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  • 特開-筒型リニアモータ 図1
  • 特開-筒型リニアモータ 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174090
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】筒型リニアモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 41/03 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
H02K41/03 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086749
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391002487
【氏名又は名称】学校法人大同学園
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】加納 善明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩介
【テーマコード(参考)】
5H641
【Fターム(参考)】
5H641BB06
5H641BB14
5H641BB18
5H641GG03
5H641GG08
5H641HH02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】製造コストを低減可能な筒型リニアモータを提供する。
【解決手段】筒型リニアモータ1は、筒状のヨーク7aと環状であってヨーク7aの内周或いは外周の一方に軸方向に沿って並べて設けられる複数の突極7bとを有して磁性体で形成されるコア7と、環状であってコア7に対して軸方向に交互にN極とS極とが現れるように装着される複数の永久磁石6a,6bとを具備し、永久磁石6a,6bが設置される有磁石セクションS1と突極7b,7bが設けられて永久磁石6a,6bが設置されない無磁石セクションS2,S3とが設けられるコア組立体5と、コア組立体5の内周或いは外周のうち突極7b側に配置されてコア組立体5に対して軸方向へ相対移動可能であって、コア組立体5の軸方向に並べて設けられてコア組立体5に径方向で対向する複数の巻線4を有する電機子2とを備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のヨークと環状であって前記ヨークの内周或いは外周の一方に軸方向に沿って並べて設けられる複数の突極とを有して磁性体で形成されるコアと、環状であって前記コアに対して軸方向に交互にN極とS極とが現れるように装着される複数の永久磁石とを具備し、前記永久磁石が設置される有磁石セクションと前記突極が設けられて前記永久磁石が設置されない無磁石セクションとが設けられるコア組立体と、
前記コア組立体の内周或いは外周のうち前記突極側に配置されて前記コア組立体に対して軸方向へ相対移動可能であって、前記コア組立体の軸方向に並べて設けられて前記コア組立体に径方向で対向する複数の巻線を有する電機子とを備えた
ことを特徴とする筒型リニアモータ。
【請求項2】
前記コア組立体は、前記有磁石セクションに前記突極を有し、
前記有磁石セクションにおける前記突極の軸方向幅または前記突極を形成するための溝の深さと、前記無磁石セクションにおける前記突極の軸方向幅または前記突極を形成するための溝の深さとは、互いに異なっている
ことを特徴とする請求項1に記載の筒型リニアモータ。
【請求項3】
前記無磁石セクションにおける前記突極の軸方向幅は、前記有磁石セクションにおける前記突極の軸方向幅よりも広い
ことを特徴とする請求項2に記載の筒型リニアモータ。
【請求項4】
前記無磁石セクションにおける前記突極を形成するための溝の深さは、前記有磁石セクションにおける前記突極を形成するための溝の深さよりも深い
ことを特徴とする請求項2に記載の筒型リニアモータ。
【請求項5】
前記有磁石セクションは、前記電機子のストローク中心に対向する前記コア組立体の中央部に設置されている
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の筒型リニアモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒型リニアモータに関する。
【背景技術】
【0002】
筒型リニアモータは、たとえば、ロッドと、ロッドを取り囲むとともにロッドに対して軸方向に相対移動が可能な筒体と、環状であって筒体の内周に軸方向に沿って積層される複数のコイルでなる筒体側コイル列と、環状であってロッドの中央部の外周に積層されて装着される複数のネオジム磁石でなる磁石列と、環状であってロッドの外周であって磁石列を挟むようにして磁石列の上方と下方のそれぞれに積層されて装着される複数のコイルでなる上方側コイル列と下方側コイル列とを備えて構成されるものがある(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
このように構成された筒型リニアモータは、特に車両の車体と車輪との間に介装されて車体の振動を減衰させる推力を発揮するのに向くように、車両が空車状態から満積載状態までの範囲でロッドの中央部に装着された磁石列を筒体側コイル列に対向させて、大きな推力の発揮を可能としている。また、従来の筒型リニアモータは、ストローク量が大きくなった場合には上方側コイル列或いは下方側コイル列を筒体側コイル列に対向させ、筒体側コイル列のみならず、上方側コイル列或いは下方側コイル列にも通電して上方側コイル列或いは下方側コイル列を電磁石として利用することで、ネオジム磁石の使用量を少なくしてコストダウンを図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-55821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したように従来の筒型リニアモータでは、界磁を構成する磁石のうち大きな推力を得たいストローク中心付近でのみネオジム磁石を積層した磁石列を筒体側コイル列に対向させる構造を採用することで、ネオジム磁石の使用量を削減しているが、電機子側となる筒体側コイル列の他にも、界磁側に磁石列の他に多数のコイルを積層した2つのコイル列を設ける必要があるために製造コストが高く、より一層のコストの低減が要望される。
【0006】
そこで、本発明は、製造コストを低減可能な筒型リニアモータの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の筒型リニアモータは、筒状のヨークと環状であってヨークの内周或いは外周の一方に軸方向に沿って並べて設けられる複数の突極とを有して磁性体で形成されるコアと、環状であってコアに対して軸方向に交互にN極とS極とが現れるように装着される複数の永久磁石とを具備し、永久磁石が設置される有磁石セクションと突極が設けられて永久磁石が設置されない無磁石セクションとが設けられるコア組立体と、コア組立体の内周或いは外周のうち突極側に配置されてコア組立体に対して軸方向へ相対移動可能であって、コア組立体の軸方向に並べて設けられてコア組立体に径方向で対向する複数の巻線を有する電機子とを備えている。
【0008】
このように構成された筒型リニアモータでは、電機子がコア組立体における有磁石セクションに対向する場合には、永久磁石の磁力を利用して電機子を駆動する推力を発生でき、電機子がコア組立体の無磁石セクションに径方向で対向している場合、リラクタンス推力によって電機子を駆動する推力を発生できる。
【0009】
よって、本発明における筒型リニアモータでは、コア組立体の全長に亘って永久磁石を設けなくとも、コア組立体に電機子が対向していればコア組立体に対して電機子を軸方向へ相対移動させる推力を発生できる。また、本発明における筒型リニアモータでは、コア組立体の永久磁石が設けられていない無磁石セクションに巻線を設けなくともコア組立体に対して電機子を軸方向へ相対移動させる推力を発生できる。
【0010】
さらに、筒型リニアモータにおいて、コア組立体が有磁石セクションに突極を有し、有磁石セクションにおける突極の軸方向幅または突極を形成するための溝の深さと、無磁石セクションにおける突極の軸方向幅または突極を形成するための溝の深さとが互いに異なっていてもよい。このように構成された筒型リニアモータによれば、突極の軸方向幅または突極を形成するための溝の深さが異なっているので、有磁石セクションにおける突極の軸方向幅または突極を形成するための溝の深さを有磁石セクションに電機子が対向する際に推力を最大化するのに適するように設定しつつ、無磁石セクションにおける突極の軸方向幅または突極を形成するための溝の深さを無磁石セクションに電機子が対向する際の推力を最大化するのに適するように設定できる。よって、このように構成された筒型リニアモータでは、突極の軸方向幅または突極を形成するための溝の深さを最適化して推力の向上を図れる。
【0011】
また、筒型リニアモータにおいて、無磁石セクションにおける突極の軸方向幅を有磁石セクションにおける突極の軸方向幅よりも広くしてもよい。このように構成された筒型リニアモータによれば、無磁石セクションではリラクタンス推力の発生に有利なように突極の軸方向幅を広くしているので、無磁石セクションに電機子が対向する際の推力を向上できる。
【0012】
さらに、筒型リニアモータにおいて、無磁石セクションにおける突極を形成するための溝の深さを有磁石セクションにおける突極を形成するための溝の深さよりも深くしてもよい。このように構成された筒型リニアモータによれば、無磁石セクションではリラクタンス推力の発生に有利なように突極を形成するための溝の深さを深くして、無磁石セクションに電機子が対向する際の推力を向上できる。
【0013】
そして、筒型リニアモータにおいて、コア組立体に対して電機子が軸方向へストロークする際のストローク中心に対向するコア組立体の中央部に有磁石セクションを設けてもよい。このように構成された筒型リニアモータによれば、筒型リニアモータを自動車や鞍乗型車両の車体と車輪との間に介装して車体の振動を抑制する緩衝器として利用する場合や、鉄道車両の車体と台車との間に水平に介装して車体の左右振動を抑制するダンパとして利用する場合に電機子がストローク中心の近傍でコア組立体に対して振動する際に永久磁石の磁力によって大きな推力を発生できるので、効率的に車体の振動を抑制できる。よって、このように構成された筒型リニアモータは、車両用の緩衝器或いは鉄道車両用のダンパとして最適となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の筒型リニアモータによれば、製造コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施の形態における筒型リニアモータの縦断面図である。
図2】一実施の形態の第1変形例における筒型リニアモータのコア組立体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。一実施の形態における筒型リニアモータ1は、図1に示すように、筒状のヨーク7aと環状であってヨーク7aの内周に軸方向に沿って並べて設けられる複数の突極7bとを有して磁性体で形成されるコア7と、環状であってコア7に対して軸方向に交互にN極とS極とが現れるように装着される複数の永久磁石6a,6bとを備えたコア組立体5と、コア組立体5の内周であって突極7b側に配置されてコア組立体5に対して軸方向へ相対移動可能な電機子2とを備えて構成されている。
【0017】
以下、筒型リニアモータ1の各部について詳細に説明する。コア組立体5は、前述した通り、コア7と、コア7に装着される複数の永久磁石6a,6bとを備えている。
【0018】
コア7は、筒状のヨーク7aと、環状であってヨーク7aの内周に軸方向に沿って並べて設けられる複数の突極7bとを備えている。本実施の形態の筒型リニアモータ1では、コア7における突極7bは、ヨーク7aの周方向に沿う環状の突条で形成されており、ヨーク7aの内周に軸方向に等しいピッチの間隔で並べて設けられている。また、突極7bは、図1中でヨーク7aの中央部の所定範囲に配置されている複数の突極7b1と、ヨーク7aの所定範囲の外、つまり、中央部の前記所定範囲の図1中左右に配置されている複数の突極7b2とを備えている。そして、ヨーク7aの中央部の前記所定範囲に配置されている突極7b1の軸方向幅よりヨーク7aの所定範囲外に配置されている突極7b2の軸方向幅の方が広くなっている。なお、本実施の形態の筒型リニアモータ1では、突極7b1,7b2の軸方向の中央から隣の突極7b1,7b2の軸方向の中央までの距離(ピッチ)は、全ての突極間で等しくなっており、突極7b1,7b2は、ヨーク7aに対して軸方向で等ピッチで配置されている。
【0019】
永久磁石6a,6bは、環状であって径方向に着磁されているが、互いに反対向きに着磁されている。よって、永久磁石6aは、内周側をN極として外周側をS極としているが、永久磁石6bは、内周側をS極として外周側をN極としている。永久磁石6a,6bの軸方向長さは、互いに等しく、ヨーク7aの中央部に配置されている突極7b1,7b1間の軸方向の間隔にほぼ等しく、突極7b1,7b1間の空隙に収容可能な長さに設定されている。永久磁石6aと永久磁石6bは、ヨーク7aの内周であって、ヨーク7aにおける前記所定範囲に設置されている突極7b1,7b1間の空隙にそれぞれ1つずつ交互に装着される。よって、ヨーク7aにおける所定範囲内に位置する突極7b1,7b1間には永久磁石6a,6bが軸方向で交互に設置されており、永久磁石6a,6bによってコア7の内周にN極とS極とが交互に現れる界磁6が形成されている。なお、コア7は、詳しくは図示しないが、軸方向で複数のピースに分割されており、コア7が突極7b1,7b2を備えていても、コア7の内周に永久磁石6a,6bを装着できる。
【0020】
他方、ヨーク7aの所定範囲以外の範囲に位置する突極7b1,7b2間および突極7b2,7b2間には、永久磁石6a,6bが設置されていない。このように、ヨーク7aの所定範囲に永久磁石6a,6bを設置することによって、コア7の軸方向において永久磁石6a,6bが設置された有磁石セクションS1が設けられるとともに、コア7の有磁石セクションS1の軸方向の両側に永久磁石6a,6bが設置されていない2つの無磁石セクションS2,S3が設けられている。
【0021】
このように構成されたコア組立体5は、円筒状の非磁性体のバレル10と、バレル10内に挿入される円筒状の非磁性体のインナーチューブ9との間に形成される環状隙間に収容されている。そして、バレル10、コア組立体5およびインナーチューブ9の図1中左端はキャップ16によって閉塞されており、バレル10、コア組立体5およびインナーチューブ9の図1中右端は環状のヘッドキャップ15によって閉塞されている。
【0022】
電機子2は、筒状の電機子コア3と、電機子コア3に装着される巻線4とを備えて構成されて、コア組立体5内に軸方向へ移動可能に挿入されている。つまり、本実施の形態では、電機子2は、コア組立体5の内周側に配置されており、コア組立体5に対して軸方向に相対移動できる。
【0023】
電機子コア3は、本実施の形態では、磁性体で形成されており、円筒部3aと、環状であって円筒部3aの界磁側となる外周に周方向に沿ってかつ軸方向に間隔を空けて設けられる軸方向の断面が矩形状の複数のティース3bと、ティース3b,3b間の空隙で形成されて巻線4が装着されるスロット3cとを備えて構成されている。
【0024】
円筒部3aは、前述の通り円筒状であって、円筒部3aの横断面積がティース3bにおける磁路断面積以上となるように円筒部3aの肉厚が確保されている。
【0025】
本実施の形態では、図1に示すように、円筒部3aの外周に7個のティース3bが軸方向に等間隔に並べて設けられており、電機子コア3の界磁6側となる外周側であって、ティース3b,3b間に巻線4が装着される環状溝でなるスロット3cが形成されている。なお、本実施の形態では、ティース3bの断面形状は、矩形となっているが、基端側の磁路断面積を大きく確保できるように外周となる先端側の幅よりも内周となる基端側の幅を大きくした台形となっていてもよい。
【0026】
本実施の形態では、図1中で隣り合うティース3b,3b同士の間には、環状溝でなるスロット3cが合計で6個設けられている。スロット3cは、電機子コア3の周方向に沿って複数設けられており、電機子コア3の外周に軸方向に等ピッチで並べて設けられている。
【0027】
そして、このスロット3cには、巻線4が巻き回されて装着されている。巻線4は、U相、V相およびW相の三相巻線とされている。各相の巻線4は、6個のスロット3cに界磁6の磁極配置に応じて適した配置となるように装着される。
【0028】
このように構成された電機子2は、出力軸である非磁性体で形成されたロッド11の先端の外周に装着され、ロッド11とともに界磁6内に移動自在に挿入される。
【0029】
ロッド11は、バレル10の図1中右端に取り付けられたヘッドキャップ15内を通して筒型リニアモータ1外へ突出している。また、ロッド11の電機子2の図1中左右にはインナーチューブ9の内周に摺接する環状のウェアリング12a,13aを外周に備えた環状のスライダ12,13が装着されている。
【0030】
電機子2は、スライダ12,13によって挟持されてロッド11に固定されるとともに、インナーチューブ9の内周にスライダ12,13が摺動自在に挿入されているので、コア組立体5に対して軸ぶれしないので、インナーチューブ9に干渉することなく軸方向に移動できる。このように、電機子2は、インナーチューブ9によって、コア組立体5に対する軸方向への移動が案内される。
【0031】
このように、インナーチューブ9は、スライダ12,13と協働して電機子2の軸方向移動を案内する役割を果たしている。また、電機子コア3の外径は、インナーチューブ9の内径よりも小さく、インナーチューブ9に干渉することはなく、筒型リニアモータ1は円滑に伸縮できる。
【0032】
なお、ロッド11は、図示はしないが、筒状とされており、ロッド11内に通される図外の電線を通じて筒型リニアモータ1の外方に設置される外部電源から巻線4へ電力供給できる。
【0033】
筒型リニアモータ1は、以上のように構成されており、以下に筒型リニアモータ1の動作について説明する。まず、電機子2がコア7の有磁石セクションS1に径方向で対向している場合の動作について説明する。この場合、電機子2は、コア7の永久磁石6a,6bでなる界磁6に径方向で対向しているので、巻線4の界磁6に対する電気角をセンシングし、前記電気角に基づいて通電位相切換を行うとともにPWM制御により、各巻線4の電流量を制御すれば、筒型リニアモータ1における推力と電機子2の移動方向とを制御できる。なお、前述の制御方法は、一例でありこれに限られない。また、電機子2と界磁6とを軸方向に相対変位させる外力が作用する場合、巻線4への通電、あるいは、巻線4に発生する誘導起電力によって、前記相対変位を抑制する推力を発生させて筒型リニアモータ1に前記外力による機器の振動や運動をダンピングさせ得るし、外力から電力を生むエネルギ回生も可能である。このように、電機子2がコア7における有磁石セクションS1に対向する場合には、電機子2の巻線4への通電によって界磁6における永久磁石6a,6bと電機子2との間で生じる吸引力乃至反発力を利用して、筒型リニアモータ1は、コア組立体5に対して電機子2を軸方向へ相対移動させる推力を発生できる。よって、筒型リニアモータ1は、電機子2がコア7における有磁石セクションS1に対向する場合には、永久磁石6a,6bの磁力を利用して大きな推力を発生できる。
【0034】
他方、電機子2がコア7の無磁石セクションS2,S3に径方向で対向している場合、筒型リニアモータ1は、巻線4への通電によって突極7b2と軸方向にずれたティース3bを磁化して、コア7と電機子2との間にリラクタンス推力を発生させて、コア組立体5に対して電機子2を軸方向へ移動させる推力を発生できる。
【0035】
本実施の形態の場合、有磁石セクションS1にも突極7b1が設けられているので、電機子2の巻線4への通電によってリラクタンス推力を発生できるが、電機子2がコア7における有磁石セクションS1に対向する場合には、前述したように、筒型リニアモータ1は、主として永久磁石6a,6bの磁力を利用して電機子2を駆動する推力を発生する。これに対して、筒型リニアモータ1は、電機子2がコア7の無磁石セクションS2,S3に径方向で対向している場合、電機子2におけるティース3bと突極7b1との間に生じるリラクタンス推力によって電機子2を駆動する推力を発生する。
【0036】
以上、本実施の形態の筒型リニアモータ1は、筒状のヨーク7aと環状であってヨーク7aの内周に軸方向に沿って並べて設けられる複数の突極7b1,7b2とを有して磁性体で形成されるコア7と、環状であってコア7に対して軸方向に交互にN極とS極とが現れるように装着される複数の永久磁石6a,6bとを具備し、永久磁石6a,6bが設置される有磁石セクションS1と突極7b2,7b2が設けられ永久磁石6a,6bが設置されない無磁石セクションS2,S3とが設けられるコア組立体5と、コア組立体5の突極7b側である内周に配置されてコア組立体5に対して軸方向へ相対移動可能であり、コア組立体5の軸方向に並べて設けられてコア組立体5に径方向で対向する複数の巻線4を有する電機子2とを備えている。
【0037】
このように構成された筒型リニアモータ1では、電機子2がコア組立体5における有磁石セクションS1に対向する場合には、永久磁石6a,6bの磁力を利用して電機子2を駆動する推力を発生でき、電機子2がコア組立体5の無磁石セクションS2,S3に径方向で対向している場合、リラクタンス推力によって電機子2を駆動する推力を発生できる。
【0038】
よって、筒型リニアモータ1では、コア組立体5の全長に亘って永久磁石6a,6bを設けなくとも、コア組立体5に電機子2が対向していればコア組立体5に対して電機子2を軸方向へ相対移動させる推力を発生できる。また、本実施の形態における筒型リニアモータ1では、コア組立体5の永久磁石6a,6bが設けられていない無磁石セクションS2,S3に巻線を設けなくともコア組立体5に対して電機子2を軸方向へ相対移動させる推力を発生できる。
【0039】
以上より、本実施の形態の筒型リニアモータ1によれば、永久磁石が設けられない箇所に巻線を設けなくてはならない従来の筒型リニアモータと比較して、部品点数を削減できるので、製造コストを大幅に低減できる。
【0040】
また、本実施の形態の筒型リニアモータ1では、有磁石セクションS1における突極7b1の軸方向幅と、無磁石セクションS2,S3における突極7b2の軸方向幅とは互いに異なっている。このように構成された筒型リニアモータ1によれば、突極7b1および突極7b2の軸方向幅が異なっているので、突極7b1の軸方向幅を有磁石セクションS1に電機子2が対向する際に推力を最大化するのに適した幅に設定しつつ、突極7b2の軸方向幅を無磁石セクションS2,S3に電機子2が対向する際の推力を最大化するのに適した幅に設定できる。よって、このように構成された筒型リニアモータ1では、突極7b1,7b2の軸方向幅を最適化して推力の向上を図れる。
【0041】
さらに、本実施の形態の筒型リニアモータ1では、無磁石セクションS2,S3における突極7b2の軸方向幅が有磁石セクションS1における突極7b1の軸方向幅よりも広くなっている。このように構成された筒型リニアモータ1によれば、無磁石セクションS2,S3ではリラクタンス推力の発生に有利なように突極7b2の軸方向幅を広くしているので、無磁石セクションS2,S3に電機子2が対向する際の推力を向上できる。
【0042】
なお、前述したところでは、有磁石セクションS1に配置される突極7b1の軸方向幅と無磁石セクションS2,S3に配置される軸方向幅とが異なっているが、突極7b1と突極7b2との軸方向幅を等しくしてもよい。
【0043】
また、無磁石セクションS2に配置される突極7b2と無磁石セクションS3に配置される突極7b2との軸方向幅が異なっていてもよいし、無磁石セクションS2,S3に配置される突極7b2の軸方向幅の一部または全部がそれぞれ異なっていてもよい。
【0044】
また、図示はしないが、有磁石セクションS1における突極7b1を形成するための溝(コア7の突極7b1,7b1間の部分)の深さと、無磁石セクションS2,S3における突極7b2を形成するための溝(コア7の突極7b2,7b2間および突極7b1,7b2間の部分)の深さとは互いに異なっていてもよい。このように構成された筒型リニアモータ1によれば、有磁石セクションS1における突極7b1を形成するための溝の深さと無磁石セクションS2,S3における突極7b2を形成するための溝の深さが異なっているので、有磁石セクションS1における突極7b1を形成するための溝の深さを有磁石セクションS1に電機子2が対向する際に推力を最大化するのに適した深さに設定しつつ、無磁石セクションS2,S3における突極7b2を形成するための溝の深さを無磁石セクションS2,S3に電機子2が対向する際の推力を最大化するのに適した深さに設定できる。よって、このように構成された筒型リニアモータ1では、前記した各溝の深さを最適化して推力の向上を図れる。
【0045】
さらに、無磁石セクションS2,S3における突極7b2を形成するための溝の深さを有磁石セクションS1における突極7b1を形成するための溝の深さよりも深くしてもよい。このように構成された筒型リニアモータ1によれば、無磁石セクションS2,S3ではリラクタンス推力の発生に有利なように突極7b2を形成するための溝の深さを深くして、無磁石セクションS2,S3に電機子2が対向する際の推力を向上できる。
【0046】
なお、前述したように、有磁石セクションS1に配置される突極7b1を形成するための溝の深さと無磁石セクションS2,S3に配置される突極7b2を形成するための溝の深さとを異なるようにして筒型リニアモータ1の推力の最大化を図ってもよいが、前記した各溝の深さを同じに設定してもよい。
【0047】
さらに、無磁石セクションS2,S3に配置されて等ピッチで設置される突極7b2,7b2間および突極7b1,7b2間にリラクタンス推力の向上やコギング推力の低減のために補助突極を設けてもよい。
【0048】
また、筒型リニアモータ1が有磁石セクションS1に電機子2が対向する際にリラクタンス推力に起因した推力を発生させる必要がない場合、図2に示すように、コア7の有磁石セクションS1に属する突極7b1を廃止してもよい。この場合、有磁石セクションS1における永久磁石を径方向に着磁された永久磁石と軸方向に着磁された永久磁石とハルバッハ配列で交互に積層して、電機子2へより強い磁界を作用させることができ、有磁石セクションS1に電機子2が径方向で対向している際の筒型リニアモータ1の推力を一層向上させ得る。また、図示はしないが、コア7に有磁石セクションS1の両端に配置される2つの突極7b1のみを設けて、永久磁石6a,6b間には突極を設けない構造のコア7を採用してもよい。
【0049】
なお、本実施の形態の筒型リニアモータ1では、電機子2が軸方向へストロークする際のストローク中心に対向するコア組立体5における中央部に有磁石セクションS1を設けている。このように構成された筒型リニアモータ1によれば、筒型リニアモータ1を自動車や鞍乗型車両の車体と車輪との間に介装して車体の振動を抑制する緩衝器として利用する場合や、鉄道車両の車体と台車との間に水平に介装して車体の左右振動を抑制するダンパとして利用する場合に電機子2がストローク中心の近傍でコア組立体5に対して振動する際に永久磁石6a,6bの磁力によって大きな推力を発生できるので、効率的に車体の振動を抑制できる。よって、本実施の形態の筒型リニアモータ1は、車両用の緩衝器或いは鉄道車両用のダンパとして最適となる。なお、筒型リニアモータ1を自動車や鞍乗型車両の車体と車輪との間に介装して車体の振動を抑制する緩衝器として利用する場合、車両に乗車する搭乗者や車両に積載される荷物の積載荷重を考慮して、積載荷重を積載された車両における車体と車輪との間に筒型リニアモータ1を介装した状態において、電機子2がコア組立体5と対向する位置をストローク中心として、当該ストローク中心を中心として電機子2が頻繁にストロークする範囲に対向する範囲を有磁石セクションS1として永久磁石6a,6bをコア7に設置すればよい。
【0050】
また、本実施の形態の筒型リニアモータ1では、コア組立体5の中央部に有磁石セクションS1を設けているが、コア組立体5に対する有磁石セクションS1の位置は筒型リニアモータ1が大きな推力を発生することが見込まれる電機子2のストローク範囲に対向する位置に設定すること好ましいので、筒型リニアモータ1が設置される機械、機器や構造物の特質に応じて、コア組立体5に対する有磁石セクションS1の位置を設定すればよい。よって、有磁石セクションS1は、コア組立体5に対して1箇所ではなく複数個所に設けられてもよく、コア組立体5への設置位置も中央部に限られない。また、無磁石セクションS2,S3の設置箇所も有磁石セクションS1のコア組立体5に対する設置位置に応じて設置数と設置箇所も設計変更できる。
【0051】
なお、本実施の形態の筒型リニアモータ1は、コア組立体5の内周に電機子2を設ける構造となっているが、コア組立体5の外周に筒状の電機子2を設ける構造を採用することも可能である。その場合、コア7のヨーク7aの外周に環状の突極7b1,7b2を設けて、ヨーク7aの外周であってコア組立体5の有磁石セクションS1に永久磁石6a,6bを装着して、電機子2の電機子コア3の内周にティース3bを設けて、ティース3b間に巻線4を装着すればよい。このように筒型リニアモータが構成されても、筒型リニアモータは、電機子2がコア組立体5の有磁石セクションS1に対向する際には永久磁石6a,6bの磁力を利用して大きな推力を発生でき、電機子2がコア組立体5の無磁石セクションS2,S3に対向する際にはリラクタンス推力を利用して推力を発生できる。よって、このようにコア組立体5の外周に電機子2を設けた構造を採用した筒型リニアモータによれば、永久磁石が設けられない箇所に巻線を設けなくてはならない従来の筒型リニアモータに比較して、部品点数を削減できるので、製造コストを大幅に低減できる。
【0052】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、および変更が可能である。
【符号の説明】
【0053】
1・・・筒型リニアモータ、2・・・電機子、4・・・巻線、5・・・コア組立体、6a,6b・・・永久磁石、7・・・コア、7a・・・ヨーク、7b,7b1,7b2・・・突極、S1・・・有磁石セクション、S2,S3・・・無磁石セクション
図1
図2