(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174086
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】制御回路、力率改善回路、及び電気機器
(51)【国際特許分類】
H02M 7/12 20060101AFI20231130BHJP
H02M 3/155 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
H02M7/12 P
H02M3/155 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086744
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 愛恵
(72)【発明者】
【氏名】前島 聡
【テーマコード(参考)】
5H006
5H730
【Fターム(参考)】
5H006AA02
5H006AA07
5H006CA02
5H006DA02
5H006DA03
5H006DB01
5H006DC05
5H006FA01
5H730AA18
5H730AS04
5H730BB14
5H730CC04
5H730EE57
5H730EE59
5H730FD01
5H730FD41
5H730FG02
(57)【要約】
【課題】力率改善回路が低電力出力であるときのTHDを低くすることができる制御回路を提供する。
【解決手段】制御回路(700)は、DC/DCコンバータを有する力率改善回路の制御回路である。前記制御回路は、前記DC/DCコンバータの出力電圧に応じた電圧を増幅するように構成される増幅部(710)と、前記増幅部の出力電圧と前記DC/DCコンバータ内のスイッチング素子を流れる電流に応じたスロープ電圧とを比較するように構成される比較部(712)と、前記比較部の出力電圧に基づき、前記スイッチング素子(M1)を駆動するように構成される駆動部(DRV1)と、を有する。前記制御回路は、前記DC/DCコンバータの負荷電力に応じて、前記増幅部のゲイン及び前記スロープ電圧の傾きの少なくとも一方を調整するように構成される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
DC/DCコンバータを有する力率改善回路の制御回路であって、
前記DC/DCコンバータの出力電圧に応じた電圧を増幅するように構成される増幅部と、
前記増幅部の出力電圧と前記DC/DCコンバータ内のスイッチング素子を流れる電流に応じたスロープ電圧とを比較するように構成される比較部と、
前記比較部の出力電圧に基づき、前記スイッチング素子を駆動するように構成される駆動部と、
を有し、
前記DC/DCコンバータの負荷電力に応じて、前記増幅部のゲイン及び前記スロープ電圧の傾きの少なくとも一方を調整するように構成される、制御回路。
【請求項2】
前記DC/DCコンバータの負荷電力が所定範囲内であるときに、前記駆動部は、前記スイッチング素子のスイッチング動作を停止させるように構成される、請求項1に記載の制御回路。
【請求項3】
前記DC/DCコンバータの負荷電力に応じて前記増幅部のゲインが調整され、
前記ゲインが2段階に切り替え可能である、請求項1に記載の制御回路。
【請求項4】
前記DC/DCコンバータの負荷電力に応じて前記増幅部のゲインが調整され、
前記ゲインが3段階以上に切り替え可能である、請求項1に記載の制御回路。
【請求項5】
前記DC/DCコンバータの負荷電力に応じて前記増幅部のゲインが調整され、
前記ゲインがリニアに切り替え可能である、請求項1に記載の制御回路。
【請求項6】
前記増幅部は、
前記DC/DCコンバータの出力電圧に応じた電圧と、基準電圧との誤差を増幅するように構成されるエラーアンプの出力電圧に応じた電流を生成するように構成される電流生成部と、
前記電流生成部の出力電流を電圧変換するように構成される抵抗部と、
を有し、
前記抵抗部の抵抗値は、前記DC/DCコンバータの負荷電力に応じて可変する、請求項3~5のいずれか一項に記載の制御回路。
【請求項7】
前記抵抗部の抵抗値は、前記エラーアンプの出力電圧に応じて可変する、請求項6に記載の制御回路。
【請求項8】
請求項1に記載の制御回路と、
前記DC/DCコンバータと、
を有する、力率改善回路。
【請求項9】
交流電圧を全波整流するように構成される整流回路と、
前記整流回路の出力電圧を受けるように構成される請求項8に記載の力率改善回路と、
を有する、電気機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に開示されている発明は、制御回路、並びにこれを用いた力率改善回路及び電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
力率改善回路は、AC/DC(交流/直流)変換する電源装置の交流入力電圧と交流入力電流をモニタし、それらの位相を略一致させて力率を1(すなわち100%)に近い状態に近づける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
交流入力電流の歪は、全高調波歪(THD:Total Harmonic Distortion)として表される。THDが高いと、停電などを引き起こす要因となり、力率改善回路を搭載する電子機器以外の他機器に悪影響が及ぶおそれがある。つまり、力率改善回路においてTHDを低くする制御が望まれている。
【0005】
特許文献1に開示されている力率改善回路の制御回路によると、THDを抑制することができる。しかしながら、通常、PFC回路では、PFC回路の負荷が軽負荷時に、スイッチング素子のスイッチング動作を停止させる動作(バースト動作)が実行され、軽負荷時における出力電圧の上昇が抑制される。
【0006】
バースト動作では、交流入力電流が零になるためTHDが高くなる。そのため、特許文献1に開示されている力率改善回路の制御回路では、低電力出力時にTHDを低くすることができない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書中に開示されている制御回路は、DC/DCコンバータを有する力率改善回路の制御回路である。前記制御回路は、前記DC/DCコンバータの出力電圧に応じた電圧を増幅するように構成される増幅部と、前記増幅部の出力電圧と前記DC/DCコンバータ内のスイッチング素子を流れる電流に応じたスロープ電圧とを比較するように構成される比較部と、前記比較部の出力電圧に基づき、前記スイッチング素子を駆動するように構成される駆動部と、を有する。前記制御回路は、前記DC/DCコンバータの負荷電力に応じて、前記増幅部のゲイン及び前記スロープ電圧の傾きの少なくとも一方を調整するように構成される。
【0008】
本明細書中に開示されている力率改善回路は、上記構成の制御回路と、前記DC/DCコンバータと、を有する。
【0009】
本明細書中に開示されている電気機器は、交流電圧を全波整流するように構成される整流回路と、前記整流回路の出力電圧を受けるように構成される上記構成の力率改善回路と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本明細書中に開示されている発明によれば、力率改善回路が低電力出力であるときのTHDを低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る電気機器の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、力率改善回路の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、第1変換回路の構成を示す図である。
【
図4】
図4は、第2変換回路の構成を示す図である。
【
図5】
図5は、電流演算部等の構成を示す図である。
【
図6】
図6は、第1構成例に係る演算回路を有するICの各部電圧波形を示すタイミングチャートである。
【
図7】
図7は、第2構成例に係る演算回路の一部を示す図である。
【
図8】
図8は、第2構成例に係る演算回路のゲイン特性を示す図である。
【
図9】
図9は、第3構成例に係る演算回路の一部を示す図である。
【
図10】
図10は、第3構成例に係る演算回路のゲイン特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において、MOS(Metal Oxide Semiconductor)電界効果トランジスタとは、ゲートの構造が、「導電体または抵抗値が小さいポリシリコン等の半導体からなる層」、「絶縁層」、及び「P型、N型、又は真性の半導体層」の少なくとも3層からなる電界効果トランジスタをいう。つまり、MOS電界効果トランジスタのゲートの構造は、金属、酸化物、及び半導体の3層構造に限定されない。
【0013】
本明細書において、基準電圧とは、理想的な状態において一定である電圧を意味しており、実際には温度変化等により僅かに変動し得る電圧である。
【0014】
本明細書において、定電圧とは、理想的な状態において一定である電圧を意味しており、実際には温度変化等により僅かに変動し得る電圧である。
【0015】
<電気機器>
図1は、一実施形態に係る電気機器1の構成を示す回路図である。電気機器1としては、例えばテレビ、冷蔵庫、空気調和機などの家電製品、コンピュータ、コンピュータの付属品であるACアダプターなどを挙げることができる。電気機器1は、ヒューズ2、コンデンサ3、フィルタ4、整流回路5、コンデンサ6、及び力率改善(PFC:Power Factor Correction)回路7を備える。電気機器1は、DC/DCコンバータ8、マイコン9、及び信号処理回路10をさらに備える。電気機器1は、DC/DCコンバータ8の絶縁トランス(不図示)を境界として、互いに絶縁される1次側と2次側に分けられる。
【0016】
整流回路5は、例えばダイオードブリッジの整流回路である。商用交流電圧などの交流電圧VACは、ヒューズ2、コンデンサ3、及びフィルタ4を経由して整流回路5に供給される。整流回路5は、交流電圧VACを全波整流して第1電圧VHを生成する。したがって、第1電圧VHは、全波整流波形を有する。
【0017】
第1電圧VHは、コンデンサ6を経由してPFC回路7に供給される。PFC回路7は、第1電圧VHから出力電圧VDCを生成する昇圧型のDC/DCコンバータ(スイッチングレギュレータ)を有する。PFC回路7は、第1電圧VHと入力電流IACの位相を略一致させることにより力率を改善する。
【0018】
DC/DCコンバータ8は、PFC回路7の出力電圧VDCを受け、これを降圧して負荷であるマイコン9及び信号処理回路10それぞれに供給する。
【0019】
マイコン9は、電気機器1全体を統合的に制御する。信号処理回路10は、特定の信号処理を行うブロックであり、例えば外部機器との通信を行うインタフェース回路、画像処理回路、音声処理回路などを挙げることができる。現実の電気機器1においては、その機能に応じて複数の信号処理回路10が設けられることはいうまでもない。
【0020】
以上が電気機器1の構成に関する説明である。このように、交流電圧VACを全波整流する整流回路5と、全波整流された第1電圧VHを昇圧して出力電圧VDCを生成するPFC回路7と、を備える電気機器によりAC/DC変換を行う。
【0021】
<力率改善回路>
以下は、電気機器1に搭載されるPFC回路7の詳細に関する説明である。
図2は、一実施形態に係るPFC回路7の構成を示す回路図である。PFC回路7は、上述した通り昇圧型のDC/DCコンバータ(スイッチングレギュレータ)を有する。なお、本実施形態とは異なり、PFC回路7は、昇圧型以外のDC/DCコンバータを有してもよい。
【0022】
PFC回路7は、IC(integrated circuit)700と、抵抗R1~R11と、キャパシタC1~C5と、ダイオードD1~D3と、インダクタL1及びL2と、スイッチングトランジスタM1と、を備える。本実施形態では、スイッチングトランジスタM1は、NMOS(negative-channel MOS)電界効果トランジスタである。
【0023】
IC700は、PFC回路7の制御回路である。IC700は、端子VCCと、端子GNDと、端子ZCDと、端子OUTと、端子CSと、端子MULTと、端子EOと、端子VSと、を備える。
【0024】
抵抗R1の一端に第1電圧VHが印加される。抵抗R1の他端は、抵抗R2の一端、キャパシタC4の一端、及び端子MULTに接続される。抵抗R2の他端及びキャパシタC4の他端はグラウンド電位に接続される。このような構成により、第1電圧VHの抵抗R1及びR2による分圧である交流電圧VMULTが端子MULTに供給される。
【0025】
抵抗R1の一端は、インダクタL1の一端及びダイオードD1のアノードに接続される。インダクタL1の他端はダイオードD2のアノード及びスイッチングトランジスタM1のドレインに接続される。ダイオードD1及びD2の各カソードは、キャパシタC1の一端に接続される。キャパシタC1の他端はグラウンド電位に接続され、スイッチングトランジスタM1のゲートは抵抗R10を介して端子OUTに接続され、スイッチングトランジスタM1のソースは抵抗R11を介してグラウンド電位に接続される。このような構成により、PFC回路7は、昇圧型のDC/DCコンバータ(スイッチングレギュレータ)を備えることになる。昇圧型のDC/DCコンバータ(スイッチングレギュレータ)の出力電圧である電圧VDCはキャパシタC1の一端から出力される。
【0026】
インダクタL1とインダクタL2とは磁気結合する。インダクタL2の一端は抵抗R9を介して端子ZCDに接続される。インダクタL2の他端はグラウンド電位に接続される。このような構成により、IC700は、端子ZCDに供給される電圧を監視することでインダクタL1を流れる電流のゼロクロスを検出することが可能となる。
【0027】
抵抗R3の一端に電圧VDCが印加される。抵抗R3の他端は、抵抗R4の一端、キャパシタC2の一端、抵抗R7の一端、及び端子VSに接続される。抵抗R4の他端はグラウンド電位に接続される。抵抗R7の他端は、キャパシタC3の一端に接続される。キャパシタC2及びC3の各他端は、端子EOに接続される。このような構成により、電圧VDCの抵抗R3及びR4による分圧である電圧VSが端子VSに供給される。
【0028】
抵抗R11の両端間には、スイッチングトランジスタM1に流れる電流(スイッチングトランジスタM1のドレイン電流)に比例した電圧が生ずる。抵抗R8、キャパシタC5、及び抵抗R11は、スイッチングトランジスタM1を流れる電流に応じた傾きを有するスロープ電圧VCSを生成し、スロープ電圧VCSを端子CSに供給する。スイッチング素子M1を流れる電流が大きいほど、スロープ電圧VCSの傾きが大きくなる。
【0029】
抵抗R5の一端は、インダクタL2の一端及び抵抗R9の一端に接続される。抵抗R5の他端は、ダイオードD3のアノードに接続される。ダイオードD3のカソード及び抵抗R6の一端に第1電圧VHが印加される。抵抗R6の他端が端子VCCに接続される。抵抗R5、ダイオードD3、及び抵抗R6によって電源電圧VCCが生成される。電源電圧VCCは、端子VCCに供給される。端子GNDは、グラウンド電位に接続される。
【0030】
<制御回路>
以下は、IC700の具体的な構成に関する説明である。IC700は、ツェナーダイオード701、コンパレータ702、バンドギャップ基準電圧回路703、定電圧回路704、及び過熱保護回路705を備える。ツェナーダイオード701のアノードはグラウンド電位に接続され、ツェナーダイオード701のカソードは端子VCCに接続される。
【0031】
ツェナーダイオード701は、電源電圧VCCをツェナー電圧にクランプする。コンパレータ702の反転入力端子、バンドギャップ基準電圧回路703、及び定電圧回路704は端子VCCに接続される。
【0032】
コンパレータ702は、ヒステリシスコンパレータであり、電源電圧VCCを閾値電圧と比較し、比較結果を示す低電圧ロックアウト信号UVLOを出力する。電源電圧VCCが閾値電圧以上であれば低電圧ロックアウト信号UVLOはローレベル(正常状態を示すレベル)になり、電源電圧VCCが閾値電圧未満であれば低電圧ロックアウト信号UVLOはハイレベル(異常状態を示すレベル)になる。コンパレータ702で用いられる閾値電圧は、低電圧ロックアウト信号UVLOのレベルに応じて、第1閾値電圧VTH1(例えば8[V])と第2閾値電圧VTH2(例えば13[V])とを遷移する。
【0033】
バンドギャップ基準電圧回路703は、電源電圧VCCを用いて基準電圧を生成して定電圧回路704に供給する。
【0034】
定電圧回路704は、電源電圧VCC及び基準電圧を用いて定電圧を生成し、IC700の各部に供給する。
【0035】
過熱保護回路705は、周辺温度を検知し、周辺温度が閾値温度以上であればハイレベル(異常状態を示すレベル)の過熱保護信号TSDを出力し、周辺温度が閾値温度未満であればローレベル(正常状態を示すレベル)の過熱保護信号TSDを出力する。
【0036】
IC700は、コンパレータ706をさらに備える。
【0037】
コンパレータ706は、電圧VSを第3閾値電圧VTH3(例えば0.3[V])と比較し、比較結果である短絡保護信号SPを出力する。電圧VSが第3閾値電圧VTH3以上であれば短絡保護信号SPはローレベル(正常状態を示すレベル)になり、電圧VSが第3閾値電圧VTH3未満であれば短絡保護信号SPはハイレベル(異常状態を示すレベル)になる。
【0038】
IC700は、誤差増幅回路707、過電圧保護回路708、NMOS電界効果トランジスタ709、演算回路710、ツェナーダイオード711、コンパレータ712、及び駆動回路DRV1をさらに備える。
【0039】
誤差増幅回路707は、PFC回路7に設けられる昇圧型のDC/DCコンバータ(スイッチングレギュレータ)の出力電圧VDCに応じた電圧VSと、基準電圧VREFとの誤差を増幅し、第2電圧VEOを生成する。なお、誤差増幅回路707での増幅率は1であっても構わない。誤差増幅回路707は、第2電圧VEOを端子EO及び演算回路710に過電圧保護回路708を介して供給する。
【0040】
過電圧保護回路708は、静的過電圧保護信号SOVPを出力する。過電圧保護回路708は、第2電圧VEOが第4閾値電圧VTH4まで上昇すると、第2電圧VEOが下降して定電圧VBURSTになるまで、静的過電圧保護信号SOVPをハイレベル(異常状態を示すレベル)にし、それ以外のときには静的過電圧保護信号SOVPをローレベル(正常状態を示すレベル)にする。静的過電圧保護信号SOVPがハイレベルであるときは、IC700は、スイッチングトランジスタM1のスイッチング動作を停止させる動作(バースト動作)を実行する。
【0041】
NMOS電界効果トランジスタ709のゲートには、低電圧ロックアウト信号UVLOが供給される。NMOS電界効果トランジスタ709のドレインは端子EOに接続され、NMOS電界効果トランジスタ709のソースはグラウンド電位に接続される。NMOS電界効果トランジスタ709は、端子EOに印加される第2電圧VEOを放電するためのスイッチである。したがって、低電圧ロックアウト信号UVLOがローベルであるときに、NMOS電界効果トランジスタ709がオンになって第2電圧VEOが下降する。
【0042】
演算回路710は、交流電圧VMULTと第2電圧VEOとに応じた第3電圧V3を生成する。第2電圧VEOは、電圧VSひいては電圧VDCに応じた電圧である。したがって、演算回路710は、交流電圧VMULTと電圧VDCとに応じた電圧を増幅した第3電圧V3を生成する。つまり、演算回路710は、電圧VDCに応じた電圧を増幅した第3電圧V3を生成する。
【0043】
第3電圧V3は、コンパレータ712の反転入力端子に接続される。ツェナーダイオード711のカソードはコンパレータ712の反転入力端子に接続され、ツェナーダイオード711のアノードはグラウンド電位に接続される。ツェナーダイオード711は、第3電圧V3をツェナー電圧にクランプする。
【0044】
コンパレータ712は、スイッチングトランジスタM1に流れる電流に応じたスロープ電圧VCSと第3電圧V3とを比較し、比較結果を示す電圧VCOMPを出力する。
【0045】
駆動回路DRV1は、コンパレータ712の出力である電圧VCOMPに基づきスイッチングトランジスタM1を駆動する。より詳細には、駆動回路DRV1は、スイッチングトランジスタM1をオン/オフ駆動し、コンパレータ712の出力である電圧VCOMPに応じて、スロープ電圧VCSが第3電圧V3より高くなるごとにスイッチングトランジスタM1をオフする。すなわち、駆動回路DRV1は、コンパレータ712の出力である電圧VCOMPに基づき、スイッチングトランジスタM1をオフする。駆動回路DRV1の構成は特に限定されず、公知の技術を用いればよい。
【0046】
図2には、駆動回路DRV1の一例が示される。駆動回路DRV1は、コンパレータ713、ワンショット回路714、タイマー715、ORゲート716、フリップフロップ717、ANDゲート718、プリドライバ719、ゲートクランプ回路720、PMOS(positive-channel MOS)電界効果トランジスタ721、NMOS電界効果トランジスタ722、及び抵抗723を含む。
【0047】
コンパレータ713は、ヒステリシスコンパレータであり、端子ZCDに印加される電圧を閾値電圧と比較し、比較結果をワンショット回路714に出力する。端子ZCDに印加される電圧が閾値電圧以上であればコンパレータ713の出力信号はローレベルになり、端子ZCDに印加される電圧が閾値電圧未満であればコンパレータ713の出力信号はハイレベルになる。コンパレータ713で用いられる閾値電圧は、コンパレータ713の出力信号のレベルに応じて、第5閾値電圧VTH5(例えば0.67[V])と第6閾値電圧VTH6(例えば0.9[V])とを遷移する。
【0048】
ワンショット回路714は、コンパレータ713の出力信号はハイレベルになると、ワンショットパルスをORゲート716の第1入力端子に供給する。
【0049】
タイマー715は、一定時間を計時すると、ハイレベルの信号をORゲート716の第2入力端子に供給する。タイマー715の計時は、プリドライバ719がANDゲート718からハイレベルの信号を受け取る度にリセットされる。
【0050】
ORゲート716は、ワンショット回路714の出力信号とタイマー715の論理和をRSフリップフロップ717のセット端子(S)に供給する。RSフリップフロップ717のリセット端子(R)にはコンパレータ712の出力である電圧VCOMPが供給される。RSフリップフロップ717の出力(Q)は、セット端子(S)に印加される電圧のポジティブエッジごとにハイレベルに遷移し、リセット端子(R)に印加される電圧のポジティブエッジごとにローレベルに遷移する。
【0051】
ANDゲート718は、低電圧ロックアウト信号UVLOの反転信号と、RSフリップフロップ717の出力信号と、静的過電圧保護信号SOVPの反転信号と、短絡保護信号SPの反転信号と、過熱保護信号TSDの反転信号との論理積をプリドライバ719に供給する。
【0052】
プリドライバ719は、ANDゲート718の出力に基づき、PMOS電界効果トランジスタ721及びNMOS電界効果トランジスタ722を相補的にオン/オフ駆動する。
【0053】
PMOS電界効果トランジスタ721のソースはゲートクランプ回路720に接続され、PMOS電界効果トランジスタ721のドレインはNMOS電界効果トランジスタ722のドレイン、端子OUT、及び抵抗723の一端に接続される。NMOS電界効果トランジスタ722のソースはグラウンド電位及び抵抗723の他端に接続される。ゲートクランプ回路720は、電源電圧VCCから端子OUTに印加されるハイレベルの電圧を生成する。ゲートクランプ回路720は、端子OUTに印加されるハイレベルの電圧を一定電圧にクランプして、電源電圧VCCが上昇した際に、端子OUTに印加されるハイレベルの電圧がスイッチングトランジスタM1のゲート-ソース間耐圧を超えないようにする。
【0054】
以上がPFC回路7の構成に関する説明である。以下は、演算回路710の詳細に関する説明である。
【0055】
<演算回路の第1構成例>
第1構成例に係る演算回路710は、
図3に示す第1変換回路710Aと、
図4に示す第2変換回路710Bと、
図5に示す電流演算部710C、抵抗部710D、及びコンパレータ710Eと、を有する。
【0056】
図3に示す第1変換回路710Aは、演算増幅器OP1、抵抗R12、及びNPNバイポーラトランジスタM2を含む。演算増幅器OP1の非反転入力端子には電圧(V
EO-V
BURST)が印加される。演算増幅器OP1の反転入力端子及び出力端子には抵抗R12の一端が接続される。抵抗R12の他端にはグラウンド電位が接続される。演算増幅器OP1の電源端子にはNPNバイポーラトランジスタM2のコレクタ及びベースが接続される。NPNバイポーラトランジスタM2のエミッタはグラウンド電位に接続される。第1変換回路710Aは、電圧(V
EO-V
BURST)を電流(I
EO-I
BURST)に変換し、電流(I
EO-I
BURST)をNPNバイポーラトランジスタM2のベース電流として出力する。
【0057】
図4に示す第2変換回路710Bは、演算増幅器OP2、抵抗R13、及びNPNバイポーラトランジスタM3を含む。演算増幅器OP2の非反転入力端子には交流電圧V
MULTが印加される。演算増幅器OP2の反転入力端子及び出力端子には抵抗R13の一端が接続される。抵抗R13の他端にはグラウンド電位が接続される。演算増幅器OP2の電源端子にはNPNバイポーラトランジスタM3のコレクタ及びベースが接続される。NPNバイポーラトランジスタM3のエミッタはグラウンド電位に接続される。第2変換回路710Bは、交流電圧V
MULTを電流I
MULTに変換し、電流I
MULTをNPNバイポーラトランジスタM3のベース電流として出力する。
【0058】
図5に示す電流演算部710Cは、抵抗R14~R20、電流源IS1、NPNバイポーラトランジスタM4~M13、PMOS電界効果トランジスタM14及びM15、NMOS電界効果トランジスタM16及びM17、PNPバイポーラトランジスタM18、並びにNOTゲートNG1を含む。
【0059】
定電圧回路704から出力される定電圧VDDは、抵抗R14~R18の各一端、NPNバイポーラトランジスタM5のコレクタ、PMOS電界効果トランジスタM14のソース及びバックゲート、PMOS電界効果トランジスタM15のソース及びバックゲート、PNPバイポーラトランジスタM18のエミッタに印加される。抵抗R14の他端はNPNバイポーラトランジスタM4のコレクタに接続される。NPNバイポーラトランジスタM4のエミッタは、電流源IS1の一端及びNPNバイポーラトランジスタM8のベースに接続される。電流源IS1の他端はグラウンド電位に接続される。NPNバイポーラトランジスタM5のベース及びエミッタは、PNPバイポーラトランジスタM18のベース及びNPNバイポーラトランジスタM6のコレクタに接続される。NPNバイポーラトランジスタM6のエミッタは、NPNバイポーラトランジスタM8のコレクタに接続される。NPNバイポーラトランジスタM8のエミッタは、NPNバイポーラトランジスタM9のエミッタに接続される。抵抗R15の他端は、NPNバイポーラトランジスタM7のコレクタに接続される。NPNバイポーラトランジスタM7のエミッタは、NPNバイポーラトランジスタM4のベース及びNPNバイポーラトランジスタM9のコレクタに接続される。抵抗R16の他端は、NPNバイポーラトランジスタM10のコレクタに接続される。NPNバイポーラトランジスタM10のエミッタは、NPNバイポーラトランジスタM9のベース及びNPNバイポーラトランジスタM11のコレクタに接続される。NPNバイポーラトランジスタM11のエミッタは、グラウンド電位に接続される。NPNバイポーラトランジスタM11のベースは、第2変換回路710B内のNPNバイポーラトランジスタM3のベース及びコレクタに接続される。NPNバイポーラトランジスタM3及びM11は、カレントミラー回路を構成する。抵抗R17の他端は、NPNバイポーラトランジスタM12のコレクタに接続される。NPNバイポーラトランジスタM12のエミッタは、NPNバイポーラトランジスタM10のベース及びNPNバイポーラトランジスタM13のコレクタに接続される。NPNバイポーラトランジスタM13のエミッタは、グラウンド電位に接続される。NPNバイポーラトランジスタM13のベースは、第1変換回路710A内のNPNバイポーラトランジスタM2のベース及びコレクタに接続される。NPNバイポーラトランジスタM2及びM13は、カレントミラー回路を構成する。抵抗R18の他端は、抵抗R19の一端、NPNバイポーラトランジスタM6のゲート、NPNバイポーラトランジスタM7のゲート、及びNPNバイポーラトランジスタM12のゲートに接続される。抵抗R19の他端は、グラウンド電位に接続される。PMOS電界効果トランジスタM14のゲート及びドレインは、PMOS電界効果トランジスタM15のゲートに接続される。PMOS電界効果トランジスタM14及びM15は、カレントミラー回路を構成する。PMOS電界効果トランジスタM15のドレインは、NMOS電界効果トランジスタM16のドレイン及びNOTゲートNG1の入力端子に接続される。NMOS電界効果トランジスタM16のゲートにはイネーブル信号ENが供給される。NMOS電界効果トランジスタM16のソース及びバッグゲートは、グラウンド電位に接続される。NOTゲートNG1の出力端子は、NMOS電界効果トランジスタM17のゲートに接続される。NMOS電界効果トランジスタM17のソース及びバックゲートは、グラウンド電位に接続される。NMOS電界効果トランジスタM17のドレインは、抵抗R20の一端に接続される。抵抗R20の他端は、PNPバイポーラトランジスタM18のコレクタに接続される。
【0060】
電流演算部710Cは、電流(IEO-IBURST)と電流IMULTとを乗算し、その乗算結果を電流源IS1から出力される電流で割った結果である出力電流IOUTを抵抗部710Dに出力する。
【0061】
抵抗部710Dは、抵抗R21及びR22と、NMOS電界効果トランジスタM19と、を有する。抵抗R21及びR22の各一端は、PNPバイポーラトランジスタM18のコレクタ及び抵抗R20の他端に接続される。抵抗R21の他端は、グラウンド電位に接続される。抵抗R22の他端は、NMOS電界効果トランジスタM19のドレインに接続される。NMOS電界効果トランジスタM19のソース及びバックゲートは、グラウンド電位に接続される。
【0062】
抵抗部710Dは、出力電流IOUTを電圧K×VMULT×(VEO-VBURST)に変換する。なお、ゲインKは、第1変換回路710A内の抵抗R12の抵抗値と抵抗部710Dの抵抗値との比及び第2変換回路710B内の抵抗R13の抵抗値と抵抗部710Dの抵抗値との比によって定まる。電流演算部710C内の電流源IS1が出力する電流は、電圧VMULTのピーク値(最大値)に比例する電圧である。なお、電流演算部710Cは、イネーブル信号ENによってイネーブル状態とディセーブル状態とを切り替えることができる。
【0063】
抵抗部710Dの抵抗値ひいてはゲインKは、NMOS電界効果トランジスタM19のオン/オフによって2段階で切り替わる。NMOS電界効果トランジスタM19がオフであるとき、抵抗部710Dの抵抗値は抵抗R21の抵抗値になる。一方、NMOS電界効果トランジスタM19がオンであるとき、抵抗部710Dの抵抗値は抵抗R21と抵抗R22の合成抵抗値になる。したがって、NMOS電界効果トランジスタM19がオンであるときのゲインKは、NMOS電界効果トランジスタM19がオフであるときのゲインKよりも小さくなる。
【0064】
NMOS電界効果トランジスタM19のゲートは、コンパレータ710Eの出力端子に接続される。第7閾値電圧VTH7(例えば0.9[V])がコンパレータ710Eの非反転入力端子に供給され、第2電圧VEOがコンパレータ710Eの反転入力端子に供給される。
【0065】
PFC回路7に設けられるDC/DCコンバータの負荷電力が大きいときに電圧VSが小さくなって第2電圧VEOが大きくなる。一方、PFC回路7に設けられるDC/DCコンバータの負荷電力が小さいときに電圧VSが大きくなって第2電圧VEOが小さくなる。したがって、抵抗部710Dの抵抗値ひいてはゲインKは、PFC回路7に設けられるDC/DCコンバータの負荷電力に応じて調整される。具体的には、PFC回路7に設けられるDC/DCコンバータの負荷電力が小さいときのゲインKは、PFC回路7に設けられるDC/DCコンバータの負荷電力が大きいときのゲインKよりも小さくなる。
【0066】
図6は、第1構成例に係る演算回路710を有するIC700の各部電圧波形を示すタイミングチャートである。第1期間P1は、PFC回路7に設けられるDC/DCコンバータの負荷電力が大きくてNMOS電界効果トランジスタM19がオフである期間である。第2期間P2は、PFC回路7に設けられるDC/DCコンバータの負荷電力が小さくてNMOS電界効果トランジスタM19がオンである期間である。なお、第2期間P2における太い点線は、抵抗部710Dの抵抗値を抵抗R21の抵抗値に固定した比較例を示している。
【0067】
IC700は、PFC回路7に設けられるDC/DCコンバータの負荷電力が大きいときにゲインKを高くしている。これにより、PFC回路7の大電力出力が可能となる。
【0068】
IC700は、PFC回路7に設けられるDC/DCコンバータの負荷電力が小さいときにゲインKを低くしている。これにより、スイッチングトランジスタM1のオン時間が短くなり、バースト動作が入ることなくスイッチングが動作し、THDが低くなる。つまり、IC700は、PFC回路7が低電力出力であるときのTHDを低くすることができる。
【0069】
<演算回路の第2構成例>
第2構成例に係る演算回路710は、第1構成例に係る演算回路710と同様に、
図3に示す第1変換回路710A、
図4に示す第2変換回路710B、及び
図5に示す電流演算部710Cを有する。第2構成例に係る演算回路710は、電流演算部710Cよりも後段の構成が第1構成例に係る演算回路710と異なる。
【0070】
図7は、第2構成例に係る演算回路710の一部の構成を示す図である。第2構成例に係る演算回路710は、電流演算部710Cよりも後段に、抵抗部710Dと、コンパレータ710E及び710Fと、を有する。
【0071】
抵抗部710Dは、抵抗R21~R23と、NMOS電界効果トランジスタM19及びM20と、を有する。抵抗R21~R23の各一端は、PNPバイポーラトランジスタM18のコレクタ及び抵抗R20(
図5参照)の他端に接続される。抵抗R21の他端は、グラウンド電位に接続される。抵抗R22の他端は、NMOS電界効果トランジスタM19のドレインに接続される。抵抗R23の他端は、NMOS電界効果トランジスタM20のドレインに接続される。NMOS電界効果トランジスタM19及びM20の各ソース及び各バックゲートは、グラウンド電位に接続される。
【0072】
コンパレータ710Eは、NMOS電界効果トランジスタM19をオン/オフ制御する。コンパレータ710Eの非反転入力端子には第7閾値電圧VTH7が供給され、コンパレータ710Eの反転入力端子には第2電圧VEOが供給される。コンパレータ710Fは、NMOS電界効果トランジスタM20をオン/オフ制御する。コンパレータ710Fの非反転入力端子には第8閾値電圧VTH8が供給され、コンパレータ710Fの反転入力端子には第2電圧VEOが供給される。
【0073】
図8は、第2構成例に係る演算回路710のゲイン特性を示す図である。
図8に示す通り、ゲインKは、PFC回路7に設けられるDC/DCコンバータの負荷電力に応じて、NMOS電界効果トランジスタM19及びM20のオン/オフによって3段階で切り替わる。第2構成例に係る演算回路710は、第1構成例に係る演算回路710よりもゲインKを細かく調整することができる。なお、第1構成例及び本構成例とは異なり、ゲインKは4段階以上に切り替わってもよい。
【0074】
<演算回路の第3構成例>
第3構成例に係る演算回路710は、第1構成例に係る演算回路710と同様に、
図3に示す第1変換回路710A、
図4に示す第2変換回路710B、及び
図5に示す電流演算部710Cを有する。第3構成例に係る演算回路710は、電流演算部710Cよりも後段の構成が第1構成例に係る演算回路710と異なる。
【0075】
図9は、第3構成例に係る演算回路710の一部の構成を示す図である。第3構成例に係る演算回路710は、電流演算部710Cよりも後段に、抵抗部710Dと、演算増幅器OP3と、を有する。
【0076】
抵抗部710Dは、NMOS電界効果トランジスタM19を有する。NMOS電界効果トランジスタM19のドレインは、PNPバイポーラトランジスタM18のコレクタ及び抵抗R20(
図5参照)の他端に接続される。NMOS電界効果トランジスタM19のソース及びバックゲートは、グラウンド電位に接続される。
【0077】
演算増幅器OP3は、NMOS電界効果トランジスタM19のオン抵抗をリニア制御する。演算増幅器OP3の非反転入力端子には第9閾値電圧VTH9が供給され、演算増幅器OP3の反転入力端子には第2電圧VEOが供給される。
【0078】
図10は、第3構成例に係る演算回路710のゲイン特性を示す図である。
図10に示す通り、ゲインKは、PFC回路7に設けられるDC/DCコンバータの負荷電力に応じてリニアに切り替わる。第3構成例に係る演算回路710は、第1構成例に係る演算回路710及び第2構成例に係る演算回路710よりもゲインKを滑らかに調整することができる。
【0079】
<その他>
発明の構成は、上記実施形態のほか、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【0080】
例えば、上述した実施形態では、PFC回路7に設けられるDC/DCコンバータの負荷電力に応じて、演算回路710のゲインが調整されたが、演算回路710のゲイン調整の代わりに、又は、演算回路710のゲイン調整に加えて、PFC回路7に設けられるDC/DCコンバータの負荷電力に応じて、スロープ電圧VSLPの傾きが調整されてもよい。具体的には、PFC回路7に設けられるDC/DCコンバータの負荷電力が小さいときに、スロープ電圧VSLPの傾きが大きくなるようにすればよい。スロープ電圧VSLPの傾きを調整する構成としては、例えば、キャパシタ、及び、当該キャパシタと端子CSとの電気的接続と遮断とを切り替えるスイッチをIC700に内蔵する構成を挙げることができる。
【0081】
以上説明した制御回路(700)は、DC/DCコンバータを有する力率改善回路の制御回路であって、前記DC/DCコンバータの出力電圧に応じた電圧を増幅するように構成される増幅部(710)と、前記増幅部の出力電圧と前記DC/DCコンバータ内のスイッチング素子を流れる電流に応じたスロープ電圧とを比較するように構成される比較部(712)と、前記比較部の出力電圧に基づき、前記スイッチング素子(M1)を駆動するように構成される駆動部(DRV1)と、を有し、前記DC/DCコンバータの負荷電力に応じて、前記増幅部のゲイン及び前記スロープ電圧の傾きの少なくとも一方を調整するように構成される構成(第1の構成)である。
【0082】
上記第1の構成の制御回路は、力率改善回路が低電力出力であるときのTHDを低くすることができる。
【0083】
上記第1の構成の制御回路において、前記DC/DCコンバータの負荷電力が所定範囲内であるときに、前記駆動部は、前記スイッチング素子のスイッチング動作を停止させるように構成される構成(第2の構成)であってもよい。
【0084】
上記第2の構成の制御回路は、力率改善回路の負荷が軽負荷時に、DC/DCコンバータの出力電圧が上昇することを抑制することができる。
【0085】
上記第1又は第2の構成の制御回路において、前記DC/DCコンバータの負荷電力に応じて前記増幅部のゲインが調整され、前記ゲインが2段階に切り替え可能である構成(第3の構成)であってもよい。
【0086】
上記第3の構成の制御回路は、増幅部のゲイン調整を簡単な回路構成で実現することができる。
【0087】
上記第1又は第2の構成の制御回路において、前記DC/DCコンバータの負荷電力に応じて前記増幅部のゲインが調整され、前記ゲインが3段階以上に切り替え可能である構成(第4の構成)であってもよい。
【0088】
上記第4の構成の制御回路は、増幅部のゲインを細かく調整することができる。
【0089】
上記第1又は第2の構成の制御回路において、前記DC/DCコンバータの負荷電力に応じて前記増幅部のゲインが調整され、前記ゲインがリニアに切り替え可能である構成(第5の構成)であってもよい。
【0090】
上記第5の構成の制御回路は、増幅部のゲインを滑らかに調整することができる。
【0091】
上記第3~第5いずれかの構成の制御回路において、前記増幅部は、前記エラーアンプの出力電圧に応じた電流を生成するように構成される電流生成部(710~710C)と、前記電流生成部の出力電流を電圧変換するように構成される抵抗部(R21、R22、M18)と、を有し、前記抵抗部の抵抗値は、前記DC/DCコンバータの負荷電力に応じて可変する構成(第6の構成)であってもよい。
【0092】
上記第6の構成の制御回路は、抵抗部の抵抗値によって増幅部のゲインが決まるため、増幅部のゲイン調整が容易である。
【0093】
上記第6の構成の制御回路において、前記抵抗部の抵抗値は、前記エラーアンプの出力電圧に応じて可変する構成(第7の構成)であってもよい。
【0094】
上記第7の構成の制御回路は、DC/DCコンバータの負荷電力に応じた増幅部のゲイン調整を簡単な回路構成で実現することができる。
【0095】
以上説明した力率改善回路(7)は、上記第1~第7いずれかの構成の制御回路と、前記DC/DCコンバータと、を有する構成(第8の構成)である。
【0096】
上記第8の構成の力率改善回路は、低電力出力であるときのTHDを低くすることができる。
【0097】
以上説明した電気機器(1)は、交流電圧を全波整流するように構成される整流回路と、前記整流回路の出力電圧を受けるように構成される上記第8の構成の力率改善回路と、を有する構成(第9の構成)である。
【0098】
上記第9の構成の電気機器は、力率改善回路が低電力出力であるときのTHDを低くすることができる。
【符号の説明】
【0099】
1 電気機器
2 ヒューズ
3 コンデンサ
4 フィルタ
5 整流回路
6 コンデンサ
7 力率改善回路
8 DC/DCコンバータ
9 マイコン
10 信号処理回路
700 IC
701 ツェナーダイオード
702、706、710E、710F、712、713 コンパレータ
703 バンドギャップ基準電圧回路
704 定電圧回路
705 過熱保護回路
707 誤差増幅回路
708 過電圧保護回路
709、722、M16、M17、M19、M20 NMOS電界効果トランジスタ
710 演算回路
710A 第1変換回路
710B 第2変換回路
710C 電流演算部
710D 抵抗部
723、R1~R23 抵抗
711 ツェナーダイオード
714 ワンショット回路
715 タイマー
716 ORゲート
717 フリップフロップ
718 ANDゲート
719 プリドライバ
720 ゲートクランプ回路
721、M14、M15 PMOS電界効果トランジスタ
C1~C5 キャパシタ
CS、EO、GND、MULT、OUT、VCC、VS、ZCD 端子
D1~D3 ダイオード
DRV1 駆動回路
IS1 電流源
L1、L2 インダクタ
M1 スイッチングトランジスタ
M2~M13 NPNバイポーラトランジスタ
M18 PNPバイポーラトランジスタ
NG1 NOTゲート
OP1~OP3 演算増幅器
R1~R22 抵抗