IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ハイアールジャパンセールス株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-加熱調理器 図1
  • 特開-加熱調理器 図2
  • 特開-加熱調理器 図3
  • 特開-加熱調理器 図4
  • 特開-加熱調理器 図5
  • 特開-加熱調理器 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023017412
(43)【公開日】2023-02-07
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/00 20060101AFI20230131BHJP
【FI】
A47J27/00 103Z
A47J27/00 109Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021121668
(22)【出願日】2021-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】513230398
【氏名又は名称】ハイアールジャパンセールス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森脇 利行
(72)【発明者】
【氏名】原 利光
(72)【発明者】
【氏名】赤尾 英行
【テーマコード(参考)】
4B055
【Fターム(参考)】
4B055AA02
4B055BA26
4B055CA21
4B055CD59
4B055GB33
4B055GC40
(57)【要約】
【課題】攪拌効率の向上を図れる加熱調理器を提供する。
【解決手段】加熱調理器は、上側Z1を向いた開口6Dと底壁6Aとが設けられた鍋6と、底壁6Aの中心Cを通って垂直に延びる軸線Jまわりに回転可能な攪拌部材5とを含む。底壁6Aは、中心Cが設けられた中央部6AAと、底壁6Aの径方向外側R1から中央部6AAを取り囲んで径方向外側R1へ向かうにつれて上昇するように傾斜した外周部6ABとを有する。中央部6AAと外周部6ABとの境界6AEは、径方向Rに沿って延びて軸線Jと底壁6Aの外縁6Bとを結ぶ第1線分L1の中点P1よりも径方向外側R1に配置されている。攪拌部材5におけるそれぞれの攪拌棒5Bは、径方向Rに沿って延びて軸線Jと境界6AEとを結ぶ第2線分L2の中点P2と径方向Rで同じ位置に配置されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側を向いた開口と前記開口に対して下側から対向する円盤状の底壁とが設けられて前記開口を介して被加熱物が投入される鍋と、前記鍋を加熱する加熱部とを有する本体と、
前記本体の上部に取り付けられて前記開口を開閉可能とする蓋と、
前記蓋が前記開口を閉じた状態において前記鍋の内部に配置され、前記底壁の中心を通って垂直に延びる軸線まわりに回転可能な攪拌部材と、
前記攪拌部材を回転させる駆動部と、
前記加熱部及び前記駆動部を制御する制御部と、を含む加熱調理器であって、
前記底壁は、前記中心が設けられた中央部と、前記底壁の径方向における外側から前記中央部を取り囲んで前記径方向の外側へ向かうにつれて上昇するように傾斜した外周部とを有し、
前記中央部と前記外周部との境界は、前記径方向に沿って延びて前記軸線と前記底壁の外縁とを結ぶ第1線分の中点よりも前記径方向の外側に配置され、
前記攪拌部材は、前記蓋が前記開口を閉じた状態において前記軸線と平行に延びる複数の攪拌棒を有し、
前記蓋が前記開口を閉じた状態において、それぞれの前記攪拌棒は、前記径方向に沿って延びて前記軸線と前記境界とを結ぶ第2線分の中点と前記径方向で同じ位置に配置される、加熱調理器。
【請求項2】
前記攪拌部材は、前記蓋によって回転可能に支持され、前記駆動部は、前記蓋に設けられる、請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
それぞれの前記攪拌棒は、前記蓋が前記開口を閉じた状態において隙間を隔てて前記底壁に上側から対向する先端部を有し、
前記先端部は、前記底壁へ向けて尖った形状を有する、請求項2に記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記蓋が前記開口を開くことを検出する蓋検出部をさらに含み、
前記攪拌部材の回転中に前記蓋が前記開口を開いたことを前記蓋検出部が検出したことに応じて、前記制御部は、前記攪拌部材の回転を停止する、請求項2又は3に記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記攪拌部材は、前記蓋に対して着脱可能である、請求項2~4のいずれか一項に記載の加熱調理器。
【請求項6】
前記蓋が前記開口を閉じた状態において、それぞれの前記攪拌棒の全体は、垂直に直線状に延びる、請求項1~5のいずれか一項に記載の加熱調理器。
【請求項7】
前記制御部は、前記攪拌部材が1回転よりも多い正回転と1回転よりも多い逆回転とを繰り返すように前記駆動部を制御する、請求項1~6のいずれか一項に記載の加熱調理器。
【請求項8】
前記駆動部は、AC同期モータ又はステッピングモータである、請求項7に記載の加熱調理器。
【請求項9】
前記制御部は、前記加熱部の作動中に前記攪拌部材が回転するように前記駆動部を制御する、請求項1~8のいずれか一項に記載の加熱調理器。
【請求項10】
前記開口を閉じた前記蓋において前記鍋の内部に上側から臨む内面部には、前記鍋の内部で発生した蒸気を前記加熱調理器の外に逃がす蒸気穴が設けられ、
前記開口を閉じた状態における前記蓋の前記内面部において、前記蒸気穴から前記軸線まわりに90度以上離れて配置され、前記鍋の内部の温度を検出する温度検出部を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の加熱調理器。
【請求項11】
前記境界は、前記底壁の半径の55%以上65%以下に相当する距離だけ前記中心から前記径方向の外側へ離れた位置にある、請求項1~10のいずれか一項に記載の加熱調理器。
【請求項12】
前記攪拌棒は、前記軸線を挟んで2本設けられる、請求項1~11のいずれか一項に記載の加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載の加熱調理器は、加熱調理器本体と、加熱調理器本体内に収納されて被加熱物を収容する内鍋と、内鍋を上側から覆うように加熱調理器本体の上部に取り付けられた蓋体とを含む。蓋体は、加熱調理器本体によって回動可能に支持された外蓋と、外蓋の下面に取り付けられた内蓋とを含む。内蓋の内面には、攪拌ユニットが取り付けられる。攪拌ユニットは、上下方向に延びる回転軸まわりに回転可能な回転体と、回転体の両側に配置された2本の攪拌アームとを含む。これらの攪拌アームは、回動軸を介して回転体に取り付けられている。回転体が正回転すると、これらの攪拌アームは、攪拌状態まで垂れ下がってから回転体と一緒に正回転し、内鍋の中の被加熱物を周方向に動かす。回転体が逆回転すると、攪拌アームへの被加熱物の絡みを防ぎつつ、逆回転方向へ被加熱物を動かすことによって、攪拌効率の向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-86204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたように被加熱物を攪拌しながら調理する加熱調理器では、例えば少ない調味料であっても被加熱物に染み込ませることができたり、被加熱物の全体を均一に加熱できたりするように、攪拌効率の向上が常に望まれる。
【0005】
本発明は、かかる背景のもとでなされたもので、攪拌効率の向上を図れる加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上側を向いた開口と前記開口に対して下側から対向する円盤状の底壁とが設けられて前記開口を介して被加熱物が投入される鍋と、前記鍋を加熱する加熱部とを有する本体と、前記本体の上部に取り付けられて前記開口を開閉可能とする蓋と、前記蓋が前記開口を閉じた状態において前記鍋の内部に配置され、前記底壁の中心を通って垂直に延びる軸線まわりに回転可能な攪拌部材と、前記攪拌部材を回転させる駆動部と、前記加熱部及び前記駆動部を制御する制御部と、を含む加熱調理器であって、前記底壁が、前記中心が設けられた中央部と、前記底壁の径方向における外側から前記中央部を取り囲んで前記径方向の外側へ向かうにつれて上昇するように傾斜した外周部とを有し、前記中央部と前記外周部との境界は、前記径方向に沿って延びて前記軸線と前記底壁の外縁とを結ぶ第1線分の中点よりも前記径方向の外側に配置され、前記攪拌部材が、前記蓋が前記開口を閉じた状態において前記軸線と平行に延びる複数の攪拌棒を有し、前記蓋が前記開口を閉じた状態において、それぞれの前記攪拌棒が、前記径方向に沿って延びて前記軸線と前記境界とを結ぶ第2線分の中点と前記径方向で同じ位置に配置される、加熱調理器である。
【0007】
また、本発明は、前記攪拌部材が、前記蓋によって回転可能に支持され、前記駆動部が、前記蓋に設けられることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、それぞれの前記攪拌棒が、前記蓋が前記開口を閉じた状態において隙間を隔てて前記底壁に上側から対向する先端部を有し、前記先端部が、前記底壁へ向けて尖った形状を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、前記加熱調理器が、前記蓋が前記開口を開くことを検出する蓋検出部をさらに含み、前記攪拌部材の回転中に前記蓋が前記開口を開いたことを前記蓋検出部が検出したことに応じて、前記制御部が、前記攪拌部材の回転を停止することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、前記攪拌部材が、前記蓋に対して着脱可能であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、前記蓋が前記開口を閉じた状態において、それぞれの前記攪拌棒の全体が、垂直に直線状に延びることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、前記制御部が、前記攪拌部材が1回転よりも多い正回転と1回転よりも多い逆回転とを繰り返すように前記駆動部を制御することを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、前記駆動部が、AC同期モータ又はステッピングモータであることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、前記制御部が、前記加熱部の作動中に前記攪拌部材が回転するように前記駆動部を制御することを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、前記開口を閉じた前記蓋において前記鍋の内部に上側から臨む内面部には、前記鍋の内部で発生した蒸気を前記加熱調理器の外に逃がす蒸気穴が設けられ、前記加熱調理器が、前記開口を閉じた状態における前記蓋の前記内面部において、前記蒸気穴から前記軸線まわりに90度以上離れて配置され、前記鍋の内部の温度を検出する温度検出部を含むことを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、前記境界が、前記底壁の半径の55%以上65%以下に相当する距離だけ前記中心から前記径方向の外側へ離れた位置にあることを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、前記攪拌棒が、前記軸線を挟んで2本設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、加熱調理器では、被加熱物が本体の鍋に投入されてから蓋が鍋の開口を閉じた状態で加熱部が鍋を加熱することにより、鍋の内部の被加熱物が加熱調理される。加熱調理器では、蓋が開口を閉じた状態において鍋の内部に配置された攪拌部材が、鍋における円盤状の底壁の中心を通って垂直に延びる軸線まわりに回転することにより、鍋の内部の被加熱物を、攪拌部材における複数の攪拌棒によって撹拌しながら加熱調理することができる。攪拌棒は、軸線を挟んで2本設けられてもよい。
鍋の底壁では、中心が設けられた中央部を取り囲んだ外周部が、径方向の外側へ向けて上昇するように傾斜し、中央部と外周部との境界は、径方向に沿って延びて前記軸線と底壁の外縁とを結ぶ第1線分の中点よりも径方向の外側に配置されている。それぞれの攪拌棒は、径方向に沿って延びて前記軸線と前記境界とを結ぶ第2線分の中点と径方向で同じ位置に配置されている。この場合において攪拌棒が回転すると、前記軸線側つまり底壁の中心側の被加熱物は、攪拌棒によって効果的に攪拌されるし、底壁の外縁側の被加熱物は、外周部の傾斜に沿って攪拌棒側へ転げ落ちたり攪拌棒によって外縁側へ追いやられたりを繰り返すことによって、効果的に攪拌される。これにより、鍋の底壁上において径方向の全域に分布する被加熱物を均一に攪拌することができるので、攪拌効率の向上を図れる。
特に、中央部と外周部との境界は、底壁の半径の55%以上65%以下に相当する距離だけ底壁の中心から径方向の外側へ離れた位置にあるとよい。これにより、鍋の底壁上において径方向の全域に分布する被加熱物を一層均一に攪拌することができるので、攪拌効率の一層の向上を図れる。
【0019】
また、本発明によれば、攪拌部材が蓋によって回転可能に支持されて駆動部が蓋に設けられるので、攪拌部材を回転させるための構成を蓋に集約することができる。
【0020】
また、本発明によれば、それぞれの攪拌棒において底壁に上側から対向する先端部が、底壁へ向けて尖った形状を有するので、蓋が鍋の開口を閉じる際に、攪拌棒の先端部が鍋の中の被加熱物をうまく避けることができる。これにより、攪拌棒の先端部と被加熱物との接触による抵抗を低減できるので、使用者は、軽い力で蓋を閉じることができる。
【0021】
また、本発明によれば、加熱調理機では、攪拌部材の回転中に蓋が開いたことを蓋検出部が検出したことに応じて、制御部が攪拌部材の回転を停止するので、蓋が開くことによって鍋の外に露出された攪拌部材が回転するといった無駄を無くすことができる。
【0022】
また、本発明によれば、攪拌部材が蓋に対して着脱可能であるので、使用者は、攪拌部材を蓋から取り外してメンテナンスすることができる。
【0023】
また、本発明によれば、蓋が鍋の開口を閉じて攪拌部材が鍋の中に配置された状態において、それぞれの攪拌棒の全体が垂直に直線状に延びるので、鍋の中の被加熱物が攪拌棒から滑り落ちやすい。そのため、被加熱物が攪拌棒に絡みつくことを低減して、被加熱物を攪拌棒によって効果的に攪拌することができるので、攪拌効率の一層の向上を図れる。
【0024】
また、本発明によれば、制御部は、攪拌部材が1回転よりも多い正回転と1回転よりも多い逆回転とを繰り返すように駆動部を制御する。そのため、このような正逆回転を繰り返す攪拌部材によって鍋の中の被加熱物を効果的に攪拌することができるので、攪拌効率の一層の向上を図れる。特に、駆動部をAC同期モータ又はステッピングモータによって構成すれば、このような攪拌部材の動作を実現することができる。
【0025】
また、本発明によれば、制御部は、加熱部の作動中に攪拌部材が回転するように駆動部を制御するので、鍋の中の被加熱物が焦げることを防止できる。
【0026】
また、本発明によれば、鍋の開口を閉じた状態における蓋の内面部では、鍋の内部の温度を検出する温度検出部が、蒸気穴から前記軸線まわりに90度以上離れて配置される。これにより、温度検出部が、蒸気穴を通る蒸気の影響を受けにくいので、温度検出部の検出精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施形態に係る加熱調理器の模式的な縦断面左側面図である。
図2図1から鍋と攪拌部材とを抜き出した図である。
図3】攪拌部材の側面図である。
図4】加熱調理器の電気的構成を示すブロック図である。
図5】加熱調理器の蓋を下側から見た図である。
図6】加熱調理器において攪拌部材を回転させる駆動部に印加される電圧の経時変化を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下には、図面を参照して、本発明の実施形態について具体的に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る加熱調理器1の模式的な縦断面左側面図である。以下では、図1の紙面に直交する方向を加熱調理器1の左右方向Xといい、図1における左右方向を加熱調理器1の前後方向Yといい、図1における上下方向を加熱調理器1の上下方向Zという。左右方向Xのうち、図1の紙面における手前側を左側X1といい、図1の紙面における奥側を右側X2という。前後方向Yのうち、図1における右側を前側Y1といい、図1における左側を後側Y2という。上下方向Zのうち、上側を上側Z1といい、下側を下側Z2という。
【0029】
加熱調理器1は、一例として、ボックス状の全体形状を有する。加熱調理器1は、その大部分を構成する本体2と、本体2の上部に取り付けられた蓋3と、蓋3に設けられた駆動部4と、蓋3によって回転可能に支持された攪拌部材5とを含む。後述するように、駆動部4が攪拌部材5を回転させる。そのため、加熱調理器1では、攪拌部材5を回転させるための構成、つまり駆動部4及び攪拌部材5自体を蓋3に集約することができる。加熱調理器1は、駆動部4及び攪拌部材5以外では、炊飯器と類似した構成を有する。
【0030】
本体2は、ボックス状である。本体2には、その上面から下側Z2へ窪んだ円筒状の凹部2Aが設けられる。本体2は、凹部2Aに同軸上で収容された金属製で円筒状の鍋6と、凹部2Aの周辺に配置されて鍋6を加熱する加熱部7とを有する。
【0031】
鍋6は、円盤状の底壁6Aと、底壁6Aの外縁6Bの全域から立ち上がった円筒状の周壁6Cとを一体的に有する。底壁6A及び周壁6Cの厚さは、鍋6の厚さである。鍋6の厚さは、鍋6の全域においてほぼ均一であって、例えば1mm~3mm程度である。底壁6Aの円中心を中心Cという。中心Cを通って垂直に延びる仮想の軸線Jを基準とする径方向を、底壁6Aの径方向Rという。径方向Rのうち、軸線Jから離れる方向を、径方向Rにおける外側つまり径方向外側R1といい、軸線Jに近付く方向を、径方向Rにおける内側つまり径方向内側R2という。また、軸線Jまわりの周方向を周方向Sという。
【0032】
底壁6Aは、中心Cが設けられた円盤状の中央部6AAと、径方向外側R1から中央部6AAを取り囲んだ円環状の外周部6ABとを有する。中央部6AAは、水平、厳密には中心Cから径方向外側R1へ向かうにつれて僅かに下降するように略水平になった円形状の板であり、その中心が中心Cである。外周部6ABは、径方向外側R1へ向かうにつれて上昇するように水平方向に対して傾斜している。底壁6Aの外縁6Bは、外周部6ABの外縁によって構成されている。外縁6Bは、鍋6の内面に位置するとみなしてもよいし、鍋6の外面に位置するとみなしてもよいし、鍋6の外面と内面との間に位置するとみなしてもよい。
【0033】
外周部6ABは、中央部6AAの外縁に接続された円環状の第1外周部6ACと、第1外周部6ACの外縁に接続された円環状の第2外周部6ADとを有する。本実施形態では、外周部6ABの内縁は、第1外周部6ACの内縁によって構成されていて、外周部6ABの外縁は、第2外周部6ADの外縁によって構成されている。水平方向に対する第2外周部6ADの傾斜角度αは、水平方向に対する第1外周部6ACの傾斜角度βよりも大きい。一例として、傾斜角度αは、70度であり、傾斜角度βは、25度である。外周部6ABは、第1外周部6AC及び第2外周部6ADのどちらか一方によって構成されてもよい。
【0034】
中央部6AAの外縁、言い換えれば外周部6ABの内縁は、中央部6AAと外周部6ABとの境界6AEである。境界6AEは、径方向Rに沿って水平に延びて軸線Jと底壁6Aの外縁6Bとを結ぶ仮想の第1線分L1の中点P1よりも径方向外側R1に配置されている(図2参照)。なお、第1線分L1が軸線Jと外縁6Bとを結ぶということは、第1線分L1が軸線Jと外縁6Bとを直接結ぶ場合(図2参照)に限らず、第1線分L1が、軸線Jと、外縁6Bを通って垂直に延びる仮想線(図示せず)とを結ぶ場合も意味する。境界6AEは、鍋6の内面つまり底壁6Aの上面に位置するとみなしてもよいし、鍋6の外面つまり底壁6Aの下面に位置するとみなしてもよいし、鍋6の外面と内面との間に位置するとみなしてもよい。本実施形態では、境界6AEは、底壁6Aの半径H(図2参照)の55%以上65%以下に相当する距離だけ中心Cから径方向外側R1へ離れた位置にある。半径Hは、外縁6Bにおける鍋6の内径の半分とみなしてもよいし、外縁6Bにおける鍋6の外径の半分とみなしてもよい。
【0035】
周壁6Cでは、上端部以外の全域が上下方向Zに沿って垂直に延びる。周壁6Cの上端部は、周方向Sにおける全域が径方向内側R2へ湾曲したくびれ部6CAと、くびれ部6CAの上端から径方向外側R1へ水平に張り出した円環状のフランジ部6CBとを有する。鍋6において周壁6Cの上端部によって囲まれた円形状の空間は、鍋6の開口6Dである。開口6Dは、上側Z1を向き、鍋6の内部6Eを上側Z1へ露出させている。底壁6Aは、開口6Dに対して下側Z2から対向している。内部6Eは、周壁6Cによって径方向外側R1から取り囲まれて底壁6Aによって下側Z2から塞がれた円筒状の空間である。
【0036】
加熱部7は、本体2の凹部2Aの底に配置されて鍋6の底壁6Aに下側Z2から対向する底面ヒータ7Aと、凹部2A内に露出されて径方向外側R1から鍋6の周壁6Cに対向する側面ヒータ7Bとを含む。底面ヒータ7Aは、本実施形態では底壁6Aと同軸上に配置される円盤状の熱板ヒータであるが、IHヒータによって構成されてもよい。熱板ヒータは、例えばアルミニウム製の板と、この板に内蔵された電熱線とを有する。側面ヒータ7Bは、周壁6Cを取り囲む電熱線によって構成される。底面ヒータ7A及び側面ヒータ7Bのそれぞれは、鍋6との間に隙間を隔ててもよいし、隙間を隔てずに鍋6に接触してもよい。
【0037】
蓋3は、その大部分を構成する外蓋9と、図1の姿勢における外蓋9の下面部に配置された内蓋10とを含む。外蓋9は、平面視おいて略正方形状をなして上下方向Zにある程度厚い板状である。本体2において凹部2Aよりも後側Y2の部分の上端部と、外蓋9の後端部とは、左右方向Xに沿って水平に延びる回動軸8を介して連結されている。これにより、蓋3の全体が、図1における太い1点鎖線矢印A1で示すように、回動軸8まわりに回動可能である。図1における蓋3は、閉位置にある。使用者が、閉位置にある蓋3を上側Z1へ回動させると、蓋3は、開位置(図示せず)に配置される。
【0038】
本体2において凹部2Aよりも前側Y1の部分には、蓋3を閉位置でロックしたり、そのロックを解除したりするロック解除機構11が内蔵されている。ロック解除機構11は、閉位置にある蓋3の外蓋9の前端部に係合するロック爪11Aと、本体2の前面に露出された解除ボタン11Bとを含む。ロック爪11Aが外蓋9に係合することによって、蓋3が閉位置でロックされる。使用者が解除ボタン11Bを押すと、ロック爪11Aが外蓋9から外れて蓋3のロックが解除されるので、使用者は、蓋3を開位置へ向けて回動させることができる。なお、本体2には、ロックが解除された蓋3を開位置へ向けて回動させるバネなどの付勢部材が設けられてもよい。
【0039】
内蓋10は、鍋6のフランジ部6CBとほぼ同径の円板状であり、例えばステンレス製である。内蓋10の外周部には、パッキン12が設けられる。内蓋10は、外蓋9に対して着脱可能であってもよい。蓋3が閉位置にある状態では、内蓋10が鍋6の開口6Dを上側Z1から閉じ、パッキン12が、周方向Sにおけるフランジ部6CBの全域に上側Z1から密着する。これにより、開口6Dが密閉される。このときの内蓋10の下面10Aは、開口6Dを閉じた蓋3において鍋6の内部6Eに上側Z1から臨む内面部である。また、蓋3が閉位置にある状態では、前述した軸線Jは、内蓋10の中心を通る。内蓋10の中心には、内蓋10を上下方向Zに貫通した円形状の挿通穴10Bが設けられる。蓋3が開位置に配置されると、内蓋10が鍋6から上側Z1へ離れるので、開口6Dが上側Z1へ開放される。以下では、蓋3が閉位置にあって鍋6の開口6Dを閉じた状態を基準として説明する。
【0040】
蓋3には、調理中に鍋6の内部6Eで発生する蒸気を加熱調理器1の外に逃がすための蒸気通路3Aが設けられる。蒸気通路3Aは、外蓋9及び内蓋10を上下方向Zに貫通している。蒸気通路3Aの上端は、外蓋9の上面において出口9Aとして開口し、内蓋10の下面10Aにおいて蒸気穴10Cとして開口している。蒸気穴10Cは、内蓋10の中心の挿通穴10Bよりも径方向外側R1に配置されている。なお、蒸気通路3Aは、本実施形態のように途中で折れ曲がってもよいし、上下方向Zにまっすぐに延びてもよい。
【0041】
駆動部4は、蓋3の外蓋9に内蔵される。駆動部4は、AC同期モータ又はステッピングモータであり、本実施形態ではAC同期モータである。駆動部4は、外蓋9に固定されたステータ13と、ステータ13によって軸線Jまわりに回転可能に支持されたロータ14と、ロータ14から下側Z2へ突出した金属製で円柱状の出力軸15とを有する。前述した軸線Jは、出力軸15の中心を通っている。
【0042】
樹脂製又はゴム製のカップリング16が、出力軸15を覆うように出力軸15に固定されている。カップリング16は、内蓋10の挿通穴10Bに対して遊びを持って上側Z1から挿通されている。前述した軸線Jが、出力軸15の中心を通っている。出力軸15自体が鍋6の内部6Eに露出されないので、内部6Eで発生した蒸気などによる出力軸15の周辺での駆動部4の故障を防止することができる。
【0043】
蓋3が閉位置にある状態において、攪拌部材5は、鍋6の内部6Eに配置される。攪拌部材5は、例えば樹脂製又はゴム製であり、根元部5Aと、複数の攪拌棒5Bとを有する。攪拌部材5における全てのコーナ部分は、面取りが設けられることによって丸められている。
【0044】
根元部5Aは、径方向Rに沿って水平に延びるブロック状の水平部5AAと、径方向Rにおける水平部5AAの中央から上側Z1へ延びる円柱状の中央部5ABとを有する。径方向Rにおける水平部5AAの両端部は、下側Z2へ湾曲する。中央部5ABの上面には、下側Z2へ窪んだ差込穴5ACが設けられる。駆動部4の出力軸15側のカップリング16の下端部が、差込穴5ACに対して上側Z1から差し込まれている。これにより、攪拌部材5は、出力軸15に固定されている。
【0045】
駆動部4が作動すると、攪拌部材5は、軸線Jまわりに出力軸15及びカップリング16とともに回転する。このように、軸線Jは、鍋6の中心軸線であるとともに、攪拌部材5の回転軸線でもある。カップリング16が差込穴5ACから取り外せてもよく、この場合、攪拌部材5は、出力軸15側の蓋3に対して着脱可能であるので、使用者は、攪拌部材5を蓋3から取り外してメンテナンスすることができる。
【0046】
本実施形態では、攪拌棒5Bは、軸線Jを挟んで2本設けられ、径方向Rにおける水平部5AAの両端部から1つずつ下側Z2へ延びている。それぞれの攪拌棒5Bの全体は、軸線Jと平行となるように、垂直に直線状に延びている。そのため、水平部5AAと2本の攪拌棒5Bとのまとまりは、上下が逆になったU字状に構成されている。それぞれの攪拌棒5Bは、径方向Rに沿って水平に延びて軸線Jと境界6AEとを結ぶ仮想の第2線分L2の中点P2と径方向Rで同じ位置に配置されている(図2参照)。なお、第2線分L2が軸線Jと境界6AEとを結ぶということは、第2線分L2が軸線Jと境界6AEとを直接結ぶ場合に限らず、第2線分L2が、軸線Jと、境界6AEを通って垂直に延びる仮想線Kとを結ぶ場合(図2参照)も意味する。また、図2の攪拌部材5では、断面でなく側面が図示されている。
【0047】
それぞれの攪拌棒5Bは、例えば数mm程度の隙間Qを隔てて鍋6の底壁6Aの中央部6AAに上側Z1から対向する先端部5BAを有する。先端部5BAは、径方向外側R1から見て、下側Z2へ向かうにつれて次第に幅狭となっており(図3参照)、つまり、底壁6Aへ向かって尖った形状を有する。なお、先端部5BAは、図3とは周方向Sに90度ずれた位置(図2参照)から見ても、底壁6Aへ向かって尖っていてもよい。
【0048】
図4は、加熱調理器1の電気的構成を示すブロック図である。加熱調理器1は、駆動部4及び加熱部7を制御する制御部20と、鍋6の底壁6Aの温度を検出する鍋温度センサ21と、外蓋9の上面に設けられた表示部22及び操作入力部23と、蓋3の開閉を検出する蓋検出部24と、鍋6の内部6Eの温度を検出する温度検出部25とをさらに含む。駆動部4に関連して、加熱調理器1は、波形読取部26と、時計計測部27とをさらに含む。
【0049】
一例として、制御部20は、本体2に内蔵された電源リレー基板20Aと、蓋3に内蔵された制御基板20Bとによって構成されたマイコンである。電源リレー基板20Aには、AC電源30からの例えば100Vの電力が、コンセント(図示せず)を介して供給される。電源リレー基板20Aと制御基板20Bとは、電気的に接続されている。電源リレー基板20Aには、駆動部4、底面ヒータ7A、側面ヒータ7B、鍋温度センサ21及び蓋検出部24のそれぞれが電気的に接続されている。制御基板20Bには、表示部22、操作入力部23、温度検出部25、波形読取部26及び時計計測部27のそれぞれが電気的に接続されている。
【0050】
鍋温度センサ21は、サーミスタなどによって構成されて、本体2に内蔵されている。鍋温度センサ21の検出結果は、リアルタイムで制御部20に入力される。表示部22は、例えばLEDのパネルによって構成され、操作入力部23は、単数又は複数のボタンやタッチキーによって構成されている。制御部20は、表示部22の表示を制御する。使用者が操作入力部23を操作して加熱調理器1におけるメニューなどについて選択すると、制御部20は、その選択を受け付ける。蓋検出部24は、ホールスイッチなどによって構成されて蓋3に内蔵され、蓋3が鍋6の開口6Dを開くことを少なくとも検出する。蓋検出部24の検出結果は、リアルタイムで制御部20に入力される。
【0051】
温度検出部25は、サーミスタなどによって構成されていて、蓋3の内蓋10の下面10Aに設けられた露出穴10Dから鍋6の内部6Eに露出されている(図5参照)。露出穴10Dは、蒸気穴10Cと同様に内蓋10の中心の挿通穴10Bよりも径方向外側R1に配置されているものの、蒸気穴10Cから軸線Jまわりの周方向Sに90度以上離れて配置されている。これにより、露出穴10D内の温度検出部25が、蒸気穴10Cを通る蒸気の影響を受けにくいので、温度検出部25の検出精度の向上を図ることができる。温度検出部25の検出結果は、リアルタイムで制御部20に入力される。なお、温度検出部25が蒸気穴10Cから周方向Sに90度以上離れて配置されているということは、図5に示すように蒸気穴10Cの周縁と露出穴10Dの周縁との周方向Sの間隔が90度以上である場合に限らず、蒸気穴10Cの円中心と露出穴10Dの円中心との周方向Sの間隔が90度以上である場合も指す。
【0052】
波形読取部26は、電源リレー基板20Aから駆動部4に印加される電圧の波形を読み取るセンサであって、蓋3に内蔵されている。時計計測部27は、タイマである。制御部20は、波形読取部26が読み取った波形と、時計計測部27が計測した時間とに基づいて、駆動部4に印加される電圧の経時変化をリアルタイムで取得する。
【0053】
次に、加熱調理器1で実行される調理運転について説明する。まず、使用者が、蓋3を開位置まで開いて、食材や調味料などの被加熱物Wを鍋6の開口6Dを介して鍋6の内部6Eに投入する(図1参照)。食材は、ブロック状の具材でもよいし、麺類などの長尺の具材であってもよい。調味料は、ブロック状でも粉末状でも液体状でもよい。
【0054】
使用者は、被加熱物Wの投入後に蓋3を閉位置まで閉じる。前述したように、それぞれの攪拌棒5Bにおいて底壁6Aに上側Z1から対向する先端部5BAが、底壁6Aへ向けて尖った形状を有するので、蓋3が鍋6の開口6Dを閉じる際に、攪拌棒5Bの先端部5BAが鍋6の中の被加熱物Wをうまく避けることができる。これにより、攪拌棒5Bの先端部5BAと被加熱物Wとの接触による抵抗を低減できるので、使用者は、軽い力で蓋3を閉じることができる。
【0055】
蓋3を閉じた使用者が操作入力部23を操作して調理運転の開始を指示すると、制御部20が調理運転を実行する。調理運転には、自動調理と手動調理とがある。自動調理の場合には、使用者が該当するメニュー番号を操作入力部23によって入力すると、制御部20が、選択されたメニュー番号に対応する運転条件に基づいて調理運転を実行する。当該運転条件は、加熱部7による加熱温度や加熱時間であり、攪拌部材5の回転速度や回転時間などであって、メニュー番号毎に予め定められて制御部20のメモリ(図示せず)に記憶されている。
【0056】
手動調理の場合には、使用者が、所望の運転条件を操作入力部23によって入力すると、制御部20が、入力された運転条件に基づいて調理運転を実行する。手動調理の場合には、使用者は、煮込みや炒めといった加熱方法も運転条件として操作入力部23によって選択することができる。なお、自動調理及び手動調理のいずれの場合においても、使用者は、操作入力部23における特定のボタンを操作することなどによって、攪拌部材5の攪拌の有無を選択することができる。
【0057】
制御部20の制御によって作動する加熱部7が鍋6を加熱することにより、鍋6の内部6Eの被加熱物Wが加熱調理される。加熱部7の加熱によって内部6Eで発生した蒸気は、内蓋10の蒸気穴10Cから蓋3内の蒸気通路3Aを通って上昇し、外蓋9の出口9Aから加熱調理器1の外に逃がされる(図1の2点鎖線の矢印A2を参照)。
【0058】
攪拌部材5の攪拌が有りと設定されている場合には、制御部20は、少なくとも加熱部7の作動中に攪拌部材5が回転するように駆動部4を制御する。鍋6の中の被加熱物Wを、攪拌部材5における複数の攪拌棒5Bによって撹拌しながら加熱調理することができる。また、鍋6の中の被加熱物Wが焦げることを防止できる。もちろん、運転条件によっては、加熱部7の停止中にも攪拌部材5が回転してもよい。ただし、使用者が調理運転中にロック解除機構11の解除ボタン11Bに触れるなどのハプニングが想定される。このようなハプニングによって攪拌部材5の回転中に蓋3が鍋6の開口6Dを開いたことを蓋検出部24が検出したことに応じて、制御部20は、駆動部4を停止させて攪拌部材5の回転を停止する。そのため、蓋3が開くことによって鍋6の外に露出された攪拌部材5が回転するといった無駄を無くすことができる。
【0059】
前述したように、鍋6の底壁6Aでは、中央部6AAと外周部6ABとの境界6AEは、径方向Rに沿って延びて軸線Jと底壁6Aの外縁6Bとを結ぶ第1線分L1の中点P1よりも径方向外側R1に配置されている(図2参照)。また、それぞれの攪拌棒5Bは、径方向Rに沿って延びて軸線Jと境界6AEとを結ぶ第2線分L2の中点P1と径方向Rで同じ位置に配置されている(図2参照)。
【0060】
この場合において攪拌棒5Bが回転すると、軸線J側つまり底壁6Aの中心C側の被加熱物Wは、攪拌棒5Bによって効果的に攪拌されるし、底壁6Aの外縁6B側の被加熱物Wは、外周部6ABの傾斜に沿って攪拌棒5B側へ転げ落ちたり攪拌棒5Bによって外縁6B側へ追いやられたり他の被加熱物Wと接触したりを繰り返すことによって、程よく攪拌運動して効果的に攪拌される(図1の実線矢印A3を参照)。これにより、鍋6の底壁6A上において径方向Rの全域に分布する被加熱物Wを、崩すことなく均一に攪拌することができるので、攪拌効率の向上を図れる。
【0061】
特に、中央部6AAと外周部6ABとの境界6AEは、底壁6Aの半径Hの55%以上65%以下に相当する距離だけ底壁6Aの中心Cから径方向外側R1へ離れた位置にあるとよい(図2参照)。これにより、鍋6の底壁6A上において径方向Rの全域に分布する被加熱物Wを一層均一に攪拌することができるので、攪拌効率の一層の向上を図れる。また、このようなレイアウトであれば、攪拌棒5Bが底壁6Aの外縁6B側へ偏って配置されないので、攪拌部材5を回転させる駆動部4の負担を低減できる。
【0062】
また、それぞれの攪拌棒5Bは、その全体が常に垂直に直線状に延びた姿勢をとるので、鍋6の中の被加熱物Wが攪拌棒5Bから滑り落ちやすい。そのため、特に麺類などの長尺の被加熱物Wが攪拌棒5Bに絡みつくことを低減して、被加熱物Wを攪拌棒5Bによって効果的に攪拌することができるので、攪拌効率の一層の向上を図れる。
【0063】
制御部20は、攪拌部材5を回転させる際、攪拌部材5が1回転よりも多い正回転と1回転よりも多い逆回転とを繰り返すように駆動部4を制御する。そのため、一方向だけに攪拌部材5を回転させる場合と比べて、このような正逆回転を繰り返す攪拌部材5によって鍋6の中の被加熱物Wを効果的に攪拌することができるので、攪拌効率の一層の向上を図れる。特に、駆動部4をAC同期モータ又はステッピングモータによって構成すれば、このような攪拌部材5の動作を実現することができる。
【0064】
駆動部4がAC同期モータ(厳密には、AC単巻き同期モータ)である場合の駆動部4の回転制御に関し、図6のタイムチャートを参照して具体的に説明する。図6では、横軸が経過時間を示し、縦軸が、駆動部4に印加される電圧を示している。制御部20が駆動部4に通電すると、駆動部4の印加される電圧は、図6に示す波形を描くように変化する。例えば、制御部20は、電圧値が立ち下がって最小値近傍になったときに、駆動部4への通電を停止する(タイミングT1)。すると、停止した駆動部4では、ステータ13に設けられたコイル(図示せず)に逆起電力が励起して、ロータ14に設けられた磁石(図示せず)の極性が逆になる。駆動部4の停止時間は、例えば5秒以下の数秒間である。その後、制御部20は、電圧値が最大値近傍になるように、駆動部4への通電を再開する(タイミングT2)。すると、ロータ14が先ほどとは逆向きに回転する。
【0065】
このような電源投入の位相によって、攪拌部材5の正回転と逆回転とが交互に繰り返される。攪拌部材5の正回転が数分間継続された後に、攪拌部材5が数秒間停止して、その後に、攪拌部材5の逆回転が数分間継続されるという周期が繰り返される。
【0066】
本発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、請求項に記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【0067】
例えば、攪拌部材5における攪拌棒4Bは、3つ以上設けられてもよく、この場合には複数の攪拌棒4Bが周方向Sに等間隔で並んで配置される。また、攪拌部材5が、蓋3でなく、鍋6によって支持されてもよく、その場合の駆動部4は、本体2に設けられてもよい。
【0068】
前述した実施形態における様々な処理は、適宜組み合わせて実行されてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 加熱調理器
2 本体
3 蓋
4 駆動部
5 攪拌部材
5B 攪拌棒
5BA 先端部
6 鍋
6A 底壁
6AA 中央部
6AB 外周部
6AE 境界
6B 外縁
6D 開口
6E 内部
7 加熱部
10A 下面
10C 蒸気穴
20 制御部
24 蓋検出部
25 温度検出部
C 中心
H (底壁6Aの)半径
J 軸線
L1 第1線分
L2 第2線分
P1 中点
P2 中点
Q 隙間
R 径方向
R1 径方向外側
W 被加熱物
Z1 上側
Z2 下側
図1
図2
図3
図4
図5
図6