(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174103
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】電子部品およびその製造方法、フィルタ並びにマルチプレクサ
(51)【国際特許分類】
H03H 9/25 20060101AFI20231130BHJP
H03H 9/64 20060101ALI20231130BHJP
H03H 9/72 20060101ALI20231130BHJP
H03H 3/08 20060101ALI20231130BHJP
H01L 23/02 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
H03H9/25 A
H03H9/64 Z
H03H9/72
H03H3/08
H01L23/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086765
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】菊地 努
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 篤志
【テーマコード(参考)】
5J097
【Fターム(参考)】
5J097AA25
5J097BB02
5J097BB11
5J097BB15
5J097EE08
5J097FF04
5J097HA04
5J097HA07
5J097HA08
5J097JJ06
5J097JJ07
5J097KK10
(57)【要約】
【課題】環状金属層とリッドとの間の金属接合層の不足を抑制することが可能な電子部品を提供する。
【解決手段】電子部品は、基板10と、基板10上に設けられた機能素子と、平面視において機能素子を囲むように基板10上に設けられた環状金属層30と、環状金属層30上に設けられ、環状金属層30とで機能素子を空隙26内に封止するリッド20と、環状金属層30のリッド20に対向する第1面またはリッド20の環状金属層30に対向する第2面に設けられ、平面視において環状金属層30の延びる方向に延びる凸部34と、少なくとも凸部34の基板10の中心側において、第1面と第2面とを接合する金属接合層24とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に設けられた機能素子と、
平面視において前記機能素子を囲むように前記基板上に設けられた環状金属層と、
前記環状金属層上に設けられ、前記環状金属層とで前記機能素子を空隙内に封止するリッドと、
前記環状金属層の前記リッドに対向する第1面または前記リッドの前記環状金属層に対向する第2面に設けられ、平面視において前記環状金属層が延びる方向に延びる凸部と、
少なくとも凸部の前記基板の中心側において、前記第1面と前記第2面とを接合する金属接合層と、
を備える電子部品。
【請求項2】
前記凸部は、前記環状金属層が前記機能素子を囲む領域のうち一部に設けられ、前記領域の残りには設けられていない請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記凸部は、前記領域のうち前記基板の角部に対応する箇所に設けられている請求項2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記環状金属層は第1部分と、前記第1部分より前記延びる方向に直交する方向における幅の広い第2部分とを備え、
前記凸部は、前記領域のうち前記第2部分に設けられている請求項2に記載の電子部品。
【請求項5】
前記環状金属層の平面形状は、前記基板の外周に沿って設けられた略矩形であり、
前記環状金属層は、前記略矩形の第1辺に設けられた第1部分と、前記第1辺に設けられ前記第1部分より前記延びる方向に直交する方向における幅の広い第2部分と、を備え、
前記凸部は、前記第1辺に対向する前記略矩形の第2辺のうち前記第2部分に対応する第3部分に設けられている請求項2に記載の電子部品。
【請求項6】
前記凸部の前記延びる方向に直交する方向における幅は前記環状金属層の前記直交する方向における幅の1/2以下である請求項1から5のいずれか一項に記載の電子部品。
【請求項7】
前記環状金属層または前記リッドと前記凸部との間の前記金属接合層の厚さは前記凸部の高さ以下である請求項1から5のいずれか一項に記載の電子部品。
【請求項8】
前記凸部の前記基板の中心の反対側において、前記環状金属層と前記リッドとの間の少なくとも一部に前記金属接合層が設けられていない請求項1から5のいずれか一項に記載の電子部品。
【請求項9】
前記リッドの側面と、前記金属接合層の前記基板の中心の反対側の側面の少なくとも一部とは略一致する請求項1から5のいずれか一項に記載の電子部品。
【請求項10】
前記機能素子は弾性波素子である請求項1から5のいずれか一項に記載の電子部品。
【請求項11】
請求項10に記載の電子部品を備えるフィルタ。
【請求項12】
請求項11に記載のフィルタを備えるマルチプレクサ。
【請求項13】
平面視において、基板上に設けられた複数の機能素子をそれぞれ囲むように前記基板上に設けられた複数の環状金属層の前記基板の反対の第1面と、1つのリッドの前記複数の環状金属層に対向する第2面と、を、前記第1面または前記第2面に設けられ平面視において前記複数の環状金属層が延びる方向に延びる凸部の少なくとも前記基板の中心側において、金属接合層を介し接合させることで、前記複数の環状金属層と前記リッドとで前記複数の機能素子を空隙に封止する工程と、
前記基板および前記リッドを前記複数の環状金属層の間において切断する工程と、
を含む電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品およびその製造方法、フィルタ並びにマルチプレクサに関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に弾性波素子等の機能素子を設け、機能素子を囲むように基板上に環状金属層を設け、環状金属層上にリッドを接合することで、リッドと環状金属層により機能素子を空隙に封止する電子部品が知られている(例えば特許文献1~4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-205500号公報
【特許文献2】特開2016-152612号公報
【特許文献3】特開2014-143640号公報
【特許文献4】特開2013-115664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
はんだ等の接合材を溶融させてリッドと環状金属層とを接合する場合、溶融した接合材が環状金属層の面積が大きいところに集まりやすい。このため、環状金属層とリッドとの間の接合層が局所的に不足する箇所が生じる可能性がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、環状金属層とリッドとの間の金属接合層の不足を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、基板と、前記基板上に設けられた機能素子と、平面視において前記機能素子を囲むように前記基板上に設けられた環状金属層と、前記環状金属層上に設けられ、前記環状金属層とで前記機能素子を空隙内に封止するリッドと、前記環状金属層の前記リッドに対向する第1面または前記リッドの前記環状金属層に対向する第2面に設けられ、平面視において前記環状金属層が延びる方向に延びる凸部と、少なくとも凸部の前記基板の中心側において、前記第1面と前記第2面とを接合する金属接合層と、を備える電子部品である。
【0007】
上記構成において、前記凸部は、前記環状金属層が前記機能素子を囲む領域のうち一部に設けられ、前記領域の残りには設けられていない構成とすることができる。
【0008】
上記構成において、前記凸部は、前記領域のうち前記基板の角部に対応する箇所に設けられている構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記環状金属層は第1部分と、前記第1部分より前記延びる方向に直交する方向における幅の広い第2部分とを備え、前記凸部は、前記領域のうち前記第2部分に設けられている構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記環状金属層の平面形状は、前記基板の外周に沿って設けられた略矩形であり、前記環状金属層は、前記略矩形の第1辺に設けられた第1部分と、前記第1辺に設けられ前記第1部分より前記延びる方向に直交する方向における幅の広い第2部分と、を備え、前記凸部は、前記第1辺に対向する前記略矩形の第2辺のうち前記第2部分に対応する第3部分に設けられている構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記凸部の前記延びる方向に直交する方向における幅は前記環状金属層の前記直交する方向における幅の1/2以下である構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記環状金属層または前記リッドと前記凸部との間の前記金属接合層の厚さは前記凸部の高さ以下である構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記凸部の前記基板の中心の反対側において、前記環状金属層と前記リッドとの間の少なくとも一部に前記金属接合層が設けられていない構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記リッドの側面と、前記金属接合層の前記基板の中心の反対側の側面の少なくとも一部とは略一致する構成とすることができる。
【0015】
上記構成において、前記機能素子は弾性波素子である構成とすることができる。
【0016】
本発明は、上記電子部品を備えるフィルタである。
【0017】
本発明は、上記フィルタを備えるマルチプレクサである。
【0018】
本発明は、平面視において、基板上に設けられた複数の機能素子をそれぞれ囲むように前記基板上に設けられた複数の環状金属層の前記基板の反対の第1面と、1つのリッドの前記複数の環状金属層に対向する第2面と、を、前記第1面または前記第2面に設けられ平面視において前記複数の環状金属層の延びる方向に延びる凸部の少なくとも前記基板の中心側において、金属接合層を介し接合させることで、前記複数の環状金属層と前記リッドとで前記複数の機能素子を空隙に封止する工程と、前記基板および前記リッドを前記複数の環状金属層の間において切断する工程と、を含む電子部品の製造方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、環状金属層とリッドとの間の金属接合層の不足を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1(a)および
図1(b)は、実施例1に係る弾性波デバイスの断面図および平面図である。
【
図2】
図2は、実施例1における弾性波素子の平面図である。
【
図3】
図3は、実施例1における弾性波デバイスの製造方法を示す平面図である。
【
図4】
図4(a)から
図4(c)は、実施例1における弾性波デバイスの製造方法を示す断面図である。
【
図5】
図5(a)および
図5(b)は、比較例1における弾性波デバイスの製造方法を示す断面図である。
【
図6】
図6(a)および
図6(b)は、実施例1における弾性波デバイスの製造方法を示す断面図である。
【
図7】
図7(a)から
図7(c)は、実施例1の変形例1から3における弾性波デバイスの環状金属層付近の拡大図である。
【
図8】
図8(a)から
図8(c)は、実施例1の変形例4から6における弾性波デバイスの環状金属層付近の拡大図である。
【
図9】
図9は、実施例1の変形例7における弾性波デバイスの製造方法を示す平面図である。
【
図10】
図10(a)および
図10(b)は、それぞれ実施例1の変形例8および9における弾性波デバイスの製造方法を示す平面図である。
【
図11】
図11(a)から
図11(c)は、実施例1の変形例10に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図である。
【
図12】
図12(a)から
図12(c)は、実施例1の変形例10に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図である。
【
図13】
図13(a)および
図13(b)は、実施例1の変形例10に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図である。
【
図14】
図14(a)から
図14(d)は、実施例1の変形例11に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図である。
【
図15】
図15(a)および
図15(b)は、実施例1の変形例11に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図である。
【
図16】
図16(a)および
図16(b)は、実施例1の変形例12に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図である。
【
図17】
図17(a)および
図17(b)は、実施例1の変形例12に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図である。
【
図18】
図18(a)は、実施例1の変形例13に係る弾性波デバイスの断面図、
図18(b)は、実施例1の変形例13における弾性波素子の断面図である。
【
図19】
図19(a)は、実施例2に係るフィルタの回路図、
図19(b)は、実施例2の変形例1に係るデュプレクサの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照し本発明の実施例について説明する。
【実施例0022】
実施例1は、電子部品として、弾性波素子を有する弾性波デバイスの例である。
図1(a)および
図1(b)は、実施例1に係る弾性波デバイスの断面図および平面図である。
図1(b)は、基板10、環状金属層30および凸部34を主に示している。基板10の厚さ方向をZ方向、基板10の平面方向をX方向およびY方向とする。
【0023】
図1(a)および
図1(b)に示すように、基板10は、支持基板10aと、支持基板10a上に設けられた圧電層10cと、支持基板10aと圧電層10cとの間に設けられた絶縁層10bと、を備えている。圧電層10c上に機能素子として弾性波素子12および金属層14が設けられている。弾性波素子12は例えば弾性表面波素子である。金属層14は、弾性波素子12に電気的に接続された配線およびパッドとして機能する。基板10の周縁部および基板10のビア配線16が設けられた領域において、圧電層10cおよび絶縁層10bが除去されており、基板10の上面は支持基板10aの上面である。ビア配線16は、支持基板10aを貫通する。基板10の下面に端子18が設けられている。ビア配線16は金属層14と端子18とを電気的に接続する。基板10の周縁部における支持基板10a上に、弾性波素子12を囲むように環状金属層30が設けられている。環状金属層30上には凸部34が設けられている。凸部34の幅は環状金属層30の幅より狭い。基板10の上方にリッド20が設けられている。リッド20の下面に金属層22が設けられている。環状金属層30と金属層22とは接合層24により接合されている。リッド20および環状金属層30は、弾性波素子12を空隙26に封止する。
【0024】
基板10の平面形状は略矩形である。環状金属層30の平面形状も略矩形であり、基板10の外周に沿って延びる。凸部34の平面形状も略矩形であり、環状金属層30の上面に環状に設けられている。環状金属層30および凸部34の平面形状は、角が丸くなる角丸長方形である。
【0025】
支持基板10aは、例えばサファイア基板、アルミナ基板、石英基板、水晶基板、スピネル基板、SiC基板またはシリコン基板である。絶縁層10bは、例えば酸化シリコン層、酸化アルミニウム層、窒化シリコン層もしくは窒化アルミニウム層の単層またはこれらの層の積層である。圧電層10cは、例えば単結晶タンタル酸リチウム基板、単結晶ニオブ酸リチウム基板または単結晶水晶基板等の圧電基板である。単結晶タンタル酸リチウム基板および単結晶ニオブ酸リチウム基板は、例えば回転YカットX伝搬基板である。金属層14、ビア配線16および端子18は、例えば銅層、金層、銀層、チタン層、ニッケル層、タングステン層等の金属層の単層またはこれらの層の積層である。リッド20は、例えばコバール等の金属層、または、例えばサファイア基板、アルミナ基板、石英基板、水晶基板、スピネル基板、SiC基板またはシリコン基板等の絶縁層である。リッド20の下面に別の機能素子が設けられていてもよい。この場合、別の機能素子は空隙26に封止される。
【0026】
金属層22は、接合層24とリッド20とが直接接合できない場合に設けられる層であり、接合層24の濡れ性のよい層である。接合層24が金錫の場合、金属層22は例えば金層である。接合層24とリッド20とが直接接合できる場合、金属層22は設けられていなくてもよい。接合層24は、例えば金錫はんだ、錫銀はんだまたは錫銀銅はんだである。環状金属層30は、シールドとして機能するため、抵抗率の低い材料を用いることが好ましく、例えば銅層または金層である。凸部34は、環状金属層30と同じ材料でもよく、異なる材料でもよい。凸部34は、例えば、銅層、金層、ニッケル層、チタン層またはコバール層等の金属層である。凸部34は、樹脂等の絶縁層でもよい。
【0027】
図2は、実施例1における弾性波素子の平面図である。
図2に示すように、弾性波素子12は弾性表面波共振器またはLamb波共振器である。圧電層10c上にIDT(Interdigital Transducer)40と反射器42が形成されている。IDT40は、互いに対向する1対の櫛型電極40aを有する。櫛型電極40aは、複数の電極指40bと複数の電極指40bを接続するバスバー40cとを有する。反射器42は、IDT40の両側に設けられている。IDT40は圧電層10cに弾性表面波を励振する。弾性波の波長は一対の櫛型電極40aの一方の櫛型電極40aの電極指40bのピッチにほぼ等しい。すなわち、弾性波の波長は一対の櫛型電極40aの電極指40bのピッチの2倍にほぼ等しい。IDT40および反射器42は例えばアルミニウム膜、銅膜またはモリブデン膜により形成される。圧電層10c上にIDT40および反射器42を覆うように保護膜または温度補償膜が設けられていてもよい。弾性波素子12は、弾性波を励振する電極を含む。このため、弾性波を制限しないように、弾性波素子12は空隙26に覆われている。
【0028】
[実施例1の製造方法]
図3は、実施例1における弾性波デバイスの製造方法を示す平面図であり、リッド20を環状金属層30に接合する前における基板10の平面図である。
図4(a)から
図4(c)は、実施例1における弾性波デバイスの製造方法を示す断面図であり、
図3のA-A断面に相当する。
図3に示すように、基板10には複数の領域36が行列状に設けられている。領域36は弾性波デバイスとなる領域である。破線は切断線38である。隣接する領域36に設けられた環状金属層30は、切断線38を介し隣接して設けられる。
【0029】
図4(a)に示すように、基板10のうち圧電層10cおよび絶縁層10bが除去された領域に環状金属層30および凸部34が設けられ、環状金属層30および凸部34上に接合材23が設けられている。基板10上にリッド20を配置する。リッド20の下面には金属層22が設けられている。電界めっき法を用い環状金属層30を形成する場合、環状金属層30の側面が傾斜することもある。また、環状金属層30の上面は中央部が上方向に突出する曲面状となることもある。
【0030】
図4(b)に示すように、接合材23が融点以上の温度となるように、基板10を加熱する。接合材23が金錫(錫の組成が20質量%)のとき、金錫の融点は約270℃である。このため、接合材23の温度を例えば約300℃に加熱する。上方からリッド20を接合材23に押し当てる。接合材23は金属層22に接合する。その後、基板10を室温に戻すことで、接合材23が固化し、リッド20は、接合材23が固化した接合層24を介し環状金属層30に接合される。接合層24が金錫の場合、接合層24は金と錫との共晶となる。なお、金属層22の金と接合材23の金錫とが一体となり接合層24の金錫となることもある。
【0031】
図4(c)に示すように、リッド20および基板10を切断線38から切断する。切断には、レーザダイシング法またはブレードを用いたダイシング法を用いる。以上により、実施例1における弾性波デバイスが製造される。
【0032】
[比較例1]
図5(a)および
図5(b)は、比較例1における弾性波デバイスの製造方法を示す断面図である。
図5(a)に示すように、比較例1では、環状金属層30上に凸部は設けられていない。実施例1の
図4(b)と同様に、リッド20を環状金属層30に接合材23を介し接合する。このとき、金錫等のはんだが溶融した接合材23は、表面張力により、環状金属層30の表面積の大きい箇所に集まろうとする。例えば
図3において、4つの環状金属層30の角が集まる箇所55には溶融した接合材23が集まりやすい。
図5(a)の矢印50のように、接合材23が隣接する環状金属層30の間に移動し、+X側の環状金属層30とリッド20との間の範囲52では、接合材23が不足する。
【0033】
図5(b)に示すように、溶融した接合材23が固化し接合層24が形成された後、リッド20、接合層24および基板10を切断線38において切断する。範囲52では、環状金属層30とリッド20との間に接合層24が設けられていない。これにより、空隙26の気密性が劣化する。
【0034】
[実施例1]
図6(a)および
図6(b)は、実施例1における弾性波デバイスの製造方法を示す断面図である。
図6(a)に示すように、実施例1では、矢印50のように、接合材23が隣接する環状金属層30の間に移動しようとしても、凸部34より基板10の中心側の箇所54における接合材23は凸部34がダムとして機能し環状金属層30の間に移動しない。
【0035】
図6(b)に示すように、溶融した接合材23が固化し接合層24が形成された後、リッド20、接合層24および基板10を切断線38において切断する。箇所54では、環状金属層30とリッド20との間に接合層24が設けられる。これにより、空隙26の気密性を保つことができる。リッド20の側面39aと接合層24の側面39bは略一致する。
【0036】
[実施例1の変形例1]
図7(a)から
図8(c)は、実施例1の変形例1から6における弾性波デバイスの環状金属層付近の拡大図である。
図7(a)に示すように、実施例1の変形例1では、凸部34は環状金属層30の中心線58より外側(-X側、基板10の中心の反対側)に設けられている。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0037】
[実施例1の変形例2]
図7(b)に示すように、実施例1の変形例2では、凸部34は環状金属層30の中心線58より内側(+X側、基板10の中心側)に設けられている。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0038】
実施例1の変形例1および2のように、凸部34は環状金属層30の中心線58の外側と内側のいずれに設けられていてもよい。実施例1の変形例2では、
図6(b)のように、凸部34より外側の接合層24が不足した場合、凸部34より内側の接合層24の平面面積が小さくなってしまう。このため、凸部34は、環状金属層30の中心線58に重なる、または中心線58より外側に位置することが好ましい。
【0039】
[実施例1の変形例3]
図7(c)に示すように、実施例1の変形例3では、凸部34は環状金属層30の幅方向に複数設けられている。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。実施例1の変形例3のように、凸部34は環状金属層30の延びる方向(
図7(c)のY方向に交差する方向)に複数設けられていてもよい。これにより、環状金属層30とリッド20との間における接合材23の環状金属層30の間への移動をより抑制できる。
【0040】
[実施例1の変形例4]
図8(a)に示すように、実施例1の変形例4では、凸部34の厚さT2は環状金属層30と金属層22との間の厚さT1より小さい。凸部34と金属層22との間には厚さT3の接合層24が設けられている。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0041】
[実施例1の変形例5]
図8(b)に示すように、実施例1の変形例5では、凸部34はリッド20の下面に設けられている。凸部34の厚さT2は環状金属層30と金属層22との間の厚さT1より小さい。凸部34と環状金属層30との間には厚さT3の接合層24が設けられている。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。実施例1の変形例5のように、凸部34はリッド20の下面に設けられていてもよい。
【0042】
実施例1の変形例4および5のように、凸部34とリッド20との間または凸部34と環状金属層30との間に接合層24が設けられていてもよい。凸部34とリッド20または環状金属層30との間の接合層24の厚さT3が大きいと、凸部34が接合材23の移動を抑制するダムの効果が小さくなる。この観点から厚さT3は、凸部34の厚さT2以下が好ましく、厚さT2の1/2倍以下がより好ましく、1/5倍以下がさらに好ましい。
図4(c)のように、凸部34とリッド20との間および凸部34と環状金属層30との間には接合層24が設けられていなくてもよい。環状金属層30とリッド20との間の厚さT1は例えば1μm~5μmであり、凸部34の厚さT2は例えば0.5μm~5μmである。
【0043】
[実施例1の変形例6]
図8(c)に示すように、実施例1の変形例6では、環状金属層30は、基板10上に設けられた環状金属層30aと環状金属層30a上に設けられた環状金属層30bとを備える。環状金属層30aは、シールドとして機能するため、抵抗率の低い材料を用いることが好ましく、例えば銅層、金層、アルミニウム層または銀層である。環状金属層30bは、接合層24と環状金属層30aとの間の元素の拡散を防止する拡散防止層として機能し、例えばニッケル層、チタン層またはクロム層である。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。実施例1の変形例1から5においても環状金属層30aおよび30bを備えてもよい。
【0044】
実施例1およびその変形例1~6の
図4(c)、
図7(a)~
図8(c)において、環状金属層30のX方向における幅W1(例えば最大の幅)は、例えば10μm~30μmである。凸部34のX方向における幅W2(例えば最大の幅)は、例えば1μm~15μmである。環状金属層30の厚さ(例えば最大の厚さ)は、例えば10μm~30μmである。
図8(c)の環状金属層30bの厚さ(例えば最大の厚さ)は例えば1μm~5μmである。支持基板10aの厚さは例えば50μm~200μm、リッド20の厚さは例えば10μm~50μmである。
【0045】
凸部34以外における環状金属層30とリッド20との接合強度を高める観点から、凸部34のX方向(環状金属層30が延びる方向に交差する方向)における幅W2は、環状金属層30のX方向における幅W1の1/2倍以下が好ましく、1/3倍以下がより好ましく、1/5倍以下がさらに好ましい。凸部34の強度を確保する観点から幅W2は幅W1の1/10以上が好ましい。
【0046】
[実施例1の変形例7]
図9は、実施例1の変形例7における弾性波デバイスの製造方法を示す平面図である。
図9に示すように、環状金属層30の角部が集まる箇所55に接合材23が集まりやすい。そこで、環状金属層30の略矩形の角部57に凸部34を設ける。凸部34が設けられた箇所は環状金属層30とリッド20との接合が弱くなる。そこで、環状金属層30の略矩形の辺の中央部には凸部34を設けない。これにより、環状金属層30の略矩形の角部57において、環状金属層30とリッド20との間における接合層24の不足を抑制でき、かつ環状金属層30の略矩形の辺の中央部において環状金属層30とリッド20との間の接合を強くできる。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0047】
[実施例1の変形例8]
図10(a)は、実施例1の変形例8における弾性波デバイスの製造方法を示す平面図である。
図10(a)に示すように、環状金属層30に幅広部32bを設けることがある。幅広部32bの幅W3は、幅広部32b以外の環状金属層30の部分32aの幅W1より広い。このため、幅広部32bに接合材23が集まりやすく、幅広部32bに隣接する環状金属層30のうち範囲56において接合材23が不足する可能性がある。そこで、範囲56に隣接する環状金属層30に凸部34を設ける。これにより、範囲56における接合層24の不足を抑制できる。幅広部32b以外の環状金属層30の部分32aの少なくとも一部には凸部34を設けない。これにより、部分32aにおいて環状金属層30とリッド20との間の接合を強くできる。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0048】
[実施例1の変形例9]
図10(b)は、実施例1の変形例9における弾性波デバイスの製造方法を示す平面図である。
図10(b)に示すように、幅広部32bに隣接する環状金属層30のうち範囲56に凸部34を設けてもよい。これにより、範囲56内の凸部34の-X側において接合材23の不足を抑制でき、かつ範囲56以外の環状金属層30において環状金属層30とリッド20との間の接合を強くできる。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。範囲56に隣接する環状金属層30に凸部34を設け、かつ環状金属層30のうち範囲56に凸部34を設けてもよい。
【0049】
[実施例1の変形例10]
実施例1の変形例10~12は、凸部34の形成方法の例である。
図11(a)から
図13(b)は、実施例1の変形例10に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図である。
図11(a)に示すように、支持基板10a、絶縁層10bおよび圧電層10cが積層された基板10を準備する。支持基板10a、絶縁層10bおよび圧電層10cは、例えば、それぞれサファイア基板、酸化アルミニウム層およびタンタル酸リチウム層である。
【0050】
図11(b)に示すように、基板10上に開口61を有するマスク層60を形成する。マスク層60は例えフォトレジストである。マスク層60をマスクに、圧電層10cと絶縁層10bの上部とをエッチングする。これにより、絶縁層10bに凹部53aが形成される。
【0051】
図11(c)に示すように、マスク層60を除去する。その後、基板10上に、凹部53aに重なる開口63を有するマスク層62を形成する。マスク層62をマスクに絶縁層10bをエッチングする。これにより、絶縁層10bから凸部35が形成される。凸部35以外の凹部53aから圧電層10cおよび絶縁層10bを貫通する開口53が形成される。
【0052】
図12(a)に示すように、基板10上に、絶縁層10b、圧電層10cおよび凸部35を覆うようにシード層31を形成する。シード層31は、例えば基板10側からチタン層および銅層である。
図12(b)に示すように、シード層31上に開口65を有するマスク層64を形成する。開口65は開口53内に形成される。マスク層64は例えばフォトレジスト層である。電界めっき法を用い、開口65内に環状金属層30a、環状金属層30bおよび接合材23を形成する。環状金属層30の上面には、凸部35に対応する凸部34が形成される。環状金属層30a、30bおよび接合材23は、例えばそれぞれ銅層、ニッケル層および金錫層である。
図12(c)に示すように、マスク層64を除去する。環状金属層30および接合材23をマスクにシード層31を除去する。以降、環状金属層30と支持基板10aとの間のシード層31の図示を省略する。
【0053】
図13(a)に示すように、
図4(b)と同様に、リッド20を、接合材23が固化した接合層24を介し環状金属層30に接合する。リッド20は例えばコバール板である。
図13(b)に示すように、
図4(c)と同様に、リッド20および基板10を切断線38から切断する。以上により、実施例1の変形例10における弾性波デバイスが形成される。実施例1の変形例10のように、凸部34は、環状金属層30の一部でもよい。
【0054】
[実施例1の変形例11]
図14(a)から
図15(b)は、実施例1の変形例11に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図である。
図14(a)に示すように、リッド20上(-Z側)に凸部34を形成する。凸部34は例えばめっき法を用い形成する。リッド20は例えばコバール板であり、凸部34は例えばニッケル層である。
図14(b)に示すように、リッド20上に凸部34を覆うように金属層22を形成する。金属層22は、例えばリッド20側からニッケル層および金層である。
【0055】
図14(c)に示すように、
図11(a)の圧電層10c上に開口61を有するマスク層60を形成する。マスク層60をマスクに圧電層10cおよび絶縁層10bをエッチングする。これにより、圧電層10cおよび絶縁層10bを貫通する開口53が形成される。
図14(d)に示すように、
図12(a)と同様に、基板10上に、絶縁層10bおよび圧電層10cを覆うようにシード層31を形成する。
図12(b)と同様に、開口65を有するマスク層64を形成する。開口65は開口53内に形成される。開口65内に環状金属層30および接合材23を例えば
図12(b)と同様の電界めっき法を用い形成する。環状金属層30の上面には凸部は形成されていない。
【0056】
図15(a)に示すように、
図12(c)と同様に、マスク層64を除去し、シード層31をエッチングする。以降、環状金属層30と支持基板10aとの間のシード層31の図示を省略する。
図4(b)と同様に、リッド20を、接合材23が固化した接合層24を介し環状金属層30に接合する。
図15(b)に示すように、
図4(c)と同様に、リッド20および基板10を切断線38から切断する。以上により、実施例1の変形例11における弾性波デバイスが形成される。実施例1の変形例11のように、凸部34は、リッド20に形成してもよい。
【0057】
[実施例1の変形例12]
図16(a)から
図17(b)は、実施例1の変形例12に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図である。
図16(a)に示すように、
図14(d)と同様に、シード層31上に開口65を有するマスク層64を形成する。開口65内に環状金属層30および接合材23を電界めっき法を用い形成する。環状金属層30上に接合材23は形成されていない。
【0058】
図16(b)に示すように、マスク層64を除去する。開口67を有するマスク層66を形成する。開口67は環状金属層30の上面の一部に設けられる。マスク層66は例えばフォトレジストである。開口67内に凸部34を電界めっき法を用い形成する。凸部34は例えばニッケル層である。
【0059】
図17(a)に示すように、マスク層66を除去する。開口69を有するマスク層68を形成する。開口69は環状金属層30とほぼ一致するように形成される。マスク層68は例えばフォトレジストである。開口69内の環状金属層30および凸部34上に接合材23を電界めっき法を用い形成する。
【0060】
図17(b)に示すように、マスク層68を除去する。環状金属層30および接合材23をマスクにシード層31を除去する。環状金属層30と支持基板10aとの間のシード層31の図示を省略している。その後、
図4(b)および
図4(c)と同様の工程を行うことで、実施例1の変形例12における弾性波デバイスが形成される。実施例1の変形例12のように、凸部34は、環状金属層30上に形成してもよい。
【0061】
[実施例1の変形例13]
図18(a)は、実施例1の変形例13に係る弾性波デバイスの断面図である。
図18(a)に示すように、基板10上に弾性波素子12aが設けられている。基板10は、例えばサファイア基板、アルミナ基板、石英基板、水晶基板、スピネル基板、SiC基板またはシリコン基板である。その他の構成は実施例1の
図1(a)と同じである。
【0062】
図18(b)は、実施例1の変形例13における弾性波素子の断面図である。
図18(b)に示すように、圧電薄膜共振器である弾性波素子12aでは、基板10上に圧電膜46が設けられている。圧電膜46を挟むように下部電極44および上部電極48が設けられている。下部電極44と基板10との間に空隙45が形成されている。圧電膜46の少なくとも一部を挟み下部電極44と上部電極48とが対向する領域が共振領域47である。共振領域47において、下部電極44および上部電極48は圧電膜46内に、厚み縦振動モードまたは厚みすべり振動モードの弾性波を励振する。下部電極44および上部電極48は例えばルテニウム膜等の金属膜である。圧電膜46は例えば窒化アルミニウム膜、タンタル酸リチウム膜またはニオブ酸リチウム膜である。空隙45の代わりに弾性波を反射する音響反射膜が設けられていてもよい。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。実施例1の変形例13のように、実施例1およびその変形例1から12において、弾性波素子は圧電薄膜共振器でもよい。
【0063】
実施例1およびその変形例によれば、
図3のように、平面視において、複数の環状金属層30は、基板10上に設けられた複数の弾性波素子12(
図1(a)参照)をそれぞれ囲むように設けられている。凸部34は、環状金属層30の基板10の反対の上面(第1面)、または、1つのリッド20の環状金属層30に対向する下面(第2面)に設けられ、平面視において環状金属層30の延びる方向に延びる。
図4(a)および
図4(b)のように、環状金属層30の上面と1つのリッド20の下面とを、少なくとも凸部34の基板10の中心側において、接合層24(金属接合層)を介して接合させる。これにより、複数の環状金属層30とリッド20とで複数の弾性波素子12を空隙26に封止する。
図4(c)のように、基板10およびリッド20を複数の環状金属層30の間において切断する。これにより、
図6(a)のように、環状金属層30とリッド20との間の接合材23が環状金属層30の間に移動しても、凸部34の基板10の中心側の箇所54における環状金属層30とリッド20との間の接合材23は移動しない。よって、環状金属層30とリッド20との間の接合層24の不足を抑制することができる。
【0064】
実施例1の変形例7~9の
図9から
図10(b)のように、凸部34は、環状金属層30が弾性波素子12を囲む領域のうち一部に設けられる。これにより、接合層24の不足が問題となる領域の一部に凸部34を設けることで、接合層24の不足を抑制する。凸部34が設けられた領域では、環状金属層30とリッド20との接合が弱くなる。そこで、接合層24の不足が問題とならない残りの領域に凸部34を設けないことで、環状金属層30とリッド20との接合を強めることができる。
【0065】
実施例1の変形例7の
図9の箇所55のように、環状金属層30の角部が集まる箇所55では接合材23が集まりやすい。そこで、凸部34を基板10の角部に対応する箇所に設ける。これにより、環状金属層30の角部37において、接合層24の不足を抑制する。
【0066】
図10(a)のように、環状金属層30は部分32a(第1部分)と、部分32aよりY方向(環状金属層30の延びる方向に直交する方向)における幅の広い幅広部32b(第2部分)とを備えている。凸部34は、幅広部32bに設けられている。これにより、幅広部32bに隣接する環状金属層30において接合層24が不足することを抑制できる。
【0067】
図10(b)の基板10が切断された後においては、環状金属層30の平面形状は、基板10の外周に沿って設けられた略矩形である。環状金属層30は、略矩形の第1辺37aに設けられた部分32aと幅広部32bを備えている。凸部34は、第1辺37aに対向する略矩形の第2辺37bのうち幅広部32bに対応する部分32c(第3部分)に設けられている。すなわち、幅広部32bと部分32cとは、基板10の中心37cを通り第1辺37aおよび第2辺37bに平行な直線37dに対し線対称である。これにより、幅広部32bに隣接する環状金属層30において接合層24が不足することを抑制できる。なお、矩形とは、幾何学的な長方形または正方形でなくてもよい。矩形(略矩形)には、角の丸くなった角丸長方形、対向する辺のなす角が±10°以下である矩形を含む。
図10(a)および
図10(b)では、幅W3が、例えば幅W1の1.2倍以上、または1.5倍以上の場合、接合層24が不足しやすくなる。よって、凸部34を設けることが好ましい。
【0068】
図6(a)のように、接合材23が隣接する環状金属層30間に移動する場合、凸部34の基板10の中心の反対側において、環状金属層30とリッド20との間の少なくとも一部に接合層24が設けられていない。
図6(b)のように、リッド20を切断すると、リッド20の側面39aと、接合層24の外側の側面39bの少なくとも一部とは製造誤差程度に略一致する。このような場合に、凸部34を設けることで、箇所54における接合層24の不足を抑制できる。
【0069】
接合層24は、例えばはんだである。接合層24の融点は環状金属層30より低い。例えば金錫(錫の濃度は20質量%)の融点は約270℃である。このように、はんだの融点は300℃以下である。これに対し、環状金属層30に用いる銅、ニッケル、金、アルミニウムおよび銀の融点はそれぞれ1085℃、1455℃、1064℃、660℃および962℃であり、接合層24の融点より300℃以上高い。
【0070】
環状金属層30aに用いる銅、金、アルミニウムおよび銀の抵抗率は、それぞれ1.68×10-8Ω・m、2.44×10-8Ω・m、2.65×10-8Ω・mおよび1.59×10-8Ω・mである。環状金属層30bに用いるニッケル、チタンおよびクロムの抵抗率は、それぞれ7.0×10-8Ω・m、4.2×10-7Ω・mおよび1.3×10-7Ω・mである。このように、環状金属層30bの抵抗率は、環状金属層30aの抵抗率の2倍以上であり、3倍以上である。また、環状金属層30bの厚さは環状金属層30aの厚さの1/2倍以下であり、1/5倍以下である。
【0071】
実施例1およびその変形例では、機能素子として弾性波素子12および12a(弾性表面波共振器または圧電薄膜共振器)の例を説明したが、機能素子は、インダクタまたはキャパシタ等の受動素子、トランジスタを含む能動素子、またはMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)素子でもよい。
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。