価の有機基としては、当該基(β)と上記R11~R16で表される炭素数1~20の1価の有機基から1個の水素原子を除いた基とを組み合わせた基であってもよい。L1及びL2で表される芳香環を有する2価の有機基としては、置換又は非置換の環員数6~12のアレーンジイル基、置換又は非置換の炭素数2~10のアルケンジイル基、炭素数2~10のアルキンジイル基又はこれらの組み合わせが好ましく、ベンゼンジイル基、ナフタレンジイル基、エチレンジイル基、エチンジイル基又はこれらの組み合わせがより好ましく、ベンゼンジイル基又はベンゼンジイル基とエチンジイル基との組み合わせがさらに好ましい。
【0064】
[A21]芳香環含有化合物としては、例えば下記式(3-1)~(3-10)で表される化合物等が挙げられる。
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
[A21]芳香環含有化合物の合成方法としては、代表的には、出発原料として例えばフルオレンのケトンやアルキン置換体を準備し、触媒等の存在下でケトン部分やアルキン部分の環化反応を進行させることで合成することができる。その他の構造についても、出発原料やケトン体の構造等を適宜選択することで合成することができる。
【0069】
当該感光性組成物における[A]化合物の含有割合の下限としては、[A]化合物及び[B]溶媒の合計質量中、2質量%が好ましく、5質量%がより好ましく、8質量%がさらに好ましく、12質量%が特に好ましい。上記含有割合の上限としては、[A]重合体及び[B]溶媒の合計質量中、30質量%が好ましく、24質量%がより好ましく、20質量%がさらに好ましく、16質量%が特に好ましい。
【0070】
<[B]溶媒>
[B]溶媒は、[A]化合物及び必要に応じて含有する任意成分を溶解又は分散することができれば特に限定されない。
【0071】
[B]溶媒としては、例えば炭化水素系溶媒、エステル系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、含窒素系溶媒などが挙げられる。[B]溶媒は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0072】
炭化水素系溶媒としては、例えばn-ペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒などが挙げられる。
【0073】
エステル系溶媒としては、例えばジエチルカーボネート等のカーボネート系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル等の酢酸モノエステル系溶媒、γ-ブチロラクトン等のラクトン系溶媒、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコール部分エーテルカルボキシレート系溶媒、乳酸メチル、乳酸エチル等の乳酸エステル系溶媒などが挙げられる。
【0074】
アルコール系溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、n-プロパノール等のモノアルコール系溶媒、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール等の多価アルコール系溶媒などが挙げられる。
【0075】
ケトン系溶媒としては、例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の鎖状ケトン系溶媒、シクロヘキサノン等の環状ケトン系溶媒などが挙げられる。
【0076】
エーテル系溶媒としては、例えばn-ブチルエーテル等の鎖状エーテル系溶媒、テトラヒドロフラン等の環状エーテル系溶媒等の多価アルコールエーテル系溶媒、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコール部分エーテル系溶媒などが挙げられる。
【0077】
含窒素系溶媒としては、例えばN,N-ジメチルアセトアミド等の鎖状含窒素系溶媒、N-メチルピロリドン等の環状含窒素系溶媒などが挙げられる。
【0078】
[B]溶媒としては、エステル系溶媒又はケトン系溶媒が好ましく、多価アルコール部分エーテルカルボキシレート系溶媒又は環状ケトン系溶媒がより好ましく、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル又はシクロヘキサノンがさらに好ましい。
【0079】
当該組成物における[B]溶媒の含有割合の下限としては、70質量%が好ましく、75質量%がより好ましく、80質量%がさらに好ましい。上記含有割合の上限としては、97質量%が好ましく、95質量%がより好ましく、90質量%がさらに好ましい。
【0080】
[任意成分]
当該感光性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において任意成分を含有していてもよい。任意成分としては、例えば架橋剤(以下、「[C]架橋剤」ともいう。)、ナフトキノンジアジド化合物(以下、「[D]ナフトキノンジアジド化合物」ともいう。)、光酸発生剤、光塩基発生剤、熱酸発生剤及び熱塩基発生剤からなる群より選ばれる少なくとも1種(以下、「[E]酸発生剤等」ともいう。)、界面活性剤、増感剤等が挙げられる。任意成分は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0081】
<[C]架橋剤>
[C]架橋剤の種類は特に限定されず、公知の架橋剤を自由に選択して用いることができる。好ましくは、多官能(メタ)アクリレート類、環状エーテル含有化合物類、グリコールウリル類、ジイソシアナート類、メラミン類、ベンゾグアナミン類、多核フェノール類、多官能チオール化合物、ポリスルフィド化合物、スルフィド化合物、から選ばれる少なくとも一種以上を、架橋剤として用いることが好ましい。当該感光性組成物が[C]架橋剤を含むことで、[A]化合物の架橋を進行させ、得られるイオン注入マスクの耐熱性を向上させることができる。
【0082】
多官能(メタ)アクリレート類としては、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物であれば特に限定されるものではないが、例えば、脂肪族ポリヒドロキシ化合物と(メタ)アクリル酸を反応させて得られる多官能(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性された多官能(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド変性された多官能(メタ)アクリレート、水酸基を有する(メタ)アクリレートと多官能イソシアネートを反応させて得られる多官能ウレタン(メタ)アクリレート、水酸基を有する(メタ)アクリレートと酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基を有する多官能(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0083】
具体的には、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0084】
環状エーテル含有化合物類としては、例えば、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、3’,4’-エポキシシクロヘキセニルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、ビニルシクロヘキセンモノオキサイド1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキセン、1,2:8,9ジエポキシリモネン等のオキシラニル基含有化合物;3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、2-エチルヘキシルオキセタン、キシリレンビスオキセタン、3-エチル-3{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン等のオキセタニル基含有化合物が挙げられる。これらの環状エーテル含有化合物類は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0085】
グリコールウリル類としては、例えば、テトラメチロールグリコールウリル、テトラメトキシグリコールウリル、テトラメトキシメチルグリコールウリル、テトラメチロールグリコールウリルのメチロール基の1~4個がメトキシメチル基化した化合物、又はその混合物、テトラメチロールグリコールウリルのメチロール基の1~4個がアシロキシメチル化した化合物又はグリジジルグリコールウリル類等挙げられる。
【0086】
グリジジルグリコールウリル類としては、例えば、1-グリシジルグリコールウリル、1,3-ジグリシジルグリコールウリル、1,4-ジグリシジルグリコールウリル、1,6-ジグリシジルグリコールウリル、1,3,4-トリグリシジルグリコールウリル、1,3,4,6-テトラグリシジルグリコールウリル、1-グリシジル-3a-メチルグリコールウリル、1-グリシジル-6a-メチル-グリコールウリル、1,3-ジグリシジル-3a-メチルグリコールウリル、1,4-ジグリシジル-3a-メチルグリコールウリル、1,6-ジグリシジル-3a-メチルグリコールウリル、1,3,4-トリグリシジル-3a-メチルグリコールウリル、1,3,4-トリグリシジル-6a-メチルグリコールウリル、1,3,4,6-テトラグリシジル-3a-メチルグリコールウリル、1-グリシジル-3a,6a-ジメチルグリコールウリル、1,3-ジグリシジル-3a,6a-ジメチルグリコールウリル、1,4-ジグリシジル-3a,6a-ジメチルグリコールウリル、1,6-ジグリシジル-3a,6a-ジメチルグリコールウリル、1,3,4-トリグリシジル-3a,6a-ジメチルグリコールウリル、1,3,4,6-テトラグリシジル-3a,6a-ジメチルグリコールウリル、1-グリシジル-3a,6a-ジフェニルグリコールウリル、1,3-ジグリシジル-3a,6a-ジフェニルグリコールウリル、1,4-ジグリシジル-3a,6a-ジフェニルグリコールウリル、1,6-ジグリシジル-3a,6a-ジフェニルグリコールウリル、1,3,4-トリグリシジル-3a,6a-ジフェニルグリコールウリル、1,3,4,6-テトラグリシジル-3a,6a-ジフェニルグリコールウリル等を挙げることができる。これらのグリコールウリル類は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0087】
ジイソシアナート類としては、例えば、2,3-トリレンジイソシアナート、2,4-トリレンジイソシアナート、3,4-トリレンジイソシアナート、3,5-トリレンジイソシアナート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、1,4-シクロヘキサンジイソシアナート等が挙げられる。
【0088】
メラミン類としては、例えば、メラミン、モノメチロールメラミン、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン、モノブチロールメラミン、ジブチロールメラミン、トリブチロールメラミン、テトラブチロールメラミン、ペンタブチロールメラミン、ヘキサブチロールメラミンや、これらのメチロールメラミン類あるいはブチロールメラミン類のアルキル化誘導体等を挙げることができる。これらのメラミン類は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0089】
ベンゾグアナミン類としては、例えば、アミノ基が4つのアルコキシメチル基(アルコキシメチロール基)で変性されているベンゾグアナミン(テトラアルコキシメチルベンゾグアナミン類(テトラアルコキシメチロールベンゾグアナミン類))、例えば、テトラメトキシメチルベンゾグアナミン;
アミノ基が合わせて4つのアルコキシメチル基(特にメトキシメチル基)及びヒドロキシメチル基(メチロール基)で変性されているベンゾグアナミン;
アミノ基が3つ以下のアルコキシメチル基(特にメトキシメチル基)で変性されているベンゾグアナミン;
アミノ基が合わせて3つ以下のアルコキシメチル基(特にメトキシメチル基)及びヒドロキシメチル基で変性されているベンゾグアナミン;などが挙げられる。
これらのベンゾグアナミン類は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0090】
多核フェノール類としては、例えば、4,4’-ビフェニルジオール、4,4’-メチレンビスフェノール、4,4’-エチリデンビスフェノール、ビスフェノールA等の2核フェノール類;4,4’,4”-メチリデントリスフェノール、4,4’-(1-(4-(1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル)フェニル)エチリデン)ビスフェノール、4,4’-(1-(4-(1-(4-ヒドロキシ-3,5-ビス(メトキシメチル)フェニル)-1-メチルエチル)フェニル)エチリデン)ビス(2,6-ビス(メトキシメチル)フェノール)等の3核フェノール類;ノボラック等のポリフェノール類等が挙げられる。これらの多核フェノール類は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0091】
多官能チオール化合物は、一分子中に2個以上のメルカプト基を有する化合物であり、具体的には例えば、1,2-エタンジチオール、1,3-プロパンジチオール、1,4-ブタンジチオール、2,3-ブタンジチオール、1,5-ペンタンジチオール、1,6-ヘキサンジチオール、1,8-オクタンジチオール、1,9-ノナンジチオール、2,3-ジメルカプト-1-プロパノール、ジチオエリスリトール、2,3-ジメルカプトサクシン酸、1,2-ベンゼンジチオール、1,2-ベンゼンジメタンチオール、1,3-ベンゼンジチオール、1,3-ベンゼンジメタンチオール、1,4-ベンゼンジメタンチオール、3,4-ジメルカプトトルエン、4-クロロ-1,3-ベンゼンジチオール、2,4,6-トリメチル-1,3-ベンゼンジメタンチオール、4,4’-チオジフェノール、2-ヘキシルアミノ-4,6-ジメルカプト-1,3,5-トリアジン、2-ジエチルアミノ-4,6-ジメルカプト-1,3,5-トリアジン、2-シクロヘキシルアミノ-4,6-ジメルカプト-1,3,5-トリアジン、2-ジ-n-ブチルアミノ-4,6-ジメルカプト-1,3,5-トリアジン、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、ブタンジオールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオグリコレート、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール、2,2’-(エチレンジチオ)ジエタンチオール、2,2-ビス(2-ヒドロキシ-3-メルカプトプロポキシフェニルプロパン)等の2個のメルカプト基を有する化合物、1,2,6-ヘキサントリオールトリチオグリコレート、1,3,5-トリチオシアヌル酸、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート等の3個のメルカプト基を有する化合物、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトプロピオネート)ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H、3H、5H)-トリオン等の4個以上のメルカプト基を有する化合物が挙げられる。これらの多官能チオール化合物は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0092】
当該感光性組成物が[C]架橋剤を含有する場合、当該感光性組成物中の[D]架橋剤の含有割合の下限としては、0.01質量%が好ましく、0.1質量%がより好ましく、0.3質量%がさらに好ましい。上記含有割合の上限としては、5質量%が好ましく、3質量%がより好ましく、2質量%がさらに好ましい。
【0093】
<[D]ナフトキノンジアジド化合物>
当該感光性組成物が[D]ナフトキノンジアジド化合物を含有する場合、当該感光性組成物は、露光部がアルカリ現像液で除去されるポジ型の感光性能を有する。ナフトキノンジアジドに活性化学線が露光されると、アルカリ可溶性を有するインデンカルボン酸が発生する。このインデンカルボン酸の発生により、露光部のみがアルカリ現像液に溶解する。一方、未露光部では、ナフトキノンジアジド化合物のキノンジアジド部位が、[A]化合物のフェノール性水酸基等に配位して相互作用しており、アルカリ現像液に対する溶解性を抑制している。従って、ナフトキノンジアジド化合物を含有することで、露光部と未露光部とでアルカリ現像液に対する溶解性の差が大きくなり、溶解コントラスト比が向上する。
【0094】
本明細書において、「露光」とは、活性化学線(放射線)の照射のことであり、例えば、可視光線、紫外線、電子線、X線などの照射が挙げられる。一般的に使用されている光源であるという観点から、例えば、可視光線や紫外線の照射が可能な超高圧水銀灯光源が好ましく、j線(波長313nm)、i線(波長365nm)、h線(波長405nm)、または、g線(波長436nm)の照射であることがより好ましい。
【0095】
[D]ナフトキノンジアジド化合物に特に制限はないが、フェノール性水酸基を有する化合物にナフトキノンジアジドスルホン酸がエステル結合した化合物が好ましい。[D]ナフトキノンジアジド化合物は、下記式(6A)及び(6B)で表される化合物であることが好ましい。
【0096】
【0097】
上記式(6A)及び(6B)中、R10、R11、R12、R13、R15およびR16は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数1~8のエステル基、またはカルボキシ基である。R10、R11、R12、R13、R15およびR16が複数存在する場合、複数のR10、R11、R12、R13、R15およびR16は互いに同一又は異なる。R14は水素、炭素数1~8のアルキル基、または炭素数6~15のアリール基である。Qは5-ナフトキノンジアジドスルホニル基、または水素原子である。ただし、Qの全てが水素原子になることはない。a1、a2、b1、b2、c1、c2、d1、d2、e、f1、f2、g1、g2は、それぞれ独立して0~4の整数である。ただし、a2+b2+c2+d2≧2であり、f2+g2≧1である。上記式(6A)及び(6B)で表されるナフトキノンジアジド化合物を用いることで、パターニング露光における感度や、解像度が向上する。
【0098】
[D]ナフトキノンジアジド化合物としては、例えば下記式(6-1)~(6-3)で表される化合物等が挙げられる。
【0099】
【0100】
当該感光性組成物が[D]ナフトキノンジアジド化合物を含有する場合、当該感光性組成物中の[D]ナフトキノンジアジド化合物の含有割合の下限としては、0.01質量%が好ましく、0.1質量%がより好ましく、0.3質量%がさらに好ましい。上記含有割合の上限としては、5質量%が好ましく、3質量%がより好ましく、1質量%がさらに好ましい。
【0101】
<[E]酸発生剤等>
[E]酸発生剤等は、光酸発生剤(以下、「[E1]光酸発生剤」ともいう。)、光塩基発生剤(以下、「[E2]光塩基発生剤」ともいう。)、熱酸発生剤(以下、「[E3]熱酸発生剤」ともいう。)及び熱塩基発生剤(以下、「[E4]熱塩基発生剤」ともいう。)からなる群より選ばれる少なくとも1種である。[E]酸発生剤等の含有により当該感光性組成物はネガ型の感光性を発揮することができる。すなわち、露光部では上記化合物から発生する酸または塩基を用いて[A]化合物を硬化させることで、アルカリ現像液に対して実質的に不溶化させることができる。一方で、未露光部をアルカリ現像液で除去することで、ネガ型のパターンを形成することができる。あるいは、例えばベーク時に上記化合物から発生した酸又は塩基により、[A]化合物を硬化反応が促進され、耐熱性を向上させることができる。
【0102】
([E1]光酸発生剤)
[E1]光酸発生剤とは、露光によって結合開裂を起こして酸を発生する化合物である。
【0103】
[E1]光酸発生剤としては、イオン性化合物と非イオン性化合物がある。
【0104】
イオン性化合物としては、重金属、ハロゲンイオンを含まないものが好ましく、トリオルガノスルホニウム塩系化合物がより好ましい。トリオルガノスルホニウム塩系化合物の具体例としては、例えば、トリフェニルスルホニウムの、メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩、4-トルエンスルホン酸塩;ジメチル-1-ナフチルスルホニウムのメタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩、4-トルエンスルホン酸塩;ジメチル(4-ヒドロキシ-1-ナフチル)スルホニウムの、メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩、4-トルエンスルホン酸塩;ジメチル(4,7-ジヒドロキシ-1-ナフチル)スルホニウムの、メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩、4-トルエンスルホン酸塩;ジフェニルヨードニウムのメタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩、4-トルエンスルホン酸塩などが挙げられる。
【0105】
非イオン性の光酸発生剤としては、ハロゲン含有化合物、ジアゾメタン化合物、スルホン化合物、スルホン酸エステル化合物、カルボン酸エステル化合物、スルホンイミド化合物、リン酸エステル化合物、スルホンベンゾトリアゾール化合物などを用いることができる。
【0106】
ハロゲン含有化合物の具体例としては、例えば、ハロアルキル基含有炭化水素化合物、ハロアルキル基含有ヘテロ環状化合物などが挙げられる。好ましいハロゲン含有化合物としては、1,1-ビス(4-クロロフェニル)-2,2,2-トリクロロエタン、2-フェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-ナフチル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジンなどが挙げられる。
【0107】
ジアゾメタン化合物の具体例としては、例えば、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(4-トリルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4-キシリルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(4-クロロフェニルスルホニル)ジアゾメタン、メチルスルホニル-4-トリルスルホニルジアゾメタン、シクロヘキシルスルホニル(1,1-ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1,1-ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、フェニルスルホニル(ベンゾイル)ジアゾメタンなどが挙げられる。
【0108】
スルホン化合物の具体例としては、例えば、β-ケトスルホン化合物、β-スルホニルスルホン化合物、ジアリールジスルホン化合物などが挙げられる。好ましいスルホン化合物としては、例えば、4-トリルフェナシルスルホン、メシチルフェナシルスルホン、ビス(フェニルスルホニル)メタン、4-クロロフェニル-4-トリルジスルホン化合物などが挙げられる。
【0109】
スルホン酸エステル化合物の具体例としては、例えば、アルキルスルホン酸エステル、ハロアルキルスルホン酸エステル、アリールスルホン酸エステル、イミノスルホン酸エステル化合物などが挙げられる。好ましい具体例としては、例えば、ベンゾイン-4-トリルスルホネート、ピロガロールトリス(メチルスルホネート)、ニトロベンジル-9,10-ジエトキシアンスリル-2-スルホネート、2,6-(ジニトロベンジル)フェニルルホネートなどが挙げられる。
【0110】
イミノスルホン酸エステル化合物の具体例としては、例えば、ベンジルモノオキシム-4-トリルスルホネート、ベンジルモノオキシム-4-ドデシルフェニルスルホネート、ベンジルモノオキシムヘキサデシルスルホネート、4-ニトロアセトフェノンオキシム-4-トリルスルホネート、4,4’-ジメチルベンジルモノオキシム-4-トリルスルホネート、4,4’-ジメチルベンジルモノオキシム-4-ドデシルフェニルスルホネート、ジベンジルケトンオキシム-4-トリルスルホネート、α-(4-トリルオキシ)イミノ-α-シアノ酢酸エチル、フリルモノオキシム-4-(アミノカルボニル)フェニルスルホネート、アセトンオキシム-4-ベンゾイルフェニルスルホネート、3-(ベンジルスルホニルオキシ)イミノアセチルアセトン、ビス(ベンジルモノオキサイド)ジオクチルナフチルジスルホネート、α-(4-トリルスルホニルオキシ)イミノベンジルシアニド、α-(4-トリルスルホニルオキシ)イミノ-4-メトキシベンジルシアニド(「PAI-101」、商品名、みどり化学(株)製)、α-(10-カンファースルホニルオキシ)イミノ-4-メトキシベンジルシアニド(「PAI-106」、商品名、みどり化学(株)製)、5-(4-トリルスルホニルオキシ)イミノ-5H-チオフェン-2-イリデン-(2-メチルフェニル)アセトニトリル(「CGI-1311」、商品名、BASF製)などが挙げられる。
【0111】
カルボン酸エステル化合物の具体例としては、例えば、カルボン酸2-ニトロベンジルエステルなどが挙げられる。
【0112】
スルホンイミド化合物の具体例としては、例えば、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(10-カンファースルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(4-トリルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(2-トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(4-フルオロフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、N-(10-カンファースルホニルオキシ)フタルイミド、N-(2-トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)フタルイミド、N-(2-フルオロフェニルスルホニルオキシ)フタルイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N-(10-カンファースルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、4-トリルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N-(2-トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N-(4-フルオロフェニルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N-(4-フルオロフェニルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(10-カンファースルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(カンファースルホニルオキシ)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(4-トリルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(4-トリルスルホニルオキシ)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(2-トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(2-トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(4-フルオロフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(4-フルオロフェニルスルホニルオキシ)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-5,6-オキシ-2,3-ジカルボキシイミド、N-(10-カンファースルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-5,6-オキシ-2,3-ジカルボキシイミド、N-(4-トリルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-5,6-オキシ-2,3-ジカルボキシイミド、N-(2-トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-5,6-オキシ-2,3-ジカルボキシイミド、N-(4-フルオロフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-5,6-オキシ-2,3-ジカルボキシイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシイミド、N-(10-カンファースルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシイミド、N-(4-トリルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシイミド、N-(2-トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシイミド、N-(4-フルオロフェニルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシイミド、N-(ペンタフルオロエチルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシイミド、N-(ヘプタフルオロプロピルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシイミド、N-(ノナフルオロブチルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシイミド、N-(エチルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシイミド、N-(プロピルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシイミド、N-(ブチルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシイミド、N-(ペンチルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシイミド、N-(ヘキシルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシイミド、N-(ヘプチルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシイミド、N-(オクチルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシイミド、N-(ノニルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシイミドなどが挙げられる。
【0113】
これらのうち、[A]化合物の硬化反応を促進する触媒として有効に作用するという観点から、発生する酸は、スルホン酸またはリン酸であることが好ましい。発生する酸の強さの点で、ベンゼンスルホン酸、4-トルエンスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸またはリン酸を発生するものがより好ましい。さらに、j線(波長313nm)、i線(波長365nm)、h線(波長405nm)、g線(波長436nm)に対する量子収率が高く、高感度を実現できる観点から、スルホン酸エステル化合物、スルホンイミド化合物やイミノスルホン酸エステル化合物がより好ましい。これらの光酸発生剤は単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0114】
当該感光性組成物が[E1]光酸発生剤を含有する場合、当該感光性組成物中の[E1]光酸発生剤の含有割合の下限としては、0.01質量%が好ましく、0.1質量%がより好ましく、0.3質量%がさらに好ましい。上記含有割合の上限としては、5質量%が好ましく、3質量%がより好ましく、1質量%がさらに好ましい。
【0115】
([E2]光塩基発生剤)
[E2]光塩基発生剤とは、露光によって結合開裂を起こして塩基を発生する化合物である。
【0116】
[E2]光塩基発生剤としては、露光によって有機系の塩基を発生するものと無機系の塩基を発生するものがある。イオン性化合物としては、重金属およびハロゲンイオンを含まないものが好ましく、トリオルガノスルホニウム塩系化合物がより好ましい。いずれの光塩基発生剤も好ましく用いられるが、露光による塩基の発生効率、[A]化合物の硬化反応を促進する触媒能などの観点から、アミン類を発生する光塩基発生剤が特に好ましい。発生するアミン類の種類としては、脂肪族アミン類、芳香族アミン類のいずれでも良く、また1官能アミン、多官能アミンのいずれでも良い。これらの光塩基発生剤は単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0117】
露光により発生するアミン類の具体例としては、例えば、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、n-ブチルアミン、t-ブチルアミン、n-ヘキシルアミン、n-オクチルアミン、n-デシルアミン、n-セチルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジシクロヘキシルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ベンジルアミン、アニリン、1-ナフチルアミン、2-ナフチルアミン、ジベンジルアミン、ジフェニルアミン、1,2-フェニレンジアミン、1,3-フェニレンジアミン、1,4-フェニレンジアミン、2,4-トリレンジアミン、2,6-トリレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、ヒドラジン、ヘキサメチレンテトラミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、イミダゾール、ピラゾールなどが挙げられる。
【0118】
露光によりアミン類を発生する光塩基発生剤としては、オルトニトロベンジルカルバメート化合物、α,α-ジメチル-3,5-ジメトキシベンジルカルバメート化合物、アシルオキシイミノ化合物などが挙げられる。
【0119】
オルトニトロベンジルカルバメート化合物の具体例としては、例えば、N-(2-ニトロベンジルオキシ)カルボニル-N-メチルアミン、N-(2-ニトロベンジルオキシ)カルボニル-N-n-プロピルアミン、N-(2-ニトロベンジルオキシ)カルボニル-N-n-ヘキシルアミン、N-(2-ニトロベンジルオキシ)カルボニル-N-シクロヘキシルアミン、N-(2-ニトロベンジルオキシ)カルボニルアニリン、N-(2-ニトロベンジルオキシ)カルボニルピペリジン、N,N’-ビス[(2-ニトロベンジルオキシ)カルボニル]-1,6-ヘキサメチレンジアミン、N,N’-ビス[(2-ニトロベンジルオキシ)カルボニル]-1,4-フェニレンジアミン、N,N’-ビス[(2-ニトロベンジルオキシ)カルボニル]-2,4-トリレンジアミン、N,N’-ビス[(2-ニトロベンジルオキシ)カルボニル]-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、N,N’-ビス[(2-ニトロベンジルオキシ)カルボニル]ピペラジン、N-(2,6-ジニトロベンジルオキシ)カルボニル-N-メチルアミン、N-(2,6-ジニトロベンジルオキシ)カルボニル-N-n-プロピルアミン、N-(2,6-ジニトロベンジルオキシ)カルボニル-N-n-ヘキシルアミン、N-(2,6-ジニトロベンジルオキシ)カルボニル-N-シクロヘキシルアミン、N-(2,6-ジニトロベンジルオキシ)カルボニルアニリン、N-(2,6-ジニトロベンジルオキシ)カルボニルピペリジン、N,N’-ビス[(2,6-ジニトロベンジルオキシ)カルボニル]-1,6-ヘキサメチレンジアミン、N,N’-ビス[(2,6-ジニトロベンジルオキシ)カルボニル]-1,4-フェニレンジアミン、N,N’-ビス[(2,6-ジニトロベンジルオキシ)カルボニル]-2,4-トリレンジアミン、N,N’-ビス[(2,6-ジニトロベンジルオキシ)カルボニル]-4,4-ジアミノジフェニルメタン、N,N’-ビス[(2,6-ジニトロベンジルオキシ)カルボニル]ピペラジンなどが挙げられる。
【0120】
α,α-ジメチル-3,5-ジメトキシベンジルカルバメート化合物の具体例としては、例えば、N-(α,α-ジメチル-3,5-ジメトキシベンジルオキシ)カルボニル-N-メチルアミン、N-(α,α-ジメチル-3,5-ジメトキシベンジルオキシ)カルボニル-N-n-プロピルアミン、N-(α,α-ジメチル-3,5-ジメトキシベンジルオキシ)カルボニル-N-n-ヘキシルアミン、N-(α,α-ジメチル-3,5-ジメトキシベンジルオキシ)カルボニル-N-シクロヘキシルアミン、N-(α,α-ジメチル-3,5-ジメトキシベンジルオキシ)カルボニルアニリン、N-(α,α-ジメチル-3,5-ジメトキシベンジルオキシ)カルボニルピペリジン、N,N’-ビス[(α,α-ジメチル-3,5-ジメトキシベンジルオキシ)カルボニル]-1,6-ヘキサメチレンジアミン、N,N’-ビス[(α,α-ジメチル-3,5-ジメトキシベンジルオキシ)カルボニル]-1,4-フェニレンジアミン、N,N’-ビス[(α,α-ジメチル-3,5-ジメトキシベンジルオキシ)カルボニル]-2,4-トリレンジアミン、N,N’-ビス[(α,α-ジメチル-3,5-ジメトキシベンジルオキシ)カルボニル]-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、N,N’-ビス[(α,α-ジメチル-3,5-ジメトキシベンジルオキシ)カルボニル]ピペラジンなどが挙げられる。
【0121】
アシルオキシイミノ化合物の具体例としては、例えば、1-フェニルプロパン-1,2-ジオン-2-(O-エトキシカルボニル)オキシム、アセトフェノン-O-プロパノイルオキシム、ベンゾフェノン-O-プロパノイルオキシム、アセトン-O-プロパノイルオキシム、アセトフェノン-O-ブタノイルオキシム、ベンゾフェノン-O-ブタノイルオキシム、アセトン-O-ブタノイルオキシム、ビス(アセトフェノン)-O,O’-ヘキサン-1,6-ジオイルオキシム、ビス(ベンゾフェノン)-O,O’-ヘキサン-1,6-ジオイルオキシム、ビス(アセトン)-O,O’-ヘキサン-1,6-ジオイルオキシム、アセトフェノン-O-アクリロイルオキシム、ベンゾフェノン-O-アクリロイルオキシム、アセトン-O-アクリロイルオキシムなどが挙げられる。
【0122】
これらのうち、N-(2-ニトロベンジルオキシ)カルボニル-N-シクロヘキシルアミン、N,N’-ビス[(2-ニトロベンジルオキシ)カルボニル]-1,6-ヘキサメチレンジアミン、N,N’-ビス[(α,α-ジメチル-3,5-ジメトキシベンジルオキシ)カルボニル]-1,6-ヘキサメチレンジアミンが好ましい。
【0123】
当該感光性組成物が[E2]光塩基発生剤を含有する場合、当該感光性組成物中の[E2]光塩基発生剤の含有割合の下限としては、0.01質量%が好ましく、0.1質量%がより好ましく、0.3質量%がさらに好ましい。上記含有割合の上限としては、5質量%が好ましく、3質量%がより好ましく、1質量%がさらに好ましい。
【0124】
([E3]熱酸発生剤)
[E3]熱酸発生剤とは、熱によって結合開裂を起こして酸を発生する化合物である。
【0125】
[E3]熱酸発生剤の具体例としては、例えば、「サンエイド(登録商標)SI-60」、「サンエイド(登録商標)SI-80」、「サンエイド(登録商標)SI-100」、「サンエイド(登録商標)SI-200」、「サンエイド(登録商標)SI-110」、「サンエイド(登録商標)SI-145」、「サンエイド(登録商標)SI-150」、「サンエイド(登録商標)SI-60L」、「サンエイド(登録商標)SI-80L」、「サンエイド(登録商標)SI-100L」、「サンエイド(登録商標)SI-110L」、「サンエイド(登録商標)SI-145L」、「サンエイド(登録商標)SI-150L」、「サンエイド(登録商標)SI-160L」、「サンエイド(登録商標)SI-180L」(以上、商品名、三新化学工業(株)製)、4-ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、ベンジル-4-ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、2-メチルベンジル-4-ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4-アセトキシフェニルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4-アセトキシフェニルベンジルメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4-(メトキシカルボニルオキシ)フェニルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、ベンジル-4-(メトキシカルボニルオキシ)フェニルメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネートなどが挙げられる。これらの化合物は単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0126】
当該感光性組成物が[E3]熱酸発生剤を含有する場合、当該感光性組成物中の[E3]熱酸発生剤の含有割合の下限としては、0.01質量%が好ましく、0.1質量%がより好ましく、0.3質量%がさらに好ましい。上記含有割合の上限としては、5質量%が好ましく、3質量%がより好ましく、1質量%がさらに好ましい。
【0127】
([E4]熱塩基発生剤)
[E4]熱塩基発生剤とは、熱によって結合開裂を起こして塩基を発生する化合物である。
【0128】
[E4]熱塩基発生剤の具体例としては、例えば、「U-CAT(登録商標)SA1」、「U-CAT(登録商標)SA102」、「U-CAT(登録商標)SA102-50」、「U-CAT(登録商標)SA106」、「U-CAT(登録商標)SA112」、「U-CAT(登録商標)SA506」、「U-CAT(登録商標)SA603」、「U-CAT(登録商標)1000」、「U-CAT(登録商標)1102」、「U-CAT(登録商標)2000」、「U-CAT(登録商標)2024」、「U-CAT(登録商標)2026」、「U-CAT(登録商標)2030」、「U-CAT(登録商標)2110」、「U-CAT(登録商標)2313」、「U-CAT(登録商標)651M」、「U-CAT(登録商標)660M」、「U-CAT(登録商標)18X」、「TMED」、「U-CAT(登録商標)201G」、「U-CAT(登録商標)202」、「U-CAT(登録商標)420A」、「U-CAT(登録商標)130」、「POLYCAT(登録商標)8」、「POLYCAT(登録商標)9」、「POLYCAT(登録商標)12」、「POLYCAT(登録商標)41」(以上、商品名、サンアプロ(株)製)などが挙げられる。これらの化合物は単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0129】
当該感光性組成物が[E4]熱塩基発生剤を含有する場合、当該感光性組成物中の[E4]熱塩基発生剤の含有割合の下限としては、0.01質量%が好ましく、0.1質量%がより好ましく、0.3質量%がさらに好ましい。上記含有割合の上限としては、5質量%が好ましく、3質量%がより好ましく、1質量%がさらに好ましい。
【0130】
[感光性組成物の調製方法]
当該組成物は、[A]化合物、[B]溶媒、及び必要に応じて任意成分を所定の割合で混合し、好ましくは得られた混合物を孔径0.5μm以下のメンブランフィルター等でろ過することにより調製できる。
【0131】
《半導体基板の製造方法》
当該半導体基板の製造方法は、基板に感光性組成物を塗工する工程(以下、「塗工工程」ともいう。)と、上記塗工工程により形成された感光性膜を放射線により露光する工程(以下、「露光工程」ともいう。)と、少なくとも上記露光された感光性膜を現像する工程と(以下、「現像工程」ともいう。)、上記現像工程により形成されたパターンをマスクとして上記基板にイオン注入する工程(以下、「イオン注入工程」ともいう。)とを備える。
【0132】
当該半導体基板の製造方法は、上記イオン注入工程前に、上記パターンを300℃以上で加熱する工程(以下、「パターン加熱工程」ともいう。)をさらに備えていてもよい。
【0133】
当該半導体基板の製造方法によれば、上記塗工工程において当該感光性組成物を用いることにより、耐熱性、イオン遮蔽性及び解像度に優れたイオン注入マスク層を形成することができるため、従来のイオン注入マスクプロセスと比較して、生産性が高く、低コストのパワー半導体製造プロセスを提供することができる。
【0134】
以下、当該半導体基板の製造方法に用いる組成物及び各工程について説明する。
【0135】
[塗工工程]
本工程では、基板に感光性組成物を塗工する。本工程では感光性組成物として、上述の当該感光性組成物を用いる。
【0136】
感光性組成物の塗工方法としては特に限定されず、例えば回転塗工、流延塗工、ロール塗工などの適宜の方法で実施することができる。これにより塗工膜が形成され、[B]溶媒の揮発などが起こることにより感光性膜が形成される。
【0137】
基板としては、炭化ケイ素、窒化ガリウム、ダイヤモンド、酸化ガリウム、窒化アルミニウム、ケイ素等のウェハが挙げられる。上記基板は、炭化ケイ素、窒化ガリウム及びダイヤモンドからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。基板表面には、銅、金、チタンなどの金属電極あるいは金属配線が形成されていてもよい。
【0138】
次に、上記塗工により形成された塗工膜を加熱する。塗工膜の加熱により感光性膜の形成が促進される。より詳細には、塗工膜の加熱により[B]溶媒の揮発等が促進される。
【0139】
上記塗工膜の加熱は、大気雰囲気下で行ってもよいし、窒素雰囲気下で行ってもよい。加熱温度の下限としては、80℃が好ましく、140℃がより好ましく、180℃がさらに好ましい。上記加熱温度の上限としては、350℃が好ましく、300℃がより好ましく、280℃がさらに好ましい。加熱における時間の下限としては、15秒が好ましく、30秒がより好ましい。上記時間の上限としては、500秒が好ましく、300秒がより好ましい。
【0140】
形成される感光性膜の平均厚みとの下限としては、30nmが好ましく、50nmがより好ましく、100nmがさらに好ましい。上記平均厚みの上限としては、10μmが好ましく、6μmがより好ましく、4μmがさらに好ましい。なお、平均厚みの測定方法は実施例の記載による。
【0141】
[露光工程]
本工程では、上記塗工工程により形成された感光性膜を放射線により露光する。この際、パターニングマスクを介して露光する。
【0142】
上記露光後、解像度、パターンプロファイル、現像性等を向上させるため再度の加熱を行うことができる。この加熱の温度及び時間は、使用される感光性組成物の種類等に応じて適宜決定することができる。
【0143】
次に、上記露光されたレジスト膜を現像液で現像してレジストパターンを形成する。この現像は、アルカリ現像であっても有機溶媒現像であってもよい。現像液としては、アルカリ現像の場合、アンモニア、、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシドなどの塩基性水溶液が挙げられる。これらの塩基性水溶液には、例えばメタノール、エタノール等のアルコール類などの水溶性有機溶媒、界面活性剤などを適量添加することもできる。また、有機溶媒現像の場合、現像液としては、例えば上述の当該組成物の[B]溶媒として例示した種々の有機溶媒等が挙げられる。
【0144】
上記現像液での現像後、洗浄し、乾燥することによって、所定のパターンが形成される。
【0145】
[パターン加熱工程]
上記パターンを介したイオン注入工程前に、上記パターンを300℃以上で加熱してもよい。これにより、[A]化合物の硬化反応をより促進してパターンの耐熱性を向上させることができる。
【0146】
加熱温度の下限は、350℃が好ましく、400℃がより好ましい。加熱温度の上限は、800℃が好ましく、700℃がより好ましく、600℃がさらに好ましい。加熱時間の下限は、30秒が好ましく、60秒がより好ましく、100秒がさらに好ましい。加熱時間の上限は、150分が好ましく、90分がより好ましく、30分がさらに好ましい。
【0147】
[イオン注入工程]
イオン注入工程では、上記現像工程又はパターン加熱工程により形成されたパターンをマスクとして上記基板にイオン注入する。
【0148】
ドーパントとして注入されるイオンは公知の元素を用いることができ、p型半導体領域の形成には、ホウ素、アルミニウム、ガリウム等が挙げられ、n型半導体領域の形成には、窒素、リン、ヒ素等が挙げられる。
【0149】
イオン注入温度の下限は、200℃が好ましく、250℃がより好ましく、300℃がさらに好ましい。イオン注入温度の上限は800℃が好ましく、700℃がより好ましく、600℃がさらに好ましい。これにより、注入層の高温アニールによる再結晶化を促進して低抵抗層を形成することができ、また、SiCの熱酸化やステップバンチングを防止することができる。
【0150】
イオン注入エネルギーの下限は、10keVが好ましく、50keVがより好ましく、100keVがさらに好ましい。イオン注入エネルギーの上限は1500keVが好ましく、1000keVがより好ましく、500keVがさらに好ましい。
【0151】
イオン注入時の真空度の下限は、1.0×10-5Paが好ましく、1.0×10-4Paがより好ましく、2.0×10-4Paがさらに好ましい。上記真空度の上限は、1.0×10-3Paが好ましく、8.0×10-4Paがより好ましく、5.0×10-4Paがさらに好ましい。
【0152】
[パターン除去工程]
次に、必要に応じて、パターンを除去する工程を行ってもよい。パターンの除去は、アッシングやエッチング等により行うことができる。除去方法としてはアッシングが好ましい。アッシング温度は特に限定されないものの、25℃以上200℃以下の範囲にて好適に行うことができる。
【0153】
[アニール工程]
さらに、イオン注入領域のアニール工程を行ってもよい。これにより、イオン注入により損傷したSiC等の結晶を再結晶化させたり、イオンを効率的に拡散させて活性化させたりすることができる。アニール雰囲気は、不活性ガス雰囲気下または水素添加不活性ガス雰囲気下であることが好ましい。アニール温度の下限は、1100℃が好ましく、1300℃がより好ましく、1500℃がさらに好ましい。アニール温度の上限は、2300℃が好ましく、2000℃がより好ましく、1800℃がさらに好ましい。
【実施例0154】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0155】
[重量平均分子量(Mw)]
重合体のMwは、東ソー(株)のGPCカラム(「G2000HXL」2本、「G3000HXL」1本、及び「G4000HXL」1本)を用い、流量:1.0mL/分、溶出溶媒:テトラヒドロフラン、カラム温度:40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(検出器:示差屈折計)により測定した。
【0156】
[感光性膜の平均厚み]
感光性膜の平均厚みは、分光エリプソメータ(J.A.WOOLLAM社の「M2000D」)を用いて、感光性膜の中心を含む5cm間隔の任意の9点の位置で膜厚を測定し、それらの膜厚の平均値を算出した値として求めた。
【0157】
[合成例1](重合体(A-1)の合成)
反応容器に、窒素雰囲気下、1-ヒドロキシピレン10.8g、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン9.5g、1-ナフトール37.12gおよびパラホルムアルデヒド10.0gを仕込み、続いてp-トルエンスルホン酸一水和物0.7gの1-ブタノール(200g)溶液を反応容器に添加した後、室温で攪拌させて化合物を溶解させた。その後、100℃に加熱して10時間反応させた。反応終了後、反応溶液を分液ロートに移し、メチルイソブチルケトン200gと水400gを加えて有機相を洗浄した。水相を分離した後、得られた有機相を数回、水で洗浄した。その後、エバポレーターで濃縮し、残渣をメタノール500g中に滴下させて沈殿物を得た。沈殿物を吸引濾過により回収し、メタノール100gで数回洗浄した。その後、真空乾燥機内にて60℃で12時間乾燥することにより、下記式(A-1)で表される重合体(A-1)を得た。重合体(A-1)のMwは2,800であった。なお、下記式中、繰り返し単位の横に添えられている数字は各繰り返し単位の含有割合(モル%)を表す。以降の式中の数字も同様である。
【0158】
【0159】
[合成例2](重合体(A-2)の合成)
反応容器に、窒素雰囲気下、2,7-ジヒドロキシナフタレン107.2g、パラホルムアルデヒド50.7gおよび1-ブタノール300.0gを仕込み、攪拌させて化合物を溶解させた。p-トルエンスルホン酸1水和物3.2gの1-ブタノール溶液20.0gを反応容器に添加した後、100℃に加熱して8時間反応させた。反応終了後、反応溶液を分液ロートに移し、メチルイソブチルケトン200gと水400gを加えて有機相を洗浄した。水相を分離した後、得られた有機相を数回、水で洗浄した。その後、エバポレーターで濃縮し、残渣をメタノール500g中に滴下させて沈殿物を得た。沈殿物を吸引濾過により回収し、メタノール100gで数回洗浄した。その後、真空乾燥機内にて60℃で12時間乾燥することにより、下記式(A-2)で表される重合体(A-2)を得た。重合体(A-2)のMwは2,000であった。
【0160】
【0161】
[合成例3](重合体(A-3)の合成)
2,7-ジヒドロキシナフタレン107.2gの代わりに、1-ヒドロキシピレン146.0gに変えたこと以外は[合成例2]と同様の条件で反応させることにより、下記式(A-3)で表される重合体(A-3)を得た。重合体(A-3)のMwは1,800であった。
【0162】
【0163】
[合成例4](重合体(A-4)の合成)
反応容器に、窒素雰囲気下、1-ヒドロキシピレン61.2g、ベンズアルデヒド30.0gおよび1-ブタノール180.0gを仕込み、攪拌させて化合物を溶解させた。p-トルエンスルホン酸1水和物5.3gの1-ブタノール溶液10.0gを反応容器に添加した後、100℃に加熱して8時間反応させた。反応終了後、反応溶液を分液ロートに移し、メチルイソブチルケトン200gと水400gを加えて有機相を洗浄した。水相を分離した後、得られた有機相を数回、水で洗浄した。その後、エバポレーターで濃縮し、残渣をメタノール500g中に滴下させて沈殿物を得た。沈殿物を吸引濾過により回収し、メタノール100gで数回洗浄した。その後、真空乾燥機内にて60℃で12時間乾燥することにより、下記式(A-4)で表される重合体(A-4)を得た。重合体(A-4)のMwは2,300であった。
【0164】
【0165】
[合成例5](重合体(A-5)の合成)
ベンズアルデヒド30.0gの代わりに、ビフェニル-4-カルボキシアルデヒド51.0gに変えたこと以外は[合成例4]と同様の条件で反応させることにより、下記式(A-5)で表される重合体(A-5)を得た。重合体(A-5)のMwは2,800であった。
【0166】
【0167】
[合成例6](重合体(A-6)の合成)
ベンズアルデヒド30.0gの代わりに、1-ナフトアルデヒド44.0gに変えたこと以外は[合成例4]と同様の条件で反応させることにより、下記式(A-6)で表される重合体(A-6)を得た。重合体(A-6)のMwは2,400であった。
【0168】
【0169】
[合成例7](重合体(A-7)の合成)
1-ヒドロキシピレンの代わりに、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン47.0gおよびベンズアルデヒドの代わりにビフェニル-4-カルボキシアルデヒド30.0gに変えたこと以外は[合成例4]と同様の条件で反応させることにより、下記式(A-7)で表される重合体(A-7)を得た。重合体(A-7)のMwは2,000であった。
【0170】
【0171】
[合成例8](重合体(A-8)の合成)
2,7-ジヒドロキシナフタレン107.2gの代わりに、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン130.0gに変えたこと以外は[合成例2]と同様の条件で反応させることにより、下記式(A-8)で表される重合体(A-8)を得た。重合体(A-8)のMwは2,200であった。
【0172】
【0173】
[合成例9](重合体(A-9)の合成)
2,7-ジヒドロキシナフタレン107.2gの代わりに、9,9-ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン167.0gに変えたこと以外は[合成例2]と同様の条件で反応させることにより、下記式(A-9)で表される重合体(A-9)を得た。重合体(A-9)のMwは2,500であった。
【0174】
【0175】
[合成例10](重合体(A-10)の合成)
反応容器に、窒素雰囲気下、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン30.0gおよび1-ナフトアルデヒド13.3gおよび1-ブタノール86.7gを仕込み、攪拌させて化合物を溶解させた。p-トルエンスルホン酸1水和物1.62gの1-ブタノール溶液5.0gを反応容器に添加した後、90℃に加熱して12時間反応させた。反応終了後、反応溶液を分液ロートに移し、メチルイソブチルケトン200gと水400gを加えて有機相を洗浄した。水相を分離した後、得られた有機相を数回、水で洗浄した。その後、エバポレーターで濃縮し、残渣をメタノール500g中に滴下させて沈殿物を得た。沈殿物を吸引濾過により回収し、メタノール100gで数回洗浄した。その後、真空乾燥機内にて60℃で12時間乾燥することにより、下記式(A-10)で表される重合体(A-10)を得た。重合体(A-10)のMwは4,000であった。
【0176】
【0177】
[合成例11](重合体(A-11)の合成)
1-ナフトアルデヒド13.3gの代わりに1-ピレンカルボキシアルデヒド19.7gに変えたこと以外は[合成例10]と同様の条件で反応させることにより、下記式(A-11)で表される重合体(A-11)を得た。重合体(A-11)のMwは3,500であった。
【0178】
【0179】
[合成例12](重合体(A-12)の合成)
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタンの代わりに、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン11.5gに変えたこと以外は[合成例1]と同様の条件で反応させることにより、下記式(A-12)で表される重合体(A-12)を得た。重合体(A-12)のMwは3,000であった。
【0180】
【0181】
[合成例13](重合体(A-13)の合成)
反応容器に重合体(A-1)5.0gをメチルイソブチルケトン25.0g、メタノール12.0g、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(25%水溶液)18.6gを加えて、室温で数分間攪拌させることで重合体(A-1)を溶解させた。臭化プロパルギル6.0gを添加し、室温から60℃に加熱して4時間反応させた。反応終了後、反応溶液を分液ロートに移し、メチルイソブチルケトン200gと水200gを加えて有機相を分離した。有機相を数回水で洗浄した後、得られた有機相をエバポレーターで濃縮し、メタノール200g中に滴下させて沈殿物を得た。沈殿物を吸引濾過により回収し、メタノール50gで数回洗浄した。その後、真空乾燥機内にて60℃で12時間乾燥することにより、下記式(A-13)で表される重合体(A-13)を得た。重合体(A-13)のMwは3,200であった。
【0182】
【0183】
[合成例14](重合体(A-14)の合成)
重合体(A-1)5.0gの代わりに、重合体(A-2)5.0gに変えたこと以外は[合成例13]と同様の条件で反応させることにより、下記式(A-14)で表される重合体(A-14)を得た。重合体(A-14)のMwは2,200であった。
【0184】
【0185】
[合成例15](化合物(A-15)の合成)
反応容器に、窒素雰囲気下、1,3,5-ベンゼントリイルトリス-9H-フルオレン10.0g、m-エチニルベンズアルデヒド7.5gおよびテトラヒドロフラン90.0gを加えて懸濁させた。25%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド46.0gおよびテトラブチルアンモニウムブロミド1.1gを加え、60℃で4時間反応させた。反応終了後、メチルイソブチルケトン200.0gと5%シュウ酸水溶液200.0gを加えて有機相を分離した。有機相を数回水で洗浄した後、得られた有機相をエバポレーターで濃縮し、メタノール200g中に滴下させて沈殿物を得た。沈殿物を吸引濾過により回収し、メタノール50.0gで数回洗浄した。その後、真空乾燥機内にて60℃で12時間乾燥することにより、下記式(A-15)で表される化合物(A-15)を得た。
【0186】
【0187】
[合成例16](化合物(A-16)の合成)
m-エチニルベンズアルデヒド7.5gの代わりに、4-ヒドロキシベンズアルデヒド7.0gに変えたこと以外は[合成例15]と同様の条件で反応させることにより、下記式(A-16)で表される化合物(A-16)を得た。
【0188】
【0189】
[比較例1](重合体(X-1)の合成)
反応容器に、窒素雰囲気下、4-アセトキシスチレン8.6g、スチレン1.4gおよびアゾビス(イソ酪酸)ジメチル3.1g、メチルイソブチルケトン30.0gを加えて室温で攪拌させた。その後、80℃に昇温後6時間反応させた。重合後の反応溶液を室温まで冷却後、トリエチルアミン30.0gおよびメタノール54.0を添加して、さらに90℃で6時間反応させることでアセトキシ基を脱保護させた。1%シュウ酸水溶液100.0gを加えて有機相を分離した。有機相を数回水で洗浄した後、得られた有機相をエバポレーターで濃縮し、ヘキサン200g中に滴下させて沈殿物を得た。沈殿物を吸引濾過により回収し、ヘキサン50.0gで数回洗浄した。その後、真空乾燥機内にて溶媒留去することにより、下記式(X-1)で表される重合体(X-1)を得た。
【0190】
【0191】
<組成物の調製>
組成物の調製に用いた[A]化合物、[B]溶媒、[C]架橋剤、[D]ナフトキノンジアジド化合物及び[E]酸発生剤等について以下に示す。
【0192】
[[A]化合物]
実施例:上記合成した重合体(A-1)~(A-14)、化合物(A-15)~(A-16)
比較例:上記合成した重合体(X-1)
【0193】
[[B]溶媒]
B-1:酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル
【0194】
[[C]架橋剤]
C-1:下記式(C-1)で表される化合物
【0195】
【0196】
C-2:下記式(C-2)で表される化合物
【0197】
【0198】
[[D]ナフトキノンジアジド化合物]
D-1:下記式(D-1)で表される化合物
【0199】
【0200】
D-2:下記式(D-2)で表される化合物
【0201】
【0202】
[[E]酸発生剤等]
E-1:下記式(E-1)で表される化合物)
【0203】
【0204】
E-2:下記式(E-2)で表される化合物)
【0205】
【0206】
E-3:下記式(E-3)で表される化合物)
【0207】
【0208】
[実施例1-1]
[A]化合物としての(A-1)14質量部、[C]架橋剤としての(C-1)0.5質量部、[D]ナフトキノンジアジド化合物としての(D-1)を[B]溶媒としての(B-1)85質量部に溶解した。得られた溶液を孔径0.45μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)メンブランフィルターでろ過して、感光性がポジ型の組成物(J1-1)を調製した。
【0209】
[実施例1-2~1-14及び比較例1-1]
下記表1に示す種類及び含有量の各成分を使用したこと以外は、実施例1と同様にして組成物(J1-2)~(J1-14)及び(CJ1-1)を調製した。
【0210】
【0211】
<評価>
上記得られた組成物を用い、耐熱性、イオン遮蔽性及び解像度について下記方法により評価を行った。評価結果を下記表2に合わせて示す。
【0212】
[耐熱性]
上記調製した組成物を、シリコンウエハ(基板)上に、スピンコーター(東京エレクトロン(株)の「CLEAN TRACK ACT8」)を用いて回転塗工法により塗工した。次に、大気雰囲気下にて200℃で60秒間加熱した後、23℃で60秒間冷却することにより、平均厚み500nmの膜を形成し、基板上に膜が形成された膜付き基板を得た。上記得られた膜付き基板の膜を削ることにより粉体を回収し、回収した粉体をTG-DTA装置(NETZSCH社の「TG-DTA2000SR」)による測定で使用する容器に入れ、加熱前の質量を測定した。次に、上記TG-DTA装置を用いて、窒素雰囲気下、10℃/分の昇温速度にて500℃まで加熱し、500℃になった時の粉体の質量を測定した。そして、下記式により質量減少率(%)を測定し、この質量減少率を耐熱性の尺度とした。
ML={(m1-m2)/m1}×100
ここで、上記式中、MLは、質量減少率(%)であり、m1は、加熱前の質量(mg)であり、m2は、500℃における質量(mg)である。
耐熱性は、試料となる粉体の質量減少率が小さいほど、膜の加熱時に発生する昇華物や膜の分解物が少なく、良好である。すなわち、質量減少率が小さいほど、高い耐熱性であることを示す。耐熱性は、質量減少率が10%未満の場合は「A」(良好)とし、10%以上の場合は「B」(不良)と評価した。
【0213】
[イオン遮蔽性]
8インチシリコンウェハ上に、上記調製した組成物をスピンコーター(東京エレクトロン(株)の「CLEAN TRACK ACT8」)による回転塗工法により塗工した後、250℃で60秒間加熱を行うことにより、平均厚み2.0μmの膜を形成し、膜付き基板を得た。イオン注入装置(Veeco社の「MODEL 2100 IonImplanter」)を用いて注入温度500℃でAlイオン注入を行った。Alイオン注入後、膜厚に対するAlイオン濃度をTOF-SIMS装置(アルバック・ファイ社の「PHI nanoTOF IItm」)を用いて測定した。Alイオンピークトップの膜厚を測定し、イオン注入深さが0.6μm未満の場合は「A」(良好)とし、0.6μm以上の場合は「B」(不良)と評価した。
【0214】
[解像度]
8インチシリコンウェハ上に、上記調製した組成物をスピンコーター(東京エレクトロン(株)の「CLEAN TRACK ACT8」)による回転塗工法により塗工した後、250℃で60秒間加熱を行うことにより平均厚み500nmの膜を形成した。露光装置「i線ステッパーFPA-3030i5+(Canon(株)製)」(ウェハ上寸法が線幅2.0μmの1対1ラインアンドスペースのマスク)を用いて膜にi線を照射した。次に、基板を120℃で60秒間加熱し、次いで23℃で60秒間冷却した。その後、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(20℃~25℃)を用い、パドル法により現像した後、水で洗浄し、乾燥することにより、パターンが形成された評価用基板を得た。上記評価用基板のパターンの測長及び観察には走査型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズの「SU8220」)を用いた。解像度は、線幅2.0μmの1対1ラインアンドスペースパターンの凹部において、レジスト膜の残渣が確認されなかった場合は「A」(良好)と、レジスト膜の残渣が確認された場合は「B」(不良)と評価した。
【0215】
【0216】
表2の結果から分かるように、実施例の組成物から形成された感光性膜及びパターンは、比較例の組成物から形成された感光性膜及びパターンと比較して、耐熱性、イオン遮蔽性及び解像度に優れていた。
【0217】
[実施例2-1]
[A]化合物としての(A-1)14質量部、[C]架橋剤としての(C-1)1質量部、[E]酸発生剤等としての(E-1)0.5質量部を[B]溶媒としての(B-1)84.5質量部に溶解した。得られた溶液を孔径0.45μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)メンブランフィルターでろ過して、感光性がネガ型の組成物(J2-1)を調製した。
【0218】
[実施例2-2~2-20及び比較例2-1]
下記表3に示す種類及び含有量の各成分を使用したこと以外は、実施例2-1と同様にして組成物(J2-2)~(J2-20)及び(CJ2-1)を調製した。表3中の「[C]架橋剤」及び「[E]酸発生剤等」の列における「-」は、該当する成分を使用しなかったことを示す。
【0219】
【0220】
<評価>
上記得られた組成物を用い、耐熱性、イオン遮蔽性及び解像度について、上記実施例1-1等と同様の方法により評価を行った。評価結果を下記表4に合わせて示す。
【0221】
【0222】
表2の結果から分かるように、実施例の組成物から形成された感光性膜及びパターンは、比較例の組成物から形成された感光性膜及びパターンと比較して、解像度は同等であるものの、耐熱性及びイオン遮蔽性に優れていた。
本発明の感光性組成物によれば、耐熱性、イオン遮蔽性及び解像度に優れるイオン注入マスクを簡便に形成することができる。本発明の半導体基板の製造方法によれば、耐熱性、イオン遮蔽性及び解像度に優れたイオン注入マスク層を形成することができるため、従来のイオン注入マスクプロセスと比較して、生産性が高く、低コストのパワー半導体製造プロセスを提供することができる。従って、これらは、今後さらに微細化が進行すると予想される半導体デバイスの製造等に好適に用いることができる。