(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174083
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】スイッチング電源用回路及びスイッチング電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
H02M3/155 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086741
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤穂 直史
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA14
5H730AS01
5H730AS05
5H730BB13
5H730BB57
5H730DD04
5H730DD16
5H730EE59
5H730FD01
5H730FD51
5H730FF02
5H730FF03
5H730FG05
5H730FG22
5H730XC04
(57)【要約】
【課題】スイッチング電源装置において軽負荷時の効率を向上させる。
【解決手段】出力トランジスタ及び同期整流トランジスタを有する出力段回路のスイッチング駆動を通じて出力インダクタにインダクタ電流を供給することにより入力電圧から出力電圧を生成する。出力電圧に基づく帰還電圧と基準電圧との差分に応じた誤差電圧を、スロープ電圧と比較することで比較結果信号を得る。所定周波数を有するクロック信号及び比較結果信号に基づき出力段回路を制御する。出力トランジスタのオン期間とオフ期間との比率に応じた第1オフセット電圧を生成し、出力トランジスタのオン期間においてスロープ電圧を第1オフセット電圧から入力電圧に応じた傾きで上昇させる。出力トランジスタのオフ期間の内、少なくとも一部の期間において、スロープ電圧を出力電圧に応じた第2オフセット電圧に設定する。
【選択図】
図22
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧を受けるよう構成された出力トランジスタ及び前記出力トランジスタの低電位側において前記出力トランジスタに直列接続された同期整流トランジスタを有する出力段回路を備え、前記出力トランジスタ及び前記同期整流トランジスタのオン/オフを通じ前記出力トランジスタ又は前記同期整流トランジスタを介して出力インダクタにインダクタ電流を供給することにより前記入力電圧から出力電圧を生成するよう構成されたスイッチング電源用回路であって、
前記出力電圧に応じた帰還電圧と所定の基準電圧との差分に応じた誤差電圧を生成するよう構成されたエラーアンプと、
スロープ電圧を生成するよう構成されたスロープ電圧生成回路と、
前記誤差電圧である第1比較電圧と、前記スロープ電圧である又は前記スロープ電圧と前記インダクタ電流に応じた電圧との和である第2比較電圧と、を比較して比較結果信号を生成するよう構成されたコンパレータと、
所定周波数を有するクロック信号を生成するよう構成されたクロック信号生成回路と、
前記クロック信号及び前記比較結果信号に基づき前記出力段回路を制御するよう構成された制御駆動回路と、
前記インダクタ電流の逆流を検出するよう構成された逆流検出回路と、を備え、
前記駆動制御回路は、前記同期整流トランジスタがオンであるときにおいて前記インダクタ電流の逆流が検出されたとき、前記同期整流トランジスタをターンオフさせ、
前記スロープ電圧生成回路は、
前記出力トランジスタのオン期間と前記出力トランジスタのオフ期間との比率に応じた第1オフセット電圧を生成するよう構成された第1オフセット電圧生成回路と、
前記出力電圧に応じた第2オフセット電圧を生成するよう構成された第2オフセット電圧生成回路と、を有し、
前記出力トランジスタのオン期間において、前記スロープ電圧を前記第1オフセット電圧から前記入力電圧に応じた傾きで上昇させ、
前記出力トランジスタのオフ期間の内、少なくとも一部の期間において、前記スロープ電圧を前記第2オフセット電圧に設定する
、スイッチング電源用回路。
【請求項2】
前記制御駆動回路は、前記出力段回路の状態を、前記出力トランジスタがオン及び前記同期整流トランジスタがオフとなる出力ハイ状態、前記出力トランジスタがオフ及び前記同期整流トランジスタがオンとなる出力ロー状態、又は、前記出力トランジスタ及び前記同期整流トランジスタの双方がオフとなる出力オフ状態の何れかに制御し、
前記クロック信号生成回路は、前記所定周波数にて前記クロック信号のレベルを第1レベルから第2レベルへ変化させ、
前記制御駆動回路は、前記第1比較電圧が前記第2比較電圧よりも高いときに前記クロック信号のレベルの前記第1レベルから前記第2レベルへの変化が発生すると、基本単位動作を実行し、
前記制御駆動回路は、前記基本単位動作において、前記クロック信号のレベルにおける前記第1レベルから前記第2レベルへの変化を契機に、前記出力段回路を前記出力ロー状態又は前記出力オフ状態から前記出力ハイ状態に切り替え、その後、前記第2比較電圧が前記第1比較電圧に達したことを示す前記比較結果信号の入力を契機に前記出力段回路を前記出力ハイ状態から前記出力ロー状態に切り替え、更にその後、前記インダクタ電流の逆流が検出されたならば前記出力段回路を前記出力ロー状態から前記出力オフ状態に切り替え、
前記制御駆動回路は、前記インダクタ電流の逆流の検出を通じて前記出力段回路の状態を前記出力オフ状態に設定した後、前記第1比較電圧が前記第2比較電圧よりも低い期間において、前記クロック信号に依らず前記出力段回路を前記出力オフ状態に維持するスキップ制御を実行する
、請求項1に記載のスイッチング電源用回路。
【請求項3】
前記第1オフセット電圧生成回路は、前記出力トランジスタのオフ期間に対する前記出力トランジスタのオン期間の比率が低下するにつれて、前記第1オフセット電圧を低下させる
、請求項1に記載のスイッチング電源用回路。
【請求項4】
前記エラーアンプは、前記帰還電圧が前記基準電圧よりも高いとき前記誤差電圧を低下させ、前記帰還電圧が前記基準電圧よりも低いとき前記誤差電圧を上昇させる
、請求項1に記載のスイッチング電源用回路。
【請求項5】
前記第1オフセット電圧生成回路は、第1オフセット用コンデンサと、前記第1オフセット用コンデンサに並列接続された第1オフセット用抵抗と、を有し、
前記第1オフセット用コンデンサの両端間に前記第1オフセット電圧が生じ、
前記スロープ電圧生成回路は、前記出力トランジスタのオン期間において、前記入力電圧に応じた充電電流にて前記第1オフセット用コンデンサを充電し、前記出力トランジスタのオフ期間において、前記充電を停止して前記第1オフセット用コンデンサの蓄積電荷を前記第1オフセット用抵抗を通じて放電させる
、請求項1~4の何れかに記載のスイッチング電源用回路。
【請求項6】
前記スロープ電圧生成回路は、第1ノード及び第2ノード間に設けられたスロープ用コンデンサと、所定ノードと前記スロープ用コンデンサとの間に設けられた第1スイッチと、前記スロープ用コンデンサに並列接続された第2スイッチと、前記第1ノードにおける電圧又は前記第2オフセット電圧を前記スロープ電圧として切り替え出力する切り替え回路と、を有し、
前記第2ノードに前記第1オフセット電圧が加わり、
前記スロープ電圧生成回路は、
前記出力トランジスタのオン期間において、前記第2スイッチをオフに維持しつつ、前記第1スイッチをオンに保つことで前記所定ノードから前記第1ノードに向けて前記入力電圧に応じたスロープ用電流を供給し、これによって前記スロープ用コンデンサ及び前記第1オフセット用コンデンサを充電し、
前記出力トランジスタのオン期間において、前記第1ノードにおける電圧を前記スロープ電圧として出力し、
前記出力トランジスタのオフ期間において、前記第1スイッチをオフ状態とすることで前記スロープ用電流の供給を遮断し、且つ、前記出力トランジスタのオフ期間の少なくとも一部において前記第2スイッチをオンにすることで前記スロープ用コンデンサの蓄積電荷を放電させ、
前記出力トランジスタのオフ期間の内、少なくとも一部の期間において、前記第2オフセット電圧を前記スロープ電圧として出力する
、請求項5に記載のスイッチング電源用回路。
【請求項7】
前記第2オフセット電圧生成回路は、第2オフセット用抵抗を有し、前記出力電圧に応じた電流を前記第2オフセット用抵抗に供給することで前記第2オフセット用抵抗にて前記第2オフセット電圧を発生させる
、請求項1に記載のスイッチング電源用回路。
【請求項8】
請求項1に記載のスイッチング電源用回路と、
前記出力インダクタと出力コンデンサを有し、前記出力トランジスタ及び前記同期整流トランジスタ間の接続ノードに生じる電圧を整流及び平滑化することで前記出力電圧を生成するよう構成された整流平滑回路と、を備える
、スイッチング電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スイッチング電源用回路及びスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
互いに直列接続された一対のトランジスタを交互にオン、オフすることで入力電圧をスイッチングし、これによって得られる矩形波状の電圧を整流及び平滑化することで出力電圧を生成するスイッチング電源装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のスイッチング電源装置において又は当該スイッチング電源装置を構成するための回路において、効率をなるだけ高めることが要望され、特に例えば軽負荷時における効率向上が要望される。効率向上を図る技術として様々な技術が提案されているが、当該技術に関して改善の余地がある。
【0005】
本開示は、効率の向上(特に例えば軽負荷時の効率向上)に寄与するスイッチング電源用回路及びスイッチング電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るスイッチング電源用回路は、入力電圧を受けるよう構成された出力トランジスタ及び前記出力トランジスタの低電位側において前記出力トランジスタに直列接続された同期整流トランジスタを有する出力段回路を備え、前記出力トランジスタ及び前記同期整流トランジスタのオン/オフを通じ前記出力トランジスタ又は前記同期整流トランジスタを介して出力インダクタにインダクタ電流を供給することにより前記入力電圧から出力電圧を生成するよう構成されたスイッチング電源用回路であって、前記出力電圧に応じた帰還電圧と所定の基準電圧との差分に応じた誤差電圧を生成するよう構成されたエラーアンプと、スロープ電圧を生成するよう構成されたスロープ電圧生成回路と、前記誤差電圧である第1比較電圧と、前記スロープ電圧である又は前記スロープ電圧と前記インダクタ電流に応じた電圧との和である第2比較電圧と、を比較して比較結果信号を生成するよう構成されたコンパレータと、所定周波数を有するクロック信号を生成するよう構成されたクロック信号生成回路と、前記クロック信号及び前記比較結果信号に基づき前記出力段回路を制御するよう構成された制御駆動回路と、前記インダクタ電流の逆流を検出するよう構成された逆流検出回路と、を備え、前記駆動制御回路は、前記同期整流トランジスタがオンであるときにおいて前記インダクタ電流の逆流が検出されたとき、前記同期整流トランジスタをターンオフさせ、前記スロープ電圧生成回路は、前記出力トランジスタのオン期間と前記出力トランジスタのオフ期間との比率に応じた第1オフセット電圧を生成するよう構成された第1オフセット電圧生成回路と、前記出力電圧に応じた第2オフセット電圧を生成するよう構成された第2オフセット電圧生成回路と、を有し、前記出力トランジスタのオン期間において、前記スロープ電圧を前記第1オフセット電圧から前記入力電圧に応じた傾きで上昇させ、前記出力トランジスタのオフ期間の内、少なくとも一部の期間において、前記スロープ電圧を前記第2オフセット電圧に設定する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、効率の向上(特に例えば軽負荷時の効率向上)に寄与するスイッチング電源用回路及びスイッチング電源装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態に係るスイッチング電源装置の全体構成図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施形態に係る電源ICの外観斜視図である。
【
図3】
図3は、本開示の実施形態に係り、クロック信号の波形図である。
【
図4】
図4は、本開示の実施形態に係り、クロック信号、比較結果信号及び制御信号の波形図である。
【
図5】
図5は、本開示の実施形態に係り、第1PWM制御のタイミングチャートである。
【
図6】
図6は、本開示の実施形態に係り、第1PWM制御の変形タイミングチャートである。
【
図7】
図7は、本開示の実施形態に係り、第2PWM制御のタイミングチャートである。
【
図8】
図8は、本開示の実施形態に係り、第2PWM制御の変形タイミングチャートである。
【
図9】
図9は、本開示の実施形態に係り、第2PWM制御の変形タイミングチャートである。
【
図10】
図10は、本開示の実施形態に係り、スキップ制御の変形タイミングチャートである。
【
図11】
図11は、本開示の実施形態に係り、第1仮想動作のタイミングチャートである。
【
図12】
図12は、本開示の実施形態に係り、第2仮想動作のタイミングチャートである。
【
図13】
図13は、本開示の実施形態に属する第1実施例に係り、スロープ電圧生成回路の構成図である。
【
図14】
図14は、本開示の実施形態に属する第1実施例に係り、スロープ電圧生成回路の動作を説明するための図である。
【
図15】
図15は、本開示の実施形態に属する第1実施例に係り、スロープ電圧生成回路の動作を説明するための図である(第1制御パターン)。
【
図16】
図16は、本開示の実施形態に属する第1実施例に係り、スロープ電圧生成回路の動作を説明するための図である(第2制御パターン)。
【
図17】
図17は、本開示の実施形態に属する第1実施例に係り、スロープ電圧生成回路の動作を説明するための図である(第2制御パターン)。
【
図18】
図18は、本開示の実施形態に属する第1実施例に係り、スロープ電圧生成回路の動作を説明するための図である(第3制御パターン)。
【
図19】
図19は、本開示の実施形態に属する第1実施例に係り、スロープ電圧生成回路の動作を説明するための図である(第3制御パターン)。
【
図20】
図20は、本開示の実施形態に属する第1実施例に係り、第1オフセット電圧及びスロープ電圧の変動の様子を説明するための図である。
【
図21】
図21は、本開示の実施形態に属する第1実施例に係り、第1オフセット電圧及びスロープ電圧の変動の様子を説明するための図である。
【
図22】
図22は、本開示の実施形態に属する第1実施例に係り、スキップ制御が行われるときのスイッチング電源装置のタイミングチャートである、
【
図23】
図23は、本開示の実施形態に属する第1実施例に係り、制御信号のパルス幅と出力電流との関係を説明するための図である。
【
図24】
図24は、本開示の実施形態に属する第2実施例に係り、スロープ電圧生成回路の構成図である。
【
図25】
図25は、本開示の実施形態に属する第3実施例に係り、スロープ電圧生成回路の構成図である。
【
図26】
図26は、本開示の実施形態に属する第4実施例に係り、スイッチング電源装置の変形全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態の例を、図面を参照して具体的に説明する。参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付し、同一の部分に関する重複する説明を原則として省略する。尚、本明細書では、記述の簡略化上、情報、信号、物理量、機能部、回路、素子又は部品等を参照する記号又は符号を記すことによって、該記号又は符号に対応する情報、信号、物理量、機能部、回路、素子又は部品等の名称を省略又は略記することがある。
【0010】
まず、本開示の実施形態の記述にて用いられる幾つかの用語について説明を設ける。ICとは集積回路(Integrated Circuit)の略称である。グランドとは、基準となる0V(ゼロボルト)の電位を有する基準導電部を指す又は0Vの電位そのものを指す。基準導電部は金属等の導体を用いて形成されて良い。0Vの電位をグランド電位と称することもある。本開示の実施形態において、特に基準を設けずに示される電圧はグランドから見た電位を表す。
【0011】
レベルとは電位のレベルを指し、任意の注目した信号又は電圧についてハイレベルはローレベルよりも高い電位を有する。任意の注目した信号又は電圧について、信号又は電圧がハイレベルにあるとは厳密には信号又は電圧のレベルがハイレベルにあることを意味し、信号又は電圧がローレベルにあるとは厳密には信号又は電圧のレベルがローレベルにあることを意味する。信号についてのレベルは信号レベルと表現されることがあり、電圧についてのレベルは電圧レベルと表現されることがある。ハイレベル又はローレベルの信号レベルをとる任意の信号について、当該信号のレベルがハイレベルとなる期間をハイレベル期間と称し、当該信号のレベルがローレベルとなる期間をローレベル期間と称する。ハイレベル又はローレベルの電圧レベルをとる任意の電圧についても同様である。
【0012】
任意の注目した信号又は電圧において、ローレベルからハイレベルへの切り替わりをアップエッジと称し、ローレベルからハイレベルへの切り替わりのタイミングをアップエッジタイミングと称する。アップエッジをライジングエッジに読み替えて良い。同様に、任意の注目した信号又は電圧において、ハイレベルからローレベルへの切り替わりをダウンエッジと称し、ハイレベルからローレベルへの切り替わりのタイミングをダウンエッジタイミングと称する。ダウンエッジをフォーリングエッジに読み替えて良い。
【0013】
MOSFETを含むFET(電界効果トランジスタ)として構成された任意のトランジスタについて、オン状態とは、当該トランジスタのドレイン及びソース間が導通している状態を指し、オフ状態とは、当該トランジスタのドレイン及びソース間が非導通となっている状態(遮断状態)を指す。FETに分類されないトランジスタについても同様である。MOSFETは、特に記述無き限り、エンハンスメント型のMOSFETであると解される。MOSFETは“metal-oxide-semiconductor field-effect transistor”の略称である。また、特に記述なき限り、任意のMOSFETにおいて、バックゲートはソースに短絡されていると考えて良い。
【0014】
任意のスイッチを1以上のFET(電界効果トランジスタ)にて構成することができ、或るスイッチがオン状態のときには当該スイッチの両端間が導通する一方で或るスイッチがオフ状態のときには当該スイッチの両端間が非導通となる。
【0015】
以下、任意のトランジスタ又はスイッチについて、オン状態、オフ状態を、単に、オン、オフと表現することもある。任意のトランジスタ又はスイッチについて、オフ状態からオン状態への切り替わりをターンオンと表現し、オン状態からオフ状態への切り替わりをターンオフと表現する。また、任意のトランジスタ又はスイッチについて、トランジスタ又はスイッチがオン状態となっている期間をオン期間と称することがあり、トランジスタ又はスイッチがオフ状態となっている期間をオフ期間と称することがある。
【0016】
任意の回路素子、配線、ノードなど、回路を形成する複数の部位間についての接続とは、特に記述なき限り、電気的な接続を指すと解して良い。
【0017】
本開示の実施形態を説明する。
図1は、本開示の実施形態に係るスイッチング電源装置1の全体構成図である。
図1のスイッチング電源装置1は、スイッチング電源用回路(スイッチング電源用半導体装置)である電源IC2と、電源IC2に対して外付け接続される複数のディスクリート部品と、を備える。スイッチング電源装置1に設けられる複数のディスクリート部品には、出力インダクタL0及び出力コンデンサC0と、帰還抵抗R1及びR2とが含まれる。スイッチング電源装置1は、外部から供給される入力電圧V
INより所望の出力電圧V
OUTを生成する降圧型のスイッチング電源装置(DC/DCコンバータ)として構成されている。出力端子OUTに出力電圧V
OUTが生じる。即ち、出力端子OUTは出力電圧V
OUTの印加端(出力電圧V
OUTが加わる端子)である。出力電圧V
OUTは出力端子OUTに接続された負荷LDに供給される。
【0018】
入力電圧VIN及び出力電圧VOUTは正の直流電圧であって、出力電圧VOUTは入力電圧VINよりも低い。例えば入力電圧VINが12Vであるとき、帰還抵抗R1及びR2の抵抗値を調整することで12V未満の所望の正の電圧値(例えば3.3Vや5V)にて出力電圧VOUTを安定化させることができる。尚、出力端子OUTを介して負荷LDに供給される電流を出力電流IOUTと称する。出力電流IOUTを負荷電流と称することもできる。
【0019】
図2に電源IC2の外観斜視図を示す。電源IC2は、半導体基板上に形成された半導体集積回路を有する半導体チップと、半導体チップを収容する筐体(パッケージ)と、筐体から電源IC2の外部に対して露出する複数の外部端子と、を備えた電子部品である。半導体チップを樹脂にて構成された筐体(パッケージ)内に封入することで電源IC2が形成される。尚、
図2に示される電源IC2の外部端子の数及び電源IC2の筐体の種類は例示に過ぎず、それらを任意に設計可能である。
【0020】
図1では、電源IC2に設けられる複数の外部端子の一部として、入力端子IN、スイッチ端子SW、グランド端子GND及び帰還端子FBのみが示されているが、他の外部端子(例えばイネーブル端子、パワーグッド端子及びブート端子)も電源IC2に設けられる。
【0021】
電源IC2の外部構成について説明する。電源IC2の外部より入力電圧VINが入力端子INに供給される。スイッチ端子SWと出力端子OUTとの間に出力インダクタL0が直列に介在する。即ち、出力インダクタL0の一端はスイッチ端子SWに接続され、出力インダクタL0の他端は出力端子OUTに接続される。また、出力端子OUTは出力コンデンサC0を介してグランドに接続される。更に、出力端子OUTは帰還抵抗R1の一端に接続され、帰還抵抗R1の他端は帰還抵抗R2を介してグランドに接続される。帰還抵抗R1及びR2間の接続ノードが帰還端子FBに接続される。グランド端子GNDはグランドに接続される。尚、出力インダクタL0に流れる電流をインダクタ電流ILと称する。スイッチ端子SWから出力端子OUTに向かう向きのインダクタ電流ILは正の極性を有し、逆向きのインダクタ電流ILは負の極性を有する。
【0022】
電源IC2の内部構成について説明する。電源IC2は、出力段回路MMと、エラーアンプ11と、位相補償回路12と、スロープ電圧生成回路13と、コンパレータ14と、クロック信号生成回路15と、ロジック回路16と、駆動回路17と、逆流検出回路18と、を備える。
【0023】
出力段回路MMは、Nチャネル型のMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field effect transistor)として構成されたトランジスタM1及びM2を備える。トランジスタM1及びM2は、入力端子INとグランド端子GND(換言すればグランド)との間に直列接続された一対のスイッチング素子であり、それらがスイッチング駆動されることで入力電圧VINがスイッチングされてスイッチ端子SWに矩形波状のスイッチ電圧VSWが現れる。トランジスタM1はトランジスタM2よりも高電位側に設けられる。換言すれば、トランジスタM2はトランジスタM1よりも低電位側に設けられる。具体的には、トランジスタM1のドレインは入力電圧VINの印加端である入力端子INに接続されて、入力電圧VINの供給を受ける。トランジスタM1のソース及びトランジスタM2のドレインはスイッチ端子SWに共通接続される。トランジスタM2のソースはグランドに接続される。但し、トランジスタM2のソースとグランドとの間に電流検出用の抵抗が挿入される場合もある。
【0024】
トランジスタM1は出力トランジスタとして機能し、トランジスタM2は同期整流トランジスタとして機能する。以下、適宜、トランジスタM1を出力トランジスタと称し、トランジスタM2を同期整流トランジスタM2と称する。出力インダクタL0及び出力コンデンサC0は、スイッチ端子SWに現れる矩形波状のスイッチ電圧VSWを整流及び平滑化して出力電圧VOUTを生成する整流平滑回路3を構成する。帰還抵抗R1及びR2は出力電圧VOUTを分圧することで出力電圧VOUTに応じた帰還電圧VFBを生成する帰還電圧生成回路4を構成する。帰還抵抗R1及びR2間の接続ノードが帰還端子FBに接続されることで帰還電圧VFBが帰還端子FBに入力される。
【0025】
トランジスタM1、M2のゲートには、駆動信号として夫々ゲート信号G1、G2が供給され、トランジスタM1及びM2はゲート信号G1及びG2に応じてオン、オフされる。ゲート信号G1がハイレベルであるとき、トランジスタM1はオン状態となり、ゲート信号G1がローレベルであるとき、トランジスタM1はオフ状態となる。同様に、ゲート信号G2がハイレベルであるとき、トランジスタM2はオン状態となり、ゲート信号G2がローレベルであるとき、トランジスタM2はオフ状態となる。基本的には、トランジスタM1及びM2が交互にオン、オフされるが、トランジスタM1及びM2が共にオフ状態に維持されることもある。即ち、出力段回路MMの状態は、出力ハイ状態と、出力ロー状態と、Hi-Z状態の何れかとなる。Hi-Z状態を出力オフ状態と称することもできる。出力ハイ状態では、トランジスタM1、M2が夫々、オン状態、オフ状態である。出力ロー状態では、トランジスタM1、M2が夫々、オフ状態、オン状態である。Hi-Z状態では、トランジスタM1及びM2が共にオフ状態である。トランジスタM1及びM2が共にオン状態とされることは無い。
【0026】
電源IC2は、帰還電圧VFBに基づきゲート信号G1及びG2のレベル制御を通じてトランジスタM1及びM2の夫々のオン/オフ状態を制御し、これによって出力端子OUTに帰還電圧VFBに応じた出力電圧VOUTを発生させる。
【0027】
尚、特に図示しないが、電源IC2には入力電圧VINに基づき内部電源電圧を生成する内部電源回路が設けられており、電源IC2内の各回路は内部電源電圧を元に駆動する。また、ゲート信号G2はグランド電位を基準とする信号であるのに対し、ゲート信号G1はスイッチ端子SWの電位を基準とする信号である。ローレベルのゲート信号G1はスイッチ端子SWの電位を有し、ハイレベルのゲート信号G1はスイッチ端子SWの電位から見て所定電圧だけ高い。ここにおける所定電圧はトランジスタM1のゲート閾電圧よりも大きい。周知のブートストラップ回路(不図示)を用いて、ゲート信号G1を生成するための昇圧電源を生成できる。
【0028】
エラーアンプ11は、電流出力型のトランスコンダクタンスアンプである。エラーアンプ11は、反転入力端子、非反転入力端子及び出力端子を備える。エラーアンプ11の反転入力端子は帰還端子FBに接続されて帰還電圧VFBを受ける。エラーアンプ11の非反転入力端子には所定の基準電圧VREFが供給される。基準電圧VREFは、正の所定電圧値を有する直流電圧であり、電源IC2内の図示されない基準電圧生成回路にて生成される。エラーアンプ11の出力端子は配線WR11に接続される。
【0029】
エラーアンプ11は、帰還電圧VFB及び基準電圧VREF間の差分に応じた電流信号I11を自身の出力端子から出力することで、帰還電圧VFB及び基準電圧VREF間の差分に応じた誤差電圧VCMPを配線WR11に発生させる。電流信号I11による電荷は配線WR11に対して入出力される。具体的には、エラーアンプ11は、帰還電圧VFBが基準電圧VREFよりも低いときには配線WR11の電位が上がるようエラーアンプ11から配線WR11に向けて電流信号I11による電流を出力し、帰還電圧VFBが基準電圧VREFよりも高いときには配線WR11の電位が下がるよう配線WR11からエラーアンプ11に向けて電流信号I11による電流を引き込む。帰還電圧VFB及び基準電圧VREF間の差分の絶対値が増大するにつれて、電流信号I11による電流の大きさも増大する。
【0030】
尚、電源IC2の起動時において、0Vから基準電圧VREFを超える電圧に向けて緩やかに上昇するソフトスタート電圧が電源IC2内で生成されて良い。この場合、エラーアンプ11は、基準電圧VREFとソフトスタート電圧の内、低い方の電圧を帰還電圧VFBと比較して比較結果に基づき電流信号I11を生成する。但し、本実施形態では、ソフトスタート電圧が基準電圧VREFよりも高くなった後の状態を考えるものとし、以下、ソフトスタート電圧の存在を無視する。
【0031】
位相補償回路12は、配線WR11とグランドとの間に設けられ、電流信号I11の入力を受けて誤差電圧VCMPの位相を補償する。位相補償回路12は抵抗12a及びコンデンサ12bの直列回路を有する。具体的には抵抗12aの一端が配線WR11に接続され、抵抗12aの他端はコンデンサ12bの一端に接続され、コンデンサ12bの他端はグランドに接続される。抵抗12aの抵抗値及びコンデンサ12bの静電容量値を適切に設定することにより誤差電圧VCMPの位相を補償して出力帰還ループの発振を防ぐことができる。
【0032】
スロープ電圧生成回路13はスロープ電圧VSLPを生成及び出力する。スロープ電圧生成回路13の内部構成及びスロープ電圧VSLPの特性については後述される。
【0033】
コンパレータ14は、電圧V1を受ける反転入力端子と、電圧V2を受ける非反転入力端子と、出力端子と、を備える。電圧V1は第1比較電圧であり、電圧V2は第2比較電圧である。コンパレータ14は、電圧V1及びV2を比較して、それらの比較結果を示す信号S2(以下、比較結果信号S2と称する)を自身の出力端子から出力する。比較結果信号S2はハイレベル又はローレベルの信号レベルをとる二値信号である。コンパレータ14は、“V2>V1”の成立時において(即ち電圧V2が電圧V1よりも高いときには)ハイレベルの比較結果信号S2を出力し、“V2<V1”の成立時において(即ち電圧V1が電圧V2よりも高いときには)ローレベルの比較結果信号S2を出力する。“V2=V1”の成立時において、比較結果信号S2はハイレベル又はローレベルとなる。
【0034】
電源IC2において誤差電圧VCMPが電圧V1として機能する。つまり、コンパレータ14の反転入力端子は配線WR11に接続されて誤差電圧VCMPを電圧V1として受ける。電源IC2においてスロープ電圧VSLPが電圧V2として機能する。つまり、コンパレータ14の非反転入力端子はスロープ電圧VSLPを電圧V2として受ける。但し、スロープ電圧VSLPとインダクタ電流ILに応じた電圧との和電圧が電圧V2として用いられることもある。以下では、特に記述無き限り、スロープ電圧VSLPそのものが電圧V2であると考える。尚、スロープ電圧生成回路13に比較結果信号S2が入力される。
【0035】
クロック信号生成回路15は、所定の周波数f
PWMを有するクロック信号S1を生成及び出力する。
図3にクロック信号S1の波形を示す。クロック信号S1は周波数f
PWMにてパルスが生じる信号である。即ち、クロック信号S1の周期ごとに微小時間だけハイレベルとなるパルスがクロック信号S1に生じる。クロック信号S1の1周期の長さは周波数f
PWMの逆数である。周波数f
PWMの逆数の間隔でクロック信号S1のレベルがローレベルからハイレベルに遷移し、周波数f
PWMの逆数の間隔でクロック信号S1のレベルがハイレベルからローレベルに遷移する。以下、周波数f
PWMの逆数をPWM周期と称する。
【0036】
ロジック回路16は、クロック信号S1及び比較結果信号S2に基づき制御信号S3を生成及び出力する。制御信号S3はハイレベル又はローレベルの信号レベルをとる二値信号である。
図4を参照して信号S1~S3間の関係を説明する。ロジック回路16は、比較結果信号S2及び制御信号S3がローレベルであるときにクロック信号S1のダウンエッジが生じると、クロック信号S1のダウンエッジに同期して制御信号S3のレベルをローレベルからハイレベルに切り替える。その後、比較結果信号S2にアップエッジが生じると、ロジック回路16は比較結果信号S2のアップエッジに同期して制御信号S3のレベルをハイレベルからローレベルに切り替える。
【0037】
駆動回路17は、制御信号S3に応じたゲート信号G1及びG2を夫々トランジスタM1及びM2のゲートに供給することで、トランジスタM1及びM2を個別にオン又はオフとする。駆動回路17は、逆流検出信号ZXがローレベルであるという前提の下、制御信号S3のハイレベル期間においてゲート信号G1をハイレベルとし且つゲート信号G2をローレベルとすることで出力段回路MMは出力ハイ状態とし、制御信号S3のローレベル期間においてゲート信号G1をローレベルとし且つゲート信号G2をハイレベルとすることで出力段回路MMを出力ロー状態とする。駆動回路17は、出力段回路MMを出力ロー状態に制御しているときに、逆流検出信号ZXがローレベルからハイレベルに切り替わると出力段回路MMの状態を出力ロー状態からHi-Z状態(出力オフ状態)に切り替え、次回に制御信号S3がハイレベルに切り替わるまで出力段回路MMをHi-Z状態に保つ。
【0038】
ロジック回路16及び駆動回路17により、クロック信号S1及び比較結果信号S2に基づいて出力段回路MMを制御する駆動制御回路CDが構成される。
【0039】
逆流検出回路18は、スイッチ端子SWに接続され、スイッチ電圧VSWに基づいてインダクタ電流ILの逆流を検出し、その検出結果を示す逆流検出信号ZXを生成及び出力する。逆流検出信号ZXをハイレベル又はローレベルの信号レベルをとる二値信号である。インダクタ電流ILの逆流とは、出力段回路MMが出力ロー状態であるときに出力インダクタL0からスイッチ端子SW及びトランジスタM2を通じてグランドに向かう向きにインダクタ電流ILが流れることを指す。逆流検出回路18は、原則として逆流検出信号ZXをローレベルとし、インダクタ電流ILの逆流が検出された時点で逆流検出信号ZXのレベルをハイレベルに切り替えてハイレベルにてラッチする。その後、逆流検出回路18は、制御信号S3のアップエッジ又はゲート信号G1のアップエッジを契機に当該ラッチを解除して、逆流検出信号ZXのレベルをローレベルに戻す。逆流検出回路18は、例えば、出力段回路MMが出力ロー状態とされる期間中においてスイッチ電圧VSWの極性の負から正への切り替わりを監視し、当該切り替わりが検出されたとき、インダクタ電流ILの逆流が発生したと判断できる。インダクタ電流ILの逆流が検出されたときに出力段回路MMを出力ロー状態からHi-Z状態に切り替えることで当該逆流を遮断する動作を、以下、逆流遮断動作と称する。
【0040】
出力段回路MMの状態が出力ハイ状態であるとき、入力端子INから出力トランジスタM1のチャネル及びスイッチ端子SWを通じインダクタ電流ILが出力インダクタL0に供給される。その後、出力段回路MMの状態を出力ロー状態に切り替えることで、グランド端子GNDから同期整流トランジスタM2のチャネル及びスイッチ端子SWを通じインダクタ電流ILが出力インダクタL0に供給される。出力段回路MMを交互に出力ハイ状態及び出力ロー状態間で切り替えることにより、入力電圧VINから出力電圧VOUTを生成できる。
【0041】
[第1PWM制御(電流連続モード)]
図5を参照して、スイッチング電源装置1及び電源IC2にて行うことのできる第1PWM制御を説明する。
図5は第1PWM制御のタイミングチャートである。PWMはパルス幅変調(Pulse Width Modulation)の略称である。第1PWM制御は電流連続モードにて行われるPWM制御であって、逆流遮断動作を伴わないPWM制御である。第1PWM制御では、トランジスタM1及びM2が交互にオン、オフとされるスイッチング動作が周期的に行われ、スイッチング動作の周期(スイッチング周期)はPWM周期と一致する(後述の第2PWM周期についても同様)。電流連続モードでは、スイッチ端子SWから出力端子OUTに向けて常にインダクタ電流I
Lが流れる。出力電流I
OUTが十分に大きな電流値に維持されるとき、電流連続モードによる第1PWM制御が継続実行される。
【0042】
第1PWM制御において制御信号S3は周波数f
PWMを有するパルス幅変調信号である。故に、第1PWM制御において、トランジスタM1及びM2が周波数f
PWMにてスイッチング駆動され、結果、スイッチ電圧V
SWは周波数f
PWMを有する。第1PWM制御において、各周期における制御信号S3のオン期間の長さが調整されることで、出力電圧V
OUTが目標電圧V
TG(
図5において不図示)にて安定化する。目標電圧V
TGは、出力電圧V
OUT及び帰還電圧V
FB間の比と基準電圧V
REFとで定まる。尚、
図5に示される第1オフセット電圧V
OST1及び第2オフセット電圧V
OST2はスロープ電圧生成回路13にて生成される。
図5の例では、第1PWM制御が行われている期間において、オフセット電圧V
OST1及びV
OST2が常に誤差電圧V
CMPよりも低いことが想定されている。ここで“V
OST1<V
OST2”が成立する。尚、第1オフセット電圧V
OST1は実際には変動するが、
図5では第1オフセット電圧V
OST1が一定であるかのように示されている(後述の
図6~
図9においても同様)。
【0043】
電流連続モードにおいて逆流検出信号ZXはローレベルに維持される。タイミングtA0において比較結果信号S2及び制御信号S3がローレベルである。タイミングtA0の後のタイミングtA1においてクロック信号S1にダウンエッジが生じる。クロック信号S1のダウンエッジを契機に制御信号S3にアップエッジが生じることで出力段回路MMが出力ロー状態から出力ハイ状態に切り替わる。出力段回路MMが出力ハイ状態に維持される期間において(即ち出力トランジスタM1のオン期間において)インダクタ電流ILが増大してゆく。電流連続モードでは、出力段回路MMが出力ハイ状態に維持される期間において、“IL>0”の状態からインダクタ電流ILが増大してゆく。
【0044】
一方、スロープ電圧生成回路13は、出力トランジスタM1のオン期間においてスロープ電圧VSLPを第1オフセット電圧VOST1から入力電圧VINに応じた傾きで単調上昇させる。その結果、タイミングtA1よりも後のタイミングtA2において、スロープ電圧VSLPが誤差電圧VCMPに達する。詳細には、タイミングtA2において“VSLP<VCMP”の成立状態から“VSLP>VCMP”の成立状態に切り替わる。この切り替わりに同期して比較結果信号S2にアップエッジが生じる。尚、タイミングtA1からタイミングtA2の直前までにおいて“VSLP<VCMP”が継続的に成立している。
【0045】
タイミングt
A2での比較結果信号S2のアップエッジを契機に制御信号S3にダウンエッジが生じることで出力段回路MMが出力ハイ状態から出力ロー状態に切り替わる。また、スロープ電圧生成回路13は、比較結果信号S2のアップエッジを契機にスロープ電圧V
SLPを第2オフセット電圧V
OST2に設定する。
図5の例において“V
OST2<V
CMP”である。このため、タイミングt
A2の後、比較結果信号S2のレベルは速やかにローレベルに戻る。出力段回路MMが出力ロー状態に維持される期間において(即ち同期整流トランジスタM2のオン期間において)インダクタ電流I
Lが減少してゆく。その後、タイミングt
A1からPWM周期分の時間(即ち周波数f
PWMの逆数分の時間)が経過したタイミングt
A11において、クロック信号S1に再びダウンエッジが生じる。これにより、クロック信号S1のダウンエッジを契機とする動作が繰り返される。
【0046】
図5に示す第1PWM制御では、出力トランジスタM1のオフ期間においてスロープ電圧V
SLPが第2オフセット電圧V
OST2に固定される。但し、第1PWM制御が行われるとき、出力トランジスタM1のオフ期間の全部又は一部において、スロープ電圧V
SLPを第1オフセット電圧V
OST1に設定しても良い。
【0047】
図6に第1PWM制御の他の例を示す。
図6に示す第1PWM制御では、出力トランジスタM1のオフ期間の全部において、スロープ電圧V
SLPに第1オフセット電圧V
OST1が設定されている。つまり、
図6の第1PWM制御に係るスロープ電圧生成回路13は、比較結果信号S2のアップエッジを契機にスロープ電圧V
SLPを第2オフセット電圧V
OST2ではなく第1オフセット電圧V
OST1へ急峻に低下させる。
【0048】
[第2PWM制御(電流不連続モード)]
図7を参照して、スイッチング電源装置1及び電源IC2にて行うことのできる第2PWM制御を説明する。
図7は第2PWM制御のタイミングチャートである。第2PWM制御は電流不連続モードにて行われるPWM制御であって、逆流遮断動作を伴うPWM制御である。出力電流I
OUTが比較的小さい軽負荷状態において、電流不連続モードによる第2PWM制御が実行され得る。電流不連続モードでは、スイッチ端子SWから出力端子OUTに向けてインダクタ電流I
Lが流れる期間と、インダクタ電流I
Lがゼロとなる期間と、が交互に訪れる。第1PWM制御と同様に、第2PWM制御において制御信号S3は周波数f
PWMを有するパルス幅変調信号である。故に、第2PWM制御において、トランジスタM1及びM2が周波数f
PWMにてスイッチング駆動され、結果、スイッチ電圧V
SWは周波数f
PWMを有する。
図7の例では、第2PWM制御が行われている期間において、オフセット電圧V
OST1及びV
OST2が常に誤差電圧V
CMPよりも低いことが想定されている。ここで“V
OST1<V
OST2”が成立する。
【0049】
タイミングtB0において比較結果信号S2及び制御信号S3がローレベルであり且つ逆流検出信号ZXがハイレベルである。タイミングtB0の後のタイミングtB1においてクロック信号S1にダウンエッジが生じる。クロック信号S1のダウンエッジを契機に制御信号S3にアップエッジが生じる。制御信号S3のアップエッジにより、又は、それに基づくゲート信号G1のアップエッジにより、逆流検出信号ZXのレベルのハイレベルへのラッチが解除され、逆流検出信号ZXのレベルがローレベルに遷移する。また、制御信号S3のアップエッジに基づき出力段回路MMが出力ロー状態から出力ハイ状態に切り替わる。出力段回路MMが出力ハイ状態に維持される期間において(即ち出力トランジスタM1のオン期間において)インダクタ電流ILが増大してゆく。電流不連続モードにおける第2PWM制御では、出力段回路MMが出力ハイ状態に維持される期間において、インダクタ電流ILがゼロから増大してゆく。
【0050】
一方、スロープ電圧生成回路13は、出力トランジスタM1のオン期間においてスロープ電圧VSLPを第1オフセット電圧VOST1から入力電圧VINに応じた傾きで単調上昇させる。その結果、タイミングtB1よりも後のタイミングtB2において、スロープ電圧VSLPが誤差電圧VCMPに達する。詳細には、タイミングtB2において“VSLP<VCMP”の成立状態から“VSLP>VCMP”の成立状態に切り替わる。この切り替わりに同期して比較結果信号S2にアップエッジが生じる。尚、タイミングtB1からタイミングtB2の直前までにおいて“VSLP<VCMP”が継続的に成立している。
【0051】
タイミングt
B2での比較結果信号S2のアップエッジを契機に制御信号S3にダウンエッジが生じることで出力段回路MMが出力ハイ状態から出力ロー状態に切り替わる。また、スロープ電圧生成回路13は、比較結果信号S2のアップエッジを契機にスロープ電圧V
SLPを第2オフセット電圧V
OST2に設定する。
図7の例において“V
OST2<V
CMP”である。このため、タイミングt
B2の後、比較結果信号S2のレベルは速やかにローレベルに戻る。出力段回路MMが出力ロー状態に維持される期間において(即ち同期整流トランジスタM2のオン期間において)インダクタ電流I
Lが減少してゆく。
【0052】
スイッチ端子SWから出力端子OUTに向かうインダクタ電流ILの大きさがゼロにまで低下すると、出力インダクタL0の作用により、インダクタ電流ILの極性が正から負へと反転する。この反転のタイミングが、タイミングtB2より後のタイミングtB3である。タイミングtB3にて逆流検出回路18によりインダクタ電流ILの逆流が検出されることで、逆流検出信号ZXがローレベルからハイレベルに切り替わり且つハイレベルにてラッチされる。駆動回路17は、ハイレベルの逆流検出信号ZXを受けて出力段回路MMを出力ロー状態からHi-Z状態に切り替える。これにより、インダクタ電流ILの逆流が速やかに遮断されるので、軽負荷時における効率低下を抑制することができる。
【0053】
その後、タイミングtB1からPWM周期分の時間(即ち周波数fPWMの逆数分の時間)が経過したタイミングtB11において、クロック信号S1に再びダウンエッジが生じる。これにより、クロック信号S1のダウンエッジを契機とする動作が繰り返される。
【0054】
図7に示す第2PWM制御では、出力トランジスタM1のオフ期間においてスロープ電圧V
SLPが第2オフセット電圧V
OST2に固定される。但し、第2PWM制御が行われるとき、出力トランジスタM1のオフ期間の全部又は一部において、スロープ電圧V
SLPを第1オフセット電圧V
OST1に設定しても良い。
【0055】
図8に第2PWM制御の他の例を示す。
図8に示す第2PWM制御では、出力トランジスタM1のオフ期間の全部において(従って出力段回路MMの出力ロー状態及びHi-Z状態において)、スロープ電圧V
SLPに第1オフセット電圧V
OST1が設定されている。つまり、
図8の第2PWM制御に係るスロープ電圧生成回路13は、比較結果信号S2のアップエッジを契機にスロープ電圧V
SLPを第2オフセット電圧V
OST2ではなく第1オフセット電圧V
OST1へ急峻に低下させる(
図9の第2PWM制御でも同様)。
【0056】
図9に第2PWM制御の更に他の例を示す。
図9に示す第2PWM制御では、出力トランジスタM1のオフ期間の一部において、スロープ電圧V
SLPに第1オフセット電圧V
OST1が設定されている。詳細には、
図9に示す第2PWM制御では、出力段回路MMの状態が出力ロー状態であるときにおいてスロープ電圧V
SLPに第1オフセット電圧V
OST1を設定し、出力段回路MMの状態がHi-Z状態であるときにおいてスロープ電圧V
SLPに第2オフセット電圧V
OST2を設定している。
【0057】
[基本単位動作]
第1又は第2PWM制御においては、スイッチング電源装置1及び電源IC2にて基本単位動作が繰り返し実行される。基本単位動作は、クロック信号S1のダウンエッジを契機に開始される動作であって、周波数f
PWMの逆数分の時間にて実行される動作である。従って例えば、
図5又は
図6のタイミングt
A1からタイミングt
A11の直前までの動作は、第1PWM制御に係る基本単位動作であり、
図7、
図8又は
図9のタイミングt
B1からタイミングt
B11の直前までの動作は、第2PWM制御に係る基本単位動作である。
【0058】
基本単位動作において、制御駆動回路CDは、クロック信号S1のレベルにおけるハイレベルからローレベルへの変化を契機に、出力段回路MMを出力ロー状態又はHi-Z状態(出力オフ状態)から出力ハイ状態に切り替える。その後、制御駆動回路CDは、電圧V2(スロープ電圧VSLP)が電圧V1(誤差電圧VCMP)に達したことを示す比較結果信号S2の入力を契機に、即ち、比較結果信号S2のアップエッジを契機に出力段回路MMを出力ハイ状態から出力ロー状態に切り替える。更にその後、制御駆動回路CDは、インダクタ電流ILの逆流が検出されたならば出力段回路MMの状態を出力ロー状態からHi-Z状態(出力オフ状態)に切り替える。この切り替えは、電流不連続モードに係る第2PWM制御では行われるが、電流連続モードに係る第1PWM制御では行われない。
【0059】
[スキップ制御]
出力電流IOUTが相当に小さいときにおいては、出力段回路MMを一度出力ハイ状態に設定しただけで長時間にわたり、出力電圧VOUTが目標電圧VTG近辺にて維持される。これを考慮し、制御駆動回路CDは以下のスキップ制御を行うことができる。スキップ制御により軽負荷時の効率改善が見込める。
【0060】
図10を参照してスキップ制御を説明する。
図10はスキップ制御のタイミングチャートであって、スキップ制御が行われる際の各種信号波形が示されている。尚、
図5~
図9の例では、誤差電圧V
CMPが略一定に維持されることが想定されているが、実際には、誤差電圧V
CMPは出力電圧V
OUTの変動に伴って変動しうる。また、
図10の例では、図示の煩雑化防止及び説明の便宜上、出力段回路MMの出力ロー状態及びHi-Z状態においてスロープ電圧V
SLPが所定のリセットレベルに維持されると仮定されている。
【0061】
図10の例では、タイミングt
C1においてクロック信号S1にダウンエッジが生じ、クロック信号S1のダウンエッジを契機に制御信号S3にアップエッジが生じる。タイミングt
C1では“V
SLP<V
CMP”であるとする。また、タイミングt
C1直前において、逆流検出信号ZXはハイレベルにラッチされており、出力段回路MMの状態はHi-Z状態であるとする。タイミングt
C1での制御信号S3のアップエッジにより、又は、それに基づくゲート信号G1のアップエッジにより、逆流検出信号ZXのレベルのハイレベルへのラッチが解除され、逆流検出信号ZXのレベルがローレベルに遷移する。また、制御信号S3のアップエッジに基づき出力段回路MMがHi-Z状態から出力ハイ状態に切り替わる。出力段回路MMが出力ハイ状態に維持される期間において(即ち出力トランジスタM1のオン期間において)インダクタ電流I
Lが増大してゆく。スキップ制御が実行される
図10の例において、出力段回路MMが出力ハイ状態に維持される期間では、インダクタ電流I
Lがゼロから増大してゆく。
【0062】
一方、スロープ電圧生成回路13は、出力トランジスタM1のオン期間においてスロープ電圧VSLPを上述のリセットレベルから入力電圧VINに応じた傾きで単調上昇させる。その結果、タイミングtC1よりも後のタイミングtC2において、スロープ電圧VSLPが誤差電圧VCMPに達する。詳細には、タイミングtC2において“VSLP<VCMP”の成立状態から“VSLP>VCMP”の成立状態に切り替わる。この切り替わりに同期して比較結果信号S2にアップエッジが生じる。尚、タイミングtC1からタイミングtC2の直前までにおいて“VSLP<VCMP”が継続的に成立している。
【0063】
タイミングt
C2での比較結果信号S2のアップエッジを契機に制御信号S3にダウンエッジが生じることで出力段回路MMが出力ハイ状態から出力ロー状態に切り替わる。また、
図10の例においてスロープ電圧生成回路13は、比較結果信号S2のアップエッジを契機にスロープ電圧V
SLPをリセットレベルまで急峻に低下させる。このため、タイミングt
C2の後、比較結果信号S2のレベルは速やかにローレベルに戻る。出力段回路MMが出力ロー状態に維持される期間において(即ち同期整流トランジスタM2のオン期間において)インダクタ電流I
Lが減少してゆく。
【0064】
スイッチ端子SWから出力端子OUTに向かうインダクタ電流ILの大きさがゼロにまで低下すると、出力インダクタL0の作用によりインダクタ電流ILの極性が正から負へと反転する。この反転のタイミングが、タイミングtC2より後のタイミングtC3である。タイミングtC3にて逆流検出回路18によりインダクタ電流ILの逆流が検出されることで、逆流検出信号ZXがローレベルからハイレベルに切り替わり且つハイレベルにてラッチされる。駆動回路17は、ハイレベルの逆流検出信号ZXを受けて出力段回路MMを出力ロー状態からHi-Z状態に切り替える。
【0065】
他方、タイミングtC1及びtC2間において出力電圧VOUTが目標電圧VTGを超えて上昇することで、タイミングtC2の後、後述のタイミングtC11に至る前に、“VSLP<VCMP”の成立状態から“VSLP>VCMP”の成立状態に再び切り替わり、“VSLP>VCMP”の成立に基づき比較結果信号S2のレベルがハイレベルに再び遷移する。比較結果信号S2のハイレベルは後述のタイミングtC11においても継続する。
【0066】
タイミングt
C1からPWM周期分の時間(即ち周波数f
PWMの逆数分の時間)が経過したタイミングt
C11において、クロック信号S1に再びダウンエッジが生じる。ロジック回路16は、比較結果信号S2がハイレベルであるときには、クロック信号S1にダウンエッジが生じても制御信号S3にアップエッジを生じさせない。これがスキップ制御に対応する。
図10の例では、タイミングt
C11において比較結果信号S2がハイレベルであるため、ロジック回路16はタイミングt
C11でのクロック信号S1のダウンエッジを無効とし、タイミングt
C11以降も制御信号S3をローレベルに維持する。
【0067】
タイミングtC11からPWM周期分の時間(即ち周波数fPWMの逆数分の時間)が経過したタイミングtC21において、クロック信号S1に再びダウンエッジが生じる。タイミングtC2からタイミングtC21までの出力電圧VOUTの低下に連動して、タイミングtC11の後、タイミングtC21に至る前に“VSLP>VCMP”の成立状態から“VSLP<VCMP”の成立状態へと遷移しており、タイミングtC21では比較結果信号S2がローレベルであるとする。故に、ロジック回路16は、タイミングtC21でのクロック信号S1のダウンエッジを契機に制御信号S3にアップエッジを生じさせる。タイミングtC21での制御信号S3のアップエッジにより、又は、それに基づくゲート信号G1のアップエッジにより、逆流検出信号ZXのレベルのハイレベルへのラッチが解除され、逆流検出信号ZXのレベルがローレベルに遷移する。タイミングtC21における制御信号S3のアップエッジに同期して出力段回路MMがHi-Z状態から出力ハイ状態に切り替わる。出力電流IOUTが不変であるなら、タイミングtC1からタイミングtC21の直前までの動作が、タイミングtC21以降も繰り返し実行される。
【0068】
図10の例において、タイミングt
C1からタイミングt
C21の直前までの動作においてスキップ制御が実行される。スキップ制御は、インダクタ電流I
Lの逆流の検出を通じて出力段回路MMの状態をHi-Z状態に設定した後、比較結果信号S2がハイレベルとなる期間において、即ち電圧V1(誤差電圧V
CMP)が電圧V2(スロープ電圧V
SLP)よりも低い期間において、クロック信号S1に依らず出力段回路MMをHi-Z状態に維持する制御である。
【0069】
スキップ制御ではクロック信号S1におけるパルスがスキップされる。パルスのスキップとは、クロック信号S1のダウンエッジを無効として制御信号S3をローレベルに維持することを指す。
図10の例では、パルスのスキップ数が1であるが、出力電流I
OUTに応じ、パルスのスキップ数は1以上の任意の値をとり得る。
【0070】
スキップ制御が継続的に行われる期間において、制御信号S3の1回当たりのハイレベル期間の長さが一定であれば、電源IC2にてPFM制御が実行されることになる。PFMはパルス周波数変調(Pulse Frequency Modulation)の略称である。スキップ制御が継続的に行われる期間において、制御信号S3の1回当たりのハイレベル期間の長さは変動しうるので、スキップ制御を伴うスイッチング制御を擬似PFM制御と称することもできる。
【0071】
[第1仮想動作]
ここで、第1仮想動作を説明する。第1仮想動作並びに後述の第2及び第3仮想動作は、本実施形態に係るスイッチング電源装置1の動作との対比に供される仮想動作であって、スイッチング電源装置1にて実際に実行される動作とは異なるが、説明の具体化のため、上述してきた符号等を参照しつつ、各仮想動作を説明する。
【0072】
図11は第1仮想動作に係るタイミングチャートである。
図11には、第1仮想動作におけるスイッチング電源装置1内の各信号波形が示されている。
図11の例において、タイミングt11までは出力電流I
OUTが相対的に小さく、タイミングt11を境に出力電流I
OUTが急峻に増大する。
図11の例において、タイミングt11までの各スイッチング周期ではインダクタ電流I
Lの逆流検出に伴うハイレベルの逆流検出信号ZXが現れる。第1仮想動作では、出力段回路MMの出力ロー状態及びHi-Z状態においてスロープ電圧V
SLPが所定のリセットレベルに維持される。第1仮想動作及び後述の第2仮想動作において、リセットレベルはバイアス電圧Vbのレベルに相当する。軽負荷時には出力トランジスタM1をオフにしても出力電圧V
OUTがなかなか目標電圧V
TGを下回らない。このため、第1仮想動作では、誤差電圧V
CMPが非常に低い電圧レベル(リセットレベル近傍)で変動する。
【0073】
タイミングt11を含むスイッチング周期での逆流検出の結果、タイミングt11ではトランジスタM1及びM2が共にオフとされている。従って、タイミングt11以降、次のスイッチング周期が到来するまで、比較的大きな出力電流IOUTにより出力電圧VOUTが低下してゆく。また、出力電圧VOUTの低下に伴い誤差電圧VCMPが上昇してゆく。タイミングt11の直後のスイッチング周期において、クロック信号S1のダウンエッジに同期して出力トランジスタM1がターンオンされるが、この段階における誤差電圧VCMPは、以前、リセットレベルに近い。このため、スロープ電圧VSLPが短時間で誤差電圧VCMPに達することになる。つまり、出力トランジスタM1のオン期間が理想的なオン期間よりも短くなるので、出力電圧VOUTを十分に引き上げることができない。以後、誤差電圧VCMPが上昇する過程での各スイッチング周期において、出力トランジスタM1のオン期間が増大してゆき理想的なオン期間に近づいていくものの、当該過程では出力電圧VOUTの引き上げは不十分となる。
【0074】
このように、第1仮想動作では、軽負荷時に誤差電圧VCMPがスロープ電圧VSLPのリセットレベル近傍まで低下するため、出力電流IOUTが急激に増大したときにおける応答性(負荷応答性)が悪くなる。
【0075】
[第2仮想動作]
これを考慮し、出力トランジスタM1のオフ期間の全部又は一部において(例えば逆流検出信号ZXのハイレベル期間において)、スロープ電圧V
SLPに対し出力電圧V
OUTに応じたオフセット電圧を設定することが検討される。第1仮想動作に対してオフセット電圧の設定動作を追加したものが第2仮想動作である。
図12は第2仮想動作に係るタイミングチャートである。
図12の第2仮想動作では、各スイッチング周期においてクロック信号S1のダウンエッジを契機にスロープ電圧V
SLPをリセットレベル(Vb)から入力電圧V
INに応じた傾きにて上昇させ、スロープ電圧V
SLPが誤差電圧V
CMPに達した後はスロープ電圧V
SLPを出力電圧V
OUTに応じたオフセット電圧Vostに設定して維持する。
【0076】
オフセット電圧Vostを適正に設定すれば、軽負荷時においてもスロープ電圧VSLPがリセットレベル近傍に低下せず、誤差電圧VCMPを意図的に引き上げることが可能である。結果、出力電流IOUTが急峻に増大するタイミングt11の直後において誤差電圧VCMPを理想的なレベル又はそれに近似するレベルにすることができ、タイミングt11の直後のスイッチング周期から出力トランジスタM1のオン期間を十分に稼ぐことができる。故に、負荷応答性の改善が見込める。
【0077】
ここで、オフセット電圧Vostを高めすぎるとタイミングt11以後の動作が不安定になることがある。例えば、オフセット電圧Vostを高めすぎると、タイミングt11直後のスイッチング周期において制御信号S3のハイレベル期間の長さ(以下、制御信号S3のパルス幅と称する)が理想幅よりも大きくなりすぎて、出力電圧V
OUTのオーバーシュートが生じ得る。これを考慮して、第2仮想動作では、逆流遮断動作を伴わないPWM制御(
図12の時刻t11以降のPWM制御)における誤差電圧V
CMPのレベルよりも、オフセット電圧Vostが低く設定される。
【0078】
そうすると、
図12において、タイミングt11以前の制御信号S3とタイミングt11以降の制御信号S3との比較からも理解されるよう、制御信号S3のパルス幅は、逆流遮断動作が行われる期間において(タイミングt11以前において)、そうでない期間よりも(タイミングt11以降よりも)短くなる。
図12は、タイミングt11以前においてスキップ制御が行われる様子が示されていないが、タイミングt11以前においてスキップ制御が行われる場合も同様であり、第2仮想動作を用いた場合、スキップ制御を伴う軽負荷状態において出力トランジスタM1のオン時間を長くしにくい。
【0079】
[第3仮想動作]
他方、スキップ制御を伴う軽負荷状態での効率(擬似PFM制御での効率)を改善するためには、クロック信号S1のパルスをスキップする時間(以下、スキップ時間と称され得る)を長くすることが有効である。第3仮想動作では、バーストモードが利用される。バーストモードでは、スキップ制御を伴う軽負荷状態において、クロック信号S1の1回のダウンエッジに対し連続パルスを生成して制御信号S3に含め、連続パルス中の各パルス期間において出力トランジスタM1をオンとする。
【0080】
バーストモードの利用により、クロック信号S1の1回のダウンエッジに対して出力電圧VOUTが大きく持ち上がり、比較的長い時間、出力電圧VOUTを目標電圧VTG以上に保つことができる。このため、スキップ時間を長くすることが可能となる。
【0081】
但し、バーストモードでは、連続パルスにてトランジスタM1及びM2をオン、オフするたびにゲートに対する電荷の充放電が必要となる。このため、スイッチング損失の低減効果が無い又は少ない。
【0082】
[目標及び提案]
スキップ制御を伴う軽負荷状態において、制御信号S3のパルス幅を大きくすることができれば、即ち出力トランジスタM1の1回分のオン期間を長くすることができれば、スキップ時間は長くなる。スキップ時間の増大により、軽負荷状態におけるスイッチング損失を低減することができ、結果、スイッチング電源装置1の効率向上が見込める。例えば、スキップ制御を伴う軽負荷状態において、出力電流IOUTが一定であるという仮定の下、制御信号S3のパルス幅を2倍にすることができれば、出力トランジスタM1の1回分のオン期間に対する出力端子OUTへのエネルギ伝達量は4倍になるので、スキップ時間は4倍となる。結果、上記軽負荷状態におけるスイッチング損失を1/4にまで低減することができる。
【0083】
本実施形態に係るスイッチング電源装置1では、スロープ電圧生成回路13の構成を工夫することで、軽負荷状態におけるスイッチング損失の低減を図る。
【0084】
以下、複数の実施例の中で、スイッチング電源装置1(特にスロープ電圧生成回路13)に関わる幾つかの具体的な構成例、応用技術、変形技術等を説明する。本実施形態にて上述した事項は、特に記述無き限り且つ矛盾無き限り、以下の各実施例に適用される(但し、第1~第3仮想動作を除く)。各実施例において、上述の事項と矛盾する事項がある場合には、各実施例での記載が優先されて良い。また矛盾無き限り、以下に示す複数の実施例の内、任意の実施例に記載した事項を、他の任意の実施例に適用することもできる(即ち複数の実施例の内の任意の2以上の実施例を組み合わせることも可能である)。
【0085】
<<第1実施例>>
第1実施例を説明する。
図13に第1実施例に係るスロープ電圧生成回路13_1の回路図を示す。第1実施例ではスロープ電圧生成回路13_1を
図1のスロープ電圧生成回路13として用いる。
【0086】
図13のスロープ電圧生成回路13_1は、抵抗R11、R21、R22及びR31と、コンデンサC11、C21及びC31と、スイッチSW1及びSW2と、切り替え回路230と、スロープ制御回路240と、を備える。
【0087】
抵抗R11、コンデンサC11は、夫々、第1オフセット用抵抗、第1オフセット用コンデンサである。抵抗R11及びコンデンサC11により第1オフセット電圧生成回路210が構成される。コンデンサC11の両端間に生じる電圧が第1オフセット電圧VOST1である(VOST1≧0)。抵抗R21は第2オフセット用抵抗である。抵抗R21及びR22並びにコンデンサC21により第2オフセット電圧生成回路220が構成される。抵抗R21の両端間に生じる電圧が第2オフセット電圧VOST2である(VOST2>0)。常に“VOST2>VOST1”が成立するようスロープ電圧生成回路13_1が構成されると良い。コンデンサC31はスロープ用コンデンサである。
【0088】
図13の各回路素子の接続関係を説明する。抵抗R31の一端は入力電圧V
INが加わるノードND5に接続され、抵抗R31の他端はスイッチSW1の一端に接続される。スイッチSW1の他端はノードND1に接続される。コンデンサC31の一端はノードND1に接続され、コンデンサC31の他端はノードND2に接続される。スイッチSW2はコンデンサC31に並列接続される。従って、スイッチSW2の一端はノードND1に接続され、スイッチSW2の他端はノードND2に接続される。コンデンサC11の一端はノードND2に接続され、コンデンサC11の他端はグランドに接続される。抵抗R11はコンデンサC11に並列接続される。従って、抵抗R11の一端はノードND2に接続され、抵抗R11の他端はグランドに接続される。ノードND2に第1オフセット電圧V
OST1が加わる。
【0089】
抵抗R22の一端は出力電圧VOUTが加わるノードND6に接続され、抵抗R22の他端はノードND3に接続される。抵抗R21の一端はノードND3に接続され、抵抗R21の他端はグランドに接続される。コンデンサC21は抵抗R21に並列接続される。従って、コンデンサC21の一端はノードND3に接続され、コンデンサC21の他端はグランドに接続される。ノードND3に第2オフセット電圧VOST2が加わる。即ち、第2オフセット電圧生成回路220では、出力電圧VOUTに応じた電流が抵抗R21に供給されることで抵抗R21に第2オフセット電圧VOST2が生じる。
【0090】
切り替え回路230は、ノードND1、ND3及びND4に接続され、ノードND1及びND3の何れか一方をノードND4に接続する。ノードND4における電圧がスロープ電圧VSLPである。即ち、切り替え回路230は、ノードND1における電圧又はノードND3における電圧(従って第2オフセット電圧VOST2)をスロープ電圧VSLPとして切り替え出力する。切り替え回路230をセレクタと称することもできる。
【0091】
スロープ制御回路240は、制御信号S3及び逆流検出信号ZXに基づき、スイッチSW1及びSW2のオン、オフを制御すると共に切り替え回路230の状態を制御する。尚、上述したように、制御信号S3のハイレベル期間は出力段回路MMが出力ハイ状態とされる期間(出力トランジスタM1のオン期間)に相当し、制御信号S3のローレベル期間は出力段回路MMが出力ロー状態又はHi-Z状態とされる期間(出力トランジスタM1のオフ期間)に相当する。
【0092】
図14に示す如く、スロープ制御回路240は、制御信号S3のハイレベル期間において、スイッチSW1をオン状態とする一方でスイッチSW2をオフ状態とし、且つ、切り替え回路230によりノードND1をノードND4に接続させる。このため、制御信号S3のハイレベル期間においてはノードND1の電圧がスロープ電圧V
SLPとして生成及び出力される。尚、制御信号S3のハイレベル期間においては常に逆流検出信号ZXはローレベルである。
【0093】
制御信号S3のハイレベル期間(出力トランジスタM1のオン期間)では、スイッチSW1のオン及びスイッチSW2のオフにより、ノードND5からノードND1に向けて入力電圧VINに応じた電流(スロープ用電流)が供給されることでコンデンサC31及びC11が充電される。より具体的には、制御信号S3のハイレベル期間では、ノードND5からノードND1に向けて入力電圧VINに応じた電流(スロープ用電流)がコンデンサC31に対する充電電流として流れてノードND1の電位が上昇してゆくと共に、コンデンサC31を通じてコンデンサC11にも充電電流が流れるためノードND2の電位(即ち第1オフセット電圧VOST1)も上昇してゆく。
【0094】
制御信号S3のローレベル期間において、スロープ制御回路240は以下の第1制御パターンにて、スイッチSW1及びSW2並びに切り替え回路230の状態を制御して良い。
図15は第1制御パターンに対応する。
【0095】
図15に示す如く、第1制御パターンに係るスロープ制御回路240は、制御信号S3のローレベル期間において、逆流検出信号ZXのレベルに依らず、スイッチSW1をオフ状態とする一方でスイッチSW2をオン状態とし、且つ、切り替え回路230によりノードND3をノードND4に接続させる。このため、第1制御パターンにおける制御信号S3のローレベル期間では、逆流検出信号ZXのレベルに依らず、ノードND3の電圧(即ち第2オフセット電圧V
OST2)がスロープ電圧V
SLPとして生成及び出力される。また、スイッチSW1のオフによりノードND5からノードND1に向けた電流(スロープ用電流)の供給が遮断される。スイッチSW2のオンによりコンデンサC31の蓄積電荷が放電される。
【0096】
或いは、制御信号S3のローレベル期間において、スロープ制御回路240は以下の第2制御パターンにて、スイッチSW1及びSW2並びに切り替え回路230の状態を制御して良い。
図16及び
図17は第2制御パターンに対応する。
【0097】
第2制御パターンに係るスロープ制御回路240は、制御信号S3のローレベル期間において、
図16に示す如く逆流検出信号ZXがローレベルであれば、スイッチSW1をオフ状態とする一方でスイッチSW2をオン状態とし、且つ、切り替え回路230によりノードND3をノードND4に接続させる。第2制御パターンに係るスロープ制御回路240は、制御信号S3のローレベル期間において、
図17に示す如く逆流検出信号ZXがハイレベルであれば、スイッチSW1及びSW2を共にオフ状態とし、且つ、切り替え回路230によりノードND3をノードND4に接続させる。このため、第2制御パターンにおける制御信号S3のローレベル期間では、逆流検出信号ZXのレベルに依らず、ノードND3の電圧(即ち第2オフセット電圧V
OST2)がスロープ電圧V
SLPとして生成及び出力される。また、スイッチSW1のオフによりノードND5からノードND1に向けた電流(スロープ用電流)の供給が遮断される。スイッチSW2のオン期間ではコンデンサC31の蓄積電荷が放電される。
【0098】
或いは、制御信号S3のローレベル期間において、スロープ制御回路240は以下の第3制御パターンにて、スイッチSW1及びSW2並びに切り替え回路230の状態を制御して良い。
図18及び
図19は第3制御パターンに対応する。
【0099】
第3制御パターンに係るスロープ制御回路240は、制御信号S3のローレベル期間において、
図18に示す如く逆流検出信号ZXがローレベルであれば、スイッチSW1をオフ状態とする一方でスイッチSW2をオン状態とし、且つ、切り替え回路230によりノードND1をノードND4に接続させる。第3制御パターンに係るスロープ制御回路240は、制御信号S3のローレベル期間において、
図19に示す如く逆流検出信号ZXがハイレベルであれば、スイッチSW1及びSW2を共にオフ状態とし、且つ、切り替え回路230によりノードND3をノードND4に接続させる。このため、第3制御パターンにおける制御信号S3のローレベル期間では、逆流検出信号ZXがローレベルであればノードND1の電圧がスロープ電圧V
SLPとして生成及び出力され、逆流検出信号ZXがハイレベルであればノードND3の電圧(即ち第2オフセット電圧V
OST2)がスロープ電圧V
SLPとして生成及び出力される。また、スイッチSW1のオフによりノードND5からノードND1に向けた電流(スロープ用電流)の供給が遮断される。スイッチSW2のオン期間ではコンデンサC31の蓄積電荷が放電される。第3制御パターンにおいて、制御信号S3及び逆流検出信号ZXが共にローレベルであるとき、ノードND1の電圧は第1オフセット電圧V
OST1に等しい。
【0100】
尚、第3制御パターンにおいて、制御信号S3がローレベルであれば逆流検出信号ZXのレベルに依らずスイッチSW2がオンに維持されるようにしても良い。
【0101】
制御信号S3のローレベル期間において、第1~第3制御パターンの何れか1つが固定的に使用されるようにして良い。或いは、PWM制御(第1又は第2PWM制御)が行われている期間においては第3制御パターンを使用し、スキップ制御が行われている期間においては第1又は第2制御パターンを使用するようにしても良い。
【0102】
第1~第3制御パターンの何れが使用されたとしても、出力トランジスタM1のオフ期間の少なくとも一部においてスイッチSW2がオンとされることでコンデンサC31の蓄積電荷が放電される。
【0103】
図20に第1オフセット電圧V
OST1の波形例を示す。制御信号S3のハイレベル期間(即ち出力トランジスタM1のオン期間)では、スイッチSW1のオンにより(
図14参照)、ノードND5からの入力電圧V
INに応じた電流がコンデンサC31を通じてコンデンサC11に供給されることで、第1オフセット電圧V
OST1が上昇してゆく。そして、第1~第3制御パターンの何れが使用されたとしても、制御信号S3のローレベル期間(即ち出力トランジスタM1のオフ期間)ではスイッチSW1がオフとされるため、スイッチSW1を通じたコンデンサC11への充電電流の供給が停止される一方でコンデンサC11の蓄積電荷が抵抗R11を通じて放電され、結果、第1オフセット電圧V
OST1が低下してゆく。出力電流I
OUTが一定であれば、第1オフセット電圧V
OST1の最小値は一定レベルに保たれ、当該最小値をボトム値V
OST1_BTMと称する。
【0104】
以上の説明から明らかなように、第1オフセット電圧VOST1は、出力トランジスタM1のオン期間と出力トランジスタM1のオフ期間との比率に応じた電圧となる。出力トランジスタM1のオフ期間に対する出力トランジスタM1のオン期間の比率を、記号“RTON”で表す。第1オフセット電圧VOST1及びボトム値VOST1_BTMは、比率RTONの増大により高くなり、比率RTONの低下により低くなる。但し、第1オフセット電圧VOST1及びボトム値VOST1_BTMには下限があり、当該下限は、ここでは0V(ボルト)である。
【0105】
図20にはスロープ電圧V
SLPの波形も示されている。尚、
図20におけるスロープ電圧V
SLPの波形は、第1又は第2制御パターンが使用されたときの波形である。第1~第3制御パターンの何れが使用されたとしても、制御信号S3にアップエッジが生じる直前ではコンデンサC31に電荷は蓄積されていないので、ノードND1の電圧は第1オフセット電圧V
OST1に等しい。そして、制御信号S3のアップエッジを契機にスイッチSW1及びSW2並びに切り替え回路230の状態が
図14の状態に設定されることで、スロープ電圧V
SLPは第1オフセット電圧V
OST1(詳細にはボトム値V
OST1_BTM)から入力電圧V
INに応じた傾きで上昇してゆく。つまり、スロープ電圧生成回路13_1は、出力トランジスタM1のオン期間においてスロープ電圧V
SLPを第1オフセット電圧V
OST1(詳細にはボトム値V
OST1_BTM)から入力電圧V
INに応じた傾きで上昇させてゆく(後述の他の実施例に係るスロープ電圧生成回路についても同様)。
【0106】
その後、制御信号S3にダウンエッジが生じると、切り替え回路230によりノードND4にノードND3に接続されることで(
図15又は
図16参照)、
図20に示す如く、スロープ電圧V
SLPは第2オフセット電圧V
OST2に設定され、制御信号S3に次回のアップエッジが生じるまで第2オフセット電圧V
OST2に維持される。
【0107】
上述したように
図20は第1又は第2制御パターンの使用を前提としている。仮に、第3制御パターンが使用されるならば(
図18及び
図19参照)、制御信号S3のダウンエッジを契機にノードND1及びND4間の導通を維持しつつスイッチSW2がターンオンされるので、
図21に示す如く、スロープ電圧V
SLPは急峻に第1オフセット電圧V
OST1まで低下し、その後、逆流検出信号ZXのアップエッジを契機にスロープ電圧V
SLPは第2オフセット電圧V
OST2に設定される(
図21では逆流遮断動作が行われる軽負荷状態を想定)。以後は、制御信号S3に次回のアップエッジが生じるまでスロープ電圧V
SLPは第2オフセット電圧V
OST2に維持される。
【0108】
このように、スロープ電圧生成回路13_1は、出力トランジスタM1のオフ期間の内、少なくとも一部の期間において、スロープ電圧VSLPを第2オフセット電圧VOST2に設定する(後述の他の実施例に係るスロープ電圧生成回路についても同様)。
【0109】
図22は第1実施例に係る動作を説明するためのタイミングチャートであって、スキップ制御が行われる際の各種信号波形が示されている。時間の経過につれて、タイミングt
D1、t
D2、t
D3、t
D4、t
D5、t
D6、t
D7が、この順番で訪れるものとする。
【0110】
図22の例では、タイミングt
D1においてクロック信号S1にダウンエッジが生じ、クロック信号S1のダウンエッジを契機に制御信号S3にアップエッジが生じる。タイミングt
D1では“V
SLP<V
CMP”であるとする。また、タイミングt
D1直前において、逆流検出信号ZXはハイレベルにラッチされており、出力段回路MMの状態はHi-Z状態であるとする。タイミングt
D1での制御信号S3のアップエッジにより、又は、それに基づくゲート信号G1のアップエッジにより、逆流検出信号ZXのレベルのハイレベルへのラッチが解除され、逆流検出信号ZXのレベルがローレベルに遷移する。また、制御信号S3のアップエッジに基づき出力段回路MMがHi-Z状態から出力ハイ状態に切り替わる。出力段回路MMが出力ハイ状態に維持される期間において(即ち出力トランジスタM1のオン期間において)インダクタ電流I
Lが増大してゆく。スキップ制御が実行される
図22の例において、出力段回路MMが出力ハイ状態に維持される期間では、インダクタ電流I
Lがゼロから増大してゆく。
【0111】
一方、スロープ電圧生成回路13_1は、タイミングtD1を起点にスロープ電圧VSLPを第1オフセット電圧VOST1(詳細にはボトム値VOST1_BTM)から入力電圧VINに応じた傾きで単調上昇させる。その結果、タイミングtD1よりも後のタイミングtD2において、スロープ電圧VSLPが誤差電圧VCMPに達する。詳細には、タイミングtD2において“VSLP<VCMP”の成立状態から“VSLP>VCMP”の成立状態に切り替わる。この切り替わりに同期して比較結果信号S2にアップエッジが生じる。
【0112】
タイミングt
D2での比較結果信号S2のアップエッジを契機に制御信号S3にダウンエッジが生じることで出力段回路MMが出力ハイ状態から出力ロー状態に切り替わる。
図22では、第1又は第2制御パターン(
図15~
図17)の使用が前提されている。このため、タイミングt
D2にてノードND4の接続先がノードND1からノードND3に切り替えられることで、スロープ電圧V
SLPに対して第2オフセット電圧V
OST2が設定される。スロープ電圧V
SLPは、次回、制御信号S3にアップエッジが生じるタイミングt
D7まで第2オフセット電圧V
OST2にて維持される。
【0113】
タイミングtD2以後、出力段回路MMが出力ロー状態に維持される期間において(即ち同期整流トランジスタM2のオン期間において)インダクタ電流ILが減少してゆく。インダクタ電流ILの大きさがゼロにまで低下すると、出力インダクタL0の作用によりインダクタ電流ILの極性が正から負へと反転する。この反転のタイミングが、タイミングtD2より後のタイミングtD3である。タイミングtD3にて逆流検出回路18によりインダクタ電流ILの逆流が検出されることで、逆流検出信号ZXがローレベルからハイレベルに切り替わり且つハイレベルにてラッチされる。駆動回路17は、ハイレベルの逆流検出信号ZXを受けて出力段回路MMを出力ロー状態からHi-Z状態に切り替える。
【0114】
他方、タイミングt
D1及びt
D2間において出力電圧V
OUTが目標電圧V
TGを超えて上昇することで、タイミングt
D2の後、暫くの値、“V
SLP>V
CMP”が成立する。タイミングt
D2の後、出力電圧V
OUTの低下に伴い、何れかのタイミングで誤差電圧V
CMPは上昇に転じる。
図22の例では、タイミングt
D6にて“V
SLP>V
CMP”の成立状態から“V
SLP<V
CMP”の成立状態に切り替わる。このため、
図22の例において、比較結果信号S2はタイミングt
D2からタイミングt
D6の直前までハイレベルであり、タイミングt
D6にてローレベルに遷移する。
【0115】
タイミングtD1から、1PWM周期分の時間が経過したタイミング、2PWM周期分の時間が経過したタイミング、3PWM周期分の時間が経過したタイミングが、夫々、タイミングtD4、tD5、tD7である。タイミングtD4及びtD5の夫々にてクロック信号S1にダウンエッジが生じるが、タイミングtD4及びtD5では比較結果信号S2がハイレベルであるため(“VSLP>VCMP”であるため)、スキップ制御により、それらのダウンエッジは無効とされる。
【0116】
タイミングtD6より後のタイミングtD7では、比較結果信号S2がローレベルであるため(“VSLP<VCMP”であるため)、ロジック回路16は、タイミングtD7でのクロック信号S1のダウンエッジを契機に制御信号S3にアップエッジを生じさせる。タイミングtD7での制御信号S3のアップエッジにより、又は、それに基づくゲート信号G1のアップエッジにより、逆流検出信号ZXのレベルのハイレベルへのラッチが解除され、逆流検出信号ZXのレベルがローレベルに遷移する。結果、タイミングtD7にて出力段回路MMがHi-Z状態から出力ハイ状態に切り替わる。出力電流IOUTが不変であるなら、タイミングtD1からタイミングtD7の直前までの動作が、タイミングtD7以降も繰り返し実行される。
【0117】
尚、
図22の例において、第3制御パターン(
図18及び
図19参照)が使用されたならば、特に図示しないが、タイミングt
D2及びt
D3間においてスロープ電圧V
SLPは第1オフセット電圧V
OST1に設定されることになる。
【0118】
図23に第1~第4負荷状態におけるスロープ電圧V
SLPの波形611~614を示す。尚、
図23では、第1又は第2制御パターン(
図15~
図17)が使用されることが想定されている。第1~第4負荷状態の内、第1負荷状態が最も出力電流I
OUTが大きい状態であり、第1負荷状態では電流連続モードにてインダクタ電流I
Lが供給される。第1負荷状態における出力トランジスタM1のスイッチング周波数は周波数f
PWMである。第2~第4負荷状態は軽負荷状態に相当し、第2~第4負荷状態の夫々においてスキップ制御が実行される。このため、第2~第4負荷状態における出力トランジスタM1のスイッチング周波数は周波数f
PWMよりも小さい。第2負荷状態での出力電流I
OUTよりも第3負荷状態での出力電流I
OUTの方が小さく、第3負荷状態での出力電流I
OUTよりも第4負荷状態での出力電流I
OUTの方が更に小さい。このため、出力トランジスタM1のスイッチング周波数は、第2、第3、第4負荷状態の順に小さくなる。換言すれば、スキップ制御によるクロック信号S1のパルスのスキップ数は、第2、第3、第4負荷状態の順に大きくなる。
【0119】
図23において、表621~624は、夫々、第1~第4負荷状態における出力段回路MMの状態を表す。表621~624において、“H”は出力段回路MMが出力ハイ状態にあることを意味し、“L”は出力段回路MMが出力ロー状態にあることを意味し、“Hi-Z”は出力段回路MMがHi-Z状態にあることを意味する。
【0120】
第1~第4負荷状態におけるボトム値V
OST1_BTMは、夫々、ボトム値V
OST1_BTM1~V
OST1_BTM4である。出力トランジスタM1のオフ期間に対する出力トランジスタM1のオン期間の比率RT
ONは、第1負荷状態において最も高く、第1、第2、第3、第4負荷状態の順に小さくなるので、“V
OST1_BTM1>V
OST1_BTM2>V
OST1_BTM3>V
OST1_BTM4”が成立する。
図23の例では、第4負荷状態におけるボトム値V
OST1_BTM4はゼロ又は略ゼロである。各負荷状態のボトム値V
OST1_BTMは入力電圧V
INに依存すると共に制御信号S3のデューティに依存する。PWM制御が行われる際において、制御信号S3のデューティはパルス幅変調でのデューティに相当し、ボトム値V
OST1_BTM1は出力電圧V
OUTに依存することになる。
【0121】
第1~第4負荷状態において、出力トランジスタM1のオフ期間ではスロープ電圧V
SLPに共通の第2オフセット電圧V
OST2が設定される。このため、第1~第4負荷状態の何れにおいても、誤差電圧V
CMPは第2オフセット電圧V
OST2近辺に維持される(
図23では誤差電圧V
CMPの図示を省略)。
図23において、時間T
ON1~T
ON4は、夫々、第1~第4負荷状態における制御信号S3のパルス幅(即ち出力トランジスタM1の1回分のオン時間)を表す。つまり、第1負荷状態において出力トランジスタM1がターンオンしてからターンオフするまでの時間は時間T
ON1に相当し、第2負荷状態において出力トランジスタM1がターンオンしてからターンオフするまでの時間は時間T
ON2に相当する。第3及び第4負荷状態についても同様である。
【0122】
第1~第4負荷状態において第2オフセット電圧VOST2は共通であり、且つ、“VOST1_BTM1>VOST1_BTM2>VOST1_BTM3>VOST1_BTM4”であるので、“TON1<TON2<TON3<TON4”である。つまり、負荷が軽くなるほど(出力電流IOUTが小さくなるほど)制御信号S3のパルス幅が増大する。これは、軽負荷時のPFM制御においてスイッチング周波数が低くなるほど、制御信号S3のパルス幅が増大することを意味する。
【0123】
例えば、
図13に示す構成において抵抗R11の値を調整することでボトム値V
OST1_BTMを調整できる。この際例えば、波形611におけるボトム値V
OST1_BTM1の大きさとスロープ電圧V
SLPの振幅とが同程度となるように抵抗R11の値を調整したならば時間T
ON4を時間T
ON1の2倍にすることができる。
【0124】
本実施例によれば、出力トランジスタM1のオフ期間において第2オフセット電圧VOST2をスロープ電圧VSLPに設定することにより良好な負荷応答性を確保できる。その上で、スキップ制御が行われるような軽負荷状態において、負荷が軽くなるほどスキップ時間が増大し(従ってPFM制御でのスイッチング周波数が低くなり)、スイッチング損失の低減が図られる。
【0125】
<<第2実施例>>
第2実施例を説明する。
図13の構成において、ノードND1に向けて入力電圧V
INに応じた電流を供給する回路は任意に変更可能である。但し、スイッチSW1のオン期間においてノードND1に向けて供給される電流の大きさは、入力電圧V
INの増大につれて大きくなる。例えば、
図24に示すスロープ電圧生成回路13_2を
図1のスロープ電圧生成回路13として用いても良い。
【0126】
図13のスロープ電圧生成回路13_1を基準に、抵抗R31及びノードND5を可変電流源CC1及びノードND5aに置換することで、
図24のスロープ電圧生成回路13_2が得られる。当該置換を除き、スロープ電圧生成回路13_2はスロープ電圧生成回路13_1と同様の構成を有する。
【0127】
可変電流源CC1は、内部電源電圧VREGが加わるノードND5aとスイッチSW1の一端に接続され、内部電源電圧VREGに基づき入力電圧VINに比例する電流値を持つ電流ICC1を生成する。内部電源電圧VREGは、入力電圧VINに基づき電源IC2内の内部電源回路(不図示)にて生成される正の直流電圧である。可変電流源CC1は、ノードND5aとスイッチSW1の一端との間に設けられ、スイッチSW1がオンであるときにのみ、電流ICC1をノードND5aからノードND1に向けて供給する。このため、スイッチSW1がオン且つスイッチSW2がオフであるときに、入力電圧VINに応じた電流にてコンデンサC31及びC11が充電される。
【0128】
<<第3実施例>>
第3実施例を説明する。
図13の構成において、ノードND3に向けて出力電圧V
OUTに応じた電流を供給する回路は任意に変更可能である。但し、ノードND3に向けて供給される電流の大きさは、出力電圧V
OUTの増大につれて大きくなる。例えば、
図25に示すスロープ電圧生成回路13_3を
図1のスロープ電圧生成回路13として用いても良い。
【0129】
図13のスロープ電圧生成回路13_1を基準に、抵抗R22及びノードND6を可変電流源CC2及びノードND6aに置換することで、
図25のスロープ電圧生成回路13_3が得られる。当該置換を除き、スロープ電圧生成回路13_3はスロープ電圧生成回路13_1と同様の構成を有する。
【0130】
可変電流源CC2は、内部電源電圧VREGが加わるノードND6aとノードND3に接続され、内部電源電圧VREGに基づき出力電圧VOUTに比例する電流値を持つ電流ICC2を生成する。可変電流源CC2は電流ICC2をノードND6aからノードND3に向けて供給する。このため、出力電圧VOUTに応じた第2オフセット電圧VOST2がノードND3に生じる。
【0131】
【0132】
<<第4実施例>>
第4実施例を説明する。電源IC2において出力段回路MMを電流モードにてスイッチング制御するようにしても良い。この場合、
図26に示す如く、
図1の電源IC2に対して電流検出回路19及び加算器20を追加し、スロープ電圧V
SLPとインダクタ電流I
Lに応じた電圧I
SNSとの和電圧を電圧V2としてコンパレータ14の非反転入力端子に入力すれば良い。電流検出回路19は、出力トランジスタM1のオン期間において出力トランジスタM1に流れる電流(即ちインダクタ電流I
L)を検出し、検出した電流に比例する電圧を電圧I
SNSとして生成する。加算器20は、スロープ電圧生成回路13からのスロープ電圧V
SLPに対して電圧I
SNSを加算することにより電圧V2を生成する。故に、第4実施例に係る
図26の構成では、“V2=V
SLP+I
SNS”となる。
【0133】
<<第5実施例>>
第5実施例を説明する。第5実施例では、上述の各構成又は各動作に対する補足事項又は変形技術を説明する。
【0134】
出力電圧VOUTが電源IC2のダイナミックレンジ内に収まるのであれば、出力電圧VOUTそのものを帰還電圧VFBとして帰還端子FBに与えても良く、この場合、帰還電圧生成回路4は不要である。何れにせよ、帰還電圧VFBは出力電圧VOUTに応じた電圧(出力電圧VOUTに比例する電圧)である。
【0135】
出力段回路MMは電源IC2の外部に設けられて電源IC2に対して外付け接続されるものであっても良い。
【0136】
各実施形態に示されたFET(電界効果トランジスタ)のチャネルの種類は例示である。上述の主旨を損なわない形で、任意のFETのチャネルの種類はPチャネル型及びNチャネル型間で変更され得る。例えば、出力トランジスタM1をPチャネル型のMOSFETにて構成しても良い。
【0137】
本開示に係るスイッチング電源装置の例として降圧型のスイッチング電源装置を説明したが、本開示に係るスイッチング電源装置は、昇圧型のスイッチング電源装置又は昇降圧型のスイッチング電源装置であっても良い。
【0138】
任意の信号又は電圧に関して、上述の主旨を損なわない形で、それらのハイレベルとローレベルの関係は上述したものの逆とされ得る。クロック信号S1のダウンエッジを契機に制御信号S3にアップエッジを生じさせる構成を例示したが、クロック信号S1のアップエッジを契機に制御信号S3にアップエッジを生じさせる構成が採用されても良い。
【0139】
不都合が生じない限り、上述の任意のトランジスタは、任意の種類のトランジスタであって良い。例えば、MOSFETとして上述された任意のトランジスタを、不都合が生じない限り、接合型FET、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)又はバイポーラトランジスタに置き換えることも可能である。任意のトランジスタは第1電極、第2電極及び制御電極を有する。FETにおいては、第1及び第2電極の内の一方がドレインで他方がソースであり且つ制御電極がゲートである。IGBTにおいては、第1及び第2電極の内の一方がコレクタで他方がエミッタであり且つ制御電極がゲートである。IGBTに属さないバイポーラトランジスタにおいては、第1及び第2電極の内の一方がコレクタで他方がエミッタであり且つ制御電極がベースである。
【0140】
本開示の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。以上の実施形態は、あくまでも、本開示の実施形態の例であって、本開示ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。上述の説明文中に示した具体的な数値は、単なる例示であって、当然の如く、それらを様々な数値に変更することができる。
【0141】
<<付記>>
上述の実施形態にて具体的構成例が示された本開示について付記を設ける。
【0142】
本開示の一側面に係るスイッチング電源用回路(2)は、入力電圧(VIN)を受けるよう構成された出力トランジスタ(M1)及び前記出力トランジスタの低電位側において前記出力トランジスタに直列接続された同期整流トランジスタ(M2)を有する出力段回路(MM)を備え、前記出力トランジスタ及び前記同期整流トランジスタのオン/オフを通じ前記出力トランジスタ又は前記同期整流トランジスタを介して出力インダクタ(L0)にインダクタ電流(IL)を供給することにより前記入力電圧から出力電圧(VOUT)を生成するよう構成されたスイッチング電源用回路であって、前記出力電圧に応じた帰還電圧(VFB)と所定の基準電圧(VREF)との差分に応じた誤差電圧(VCMP)を生成するよう構成されたエラーアンプ(11)と、 スロープ電圧(VSLP)を生成するよう構成されたスロープ電圧生成回路(13)と、 前記誤差電圧である第1比較電圧(V1)と、前記スロープ電圧である又は前記スロープ電圧と前記インダクタ電流に応じた電圧(ISNS)との和である第2比較電圧(V2)と、を比較して比較結果信号(S2)を生成するよう構成されたコンパレータ(14)と、所定周波数を有するクロック信号(S1)を生成するよう構成されたクロック信号生成回路(15)と、 前記クロック信号及び前記比較結果信号に基づき前記出力段回路を制御するよう構成された制御駆動回路(CD)と、前記インダクタ電流の逆流を検出するよう構成された逆流検出回路(18)と、を備え、前記駆動制御回路は、前記同期整流トランジスタがオンであるときにおいて前記インダクタ電流の逆流が検出されたとき、前記同期整流トランジスタをターンオフさせ、前記スロープ電圧生成回路は、前記出力トランジスタのオン期間と前記出力トランジスタのオフ期間との比率に応じた第1オフセット電圧(VOST1)を生成するよう構成された第1オフセット電圧生成回路(210)と、前記出力電圧に応じた第2オフセット電圧(VOST2)を生成するよう構成された第2オフセット電圧生成回路(220)と、を有し、前記出力トランジスタのオン期間において、前記スロープ電圧を前記第1オフセット電圧から前記入力電圧に応じた傾きで上昇させ、前記出力トランジスタのオフ期間の内、少なくとも一部の期間において、前記スロープ電圧を前記第2オフセット電圧に設定する構成(第1の構成)である。
【0143】
出力トランジスタのオフ期間の内、少なくとも一部の期間において、スロープ電圧を出力電圧に応じた第2オフセット電圧に設定することにより、負荷応答性を高めることができる。また、出力トランジスタのオン期間において、スロープ電圧を第1オフセット電圧から入力電圧に応じた傾きで上昇させるようにし、第1オフセット電圧を出力トランジスタのオン期間と出力トランジスタのオフ期間との比率に応じた電圧とする。これにより、軽負荷時におけるスイッチング周波数の低下に連動して出力トランジスタのオン時間を増大させることが可能であり、スイッチング周波数の低下によりスイッチング損失を低減することが可能となる。スイッチング損失の低減によりスイッチング電源用回路及びスイッチング電源装置の効率向上(軽負荷時の効率向上)が図られる。
【0144】
上記第1の構成に係るスイッチング電源用回路において、前記制御駆動回路は、前記出力段回路の状態を、前記出力トランジスタがオン及び前記同期整流トランジスタがオフとなる出力ハイ状態、前記出力トランジスタがオフ及び前記同期整流トランジスタがオンとなる出力ロー状態、又は、前記出力トランジスタ及び前記同期整流トランジスタの双方がオフとなる出力オフ状態の何れかに制御し、前記クロック信号生成回路は、前記所定周波数にて前記クロック信号のレベルを第1レベルから第2レベルへ変化させ、前記制御駆動回路は、前記第1比較電圧が前記第2比較電圧よりも高いときに前記クロック信号のレベルの前記第1レベルから前記第2レベルへの変化が発生すると、基本単位動作を実行し、前記制御駆動回路は、前記基本単位動作において、前記クロック信号のレベルにおける前記第1レベルから前記第2レベルへの変化を契機に、前記出力段回路を前記出力ロー状態又は前記出力オフ状態から前記出力ハイ状態に切り替え、その後、前記第2比較電圧が前記第1比較電圧に達したことを示す前記比較結果信号の入力を契機に前記出力段回路を前記出力ハイ状態から前記出力ロー状態に切り替え、更にその後、前記インダクタ電流の逆流が検出されたならば前記出力段回路を前記出力ロー状態から前記出力オフ状態に切り替え、前記制御駆動回路は、前記インダクタ電流の逆流の検出を通じて前記出力段回路の状態を前記出力オフ状態に設定した後、前記第1比較電圧が前記第2比較電圧よりも低い期間において、前記クロック信号に依らず前記出力段回路を前記出力オフ状態に維持するスキップ制御(
図10参照)を実行する構成(第2の構成)であっても良い。
【0145】
これにより、スキップ制御が行われるような軽負荷時では負荷の大きさに応じてスイッチング周波数が変化する。本構成では、軽負荷時におけるスイッチング周波数の低下に連動して出力トランジスタのオン時間を増大させることが可能であり、スイッチング周波数の低下によりスイッチング損失を低減することが可能となる。
【0146】
上記第1又は第2の構成に係るスイッチング電源用回路において、前記第1オフセット電圧生成回路は、前記出力トランジスタのオフ期間に対する前記出力トランジスタのオン期間の比率が低下するにつれて、前記第1オフセット電圧を低下させる構成(第3の構成)であっても良い。
【0147】
上記第1~第3の構成の何れかに係るスイッチング電源用回路において、前記エラーアンプは、前記帰還電圧が前記基準電圧よりも高いとき前記誤差電圧を低下させ、前記帰還電圧が前記基準電圧よりも低いとき前記誤差電圧を上昇させる構成(第4の構成)であっても良い。
【0148】
上記第1~第4の構成の何れかに係るスイッチング電源用回路において、前記第1オフセット電圧生成回路は、第1オフセット用コンデンサ(C11)と、前記第1オフセット用コンデンサに並列接続された第1オフセット用抵抗(R11)と、を有し、前記第1オフセット用コンデンサの両端間に前記第1オフセット電圧が生じ、前記スロープ電圧生成回路は、前記出力トランジスタのオン期間において、前記入力電圧に応じた充電電流にて前記第1オフセット用コンデンサを充電し、前記出力トランジスタのオフ期間において、前記充電を停止して前記第1オフセット用コンデンサの蓄積電荷を前記第1オフセット用抵抗を通じて放電させる構成(第5の構成)であっても良い。
【0149】
これにより、出力トランジスタのオン期間と出力トランジスタのオフ期間との比率に応じた第1オフセット電圧を生成することが可能となる。
【0150】
上記第5の構成に係るスイッチング電源用回路において、前記スロープ電圧生成回路は、第1ノード(ND1)及び第2ノード(ND2)間に設けられたスロープ用コンデンサ(C31)と、所定ノード(ND5、ND5a)と前記スロープ用コンデンサとの間に設けられた第1スイッチ(SW1)と、前記スロープ用コンデンサに並列接続された第2スイッチ(SW2)と、前記第1ノードにおける電圧又は前記第2オフセット電圧を前記スロープ電圧として切り替え出力する切り替え回路(230)と、を有し、前記第2ノードに前記第1オフセット電圧が加わり、前記スロープ電圧生成回路は、前記出力トランジスタのオン期間において、前記第2スイッチをオフに維持しつつ、前記第1スイッチをオンに保つことで前記所定ノードから前記第1ノードに向けて前記入力電圧に応じたスロープ用電流を供給し、これによって前記スロープ用コンデンサ及び前記第1オフセット用コンデンサを充電し、前記出力トランジスタのオン期間において、前記第1ノードにおける電圧を前記スロープ電圧として出力し、前記出力トランジスタのオフ期間において、前記第1スイッチをオフ状態とすることで前記スロープ用電流の供給を遮断し、且つ、前記出力トランジスタのオフ期間の少なくとも一部において前記第2スイッチをオンにすることで前記スロープ用コンデンサの蓄積電荷を放電させ、前記出力トランジスタのオフ期間の内、少なくとも一部の期間において、前記第2オフセット電圧を前記スロープ電圧として出力する構成(第6の構成)であっても良い。
【0151】
上記第1~第6の構成の何れかに係るスイッチング電源用回路において、前記第2オフセット電圧生成回路は、第2オフセット用抵抗(R21)を有し、前記出力電圧に応じた電流を前記第2オフセット用抵抗に供給することで前記第2オフセット用抵抗にて前記第2オフセット電圧を発生させる構成(第7の構成)であっても良い。
【0152】
本開示の一側面に係るスイッチング電源装置(1)は、上記第1~第7の構成の何れかに係るスイッチング電源用回路(2)と、前記出力インダクタ(L0)と出力コンデンサ(C0)を有し、前記出力トランジスタ及び前記同期整流トランジスタ間の接続ノードに生じる電圧を整流及び平滑化することで前記出力電圧を生成するよう構成された整流平滑回路(3)と、を備える構成(第8の構成)である。
【符号の説明】
【0153】
1 スイッチング電源装置
2 電源IC(スイッチング電源用回路)
3 整流平滑回路
4 帰還電圧生成回路
11 エラーアンプ
12 位相補償回路
13 スロープ電圧生成回路
14 コンパレータ
15 クロック信号生成回路
16 ロジック回路
17 駆動回路
18 逆流検出回路
19 電流検出回路
20 加算器
CD 制御駆動回路
MM 出力段回路
M1 出力トランジスタ
M2 同期整流トランジスタ
L0 出力インダクタ
C0 出力コンデンサ
R1、R2 帰還抵抗
LD 負荷
IN 入力端子
OUT 出力端子
SW スイッチ端子
GND グランド端子
FB 帰還端子
VIN 入力電圧
VOUT 出力電圧
VSW スイッチ電圧
VFB 帰還電圧
VREF 基準電圧
VCMP 誤差電圧
VSLP スロープ電圧
V1 第1比較電圧
V1 第2比較電圧
IL インダクタ電流
IOUT 出力電流
S1 クロック信号
S2 比較結果信号
S3 制御信号
ZX 逆流検出信号
G1、G2 ゲート信号
13_1、13_2、13_3 スロープ電圧生成回路
210 第1オフセット電圧生成回路
220 第2オフセット電圧生成回路
230 切り替え回路
240 スロープ制御回路
C11 コンデンサ(第1オフセット用コンデンサ)
R11 抵抗(第1オフセット用抵抗)
R21 抵抗(第2オフセット用抵抗)
C31 コンデンサ(スロープ用コンデンサ)
SW1、SW2 スイッチ
CC1、CC2 可変電流源