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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174113
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】電子部品及び電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20231130BHJP
   H01G 4/228 20060101ALI20231130BHJP
   H01G 4/252 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
H01G4/30 201C
H01G4/30 201F
H01G4/30 201K
H01G4/30 311D
H01G4/30 311E
H01G4/30 311Z
H01G4/30 512
H01G4/30 513
H01G4/30 517
H01G4/228 B
H01G4/252 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086784
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】井上 順之
(72)【発明者】
【氏名】岡藤 有輝
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC03
5E001AC10
5E001AD03
5E001AD05
5E001AE02
5E001AE03
5E001AF02
5E001AF03
5E001AF06
5E001AH01
5E001AH03
5E001AH07
5E001AH09
5E001AJ01
5E001AJ02
5E001AJ03
5E082AB03
5E082BC31
5E082EE05
5E082EE23
5E082EE26
5E082EE35
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG46
5E082FG54
5E082GG10
5E082GG26
5E082GG28
5E082JJ02
5E082JJ03
5E082JJ07
5E082JJ15
5E082MM05
5E082MM24
5E082PP10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】素体の機械的強度低下を抑制する電子部品及びその製造方法を提供する。
【解決手段】電子部品の素体3は、端面3aを有している。複数の内部電極7は、素体内に配置されている。外部電極は、端面に配置されていると共に、複数の内部電極に電気的に接続されている。端面3aには、溝11及び溝13が形成されている。溝11は、互いに離間している複数の溝部分11aを含む。溝13は、互いに離間し、かつ、複数の溝部分11aと交差している複数の溝部分13aを含む。複数の溝部分11aと複数の溝部分13aとは、複数の、互いに交差している位置P1の夫々で深さd1を有していると共に、複数の、互いに交差していない位置P2の夫々で深さd1よりも小さい深さd2を有している。複数の内部電極7の夫々は、複数の、互いに交差している位置P1のうち、対応する位置P1で、端面3aから露出していると共に外部電極に物理的に接続されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端面を有する素体と、
前記素体内に配置されている複数の内部電極と、
前記端面に配置されていると共に、前記複数の内部電極に電気的に接続されている外部電極と、を備え、
前記端面には、第一溝が、互いに離間している複数の第一溝部分を含むように形成されていると共に、第二溝が、互いに離間し、かつ、前記複数の第一溝部分と交差している複数の第二溝部分を含むように形成されており、
前記複数の第一溝部分と前記複数の第二溝部分とは、複数の、互いに交差している位置のそれぞれで第一深さを有していると共に、複数の、互いに交差していない位置のそれぞれで前記第一深さよりも小さい第二深さを有しており、
前記複数の内部電極のそれぞれは、前記複数の、互いに交差している位置のうち、対応する位置で、前記端面から露出していると共に前記外部電極に物理的に接続されている、電子部品。
【請求項2】
前記複数の第一溝部分と前記複数の第二溝部分とは、互いに直交している、請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記複数の内部電極は、互いに対向するように、前記素体内に配置されており、
前記複数の第一溝部分のそれぞれは、第一方向に沿って延在しており、
前記複数の第二溝部分のそれぞれは、前記第一方向と直交する第二方向に沿って延在しており、
前記複数の内部電極が互いに対向している方向と前記第一方向とがなす角は、22.5度である、請求項2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記複数の第一溝部分及び前記複数の第二溝部分のそれぞれは、前記端面に直交する方向から見て、波形状を呈している、請求項1に記載の電子部品。
【請求項5】
前記電子部品は、積層セラミックコンデンサである、請求項1~4のいずれか一項に記載の電子部品。
【請求項6】
請求項1に記載の電子部品の製造方法であって、
前記端面へのレーザ光の照射により、前記端面に前記第一溝及び前記第二溝を形成する工程と、
前記端面に前記外部電極を配置する工程と、を含み、
前記形成する工程は、前記複数の第一溝部分を含む前記第一溝及び前記複数の第二溝部分を含む前記第二溝を形成することにより、前記複数の内部電極のそれぞれを、前記対応する位置で、前記端面から露出させる工程を含み、
前記配置する工程は、前記複数の内部電極のそれぞれを、前記対応する位置で、前記外部電極と物理的に接続するように、前記端面に前記外部電極を形成する工程と、を含む、電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品及び電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
知られている電子部品は、端面を有する素体と、素体内に配置されている複数の内部電極と、端面に配置されている外部電極と、を備えている(たとえば、特許文献1)。外部電極は、複数の内部電極に電気的に接続されている。複数の内部電極のそれぞれは、端面から露出している。端面には、複数の溝が、互いに離間し、かつ、露出した複数の内部電極と交差するように形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-277381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内部電極の端が素体の表面に露出していないことがある。この場合、内部電極と外部電極との電気的な接続が、確立しがたい。素体への溝の形成は、内部電極の端を素体から露出させることを実現し得る。内部電極の端を素体から確実に露出させるためには、溝の深さが大きくならざるを得ないことがある。
溝が素体に形成されている構成では、応力が素体に作用する場合、溝は、素体の機械的強度を低下させる。深さが大きい溝が素体に形成されている構成は、素体の機械的強度を大きく低下させるおそれがある。
【0005】
本発明の一つの態様は、素体の機械的強度が低下するのを抑制する電子部品を提供することを目的とする。本発明の別の一つの態様は、素体の機械的強度が低下するのを抑制するする電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの態様に係る電子部品は、端面を有する素体と、素体内に配置されている複数の内部電極と、端面に配置されている外部電極と、を備えている。外部電極は、複数の内部電極に電気的に接続されている。端面には、第一溝が、互いに離間している複数の第一溝部分を含むように形成されていると共に、第二溝が、互いに離間し、かつ、複数の第一溝部分と交差している複数の第二溝部分を含むように形成されている。複数の第一溝部分と複数の第二溝部分とは、複数の、互いに交差している位置のそれぞれで第一深さを有していると共に、複数の、互いに交差していない位置のそれぞれで第一深さよりも小さい第二深さを有している。複数の内部電極のそれぞれは、複数の、互いに交差している位置のうち、対応する位置で、端面から露出していると共に外部電極に物理的に接続されている。
【0007】
上記一つの態様では、複数の第一溝部分と複数の第二溝部分とは、複数の、互いに交差している位置のそれぞれで第二深さよりも大きい第一深さを有している。複数の内部電極のそれぞれは、当該複数の、互いに交差している位置のうち、対応する位置で、端面から露出していると共に外部電極に物理的に接続されている。
第一溝部分と第二溝部分とが互いに交差している位置での第一深さは、第一溝部分と第二溝部分とが互いに交差していない位置での第二深さより大きい。したがって、内部電極は、第一溝部分と第二溝部分とが互いに交差している位置で端面から確実に露出する。上記一つの態様は、内部電極と外部電極との電気的な接続を確実に確立する。
第一溝部分と第二溝部分とが互いに交差していない位置での第二深さは、第一溝部分と第二溝部分とが互いに交差している位置での第一深さより小さい。したがって、第一溝部分と第二溝部分とが互いに交差していない位置は、第一溝部分と第二溝部分とが互いに交差している位置に比して、素体の機械的強度を低下させる起点となりがたい。上記一つの態様では、溝の深さが第一深さのみである構成に比して、素体の機械的強度を低下させる起点が極めて限定される。この結果、上記一つの態様は、素体の機械的強度が低下するのを抑制する。
【0008】
別の一つの態様に係る電子部品の製造方法は、上記一つの態様の電子部品の製造方法である。上記別の一つの態様は、端面へのレーザ光の照射により、端面に第一溝及び第二溝を形成する工程と、端面に外部電極を配置する工程と、を含んでいる。形成する工程は、複数の第一溝部分を含む第一溝及び複数の第二溝部分を含む第二溝を形成することにより、複数の内部電極のそれぞれを、対応する位置で、端面から露出させる工程を含んでいる。配置する工程は、複数の内部電極のそれぞれを、対応する位置で、外部電極と物理的に接続するように、端面に外部電極を形成する工程と、を含んでいる。
【0009】
上記別の一つの態様では、端面へのレーザ光の照射により、端面に第一溝及び第二溝が形成される。第一溝部分と第二溝部分とが互いに交差している位置では、複数回のレーザ光の照射が行われる。上記別の一つの態様により得られる電子部品では、第一溝部分と第二溝部分とが互いに交差している位置での第一深さは、第一溝部分と第二溝部分とが互いに交差していない位置での第二深さより大きい。この結果、上記別の一つの態様は、素体の機械的強度が低下するのを抑制する電子部品を確実に得る。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一つの態様は、素体の機械的強度が低下するのを抑制する電子部品を提供する。本発明の別の一つの態様は、素体の機械的強度が低下するのを抑制する電子部品の製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、一実施形態に係る電子部品を示す斜視図である。
図2図2は、本実施形態に係る電子部品の断面構成を示す図である。
図3図3は、複数の内部電極、第一溝、及び第二溝を示す図である。
図4図4は、複数の内部電極、第一溝、及び第二溝を示す斜視図である。
図5図5は、複数の内部電極、第一溝、及び第二溝を示す図である。
図6図6は、複数の内部電極、第一溝、及び第二溝を示す図である。
図7図7は、本実施形態における電子部品の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0013】
図1図4を参照して、本実施形態に係る電子部品の構成を説明する。図1は、本実施形態に係る電子部品を示す斜視図である。図2は、本実施形態に係る電子部品の断面構成を示す図である。図3は、複数の内部電極、第一溝、及び第二溝を示す図である。図4は、複数の内部電極、第一溝、及び第二溝を示す斜視図である。
【0014】
図1及び図2に示されるように、電子部品1は、素体3と、外部電極5と、複数の内部電極7と、複数の内部電極9と、を備えている。本実施形態では、電子部品1は、一対の外部電極5を備えている。本実施形態では、電子部品1は、積層セラミックコンデンサである。
【0015】
素体3は、直方体形状を呈している。直方体形状は、たとえば、角部及び稜線部が面取りされている直方体の形状、及び、角部及び稜線部が丸められている直方体の形状を含む。素体3は、一対の端面3aと、一対の側面3cと、一対の側面3eと、を有している。本実施形態では、一対の端面3aは、第一方向D1で互いに対向し、一対の側面3cは、第二方向D2で互いに対向し、一対の側面3eは、第三方向D3で互いに対向している。一対の端面3a、一対の側面3c、及び一対の側面3eは、素体3の外表面を構成している。一対の側面3c及び一対の側面3eは、それぞれ一対の端面3aと隣り合うと共に、一対の端面3aを接続するように、第一方向D1に延在している。
【0016】
第一方向D1は、素体3の長さ方向であり、第二方向D2は、素体3の幅方向であり、第三方向D3は、素体3の高さ方向である。素体3の長さは、0.4mm以上7.5mm以下である。素体3の幅は、0.2mm以上6.3mm以下である。素体3の高さは、0.2mm以上2.8mm以下である。本実施形態では、素体3の長さは、5.7mmであり、素体3の幅は、5.0mmであり、素体3の高さは、2.6mmである。
【0017】
素体3は、複数の誘電体層が積層されて構成されている。各誘電体層は、第三方向D3に積層されている。素体3は、積層された複数の誘電体層を含んでいる。各誘電体層は、たとえば、誘電体材料を含むセラミックグリーンシートの焼結体から構成されている。誘電体材料は、たとえば、BaTiO系、Ba(Ti,Zr)O系、(Ba,Ca)TiO系、CaZrO系、又は(Ca,Sr)ZrO系の誘電体セラミックである。各誘電体層は、各誘電体層の間の境界が視認できない程度に一体化されている。
【0018】
図2に示されるように、内部電極7と内部電極9とは、第三方向D3において異なる位置に配置されている。内部電極7と内部電極9とは、素体3内において、第三方向D3に間隔を有して対向するように交互に配置されている。複数の内部電極7,9は、第三方向D3で互いに対向している。内部電極7と内部電極9とは、互いに極性が異なる。内部電極7は、一対の端面3aのうち一方の端面3aに露出している一端7aを有している。内部電極9は、一対の端面3aのうち他方の端面3aに露出している一端9aを有している。内部電極7の一端7aは、一対の端面3aのうち一方の端面3aに露出している。内部電極9の一端9aは、一対の端面3aのうち他方の端面3aに露出している。内部電極7,9は、導電性材料を含む。導電性材料は、たとえば、Cu、Ni又はPtを含む。内部電極7,9は、上記導電性材料を含む導電性ペーストの焼結体として構成されている。
【0019】
図1及び図2に示されるように、一対の外部電極5は、素体3の表面に配置されている。一対の外部電極5は、第一方向D1において互いに離間している。外部電極5は、端面3aに配置されている。本実施形態では、外部電極5は、一対の側面3c及び一対の側面3eの各一部にも配置されている。外部電極5は、端面3aのみに配置されていてもよい。外部電極5は、端面3aと、一対の側面3c及び一対の側面3eのうち少なくとも一つの面とに配置されていてもよい。外部電極5の端面3aに配置されている部分は、対応する内部電極7,9の端面3aに露出している一端7a,9aを覆うように配置されている。外部電極5は、対応する内部電極7,9に電気的に接続されている。
【0020】
外部電極5は、図2に示されるように、電極層Eを有している。電極層Eは、焼結金属層を含んでいる。焼結金属層は、素体3の表面に付与された導電性ペーストを乾燥させた電極塗膜を焼き付けることにより形成されている。本実施形態では、焼結金属層は、Cuからなる。焼結金属層は、Ni又はAgからなってもよい。導電性ペーストは、たとえば、Cu、Ni、又はAgからなる金属粉、ガラス、樹脂、及び有機溶剤を含んでいる。電極層Eは、焼結金属層上に形成されるめっき層を含んでいてもよい。電極層Eは、焼結金属層上に形成される導電性樹脂層、及び、導電性樹脂層上に形成されるめっき層を含んでいてもよい。
【0021】
図3及び図4に示されるように、各端面3aには、溝11と、溝13とが形成されている。溝11は、複数の溝部分11aを含むように、端面3aに形成されている。複数の溝部分11aは、互いに離間している。溝13は、複数の溝部分13aを含むように、端面3aに形成されている。複数の溝部分13aは、互いに離間している。複数の溝部分13aのそれぞれは、複数の溝部分11aと交差している。本実施形態では、溝11は複数の溝部分11aのみから構成されていると共に、溝13は複数の溝部分13aのみから構成されている。溝11は、複数の溝部分11aとは異なる溝部分を含んでいてもよい。溝13は、複数の溝部分13aとは異なる溝部分を含んでいてもよい。たとえば、溝11が第一溝を構成する場合、溝13は第二溝を構成する。たとえば、複数の溝部分11aが複数の第一溝部分を構成する場合、複数の溝部分13aは、複数の第二溝部分を構成する。
【0022】
複数の溝部分11aと複数の溝部分13aとは、互いに直交している。複数の溝部分11aのそれぞれは、第三方向D3に沿って延在している。各溝部分11aは、端面3a上を、第三方向D3にほぼ真っ直ぐに延在している。本実施形態では、複数の溝部分11aは、端面3a上において、一対の側面3eの間を延在している。複数の溝部分11aは、端面3a上において、第二方向D2に並んでいる。複数の溝部分13aのそれぞれは、第二方向D2に沿って延在している。各溝部分13aは、端面3a上を、第二方向D2にほぼ真っ直ぐに延在している。本実施形態では、複数の溝部分13aは、端面3a上において、一対の側面3cの間を延在している。複数の溝部分13aは、端面3a上において、第三方向D3に並んでいる。各溝部分11a,13aは、連続した一つの溝からなる。各溝部分11a,13aは、断続した複数の溝からなっていてもよい。
【0023】
複数の溝部分11aのそれぞれは、複数の溝部分13aと交差している複数の位置P1と、複数の溝部分13aと交差していない複数の位置P2と、を含む。複数の溝部分13aのそれぞれも、複数の溝部分11aと交差している複数の位置P1と、複数の溝部分11aと交差していない複数の位置P2と、を含む。各溝部分11a,13aは、各位置P1にて深さd1を有し、各位置P2にて深さd2を有する。深さd1と深さd2とは、互いに異なる。深さd1は、深さd2より大きい。溝部分11aの深さd1と、溝部分13aの深さd1とは、同じであってもよく、異なっていてもよい。溝部分11aの深さd2と、溝部分13aの深さd2とは、同じであってもよく、異なっていてもよい。深さd1が、たとえば、第一深さを構成する場合、深さd2は、第二深さを構成する。
深さd1は、たとえば、0.1μm以上3μm以下である。深さd2は、たとえば、0.2μm以上6μm以下である。本実施形態では、深さd1は1.5μmであり、深さd2は3μmである。複数の溝部分11aの幅は、10μm以上500μm以下である。複数の溝部分13aの幅は、10μm以上500μm以下である。本実施形態では、複数の溝部分11aの幅は、30μmである、複数の溝部分13aの幅は、30μmである。
【0024】
複数の内部電極7のそれぞれは、図3にも示されるように、複数の位置P1のうち対応する位置P1で、一方の端面3aから露出している。内部電極7の一端7aは、上述した対応する位置P1で、一方の端面3aから露出している。本実施形態では、一端7aは、一方の端面3aから露出している部分と、一方の端面3aから露出していない部分と、を含んでいる。一端7aは、溝11,13の形成に寄らずに一方の端面3aから露出している部分を含んでいてもよい。各内部電極7は、一端7aが含み、かつ、一方の端面3aから露出している部分にて、対応する外部電極5と直接接続している。各内部電極7は、上述した対応する位置P1にて、対応する外部電極5に物理的に接続されている。
複数の内部電極9のそれぞれは、図示は省略するが、内部電極7と同様に、複数の位置P1のうち対応する位置P1で、他方の端面3aから露出している。内部電極9の一端9aは、上述した対応する位置P1で、他方の端面3aから露出している。本実施形態では、一端9aは、他方の端面3aから露出している部分と、他方の端面3aから露出していない部分と、を含んでいる。一端9aは、溝11,13の形成に寄らずに他方の端面3aから露出している部分を含んでいてもよい。各内部電極9は、一端9aが含み、かつ、他方の端面3aから露出している部分にて、対応する外部電極5と直接接続している。各内部電極9は、上述した対応する位置P1にて、対応する外部電極5に物理的に接続されている。
【0025】
以上説明したように、電子部品1では、複数の溝部分11aと複数の溝部分13aとは、複数の位置P1のそれぞれで深さd2よりも大きい深さd1を有している。複数の内部電極7,9のそれぞれは、上述した対応する位置P1で、端面3aから露出していると共に外部電極5に物理的に接続されている。深さd1は、深さd2より大きい。したがって、各内部電極7,9は、溝部分11aと溝部分13aとが互いに交差している位置P1で、一対の端面3aのうち対応する端面3aから確実に露出する。この結果、電子部品1は、各内部電極7,9と対応する外部電極5との電気的な接続を確実に確立する。
電子部品1では、溝部分11aと溝部分13aとが互いに交差していない位置P2での深さd2は、溝部分11aと溝部分13aとが互いに交差している位置P1での深さd1より小さい。したがって、溝部分11aと溝部分13aとが互いに交差していない位置P2は、溝部分11aと溝部分13aとが互いに交差している位置P1に比して、素体3の機械的強度を低下させる起点となりがたい。電子部品1では、溝の深さが深さd1のみである構成に比して、素体3の機械的強度を低下させる起点が極めて限定される。この結果、電子部品1は、素体3の機械的強度が低下するのを抑制する。
【0026】
電子部品1では、複数の溝部分11aと複数の溝部分13aとは、互いに直交している。
電子部品1では、第一方向D1から見て、複数の位置P1が、複数の内部電極7,9のそれぞれに対して、バランスよく存在する。この結果、電子部品1は、複数の内部電極7,9のそれぞれと外部電極5との接続均一性を向上する。
【0027】
次に、図5を参照して、本実施形態に係る電子部品1の変形例の構成を説明する。図5は、複数の内部電極、第一溝、及び第二溝を示す図である。本変形例では、溝11及び溝13の構成に関して、上述した実施形態と相違する。以下、上述した実施形態と本変形例との相違点を主として説明する。
【0028】
図5に示されるように、溝部分11aは、第四方向D4に沿って延在しており、溝部分13aは、第四方向D4と直交する第五方向D5に沿って延在している。第四方向D4及び第五方向D5は、第二方向D2及び第三方向D3に交差する方向である。各溝部分11a及び各溝部分13aは、一方の端面3aを第一方向D1から見て、複数の内部電極7と斜めに交差している。図示は省略するが、各溝部分11a及び各溝部分13aは、他方の端面3aを第一方向D1から見て、複数の内部電極9と斜めに交差している。第三方向D3と第四方向D4とがなす角度は、22.5度である。第三方向D3と第五方向D5とがなす角度は、67.5度である。第三方向D3と第四方向D4とがなす角度は、67.5度であってもよく、第三方向D3と第五方向D5とがなす角度が、22.5度であってもよい。
【0029】
第三方向D3と第四方向D4とがなす角が22.5度である本変形例では、第一方向D1から見て、複数の位置P1が、複数の内部電極7,9のそれぞれに対して、より一層バランスよく存在する。この結果、本変形例は、複数の内部電極7,9のそれぞれと外部電極5との接続均一性をより一層向上する。
【0030】
さらに、図6を参照して、本実施形態に係る電子部品1の別の変形例の構成を説明する。図6は、複数の内部電極、第一溝、及び第二溝を示す図である。本変形例では、溝11及び溝13の構成に関して、上述した本実施形態及び変形例と相違する。以下、上述した本実施形態及び変形例と本変形例との相違点を主として説明する。
【0031】
図6に示されるように、複数の溝部分11a及び複数の溝部分13aのそれぞれは、第一方向D1から見て、波形状を呈している。波形状は、波の振幅及び周期が規則的に繰り返される形状又は波の振幅及び周期が不規則に繰り返される形状を含む。波形状は、たとえば、正弦波状又は三角波状を含む。本変形例では、複数の溝部分11a及び複数の溝部分13aは、波状を呈しつつ、全体として第二方向D2に延在している。複数の溝部分11aと複数の溝部分13aとは、全体として、互いに異なる方向に延在していてもよい。複数の溝部分11aと複数の溝部分13aとは、第二方向D2で互いにずれて形成されている。本変形例では、複数の溝部分11aと複数の溝部分13aとは、第二方向D2で半周期分だけ互いにずれて形成されている。
【0032】
次に、図7を参照して、本実施形態における電子部品1の製造方法について説明する。図7は、本実施形態における電子部品の製造方法を示すフローチャートである。
【0033】
工程S1では、内部に複数の内部電極7,9が配置された素体3を準備する。素体3は、工程S1において新たに作成してもよいし、既に作成された素体3を準備してもよい。工程S1にて準備される素体3では、端面3aに、溝11及び溝13が形成されていない。工程S1にて準備される素体3では、複数の内部電極7,9の一端7a,9aは、素体3を構成する誘電体により覆われている。本製造方法では、工程S1にて準備される素体3では、たとえば、複数の内部電極7,9の全てが誘電体層に覆われている。
【0034】
工程S2では、端面3aへのレーザ光の照射により、端面3aに溝11及び溝13を形成する。本製造方法では、端面3aへのレーザ光の照射により、端面3aに複数の溝部分11aを含む溝11及び複数の溝部分13aを含む溝13を形成する。工程S2では、端面3aに溝部分11aを含む溝11及び溝部分13aを含む溝13を形成することで、複数の内部電極7,9のそれぞれを、複数の位置P1のうち、対応する位置P1で、端面3aから露出させる。すなわち、端面3aへのレーザ光の照射により、複数の内部電極7,9のそれぞれを、対応する位置P1で、端面3aから露出させる。
【0035】
レーザ光は、複数の溝部分11a及び複数の溝部分13aを延在させる方向に沿って走査されながら、端面3aに照射される。本製造方法においては、複数の溝部分11aを含む溝11を形成する際にはレーザ光は第三方向D3に沿って走査され、複数の溝部分13aを含む溝13を形成する際にはレーザ光は第二方向D2に沿って走査される。
【0036】
端面3aにレーザ光を照射するレーザは、たとえば、希土類ファイバレーザである。たとえば、当該レーザはモード同期パルスレーザであり、上記レーザ光はパルスレーザ光である。端面3aに照射されるレーザ光の波長は、たとえば、250nm以上1600nm以下である。端面3aに照射されるレーザ光のパルス時間は、たとえば、10ps以下である。端面3aに照射されるレーザ光のパルスエネルギは、たとえば、5μJ以上200μJ以下である。
【0037】
本製造方法では、端面3aへのレーザ光の照射により、端面3aに溝11及び溝13が形成される。溝部分11aと溝部分13aとが互いに交差している位置P1では、複数回のレーザ光の照射が行われる。本製造方法により得られる電子部品では、溝部分11aと溝部分13aとが互いに交差している位置P1での深さd1は、溝部分11aと溝部分13aとが互いに交差していない位置P2での深さd2より大きい。
【0038】
工程S3では、端面3aに外部電極5を配置する。本製造方法では、複数の内部電極7,9のそれぞれを、外部電極5と物理的に接続するように、端面3aに外部電極5を形成する。複数の内部電極7,9のそれぞれと外部電極5とは、複数の位置P1のうち、対応する位置P1にて、物理的に接続される。外部電極5の配置は、たとえば、以下の過程を含む。まず、導電性ペーストを、素体3の表面に付与する。次に、付与した導電性ペーストを、素体3に焼き付ける。これにより電極層Eが形成される。導電性ペーストは、たとえば、ディップ法、印刷法、又は転写法により付与される。本製造方法では、導電性ペーストは、一つの端面3a、一対の側面3c、及び一対の側面3cの五つの面に付与される。電極層Eは、たとえば、物理蒸着法(PVD法)又は化学蒸着法(CVD法)により形成されていてもよい。
【0039】
以上の過程を経て、電子部品1が得られる。電子部品1は、上述したように、複数の内部電極7,9のそれぞれと対応する外部電極5との電気的な接続を確実に確立すると共に、素体3の機械的強度が低下するのを抑制する。上述した製造方法は、素体3の機械的強度が低下するのを抑制する電子部品1を確実に得る。
【0040】
レーザの点照射又は離散的なレーザ走査は、所定の位置での深さが深さd1と同等である構成を実現させ得る。この場合、所定の位置でレーザ走査を一時静止させる必要がある。したがって、レーザの点照射又は離散的なレーザ走査では、レーザ走査に時間を要する。さらに、1回の照射エネルギが大きくなるため、素体3への加工衝撃が増す。
本実施形態の製造方法によれば、レーザ走査を一時静止させる必要がなく、素体3へのレーザ加工を効率的に行うことができる。さらに、本実施形態の製造方法によれば、1回あたりの照射エネルギを低減できるため、素体3への加工衝撃を最小限にできる。
【0041】
以上、本発明の実施形態及び変形例について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態及び変形例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0042】
電子部品1では、複数の溝部分11aと複数の溝部分13aとは、互いに直交していなくともよい。複数の溝部分11aと複数の溝部分13aとは、互いに直交している電子部品1は、上述したように、複数の内部電極7,9のそれぞれと外部電極5との接続均一性を向上する。
電子部品1では、複数の内部電極7,9が互いに対向している方向である第三方向D3と複数の溝部分11aが延在する方向である第四方向D4とがなす角22.5度でなくてもよい。第三方向D3と第四方向D4とがなす角が22.5度である電子部品1では、上述したように、複数の内部電極7,9のそれぞれと外部電極5との接続均一性をより一層向上する。
複数の溝部分11a及び複数の溝部分13aのそれぞれは、第一方向D1から見て、波形状を呈していなくともよい。複数の溝部分11a及び複数の溝部分13aのそれぞれは、第一方向D1から見て、波形状を呈している電子部品1は、複数の溝部分11a及び複数の溝部分13aを簡易に実現する。
第三方向D3と第四方向D4とがなす角度及び第三方向D3と第五方向D5とがなす角度は、45度であってもよい。第三方向D3と第四方向D4とがなす角が22.5度である構成は、上述したように、複数の内部電極7,9のそれぞれと外部電極5との接続均一性をより一層向上する。
【0043】
本実施形態及び本変形例では、電子部品1は、積層セラミックコンデンサであるとして説明したが、本発明を適用可能な電子部品は、積層セラミックコンデンサに限られない。適用可能な電子部品は、たとえば、積層バリスタ、積層圧電アクチュエータ、積層サーミスタ、及び積層固体電池を含む。
【0044】
上述した実施形態及び変形例の記載から把握されるとおり、本明細書では以下に示す態様の開示を含んでいる。
(付記1)
端面を有する素体と、
前記素体内に配置されている複数の内部電極と、
前記端面に配置されていると共に、前記複数の内部電極に電気的に接続されている外部電極と、を備え、
前記端面には、第一溝が、互いに離間している複数の第一溝部分を含むように形成されていると共に、第二溝が、互いに離間し、かつ、前記複数の第一溝部分と交差している複数の第二溝部分を含むように形成されており、
前記複数の第一溝部分と前記複数の第二溝部分とは、複数の、互いに交差している位置のそれぞれで第一深さを有していると共に、複数の、互いに交差していない位置のそれぞれで前記第一深さよりも小さい第二深さを有しており、
前記複数の内部電極のそれぞれは、前記複数の、互いに交差している位置のうち、対応する位置で、前記端面から露出していると共に前記外部電極に物理的に接続されている、電子部品。
(付記2)
前記複数の第一溝部分と前記複数の第二溝部分とは、互いに直交している、付記1に記載の電子部品。
(付記3)
前記複数の内部電極は、互いに対向するように、前記素体内に配置されており、
前記複数の第一溝部分のそれぞれは、第一方向に沿って延在しており、
前記複数の第二溝部分のそれぞれは、前記第一方向と直交する第二方向に沿って延在しており、
前記複数の内部電極が互いに対向している方向と前記第一方向とがなす角は、22.5度である、付記1又は付記2に記載の電子部品。
(付記4)
前記複数の第一溝部分及び前記複数の第二溝部分のそれぞれは、前記端面に直交する方向から見て、波形状を呈している、付記1に記載の電子部品。
(付記5)
前記電子部品は、積層セラミックコンデンサである、付記1~4のいずれか一つの付記に記載の電子部品。
(付記6)
付記1~5のいずれか一つの付記に記載の電子部品の製造方法であって、
前記端面へのレーザ光の照射により、前記端面に前記第一溝及び前記第二溝を形成する工程と、
前記端面に前記外部電極を配置する工程と、を含み、
前記形成する工程は、前記複数の第一溝部分を含む前記第一溝及び前記複数の第二溝部分を含む前記第二溝を形成することにより、前記複数の内部電極のそれぞれを、前記対応する位置で、前記端面から露出させる工程を含み、
前記配置する工程は、前記複数の内部電極のそれぞれを、前記対応する位置で、前記外部電極と物理的に接続するように、前記端面に前記外部電極を形成する工程と、を含む、電子部品の製造方法。
【符号の説明】
【0045】
1…電子部品、3…素体、3a…端面、5…外部電極、7,9…内部電極、11,13…溝、11a,13a…溝部分、d1,d2…深さ、D4…第四方向、D5…第五方向、P1,P2…位置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7