(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023017411
(43)【公開日】2023-02-07
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
H05H 1/46 20060101AFI20230131BHJP
H05H 1/00 20060101ALI20230131BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20230131BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20230131BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20230131BHJP
C23C 16/505 20060101ALI20230131BHJP
【FI】
H05H1/46 L
H05H1/00 A
H01L21/302 101C
H01L21/31 C
H01L21/205
C23C16/505
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021121666
(22)【出願日】2021-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】松尾 大輔
【テーマコード(参考)】
2G084
4K030
5F004
5F045
【Fターム(参考)】
2G084AA02
2G084AA03
2G084AA05
2G084BB14
2G084BB26
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2G084DD04
2G084DD12
2G084DD62
2G084DD67
2G084FF32
2G084HH02
2G084HH07
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2G084HH42
2G084HH52
4K030AA04
4K030AA06
4K030AA13
4K030AA14
4K030BA29
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4K030BA44
4K030CA04
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4K030KA08
4K030KA30
4K030KA34
4K030KA39
4K030KA45
4K030LA18
4K030LA21
5F004AA01
5F004BB18
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5F004CB09
5F045AA08
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5F045DP03
5F045EH02
5F045EH03
5F045EH07
5F045EH11
5F045GB08
5F045GB20
(57)【要約】
【課題】被処理物にプラズマ処理を均一に行う。
【解決手段】プラズマ処理装置(1)は、被処理物(W1)を内部に収容する真空容器(2)と、真空容器(2)の外部に設けられ、高周波磁場を生じさせるアンテナ(6)と、高周波磁場を真空容器(2)の内部に導入させる、真空容器(2)の壁面(22)に設けられた磁場導入窓(3)と、アンテナ(6)が高周波磁場を生じさせている状態で、アンテナ(6)を磁場導入窓(3)に沿って平行移動させる機構部(7)と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を内部に収容する真空容器と、
前記真空容器の外部に設けられ、高周波磁場を生じさせるアンテナと、
前記真空容器の内部でプラズマを発生させるために、前記高周波磁場を前記真空容器の内部に導入させる、前記真空容器の壁面に設けられた磁場導入窓と、
前記アンテナが前記高周波磁場を生じさせている状態で、前記アンテナを前記磁場導入窓に沿って平行移動させる機構部と、を備えることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記磁場導入窓は、前記真空容器の内部と外部とを隔離する誘電体板を有することを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記磁場導入窓は、前記誘電体板に接して設けられた、複数のスリットが形成された金属板をさらに有し、
前記複数のスリットのそれぞれは第1方向に延伸し、かつ、前記複数のスリットは前記第1方向と直交する第2方向に沿って並ぶように配置されており、
前記アンテナは、前記第2方向に延伸するように配置された直線状のアンテナであり、
前記機構部は、前記アンテナを前記第1方向に平行移動させることを特徴とする請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記機構部は、
前記アンテナを支持しつつ前記アンテナに高周波電力を供給するための複数のアームと、
前記アーム間を回動可能に連結する連結部と、を有し、
前記連結部は、
前記連結部に接続された一方のアーム端に固定された第1部材と、
前記連結部に接続された他方のアーム端に固定された第2部材と、を有し、
前記第1部材と前記第2部材とが相対的に回転可能であるとともに、前記第1部材と前記第2部材とがコンデンサを構成することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記機構部には、前記連結部の前記第1部材と前記第2部材とを相対的に回転させるモータが設けられており、
前記モータの回転角度によって前記アンテナの平行移動を制御する制御部をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記連結部は、前記第1部材としての第1円板と、前記第2部材としての第2円板と、が平行平板コンデンサを構成するように、前記第1円板と前記第2円板とを、ギャップを介して平行に保持し、かつ、互いに回転可能に支持する筐体を有することを特徴とする請求項4または5に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記第1部材としての筐体は、前記第2部材としての円板を回転可能に支持することを特徴とする請求項4または5に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記アンテナ、前記アーム及び前記連結部には、冷却液を流通させる流路が形成されていることを特徴とする請求項4から7のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記アンテナから生じたプラズマの発光を検出する検出部と、
前記検出部によって検出されたプラズマの発光に基づき、前記機構部による前記アンテナの平行移動を制御する制御部と、をさらに備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、スリットが形成されている金属板と、金属板に接触して支持され、スリットを塞ぐ誘電体板と、金属板に対向するように処理室の外部に設けられ、高周波磁場を生じさせるアンテナと、を備えるプラズマ処理装置が開示されている。特許文献1に開示のプラズマ処理装置は、アンテナから生じた高周波磁場を処理室に効率良く供給することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示のプラズマ処理装置では、処理室の外部に直線状をなす複数のアンテナが並んで配置されている。アンテナに近いほどプラズマが強くなるため、上記プラズマ処理装置では、処理室に配置された被処理物にプラズマ処理を均一に行うことができないという問題がある。
【0005】
本発明の一態様は、被処理物にプラズマ処理を均一に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るプラズマ処理装置は、被処理物を内部に収容する真空容器と、前記真空容器の外部に設けられ、高周波磁場を生じさせるアンテナと、前記真空容器の内部でプラズマを発生させるために、前記高周波磁場を前記真空容器の内部に導入させる、前記真空容器の壁面に設けられた磁場導入窓と、前記アンテナが前記高周波磁場を生じさせている状態で、前記アンテナを前記磁場導入窓に沿って平行移動させる機構部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、被処理物にプラズマ処理を均一に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態1に係るプラズマ処理装置の断面構成を示す断面図である。
【
図2】
図1に示すプラズマ処理装置の斜視図である。
【
図3】
図2に示すプラズマ処理装置が備える機構部の連結部の断面構成を示す断面図である。
【
図4】本発明の実施形態2に係るプラズマ処理装置の断面構成を示す断面図である。
【
図5】本発明の実施形態3に係るプラズマ処理装置の斜視図である。
【
図6】本発明の実施形態3に係るプラズマ処理装置が備える機構部の連結部の断面構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔実施形態1〕
<プラズマ処理装置1の構成>
図1は、本発明の実施形態1に係るプラズマ処理装置1の断面構成を示す断面図である。
図1において、アンテナ6が移動する方向をX軸方向、真空容器2から磁場導入窓3に向かう方向をZ軸方向、X軸方向及びZ軸方向の両方の方向に直交する方向をY軸方向とする。X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は互いに直交する方向である。
図1の符号101及び102は、機構部7によってアンテナ6がX軸方向に移動する様子を示している。なお、
図1においてアンテナ6及び機構部7については、断面図ではなくY軸方向から見た図となっている。
【0010】
図1に示すように、プラズマ処理装置1は、誘導結合型のプラズマP1を用いて基板等の被処理物W1にプラズマ処理を施すものである。ここで基板は、例えば液晶ディスプレイもしくは有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ(FPD)用の基板、またはフレキシブルディスプレイ用のフレキシブル基板等である。また、被処理物W1は、各種用途に用いられる半導体基板であり得る。さらに被処理物W1は、例えば工具等のように、基板状の形態には限られない。被処理物W1に施す処理は、例えば、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法あるいはスパッタ法による膜形成、プラズマによるエッチング、アッシング、被覆膜除去等である。
【0011】
プラズマ処理装置1は、真空容器2と、磁場導入窓3と、アンテナ6と、機構部7と、高周波電源8と、保持部9と、を備える。高周波電源8については
図2に示す。真空容器2の内部には、真空排気され、かつ、ガスが導入される処理室21が形成される。処理室21内には保持部9が収容され、保持部9は被処理物W1を保持するステージである。真空容器2は例えば金属製の容器である。真空容器2の壁面22には、厚さ方向に貫通する開口部23が形成されている。真空容器2は電気的に接地されている。
【0012】
処理室21に導入されるガスは、処理室21に収容される被処理物W1に施す処理内容に応じたものにすればよい。例えば、プラズマCVD法によって被処理物W1に膜形成を行う場合には、ガスは、原料ガスまたはそれをH2等の希釈ガスで希釈したガスである。より具体例を挙げると、原料ガスがSiH4の場合はSi膜を、SiH4+NH3の場合はSiN膜を、SiH4+O2の場合はSiO2膜を、SiF4+N2の場合はSiN:F膜(フッ素化シリコン窒化膜)を、それぞれ被処理物W1上に形成することができる。
【0013】
磁場導入窓3は、金属板4及び誘電体板5を有する。磁場導入窓3は、処理室21でプラズマP1を発生させるために、アンテナ6から生じた高周波磁場を処理室21に導入させる。Z軸方向に向かって、金属板4及び誘電体板5が順に配置される。
【0014】
図2は、
図1に示すプラズマ処理装置1の、説明上必要な部材のみを示した斜視図である。なお、
図2では、真空容器2、誘電体板5及び筐体B1等の図示を省略している。
図2の符号201及び202は、機構部7によってアンテナ6がX軸方向に移動する様子を示している。
【0015】
金属板4は、開口部23を塞ぐように真空容器2の壁面22に設けられる。金属板4には、金属板4をZ軸方向に貫通する複数のスリット41が形成される。複数のスリット41のそれぞれはX軸方向(第1方向)に延伸し、かつ、複数のスリット41はY軸方向(第2方向)に沿って並ぶように配置されている。金属板4は、被処理物W1の表面と実質的に平行になるように配置されている。
【0016】
誘電体板5は、真空容器2の外部側から金属板4に接して設けられるとともに、金属板4に重なる。また、誘電体板5は、複数のスリット41を真空容器2の外部側から塞ぐように、金属板4のアンテナ6側の表面に設けられる。誘電体板5は、真空容器2の内部と外部とを隔離する。これにより、誘電体板5によって、処理室21の真空状態を維持することができる。より具体的には、開口部23を塞ぐ金属板4と、複数のスリット41を塞ぐ誘電体板5と、によって、処理室21の真空状態が維持される。
【0017】
誘電体板5の全体は、誘電体物質で構成されており、誘電体板5は、平板状を成すものである。誘電体板5を構成する材料は、アルミナ、炭化ケイ素もしくは窒化ケイ素等のセラミックス、石英ガラス、無アルカリガラス等の無機材料、ポリイミド、または、テフロン(登録商標)等のフッ素樹脂のような樹脂材料であってもよい。誘電体板5を構成する材料にテフロンが含まれる場合、誘電体板5は、部分的に透過性の領域を有するものであり、テフロンシートにガラスシートを接着した構造であってもよい。
【0018】
アンテナ6は、直線状を成し、真空容器2の外部に設けられており、磁場導入窓3と対向し、かつ、Y軸方向に延伸するように、機構部7によって支持されている。アンテナ6が真空容器2の外部に設けられていることにより、アンテナ6が真空容器2の内部に設けられている場合に比べて、アンテナ6から被処理物W1への輻射熱の影響を小さくすることができる。これにより、フィルム材料からなる被処理物W1に対してもプラズマ処理を行うことができる。アンテナ6は、処理室21に収容される被処理物W1の表面と実質的に平行になるように配置されている。
【0019】
アンテナ6は、機構部7を介して高周波電源8から高周波電力が印加されると、高周波磁場を生じさせる。これにより、処理室21に囲まれる空間に誘導電界が発生し、その空間に誘導結合型のプラズマP1が生成される。アンテナ6から生じた高周波磁場は、誘電体板5及び複数のスリット41を透過して処理室21に供給される。
【0020】
<機構部7の構成>
機構部7は、アンテナ6が高周波磁場を生じさせている状態で、アンテナ6を磁場導入窓3に沿ってX軸方向に平行移動させる。このとき、機構部7は、平面F1に沿ってアンテナ6を平行移動させる。平面F1は、XY平面に平行であるとともに、被処理物W1の表面に平行である。
【0021】
アンテナ6が、複数のスリット41が延伸する方向であるX軸方向に平行移動することにより、アンテナ6から生じた高周波磁場をスリット41から被処理物W1に継続して供給することができるため、被処理物W1に効率的にプラズマ処理を行うことができる。また、表面積が大きい被処理物W1にプラズマ処理を行うことができる。
【0022】
図2に示すように、機構部7は、アームA1~A6と、連結部C1~C4と、を有する。高周波電源8からアンテナ6に高周波電力が供給されるとき、高周波電源8から、アームA5、連結部C2、アームA2、連結部C1、アームA1、アンテナ6、アームA3、連結部C3、アームA4、連結部C4及びアームA6の順に電流が流れる。アームA1~A6はそれぞれ導電性を有する部材である。
【0023】
アームA1~A6は、アンテナ6を支持しつつアンテナ6に高周波電力を供給するためのものである。アームA1は、直線部A11及び回転軸A12を有する。直線部A11の一端は、アンテナ6の給電側端部61と接続されており、直線部A11の他端は、回転軸A12と屈曲するように接続されている。
【0024】
連結部C1は、アームA1,A2間を回動可能に連結する。連結部C1は、第1部材としての第1円板C11と、第2部材としての第2円板C12と、を有する。第1円板C11は回転軸A12と固定されている。つまり、第1円板C11は、連結部C1に接続されたアームA1の一方のアーム端に固定されている。第2円板C12はアームA2の回転軸A22と固定されている。つまり、第2円板C12は、連結部C1に接続されたアームA2の他方のアーム端に固定されている。
【0025】
アームA2は、直線部A21と、回転軸A22,A23と、を有する。直線部A21の一端は、回転軸A22と屈曲するように接続されており、直線部A21の他端は、回転軸A23と屈曲するように接続されている。
【0026】
連結部C2は、アームA2,A5間を回動可能に連結する。連結部C2は、第1部材としての第1円板C21と、第2部材としての第2円板C22と、を有する。第1円板C21は回転軸A23と固定されている。つまり、第1円板C21は、連結部C2に接続されたアームA2の一方のアーム端に固定されている。第2円板C22は、回転軸であるアームA5と固定されている。つまり、第2円板C22は、連結部C2に接続されたアームA5の他方のアーム端に固定されている。アームA5の一方のアーム端は、高周波電源8に電気的に接続されている。
【0027】
アームA3の一端は、アンテナ6の接地側端部62と接続されている。アームA3、連結部C3、アームA4及び連結部C4の構成はそれぞれ、アームA1、連結部C1、アームA2及び連結部C2の構成と同じである。アームA6の一方のアーム端は電気的に接地される、つまり、グランドに接続され、アームA6の他方のアーム端は連結部C4に接続される。
【0028】
<連結部C1の構成>
図3は、
図2に示すプラズマ処理装置1が備える機構部7の連結部C1の断面構成を示す断面図である。連結部C1において、第1円板C11と第2円板C12とが相対的に回転可能であるとともに、第1円板C11と第2円板C12とがコンデンサを構成することが好ましい。これにより、当該コンデンサによりアンテナ6によるリアクタンスを低減させることに加えて、第1円板C11と第2円板C12とが相対的に回転することにより、磁場導入窓3に沿ってアンテナ6を平行移動させる構成を実現できる。具体的に以下に説明する。
【0029】
図3に示すように、連結部C1は、樹脂からなる筐体B1を有する。筐体B1は、第1円板C11と第2円板C12とが平行平板コンデンサを構成するように、第1円板C11と第2円板C12とを、ギャップG1を介して平行に保持し、かつ、互いに回転可能に支持する。これにより、第1円板C11及び第2円板C12を連結部C1で互いに回転可能にし、かつ、平行平板コンデンサを構成することができる。筐体B1の内部には、凹部71,72が互いに間隔を開けて平行に形成されている。凹部71,72はそれぞれ、筐体B1の内部に環状に形成されている。凹部71に第1円板C11が入り込み、凹部72に第2円板C12が入り込む。
【0030】
筐体B1の両側には、開口部73,74が形成されており、開口部73に回転軸A12が入り込み、開口部74に回転軸A22が入り込む。開口部73と回転軸A12との間にはシール部材75が設けられており、開口部74と回転軸A22との間にはシール部材76が設けられている。シール部材75,76は、筐体B1の内部に充填された冷却液が筐体B1の外部に漏れることを防ぐためのものであり、例えばOリングである。
【0031】
アンテナ6、アームA1~A6及び連結部C1~C4には、冷却液を流通させる流路FL1が形成されている。連結部C1においては、回転軸A12,A22の内部に流路FL1が形成されている。これにより、アンテナ6、アームA1~A6及び連結部C1~C4の発熱を抑制することができるため、アンテナ6、アームA1~A6及び連結部C1~C4から被処理物W1へ熱の影響が及ぶことを低減することができる。
【0032】
アンテナ6、アームA1~A6は、内部に冷却液を流通させる流路FL1が形成される中空構造のパイプである。回転軸A12,A22の内部に形成された流路FL1に冷却液が流通することにより、筐体B1の内部に冷却液が充填される。流路FL1に流通する冷却液としては、電気絶縁の観点から、高抵抗の水が好ましく、例えば純水またはそれに近い水が好ましい。また、当該冷却液としては、例えばフッ素系不活性液体などの水以外の液冷媒を用いてもよい。
【0033】
機構部7には、連結部C1の第1円板C11と第2円板C12とを相対的に回転させるモータM1,M2が設けられている。具体的には、モータM1は、回転軸A12に設けられており、モータM2は、回転軸A22に設けられている。モータM1,M2は、プラズマ処理装置1が備える制御部10に電気的に接続されている。
【0034】
モータM1が回転することにより、回転軸A12が回転し、回転軸A12に接続された直線部A11は、Y軸方向と平行で回転軸A12に沿った軸周りに回転する。モータM2が回転することにより、回転軸A22が回転し、回転軸A22に接続された直線部A21は、Y軸方向と平行で回転軸A22に沿った軸周りに回転する。
【0035】
制御部10は、モータM1,M2の回転角度によってアンテナ6の平行移動を制御する。制御部10は、アンテナ6が
図1に示す平面F1に沿って平行移動するように、モータM1,M2に制御信号を送信する。連結部C1の第1円板C11と第2円板C12とをモータM1,M2により相対的に回転させることにより、制御部10によってモータM1,M2の回転動作によるアンテナ6の位置決めを容易に行うことができる。連結部C2~C4の断面構成は、
図3に示す連結部C1の断面構成と同じである。モータM2は、回転軸A22ではなく回転軸A23に設けられていてもよい。
【0036】
以上により、プラズマ処理装置1では、高周波磁場を生じさせるアンテナ6が、真空容器2の壁面22に設けられた磁場導入窓3に対して平行移動するため、被処理物W1にプラズマ処理を均一に行うことができる。また、機構部7が真空容器2の外部でアンテナ6を平行移動させるため、処理室21内に移動機構を設ける場合におけるパーティクルの発生を抑制することができる。
【0037】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
図4は、本発明の実施形態2に係るプラズマ処理装置1Aの断面構成を示す断面図である。
【0038】
図4に示すように、プラズマ処理装置1Aは、実施形態1のプラズマ処理装置1とは、検出部11を備える点が異なる。検出部11は、アンテナ6により生じたプラズマP1の発光を検出する。具体的には、検出部11は例えば分光器であり、特定波長の発光強度を検出する。検出部11は、処理室21内に複数設けられ、被処理物W1と金属板4との間に配置されている。複数の検出部11は、X軸方向に並び、被処理物W1の表面と実質的に平行になるように配置されている。
【0039】
制御部10は、複数の検出部11にも接続されており、複数の検出部11によって検出されたプラズマP1の発光に基づき、機構部7によるアンテナ6の平行移動を制御する。具体的には、制御部10は、複数の検出部11によって検出された、特定波長におけるプラズマP1の発光強度に基づき、機構部7によるアンテナ6の移動速度を制御する。これにより、プラズマP1の発光を検出しながらアンテナ6の位置調整が可能であるため、プラズマP1の処理の調整を容易に行うことができる。
【0040】
〔実施形態3〕
本発明の実施形態3について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
図5は、本発明の実施形態3に係るプラズマ処理装置1Bの、説明上必要な部材のみを示した斜視図である。なお、
図5では、真空容器2及び誘電体板5等の図示を省略している。
図5の符号301及び302は、機構部7Aによってアンテナ6がX軸方向に移動する様子を示している。
【0041】
図5に示すように、プラズマ処理装置1Bは、実施形態1のプラズマ処理装置1とは、機構部7が機構部7Aに変更されている点が異なる。機構部7Aは、接続部81と、アーム82~85と、台車91と、レール93,94と、を有する。接続部81は、配線W2を介して高周波電源8と電気的に接続されるとともに、アーム82,84と電気的に接続される。アーム82~85はそれぞれ導電性を有する部材である。
【0042】
アーム82の一端は接続部81と電気的に接続され、アーム82の他端はアーム83の一端と屈曲するように接続されている。アーム83の他端はアンテナ6の一端と接続されている。アーム84の一端は接続部81と電気的に接続され、アーム84の他端はアーム85の一端と屈曲するように接続されている。アーム85の他端はアンテナ6の他端と接続されている。
【0043】
接続部81は、台車91の上に設けられており、台車91の車輪92は、レール93,94の上を移動する。レール93,94は、被処理物W1の表面と実質的に平行になるように配置されている。レール93,94は、X軸方向に延伸する。
【0044】
車輪92がレール93,94の上を移動することにより、アンテナ6は磁場導入窓3に沿って平行移動する。車輪92には図示しないモータが設けられており、当該モータは、制御部10に電気的に接続されている。制御部10は、車輪92に設けられたモータの回転角度によってアンテナ6の平行移動を制御する。
【0045】
〔実施形態4〕
本発明の実施形態4について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
図6は、本発明の実施形態3に係るプラズマ処理装置が備える機構部の連結部CN1,CN2の断面構成を示す断面図である。
図6では制御部10を省略している。
【0046】
実施形態3に係るプラズマ処理装置では、実施形態1に係るプラズマ処理装置1に比べて、
図6の符号401に示すように、連結部C1が連結部CN1に変更され、回転軸A12がアーム部材AR1に変更され、筐体B1が筐体B2に変更されている。連結部CN1は、第1部材としての筐体B2と、第2部材としての第2円板C12と、を有する。筐体B2はアーム部材AR1と固定されている。つまり、筐体B2は、連結部CN1に接続されたアームの一方のアーム端に固定されている。アーム部材AR1には流路FL1が形成されていてもよい。筐体B2は導電性を有する部材である。
【0047】
筐体B2の片側には、開口部72Aが形成されており、開口部72Aに回転軸A22が入り込む。開口部72Aと回転軸A22との間にはシール部材73Aが設けられている。シール部材73Aは、筐体B2の内部に充填された冷却液が筐体B2の外部に漏れることを防ぐためのものであり、例えばOリングである。
【0048】
また、筐体B2と第2円板C12とが相対的に回転可能であるとともに、筐体B2と第2円板C12とがコンデンサを構成する。具体的には、筐体B2の内壁71Aと第2円板C12との間でコンデンサが構成される。
【0049】
回転軸A22は、開口部72Aにおいて、シール部材73Aにより回転可能に支持される。つまり、筐体B2は、第2円板C12を回転可能に支持する。これにより、筐体B2が回転せずに固定されるとともに、第2円板C12が回転可能である構成を実現できる。このため、モータM1が不要になり、回転に必要なモータの数を少なくすることができる。
【0050】
<変形例>
図6の符号402は、
図6の符号401に示す連結部CN1の変形例の断面構成を示す断面図である。
図6の符号402に示すように、連結部CN2は、連結部CN1に比べて、筐体B2が筐体B3に変更され、回転軸A22が回転軸AR2に変更されてもよい。
【0051】
連結部CN2は、第1部材としての筐体B3と、第2部材としての円板CA,CB,CCと、を有する。筐体B3はアーム部材AR1と固定されている。つまり、筐体B3は、連結部CN2に接続されたアームの一方のアーム端に固定されている。筐体B3は導電性を有する部材である。
【0052】
筐体B3の片側には、開口部74Bが形成されており、開口部74Bに回転軸AR2が入り込む。開口部74Bと回転軸AR2との間にはシール部材75Bが設けられている。シール部材75Bは、筐体B3の内部に充填された冷却液が筐体B3の外部に漏れることを防ぐためのものであり、例えばOリングである。
【0053】
また、筐体B3と円板CA,CB,CCとが相対的に回転可能であるとともに、筐体B3と円板CA,CB,CCとがコンデンサを構成する。円板CA,CB,CCは、互いに間隔を開けて平行に回転軸AR2に設けられている。筐体B3の内部には、凸部72B,73Bが互いに間隔を開けて平行に形成されている。凸部72B,73Bはそれぞれ、筐体B3の内部に環状に形成されている。
【0054】
円板CAは、筐体B3の内壁71Bと凸部72Bとの間に配置され、円板CBは、凸部72Bと凸部73Bとの間に配置され、円板CCは、凸部73Bの近傍に配置される。これにより、円板CAと凸部72Bとの間にコンデンサが構成され、円板CBと凸部72B,73Bとの間にコンデンサが構成され、円板CCと凸部73Bとの間にコンデンサが構成される。回転軸AR2は、開口部74Bにおいて、シール部材75Bにより回転可能に支持される。つまり、筐体B3は、円板CA,CB,CCを回転可能に支持する。
【0055】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0056】
1、1A、1B プラズマ処理装置
2 真空容器
3 磁場導入窓
4 金属板
5 誘電体板
6 アンテナ
7、7A 機構部
10 制御部
11 検出部
22 壁面
41 スリット
82~85、A1~A6 アーム
B1 筐体
B2、B3 筐体(第1部材)
C1~C4、CN1、CN2 連結部
C11、C21 第1円板(第1部材)
C12、C22 第2円板(第2部材、円板)
CA、CB、CC 円板
FL1 流路
G1 ギャップ
M1、M2 モータ
P1 プラズマ
W1 被処理物