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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174121
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】シート支持装置及び車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/52 20060101AFI20231130BHJP
   B60N 2/16 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B60N2/52
B60N2/16
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086798
(22)【出願日】2022-05-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-08-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】能登 祐二
(72)【発明者】
【氏名】中村 竜誠
(72)【発明者】
【氏名】朴 光▲変▼
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BA15
3B087BB22
3B087DD03
3B087DD11
(57)【要約】
【課題】座面が上限位置又は下限位置にある状態において、振動吸収性能を確保する。
【解決手段】シート支持装置は、給気弁棒46Dが押圧されることでエアスプリングに空気を供給可能とされ、排気弁棒46Eが押圧されることでエアスプリングから空気を排出可能とされたバルブ46と、単一のレバー54と、高さ連動部44と、を備えている。高さ連動部44は、アッパフレームのロアフレームに対する位置が上限位置に達している状態でレバー54の第2アーム部54Eに当接することで、第1操作ケーブル50の操作によるレバー54の一方側への回動を制限する。また、高さ連動部44は、アッパフレームのロアフレームに対する位置が下限位置に達している状態でレバー54の第1アーム部54Bに当接することで、第2操作ケーブル52の操作によるレバー54の他方側への回動を制限する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員が着座するシート本体をシート下方側から支持するアッパフレームと、
前記アッパフレームのシート下方側に配置され、車体に固定されるロアフレームと、
前記アッパフレームが前記ロアフレームに対してシート上下方向に相対移動可能な状態で前記アッパフレームと前記ロアフレームとを連結する連結部と、
前記アッパフレームと前記ロアフレームとの間に設けられ、内部に供給される空気量に応じてシート上下方向への寸法が変化して、前記アッパフレームと前記ロアフレームとのシート上下方向の間隔を変化させるエアスプリングと、
給気弁棒と、排気弁棒と、を備えると共に、前記給気弁棒が押圧されることで前記エアスプリングに空気を供給可能とされ、前記排気弁棒が押圧されることで前記エアスプリングから空気を排出可能とされたバルブと、
定められた軸まわりに回動可能に支持される回動支持部と、前記回動支持部から延出していると共に第1操作ケーブルが連結される第1アーム部と、前記回動支持部から前記第1アーム部とは異なる方向に延出していると共に第2操作ケーブルが連結される第2アーム部と、を備え、前記第1操作ケーブルが操作されることで一方側へ回動して前記第1アーム部が前記給気弁棒を押圧し、前記第2操作ケーブルが操作されることで他方側へ回動して前記第2アーム部が前記排気弁棒を押圧する単一のレバーと、
前記アッパフレームと前記ロアフレームとのシート上下方向の間隔に応じた位置に変位すると共に、前記アッパフレームの前記ロアフレームに対する位置が上限位置に達している状態で前記第2アーム部に当接することで、前記第1操作ケーブルの操作による前記レバーの一方側への回動を制限し、前記アッパフレームの前記ロアフレームに対する位置が下限位置に達している状態で前記第1アーム部に当接することで、前記第2操作ケーブルの操作による前記レバーの他方側への回動を制限する高さ連動部と、
を備えたシート支持装置。
【請求項2】
前記高さ連動部は、前記レバーと隣り合って配置されていると共に回動可能に支持された回動接触部を含んで構成され、
前記回動接触部は、その回転周方向に間隔をあけて配置された第1接触部及び第2接触部を備えており、
前記アッパフレームの前記ロアフレームに対する位置が上限位置に達している状態では、前記第1接触部が前記第1アーム部と離間していると共に、前記第2接触部が前記第2アーム部に当接しており、
前記アッパフレームの前記ロアフレームに対する位置が下限位置に達している状態では、前記第1接触部が前記第1アーム部に当接していると共に、前記第2接触部が前記第2アーム部と離間している請求項1に記載のシート支持装置。
【請求項3】
乗員が着座するシート本体と、
前記シート本体をシート下方側から支持するアッパフレームと、
前記アッパフレームのシート下方側に配置され、車体に固定されるロアフレームと、
前記アッパフレームが前記ロアフレームに対してシート上下方向に相対移動可能な状態で前記アッパフレームと前記ロアフレームとを連結する連結部と、
前記アッパフレームと前記ロアフレームとの間に設けられ、内部に供給される空気量に応じてシート上下方向への寸法が変化して、前記アッパフレームと前記ロアフレームとのシート上下方向の間隔を変化させるエアスプリングと、
給気弁棒と、排気弁棒と、を備えると共に、前記給気弁棒が押圧されることで前記エアスプリングに空気を供給可能とされ、前記排気弁棒が押圧されることで前記エアスプリングから空気を排出可能とされたバルブと、
定められた軸まわりに回動可能に支持される回動支持部と、前記回動支持部から延出していると共に第1操作ケーブルが連結される第1アーム部と、前記回動支持部から前記第1アーム部とは異なる方向に延出していると共に第2操作ケーブルが連結される第2アーム部と、を備え、前記第1操作ケーブルが操作されることで一方側へ回動して前記第1アーム部が前記給気弁棒を押圧し、前記第2操作ケーブルが操作されることで他方側へ回動して前記第2アーム部が前記排気弁棒を押圧する単一のレバーと、
前記アッパフレームと前記ロアフレームとのシート上下方向の間隔に応じた位置に変位すると共に、前記アッパフレームの前記ロアフレームに対する位置が上限位置に達している状態で前記第2アーム部に当接することで、前記第1操作ケーブルの操作による前記レバーの一方側への回動を制限し、前記アッパフレームの前記ロアフレームに対する位置が下限位置に達している状態で前記第1アーム部に当接することで、前記第2操作ケーブルの操作による前記レバーの他方側への回動を制限する高さ連動部と、
を備えた車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート支持装置及び車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、車両用シートを昇降可能に支持するシート支持装置(車両用エアサスペンション式シート支持装置)が開示されている。この文献に記載されたシート支持装置は、シートの座面の高さを調整可能なエアスプリングに対して空気の出し入れを行うバルブを備えており、このバルブの筐体には、第1カム軸及び第2カム軸が設けられている。
【0003】
また、第1カム軸には、一対の翼部とカム部とを備えた第1カムが、第1カム軸に対して回動可能に支持されている。一方、第2カム軸には、一対の押し部と凹部とを備えた第2カムが、第2カム軸に対して回動可能に支持されている。また、第2カムの凹部には、第1カムのカム部が挿入されており、第1カムが回動することで、第2カムも回動し、押し部によって、バルブの給気弁棒又は排気弁棒が押されるようになっている。そして、第2カムによって給気弁棒が押されると、エアスプリングに空気が供給されてシートの座面が上昇し、第2カムによって排気弁棒が押されるとエアスプリング内の空気が排出されてシートの座面が下降するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-213287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1に記載された先行技術では、バルブが圧縮コイルばねで付勢された状態とされている。また、このバルブには、ケーブルが係止されており、このケーブルが引っ張られることで、バルブが圧縮コイルばねを縮める方向に動かされ、このケーブルを引っ張る力が緩められると圧縮コイルばねの伸長によって、バルブが移動するようになっている。
【0006】
一方、ケーブルの操作が行われていない状態において、第1カムの一対の翼部の境界部に設けられた凹部には、所定の位置に配置された位置伝達ピンが係止されている。そして、ケーブルの操作が行われることで、バルブが位置伝達ピンに対して相対移動し、これに伴い第1カムの翼部が位置伝達ピンに押されることで、第1カムが回動し、ひいては第2カムが回動するようになっている。
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載された先行技術では、シートの座面が上限位置まで上昇している状態であっても、ケーブルの操作によって第1カム及び第2カムを回動させてエアスプリングに空気を供給することができる。このため、シートの座面が上限位置まで上昇している状態において、エアスプリング内の圧力が過度に高くなり、エアスプリングによる振動吸収性能を十分に発揮できないことが考えられる。
【0008】
また、上記特許文献1に記載された先行技術では、シートの座面が下限位置まで下降している状態であっても、ケーブルの操作によって第1カム及び第2カムを回動させてエアスプリングから空気を排出することができる。このため、シートの座面が下限位置まで下降している状態において、エアスプリング内の圧力が過度に低くなり、エアスプリングによる振動吸収性能を十分に発揮できないことが考えられる。
【0009】
つまり、上記特許文献1に記載された先行技術では、シートの座面が上限位置又は下限位置にある状態において、振動吸収性能を確保するという点においては、改善の余地がある。
【0010】
本発明は上記事実を考慮し、座面が上限位置又は下限位置にある状態において、振動吸収性能を確保することができるシート支持装置及び車両用シートを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の態様のシート支持装置は、乗員が着座するシート本体をシート下方側から支持するアッパフレームと、前記アッパフレームのシート下方側に配置され、車体に固定されるロアフレームと、前記アッパフレームが前記ロアフレームに対してシート上下方向に相対移動可能な状態で前記アッパフレームと前記ロアフレームとを連結する連結部と、前記アッパフレームと前記ロアフレームとの間に設けられ、内部に供給される空気量に応じてシート上下方向への寸法が変化して、前記アッパフレームと前記ロアフレームとのシート上下方向の間隔を変化させるエアスプリングと、給気弁棒と、排気弁棒と、を備えると共に、前記給気弁棒が押圧されることで前記エアスプリングに空気を供給可能とされ、前記排気弁棒が押圧されることで前記エアスプリングから空気を排出可能とされたバルブと、定められた軸まわりに回動可能に支持される回動支持部と、前記回動支持部から延出していると共に第1操作ケーブルが連結される第1アーム部と、前記回動支持部から前記第1アーム部とは異なる方向に延出していると共に第2操作ケーブルが連結される第2アーム部と、を備え、前記第1操作ケーブルが操作されることで一方側へ回動して前記第1アーム部が前記給気弁棒を押圧し、前記第2操作ケーブルが操作されることで他方側へ回動して前記第2アーム部が前記排気弁棒を押圧する単一のレバーと、前記アッパフレームと前記ロアフレームとのシート上下方向の間隔に応じた位置に変位すると共に、前記アッパフレームの前記ロアフレームに対する位置が上限位置に達している状態で前記第2アーム部に当接することで、前記第1操作ケーブルの操作による前記レバーの一方側への回動を制限し、前記アッパフレームの前記ロアフレームに対する位置が下限位置に達している状態で前記第1アーム部に当接することで、前記第2操作ケーブルの操作による前記レバーの他方側への回動を制限する高さ連動部と、を備えている。
【0012】
第1の態様のシート支持装置によれば、乗員が着座するシート本体が、アッパフレームで支持される。一方、アッパフレームのシート下方側には、ロアフレームが配置されており、当該ロアフレームは、車体に固定される。そして、アッパフレームとロアフレームとは、当該アッパフレームが当該ロアフレームに対してシート上下方向に相対移動可能な状態で、連結部によって連結されている。
【0013】
また、アッパフレームとロアフレームとの間には、エアスプリングが設けられている。エアスプリングは、内部に供給される空気量に応じてシート上下方向への寸法が変化して、アッパフレームとロアフレームとのシート上下方向の間隔を変化させる。これにより、アッパフレームのロアフレームに対する高さが調節される。その結果、シート本体の高さが調節される。
【0014】
一方、エアスプリングへの空気の供給並びに当該エアスプリングからの空気の排出は、バルブによって行われる。このバルブは、給気弁棒と、排気弁棒とを備えており、当該給気弁棒が押圧されることで、エアスプリングに空気が供給され、当該排気弁棒が押圧されることで当該エアスプリングから空気が排出される。
【0015】
ここで、第1操作ケーブルが操作されると、レバーが一方側へ回動して、当該レバーの第1アーム部が給気弁棒を押圧する。これにより、エアスプリングに空気が供給される。また、第2操作ケーブルが操作されると、レバーが他方側へ回動して、当該レバーの第2アーム部が排気弁棒を押圧する。これにより、エアスプリングから空気が排出される。
【0016】
ところで、エアスプリングに空気が供給され続けると、アッパフレームがロアフレームに対して上限位置まで上昇することとなる。このとき、第1操作ケーブルを操作することによってレバーで給気弁棒を押圧し、エアスプリングに空気を供給すると、エアスプリング内の圧力が過度に高くなることが考えられる。また、エアスプリングから空気が排出され続けると、アッパフレームがロアフレームに対して下限位置まで下降することとなる。このとき、第2操作ケーブルを操作することによって第2アームで排気弁棒を押圧し、エアスプリングから空気を排出すると、エアスプリング内の圧力が過度に低くなることが考えられる。そして、これらのような場合において、エアスプリングによる振動吸収性能を十分に発揮できないことが考えられる。
【0017】
ここで、本発明では、高さ連動部を備えており、当該高さ連動部は、アッパフレームとロアフレームとのシート上下方向の間隔に応じた位置に変位する。そして、アッパフレームのロアフレームに対する位置が上限位置に達している状態では、高さ連動部が第2アーム部に当接して、第1操作ケーブルの操作によるレバーの一方側への回動が制限される。これにより、エアスプリングに空気が供給されることが抑制され、エアスプリング内の圧力が過度に高くなることを抑制することができる。その一方で、アッパフレームのロアフレームに対する位置が下限位置に達している状態では、高さ連動部が第1アーム部に当接して、第2操作ケーブルの操作によるレバーの他方側への回動が制限される。これにより、エアスプリング内の空気が排出されることが抑制され、エアスプリング内の圧力が過度に低くなることを抑制することができる。このように、本発明では、アッパフレームのロアフレームに対する位置が上限位置又は下限位置に達している状態において、すなわち、シート本体の座面の位置が上限位置又は下限位置に達している状態において、エアスプリングの振動吸収性能を確保することができる。
【0018】
第2の態様のシート支持装置は、第1の態様のシート支持装置において、前記高さ連動部は、前記レバーと隣り合って配置されていると共に回動可能に支持された回動接触部を含んで構成され、前記回動接触部は、その回転周方向に間隔をあけて配置された第1接触部及び第2接触部を備えており、前記アッパフレームの前記ロアフレームに対する位置が上限位置に達している状態では、前記第1接触部が前記第1アーム部と離間していると共に、前記第2接触部が前記第2アーム部に当接しており、前記アッパフレームの前記ロアフレームに対する位置が下限位置に達している状態では、前記第1接触部が前記第1アーム部に当接していると共に、前記第2接触部が前記第2アーム部と離間している。
【0019】
第2の態様のシート支持装置によれば、回動接触部は、アッパフレームとロアフレームとのシート上下方向の間隔に応じた位置に回動する。そして、アッパフレームのロアフレームに対する位置が上限位置に達している状態では、回動接触部の第1接触部が第1アーム部と離間していると共に、回動接触部の第2接触部が第2アーム部に当接している。これにより、第1操作ケーブルの操作によるレバーの一方側への回動が制限される。また、アッパフレームのロアフレームに対する位置が下限位置に達している状態では、回動接触部の第1接触部が第1アーム部に当接していると共に、回動接触部の第2接触部が第2アーム部と離間している。これにより、第2操作ケーブルの操作によるレバーの他方側への回動が制限される。このように、本発明では、回動接触部をアッパフレームとロアフレームとのシート上下方向の間隔に応じた位置に回動させることで、レバーの回転を制限することができる。
【0020】
第3の態様の車両用シートは、乗員が着座するシート本体と、前記シート本体をシート下方側から支持するアッパフレームと、前記アッパフレームのシート下方側に配置され、車体に固定されるロアフレームと、前記アッパフレームが前記ロアフレームに対してシート上下方向に相対移動可能な状態で前記アッパフレームと前記ロアフレームとを連結する連結部と、前記アッパフレームと前記ロアフレームとの間に設けられ、内部に供給される空気量に応じてシート上下方向への寸法が変化して、前記アッパフレームと前記ロアフレームとのシート上下方向の間隔を変化させるエアスプリングと、給気弁棒と、排気弁棒と、を備えると共に、前記給気弁棒が押圧されることで前記エアスプリングに空気を供給可能とされ、前記排気弁棒が押圧されることで前記エアスプリングから空気を排出可能とされたバルブと、定められた軸まわりに回動可能に支持される回動支持部と、前記回動支持部から延出していると共に第1操作ケーブルが連結される第1アーム部と、前記回動支持部から前記第1アーム部とは異なる方向に延出していると共に第2操作ケーブルが連結される第2アーム部と、を備え、前記第1操作ケーブルが操作されることで一方側へ回動して前記第1アーム部が前記給気弁棒を押圧し、前記第2操作ケーブルが操作されることで他方側へ回動して前記第2アーム部が前記排気弁棒を押圧する単一のレバーと、前記アッパフレームと前記ロアフレームとのシート上下方向の間隔に応じた位置に変位すると共に、前記アッパフレームの前記ロアフレームに対する位置が上限位置に達している状態で前記第2アーム部に当接することで、前記第1操作ケーブルの操作による前記レバーの一方側への回動を制限し、前記アッパフレームの前記ロアフレームに対する位置が下限位置に達している状態で前記第1アーム部に当接することで、前記第2操作ケーブルの操作による前記レバーの他方側への回動を制限する高さ連動部と、を備えている。
【0021】
第3の態様の車両用シートは、第1の態様のシート支持装置の構成を備えている。これにより、シート本体の座面の位置が上限位置又は下限位置に達している状態において、エアスプリングの振動吸収性能を確保することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るシート支持装置及び車両用シートは、座面が上限位置又は下限位置にある状態において、振動吸収性能を確保することができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本実施形態の車両用シートを示す斜視図である。
図2】本実施形態の車両用シートを示す側面図である。
図3】ハイトコントロールユニットを模式的に示す側面図である。
図4】ハイトコントロールユニットを模式的に示す側面図であり、第1操作ケーブルが引かれた状態を示している。
図5】ハイトコントロールユニットを模式的に示す側面図であり、第2操作ケーブルが引かれた状態を示している。
図6】ハイトコントロールユニットを模式的に示す側面図であり、回動接触部の第1接触部が第1アーム部に当接している状態を示している。
図7】ハイトコントロールユニットを模式的に示す側面図であり、回動接触部の第2接触部が第2アーム部に当接している状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1図3を用いて、本発明の実施形態に係る車両用シート10について説明する。なお、図中に示す矢印FR、矢印UP、矢印RH及び矢印LHは、車両用シート10に着座した乗員から見たシート前方側、上方側、右側及び左側をそれぞれ示している。以下、単に前後、上下、左右の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、シート前後方向の前後、シート上下方向の上下、シート左右方向の左右を示すものとする。また、シート左右方向は、シート幅方向と一致している。
【0025】
図1に示されるように、本実施形態の車両用シート10は、車両の乗員が着座するシート本体12と、シート本体12を上下方向に昇降可能に支持するシート支持装置14と、を備えている。
【0026】
シート本体12は、乗員が着座する「座面16A」を備えたシートクッション16と、乗員の背部を支持するシートバック18と、乗員の頭部を支持するヘッドレスト20とを備えている。そして、シート本体12は、シート支持装置14によって下方側から支持されている。
【0027】
図2に示されるように、シート支持装置14は、アッパフレーム22と、ロアフレーム24と、連結部としてのリンク機構26と、エアスプリング28と、ダンパ30と、を備えている。
【0028】
アッパフレーム22には、シート本体12が固定されている。このアッパフレーム22は、左右方向に間隔をあけて配置された左右一対のレールメンバ22Aと、左右一対のレールメンバ22Aの前端部及び後端部をそれぞれ左右方向につなぐ図示しない前後一対の横メンバと、を含んで構成されている。これにより、アッパフレーム22を上方側から見た形状は矩形枠状になっている。
【0029】
また、左右一対のレールメンバ22Aの前後方向中央部同士は、板厚方向を上下方向とする板状の上側支持板部32を介して連結されている。この上側支持板部32には、後述するように、エアスプリング28が取り付けられている。
【0030】
ロアフレーム24は、アッパフレーム22の下方側に配置されており、図示しない車体のフロアに固定されている。このロアフレーム24は、左右方向に間隔をあけて配置された左右一対のレールメンバ24Aと、左右一対のレールメンバ24Aの前端部及び後端部をそれぞれ左右方向につなぐ図示しない前後一対の横メンバと、を含んで構成されている。これにより、ロアフレーム24を上方側から見た形状は矩形枠状になっている。
【0031】
また、一対のレールメンバ24Aの前後方向中央部同士は、板厚方向を上下方向とする板状の下側支持板部34を介して連結されており、この下側支持板部34には、後述するように、エアスプリング28が取り付けられている。
【0032】
リンク機構26は、左右一対のXリンク36を備えている。左右一対のXリンク36の上端部はアッパフレーム22に係合しており、左右一対のXリンク36の下端部はロアフレーム24に係合している。また、Xリンク36は、前方側から後方側へ向かうにつれて下方側に傾斜している第1リンク部38と、前方側から後方側へ向かうにつれて上方側に傾斜している第2リンク部40と、を備えている。第1リンク部38と第2リンク部40とは、前後方向の中央部において左右方向を軸方向として回動可能に連結されている。そして、第1リンク部38が第2リンク部40に対して相対的に回転することで、アッパフレーム22のロアフレーム24に対する昇降が許容されるようになっている。すなわち、リンク機構26の左右一対のXリンク36は、アッパフレーム22がロアフレーム24に対して昇降可能な状態で、アッパフレーム22とロアフレーム24とを連結している。
【0033】
エアスプリング28は、外形が上下方向を軸方向とする略円柱状に形成されており、上方側の端部がアッパフレーム22の上側支持板部32に固定されていると共に、下方側の端部がロアフレーム24の下側支持板部34に固定されている。このエアスプリング28には、例えば、車両のエアブレーキ装置の一部を構成するエアコンプレッサ(空気供給源)から圧縮空気が供給されるようになっている。そして、エアスプリング28は、アッパフレーム22を下方側から支持することでシート本体12を下方側から支持しており、シート本体12の上下動に起因する荷重を吸収可能とされている。
【0034】
また、エアスプリング28は、空気が供給されることで上下方向に伸長し、空気が排出されることで上下方向に収縮するようになっている。これにより、本実施形態では、エアスプリング28が伸長することでアッパフレーム22が上方側に移動し、エアスプリング28が収縮することでアッパフレーム22が下方側に移動することとなる。つまり、エアスプリング28は、供給された空気量に応じて上下方向に伸縮することで、アッパフレーム22に支持されたシート本体12の座面16Aの高さを調整可能とされている。
【0035】
ダンパ30は、オイル式のシリンダーダンパとされており、アッパフレーム22とロアフレーム24とを連結している。そして、ダンパ30によってシート本体12に発生する振動を減衰することが可能となっている。
【0036】
ここで、本実施形態では、図3に示されたハイトコントロールユニット42によってエアスプリング28内の空気の量を調整し、シート本体12の座面16Aの高さを調整可能とされている。また、図3に示された高さ連動部44によって、ハイトコントロールユニット42の挙動をアッパフレーム22の高さ(シート本体12の座面16Aの高さ)に応じて変更可能とされている。以下、本実施形態の要部を構成するハイトコントロールユニット42及び高さ連動部44の構成について詳細に説明する。なお、以下では、特に断りのない限り、アッパフレーム22のロアフレーム24に対する高さが、上下方向において上限位置との下限位置の中間である中間位置にあることを前提として、説明を進めていくこととする。
【0037】
図3に示されるように、ハイトコントロールユニット42は、バルブ46、ハウジング48、第1操作ケーブル50、第2操作ケーブル52及びレバー54を含んで構成されている。
【0038】
バルブ46は、ケーシング46Aと、第1ポート46Bと、第2ポート46Cと、給気弁棒46Dと、排気弁棒46Eと、を含んで構成されている。ケーシング46Aは、一例として金属製とされており、その内側には、空気が流れる流路部が形成されている。ケーシング46Aには、当該ケーシング46A内の流路部と連通可能とされた空気排出孔46Fが設けられている。
【0039】
そして、ケーシング46Aにおいて後述するレバー54とは反対側には、第1ポート46B及び第2ポート46Cが設けられている。また、ケーシング46Aにおいて後述するレバー54側には、給気弁棒46D及び排気弁棒46Eが設けられている。
【0040】
第1ポート46Bは、前述の空気供給源とホース56を介して接続されている。一方、第2ポート46Cは、エアスプリング28(図2参照)とホース58を介して接続されている。
【0041】
給気弁棒46Dは、第1ポート46Bの延長上においてケーシング46Aに対して出し入れ可能とされている。また、ケーシング46Aの内側には、図示しない付勢部材が配置されており、当該付勢部材によって給気弁棒46Dは、ケーシング46Aの外側に向けて付勢された状態となっている。
【0042】
そして、バルブ46は、給気弁棒46Dがケーシング46A側に押圧されることでケーシング46A内に配置された図示しない給気弁が開かれ、流路部を介して第1ポート46Bと第2ポート46Cとが連通されるようになっている。つまり、本実施形態では、給気弁棒46Dが押圧されると、空気供給源からの圧縮空気が、バルブ46を介してエアスプリング28に供給されるようになっている。
【0043】
一方、排気弁棒46Eは、第2ポート46Cの延長上においてケーシング46Aに対して出し入れ可能とされている。また、ケーシング46Aの内側には、図示しない付勢部材が配置されており、当該付勢部材によって排気弁棒46Eは、ケーシング46Aの外側に向けて付勢された状態となっている。
【0044】
そして、バルブ46は、排気弁棒46Eがケーシング46A側に押圧されることでケーシング46A内に配置された図示しない排気弁が開かれ、流路部を介して第2ポート46Cと空気排出孔46Fとが連通されるようになっている。つまり、本実施形態では、排気弁棒46Eが押圧されると、エアスプリング28内の空気が、バルブ46の空気排出孔46Fから排出されるようになっている。
【0045】
ハウジング48は、ベース部48Aと、ベース部48Aを覆う図示しないカバー部と、を含んで構成されている。ベース部48Aは、板状に形成されたベース板部48Bを備えている。そして、ベース板部48Bには、バルブ46が固定されていると共に、後述するレバー54等が支持されている。
【0046】
第1操作ケーブル50は、図示しないアウタチューブと、アウタチューブに挿通された第1コントロールケーブル50Aと、を含んで構成されている。第1コントロールケーブル50Aは、ケーシング46Aにおける第1ポート46B及び給気弁棒46D側に沿って配索されている。
【0047】
第2操作ケーブル52は、図示しないアウタチューブと、アウタチューブに挿通された第2コントロールケーブル52Aと、を含んで構成されている。第2コントロールケーブル52Aは、ケーシング46Aにおける第2ポート46C及び排気弁棒46E側に沿って配索されている。
【0048】
レバー54は、バルブ46の給気弁棒46D及び排気弁棒46Eと対向して配置されおり、ハウジング48のベース板部48Bに回動可能に支持されている。詳述すると、レバー54は、ベース板部48Bに当該ベース板部48Bの厚み方向を軸方向として回動可能に支持される円柱状の回動支持部54Aを備えている。
【0049】
また、レバー54は、回動支持部54Aの外周部から給気弁棒46D側へ向けて延出している第1アーム部54Bを備えている。この第1アーム部54Bにおける回動支持部54A側の部分は、第1コントロールケーブル50A及び第2コントロールケーブル52Aが操作されていない状態において給気弁棒46Dの先端部と近接して配置される給気弁棒押圧部54Cとなっている。また、第1アーム部54Bにおける回動支持部54Aとは反対側の端部は、第1コントロールケーブル50Aが係止されるケーブル係止部54Dとなっている。
【0050】
また、レバー54は、回動支持部54Aの外周部から第1アーム部54Bとは反対側かつ排気弁棒46E側へ向けて延出している第2アーム部54Eを備えている。この第2アーム部54Eにおける回動支持部54A側の部分は、第1コントロールケーブル50A及び第2コントロールケーブル52Aが操作されていない状態において排気弁棒46Eの先端部と近接して配置される排気弁棒押圧部54Fとなっている。また、第2アーム部54Eにおける回動支持部54Aとは反対側の端部は、第2コントロールケーブル52Aが係止されるケーブル係止部54Gとなっている。
【0051】
高さ連動部44は、レバー54に対してバルブ46とは反対側に配置されており、ハウジング48のベース板部48Bに回動可能に支持されている。詳述すると、高さ連動部44は、ベース板部48Bに当該ベース板部48Bの厚み方向を軸方向として回動可能に支持される回動接触部44Aを備えている。この回動接触部44Aは、レバー54と隣り合って配置されている。また、回動接触部44Aの外周部におけるレバー54の第1アーム部54B側には、その先端部が尖っている第1接触部44Bが形成されている。さらに、回動接触部44Aの外周部におけるレバー54の第2アーム部54E側には、その先端部が尖っている第2接触部44Cが形成されている。
【0052】
また、高さ連動部44は、回動接触部44Aからレバー54とは反対側へ向けて延出する連動腕部44Dを備えている。この連動腕部44Dにおける回動接触部44Aとは反対側の端部は、前述のリンク機構26(図2参照)の一部分に連結されている。そして、図2及び図3に示されるように、アッパフレーム22がロアフレーム24に対して昇降することによりリンク機構26が作動すると、高さ連動部44が回動して、当該高さ連動部44がアッパフレーム22とロアフレーム24とのシート上下方向の間隔に応じた位置に配置されるようになっている。ここで、本実施形態では、アッパフレーム22がロアフレーム24に対して上昇すると、高さ連動部44が矢印A1方向に回動するようになっている。これに対して、アッパフレーム22がロアフレーム24に対して下降すると、高さ連動部44が矢印A1とは反対方向に回動するようになっている。
【0053】
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0054】
図1図2及び図3に示されるように、本実施形態の車両用シート10では、シート本体12に着座した乗員が第1操作ケーブル50及び第2操作ケーブル52を操作することにより、シート本体12の座面16Aの高さを調節することができる。
【0055】
図2及び図4に示されるように、シート本体12に着座した乗員が第1操作ケーブル50の第1コントロールケーブル50Aを引くと、レバー54が一方側(矢印A2方向側)へ回動して、レバー54の給気弁棒押圧部54Cが給気弁棒46Dを押圧する。これにより、空気供給源からの圧縮空気が、バルブ46を介してエアスプリング28に供給されて、アッパフレーム22がロアフレーム24に対して上昇する。その結果、シート本体12の座面16Aの高さを高めることができる。
【0056】
その一方で、図2及び図5に示されるように、シート本体12に着座した乗員が第2操作ケーブル52の第2コントロールケーブル52Aを引くと、レバー54が他方側(矢印A2とは反対方向側)へ回動して、レバー54の排気弁棒押圧部54Fが排気弁棒46Eを押圧する。これにより、エアスプリング28内の空気が、バルブ46の空気排出孔46Fから排出されて、アッパフレーム22がロアフレーム24に対して下昇する。その結果、シート本体12の座面16Aの高さを下げることができる。
【0057】
ここで、図2及び図6に示されるように、アッパフレーム22のロアフレーム24に対する位置が上限位置に達している状態では、すなわち、シート本体12の座面16Aが上限位置に達している状態では、高さ連動部44もこれと対応する位置に配置される。この状態では、高さ連動部44の回動接触部44Aの第1接触部44Bが第1アーム部54Bと離間していると共に、回動接触部44Aの第2接触部44Cが第2アーム部54Eに当接している。回動接触部44Aの第2接触部44Cが第2アーム部54Eに当接している状態では、第1操作ケーブル50の第1コントロールケーブル50Aを引いたとしても、レバー54を一方側(矢印A2方向側)への回動させることができない。これにより、シート本体12の座面16Aが上限位置に達している状態では、エアスプリング28に空気が供給されることが抑制され、エアスプリング28内の圧力が過度に高くなることを抑制することができる。なお、回動接触部44Aの第2接触部44Cが第2アーム部54Eに当接していたとしても、第2操作ケーブル52の第2コントロールケーブル52Aを引くことにより、レバー54を他方側(矢印A2とは反対方向側)への回動させることができる。
【0058】
また、図2及び図7に示されるように、アッパフレーム22のロアフレーム24に対する位置が下限位置に達している状態では、すなわち、シート本体12の座面16Aが下限位置に達している状態では、高さ連動部44もこれと対応する位置に配置される。この状態では、高さ連動部44の回動接触部44Aの第2接触部44Cが第2アーム部54Eと離間していると共に、回動接触部44Aの第1接触部44Bが第1アーム部54Bに当接している。回動接触部44Aの第1接触部44Bが第1アーム部54Bに当接している状態では、第2操作ケーブル52の第2コントロールケーブル52Aを引いたとしても、レバー54を他方側(矢印A2とは反対方向側)への回動させることができない。これにより、シート本体12の座面16Aが下限位置に達している状態では、エアスプリング28内の空気が排出されることが抑制され、エアスプリング28内の圧力が過度に低くなることを抑制することができる。なお、回動接触部44Aの第1接触部44Bが第1アーム部54Bに当接していたとしても、第1操作ケーブル50の第1コントロールケーブル50Aを引くことにより、レバー54を一方側(矢印A2方向側)への回動させることができる。
【0059】
以上説明したように、本実施形態では、アッパフレーム22のロアフレーム24に対する位置が上限位置又は下限位置に達している状態において、すなわち、シート本体12の座面16Aの位置が上限位置又は下限位置に達している状態において、エアスプリング28内の空気の圧力を適切な圧力にすることができる。その結果、エアスプリング28の振動吸収性能を確保することができる。
【0060】
また、本実施形態では、単一のレバー54によってバルブ46の給気弁棒46D及び排気弁棒46Eを選択的に押圧することができる。これにより、バルブ46の給気弁棒46D及び排気弁棒46Eをそれぞれ押圧する複数のレバーを設けた構成と比べて、ハイトコントロールユニット42の部品点数の増加を抑制することができると共に、ハイトコントロールユニット42の体格の大型化を抑制することができる。
【0061】
なお、本実施形態では、回動可能に支持された高さ連動部44によってレバー54の回動を制限した例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、リンク機構26の動きに連動してスライドする構成の高さ連動部によってレバー54の回動を制限してもよい。
【0062】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0063】
10 車両用シート
12 シート本体
14 シート支持装置
22 アッパフレーム
24 ロアフレーム
26 リンク機構(連結部)
28 エアスプリング
44 高さ連動部
44A 回動接触部
44B 第1接触部
44C 第2接触部
46 バルブ
46D 給気弁棒
46E 排気弁棒
50 第1操作ケーブル
52 第2操作ケーブル
54 レバー
54A 回動支持部
54B 第1アーム部
54E 第2アーム部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7