IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イビデン株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-熱伝達抑制シート及び組電池 図1
  • 特開-熱伝達抑制シート及び組電池 図2
  • 特開-熱伝達抑制シート及び組電池 図3
  • 特開-熱伝達抑制シート及び組電池 図4
  • 特開-熱伝達抑制シート及び組電池 図5
  • 特開-熱伝達抑制シート及び組電池 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174128
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】熱伝達抑制シート及び組電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/658 20140101AFI20231130BHJP
   H01M 10/6555 20140101ALI20231130BHJP
   H01M 10/651 20140101ALI20231130BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20231130BHJP
【FI】
H01M10/658
H01M10/6555
H01M10/651
H01M10/625
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086808
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊野 圭司
(72)【発明者】
【氏名】井戸 貴彦
【テーマコード(参考)】
5H031
【Fターム(参考)】
5H031HH08
5H031KK02
(57)【要約】
【課題】熱伝達抑制シートへの衝撃及び押圧力が与えられた場合でも、その形状を保持することができる強度を有し、これにより、粉落ちを抑制することができるとともに、優れた断熱性能を維持することができる熱伝達抑制シート及びこの熱伝達抑制シートを有する組電池を提供する。
【解決手段】熱伝達抑制シート10は、無機粒子4と、有機繊維1と、を有する。また、熱伝達抑制シート10の表面には、複数の有機繊維1からなる筋状の繊維束7を有する第1領域2と、繊維束7が存在しない第2領域3と、が形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機粒子と、有機繊維と、を有する熱伝達抑制シートであって、
表面に、複数の前記有機繊維からなる筋状の繊維束を有する第1領域と、
前記繊維束が存在しない第2領域と、が形成されていることを特徴とする、熱伝達抑制シート。
【請求項2】
前記第1領域は、連続する少なくとも3つの5mm四方の仮想枠を貫通する前記筋状の繊維束を有することを特徴とする、請求項1に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項3】
前記第1領域は、長さが20mm以上の前記筋状の繊維束を有することを特徴とする、請求項1に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項4】
前記第1領域に囲まれた前記第2領域を有することを特徴とする、請求項1に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項5】
前記筋状の繊維束は、前記表面において網目状に連なっていることを特徴とする、請求項1に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項6】
前記無機粒子は、酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種の無機材料からなる粒子であることを特徴とする、請求項1に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項7】
前記無機粒子は、乾式シリカ粒子及びシリカエアロゲルから選択された少なくとも1種の粒子を含むことを特徴とする、請求項6に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項8】
前記無機粒子は、さらに、チタニア、ジルコン、ジルコニア、炭化ケイ素、酸化亜鉛及びアルミナから選択された少なくとも1種の粒子を含むことを特徴とする、請求項7に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項9】
複数の電池セルと、請求項1~8のいずれか1項に記載の熱伝達抑制シートを有し、前記複数の電池セルが直列又は並列に接続された、組電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝達抑制シート及び該熱伝達抑制シートを有する組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護の観点から電動モータで駆動する電気自動車又はハイブリッド車等の開発が盛んに進められている。この電気自動車又はハイブリッド車等には、駆動用電動モータの電源となるための、複数の電池セルが直列又は並列に接続された組電池が搭載されている。
【0003】
また、この電池セルには、鉛蓄電池やニッケル水素電池等に比べて、高容量かつ高出力が可能なリチウムイオン二次電池が主に用いられている。そして、電池の内部短絡や過充電等が原因で、ある電池セルが急激に昇温し、その後も発熱を継続するような熱暴走を起こした場合、熱暴走を起こした電池セルからの熱が、隣接する他の電池セルに伝播することで、他の電池セルの熱暴走を引き起こすおそれがある。
【0004】
上記のような熱暴走を起こした電池セルからの熱の伝播を抑制する方法として、電池セル間に断熱シートを介在させる方法が一般的に行われている。
例えば、特許文献1には、シリカナノ粒子で構成される第1粒子と、金属酸化物からなる第2粒子と、を含み、第1粒子の含有量を限定した組電池用の断熱シートが開示されている。また、特許文献1には、断熱シートは、繊維、バインダ及び耐熱樹脂から選択された少なくとも1種からなる結合材を含んでいてもよいことが記載されている。
【0005】
また、上記特許文献1には、第1粒子として、乾式シリカ又は湿式シリカを使用することができ、この断熱シートは、乾式成形法又は湿式抄造法により製造することができることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-34278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、断熱シート(熱伝達抑制シート)を製造する場合のバインダとして、例えば、湿熱接着バインダ繊維が挙げられるが、湿熱接着バインダ繊維は、その接着性を発現させるために、製造時に湿潤状態にする必要がある。したがって、湿熱接着バインダ繊維を使用する場合には、断熱シートは湿式抄造法により製造する必要がある。
【0008】
しかし、断熱性能をより一層向上させることを目的として、熱伝導率が低い乾式シリカやシリカエアロゲルを使用する場合には、湿式抄造法により断熱シートを製造することができないという問題がある。これは、乾式シリカを含む材料を湿式抄造法によりシート状に成形すると、乾式シリカが水によって凝集し、熱伝導率が上昇するからである。また、一般的にシリカエアロゲルは、水中に分散させることが困難であるため、シリカエアロゲルを含む材料を湿式抄造法により成形すると、材料が均一に分散した断熱シートを得ることができず、品質低下の原因になる。
【0009】
一方、乾式シリカやシリカエアロゲル等の無機粒子を使用して、乾式成形法により断熱シートを製造すると、圧力や衝撃等により無機粒子の脱落(以下、粉落ちともいう。)が発生することがある。特に、近年の組電池においては、電池セルの容量がより一層向上しているため、充放電時の膨張率が上昇している。したがって、断熱シートを組電池の電池セル間に配置する場合に、断熱シート全体の強度が低いと、電池セルの充放電時等に電池セルの膨張により断熱シートが圧縮されて粉落ちが発生し、断熱性能が低下してしまう。その結果、電池セルが熱暴走して高温になった場合に、断熱シートの効果を発揮することができず、熱連鎖が発生することがある。これらのことから、形状を保持し続けることができる高い強度を有し、粉落ちを抑制することができるとともに、優れた断熱性を維持することができる断熱シート及びその製造方法の検討が要求されている。
【0010】
上記特許文献1に記載の断熱シートは、圧縮応力が増加した場合であっても、優れた断熱性を維持するものであるが、断熱性、強度及び粉落ちを抑制する性能に関して、更なる改良が要求されている。
【0011】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、熱伝達抑制シートへの衝撃及び押圧力が与えられた場合でも、その形状を保持することができる強度を有し、これにより、粉落ちを抑制することができるとともに、優れた断熱性能を維持することができる熱伝達抑制シート及びこの熱伝達抑制シートを有する組電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記目的は、熱伝達抑制シートに係る下記[1]の構成により達成される。
【0013】
[1] 無機粒子と、有機繊維と、を有する熱伝達抑制シートであって、
表面に、複数の前記有機繊維からなる筋状の繊維束を有する第1領域と、
前記繊維束が存在しない第2領域と、が形成されていることを特徴とする、熱伝達抑制シート。
【0014】
また、熱伝達抑制シートに係る本発明の好ましい実施形態は、以下の[2]~[8]に関する。
【0015】
[2] 前記第1領域は、連続する少なくとも3つの5mm四方の仮想枠を貫通する前記筋状の繊維束を有することを特徴とする、[1]に記載の熱伝達抑制シート。
【0016】
[3] 前記第1領域は、長さが20mm以上の前記筋状の繊維束を有することを特徴とする、[1]に記載の熱伝達抑制シート。
【0017】
[4] 前記第1領域に囲まれた前記第2領域を有することを特徴とする、[1]~[3]のいずれか1つに記載の熱伝達抑制シート。
【0018】
[5] 前記筋状の繊維束は、前記表面において網目状に連なっていることを特徴とする、[1]~[4]のいずれか1つに記載の熱伝達抑制シート。
【0019】
[6] 前記無機粒子は、酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種の無機材料からなる粒子であることを特徴とする、[1]~[5]のいずれか1つに記載の熱伝達抑制シート。
【0020】
[7] 前記無機粒子は、乾式シリカ粒子及びシリカエアロゲルから選択された少なくとも1種の粒子を含むことを特徴とする、[6]に記載の熱伝達抑制シート。
【0021】
[8] 前記無機粒子は、さらに、チタニア、ジルコン、ジルコニア、炭化ケイ素、酸化亜鉛及びアルミナから選択された少なくとも1種の粒子を含むことを特徴とする、[7]に記載の熱伝達抑制シート。
【0022】
また、本発明の上記目的は、組電池に係る下記[9]の構成により達成される。
【0023】
[9] 複数の電池セルと、[1]~[8]のいずれか1つに記載の熱伝達抑制シートを有し、前記複数の電池セルが直列又は並列に接続された、組電池。
【発明の効果】
【0024】
本発明の熱伝達抑制シートは、表面に筋状の繊維束を有する第1領域と、繊維束が存在しない第2領域とが形成されているため、熱伝達抑制シートの強度を向上させることができるとともに、熱伝達抑制シートの表面への衝撃及び押圧を緩和することができ、これにより、粉落ちを抑制することができるとともに、熱伝達抑制シートの変形による断熱効果の低下を防止することができる。
【0025】
本発明の組電池によれば、上記のように高い強度と断熱性能の保持効果を有する熱伝達抑制シートを有するため、組電池における電池セルの熱暴走や、電池ケースの外側への炎の拡大を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本発明の実施形態に係る熱伝達抑制シートの表面の様子を示す図面代用写真である。
図2図2は、図1の一部を拡大して示す図面代用写真である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る熱伝達抑制シートの断面を示す図面代用写真である。
図4図4は、繊維束の長さを規定する方法の一例を説明するための図であり、図1のA部を拡大して示す図面代用写真である。
図5図5は、網目状の繊維束を示す図であり、図1のA部を拡大して示す図面代用写真である。
図6図6は、本発明の実施形態に係る熱伝達抑制シートを有する組電池を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明者らは、上記課題を解決することができる熱伝達抑制シートについて、鋭意検討を行った。
その結果、熱伝達抑制シートの表面に、筋状の繊維束を有する第1領域と、繊維束が存在しない第2領域とが形成されることにより、熱伝達抑制シートの強度を向上させることができ、これにより、高い断熱性能を維持することができることを見出した。
【0028】
以下、本発明の実施形態に係る熱伝達抑制シート、その製造方法及び組電池について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下で説明する実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変更して実施することができる。
【0029】
[熱伝達抑制シート]
図1は、本発明の実施形態に係る熱伝達抑制シートの表面の様子を示す図面代用写真であり、図2は、その一部を拡大して示す図面代用写真である。また、図3は、本発明の実施形態に係る熱伝達抑制シートの断面を示す図面代用写真である。
【0030】
図1図3に示すように、本実施形態に係る熱伝達抑制シート10は、無機粒子4と、有機繊維1と、を有する。熱伝達抑制シート10の表面には、複数の有機繊維1からなる筋状の繊維束7を有する第1領域2と、繊維束7が存在しない第2領域3と、が形成されている。本明細書において、繊維束7とは、10以上の有機繊維1が互いに交絡したものであり、熱伝達抑制シート10の表面に略平行な方向に筋状に延びている。
【0031】
すなわち、熱伝達抑制シート10の表面を観察した場合に、図2に示すように、第1領域2においては、複数の有機繊維1が交絡している様子が観察される。一方、第2領域3においては、数本の有機繊維1が観察される箇所もあるが、複数の有機繊維1が交絡した繊維束7は観察されない。
なお、本実施形態において、第1領域2と第2領域3とは海島構造となっており、海部に相当する第1領域2に取り囲まれるように、島部に相当する第2領域3が形成されている。
【0032】
熱伝達抑制シート10の使用形態としては、例えば、複数の電池セルの間に熱伝達抑制シート10を介在させるような形態が挙げられる。熱伝達抑制シート10の具体的な使用形態については後述する。
【0033】
このように構成された本実施形態においては、有機繊維1が交絡した繊維束7が、熱伝達抑制シート10の表面に筋状に延びるように存在しているため、熱伝達抑制シート10の強度を向上させることができる。また、表面の全面が繊維束7で覆われているわけではなく、繊維束7が存在する第1領域2と、繊維束7が存在しない第2領域とが存在するため、熱伝達抑制シート10の柔軟性も優れたものとなる。さらに、熱伝達抑制シート10の表面に上記繊維束7が存在するため、熱伝達抑制シート10に対して衝撃や圧力が与えられた場合であっても、この衝撃や押圧力を繊維束7が吸収し、緩和することができる。したがって、無機粒子4の脱落(粉落ち)を抑制することができ、熱伝達抑制シート10の断熱性能の低下を防止することができる。
【0034】
なお、本実施形態においては、図3の断面写真に示すように、有機繊維1及び有機繊維1が交絡した繊維束7は、熱伝達抑制シート10の表面のみでなく、内部にも存在する。これにより、さらに優れたシート強度を得ることができる。
【0035】
本実施形態において、熱伝達抑制シート10の表面に延びるように形成されている繊維束7の長さは、ある程度長い方が好ましい。繊維束7の長さを規定する方法の一例を、図4を用いて説明する。
図4に示すように、熱伝達抑制シート10の表面において、筋状に延びる繊維束7に沿って、矩形状の仮想枠21を配置する。本実施形態において、仮想枠21のサイズは、5mm四方とし、この仮想枠21同士が連続するように配置するものとする。このとき、連続する少なくとも3つの仮想枠21を貫通する繊維束7が存在していれば、熱伝達抑制シート10の強度を向上させる効果を十分に有するものと判断することができる。
【0036】
また、単に筋状に延びる繊維束7の長さを測定することもできる。例えば、繊維束7に沿って、紐等を熱伝達抑制シート10の表面に配置し、その後、紐の長さを測定する方法を使用することができる。連続する繊維束7の長さを測定した場合に、長さが20mm以上の繊維束7が存在していれば、熱伝達抑制シート10の強度を向上させる効果を十分に得ることができる。
【0037】
さらに、図5に示すように、熱伝達抑制シート10は、その表面において繊維束7が網目状に連なっていると、より一層シート強度を向上させることができる。
【0038】
以下、本実施形態に係る熱伝達抑制シートを構成する材料について、詳細に説明する。
【0039】
<有機繊維>
有機繊維1は、熱伝達抑制シート10に柔軟性を与えるとともに、シートの強度及び形状を向上させる効果を有する。熱伝達抑制シート10における有機繊維1の材料として、単成分の有機繊維を使用することもできるが、芯鞘構造のバインダ繊維を使用することが好ましい。芯鞘構造のバインダ繊維は、繊維の長手方向に延びる芯部と、芯部の外周面を被覆するように形成された鞘部とを有するものである。また、芯部は第1の有機材料からなり、鞘部は第2の有機材料からなり、第1の有機材料の融点は、第2の有機材料の融点よりも高いものとする。
【0040】
有機繊維1の材料として、単成分の有機繊維を使用した場合であっても、芯鞘構造のバインダ繊維を使用した場合であっても、熱伝達抑制シート10の製造時に、加熱されることにより繊維の表面の一部が溶融して、その後の冷却により、有機繊維1の周囲には不図示の溶着部が形成される。溶着部は、無機粒子4を有機繊維1の表面に溶着させるとともに、有機繊維1同士を溶着させるため、溶着部が形成されることにより、優れたシート強度を得ることができる。
【0041】
芯鞘構造のバインダ繊維を材料として使用した場合に、上記熱伝達抑制シート10において、芯部は有機繊維1に相当する。熱伝達抑制シート10の製造時に、芯鞘構造のバインダ繊維を使用していると、隣接するバインダ繊維同士が互いに溶着して、繊維束7が形成されやすくなるとともに、シート強度をより一層高めることができる。また、芯鞘構造のバインダ繊維を使用すると、鞘部を構成する第2の有機材料が溶融した後、再度周囲に存在する無機粒子4を含んだ状態で固化するため、無機粒子4の保持力を向上させることができる。
【0042】
(第1の有機材料)
有機繊維1の材料として、芯鞘構造のバインダ繊維を使用する場合に、芯部、すなわち有機繊維1を構成する第1の有機材料は、有機繊維1の外周面に存在する鞘部、すなわち第2の有機材料の融点よりも高いものであれば、特に限定されない。第1の有機材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン及びナイロンから選択された少なくとも1種が挙げられる。
【0043】
(第2の有機材料)
有機繊維1の材料として、芯鞘構造のバインダ繊維を使用する場合に、鞘部を構成する第2の有機材料は、上記有機繊維1を構成する第1の有機材料の融点よりも低いものであれば、特に限定されない。第2の有機材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン及びナイロンから選択された少なくとも1種が挙げられる。
なお、第2の有機材料の融点は、90℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましい。また、第2の有機材料の融点は、150℃以下であることが好ましく、130℃以下であることがより好ましい。
【0044】
(有機繊維の含有量)
本実施形態において、熱伝達抑制シート10における有機繊維1の含有量が適切に制御されていると、熱伝達抑制シート10の強度を向上させる効果を十分に得ることができる。
有機繊維1の含有量は、熱伝達抑制シート10の全質量に対して2質量%以上であることが好ましく、4質量%以上であることがより好ましい。また、有機繊維1の含有量が多くなりすぎると、無機粒子4の含有量が相対的に減少するため、所望の断熱性能を得るためには、有機繊維の含有量は、熱伝達抑制シート10の全質量に対して10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましい。
【0045】
(有機繊維の繊維長)
有機繊維1の繊維長については特に限定されないが、成形性や加工性を確保する観点から、有機繊維の平均繊維長は10mm以下とすることが好ましい。
一方、熱伝達抑制シートの強度を向上させる観点から、有機繊維1の平均繊維長は0.5mm以上とすることが好ましい。
【0046】
<無機粒子>
無機粒子として、単一の無機粒子を使用してもよいし、2種以上の無機粒子を組み合わせて使用してもよい。無機粒子の種類としては、熱伝達抑制効果の観点から、酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種の無機材料からなる粒子を使用することが好ましく、酸化物粒子を使用することがより好ましい。また、形状についても特に限定されないが、ナノ粒子、中空粒子及び多孔質粒子から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、具体的には、シリカナノ粒子、金属酸化物粒子、マイクロポーラス粒子や中空シリカ粒子等の無機バルーン、熱膨張性無機材料からなる粒子、含水多孔質体からなる粒子等を使用することもできる。
【0047】
無機粒子の平均二次粒子径が0.01μm以上であると、入手しやすく、製造コストの上昇を抑制することができる。また、200μm以下であると、所望の断熱効果を得ることができる。したがって、無機粒子の平均二次粒子径は、0.01μm以上200μm以下であることが好ましく、0.05μm以上100μm以下であることがより好ましい。
【0048】
なお、2種以上の熱伝達抑制効果が互いに異なる無機粒子を併用すると、発熱体を多段に冷却することができ、吸熱作用をより広い温度範囲で発現できる。具体的には、大径粒子と小径粒子とを混合使用することが好ましい。例えば、一方の無機粒子として、ナノ粒子を使用する場合に、他方の無機粒子として、金属酸化物からなる無機粒子を含むことが好ましい。以下、小径の無機粒子を第1の無機粒子、大径の無機粒子を第2の無機粒子として、無機粒子についてさらに詳細に説明する。
【0049】
<第1の無機粒子>
(酸化物粒子)
酸化物粒子は屈折率が高く、光を乱反射させる効果が強いため、第1の無機粒子として酸化物粒子を使用すると、特に異常発熱などの高温度領域において輻射伝熱を抑制することができる。酸化物粒子としては、シリカ、チタニア、ジルコニア、ジルコン、チタン酸バリウム、酸化亜鉛及びアルミナから選択された少なくとも1種の粒子を使用することができる。すなわち、無機粒子として使用することができる上記酸化物粒子のうち、1種のみを使用してもよいし、2種以上の酸化物粒子を使用してもよい。特に、シリカは断熱性が高い成分であり、チタニアは他の金属酸化物と比較して屈折率が高い成分であって、500℃以上の高温度領域において光を乱反射させ輻射熱を遮る効果が高いため、酸化物粒子としてシリカ及びチタニアを用いることが最も好ましい。
【0050】
(酸化物粒子の平均一次粒子径:0.001μm以上50μm以下)
酸化物粒子の粒子径は、輻射熱を反射する効果に影響を与えることがあるため、平均一次粒子径を所定の範囲に限定すると、より一層高い断熱性を得ることができる。
すなわち、酸化物粒子の平均一次粒子径が0.001μm以上であると、加熱に寄与する光の波長よりも十分に大きく、光を効率よく乱反射させるため、500℃以上の高温度領域において熱伝達抑制シート内における熱の輻射伝熱が抑制され、より一層断熱性を向上させることができる。
一方、酸化物粒子の平均一次粒子径が50μm以下であると、圧縮されても粒子間の接点や数が増えず、伝導伝熱のパスを形成しにくいため、特に伝導伝熱が支配的な通常温度域の断熱性への影響を小さくすることができる。
【0051】
なお、本発明において平均一次粒子径は、顕微鏡で粒子を観察し、標準スケールと比較し、任意の粒子10個の平均をとることにより求めることができる。
【0052】
(ナノ粒子)
本発明において、ナノ粒子とは、球形又は球形に近い平均一次粒子径が1μm未満のナノメートルオーダーの粒子を表す。ナノ粒子は低密度であるため伝導伝熱を抑制し、第1の無機粒子としてナノ粒子を使用すると、更に空隙が細かく分散するため、対流伝熱を抑制する優れた断熱性を得ることができる。このため、通常の常温域の電池使用時において、隣接するナノ粒子間の熱の伝導を抑制することができる点で、ナノ粒子を使用することが好ましい。
さらに、酸化物粒子として、平均一次粒子径が小さいナノ粒子を使用すると、電池セルの熱暴走に伴う膨張によって熱伝達抑制シートが圧縮され、内部の密度が上がった場合であっても、熱伝達抑制シートの伝導伝熱の上昇を抑制することができる。これは、ナノ粒子が静電気による反発力で粒子間に細かな空隙ができやすく、かさ密度が低いため、クッション性があるように粒子が充填されるからであると考えられる。
【0053】
なお、本発明において、第1の無機粒子としてナノ粒子を使用する場合に、上記ナノ粒子の定義に沿ったものであれば、材質について特に限定されない。例えば、シリカナノ粒子は、断熱性が高い材料であることに加えて、粒子同士の接点が小さいため、シリカナノ粒子により伝導される熱量は、粒子径が大きいシリカ粒子を使用した場合と比較して小さくなる。また、一般的に入手されるシリカナノ粒子は、かさ密度が0.1(g/cm)程度であるため、例えば、熱伝達抑制シートの両側に配置された電池セルが熱膨張し、熱伝達抑制シートに対して大きな圧縮応力が加わった場合であっても、シリカナノ粒子同士の接点の大きさ(面積)や数が著しく大きくなることはなく、断熱性を維持することができる。したがって、ナノ粒子としてはシリカナノ粒子を使用することが好ましい。シリカナノ粒子としては、湿式シリカ、乾式シリカ及びエアロゲル等が挙げられるが、本実施形態に特に好適であるシリカナノ粒子について、以下に説明する。
【0054】
一般的に、湿式シリカは粒子が凝集しているのに対し、乾式シリカは粒子を分散させることができる。300℃以下の温度範囲において、熱の伝導は伝導伝熱が支配的であるため、粒子を分散させることができる乾式シリカの方が、湿式シリカと比較して、優れた断熱性能を得ることができる。
なお、本実施形態に係る熱伝達抑制シートは、材料を含む混合物を、乾式法によりシート状に加工する製造方法を用いることが好ましい。したがって、無機粒子としては、熱伝導率が低い乾式シリカ、シリカエアロゲル等を使用することが好ましい。
【0055】
(ナノ粒子の平均一次粒子径:1nm以上100nm以下)
ナノ粒子の平均一次粒子径を所定の範囲に限定すると、より一層高い断熱性を得ることができる。
すなわち、ナノ粒子の平均一次粒子径を1nm以上100nm以下とすると、特に500℃未満の温度領域において、熱伝達抑制シート内における熱の対流伝熱及び伝導伝熱を抑制することができ、断熱性をより一層向上させることができる。また、圧縮応力が印加された場合であっても、ナノ粒子間に残った空隙と、多くの粒子間の接点が伝導伝熱を抑制し、熱伝達抑制シートの断熱性を維持することができる。
なお、ナノ粒子の平均一次粒子径は、2nm以上であることがより好ましく、3nm以上であることが更に好ましい。一方、ナノ粒子の平均一次粒子径は、50nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることが更に好ましい。
【0056】
(無機水和物粒子)
無機水和物粒子は、発熱体からの熱を受けて熱分解開始温度以上になると熱分解し、自身が持つ結晶水を放出して発熱体及びその周囲の温度を下げる、所謂「吸熱作用」を発現する。また、結晶水を放出した後は多孔質体となり、無数の空気孔により断熱作用を発現する。
無機水和物の具体例として、水酸化アルミニウム(Al(OH))、水酸化マグネシウム(Mg(OH))、水酸化カルシウム(Ca(OH))、水酸化亜鉛(Zn(OH))、水酸化鉄(Fe(OH))、水酸化マンガン(Mn(OH))、水酸化ジルコニウム(Zr(OH))、水酸化ガリウム(Ga(OH))等が挙げられる。
【0057】
例えば、水酸化アルミニウムは約35%の結晶水を有しており、下記式に示すように、熱分解して結晶水を放出して吸熱作用を発現する。そして、結晶水を放出した後は多孔質体であるアルミナ(Al)となり、断熱材として機能する。
2Al(OH)→Al+3H
【0058】
なお、後述するように、本実施形態に係る熱伝達抑制シート10は、例えば、電池セル間に介在されることが好適であるが、熱暴走を起こした電池セルでは、200℃を超える温度に急上昇し、700℃付近まで温度上昇を続ける。したがって、無機粒子としては熱分解開始温度が200℃以上である無機水和物からなることが好ましい。
上記に挙げた無機水和物の熱分解開始温度は、水酸化アルミニウムは約200℃、水酸化マグネシウムは約330℃、水酸化カルシウムは約580℃、水酸化亜鉛は約200℃、水酸化鉄は約350℃、水酸化マンガンは約300℃、水酸化ジルコニウムは約300℃、水酸化ガリウムは約300℃であり、いずれも熱暴走を起こした電池セルの急激な昇温の温度範囲とほぼ重なり、温度上昇を効率よく抑えることができることから、好ましい無機水和物であるといえる。
【0059】
(無機水和物粒子の平均二次粒子径:0.01μm以上200μm以下)
また、第1の無機粒子として、無機水和物粒子を使用した場合に、その平均粒子径が大きすぎると、熱伝達抑制シート10の中心付近にある第1の無機粒子(無機水和物)が、その熱分解温度に達するまでにある程度の時間を要するため、シート中心付近の第1の無機粒子が熱分解しきれない場合がある。このため、無機水和物粒子の平均二次粒子径は、0.01μm以上200μm以下であることが好ましく、0.05μm以上100μm以下であることがより好ましい。
【0060】
(熱膨張性無機材料からなる粒子)
熱膨張性無機材料としては、バーミキュライト、ベントナイト、雲母、パーライト等を挙げることができる。
【0061】
(含水多孔質体からなる粒子)
含水多孔質体の具体例としては、ゼオライト、カオリナイト、モンモリロナイト、酸性白土、珪藻土、湿式シリカ、乾式シリカ、エアロゲル、マイカ、バーミキュライト等が挙げられる。
【0062】
(無機バルーン)
本実施形態に係る熱伝達抑制シート10は、第1の無機粒子として無機バルーンを含んでいてもよい。
無機バルーンが含まれると、500℃未満の温度領域において、熱伝達抑制シート内における熱の対流伝熱または伝導伝熱を抑制することができ、熱伝達抑制シートの断熱性をより一層向上させることができる。
無機バルーンとしては、シラスバルーン、シリカバルーン、フライアッシュバルーン、バーライトバルーン、およびガラスバルーンから選択された少なくとも1種を用いることができる。
【0063】
(無機バルーンの含有量:断熱材全質量に対して60質量%以下)
無機バルーンの含有量としては、断熱材全質量に対し、60質量%以下が好ましい。
【0064】
(無機バルーンの平均粒子径:1μm以上100μm以下)
無機バルーンの平均粒子径としては、1μm以上100μm以下が好ましい。
【0065】
<第2の無機粒子>
熱伝達抑制シートに2種の無機粒子が含有されている場合に、第2の無機粒子は、第1の無機粒子と材質や粒子径等が異なっていれば特に限定されない。第2の無機粒子としては、酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子、無機水和物粒子、シリカナノ粒子、金属酸化物粒子、マイクロポーラス粒子や中空シリカ粒子等の無機バルーン、熱膨張性無機材料からなる粒子、含水多孔質体からなる粒子等を使用することができ、これらの詳細については、上述のとおりである。
【0066】
なお、ナノ粒子は伝導伝熱が極めて小さいとともに、熱伝達抑制シートに圧縮応力が加わった場合であっても、優れた断熱性を維持することができる。また、チタニア等の金属酸化物粒子は、輻射熱を遮る効果が高い。さらに、大径の無機粒子と小径の無機粒子とを使用すると、大径の無機粒子同士の隙間に小径の無機粒子が入り込むことにより、より緻密な構造となり、熱伝達抑制効果を向上させることができる。したがって、上記第1の無機粒子として、例えばナノ粒子を使用した場合に、さらに、第2の無機粒子として、第1の無機粒子よりも大径である金属酸化物からなる粒子を、熱伝達抑制シートに含有させることが好ましい。
金属酸化物としては、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、チタン酸バリウム、酸化亜鉛、ジルコン、酸化ジルコニウム等を挙げることがでる。特に、酸化チタン(チタニア)は他の金属酸化物と比較して屈折率が高い成分であり、500℃以上の高温度領域において光を乱反射させ輻射熱を遮る効果が高いため、チタニアを用いることが最も好ましい。
【0067】
第1の無機粒子として、乾式シリカ粒子及びシリカエアロゲルから選択された少なくとも1種の粒子を使用し、第2の無機粒子として、チタニア、ジルコン、ジルコニア、炭化ケイ素、酸化亜鉛及びアルミナから選択された少なくとも1種の粒子を使用する場合に、300℃以下の温度範囲内において、優れた断熱性能を得るためには、第1の無機粒子は、無機粒子全質量に対して、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。また、第1の無機粒子は、無機粒子全質量に対して、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることがさらに好ましい。
【0068】
一方、300℃を超える温度範囲内において、優れた断熱性能を得るためには、第2の無機粒子は、無機粒子全質量に対して、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましい。また、第2の無機粒子は、無機粒子全質量に対して、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましい。
【0069】
(第2の無機粒子の平均一次粒子径)
金属酸化物からなる第2の無機粒子を熱伝達抑制シートに含有させる場合に、第2の無機粒子の平均一次粒子径は、1μm以上50μm以下であると、500℃以上の高温度領域で効率よく輻射伝熱を抑制することができる。第2の無機粒子の平均一次粒子径は、5μm以上30μm以下であることが更に好ましく、10μm以下であることが最も好ましい。
【0070】
(無機粒子の含有量)
本実施形態において、熱伝達抑制シート10中の無機粒子4の合計の含有量が適切に制御されていると、熱伝達抑制シート10の断熱性を十分に確保することができる。
無機粒子4の合計の含有量は、熱伝達抑制シート10の全質量に対して60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。また、無機粒子4の合計の含有量が多くなりすぎると、有機繊維1の含有量が相対的に減少するため、有機繊維1によるシート強度の向上効果を十分に得るためには、無機粒子4の合計の含有量は、熱伝達抑制シート10の全質量に対して95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。
【0071】
なお、熱伝達抑制シート10中の無機粒子4の含有量は、例えば、熱伝達抑制シート10を800℃で加熱し、有機分を分解後、残部の質量を測定することにより、算出することができる。
【0072】
本実施形態に係る熱伝達抑制シート10には、上記有機繊維1、無機粒子4の他に、上記第1の有機材料とは異なる有機材料により構成された有機繊維や、無機繊維等が含まれていてもよい。熱伝達抑制シート10が無機繊維を含む場合に、本実施形態において含有されることが好ましい無機繊維について、以下に説明する。
【0073】
<無機繊維>
無機繊維として、単一の無機繊維を使用してもよいし、2種以上の無機繊維を組み合わせて使用してもよい。無機繊維としては、例えば、シリカ繊維、アルミナ繊維、アルミナシリケート繊維、ジルコニア繊維、カーボンファイバ、ソルブルファイバ、リフラクトリーセラミック繊維、エアロゲル複合材、マグネシウムシリケート繊維、アルカリアースシリケート繊維、チタン酸カリウム繊維、炭化ケイ素繊維、チタン酸カリウムウィスカ繊維等のセラミックス系繊維、ガラス繊維、グラスウール、スラグウール等のガラス系繊維、ロックウール、バサルトファイバ、ウォラストナイト、ムライト繊維等の鉱物系繊維等が挙げられる。
これらの無機繊維は、耐熱性、強度、入手容易性などの点で好ましい。無機繊維のうち、取り扱い性の観点から、特にシリカ-アルミナ繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、ロックウール、アルカリアースシリケート繊維、ガラス繊維が好ましい。
【0074】
無機繊維の断面形状は、特に限定されず、円形断面、平断面、中空断面、多角断面、芯断面などが挙げられる。中でも、中空断面、平断面または多角断面を有する異形断面繊維は、断熱性が若干向上されるため好適に使用することができる。
【0075】
無機繊維の平均繊維長の好ましい下限は0.1mmであり、より好ましい下限は0.5mmである。一方、無機繊維の平均繊維長の好ましい上限は50mmであり、より好ましい上限は10mmである。無機繊維の平均繊維長が0.1mm未満であると、無機繊維同士の絡み合いが生じにくく、熱伝達抑制シート10の機械的強度が低下するおそれがある。一方、50mmを超えると、補強効果は得られるものの、無機繊維同士が緊密に絡み合うことができなったり、単一の無機繊維だけで丸まったりし、それにより連続した空隙が生じやすくなるので断熱性の低下を招くおそれがある。
【0076】
無機繊維の平均繊維径の好ましい下限は1μmであり、より好ましい下限は2μmであり、更に好ましい下限は3μmである。一方、無機繊維の平均繊維径の好ましい上限は15μmであり、より好ましい上限は10μmである。無機繊維の平均繊維径が1μm未満であると、無機繊維自体の機械的強度が低下するおそれがある。また、人体の健康に対する影響の観点より、無機繊維の平均繊維径が3μm以上であることが好ましい。一方、無機繊維の平均繊維径が15μmより大きいと、無機繊維を媒体とする固体伝熱が増加して断熱性の低下を招くおそれがあり、また、熱伝達抑制シートの成形性及び強度が悪化するおそれがある。
【0077】
(無機繊維の含有量)
本実施形態において、熱伝達抑制シート10が無機繊維を含む場合に、無機繊維の含有量は、熱伝達抑制シート10の全質量に対して3質量%以上15質量%以下であることが好ましい。
【0078】
また、無機繊維の含有量は、熱伝達抑制シート10の全質量に対して、5質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。このような含有量にすることにより、無機繊維による保形性や押圧力耐性、抗風圧性や、無機粒子の保持能力がバランスよく発現される。また、無機繊維の含有量を適切に制御することにより、有機繊維1及び無機繊維が互いに絡み合って3次元ネットワークを形成するため、無機粒子4、及び後述する他の配合材料を保持する効果をより一層向上させることができる。
【0079】
<他の配合材料>
なお、本実施形態に係る熱伝達抑制シートは、さらに、必要に応じて、結合材、着色剤等を含有させることができる。これらはいずれも熱伝達抑制シートの補強や成形性の向上等を目的とする上で有用であり、熱伝達抑制シートの全質量に対して合計量で、10質量%以下とすることが好ましい。
【0080】
[熱伝達抑制シートの製造方法]
本実施形態に係る熱伝達抑制シート10の製造方法の例について、以下に説明する。
例えば、芯鞘構造を有するバインダ繊維(図示せず)と無機粒子4とを所定の割合でV型混合機などの混合機に投入し、混合物を作製する。
なお、上述のとおり、バインダ繊維としては、第1の有機材料からなる芯部と、第2の有機材料からなる鞘部とを有する芯鞘構造の繊維を使用することが好ましい。この場合に、第1の有機材料の融点は、第2の有機材料の融点よりも高いものとする。
【0081】
その後、得られた混合物を所定の型内に投入し、プレス機等により加圧して、得られた成形体を加熱することにより、バインダ繊維の鞘部が溶融する。その後、加熱された成形体を冷却することにより、成形体の表面において溶融していた鞘部が固化し、芯部(有機繊維1)同士を溶着することにより、熱伝達抑制シート10の表面に繊維束7が形成される。また、成形体の内部においては、溶融していた鞘部を構成する第2の有機材料と、バインダ繊維の周囲に存在していた無機粒子4とが、芯部に溶着されるとともに、バインダ繊維同士が接触していた領域においても互いに溶着される。これにより、本実施形態に係る熱伝達抑制シート10を得ることができる。
【0082】
本実施形態において、乾式法により熱伝達抑制シート10を製造することが好ましい。乾式法を使用する場合、乾式法に適した無機粒子4を使用し、上記混合物には、湿式法により成形する際に必要な水等の溶媒を添加しないものとする。ただし、熱伝達抑制シート10の製造時に、無機粒子4等の粉体が舞って、原料の取り扱いが困難になることを防止するため、乾式法とされる範囲内で少量の水などの溶媒を添加することもできる。例えば、混合物に水などの少量の溶媒を添加することにより、製造時における無機粒子の飛散を抑制することができる。
【0083】
本実施形態に係る製造方法によると、表面に有機繊維1からなる繊維束7が形成されるため、優れた強度を有する熱伝達抑制シート10を製造することができる。また、芯部を構成する第1の有機材料の融点が、鞘部を構成する第2の有機材料の融点よりも高いため、混合物を加熱する際に、芯部を残して鞘部を溶融させることができる。そして、冷却後に、芯部の外周面は、無機粒子4を含んだ第2の有機材料により被覆されるため、無機粒子4を保持することができる。無機粒子4が溶着した有機繊維1は、見かけ上太い繊維径を有するものとなるため、有機繊維1のみの強度よりも高強度となる。さらに、混合物中には、バインダ繊維が不規則な方向で存在しているため、バインダ繊維同士が接触している領域で、有機繊維1同士が溶着され、立体的な骨格が形成される。その結果、熱伝達抑制シート全体の形状をより一層高強度に保持することができる。
【0084】
なお、バインダ繊維として、芯鞘構造を有さない有機繊維を使用した場合であっても、表面に筋状に延びる繊維束7を形成することは可能である。ただし、熱伝達抑制シートの製造時には、厚さ方向に直交する片面側又は両面側から加熱することが一般的であり、断熱性能が高い材料を使用するため、シートの表面側と内部とにおいて、同程度の温度に上昇させることは困難である。シートの表面側において、複数の有機繊維が溶融しすぎないように制御するとともに、シートの内部において、有機繊維の表面のみを溶融させ、表面に無機粒子を被着させたり、有機繊維同士を溶着させ、シート強度がより一層高い熱伝達抑制シート10を製造するためには、厳密な温度管理が必要である。
【0085】
これに対して、芯部を構成する第1の有機材料の融点が、鞘部を構成する第2の有機材料の融点よりも高い芯鞘構造のバインダ繊維を使用すると、極めて容易に芯部を残し、鞘部を溶融させるための温度を設定することができる。その結果、得られた熱伝達抑制シートは、表面側及び中心側のいずれにおいても、有機繊維1同士が溶着してシートの強度を向上させる骨格となり、有機繊維1の表面に無機粒子4が溶着した理想的な構造を有するものとなる。したがって、熱伝達抑制シート10の材料として、上記のような芯鞘構造を有するバインダ繊維を使用することが好ましい。
【0086】
なお、詳細は後述するが、熱伝達抑制シートの原料として、混合物中に、ホットメルトパウダー等の接着剤を含有させてもよい。混合物中に含有させる接着剤の種類及び含有量を適切に調整することにより、無機粒子4の保持力を向上させ、粉落ちをより一層抑制することができる。
その結果、本実施形態に係る製造方法により製造された熱伝達抑制シート10は、より一層高い強度を有するものとなり、熱伝達抑制シートに対して押圧力又は衝撃が与えられた場合でも、その形状を維持することができ、粉落ちを抑制することができるとともに、優れた断熱性能を維持することができる。
【0087】
なお、粉落ちをより一層抑制するために、熱伝達抑制シート10の表面をフィルム等で被覆してもよい。高分子フィルムとしては、ポリイミド、ポリカーボネート、PET、p-フェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、架橋ポリエチレン、難燃クロロプレンゴム、ポリビニルデンフロライド、硬質塩化ビニル、ポリブチレンテレフタレート、PTFE、PFA、FEP、ETFE、硬質PCV、難燃性PET、ポリスチレン、ポリエーテルサルホン、ポリアミドイミド、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド等からなるフィルムが挙げられる。なお、熱伝達抑制シート10の表面をフィルムで被覆する方法については特に限定されず、接着剤等により貼付する方法や、熱伝達抑制シート10をフィルムで包む方法、袋状のフィルムに熱伝達抑制シート10を収容する方法等が挙げられる。
【0088】
次に、本実施形態に係る熱伝達抑制シートの製造方法において、使用することが好ましいバインダ繊維及び加熱条件について、説明する。
【0089】
<バインダ繊維>
本実施形態において、芯鞘構造のバインダ繊維を使用する場合に、芯部を構成する第1の有機材料の融点が、鞘部を構成する第2の有機材料の融点よりも高いものであれば、特に限定されない。芯部となる第1の有機材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン及びナイロンから選択された少なくとも1種を選択することができる。また、鞘部となる第2の有機材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン及びナイロンから選択された少なくとも1種を選択することができる。
【0090】
芯部を構成する第1の有機材料の融点が、鞘部を構成する第2の有機材料の融点よりも十分に高いと、加熱する工程における加熱温度の設定裕度を広げることができ、より一層所望の構造を得るための温度設定を容易にすることができる。例えば、第1の有機材料の融点は、第2の有機材料の融点よりも60℃以上高いことが好ましく、70℃以上高いことがより好ましく、80℃以上高いことがさらに好ましい。
【0091】
なお、上記のような芯鞘構造を有するバインダ繊維は、一般的に市販されており、芯部と鞘部を構成する材質は、同一でも互いに異なっていてもよい。芯部及び鞘部が同一の材質であって、異なる融点を有するバインダ繊維の例としては、例えば、芯部及び鞘部がポリエチレンテレフタレートからなるもの、ポリプロピレンからなるもの、ナイロンからなるもの等が挙げられる。芯部及び鞘部が互いに異なる材質からなるバインダ繊維の例としては、芯部がポリエチレンテレフタレートからなり、鞘部がポリエチレンからなるもの、芯部がポリプロピレンからなり、鞘部がポリエチレンからなるもの等が挙げられる。
【0092】
本実施形態において、バインダ繊維の鞘部を構成する第2の有機材料の融点とは、第2の有機材料が融解変形し始める融解温度を表すが、形状変化を伴う軟化も、融解変形の1種と判断する。バインダ繊維の鞘部の融点は、例えば、以下の方法により測定することができる。
測定対象とするバインダ繊維を、より融点が高いガラス繊維と接するように配置し、室温から5℃/分の昇温速度で、例えば200℃まで加熱して、その後室温まで冷却する。このとき、バインダ繊維の表面が融解変形して、ガラス繊維と接している部分で融着しているか、又は、バインダ繊維の断面形状が変化していれば、鞘部を構成する第2の有機材料の融点が200℃以下であると判断することができる。本実施形態においては、加熱温度を種々に変化させて、上記の方法で冷却後のバインダ繊維とガラス繊維との融着状態、又はバインダ繊維の断面形状を観察することにより、鞘部を構成する第2の有機材料の融点を特定することができる。
【0093】
(バインダ繊維の含有量)
本実施形態において、材料として芯鞘構造のバインダ繊維を使用する場合に、混合物中のバインダ繊維の含有量が適切に制御されていると、得られる熱伝達抑制シート10の表面に適切な長さの繊維束7を形成することができ、優れたシート強度を得ることができる。
バインダ繊維の含有量は、混合物の全質量に対して5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。また、バインダ繊維の含有量が多くなりすぎると、無機粒子4の含有量が相対的に減少するため、所望の断熱性能を得るためには、バインダ繊維の含有量は、混合物の全質量に対して25質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。
【0094】
<ホットメルトパウダー>
本実施形態においては、上記バインダ繊維、無機粒子4の他に、混合物中にホットメルトパウダーを含有させてもよい。ホットメルトパウダーは、例えば上記第1の有機材料及び第2の有機材料とは異なる第3の有機材料を含有し、加熱により溶融する性質を有する粉体である。混合物中にホットメルトパウダーを含有させ、加熱することにより、ホットメルトパウダーは溶融し、その後冷却すると、周囲の無機粒子4を含んだ状態で硬化する。したがって、熱伝達抑制シート10からの無機粒子4の脱落をより一層抑制することができる。
【0095】
ホットメルトパウダーとしては、種々の融点を有するものが挙げられるが、使用するバインダ繊維の芯部及び鞘部の融点を考慮して、適切な融点を有するホットメルトパウダーを選択すればよい。具体的に、ホットメルトパウダーを構成する成分である第3の有機材料は、上記有機繊維を構成する第1の有機材料の融点よりも低いものであれば、芯部を残して、鞘部及びホットメルトパウダーを溶融させるための加熱温度を設定することができる。例えば、ホットメルトパウダーの融点が、鞘部の融点以下であると、製造時の加熱温度は、芯部の融点と鞘部の融点との間で設定すればよいため、より一層容易に加熱温度を設定することができる。
【0096】
一方、ホットメルトパウダーの融点が、芯部の融点と鞘部の融点との間となるように、使用するホットメルトパウダーの種類を選択することもできる。このような融点を有するホットメルトパウダーを使用すると、鞘部及びホットメルトパウダーがともに溶融した後、冷却されて硬化する際に、先に有機繊維(芯部)1とその周囲の溶融した鞘部、及び無機粒子4の隙間に存在するホットメルトパウダーが硬化する。その結果、有機繊維1の位置を固定することができ、その後、溶融していた鞘部が有機繊維に溶着することにより、立体的な骨格が形成されやすくなる。したがって、シート全体の強度をより一層向上させることができる。
【0097】
ホットメルトパウダーを構成する第3の有機材料の融点が、芯部を構成する第1の有機材料の融点よりも十分に低いと、加熱する工程における加熱温度の設定裕度を広げることができ、より一層所望の構造を得るための温度設定を容易にすることができる。例えば、第1の有機材料の融点は、第3の有機材料の融点よりも60℃以上高いことが好ましく、70℃以上高いことがより好ましく、80℃以上高いことがさらに好ましい。
【0098】
なお、ホットメルトパウダー(第3の有機材料)の融点は、80℃以上であることが好ましく、90℃以上であることがより好ましい。また、ホットメルトパウダー(第3の有機材料)の融点は、180℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましい。ホットメルトパウダーを構成する成分としては、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、エチレン酢酸ビニル等が挙げられる。
【0099】
(ホットメルトパウダーの含有量)
無機粒子の脱落を抑制するために、混合物中にホットメルトパウダーを含有させる場合に、その含有量は微量でも粉落ち抑制の効果を得ることができる。したがって、ホットメルトパウダーの含有量は、混合物全質量に対して0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。
一方、ホットメルトパウダーの含有量を増加させると、無機粒子4等の含有量が相対的に減少するため、所望の断熱性能を得るためには、ホットメルトパウダーの含有量は、混合物の全質量に対して5質量%以下であることが好ましく、4質量%以下であることがより好ましい。
【0100】
<加熱条件>
上記混合物をシート状に加工する工程としては、混合物を加圧する工程と、混合物を加熱する工程とが挙げられる。熱伝達抑制シート10の材料として、芯鞘構造のバインダ繊維を使用する場合に、加熱する工程における加熱温度は、鞘部を構成する第2の有機材料の融点よりも高く、芯部を構成する第1の有機材料の融点よりも低い温度とすることが好ましい。このような加熱温度に設定することにより、上述のとおり、シートの表面側及び中心側のいずれにおいても、芯部によりシートの強度を確保することができるとともに、溶着した鞘部により無機粒子4を保持することができる。
【0101】
具体的に、加熱する工程における加熱温度は、鞘部を構成する第2の有機材料の融点よりも10℃以上高く設定することが好ましく、20℃以上高く設定することがより好ましい。一方、加熱温度は、芯部を構成する第1の有機材料の融点よりも10℃以上低く設定することが好ましく、20℃以上低く設定することがより好ましい。
【0102】
加熱時間については特に限定されないが、鞘部を十分に溶融させることができるための加熱時間を設定することが好ましい。例えば、3分以上15分以内に設定することができる。
【0103】
熱伝達抑制シートの材料としてホットメルトパウダーを含む場合に、加熱する工程における加熱温度は、鞘部を構成する第2の有機材料の融点、及びホットメルトパウダーを構成する第3の有機材料の融点のいずれか高い方よりも10℃以上高く設定することが好ましく、20℃以上高く設定することがより好ましい。一方、加熱温度は、芯部を構成する第1の有機材料の融点よりも10℃以上低く設定することが好ましく、20℃以上低く設定することがより好ましい。このような加熱温度に設定することにより、強固な骨格を形成することができ、シートの強度をより一層向上させることができるとともに、無機粒子4の脱落を防止することができる。
【0104】
<熱伝達抑制シートの厚さ>
本実施形態に係る熱伝達抑制シートの厚さは特に限定されないが、0.05mm以上10mm以下であることが好ましい。厚さが0.05mm以上であると、充分な圧縮強度を得ることができる。一方、厚さが10mm以下であると、熱伝達抑制シートの良好な断熱性を得ることができる。
【0105】
[組電池]
図6は、本発明の実施形態に係る熱伝達抑制シートを有する組電池を示す模式図である。図6に示すように、組電池100は、複数の電池セル20a、20b、20cと、本実施形態に係る熱伝達抑制シート10と、を有し、これら複数の電池セル20a、20b、20cが直列又は並列に接続されたものである。
具体的に、熱伝達抑制シート10は、電池セル20aと電池セル20bとの間、及び電池セル20bと電池セル20cとの間に介在されている。そして、複数の電池セル20a,20b,20cが直列又は並列に接続された状態(接続された状態は図示を省略)で、電池ケース30に格納されて組電池100が構成される。なお、電池セル20a,20b,20cは、例えば、リチウムイオン二次電池が好適に用いられるが、特にこれに限定されず、その他の二次電池にも適用され得る。
なお、熱伝達抑制シート10については、上述したとおりである。
【0106】
このように構成された組電池100においては、ある電池セル20aが高温になった場合でも、電池セル20bとの間には、熱伝達抑制効果を有する熱伝達抑制シート10が存在しているため、電池セル20bへの熱の伝播を抑制することができる。
また、本実施形態に係る熱伝達抑制シート10は、高い強度を有するとともに、衝撃を吸収し、押圧力に対抗する効果を有するため、電池セル20a、20b、20cの充放電時においても、これら電池セルの熱膨張を抑制することができる。したがって、電池セル間の距離を確保することができ、優れた断熱性能を維持することができるため、電池セルの熱暴走を防止することができる。また、粉落ちを抑制する効果を有するため、容易に取り扱うことができる。
【0107】
なお、本実施形態の組電池100は、図6に例示した組電池に限定されない。例えば、熱伝達抑制シート10は、電池セル20aと電池セル20bとの間、及び電池セル20bと電池セル20cとの間のみでなく、電池セル20a、20b、20cと電池ケース30との間に配置されたり、電池ケース30の内面に貼り付けられるものであってもよい。
【0108】
このように構成された組電池100においては、ある電池セルが発火した場合に、電池ケース30の外側に炎が広がることを抑制することができる。
例えば、本実施形態に係る組電池100は、電気自動車(EV:Electric Vehicle)等に使用され、搭乗者の床下に配置されることがある。この場合に、仮に電池セルが発火しても、搭乗者の安全を確保することができる。
また、熱伝達抑制シート10を、各電池セル間に介在させるだけでなく、電池セル20a、20b、20cと電池ケース30との間に配置することができるため、新たに防炎材等を作製する必要がなく、容易に低コストで安全な組電池100を構成することができる。
【0109】
本実施形態の組電池において、電池セル20a、20b、20cと電池ケース30との間に配置された熱伝達抑制シート10と、電池セルとは、接触していても、隙間を有していてもよい。ただし、熱伝達抑制シート10と電池セル20a、20b、20cとの間に隙間を有していると、複数ある電池セルのうち、いずれかの電池セルの温度が上昇し、体積が膨張した場合であっても、電池セルの変形を許容することができる。
【0110】
なお、本実施形態に係る熱伝達抑制シート10は、その製造方法によって、種々の形状に作製することができる。したがって、電池セル20a、20b、20c及び電池ケース30の形状に影響されず、どのような形状のものにも対応させることができる。具体的には、角型電池の他、円筒形電池、平板型電池等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0111】
1 有機繊維
2 第1領域
3 第2領域
4 無機粒子
7 繊維束
10 熱伝達抑制シート
20a,20b,20c 電池セル
21 仮想枠
30 電池ケース
100 組電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-08-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機粒子と、有機繊維と、を有する熱伝達抑制シートであって、
表面に、複数の前記有機繊維からなる筋状の繊維束を有する第1領域と、
前記繊維束が存在しない第2領域と、が形成されており、
前記第1領域に囲まれた前記第2領域を有することを特徴とする、熱伝達抑制シート。
【請求項2】
無機粒子と、有機繊維と、を有する熱伝達抑制シートであって、
表面に、複数の前記有機繊維からなる筋状の繊維束を有する第1領域と、
前記繊維束が存在しない第2領域と、が形成されており、
前記筋状の繊維束は、前記表面において網目状に連なっていることを特徴とする、熱伝達抑制シート。
【請求項3】
前記第1領域は、連続する少なくとも3つの5mm四方の仮想枠を貫通する前記筋状の繊維束を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項4】
前記第1領域は、長さが20mm以上の前記筋状の繊維束を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項5】
前記無機粒子は、酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種の無機材料からなる粒子であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項6】
前記無機粒子は、乾式シリカ粒子及びシリカエアロゲルから選択された少なくとも1種の粒子を含むことを特徴とする、請求項に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項7】
前記無機粒子は、さらに、チタニア、ジルコン、ジルコニア、炭化ケイ素、酸化亜鉛及びアルミナから選択された少なくとも1種の粒子を含むことを特徴とする、請求項に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項8】
複数の電池セルと、請求項1又は2に記載の熱伝達抑制シートを有し、前記複数の電池セルが直列又は並列に接続された、組電池。