(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174115
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】プログラム、乗換案内装置及び乗換案内方法
(51)【国際特許分類】
B61L 25/02 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
B61L25/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086789
(22)【出願日】2022-05-27
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小鷹 美里
(72)【発明者】
【氏名】大石 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】榊 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 滝廣
(72)【発明者】
【氏名】濱村 忠紘
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 将之
(72)【発明者】
【氏名】星野 隆行
(72)【発明者】
【氏名】根来 秀幸
【テーマコード(参考)】
5H161
【Fターム(参考)】
5H161AA01
5H161BB02
5H161DD23
5H161GG04
5H161GG17
5H161GG24
(57)【要約】
【課題】車内放送を行う列車の到着時刻に変動が生じる場合においても、適切な乗換案内を行うことを可能とするプログラム、乗換案内装置及び乗換案内方法を提供する。
【解決手段】乗換案内装置100のコンピュータを、始発駅情報D8及び終着駅情報D9を取得する第1取得手段(操作部150)、第1取得手段が取得した始発駅情報D8及び終着駅情報D9に基づいて、乗換案内候補駅を検索する検索手段(制御部110)、乗換案内対象駅情報D12を取得する第2取得手段(操作部150)、乗務列車が乗換案内対象駅前の所定の位置に到達したと判定した場合に乗換案内対象列車を抽出する抽出手段(制御部110)、乗換案内対象列車に係る情報を音声出力部180によって車両システム300へと出力させる出力制御手段(制御部110)、として機能させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯端末のコンピュータを、
前記携帯端末を使用する乗務員が乗務する列車である乗務列車の始発駅及び終着駅に係る情報を取得する第1取得手段、
前記第1取得手段が取得した始発駅及び終着駅に係る情報に基づいて、乗換案内を行う候補駅である乗換案内候補駅を検索する検索手段、
前記乗換案内候補駅から選択された乗換案内を行う対象駅である乗換案内対象駅に係る情報を取得する第2取得手段、
前記乗務列車が前記乗換案内対象駅前の所定の位置に到達したと判定した場合に、前記乗換案内対象駅における乗換案内対象列車を抽出する抽出手段、
前記乗換案内対象列車に係る情報を出力部によって外部に出力させる出力制御手段、
として機能させるプログラム。
【請求項2】
前記出力制御手段は、前記乗換案内対象列車の発車時刻に係る情報を含む音声データである放送音声データを生成の上、前記放送音声データを前記出力部によって出力させることを特徴とする請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記抽出手段は、前記乗換案内対象駅において前記乗務列車の乗客が乗換可能な時刻である乗換可能時刻を算出の上、前記乗換可能時刻以降に前記乗換案内対象駅を発車する前記乗務列車と異なる列車を抽出することを特徴とする請求項1に記載のプログラム。
【請求項4】
前記抽出手段は、前記乗務列車が前記所定の位置に到達したと判定した時刻に、前記所定の位置から前記乗換案内対象駅までの所要時間を加算し、さらに前記乗換案内対象駅における乗換時間を加算することで、前記乗換可能時刻を算出することを特徴とする請求項3に記載のプログラム。
【請求項5】
前記乗換時間は、前記乗換案内対象駅を発車する列車の路線ごとに設定された時間であることを特徴とする請求項4に記載のプログラム。
【請求項6】
前記抽出手段は、前記乗換案内対象駅から発車する列車の発車時刻に係る情報が少なくとも路線毎かつ進行方向毎に記憶されたデータである時刻表データから、路線毎かつ進行方向毎に、前記乗換可能時刻以降の前記乗換可能時刻に最も近い時刻に前記乗換案内対象駅から発車する列車を抽出することを特徴とする請求項3に記載のプログラム。
【請求項7】
前記抽出手段は、前記時刻表データに係る発車時刻に列車の遅延時間を加算した上で、路線毎かつ進行方向毎に、前記乗換可能時刻以降の前記乗換可能時刻に最も近い時刻に前記乗換案内対象駅から発車する列車を抽出することを特徴とする請求項6に記載のプログラム。
【請求項8】
前記コンピュータを、
前記乗換案内対象駅から発車する列車の路線毎かつ進行方向毎に、最終列車が前記乗換案内対象駅を発車したか否かを判定する判定手段、
としてさらに機能させ、
前記抽出手段は、前記判定手段が、最終列車が前記乗換案内対象駅を発車したと判定したのと路線及び進行方向が一致する列車を除いて、路線毎かつ進行方向毎に、前記乗換可能時刻以降の前記乗換可能時刻に最も近い時刻に前記乗換案内対象駅から発車する列車を抽出することを特徴とする請求項6に記載のプログラム。
【請求項9】
前記乗換案内対象駅が前記乗務列車の終着駅である場合にのみ、前記抽出手段は、前記乗換案内対象列車として、前記乗務列車と同一路線かつ同一進行方向の列車を抽出することを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項10】
前記コンピュータを、
前記乗務列車の運行開始に係る情報を取得する第3取得手段、
前記乗務列車の運行終了に係る情報を取得する第4取得手段、
としてさらに機能させ、
前記抽出手段は、前記第3取得手段が前記乗務列車の運行開始に係る情報を取得した後、前記第4取得手段が前記乗務列車の運行終了に係る情報を取得するまでの間、バックグラウンドで前記乗換案内対象列車を抽出することを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項11】
列車の始発駅及び終着駅に係る情報を取得する第1取得手段と、
前記第1取得手段が取得した始発駅及び終着駅に係る情報に基づいて、乗換案内を行う候補駅である乗換案内候補駅を検索する検索手段と、
前記乗換案内候補駅から選択された乗換案内を行う対象駅である乗換案内対象駅に係る情報を取得する第2取得手段と、
前記列車が前記乗換案内対象駅前の所定の位置に到達したと判定した場合に、前記乗換案内対象駅における乗換案内対象列車を抽出する抽出手段と、
前記乗換案内対象列車に係る情報を出力部によって外部に出力させる出力制御手段と、
を備えることを特徴とする乗換案内装置。
【請求項12】
列車の始発駅及び終着駅に係る情報を取得する第1取得ステップと、
前記第1取得ステップにおいて取得した始発駅及び終着駅に係る情報に基づいて、乗換案内を行う候補駅である乗換案内候補駅を検索する検索ステップと、
前記乗換案内候補駅から選択された乗換案内を行う対象駅である乗換案内対象駅に係る情報を取得する第2取得ステップと、
前記列車が前記乗換案内対象駅前の所定の位置に到達したと判定した場合に、前記乗換案内対象駅における乗換案内対象列車を抽出する抽出ステップと、
前記乗換案内対象列車に係る情報を出力部によって外部に出力させる出力制御ステップと、
を含むことを特徴とする乗換案内方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プログラム、乗換案内装置及び乗換案内方法に関する。
【背景技術】
【0002】
列車内においては、駅からの発車直後や駅に停車する直前等の所定のタイミングで、例えば、乗客に乗車マナーについてアナウンスしたり、各駅への到着予定時刻等の情報についてアナウンスしたりするための車内放送が行われる。
このような列車内における車内放送は、従来、列車の乗務員が、車内放送を行う所定のタイミングにおいて、マイクに向かって話すことによって口頭で行っていたが、このような口頭での放送を逐一行うことは、乗務員にとって大きな負担となっていた。
また、予め録音された音声を流す場合には乗務員が口頭での放送を行う必要はなくなるが、この場合も、乗務員が放送のタイミングを判断の上、列車内の機器を手動で操作する点で、乗務員の負担の低減は十分ではなかった。
【0003】
そこで、専用のプログラムがインストールされたスマートフォン、タブレット端末等の携帯端末を、車内放送に係る列車のシステムと接続することで、所定のタイミングで、列車内において車内放送を自動的に流すことを可能としたシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】PRTIMESホームページ、[令和4年4月29日検索]、インターネット<URL:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000182.000037933.html>、プレスリリース/九州旅客鉄道株式会社/<iPad(登録商標)を活用した列車内自動放送アプリを開発>筑肥線で使用開始
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
列車の車内放送においては、乗客の便宜のため、駅で停車する直前に、乗換案内、すなわち、当該駅で乗換可能な列車についての情報も放送する場合がある。
【0006】
このような場合、通常、路線及び進行方向(上り線又は下り線等)毎に、乗換可能な列車の中で直近の列車(最も待ち時間が短い列車)を乗換案内の対象とすべき列車として、当該列車について、その発車時刻に係る情報等を放送することとなるが、このような乗換案内の対象とすべき列車は、車内放送を行う列車の駅への到着時刻によって左右されることから、車内放送を行う列車に遅れが生じている場合等において到着時刻が変動する場合には、このような到着時刻の変動まで加味した上で、実際に乗換可能な列車の中で直近の列車を抽出し、当該列車についての情報を放送する必要がある。
【0007】
そのため、所定のタイミングで予め作成された文章を放送することを想定した従来のシステムでは、このような乗換案内の放送には対応できなかったことから、車内放送を自動化する場合においても、乗換案内の放送については、乗務員が口頭で行うことを要するのが通常であり、乗務員の車内放送に関する負担の低減は十分ではなかった。
【0008】
本発明の課題は、車内放送を行う列車の到着時刻に変動が生じる場合においても、適切な乗換案内を行うことを可能とするプログラム、乗換案内装置及び乗換案内方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、プログラムにおいて、
携帯端末のコンピュータを、
前記携帯端末を使用する乗務員が乗務する列車である乗務列車の始発駅及び終着駅に係る情報を取得する第1取得手段、
前記第1取得手段が取得した始発駅及び終着駅に係る情報に基づいて、乗換案内を行う候補駅である乗換案内候補駅を検索する検索手段、
前記乗換案内候補駅から選択された乗換案内を行う対象駅である乗換案内対象駅に係る情報を取得する第2取得手段、
前記乗務列車が前記乗換案内対象駅前の所定の位置に到達したと判定した場合に、前記乗換案内対象駅における乗換案内対象列車を抽出する抽出手段、
前記乗換案内対象列車に係る情報を出力部によって外部に出力させる出力制御手段、
として機能させる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のプログラムにおいて、
前記出力制御手段は、前記乗換案内対象列車の発車時刻に係る情報を含む音声データである放送音声データを生成の上、前記放送音声データを前記出力部によって出力させることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のプログラムにおいて、
前記抽出手段は、前記乗換案内対象駅において前記乗務列車の乗客が乗換可能な時刻である乗換可能時刻を算出の上、前記乗換可能時刻以降に前記乗換案内対象駅を発車する前記乗務列車と異なる列車を抽出することを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のプログラムにおいて、
前記抽出手段は、前記乗務列車が前記所定の位置に到達したと判定した時刻に、前記所定の位置から前記乗換案内対象駅までの所要時間を加算し、さらに前記乗換案内対象駅における乗換時間を加算することで、前記乗換可能時刻を算出することを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のプログラムにおいて、
前記乗換時間は、前記乗換案内対象駅を発車する列車の路線ごとに設定された時間であることを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項3に記載のプログラムにおいて、
前記抽出手段は、前記乗換案内対象駅から発車する列車の発車時刻に係る情報が少なくとも路線毎かつ進行方向毎に記憶されたデータである時刻表データから、路線毎かつ進行方向毎に、前記乗換可能時刻以降の前記乗換可能時刻に最も近い時刻に前記乗換案内対象駅から発車する列車を抽出することを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のプログラムにおいて、
前記抽出手段は、前記時刻表データに係る発車時刻に列車の遅延時間を加算した上で、路線毎かつ進行方向毎に、前記乗換可能時刻以降の前記乗換可能時刻に最も近い時刻に前記乗換案内対象駅から発車する列車を抽出することを特徴とする。
【0016】
請求項8に記載の発明は、請求項6に記載のプログラムにおいて、
前記コンピュータを、
前記乗換案内対象駅から発車する列車の路線毎かつ進行方向毎に、最終列車が前記乗換案内対象駅を発車したか否かを判定する判定手段、
としてさらに機能させ、
前記抽出手段は、前記判定手段が、最終列車が前記乗換案内対象駅を発車したと判定したのと路線及び進行方向が一致する列車を除いて、路線毎かつ進行方向毎に、前記乗換可能時刻以降の前記乗換可能時刻に最も近い時刻に前記乗換案内対象駅から発車する列車を抽出することを特徴とする。
【0017】
請求項9に記載の発明は、請求項1から8のいずれか一項に記載のプログラムにおいて、
前記乗換案内対象駅が前記乗務列車の終着駅である場合にのみ、前記抽出手段は、前記乗換案内対象列車として、前記乗務列車と同一路線かつ同一進行方向の列車を抽出することを特徴とする。
【0018】
請求項10に記載の発明は、請求項1から8のいずれか一項に記載のプログラムにおいて、
前記コンピュータを、
前記乗務列車の運行開始に係る情報を取得する第3取得手段、
前記乗務列車の運行終了に係る情報を取得する第4取得手段、
としてさらに機能させ、
前記抽出手段は、前記第3取得手段が前記乗務列車の運行開始に係る情報を取得した後、前記第4取得手段が前記乗務列車の運行終了に係る情報を取得するまでの間、バックグラウンドで前記乗換案内対象列車を抽出することを特徴とする。
【0019】
請求項11に記載の発明は、乗換案内装置において、
列車の始発駅及び終着駅に係る情報を取得する第1取得手段と、
前記第1取得手段が取得した始発駅及び終着駅に係る情報に基づいて、乗換案内を行う候補駅である乗換案内候補駅を検索する検索手段と、
前記乗換案内候補駅から選択された乗換案内を行う対象駅である乗換案内対象駅に係る情報を取得する第2取得手段と、
前記列車が前記乗換案内対象駅前の所定の位置に到達したと判定した場合に、前記乗換案内対象駅における乗換案内対象列車を抽出する抽出手段と、
前記乗換案内対象列車に係る情報を出力部によって外部に出力させる出力制御手段と、
を備えることを特徴とする。
【0020】
請求項12に記載の発明は、乗換案内方法において、
列車の始発駅及び終着駅に係る情報を取得する第1取得ステップと、
前記第1取得ステップにおいて取得した始発駅及び終着駅に係る情報に基づいて、乗換案内を行う候補駅である乗換案内候補駅を検索する検索ステップと、
前記乗換案内候補駅から選択された乗換案内を行う対象駅である乗換案内対象駅に係る情報を取得する第2取得ステップと、
前記列車が前記乗換案内対象駅前の所定の位置に到達したと判定した場合に、前記乗換案内対象駅における乗換案内対象列車を抽出する抽出ステップと、
前記乗換案内対象列車に係る情報を出力部によって外部に出力させる出力制御ステップと、
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、車内放送を行う列車の到着時刻に変動が生じる場合においても、適切な乗換案内を行うことを可能とするプログラム、乗換案内装置及び乗換案内方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施形態に係る乗換案内装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】実施形態に係る乗換案内装置の列車の運行前の動作の流れを示すフローチャートである。
【
図3】実施形態に係る乗換案内装置の列車の運行中の動作の流れを示すフローチャートである。
【
図4】実施形態に係る乗換案内装置の運行前画面を示す図である。
【
図5】実施形態に係る乗換案内装置の運行中画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、
図1から
図5に基づいて、本発明の実施形態である乗換案内装置100について説明する。ただし、本発明の技術的範囲は、図示例に限定されるものではない。
【0024】
[第1 構成の説明]
乗換案内装置100は、列車に備えられた車内放送に係るシステムと接続することで、列車内における車内放送を自動的に行うための装置であり、
図1に示すように、制御部110と、記憶部120と、通信部130と、表示部140と、操作部150と、位置情報取得部160と、時刻情報取得部170と、音声出力部180と、を備えて構成されている。
乗換案内装置100としては、専用の装置を用いる必要はなく、スマートフォン、タブレット端末等の汎用の携帯端末を使用することができる。
【0025】
制御部110は、乗換案内装置100の動作を制御する部分であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えて構成され、記憶部120に記憶されたプログラムデータ等とCPUとの協働により、乗換案内装置100の各部を統括制御する。
【0026】
記憶部120は、乗換案内装置100の運用に必要となる各種情報が記憶される部分であり、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、半導体メモリ等により構成され、プログラムデータ等の乗換案内装置100の運用に必要となるデータを、制御部110から読み書き可能に記憶する。
【0027】
また、記憶部120は、乗換案内プログラム121と、事前情報記憶部122と、動作中情報記憶部123と、を備える。
【0028】
乗換案内プログラム121は、乗換案内装置100を動作させるための制御部110への各種命令を含むプログラムであり、後述の動作の説明において述べる乗換案内装置100の動作は、乗換案内プログラム121に従ってなされることとなる。
【0029】
事前情報記憶部122は、乗換案内装置100の動作において使用する各種情報が予め記憶されたデータベースであり、路線データD1、キロ程データD2、放送位置データD3、所要時間データD4、乗換時間データD5、時刻表データD6及びテンプレートデータD7が記憶されている。
【0030】
路線データD1は、乗換案内装置100を使用して車内放送を行う各路線についての情報であり、路線上に存在する全駅の名称、駅の並び順、及び各駅における乗り換え可能な路線に係る情報を含む。
【0031】
キロ程データD2は、乗換案内装置100を使用して車内放送を行う各路線のキロ程についての情報であり、起点となる地点から所定の距離(1km等)毎の各地点の位置に係る情報(経緯度)を含む。
【0032】
放送位置データD3は、乗換案内装置100を使用して車内放送を行う位置(車内放送の開始位置)が定められた情報であり、乗換案内装置100を使用して車内放送を行う各路線について、各駅の手前において後述のように乗換案内に係る車内放送を行う位置と、駅間において後述のように放送情報に係る車内放送を行う位置と、が、キロ程データD2に係るキロ程によって定められた情報を含む。
乗換案内装置100を使用して乗換案内に係る車内放送を行う位置は、各駅の手前の位置であり、かつ既存の車内放送のタイミングと重ならない位置となるように設定することが好ましい。また、駅間において放送情報に係る車内放送を行う位置は、駅間の中間付近であり、かつ既存の車内放送のタイミングと重ならない位置となるように設定することが好ましい。
なお、以下においては乗換案内に係る車内放送を「乗換案内放送」といい、放送情報に係る車内放送を「放送情報放送」という。
【0033】
上記のように、乗換案内放送を行う位置は駅の手前であるのに対し、放送情報放送を行う位置は駅間であることから、これらの放送位置は別個に設定されていることとなる。
また、放送位置データD3に係る車内放送を行う位置は、列車の進行方向毎に別個に設定されている。
【0034】
所要時間データD4は、放送位置データD3に係る乗換案内放送の放送位置から、次の駅で停車するまでの所要時間に係る情報であり、車内放送を行う各路線の各駅について、駅の手前の乗換案内放送を行う位置から駅で停車するまでに要する時間が記憶されている。
所要時間データD4は、列車の進行方向毎に別個に設定されている。
【0035】
乗換時間データD5は、乗換案内装置100を使用して乗換案内放送を行う各路線の各駅における列車の乗り換えに要する時間に係る情報であり、例えば、駅毎に乗り換えに要する時間の平均値を算出する等の方法で予め駅毎に設定の上で記憶させておけばよい。
【0036】
時刻表データD6は、乗換案内装置100を使用して乗換案内放送を行う各路線の各駅についての列車の時刻表に係る情報であり、駅、路線、平日/休日(土曜日、日曜日、祝日及び別途指定した日)の区分、進行方向毎に個別のファイルに分けて、各駅を発車する全ての列車について、その発車時刻に加えて、発車するプラットホーム、行先(終点となる駅)、列車の種別(各駅停車、急行等)、直通運転、列車の愛称名に係る情報が記憶されている。
なお、平日/休日の区分については、年末・年始やイベントによって急遽祝日が変更される場合等に対応できるように、土曜日、日曜日及び祝日に加え、別途指定した日についても休日ダイヤでの運行日として扱うことができるようにしている。具体的には、事前情報記憶部122に暦に係るデータ(カレンダーデータD14)を記憶させ、当該データ上において休日ダイヤでの運行日となる日を指定するようにすればよい。
【0037】
テンプレートデータD7は、後述の動作の説明で述べる放送音声データD13の生成に使用するテンプレートとなる文章のデータであり、使用する可能性のある文章に係るデータが網羅的に記憶されている。
【0038】
事前情報記憶部122に記憶されているデータの内容は、定期的に更新され、常に最新の情報とされていることが求められる。
情報の更新の方法は特に限定されないが、例えば、列車の時刻表に係る情報等を管理する外部の所定のシステム(情報配信システム200とする。)から、インターネット、電話回線網、携帯電話通信網、無線LAN通信網等の通信ネットワークNを介して、メールの添付ファイル等の形式で最新の情報を乗換案内装置100へと配信するようにし、当該情報を通信部130によって受信した乗換案内装置100において、制御部110が、受信した情報に基づいて記憶部120に記憶されているデータを更新するようにすればよい。
また、所定のクラウド型の共有フォルダに記憶されたデータに各乗換案内装置100がアクセスすることで、データを更新するようにしてもよい。
これらの方法でデータを更新する場合、専用のサーバを設ける必要がなくなり、低コストで乗換案内装置100に記憶されているデータを最新のものに更新することができる。
【0039】
動作中情報記憶部123は、乗換案内装置100の動作時に情報が一時的に記憶される部分であり、後述の動作の説明において述べるように、始発駅情報D8、終着駅情報D9、進行方向情報D10、乗換案内候補駅情報D11及び乗換案内対象駅情報D12が記憶される。
【0040】
通信部130は、乗換案内装置100と、情報配信システム200等の外部システムとの間の通信に用いられる部分であり、例えば、通信用IC(Integrated Circuit)及び通信コネクタ等を有する通信インターフェイスであり、制御部110の制御の元、所定の通信プロトコルを用いて、通信ネットワークNを介したデータ通信を行う。
【0041】
表示部140は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)等のディスプレイを備え、制御部110から出力された表示制御信号に基づいた画像を当該ディスプレイに表示する。
【0042】
操作部150は、例えば、文字入力キー、数字入力キー、その他各種機能に対応付けられたキーを有するキーボード等を備え、乗換案内装置100を使用する列車の乗務員からの操作入力を受け付けて、操作入力に応じた操作信号を制御部110へと出力する。操作部150は、例えば、表示部140と一体的に形成されたタッチパネル等であってもよい。
【0043】
位置情報取得部160は、乗換案内装置100の所在位置に関する情報を取得する部分であり、例えば、GPS(Global Positioning System)受信機が用いられる。GPS受信機は、GPSを構成する複数のGPS衛星から提供される測位用電波であるGPS信号を受信し、これを用いて、乗換案内装置100の位置情報を取得する。
なお、位置情報取得部160は、乗換案内装置100の位置情報を取得可能なものであればよく、GPS受信機には限られない。例えば、その他の衛星測位システムに係る信号の受信機等を使用してもよい。
【0044】
時刻情報取得部170は、時刻に関する情報を取得する部分であり、一般的な時計機能から構成されている。
【0045】
音声出力部180は、所定のケーブル等を介して列車に備えられた車内放送のためのシステムである車両システム300と接続され、後述のように乗換案内装置100によって生成された音声データである放送音声データD13を車両システム300へと出力するための部分である。
図1においては、音声出力部180として、例えば一般的なイヤホンジャックを使用し、一般的なイヤホンケーブルであるケーブルCによって乗換案内装置100と車両システム300とが接続される場合について図示しているが、音声出力部180は、上記のように放送音声データD13を車両システム300へと出力できるものであれば特に限定されない。
例えば、乗換案内装置100と車両システム300とが無線接続される場合であれば、乗換案内装置100においてこのような無線通信を行う部分が、音声出力部180に該当することとなる。
【0046】
[第2 動作の説明]
次に、本実施形態に係る乗換案内装置100の動作について説明する。
乗換案内装置100の動作は、大きく分けて、列車の運行前の動作である運行前動作(ステップS1)と、列車の運行中の動作である運行中動作(ステップS2)と、の2つの工程からなる。
【0047】
[1 ステップS1:運行前動作]
まず、列車の運行前の乗換案内装置100の動作について、
図2のフローチャートに従って説明する。
【0048】
本システムを利用して列車の車内放送を自動的に行う場合、列車の乗務員は、まず、乗換案内装置100の操作部150を使用して所定の操作を行い、
図4に示すような運行前画面G1を表示部140に表示させる(ステップS1-1)。
【0049】
運行前画面のG1が表示部140に表示されると、乗務員は、運行前画面G1に表示される始発駅欄G11に、当該乗務員が乗務する列車(以下、「乗務列車」という。)の始発駅を入力し、運行前画面G1に表示される終着駅欄G12に、乗務列車の終着駅を入力する(ステップS1-2)。これによって、乗換案内装置100は、乗務列車の始発駅に係る情報である始発駅情報D8と、乗務列車の終着駅に係る情報である終着駅情報D9と、を取得する。
また、乗換案内装置100においては、制御部110が、始発駅情報D8及び終着駅情報D9に基づいて列車の進行方向を判断し、列車の進行方向に係る情報である進行方向情報D10を取得する。
制御部110は、取得した始発駅情報D8、終着駅情報D9及び進行方向情報D10を、記憶部120の動作中情報記憶部123に記憶させる。
【0050】
なお、始発駅欄G11に入力された始発駅と終着駅欄G12に入力された終着駅とが同一であった場合には、制御部110は、所定のエラーメッセージを表示部140に表示させ、乗務員に対して、再度乗務列車の始発駅及び終着駅を入力させる。
【0051】
図4においては、乗務列車が八高・川越線を走る列車である場合において、始発駅欄G11に乗務列車の始発駅として「八王子」と入力され、終着駅欄G12に乗務列車の終着駅として「高麗川」と入力された場合について図示している。
【0052】
なお、始発駅と終着駅との間を走る路線が複数存在する場合には、ここで対象とする路線に係る情報も入力するようにする。
【0053】
乗換案内装置100においては、始発駅情報D8及び終着駅情報D9を取得すると、制御部110が、始発駅情報D8及び終着駅情報D9に基づいて、記憶部120の事前情報記憶部122に記憶された路線データD1を検索し、始発駅情報D8に係る始発駅と終着駅情報D9に係る終着駅との間に位置する駅のうち、列車の乗換が可能な駅(以下、「乗換案内候補駅」とする。)に係る情報である乗換案内候補駅情報D11を取得する(ステップS1-3)。なお、終着駅情報D9に係る終着駅が列車の乗換が可能な駅である場合には、乗換案内候補駅は、終着駅情報D9に係る終着駅を含む。
制御部110は、取得した乗換案内候補駅情報D11を、記憶部120の動作中情報記憶部123に記憶させる。
【0054】
乗換案内候補駅情報D11を取得すると、制御部110は、取得した乗換案内候補駅情報D11に係る駅名を、運行前画面G1の乗換案内候補駅欄G13に表示させる(ステップS1-4)。また、この際に、制御部110は、各乗換案内候補駅欄G13の右側に、後述のステップS1-5で乗換案内対象駅の選択に使用する選択スイッチG14を表示させる。
【0055】
図4においては、始発駅欄G11に乗務列車の始発駅として「八王子」と入力され、終着駅欄G12に乗務列車の終着駅として「高麗川」と入力された場合について、乗換案内候補駅欄G13に、乗換案内候補駅として、「拝島」及び終着駅である「高麗川」が表示された場合について図示している。
なお、
図4においては、乗換案内候補駅情報D11に係る乗換案内候補駅に含まれない「八王子」(始発駅)、「箱根ケ崎」及び「川越」(終着駅よりも先の駅)についても表示される場合について図示しているが、乗換案内候補駅に含まれない駅については、選択スイッチG14が表示されない。
【0056】
乗換案内候補駅欄G13及び選択スイッチG14が表示されると、列車の乗務員は、選択スイッチG14を使用して、乗換案内を行う対象とする駅(以下、「乗換案内対象駅」という。)を選択する(ステップS1-5)。
具体的には、乗務員は、操作部150を用いて選択スイッチG14を操作することで、乗換案内対象駅を選択すればよい。
これによって、乗換案内装置100は、乗換案内対象駅に係る情報である乗換案内対象駅情報D12を取得する。制御部110は、取得した乗換案内対象駅情報D12を、記憶部120の動作中情報記憶部123に記憶させる。
【0057】
図4においては、選択スイッチG14が、左右にスライドさせることで乗換案内の対象とするか否かを切り替えるスイッチである場合において、右側がオン(乗換案内の対象とする。)、左側がオフ(乗換案内の対象としない。)である場合について図示している。
この場合、初期表示としては全てオンとして、オフとすることを希望するもののみ左にスライドさせるようにしてもよいし、初期表示としては全てオフとして、オンとすることを希望するもののみ右にスライドさせるようにしてもよい。
【0058】
続いて、乗務員は、運行前画面G1に表示された放送情報選択欄G15を用いて、乗換案内と併せて放送する文章の種類を選択する(ステップS1-6)。具体的には、操作部150を用いて放送情報選択欄G15が操作されると、選択肢の一覧が表示され、乗務員は表示された選択肢から放送することを希望する文章の種類を選ぶようにすればよい。
【0059】
図4においては、「首都圏台風」が選択された場合について図示しており、この場合、首都圏における台風情報が、乗換案内と併せて放送されることとなる。
【0060】
[2 ステップS2:運行中動作]
続いて、列車の運行中の乗換案内装置100の動作について、
図3のフローチャートに従って説明する。
【0061】
乗務列車の運行を開始する場合、乗務員は、始発駅からの発車時に、操作部150を用いて、運行前画面G1の下方に表示された運行開始ボタンG16を操作し、運行開始ボタンG16が操作されると、乗換案内装置100の制御部110は、
図5に示すような運行中画面G2を表示部140に表示させる(ステップS2-1)。
【0062】
運行中画面G2は、
図5に示すように、次の乗換案内対象駅が表示される乗換案内対象駅表示G21と、乗換案内放送の実施のオン/オフを切り替えるための乗換案内オン/オフスイッチG22と、放送情報の放送のオン/オフを切り替えるための放送情報オン/オフスイッチG23と、運行終了ボタンG24と、行先表示G25と、平日ダイヤ/休日ダイヤ表示G26と、を含む。
【0063】
乗換案内対象駅表示G21には、次の乗換案内対象駅が表示される。
図4に示した例であれば、まず、「拝島」と表示され、拝島に係る乗換案内放送が終了すると「高麗川」と表示されることとなる。
図5においては「拝島」と表示された状態を図示している。
【0064】
乗換案内オン/オフスイッチG22は、乗換案内放送を実施するか否かを切り替えるスイッチであり、例えば、
図5に示すように、左右にスライドさせるスイッチとし、右側がオン(乗換案内放送を行う。)、左側がオフ(乗換案内放送を行わない。)となるようにすればよい。
また、放送情報オン/オフスイッチG23は、ステップS1-6で選択された放送情報の放送を行うか否かを切り替えるスイッチであり、例えば、
図5に示すように、左右にスライドさせるスイッチとし、右側がオン(放送情報の放送を行う。)、左側がオフ(放送情報の放送を行わない。)となるようにすればよい。
【0065】
なお、運行前画面G1の運行開始ボタンG16が操作された後に、当初オフとなっていた乗換案内オン/オフスイッチG22及び/又は放送情報オン/オフスイッチG23がオンとされた場合や、運行前画面G1の運行開始ボタンG16が操作された後に乗換案内オン/オフスイッチG22及び/又は放送情報オン/オフスイッチG23をオフとしてから再度オンとした場合にも、乗務員は、改めてステップS1で述べた運行前動作に係る設定を行う必要はなく、これらスイッチがオンとされた地点から、動作中情報記憶部123に記憶された情報を基に乗換案内装置100の動作が開始されることとなる。
【0066】
運行終了ボタンG24は、後述のように運行終了時に乗務員が操作するボタンである。
行先表示G25は、乗務列車の行先(終点となる駅)に係る表示である。
平日ダイヤ/休日ダイヤ表示G26は、乗務列車の運行日が平日ダイヤでの運行日又は休日ダイヤでの運行日のいずれに該当するかに係る表示である。
図5においては、平日ダイヤでの運行日において「平」と表示された場合について図示している。休日ダイヤでの運行日であれば、「休」と表示されるようにすればよい。
休日ダイヤでの運行日とは、具体的には、土曜日、日曜日、祝日及び別途指定した日であり、それ以外の日が平日ダイヤでの運行日となる。
【0067】
なお、ステップS2の動作中、運行中画面G2が表示部140に表示されていることは必須ではなく、例えば、一定時間の経過等によって自動的に、又は乗換案内装置100を使用する乗務員による操作部150を用いた所定の操作に従って、運行中画面G2の表示部140への表示が中止され、乗換案内装置100においては、バックグラウンドで自動的に以下に述べるステップS2-2以下の処理を行うようにしてもよい。
【0068】
運行開始ボタンG16が操作されると、制御部110は、位置情報取得部160によって、所定の間隔毎(例えば10秒毎)に乗換案内装置100の位置情報を取得の上、当該位置が次の乗換案内対象駅に係る乗換案内放送の放送位置に到達したか否かの判定を行う(ステップS2-2)。制御部110は、乗換案内装置100の位置が次の乗換案内対象駅に係る乗換案内放送の放送位置に到達したと判定するまで、ステップS2-2の判定を繰り返すこととなる。
【0069】
具体的には、制御部110は、位置情報取得部160によって取得された位置情報と、事前情報記憶部122に記憶されたキロ程データD2とを対照の上、位置情報取得部160によって取得された位置情報と最も近いキロ程を検索した上で、さらに、放送位置データD3を参照し、位置情報取得部160によって取得された位置情報と最も近いキロ程が、次の乗換案内対象駅に係る乗換案内放送の放送位置に係るキロ程と一致した時点で、乗換案内装置100の位置が次の乗換案内対象駅に係る乗換案内放送の放送位置に到達したと判定するようにすればよい。
【0070】
図5に示すように次の乗換案内対象駅が拝島の例であれば、拝島の手前の所定位置のキロ程に到達した時点で、拝島に係る乗換案内放送の放送位置に到達したと判定することとなる。
【0071】
乗換案内装置100の位置が次の乗換案内対象駅に係る乗換案内放送の放送位置に到達したと判定した場合、続いて制御部110は、当該駅において乗換案内を行う対象となる列車である乗換案内対象列車を抽出する(ステップS2-3)。
【0072】
具体的には、制御部110は、時刻情報取得部170によって、当該時点(ステップS2-2で放送位置に到達したと判定した時点)における時刻に係る情報を取得した上で、記憶部120の事前情報記憶部122に記憶された所要時間データD4を参照し、当該時刻に、次の乗換案内対象駅までの所要時間を加算する(ステップS2-3-1)。
【0073】
例えば、次の乗換案内対象駅が拝島である場合において、放送位置に到達した時点が14時20分、所要時間データD4に含まれる乗換案内放送の放送位置から拝島駅までの所要時間が3分であれば、14時20分に3分を加算して、14時23分と算出する。
【0074】
さらに、制御部110は、記憶部120の事前情報記憶部122に記憶された乗換時間データD5を参照し、ステップS2-3-1で算出した時刻に、当該乗換案内対象駅での乗換時間を加算する(ステップS2-3-2)。
これによって算出された時刻が、乗換案内対象駅において乗務列車の乗客が乗換可能な時刻のうち、最も近い時刻ということとなる。以下、当該時刻を「乗換可能時刻」という。
【0075】
例えば、次の乗換案内対象駅が拝島である場合において、放送位置に到達した時点が14時20分、所要時間データD4に含まれる乗換案内放送の放送位置から拝島駅までの所要時間が3分であり、ステップS2-3-1において14時23分と算出した場合において、乗換時間データD5に含まれる拝島駅の乗換時間が2分であれば、14時23分に2分を加算して、14時25分と算出する。
【0076】
さらに、制御部110は、時刻表データD6を検索して、ステップS2-3-2で算出した乗換可能時刻以降に当該駅を発車する他路線の列車のうち、各路線の各方面に係る最も時刻が近いものを抽出する(ステップS2-3-3)。抽出した列車が、乗換案内の対象とする列車である乗換案内対象列車となる。
【0077】
例えば、平日ダイヤでの運行日に、次の乗換案内対象駅が拝島である場合において、ステップS2-3-2において14時25分と算出した場合であれば、青梅線上り列車の平日ダイヤの14時25分以降に拝島駅を発車する列車のうち発車時刻が最も14時25分に近いもの、青梅線下り列車の平日ダイヤの14時25分以降に拝島駅を発車する列車のうち発車時刻が最も14時25分に近いもの、及び五日市線下り列車の平日ダイヤの14時25分以降に拝島駅を発車する列車のうち発車時刻が最も14時25分に近いものを抽出することとなる。なお、五日市線については始発駅なので拝島駅を発車する上り列車は存在しない。
【0078】
続いて、制御部110は、乗換案内放送を行うための音声データである放送音声データD13を生成する(ステップS2-4)。
【0079】
具体的には、ステップS2-3で抽出した各列車について、時刻表データD6に含まれる情報を参照して、例えば、路線、進行方向、列車の種別、行先(終点となる駅)、発車するプラットホーム、発車時刻、直通運転、列車の愛称名に係る情報を含む文章を作成した上で、当該文章並びに所定の定型文を読み上げる音声データを生成するようにすればよい。
【0080】
例えば、平日ダイヤでの運行日に、次の乗換案内対象駅が拝島である場合において、ステップS2-3-3で青梅線上り列車の平日ダイヤの14時25分以降に拝島駅を発車する列車のうち発車時刻が最も14時25分に近いもの、青梅線下り列車の平日ダイヤの14時25分以降に拝島駅を発車する列車のうち発車時刻が最も14時25分に近いもの、及び五日市線下り列車の平日ダイヤの14時25分以降に拝島駅を発車する列車のうち発車時刻が最も14時25分に近いものを抽出した場合であれば、抽出した3つの列車に係る情報の前後に、テンプレートデータD7に係る定型文を組み合わせて、例えば、以下のような文章を作成し、当該文章を読み上げる音声データを生成するようにすればよい。
【0081】
「お乗換のご案内です(定型文)。
今度の青梅線上り、立川行きは3番線から14時34分です(乗換案内)。
今度の青梅線下り、青梅行きは2番線から14時40分です(乗換案内)。
今度の五日市線下り、武蔵五日市行きは2番線から14時26分です(乗換案内)。
お忘れ物をなさいませんよう。お気を付けください(定型文)。」
【0082】
放送音声データD13を生成すると、乗換案内装置100の制御部110は、生成した放送音声データD13を音声出力部180から車両システム300へと出力し(ステップS2-5)、車両システム300は、放送音声データD13に係る音声を列車内で流し、乗換案内放送を行う(ステップS2-6)。
【0083】
ステップS2-5まで完了すると、乗換案内装置100においては、乗務員による操作部150を使用した操作によって運行中画面G2の運行終了ボタンG24が操作されたか否かについて判定し(ステップS2-7)、運行終了ボタンG24が操作されていないと判定した場合には、ステップS2-2に戻り、次の乗換案内対象駅について、ステップS2-2からステップS2-5の動作を繰り返す。
これに対し、運行終了ボタンG24が操作されたと判定した場合には、ステップS2の運行中動作に係る処理を終了することとなる。
【0084】
なお、上記においては乗換案内放送について説明したが、放送情報放送については、乗換案内放送とは別個に、放送情報放送の放送位置に到達したか否かが判定され、放送情報放送が実施されることとなる。
具体的には、乗換案内装置100の制御部110は、ステップS2-2で説明したように位置情報取得部160によって乗換案内装置100の位置情報が取得される度に、位置情報取得部160によって取得された位置情報と、事前情報記憶部122に記憶されたキロ程データD2とを対照の上、位置情報取得部160によって取得された位置情報と最も近いキロ程を検索する。その上で、放送位置データD3を参照し、位置情報取得部160によって取得された位置情報と最も近いキロ程が、次の放送情報放送の放送位置に係るキロ程と一致した時点で、ステップS1-6で選択された放送情報を読み上げる音声データを生成し、音声出力部180から車両システム300へと出力することとなる。
【0085】
[第3 効果の説明]
次に、本実施形態に係る乗換案内装置100の効果について説明する。
【0086】
本実施形態に係る乗換案内装置100によれば、まず列車の運行前に、乗換案内装置100を使用する乗務員の入力に従って、当該乗務員が乗務する乗務列車の始発駅に係る情報である始発駅情報D8及び終着駅に係る情報である終着駅情報D9を取得した上で、始発駅情報D8及び終着駅情報D9に基づいて、乗換案内を行う候補駅である乗換案内候補駅を検索して乗換案内候補駅情報D11を取得する。
さらに、乗換案内候補駅情報D11を表示部140に表示させた上で、乗換案内装置100を使用する乗務員が乗換案内候補駅から選択した乗換案内を行う対象駅に係る情報である乗換案内対象駅情報D12を取得する。
【0087】
その後に、列車の運行が開始されると、乗務列車が乗換案内対象駅情報D12に係る乗換案内対象駅前の所定の位置に到達したと判定した場合に、当該乗換案内対象駅における乗換案内対象列車を抽出した上で、当該乗換案内対象列車の発車時刻に係る情報を含む音声データである放送音声データD13を生成の上、放送音声データD13を、音声出力部180から車両システム300に出力する。
【0088】
これによって、乗換案内対象駅のそれぞれについて、実際に列車が乗換案内対象駅に近づいた時点で当該駅における乗換案内対象列車を抽出し、当該乗換案内対象列車に係る情報を車両システム300によって放送させることができることから、列車が遅れている場合等、車内放送を行う乗務列車の乗換案内対象駅への到着時刻に変動が生じる場合においても、実際に乗換可能な列車について放送することでき、適切な乗換案内を行うことが可能となる。
【0089】
また、乗換案内対象駅における乗換案内対象列車の抽出を、乗務列車が乗換案内対象駅前の所定の位置に到達したと判定した時刻に、当該位置から乗換案内対象駅までの所要時間を加算し、さらに乗換案内対象駅における乗換時間を加算して算出した乗換可能時刻以降に乗換案内対象駅を発車する乗務列車と異なる列車を抽出して行うことで、乗換案内対象駅への到着までに要する時間及び乗換案内対象駅における乗り換えに要する時間の両者を考慮した上で、適切な乗換案内対象列車を抽出することが可能となる。
【0090】
また、記憶部120の事前情報記憶部122に記憶された時刻表データD6が、各駅からの列車の発車時刻に係る情報を、少なくとも路線毎かつ進行方向毎に記憶したデータであり、このような時刻表データD6から、路線毎かつ進行方向毎に、乗換可能時刻以降の乗換可能時刻に最も近い時刻に乗換案内対象駅から発車する列車を抽出することで、路線毎かつ進行方向毎に、乗換可能時刻以降で最も近い時刻に乗換案内対象駅を発車する列車に係る情報を提供することが可能となる。
【0091】
また、運行前画面G1の運行開始ボタンG16が操作されてから、運行中画面G2の運行終了ボタンG24が操作されるまでの間に、乗務列車が、各乗換案内対象駅前の所定の位置に到達する度に、バックグラウンドで乗換案内対象列車の抽出、放送音声データD13の生成及び放送音声データD13の車両システム300への出力が行われることで、乗換案内装置100としてのスマートフォンやタブレット端末等の携帯端末を他の用途にも使用しつつ、列車の運行開始から終了までの車内放送を自動化することが可能となる。
【0092】
[第4 変形例]
次に、本実施形態に係る乗換案内装置100の変形例について説明する。
【0093】
[1 変形例1:路線毎の乗換時間の考慮]
上記動作の説明においては、ステップS2-3-2で加算する乗換時間として、駅毎に一律に定められた乗換時間データD5に係る乗換時間を用いる場合について説明したが、ステップS2-3-2で加算する乗換時間は、さらに路線毎に個別に定めるようにしてもよい。
この場合、記憶部120の事前情報記憶部122に記憶された乗換時間データD5を、各駅について、例えば、路線aから路線bへの乗換時間は3分、路線aから路線cへの乗換時間は5分といった形で、乗換元及び乗換先の路線毎に個別に乗り換えに要する時間が規定されたデータとした上で、ステップS2-3-2で、乗換元及び乗換先となる路線に合致するデータを抽出した上で、ステップS2-3-1で算出した時刻に加算するようにすればよい。
【0094】
これによって、乗換先となる路線毎に乗換時間に差がある駅においても、より適切な乗換案内対象列車を抽出の上、乗換案内を行うことが可能となる。
【0095】
なお、好ましくはないものの、上記とは反対に、駅毎に個別定めることもせずに、全ての駅の全ての路線について一律の乗換時間を設定することも一応可能である。この場合、乗換案内対象列車の抽出の精度は低下するものの、事前の乗換時間データD5の生成は容易となる。
【0096】
[2 変形例2:自路線に関する情報の提供]
上記動作の説明においては、乗換案内対象駅が乗務列車の終着駅ではない場合を念頭に、ステップS2-3-3において、乗換案内対象列車として、当該駅を発車する他路線の列車のみを抽出する場合について説明したが、乗換案内対象駅が乗務列車の終着駅である場合において、かつ同一路線がその先も続いている場合(乗務列車が途中駅止まりの列車である場合)には、同一路線の列車を乗り継ぐ乗客のため、他路線の列車に加えて、同一路線の同一進行方向の列車も抽出することが好ましい。
なお、乗換案内対象駅が乗務列車の終着駅でない場合まで、同一路線の同一進行方向の列車を抽出し、これを乗客に車内放送で案内してしまうと、乗客に当該列車が途中駅止まりであるという誤解を与える可能性があることから、同一路線の同一進行方向の列車の抽出は、乗換案内対象駅が乗務列車の終着駅である場合にのみ行うことが好ましい。
【0097】
この場合、ステップS2-3-3において、制御部110は、時刻表データD6を検索して、ステップS2-3-2で算出した乗換可能時刻以降に当該駅を発車する乗務列車と同一路線かつ同一進行方向の列車のうち、発車時刻が最も乗換可能時刻に近いものも抽出するようにすればよい。
【0098】
例えば、八高・川越線を対象とし、平日ダイヤでの運行日に、ステップS1-1で、
図4に図示したように、始発駅として「八王子」と入力され、終着駅として「高麗川」と入力された場合において、乗換案内対象駅が終着駅の高麗川である場合であれば、八高・川越線は高麗川よりも先(川越)まで続いていることから、当該列車は途中駅止まりということとなる。
そこで、ステップS2-3-2において14時25分と算出した場合であれば、他路線の列車に加えて、八高・川越線の川越方面行きの列車の平日ダイヤの14時25分以降に高麗川を発車する列車のうち発車時刻が最も14時25分に近いものについても抽出することとなる。
【0099】
[3 変形例3:乗換先列車の遅延の加味]
上記動作の説明においては、ステップS2-3-3の乗換案内対象列車の抽出を時刻表データD6から直接行い、乗換先の列車の遅延状況については加味しない場合について説明したが、乗換先の列車の遅延状況も加味した上で、乗換案内対象列車の抽出を行うようにしてもよい。
【0100】
この場合、列車の遅延状況に関する情報を管理する外部のシステムから、リアルタイムに各路線の各列車の遅延時間に係る情報を取得の上、制御部110は、時刻表データD6における各列車の各駅からの発車時刻に遅延時間を加算して、遅延時間を加算した実際の発車時刻を示す時刻表を作成する。
その上で、このような遅延時間を加算した時刻表を用いて、ステップS2-3-3の乗換案内対象列車の抽出を行うようにすればよい。
【0101】
[4 変形例4:最終列車発車済みの場合の案内対象からの除外]
ステップS2-3-3で説明したように、ステップS2-3-2で算出した乗換可能時刻以降に発車する列車のうち発車時刻が最も乗換可能時刻に近いものを、路線及び進行方向毎に抽出する場合、特定の路線の特定の進行方向に係る列車について既に最終列車が発車済みであった場合、当該路線の当該進行方向の列車については、翌日の始発列車を案内してしまうこととなるが、乗換案内としてこのような案内は不適切である。
【0102】
そこで、ステップS2-3-3における乗換案内対象列車の抽出時に、制御部110が、乗換案内対象駅における各路線の各進行方向について、最終列車が発車済みかどうかを判定の上、最終列車が発車済みであると判定した路線及び進行方向と一致する列車を除いて、ステップS2-3-3の乗換案内対象列車の抽出を行うようにしてもよい。
この場合、最終列車が発車済みの路線及び進行方向については、運転が終了している旨のメッセージ(例えば、「本日の〇〇線××方面の運転は終了しています。」等)を放送音声データD13に係る放送音声に含めるようにすることが好ましい。
【0103】
例えば、ステップS2-3-3で例示したように、八高・川越線において次の乗換案内対象駅が拝島である場合において、青梅線上り列車及び五日市線下り列車については最終列車が発車前、青梅線下り列車については最終列車が発車済みであれば、青梅線上り列車及び五日市線下り列車についてのみ、ステップS2-3-2で算出した乗換可能時刻以降に拝島駅を発車する列車のうち発車時刻が最も乗換可能時刻に近いものを抽出し、青梅線下り列車については抽出しないこととなる。
【0104】
[5 変形例5:音声データの生成場所の変更]
上記動作の説明においては、ステップS2-4で放送音声データD13を乗換案内装置100において生成し、これをステップS2-5で車両システム300へと出力する場合について説明したが、これに代えて、乗換案内装置100から車両システム300へと、ステップS2-3で抽出した乗換案内対象列車に係る情報のみを出力するようにし、車両システム300において放送音声データD13を生成の上、これを放送する構成とすることも可能である。
【0105】
[6 変形例6:乗換案内対象駅の判断位置の変更]
上記動作の説明においては、ステップS1-5の時点で、列車の乗務員による選択スイッチG14の操作に従って、乗換案内装置100において乗換案内候補駅情報D11に係る各乗換案内候補駅が乗換案内対象駅に該当するかを判断し、乗換案内対象駅情報D12を記憶部12の動作中情報記憶部123に記憶させておく場合について説明したが、これに代えて、この時点では各乗換案内候補駅が乗換案内対象駅に該当するかを判断して乗換案内対象駅情報D12を記憶させることなく、各乗換案内候補駅に係る選択スイッチG14のオン/オフに係る情報が、記憶部12の動作中情報記憶部123に記憶されるようにしてもよい。
【0106】
この場合、ステップS2-2においては、乗換案内候補駅情報D11に係る乗換案内候補駅の全てについて、各駅の手前の乗換案内放送の放送位置に到達したか否かを判定した上で、乗換案内放送の放送位置に到達したと判定した場合に、さらに記憶部12の動作中情報記憶部123に記憶された各乗換案内候補駅に係る選択スイッチG14のオン/オフに係る情報を参照し、当該駅について選択スイッチG14がオンであった場合に、次の乗換案内対象駅に係る乗換案内放送の放送位置に到達したと判定することとなる。
【符号の説明】
【0107】
100 乗換案内装置(携帯端末、乗換案内装置)
110 制御部(検索手段、抽出手段、出力制御手段、判定手段)
120 記憶部
121 乗換案内プログラム(プログラム)
130 通信部
140 表示部
150 操作部(第1取得手段、第2取得手段、第3取得手段、第4取得手段)
160 位置情報取得部
170 時刻情報取得部
180 音声出力部(出力部)
200 情報配信システム
300 車両システム
D1 路線データ
D2 キロ程データ
D3 放送位置データ
D4 所要時間データ
D5 乗換時間データ
D6 時刻表データ
D7 テンプレートデータ
D8 始発駅情報
D9 終着駅情報
D10 進行方向情報
D11 乗換案内候補駅情報
D12 乗換案内対象駅情報
D13 放送音声データ
D14 カレンダーデータ