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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023017409
(43)【公開日】2023-02-07
(54)【発明の名称】セメント製品
(51)【国際特許分類】
   C04B 41/61 20060101AFI20230131BHJP
   E04C 1/40 20060101ALN20230131BHJP
【FI】
C04B41/61
E04C1/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021121661
(22)【出願日】2021-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】591135691
【氏名又は名称】日本コンクリート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】水野 雅人
(72)【発明者】
【氏名】児玉 庄蔵
(72)【発明者】
【氏名】森嶋 和博
(72)【発明者】
【氏名】林 正人
(72)【発明者】
【氏名】片岡 竜也
【テーマコード(参考)】
4G028
【Fターム(参考)】
4G028BA01
(57)【要約】
【課題】意匠性の向上を図ることができるセメント製品を提供する。
【解決手段】セメント製品は、セメントを含む材料を硬化させて形成された母材と、前記母材よりも外側面に形成されて光又は水若しくは熱に反応して光物性が変化するクロミック層と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントを含む材料を硬化させて形成された母材と、
前記母材よりも外側面に形成されて光又は水若しくは熱に反応して光物性が変化するクロミック層と、
を備えるセメント製品。
【請求項2】
前記クロミック層よりも外側に設けられて紫外線の透過を抑制する紫外線透過抑制層を更に備えている、
請求項1に記載のセメント製品。
【請求項3】
前記クロミック層は、水に反応して光物性が変化するものであって、水分を吸収可能な吸水材を含んでいる、
請求項1に記載のセメント製品。
【請求項4】
セメントを含む材料を硬化させて形成された母材を備え、
前記母材は、光又は水若しくは熱に反応して光物性が変化するクロミック材を含んでいる、
セメント製品。
【請求項5】
前記母材よりも外側面に設けられて紫外線の透過を抑制する紫外線透過抑制層を更に備えている、
請求項4に記載のセメント製品。
【請求項6】
前記クロミック材は、水に反応して光物性が変化するものであり、
前記母材は、水分を吸収可能な吸水材を含んでいる、
請求項4に記載のセメント製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、セメント製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セメントコンクリート製品やモルタル製品等のようなセメントを主要な材料として構成されたセメント製品は、その表面の色彩が単調で意匠性に乏しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3120296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、意匠性の向上を図ることができるセメント製品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のセメント製品は、セメントを含む材料を硬化させて形成された母材と、前記母材よりも外側面に形成されて光又は水若しくは熱に反応して光物性が変化するクロミック層と、を備える。
【0006】
また、実施形態のセメント製品は、セメントを含む材料を硬化させて形成された母材を備え、前記母材は、光又は水若しくは熱に反応して光物性が変化するクロミック材を含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態によるセメント製品の構成を概念的に示す断面図
図2】第2実施形態によるセメント製品の構成を概念的に示す断面図
図3】第3実施形態によるセメント製品の構成を概念的に示す断面図
図4】第4実施形態によるセメント製品の構成を概念的に示す断面図
図5】第5実施形態によるセメント製品の構成を概念的に示す断面図
図6】第6実施形態によるセメント製品の構成を概念的に示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、複数の実施形態に係るセメント製品について、図面を参照しながら説明する。なお、各実施形態において実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。また、各図では、セメント製品の構造を理解し易くするために、セメント製品の各構成要素の厚み寸法を実際のものよりも誇張して描いている。
【0009】
各実施形態で説明するセメント製品は、例えば土木工事や建設工事等において、路面や擁壁、ブロック、側溝、集水桝、又は建築物の建材等に適用することができる。なお、セメント製品の用途や形状は上述したものに限定されず、土木工事や建設工事以外の用途に適用することもできる。また、各実施形態で説明するセメント製品は、例えば工事現場で打設されるいわゆる現場打ちで製造されるものでも良いし、工場で製造されるいわゆるプレキャストであっても良い。
【0010】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態について図1を参照して説明する。図1に示すセメント製品1は、例えば母材11とクロミック層12とを含んで構成することができる。母材11は、例えばセメントを主要な材料として含んでおり、硬化したセメントコンクリートやモルタル等で構成することができる。
【0011】
クロミック層12は、光又は水若しくは熱による外部刺激によってクロミズム現象を生じる層である。クロミズム現象とは、光又は水若しくは熱等による外部刺激によって光物性すなわち色彩、色調、蛍光強度、透過率、屈折率、又は反射率のいずれか1つまたは複数が可逆的に変化する現象である。クロミック層12は、外部刺激を受けると光物性が初期状態から変化し、外部刺激が取り除かれると光物性が初期状態に戻る。
【0012】
クロミック層12は、例えば光に反応してクロミズム現象を生じるもの、いわゆるフォトクロミズム現象を生じるもので構成することができる。また、クロミック層12は、例えば水に反応してクロミズム現象を生じるもの、いわゆるハイドロクロミズム現象を生じるもので構成することができる。更に、クロミック層12は、例えば熱に反応してクロミズム現象を生じるもの、いわゆるサーモクロミズム現象を生じるもので構成することができる。
【0013】
クロミック層12は、クロミズム現象を発揮する材料、いわゆるクロミック材121を含んでいる。クロミック材121は、例えば周知の有機又は無機の化合物で構成することができる。クロミック材121は、例えば外部刺激を受けてクロミズム現象を生じる材料を微細化したものすなわち微細粒子化又はマイクロカプセル化若しくはナノカプセル化したもので構成することができる。
【0014】
なお、本実施形態において、マイクロカプセル化若しくはナノカプセル化とは、樹脂等で構成された微小なカプセルに対象となる材料、この場合、クロミック材121を封入することを意味する。クロミック層12は、例えば微細化したクロミック材121を塗料に混ぜ、その塗料を、例えば硬化した母材11の表面に塗布し乾燥させることで形成することができる。なお、クロミック層12は、例えば微細化したクロミック材121を含む薄いシートを製造し、そのシートを例えば硬化した母材11の表面に張り付けることで形成されても良い。
【0015】
クロミック層12は、母材11の外側面に設けられている。すなわち、クロミック層12は、セメント製品1が目的の場所に設置された場合において、外気に触れる部分であって、かつ、外部から視認可能な箇所に設けられている。なお、母材11の両側面にクロミック層12を設けることもできる。母材11の厚みに対してクロミック層12の厚みは十分に小さい。例えば母材11の厚みは数cm~数十cmであるのに対し、クロミック層12の厚みは数μm~数mm程度に設定することができる。
【0016】
このように、本実施形態のセメント製品1によれば、セメント製品1は、母材11と、クロミック層12と、を備える。母材11は、セメントを含む材料を硬化させて形成することができる。クロミック層12は、母材11よりも外側面に形成されて、光又は水若しくは熱等の外部刺激に反応して光物性が変化する機能を有する。
【0017】
これによれば、クロミック層12は、セメント製品1が設置されている周囲の環境の変化に伴って、クロミック層12の特性に応じてクロミック層12の光物性が変化する。すなわち、セメント製品1が設置されている周囲の環境、例えば時間帯による日射量の変化、降雨の有無、若しくは気温の変化等によって、セメント製品1の表面の意匠を変化させることができる。その結果、意匠性の向上を図ることができるセメント製品1を提供することができる。
【0018】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について図2を参照して説明する。図2に示すセメント製品2は、紫外線透過抑制層13を備えている点で、上記第1実施形態のセメント製品1とは異なる。すなわち、図2に示すセメント製品2は、母材11及びクロミック層12に加えて、紫外線透過抑制層13を備えている。紫外線透過抑制層13は、クロミック層12よりも外側面に設けられている。換言すれば、クロミック層12は、紫外線透過抑制層13と母材11との間に設けられている。本実施形態の場合、紫外線透過抑制層13は、クロミック層12の外側面に設けられている。そのため、セメント製品2において外気に直接触れる部分は、紫外線透過抑制層13となる。母材11の厚みに対して紫外線透過抑制層13の厚みは十分に小さい。すなわち、紫外線透過抑制層13の厚みは、例えば数μm~数mm程度に設定することができる。
【0019】
紫外線透過抑制層13は、紫外線を乱反射又は吸収することにより、紫外線の透過を抑制する機能を有する。これにより、例えばセメント製品2が太陽光に晒された場合に、太陽光に含まれる紫外線の一部又は全部を遮断して、クロミック層12に到達する紫外線の量を低減することができる。その結果、クロミック層12が紫外線によって劣化することを抑制することができ、ひいてはセメント製品2の耐久性を向上させることができる。なお、この場合、紫外線透過抑制層12は、紫外線以外の波長の光を透過させることができる。
【0020】
紫外線透過抑制層13は、例えば紫外線透過抑制材131を含んで構成することができる。紫外線透過抑制材131は、例えば紫外線の透過を抑制する機能を有する材料を微細化したもの、すなわち微細粒子化又はマイクロカプセル化若しくはナノカプセル化したもので構成することができる。紫外線透過抑制層13は、例えばこの微細化した紫外線透過抑制材131を塗料に混ぜ、その塗料を、クロミック層12の表面に塗布し乾燥させることで形成することができる。なお、紫外線透過抑制層13は、例えば微細化した紫外線透過抑制材131を含む薄いシートを製造し、そのシートをクロミック層12の表面に張り付けることで形成しても良い。
【0021】
また、紫外線透過抑制層13は、可視光を透過可能な材料つまり透明又は半透明の材料で構成することができる。すなわち、紫外線透過抑制層13は、外部から紫外線透過抑制層13を通してクロミック層12を視認可能に構成されている。このため、本実施形態によれば、紫外線透過抑制層13を設けることによって、クロミック層12が視認できなくなることを抑制できる。
【0022】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について図3を参照して説明する。図3に示すセメント製品3は、クロミック層12に吸水材122を混ぜている点で、上記第1実施形態のセメント製品1と異なる。すなわち、図3に示すセメント製品3は、母材11とクロミック層12とを含んでいる。本実施形態の場合、クロミック層12は、水に反応して光物性が変化するもの、いわゆるハイドロクロミズム現象を生じるもので構成することができる。そして、クロミック層12は、クロミック材121に加えて、吸水材122を更に有している。
【0023】
吸水材122は、吸水性又は吸湿性を有する材料で構成されている。吸水材122は、例えば吸水性又は吸湿性を有する材料を、微細粒子化又はマイクロカプセル化若しくはナノカプセル化したもので構成することができる。本実施形態のクロミック層12は、例えば微細化したクロミック材121及び吸水材122を塗料に混ぜ、その塗料を、例えば硬化した母材11の表面に塗布し乾燥させることで形成することができる。
【0024】
クロミック層12に含まれるクロミック材121は、水に反応して光物性が変化する機能を有するいわゆるハイドロクロミック材を含んで構成することができる。これによれば、クロミック材121の反応に必要な水をクロミック層12に含まれる吸水材122に含ませることができるため、少ない水でも効率よくクロミック材121を反応させることができる。その結果、セメント製品3の表面の意匠の変化に関し、外部刺激に対する反応速度を上げることができる。
【0025】
また、吸水材122は、クロミック材121の反応に必要な水を長時間保持するとこができる。このため、吸水材122を含むクロミック層12は、に給水材122が含まれない場合に比べて、クロミック材121が水に反応して光物性が変化した状態をより長期間維持することができる。その結果、セメント製品3の表面の意匠が変化した状態を長期間維持することができる。
【0026】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について図4を参照して説明する。図4に示すセメント製品4は、母材11にクロミック材121を混ぜている点で、上記各実施形態と異なる。すなわち、図4に示すセメント製品4は、母材11を備えている。そして、母材11は、光又は水若しくは熱に反応して光物性が変化するクロミック材121を含んでいる。この場合、セメント製品4は、母材11とは別に構成されたクロミック層12を有していない。
【0027】
これによれば、上記第1実施形態のセメント製品1と同様の作用効果が得られる。また、母材11とは別にクロミック層12を形成する必要はないため、製造工数を低減することができる。
【0028】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について図5を参照して説明する。図5に示すセメント製品5は、クロミック材121を含む母材11の外側面に紫外線透過抑制層13を備えている点で、上記第4実施形態のセメント製品4と異なる。すなわち、図5に示すセメント製品5は、クロミック材121を含む母材11と、紫外線透過抑制層13とを備えている。紫外線透過抑制層13は、例えば紫外線透過抑制材131を含んで構成されており、紫外線の透過を抑制する機能を有する。そして、紫外線透過抑制層13は、母材11の外側面に設けられている。すなわち、図5に示すセメント製品5において、外気に直接触れる部分は、紫外線透過抑制層13となる。
【0029】
これによれば、上記第4実施形態のセメント製品4と同様の作用効果を得つつ、上記第2実施形態のセメント製品2と同様の作用効果も得ることができる。
【0030】
(第6実施形態)
次に、第6実施形態について図6を参照して説明する。図6に示すセメント製品6は、母材11にクロミック材121及び吸水材122を混ぜている点で、上記第4実施形態のセメント製品4と異なる。すなわち、図6に示すセメント製品6において、母材11は、クロミック材121と吸水材122とを含んでいる。この場合、クロミック材121は、水に反応して光物性が変化するいわゆるハイドロクロミック材で構成することができる。
【0031】
これによれば、上記第4実施形態のセメント製品4と同様の作用効果を得つつ、上記第3実施形態のセメント製品3と同様の作用効果も得ることができる。
【0032】
(その他の実施形態)
なお、本発明の実施形態は、上記した態様及び図面に記載した態様に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変形や拡張をすることができる。
例えば上記各実施形態は、2つ以上を組み合わせて変形することができる。例えば第3実施形態のセメント製品3に対して、第2実施形態の紫外線透過抑制層13を設けても良い。すなわち、第2実施形態のセメント製品2と第3実施形態のセメント製品3とを組み合わせて、母材11と、吸水材122を含むクロミック層12と、紫外線透過抑制層13とを備える構成とすることができる。また、例えば第6実施形態のセメント製品6に対して、第5実施形態の紫外線透過抑制層13を設けても良い。すなわち、第5実施形態のセメント製品5と第6実施形態のセメント製品6とを組み合わせて、吸水材122を含む母材11と、紫外線透過抑制層13とを備える構成とすることもできる。
【0033】
更に上記第1~第3実施形態において、例えば硬化した母材11の外側表面又はクロミック層12の裏側面に絵柄などの装飾加工を施すなどして、母材11とクロミック層12との間に装飾加工が施された層を設けても良い。そして、クロミック層12を、外部刺激に反応して透光性が変化するものとすることで、光又は水若しくは熱の変化に応じてセメント製品の表面に絵柄が出現したり消失したりさせることができる。
【0034】
また、母材11は単一の層である必要はなく、例えば材料や硬度の異なった複数の層で構成することもできる。上記第4実施形態~第6実施形態の母材11を複数層で構成する場合、母材11の複数の層のうち少なくとも最表面に位置する母材11にクロミック材121が含まれていれば良い。
【符号の説明】
【0035】
1、2、3、4、5、6…セメント製品、11…母材、12…クロミック層、121…クロミック材、122…吸水材、13…紫外線透過抑制層、131…紫外線透過抑制材
図1
図2
図3
図4
図5
図6