(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174097
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】基板材料用樹脂組成物、および半導体装置
(51)【国際特許分類】
H05K 1/03 20060101AFI20231130BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20231130BHJP
C08L 79/00 20060101ALI20231130BHJP
C08L 21/00 20060101ALI20231130BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20231130BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20231130BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20231130BHJP
C08J 5/24 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
H05K1/03 610L
C08L63/00 A
C08L79/00 Z
C08L21/00
C08L9/00
C08L83/04
C08K3/013
C08J5/24 CFC
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086758
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】阿部 智行
【テーマコード(参考)】
4F072
4J002
【Fターム(参考)】
4F072AA04
4F072AA07
4F072AB09
4F072AB28
4F072AD02
4F072AD11
4F072AD22
4F072AD27
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4F072AF30
4F072AG03
4F072AG19
4F072AH02
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4F072AK02
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4F072AL13
4J002CD02W
4J002CD05W
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4J002CD07W
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4J002CD18Y
4J002CM00X
4J002CM02Z
4J002CP03Y
4J002DE076
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4J002FD140
4J002FD150
4J002FD200
4J002GF00
4J002GQ05
(57)【要約】
【課題】基板の反りの低減と、良好な埋め込み性を両立できる基板材料用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明の基板材料用樹脂組成物は、エポキシ樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、およびエラストマーを含む基板材料用樹脂組成物であって、熱機械分析装置を用いて、温度50℃から150℃の昇温過程で測定される、当該基板材料用樹脂組成物の硬化物の線膨張係数α1が3ppm/℃以上15ppm/℃以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、およびエラストマーを含む基板材料用樹脂組成物であって、
熱機械分析装置を用いて、温度50℃から150℃の昇温過程で測定される、当該基板材料用樹脂組成物の硬化物の線膨張係数α1が3ppm/℃以上15ppm/℃以下である、基板材料用樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の基板材料用樹脂組成物であって、
当該基板材料用樹脂組成物の示差走査熱量計を用いて、昇温速度10℃/minの条件下で30℃から330℃まで昇温した際に得られるDSC曲線において、最大発熱ピークのピーク温度が200~250℃である、基板材料用樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の基板材料用樹脂組成物であって、
当該基板材料用樹脂組成物のBステージ状態の動的粘弾性試験による、測定範囲50~200℃、昇温速度3℃/min、周波数62.83rad/secでの複素動的粘度の極小値をηとしたとき、ηが、100Pa・s以上2500Pa・s以下である、基板材料用樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1または2に記載の基板材料用樹脂組成物であって、
前記エラストマーは、エポキシ化ジエン系ポリマー、及びシリコンゴムからなる群より選ばれる1種または2種以上である、基板材料用樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1または2に記載の基板材料用樹脂組成物であって、
前記エラストマーの含有量が、当該基板材料用樹脂組成物(固形分量)全量に対して0.1質量%以上20質量%以下である、基板材料用樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1または2に記載の基板材料用樹脂組成物であって、
無機充填材をさらに含む、基板材料用樹脂組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の基板材料用樹脂組成物であって、
前記無機充填材の含有量が、当該基板材料用樹脂組成物(固形分量)全量に対して60質量%以上95質量%以下である、基板材料用樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1または2に記載の基板材料用樹脂組成物であって、
当該基板材料用樹脂組成物が、シアネート樹脂をさらに含む、基板材料用樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1または2に記載の基板材料用樹脂組成物からなる樹脂膜。
【請求項10】
キャリア基材と、
前記キャリア基材上に設けられている、請求項1または2に記載の基板材料用樹脂組成物からなる樹脂膜と、を備える、キャリア付樹脂膜。
【請求項11】
請求項1または2に記載の基板材料用樹脂組成物を繊維基材に含浸してなるプリプレグ。
【請求項12】
請求項11に記載のプリプレグであって、
前記繊維基材が、ガラス繊維基材、ポリアミド系樹脂繊維、ポリエステル系樹脂繊維、ポリイミド樹脂繊維、およびフッ素樹脂繊維の中から選ばれる1種または2種以上を含む、プリプレグ。
【請求項13】
請求項1または2に記載の基板材料用樹脂組成物の硬化物で構成された絶縁層を備える、プリント配線基板。
【請求項14】
請求項13に記載のプリント配線基板と、
前記プリント配線基板の回路層上に搭載された、または前記プリント配線基板に内蔵された半導体素子と、を備える、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板材料用樹脂組成物、および半導体装置に関する。より詳細には、基板材料用樹脂組成物、これを用いた樹脂膜、キャリア付樹脂膜、プリプレグ、プリント配線基板、ならびに半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化・軽量化に伴い、プリント配線基板の薄型化の検討が進んでいる。しかしながら、樹脂封止後、封止樹脂研磨後等の各工程の後で、基板の反りの問題が発生しやすい。そこで、プリント配線基板におけるビルドアップ層中の絶縁層やコア層中の絶縁層を形成するプリプレグや樹脂シートの開発が進んでいる。
例えば、特許文献1には、熱硬化性成分および球状シリカを用いた樹脂シートについて、この樹脂シートの硬化物における室温からTg-10℃における平均線膨張係数は32~57ppm/℃とすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術においては、回路配線の間隙を埋め込むための良好な埋め込み性と反り抑制とを両立する点で改善の余地があった。なかでも、熱時の半導体パッケージの反りを低減する点で不十分であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、エポキシ樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、およびエラストマーを組み合わせた樹脂組成物を新たにプリント配線基板材料として適用することに着眼し、この硬化物の線膨張係数を制御することで、熱時における反りを低減と、良好な埋め込み性とのトレードオフバランスを従来よりも高水準で実現できることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
本発明は、以下の基板材料用樹脂組成物、および半導体装置に関する。より詳細には、基板材料用樹脂組成物、これを用いた樹脂膜、キャリア付樹脂膜およびプリプレグ、ならびに半導体装置を提供する。
【0007】
[1] エポキシ樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、およびエラストマーを含む基板材料用樹脂組成物であって、
熱機械分析装置を用いて、温度50℃から150℃の昇温過程で測定される、当該基板材料用樹脂組成物の硬化物の線膨張係数α1が3ppm/℃以上15ppm/℃以下である、基板材料用樹脂組成物。
[2] [1]に記載の基板材料用樹脂組成物であって、
当該基板材料用樹脂組成物の示差走査熱量計を用いて、昇温速度10℃/minの条件下で30℃から330℃まで昇温した際に得られるDSC曲線において、最大発熱ピークのピーク温度が200~250℃である、基板材料用樹脂組成物。
[3] [1]または[2]に記載の基板材料用樹脂組成物であって、
当該基板材料用樹脂組成物のBステージ状態の動的粘弾性試験による、測定範囲50~200℃、昇温速度3℃/min、周波数62.83rad/secでの複素動的粘度の極小値をηとしたとき、ηが、100Pa・s以上2500Pa・s以下である、基板材料用樹脂組成物。
[4] [1]乃至[3]いずれか1つに記載の基板材料用樹脂組成物であって、
前記エラストマーは、エポキシ化ジエン系ポリマー、及びシリコンゴムからなる群より選ばれる1種または2種以上である、基板材料用樹脂組成物。
[5] [1]乃至[4]いずれか1つに記載の基板材料用樹脂組成物であって、
前記エラストマーの含有量が、当該基板材料用樹脂組成物(固形分量)全量に対して0.1質量%以上20質量%以下である、基板材料用樹脂組成物。
[6] [1]乃至[5]いずれか1つに記載の基板材料用樹脂組成物であって、
無機充填材をさらに含む、基板材料用樹脂組成物。
[7] [6]に記載の基板材料用樹脂組成物であって、
前記無機充填材の含有量が、当該基板材料用樹脂組成物(固形分量)全量に対して60質量%以上95質量%以下である、基板材料用樹脂組成物。
[8] [1]乃至[7]いずれか1つに記載の基板材料用樹脂組成物であって、
当該基板材料用樹脂組成物が、シアネート樹脂をさらに含む、基板材料用樹脂組成物。
[9] [1]乃至[8]いずれか1つに記載の基板材料用樹脂組成物からなる樹脂膜。
[10] キャリア基材と、
前記キャリア基材上に設けられている、[1]乃至[8]いずれか1つに記載の基板材料用樹脂組成物からなる樹脂膜と、を備える、キャリア付樹脂膜。
[11] [1]乃至[8]いずれか1つに記載の基板材料用樹脂組成物を繊維基材に含浸してなるプリプレグ。
[12] [11]に記載のプリプレグであって、
前記繊維基材が、ガラス繊維基材、ポリアミド系樹脂繊維、ポリエステル系樹脂繊維、ポリイミド樹脂繊維、およびフッ素樹脂繊維の中から選ばれる1種または2種以上を含む、プリプレグ。
[13] [1]乃至[8]いずれか1つに記載の基板材料用樹脂組成物の硬化物で構成された絶縁層を備える、プリント配線基板。
[14] [13]に記載のプリント配線基板と、
前記プリント配線基板の回路層上に搭載された、または前記プリント配線基板に内蔵された半導体素子と、を備える、半導体装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、基板の反りの低減と、良好な埋め込み性を両立できる基板材料用樹脂組成物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態の半導体装置の一例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下のことを表す。例えば、「1~5質量%」とは「1質量%以上5質量%以下」を意味する。
【0011】
<基板材料用樹脂組成物>
本実施形態の基板材料用樹脂組成物は、エポキシ樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、およびエラストマーを含み、熱機械分析装置を用いて、温度50℃から150℃の昇温過程で測定される、当該基板材料用樹脂組成物の硬化物の線膨張係数α1が3ppm/℃以上15ppm/℃以下である。
これにより、熱時における反りを低減と、良好な埋め込み性とのトレードオフバランスを従来よりも高水準で実現できる。かかる理由の詳細は明らかではないが、硬化時にベンゾオキサジンが開環し、エラストマーと反応することで高密度な構造が得られ、かつエラストマー成分による低弾性率化を付与することができるため、成形性などの基本的な特性を維持しつつも、低応力化を実現できると推測される。くわえて、硬化物の線膨張係数α1を制御することによって、熱時の反りを抑制することにより、熱時の反り抑制と良好な埋め込み性とを高水準で得られるようになる。
【0012】
なお、本実施形態において、基板材料用樹脂組成物の硬化物は、基板材料用樹脂組成物を220℃で60分プレス成型して得られたものを示す。
【0013】
本実施形態において、上記線膨張係数α1は、3ppm/℃以上15ppm/℃以下であり、良好な成形性を保持する点から、好ましくは5ppm/℃以上であり、より好ましくは8ppm/℃以上であり、さらに好ましくは10ppm/℃以上である。
線膨張係数α1を上記数値範囲内とすることにより、基板の反りを低減しつつ良好な埋め込み性を高水準で両立できる。
【0014】
また、本実施形態の基板材料用樹脂組成物のBステージ状態の動的粘弾性試験による、測定範囲50~200℃、昇温速度3℃/min、周波数62.83rad/secでの複素動的粘度の極小値をηとしたとき、ηが、50Pa・s以上2500Pa・s以下であることが好ましく、70Pa・s以上2000Pa・s以下であることが好ましく、90Pa・s以上1500Pa・s以下であることがより好ましい。
【0015】
また、本実施形態の基板材料用樹脂組成物は、示差走査熱量計を用いて、昇温速度10℃/minの条件下で30℃から330℃まで昇温した際に得られるDSC曲線において、最大発熱ピークのピーク温度が200~250℃であることが好ましく、210~240℃であることが好ましく、220~235℃であることがより好ましい。
基板材料用樹脂組成物のDSC曲線における最大発熱ピーク温度を制御することにより、低温側での反応の進行を抑制し、高温側の硬化温度での反応率を高くでき、埋め込み性を保持しつつも、硬化物の反りを低減しやすくなると推測される。
また、100~250℃の温度領域における発熱ピークは、単一であることが好ましい。
【0016】
また、最大発熱時の発熱量は、10~100mJ/mgであることが好ましく、20~80mJ/mgであることがより好ましく、40~70mJ/mgであることがさらに好ましい。
【0017】
本実施形態の線膨張係数α1、最低溶融粘度、DSC曲線における最大発熱ピーク温度は、樹脂材料、無機充填材の選択および含有量の調整など、公知の方法を適宜組み合わせることによって制御できる。また、DSC曲線における最大発熱ピークのピーク温度は、封止樹脂組成物の混錬条件(温度および時間)を調整することによって、高温側または低温側にシフトすることもできる。
【0018】
以下、本実施形態の基板材料用樹脂組成物に含まれる各成分について説明する。
【0019】
[エポキシ樹脂]
上記エポキシ樹脂としては、1分子内にエポキシ基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般を用いることができ、その分子量や分子構造は特に限定されない。
本実施形態において、エポキシ樹脂としては、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂;スチルベン型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂などの多官能エポキシ樹脂;フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂などのアラルキル型エポキシ樹脂;ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレンの2量体をグリシジルエーテル化して得られるエポキシ樹脂などのナフトール型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレートなどのトリアジン核含有エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂などの有橋環状炭化水素化合物変性フェノール型エポキシ樹脂が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
これらの中でも、エポキシ樹脂としては、耐湿信頼性と成形性のバランスを向上させる観点から、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、およびトリフェノールメタン型エポキシ樹脂からなる群から選択される1種または2種以上を含むことが好ましく、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂およびフェノールアラルキル型エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0020】
エポキシ樹脂(A)としては、以下の式(1)で表されるエポキシ樹脂、以下の式(2)で表されるエポキシ樹脂、および以下の式(3)で表されるエポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含有するものを用いることがさらに好ましい。
【0021】
【化1】
(式(1)中、Ar
1はフェニレン基またはナフチレン基を表し、Ar
1がナフチレン基の場合、グリシジルエーテル基はα位、β位のいずれに結合していてもよい。Ar
2はフェニレン基、ビフェニレン基またはナフチレン基のうちのいずれか1つの基を表す。R
aおよびR
bは、それぞれ独立に炭素数1~10の炭化水素基を表す。gは0~5の整数であり、hは0~8の整数である。n
3は重合度を表し、その平均値は1~3である。)
【0022】
【化2】
(式(2)中、複数存在するR
cは、それぞれ独立に水素原子または炭素数1~4の炭化水素基を表す。n
5は重合度を表し、その平均値は0~4である。)
【0023】
【化3】
(式(3)中、複数存在するR
dおよびR
eは、それぞれ独立に水素原子または炭素数1~4の炭化水素基を表す。n
6は重合度を表し、その平均値は0~4である。)
【0024】
エポキシ樹脂の含有量は、基板材料用樹脂組成物(固形分量)全量に対し、0.1質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、2質量%以上であることがさらに好ましい。エポキシ樹脂の含有量を上記下限値以上とすることにより、成形時において、十分な流動性を実現し、充填性や成形性の向上を図ることができる。
一方で、エポキシ樹脂の含有量は、基板材料用樹脂組成物(固形分量)全量に対し、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。エポキシ樹脂の含有量を上記上限値以下とすることにより、基板材料用樹脂組成物の硬化物における耐湿信頼性や耐リフロー性を向上させることができる。
【0025】
[ベンゾオキサジン樹脂]
本実施形態のベンゾオキサジン樹脂は、ベンゾオキサジン環を2つ以上有する化合物の(共)重合体である。ベンゾオキサジン環を2つ以上有する化合物は、耐熱性を向上させる観点から、たとえば以下一般式(4)に示す化合物および以下一般式(5)に示す化合物のうちの少なくとも一方を含むことができ、好ましくは以下一般式(4)に示す化合物を少なくとも含む。
【0026】
【0027】
上記一般式(4)において、R3は炭素数1~30の二価の有機基であり、酸素原子および窒素原子のうちの1種以上を含んでいてもよい。封止材の高温保管特性を向上させる観点からは、R3が芳香環を含む有機基であることが好ましい。本実施形態においては、上記一般式(4)に示す化合物として、たとえば以下の式(4a)に示す化合物を用いることができる。
【0028】
【0029】
【0030】
上記一般式(5)において、R4は炭素数1以上30以下の2価の有機基であり、酸素原子、窒素原子、および硫黄原子のうちの1種以上を含んでいてもよい。2つのR5は、それぞれ独立して炭素数1以上12以下の芳香族炭化水素基である。
【0031】
ベンゾオキサジン樹脂の含有量は、基板材料用樹脂組成物(固形分量)全量に対し、8質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。ベンゾオキサジン樹脂の含有量を上記下限値以上とすることにより、線膨張係数を低くし、反りを抑止しやすくなる。
一方で、ベンゾオキサジン樹脂の含有量は、基板材料用樹脂組成物(固形分量)全量に対し、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましい。ベンゾオキサジン樹脂の含有量を上記上限値以下とすることにより、基板材料用樹脂組成物の硬化物における良好な弾性を保持しつつ、良好な埋め込み性が得られる。
【0032】
[エラストマー]
エラストマーは、本実施形態の基板材料用樹脂組成物に靭性や柔軟性を付与し、熱時の反りを低減しつつ、埋め込み性を向上させるために用いられる。また、ベンゾオキサジン樹脂と併用されることで、低弾性率かつ低線膨張係数とすることができる。
【0033】
エラストマーとしては、例えば、エポキシ化ジエン系ポリマー、及びシリコンゴムからなる群より選ばれる1種または2種以上が挙げられる。
【0034】
上記エポキシ化ジエン系ポリマーは、ポリブタジエンをエポキシ変性した化合物であり、ジエン系ポリマーをエポキシ化反応液に浸漬させることで、ジエン系ポリマー骨格中の二重結合を過酸化水素でエポキシ化して得られる。エポキシ化ジエン系ポリマーのエポキシ化率は、5~40mol%であることが好ましく、10~30mol%であることがより好ましく、15~25mol%であることがさらに好ましい。
エポキシ化率を、上記下限値以上とすることにより、適度な粘度が得られ、均一に分散され、耐熱性を得つつ、安定した埋め込み性が得られやすくなる。一方、エポキシ化率を、上記上限値以下とすることにより、反りを抑制しやすくなる。
【0035】
エポキシ化ジエン系ポリマーの数平均分子量は、特に限定されないが、500~10,000が好ましく、1,000~5,000がより好ましい。数平均分子量が上記範囲とすることで、安定した埋め込み性が得られやすくなる。
なお、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより標準ポリスチレンの検量線を利用して測定した値である。
【0036】
エラストマーの含有量は、基板材料用樹脂組成物(固形分量)全量に対し、0.1~20質量%が好ましく、0.5~10質量%がより好ましく、1~5質量%がさらに好ましい。
エラストマーの含有量を、上記下限値以上とすることにより、低応力化を実現し、反り抑制と埋め込み性を両立しやすくなる。一方、エラストマーの含有量を、上記上限値以下とすることにより、良好な成形性が保持される。
【0037】
本実施形態の基板材料用樹脂組成物は、さらに以下の成分を含んでもよい。
【0038】
[シアネート樹脂]
本実施形態の基板材料用樹脂組成物は、シアネート樹脂を含むことが好ましい。シアネート樹脂により、低熱膨張係数、低誘電率、低誘電正接が得られやすくなる。また、ピール強度を良好にし、耐熱性を向上できる。
【0039】
シアネート樹脂としては、芳香族シアネート樹脂が好ましく、具体的には、フェノールノボラック型、およびクレゾールノボラック型などのノボラック型シアネート樹脂;フェニルアラルキル型、ビフェニルアラルキル型、およびナフタレンアラルキル型などのアラルキル型シアネート樹脂;ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂、およびテトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂などのビスフェノール型シアネート樹脂などを挙げることができる。
これらの中でも、ビスフェノール型シアネートおよび/またはノボラック型シアネート樹脂が好ましく、両者を併用することがより好ましい。この理由としては、ビスフェノール型シアネートエステル樹脂は、架橋点が少ないため、トリアジン環を形成した際に未反応のシアネート基が残りにくく、誘電特性を良好に維持しやすくなると考えられる。また、ノボラック型シアネート樹脂は、硬化反応後にトリアジン環を形成するため、剛性や耐熱性を向上できる。
【0040】
上記のノボラック型シアネート樹脂としては、例えば、以下の式(I)で示されるものを使用することができる。
【0041】
【0042】
一般式(I)で示されるノボラック型シアネート樹脂の平均繰り返し単位nは任意の整数である。平均繰り返し単位nは、特に限定されないが、1以上が好ましく、2以上がより好ましい。平均繰り返し単位nが上記下限値以上であると、ノボラック型シアネート樹脂の耐熱性が向上し、加熱時に低量体が脱離、揮発することを抑制できる。また、平均繰り返し単位nは、特に限定されないが、10以下が好ましく、7以下がより好ましい。nが上記上限値以下であると、溶融粘度が高くなるのを抑制でき、プリプレグの成形性を向上させることができる。
【0043】
また、シアネート樹脂は、変性されたものであってもよく、例えば、ブタジエンにより変性されたブタジエン変性シアネートを含むものであってもよい。ブタジエン変性シアネートの詳細は、シアン酸エステル化合物とポリブタジエンを混合した後、熱重合によって得られたもの、および/またはシアン酸エステル化合物の重合物とポリブタジエンを混合した後、熱重合によって得られたものであってもよい。これにより、誘電特性および低反り両立しつつ、耐熱性を良好に保持できる。
【0044】
シアネート樹脂の重量平均分子量(Mw)の下限値は、特に限定されないが、Mw500以上が好ましく、Mw600以上がより好ましい。Mwが上記下限値以上であると、プリプレグを作製した場合にタック性の発生を抑制でき、プリプレグ同士が接触したとき互いに付着したり、プリプレグの転写が生じたりするのを抑制することができる。
また、Mwの上限値は、特に限定されないが、Mw4,500以下が好ましく、Mw3,000以下がより好ましい。Mwが上記上限値以下であると、シアネート樹脂(C)の環化反応が速くなるのを抑制でき、絶縁層に不良が生じたり、絶縁層と金属層とのピール強度が低下したりするのを抑制することができる。
【0045】
シアネート樹脂のMwは、例えば、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー、標準物質:ポリスチレン換算)で測定することができる。
【0046】
また、シアネート樹脂は1種類を単独で用いてもよいし、異なるMwを有する2種類以上を併用してもよく、1種類または2種類以上と、それらのプレポリマーとを併用してもよい。
【0047】
シアネート樹脂の含有量は、基板材料用樹脂組成物(固形分量)全量に対し、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.1質量%以上であることがさらに好ましく、0.3質量%以上がことさらに好ましい。
一方で、シアネート樹脂の含有量は、基板材料用樹脂組成物(固形分量)全量に対し、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることがさらに好ましい。
【0048】
[無機充填材]
本実施形態の基板材料用樹脂組成物は無機充填材を含むことが好ましい。これにより、低線膨張率を得つつ、吸水性を抑制し、機械的強度を高めることができる。
【0049】
本実施形態の無機充填材としては、例えば、タルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、ガラスなどのケイ酸塩;酸化チタン、アルミナ、ベーマイト、シリカ、溶融シリカなどの酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイトなどの炭酸塩;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどの水酸化物;硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウムなどの硫酸塩または亜硫酸塩;ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウムなどのホウ酸塩;窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化炭素などの窒化物;チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムなどのチタン酸塩などを挙げることができる。
これらの中でも、酸化チタン、タルク、アルミナ、ガラス、シリカ、マイカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムが好ましく、酸化チタン、シリカがより好ましい。無機充填材としては、これらの中の1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0050】
上記無機充填材の平均粒子径の下限値は、特に限定されないが、例えば、0.01μm以上としてもよく、0.1μm以上としてもよく、0.5μm以上としてもよい。これにより、本実施形態の基板材料用樹脂組成物を用いたワニスの粘度が高くなるのを抑制でき、埋め込み時の作業性を向上させることができる。
また、無機充填材の平均粒子径の上限値は、特に限定されないが、例えば、5.0μm以下が好ましく、2.0μm以下がより好ましく、1.5μm以下がさらに好ましい。これにより、上記熱硬化性樹脂のワニス中における無機充填材の沈降などの現象を抑制でき、より均一な樹脂膜を得ることができる。
【0051】
また、無機充填材は、特に限定されないが、平均粒子径が単分散の無機充填材を用いてもよいし、平均粒子径が多分散の無機充填材を用いてもよい。さらに平均粒子径が単分散および/または多分散の無機充填材を1種類または2種類以上で併用してもよい。多分散の場合、レーザー回折散乱法によって測定される粒径分布において、粒径0.001~0.1μmと、0.5~3μmの範囲内にそれぞれピークを有していることが好ましい。
【0052】
本実施形態において、無機充填材の平均粒子径は、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置(HORIBA社製、LA-500)により、粒子の粒度分布を体積基準で測定し、そのメディアン径(D50)を平均粒子径とすることができる。
【0053】
無機充填材の含有量の下限値は、樹脂組成物の全固形分100質量部に対して、特に限定されないが、例えば、50質量部以上が好ましく、60質量部以上がより好ましく、70質量部以上がさらに好ましい。これにより、樹脂膜の硬化物を特に低熱膨張とすることができ、半導体パッケージの反りを抑制することができる。
一方で、無機充填材の含有量の上限値は、樹脂組成物の全固形分100質量部に対して、95質量部以下が好ましく、90質量部以下がより好ましく、85質量部以下がさらに好ましい。これにより、ハンドリング性が向上し、樹脂膜を形成するのが容易となる。
【0054】
[その他の添加剤]
本実施形態の基板材料用樹脂組成物は、その他必要に応じて、着色剤、カップリング剤、硬化促進剤、硬化剤、熱可塑性樹脂、および有機充填材などの添加剤を適宜配合することができる。本実施形態の基板材料用樹脂組成物は、上記成分を有機溶剤などにより溶解および/または分散させた液状形態で好適に用いることができる。
【0055】
(着色剤)
着色剤としては、たとえば、黒色酸化チタン、ピッチ、およびカーボンブラックの中から選ばれる1種または2種以上を用いることができる。これらを用いることにより、レーザーマーキングの際において、着色剤によるレーザーのエネルギーの吸収が過度に大きくなることを抑えることができる。このため、レーザーによる着色剤の消失に起因して、マークに過度に深い部分が生じることを抑制できる。また、炭化も抑制しやすくなる。
【0056】
黒色酸化チタンは、TinO(2n-1)(nは正の整数)として存在する。本実施形態において用いられる黒色酸化チタンTinO(2n-1)としては、nが4以上6以下であるものを用いることが好ましい。nを4以上とすることにより、着色剤の分散性を向上させることができる。一方、nを6以下とすることにより、レーザーマーキング性を向上させることができる。ここでは、着色剤は、黒色酸化チタンとしてTi4O7、Ti5O9、およびTi6O11のうちの少なくとも一つを含むことが好ましい。
また、ピッチは、石油、石炭、木材等の有機物質の乾留によって得られるタールを蒸留したときの残留物である。着色剤としてのピッチは、とくに限定されないが、たとえば石油ピッチまたは石炭ピッチである。また、ピッチとしては、等方性ピッチ、メソフェーズピッチ、またはメソフェーズピッチを冷却することにより生成され、キノリンの不溶分として分離されるメソフェーズ小球体を用いることができる。これらの中でも、レーザーマーキング性や、封止用樹脂組成物中における分散性を向上させる観点からは、メソフェーズ小球体を用いることがより好ましい。
【0057】
(カップリング剤)
カップリング剤は、熱硬化性樹脂と無機充填材との界面の濡れ性を向上させたり、繊維基材に対して樹脂組成物を均一に定着させるためなどに用いられる。
【0058】
本実施形態のカップリング剤としては、カップリング剤として通常用いられるものであれば使用できるが、具体的にはエポキシシランカップリング剤、カチオニックシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤およびシリコーンオイル型カップリング剤の中から選ばれる1種以上のカップリング剤を使用することが好ましい。これにより、充填材の界面との濡れ性を高くすることができ、それによって耐熱性をより向上させることができる。
【0059】
カップリング剤の含有量の下限は、無機充填材の比表面積に依存するので特に限定されないが、例えば、無機充填材100質量部に対して0.05~3質量部が好ましく、0.1~2質量部がより好ましい。カップリング剤の含有量を上記下限値以上とすることにより、無機充填材を十分に被覆でき、耐熱性を向上しやすくなる。一方、カップリング剤の含有量を上記上限値以下とすることにより、良好な反応を維持でき、良好な曲げ強度などが得られる。
また、カップリング剤の含有量は、基板材料用樹脂組成物(全固形分)に対して、0.05~3質量%が好ましく、0.1~2質量%がより好ましい。
【0060】
(硬化促進剤)
本実施形態の硬化促進剤としては公知のものを用いることができる。例えば、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、オクチル酸亜鉛、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)、トリスアセチルアセトナートコバルト(III)などの有機金属塩;トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンなどの3級アミン類;2,3―ジヒドロ―1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-エチル-4-エチルイミダゾール、2-フェニル-4-エチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシイミダゾールなどのイミダゾール類;フェノール、ビスフェノールA、ノニルフェノールなどのフェノール化合物;酢酸、安息香酸、サリチル酸、パラトルエンスルホン酸などの有機酸;オニウム塩化合物など、およびこれらの誘導体などが挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよいし2種類以上を併用してもよい。
なかでも、樹脂硬化性を安定的に向上させる観点から、イミダゾール、オニウム塩化合物であることが好ましい。かかるオニウム塩化合物としては、特に限定されないが、例えば、以下の式(IX)で表されるオニウム塩化合物が挙げられる。
【0061】
【0062】
(式(IX)中、Pはリン原子、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ、置換もしくは無置換の芳香環または複素環を有する有機基、あるいは置換もしくは無置換の脂肪族基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい。A-は分子外に放出しうるプロトンを少なくとも1個以上分子内に有するn(n≧1)価のプロトン供与体のアニオン、またはその錯アニオンを示す。)
【0063】
硬化促進剤の含有量の下限は、特に限定されないが、樹脂組成物(固形分量)全体の0.005~5質量%が好ましく、0.01~2質量%がより好ましい。
硬化促進剤の含有量を上記下限値以上とすることにより、良好な硬化促進効果が得られる。一方、硬化促進剤の含有量を上記下限値以上とすることにより、プリプレグの保存性を良好に保持できる。
【0064】
<ワニス>
本実施形態において、ワニス状の基板材料用樹脂組成物は、溶剤を含むことができる。
上記溶剤としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、酢酸エチル、シクロヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、セルソルブ系、カルビトール系、アニソール、およびN-メチルピロリドンなどの有機溶剤が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
樹脂組成物がワニス状である場合において、樹脂組成物の固形分含有量は、例えば30質量%以上80質量%以下としてもよく、より好ましくは40質量%以上70質量%以下としてもよい。これにより、作業性や成膜性に非常に優れた樹脂組成物が得られる。
【0066】
ワニス状の樹脂組成物は、上述の各成分を、例えば、超音波分散方式、高圧衝突式分散方式、高速回転分散方式、ビーズミル方式、高速せん断分散方式、および自転公転式分散方式などの各種混合機を用いて溶剤中に溶解、混合、撹拌することにより調製することができる。
【0067】
以下、本実施形態の基板材料用樹脂組成物を用いた例について説明する。
【0068】
<樹脂膜>
次いで、本実施形態の樹脂膜について説明する。
本実施形態の樹脂膜は、ワニス状である上記樹脂組成物をフィルム化することにより得ることができる。例えば、本実施形態の樹脂膜は、ワニス状の樹脂組成物を塗布して得られた塗布膜に対して、溶剤を除去することにより得ることができる。このような樹脂膜においては、溶剤含有率が樹脂膜全体に対して5質量%以下とすることができる。本実施形態において、例えば100℃~150℃、1分~5分の条件で溶剤を除去する工程を実施してもよい。これにより、熱硬化性樹脂を含む樹脂膜の硬化が進行することを抑制しつつ、十分に溶剤を除去することが可能となる。
【0069】
本実施形態の樹脂膜は、樹脂膜単独で構成されてもよく、繊維基材を内部に含むように構成されてもよい。
【0070】
<プリプレグ>
本実施形態のプリプレグは、樹脂組成物中に繊維基材を含むように構成される。プリプレグは、上記樹脂組成物を繊維基材に含浸してなるものである。
例えば、プリプレグは、樹脂組成物を繊維基材に含浸させ、その後、半硬化させて得られるシート状の材料として利用できる。このような構造のシート状材料は、誘電特性、高温多湿下での機械的、電気的接続信頼性などの各種特性に優れ、プリント配線基板の絶縁層の製造に適している。
【0071】
本実施形態において、樹脂組成物を繊維基材に含浸させる方法としては、特に限定されないが、例えば、樹脂組成物を溶剤に溶かして樹脂ワニスを調製し、繊維基材を上記樹脂ワニスに浸漬する方法、各種コーターにより上記樹脂ワニスを繊維基材に塗布する方法、スプレーにより上記樹脂ワニスを繊維基材に吹き付ける方法、樹脂組成物からなる上記樹脂膜で繊維基材の両面をラミネートする方法などが挙げられる。
【0072】
上記繊維基材としては、例えば、ガラス繊布、ガラス不繊布などのガラス繊維基材、あるいはガラス以外の無機化合物を成分とする繊布または不繊布などの無機繊維基材、芳香族ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂などの有機繊維で構成される有機繊維基材などが挙げられる。これら基材の中でも強度の点でガラス織布に代表されるガラス繊維基材を用いると、プリント配線基板の機械的強度、耐熱性を良好なものとすることができる。
【0073】
繊維基材の厚みは、特に限定されないが、好ましくは5μm以上150μm以下であり、より好ましくは10μm以上100μm以下であり、さらに好ましくは12μm以上90μm以下である。このような厚みを有する繊維基材を用いることにより、プリプレグ製造時のハンドリング性がさらに向上できる。
繊維基材の厚みが上記上限値以下であると、繊維基材中の樹脂組成物の含浸性が向上し、ストランドボイドや絶縁信頼性の低下の発生を抑制することができる。また炭酸ガス、UV、エキシマなどのレーザーによるスルーホールの形成を容易にすることができる。また、繊維基材の厚みが上記下限値以上であると、繊維基材やプリプレグの強度を向上させることができる。その結果、ハンドリング性が向上できたり、プリプレグの作製が容易となったり、樹脂基板の反りを抑制できたりする。
【0074】
上記ガラス繊維基材として、例えば、Eガラス、Sガラス、Dガラス、Tガラス、NEガラス、UTガラス、Lガラス、HPガラスおよび石英ガラスから選ばれる1種または2種以上のガラスにより形成されたガラス繊維基材が好適に用いられる。
【0075】
本実施形態において、プリプレグは、例えば、プリント配線基板におけるビルドアップ層中の絶縁層やコア層中の絶縁層を形成するために用いることができる。プリプレグをプリント配線基板におけるコア層中の絶縁層を形成するために用いる場合は、例えば、2枚以上のプリプレグを重ね、得られた積層体を加熱硬化することによりコア層用の絶縁層とすることもできる。
【0076】
<金属張積層板>
本実施形態の積層板は、上記プリプレグの硬化物の少なくとも一方の面に金属層が配置された金属張積層板である。
【0077】
また、プリプレグを用いた金属張積層板製造方法は、例えば以下の通りである。
プリプレグまたはプリプレグを2枚以上重ね合わせた積層体の外側の上下両面または片面に金属箔を重ね、ラミネーター装置やベクレル装置を用いて高真空条件下でこれらを接合する、あるいはそのままプリプレグの外側の上下両面または片面に金属箔を重ねる。また、プリプレグを2枚以上積層するときは、積層したプリプレグの最も外側の上下両面もしくは片面に金属箔を重ねる。次いで、プリプレグと金属箔とを重ねた積層体を加熱加圧成形することで金属張積層板を得ることができる。ここで、加熱加圧成形時に、冷却終了時まで加圧を継続することが好ましい。
【0078】
上記金属箔を構成する金属としては、例えば、銅、銅系合金、アルミ、アルミ系合金、銀、銀系合金、金、金系合金、亜鉛、亜鉛系合金、ニッケル、ニッケル系合金、錫、錫系合金、鉄、鉄系合金、コバール(商標名)、42アロイ、インバー、スーパーインバーなどのFe-Ni系の合金、W、Moなどが挙げられる。これらの中でも、金属箔105を構成する金属としては、導電性に優れ、エッチングによる回路形成が容易であり、また安価であることから銅または銅合金が好ましい。すなわち、金属箔105としては、銅箔が好ましい。
また、金属箔としては、キャリア付金属箔なども使用することができる。
金属箔の厚みは、好ましくは0.5μm以上20μm以下であり、より好ましくは1.5μm以上18μm以下である。
【0079】
<キャリア付き樹脂膜>
次いで、本実施形態のキャリア付樹脂膜について説明する。
【0080】
キャリア付樹脂膜の一例は、キャリア基材と、キャリア基材上に設けられた、樹脂組成物からなる樹脂膜とを備えるものである。巻き取り可能なロール状でもよいし、矩形形状の枚葉状であってもよい。
【0081】
上記キャリア基材としては、例えば、高分子フィルムや金属箔などを用いることができる。当該高分子フィルムとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリカーボネート、シリコーンシートなどの離型紙、フッ素系樹脂、ポリイミド樹脂などの耐熱性を有した熱可塑性樹脂シートなどが挙げられる。当該金属箔としては、特に限定されないが、例えば、銅および/または銅系合金、アルミおよび/またはアルミ系合金、鉄および/または鉄系合金、銀および/または銀系合金、金および金系合金、亜鉛および亜鉛系合金、ニッケルおよびニッケル系合金、錫および錫系合金などが挙げられる。これらの中でも、ポリエチレンテレフタレートで構成されるシートが安価および剥離強度の調節が簡便なため最も好ましい。これにより、上記キャリア付樹脂膜から、適度な強度で剥離することが容易となる。
【0082】
キャリア基材の厚みは、特に限定されないが、例えば、10~100μmとしてもよく、10~70μmとしてもよい。これにより、キャリア付樹脂膜を製造する際の取り扱い性が良好となり好ましい。
【0083】
本実施形態のキャリア付樹脂膜の樹脂膜は、単層でも多層でもよく、1種または2種以上の膜で構成されていてもよい。当該樹脂シートが多層の場合、同種で構成されてもよく、異種で構成されてもよい。
【0084】
上記樹脂膜の膜厚の下限値は、例えば、5μm以上であり、好ましくは20μm以上である。これにより、絶縁信頼性を向上させることができる。一方、上記樹脂膜の膜厚の上限値は、例えば、200μm以下であり、好ましくは100μm以下である。これにより、プリント配線基板の薄層化を実現できる。また、樹脂膜の膜厚を上記範囲内とすることにより、プリント配線基板を製造する際に、内層回路の凹凸を充填して成形することができるとともに、好適なビルドアップ層の絶縁樹脂層厚みを確保することができる。
【0085】
また、キャリア付樹脂膜の表面は、例えば、露出していてもよく、保護フィルム(カバーフィルム)で覆われていてもよい。保護フィルムとしては、公知の保護機能を有するフィルムを用いることができるが、例えば、PETフィルムを使用してもよい。例えば、樹脂膜がキャリア基材とカバーフィルムとの間に形成されていてもよい。これにより、樹脂膜のハンドリング性が向上する。
【0086】
<プリント配線基板>
本実施形態のプリント配線基板は、上記の樹脂膜の硬化物(樹脂組成物の硬化物)で構成された絶縁層を備えるものである。
本実施形態において、樹脂膜の硬化物は、例えば、通常のプリント配線基板のビルドアップ層、コア層を有しないプリント配線基板におけるビルドアップ層、PLPに用いられるコアレス基板のビルドアップ層、MIS基板のビルドアップ層等に用いることができる。このようなビルドアップ層を構成する絶縁層は、複数の半導体パッケージを一括して作成するために利用させる大面積のプリント配線基板において、当該プリント配線基板を構成するビルドアップ層にも好適に用いることができる。
【0087】
また、本実施形態において、絶縁膜形成用の樹脂組成物からなる樹脂膜において、ガラス繊維を含浸する構成とすることができる。このような樹脂膜をビルドアップ層に用いた半導体パッケージにおいても、樹脂膜の硬化物の線膨張係数を低くすることができるので、パッケージ反りを十分に抑制し、かつ良好な埋め込み性が得られる。
【0088】
<半導体パッケージ>
図1は、本実施形態の半導体パッケージ200の製造工程の一例を示す工程断面図である。
本実施形態の半導体装置(半導体パッケージ200)は、プリント配線基板と、プリント配線基板の回路層上に搭載された、またはプリント配線基板に内蔵された半導体素子240と、を備えることができる。
【0089】
以下、本実施形態の半導体パッケージ200の製造工程の概要について説明する。
まず、
図1(a)に示すように、絶縁層102、ビアホール104および金属層108を備えるコア層100を準備する。絶縁層102にはビアホール104が形成されている。ビアホール104には、金属層(ビア)が埋設されている。当該金属層は、無電解金属めっき膜106で覆われていてもよい。絶縁層102の表面に形成された金属層108(所定の回路パターンを有する回路層)は、ビアホール104に形成されたビアと電気的に接続する。
図1(a)には、金属層108は、コア層100の一面上に形成されているが、両面に形成されていてもよい。
【0090】
続いて、コア層100の一面上に金属層108を埋め込むように、上記樹脂組成物からなる樹脂膜20を形成する。例えば、キャリア付樹脂膜10からカバーフィルム50を剥離し、その樹脂膜20(絶縁膜)をコア層100の回路形成面上に配置してもよい。この樹脂膜20の表面にはキャリア基材30が設けられている。キャリア基材30は、この時点で樹脂膜20から分離してもよいが、マスクとして使用してもよい。
なお、樹脂膜20は、絶縁膜単層でもよく、絶縁膜およびプライマー層の複数層で構成されてもよい。
【0091】
続いて、上記樹脂膜20に、キャリア基材30を介して、不図示の開口部を形成する。開口部は、金属層108を露出させるように形成することができる。開口部の形成方法としては、特に限定されず、例えば、レーザー加工法、露光現像法またはブラスト工法、などの方法を用いることができる。
【0092】
本実施形態において、このような開口部を形成した後、樹脂膜20を熱硬化させてもよい。その後、キャリア基材30を剥離する。
【0093】
また、必要に応じて、デスミア処理を行うことができる。デスミア処理では、開口部の内部に生じたスミアを除去するとともに、上記樹脂膜20の表面を粗化できる。
【0094】
上記デスミア処理の方法は特に限定されないが、たとえば、以下のように行うことができる。まず、樹脂膜20を積層したコア層100を、有機溶剤を含む膨潤液に浸漬し、次いでアルカリ性過マンガン酸塩水溶液に浸漬し、中和して粗化処理することができる。有機溶剤としては、ジエチレングリコールモノブチルエーテルやエチレングリコール等を用いる事ができる。このような膨潤液として、例えば、アトテックジャパン社製の「スウェリングディップ セキュリガント P」が挙げられる。過マンガン酸塩としては、たとえば過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム等を用いることができる。膨潤液や過マンガン酸塩水溶液の液温としては、例えば、50℃以上でもよく、100℃以下でもよい。また、膨潤液や過マンガン酸塩水溶液への浸漬時間は、例えば、1分間以上でもよく、30分間以下でもよい。
【0095】
デスミア処理する工程では、上記の湿式のデスミア処理のみを行うことができるが、デスミア処理に加えてプラズマ照射を行ってもよい。
【0096】
続いて、樹脂膜20、あるいは樹脂膜20上に形成されたプライマー層(不図示)上に、無電解金属めっき膜202を形成する。無電解めっき法の例を説明する。例えば、下地層の表面上に触媒核を付与する。この触媒核としては、特に限定されないが、例えば、貴金属イオンやパラジウムコロイドを用いることができる。引き続き、この触媒核を核として、無電解めっき処理により、無電解金属めっき膜202を形成する。無電解めっきには、例えば、硫酸銅、ホルマリン、錯化剤、水酸化ナトリウム等を含むものを用いることができる。なお、無電解めっき後に、100~250℃の加熱処理を施し、めっき被膜を安定化させることができる。
【0097】
続いて、
図1(b)に示すように、無電解金属めっき膜202上に所定の開口パターン(開口部206)を有するレジスト204を形成してもよい。この開口パターンは、例えば回路パターンに相当する。レジスト204としては、特に限定されず、公知の材料を用いることができるが、液状およびドライフィルムを用いることができる。微細配線形成の場合には、レジスト204としては、感光性ドライフィルム等を用いることができる。感光性ドライフィルムを用いた一例を説明する。例えば、無電解金属めっき膜202上に感光性ドライフィルムを積層し、非回路形成領域を露光して光硬化させ、未露光部を現像液で溶解、除去する。硬化した感光性ドライフィルムを残存させることにより、レジスト204を形成する。
【0098】
続いて、
図1(c)に示すように、少なくともレジスト204の開口パターン内部かつ無電解金属めっき膜202上に、電気めっき処理により、電解金属めっき層208を形成する。電気めっきとしては、特に限定されないが、通常のプリント配線基板で用いられる公知の方法を使用することができ、例えば、硫酸銅等のめっき液中に浸漬させた状態で、めっき液に電流を流す等の方法を使用することができる。電解金属めっき層208は単層でもよく多層構造を有していてもよい。電解金属めっき層208の材料としては、特に限定されないが、例えば、銅、銅合金、42合金、ニッケル、鉄、クロム、タングステン、金、半田のいずれか1種以上を用いることができる。
【0099】
続いて、
図1(d)に示すように、アルカリ性剥離液や硫酸または市販のレジスト剥離液等を用いて、レジスト204を除去する。
【0100】
続いて、
図1(e)に示すように、電解金属めっき層208が形成されている領域以外領域(開口部210)における無電解金属めっき膜202を除去する。すなわち、電解金属めっき層208をマスクとして、下層の無電解金属めっき膜202を選択的に除去する。例えば、ソフトエッチング(フラッシュエッチング)等を用いることにより、無電解金属めっき膜202を除去することができる。ここで、ソフトエッチング処理は、例えば、硫酸および過酸化水素を含むエッチング液を用いたエッチングにより行うことができる。これにより、所定のパターンを有する金属層220を形成することができる。このように、セミアディティブプロセス(SAP)によって、本実施形態の樹脂膜の硬化物からなる絶縁層上に、無電解金属めっき膜202および電解金属めっき層208で構成される金属層220を形成することができる。
【0101】
さらに、コア層100および上記ビルドアップ層で構成されるプリント配線基板上に、必要に応じてビルドアップ層を積層して、セミアディティブプロセスにより層間接続および回路形成する工程を繰り返すことにより、多層にすることができる。
以上により、本実施形態のプリント配線基板が得られる。
【0102】
続いて、
図1(f)に示すように、得られたプリント配線基板上に、必要に応じてビルドアップ層を積層して、セミアディティブプロセスにより層間接続および回路形成する工程を繰り返す。そして、必要に応じて、ソルダーレジスト層230をプリント配線基板の両面又は片面に積層する。
【0103】
ソルダーレジスト層230の形成方法は、特に限定されないが、例えば、ドライフィルムタイプのソルダーレジストをラミネートし、露光、および現像により形成する方法、または液状レジストを印刷したものを露光、および現像することにより形成する方法によりなされる。
【0104】
続いて、リフロー処理を行なうことによって、半導体素子240を配線パターンの一部である接続端子上に、半田バンプ250を介して固着させる。その後、半導体素子240、および半田バンプ250等を封止材層260で覆うように封止する。
以上により、
図1(f)に示す、半導体パッケージ200が得られる。
【0105】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
【0106】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0107】
次に、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限られるものではない。
【0108】
(1)基板材料用樹脂組成物の調製
表1に示す固形分割合で各成分を溶解または分散させ、メチルエチルケトンで不揮発分70質量%となるように調整し、高速撹拌装置を用い撹拌して、ワニス状の基板材料用樹脂組成物(樹脂ワニスP)を調製した。
なお、表1における各成分の配合割合を示す数値は、樹脂組成物の固形分全体に対する各成分の配合割合(質量%)を示している。
【0109】
[原料]
表1における各成分の原料の詳細は下記のとおりである。
・無機充填材:シリカ粒子「SC4050」(平均粒径1.1μm)アドマテックス社製
・ベンゾオキサジン樹脂;上記の式(4a)で表されるP-d型ベンゾオキサジン(四国化成社製)
・エポキシ樹脂1;ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂「NC-3000H」日本化薬社製
・エポキシ樹脂2;ビスフェノールF型エポキシ樹脂「エピクロン830S」大日本インキ化学工業社製
・シアネート樹脂;フェノールノボラック型シアネート樹脂「PT-30」ロンザ社製
・エラストマー1:エポキシ化ポリブタジエン「JP-200」(平均分子量Mn約2200、エポキシ化率約20モル%)日本曹達社製
・エラストマー2:エポキシ化ポリブタジエン「PB3600」(平均分子量Mn約5900)株式会社ダイセル社製
・カップリング剤;エポキシシランカップリング剤(γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)「A-187」モメンティブ社製
・レベリング剤;ポリアクリレート化合物「BYK-361N」BYK-Chemie社製
・硬化促進剤;TBZ(2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール)四国化成社製
【0110】
(2)得られた基板材料用樹脂組成物を用いて、以下の測定を行った。
・線膨張係数α1
熱膨張係数は、TMA(熱機械的分析)装置(TAインスツルメント社製、Q400)を用いて、4mm×20mmの試験片を作製し、温度範囲30~300℃、10℃/分、荷重5gの条件で2サイクル目の50~150℃の昇温過程で測定される線膨張係数(CTE)α1を測定した。
試験片は、以下の手順で作成した。
100μm程度に成形した上記の基板材料用樹脂組成物を200℃/1hrの条件でプレス硬化し、所定のサイズにカットして試験片を作成した。
【0111】
・複素動的粘度
当該熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂膜のBステージ状態の動的粘弾性試験による、測定範囲50~200℃、昇温速度3℃/min、周波数62.83rad/secでの複素動的粘度を測定し、極小値η(温度)を求めた。
【0112】
・DSC測定
示差走査熱量計(SII製、DSC7020)を用い、窒素気流下で、昇温速度を10℃/分で50℃から300℃の温度範囲条件にて、10mgの得られた基板材料用樹脂組成物について測定した。得られた測定結果から、最大発熱時熱量(mJ/mg)および最大発熱ピーク温度(℃)を求めた。結果を表1に示す。また、実施例1のDSCチャートを
図2に示す。
【0113】
(3)得られた基板材料用樹脂組成物を用いて、以下の評価を行った。
・反り
半導体パッケージ基板の反り評価実施方法は、下記の通りである。
まず、上記のワニス状の基板材料用樹脂組成物を、ガラス織布(クロスタイプ♯1017、Sガラス、坪量13g/m2)に塗布装置で含浸させ、150℃の熱風乾燥装置で10分間乾燥して、厚さ35μmのプリプレグを得た。
次に、3LETS基板を作製した。デタッチコア(極薄銅箔が表面に積層されたコア材)に回路高さ18μmとなるように、MSAP工法にて平均残銅率60%となる回路を形成し、作製したプリプレグおよび極薄銅箔(三井金属鉱業製、MTFL1.5μm)を前記回路上に積層し、3℃/minで設定が220℃になるまで昇温し、温度設定が90℃になってから15minかけて3MPaまで昇圧し、220℃以上で60分間プレス成形した。その後、MSAP工法にて2層目の回路を18μm厚、平均残銅率60%の回路を作製し、作製したプリプレグおよび極薄銅箔(三井金属鉱業製、MTFL1.5μm)を前記回路上に積層し、3℃/minで設定が220℃になるまで昇温し、温度設定が90℃になってから15minかけて3MPaまで昇圧し、220℃以上で60分間プレス成形した。最後に、MSAP工法にて3層目の回路を18μm厚、平均残銅率60%の回路を作製した。この後、デタッチコアからサンプルをデタッチし、薄箔を除去することで3LETS基板を得た。その後、ソルダーレジスト層を形成し、半導体素子搭載パッドが露出するように開口部を形成した。
ソルダーレジスト層から露出した回路層上に無電解ニッケル層3μm、さらにその上へ無電解金めっき層を0.1μmとなるめっき層を形成し、得られた基板を80mm×200mmサイズに裁断し、ストリップ基板を得た。
上記得られたストリップ基板上に半田パンプを有する半導体素子(TEGチップ、サイズ10mm×10mm、厚み0.1mm)をフリップチップボンダー装置により、加熱圧着により搭載し、次にIRリフロー炉で半田バンプを溶融接合した後、液状封止樹脂(住友ベークライト製、CRP-4152S)を充填し、温度150℃、120分の条件で液状封止樹脂を硬化させた。その後、14mm×14mmサイズにルーターで個片化し、半導体パッケージ基板を得た。
なお、前記半導体素子の半田バンプは、Sn/Pb組成の共晶で形成されたものを用いた。
【0114】
得られた半導体パッケージ基板の反りについて以下の評価を行った。
温度可変レーザー三次元測定機(日立テクノロジーアンドサービス製、形式LS220-MT100MT50)のサンプルチャンバーに半導体素子面が下になるように設置し、上記測定機を用いて半導体パッケージ基板の室温(25℃)での反りを測定した。反りの測定は、高さ方向の変位を測定し、変位差の最も大きい値を反り量とし、以下の評価基準に従い評価した。なお、測定範囲は13mm×13mmサイズとした。
(評価基準)
◎:150μm未満であった
○:150μm以上300μm未満であった
×:300μm以上であった
【0115】
・埋め込み性
まず、上記のワニス状の基板材料用樹脂組成物を、ガラス織布(クロスタイプ♯1017、Sガラス、坪量13g/m2)に塗布装置で含浸させ、150℃の熱風乾燥装置で10分間乾燥して、厚さ35μmのプリプレグを得た。
回路高さ18μm、残銅率40~80%とした基板を準備し、作製したプリプレグを前記基板上に積層し、3℃/minで設定が220℃になるまで昇温し、温度設定が90℃になってから15minかけて3MPaまで昇圧し、220℃以上で60分間プレス成形した。
得られた積層体の表面からパターンに応じた開口部を観察し、ボイド発生の有無を観察し、以下の評価基準に従い、埋め込み性評価を実施した。
(評価基準)
◎:残銅率40%以上60%未満で埋め込み性問題なし。
○:残銅率60%以上で埋め込み性問題なしであった。
×:残銅率60%以上でボイドがあった。
【0116】