(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174141
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】抗菌性組成物
(51)【国際特許分類】
A01N 41/10 20060101AFI20231130BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20231130BHJP
A01N 33/12 20060101ALI20231130BHJP
A01N 43/40 20060101ALI20231130BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20231130BHJP
A61K 31/14 20060101ALI20231130BHJP
A61K 31/4425 20060101ALI20231130BHJP
A61K 47/40 20060101ALI20231130BHJP
A61K 31/10 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
A01N41/10 A
A01P3/00
A01N33/12 101
A01N43/40 101K
A61P31/04
A61K31/14
A61K31/4425
A61K47/40
A61K31/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086827
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】511027699
【氏名又は名称】株式会社シクロケムバイオ
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】住藤 夏美
(72)【発明者】
【氏名】吉村 正史
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 啓二
(72)【発明者】
【氏名】石田 善行
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C206
4H011
【Fターム(参考)】
4C076CC32
4C076EE39
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC17
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZB35
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA41
4C206FA42
4C206JA19
4C206KA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206NA05
4C206ZB35
4H011AA01
4H011AA03
4H011BA06
4H011BB04
4H011BB07
4H011BB09
4H011BC08
(57)【要約】
【課題】ジヨードメタン化合物を単独で用いる場合に比べて、グラム陽性菌に対して高い抗菌効果を示す抗菌性組成物を提供する。
【解決手段】本開示の抗菌性組成物は、ジヨードメタン化合物(A)と、第4級アンモニウム塩(B)とを含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジヨードメタン化合物(A)と、第4級アンモニウム塩(B)とを含有する、抗菌性組成物。
【請求項2】
前記第4級アンモニウム塩(B)が、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、及び塩化セチルピリジニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載の抗菌性組成物。
【請求項3】
前記ジヨードメタン化合物(A)が、ジヨードメチル-p-トリルスルホンを含む、請求項1又は請求項2に記載の抗菌性組成物。
【請求項4】
前記ジヨードメタン化合物(A)と前記第4級アンモニウム塩(B)との混合比率(A/B)が、質量基準で、1/99~90/10である、請求項1又は請求項2に記載の抗菌性組成物。
【請求項5】
シクロデキストリン誘導体(C)を更に含有する、請求項1又は請求項2に記載の抗菌性組成物。
【請求項6】
前記シクロデキストリン誘導体(C)が、β-シクロデキストリン誘導体を含む、請求項5に記載の抗菌性組成物。
【請求項7】
前記β-シクロデキストリン誘導体が、メチル-β-シクロデキストリンを含む、請求項6に記載の抗菌性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、抗菌性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ジヨードメチル-p-トリルスルホン(以下、「DMTS」ともいう。)は、抗カビ剤の有効成分として用いられている(特許文献1)。
一方、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は、皮膚に常在する菌であり、強い病原性を有する悪玉菌として知られている(特許文献2)。健常な皮膚においては、通常の生体防御機能により問題が生じることはないが、何らかの原因によって黄色ブドウ球菌が増殖すると皮膚疾患の原因となることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-193337号公報
【特許文献2】特開2021-161034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、DMTSのみを有効成分とする従来の抗カビ剤は、グラム陽性菌(例えば、黄色ブドウ球菌、枯草菌(Bacillus subtilis))に対して、菌の増殖を抑制する効果(以下、「抗菌効果」ともいう。)が十分でないおそれがある。そのため、DMTSを含有する場合に、グラム陽性菌に対して高い抗菌効果を示す抗菌性組成物の開発が望まれている。
【0005】
本開示は、上記事情を鑑み、ジヨードメタン化合物を単独で用いる場合に比べて、グラム陽性菌に対して高い抗菌効果を示す抗菌性組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための具体的な手段には、以下の態様が含まれる。
<1> ジヨードメタン化合物(A)と、第4級アンモニウム塩(B)とを含有する、抗菌性組成物。
<2> 前記第4級アンモニウム塩(B)が、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、及び塩化セチルピリジニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、前記<1>に記載の抗菌性組成物。
<3> 前記ジヨードメタン化合物(A)が、ジヨードメチル-p-トリルスルホンを含む、前記<1>又は<2>に記載の抗菌性組成物。
<4> 前記ジヨードメタン化合物(A)と前記第4級アンモニウム塩(B)との混合比率(A/B)が、質量基準で、1/99~90/10である、前記<1>~<3>のいずれか1つに記載の抗菌性組成物。
<5> シクロデキストリン誘導体(C)を更に含有する、前記<1>~<4>のいずれか1つに記載の抗菌性組成物。
<6> 前記シクロデキストリン誘導体(C)が、β-シクロデキストリン誘導体を含む、前記<5>に記載の抗菌性組成物。
<7> 前記β-シクロデキストリン誘導体が、メチル-β-シクロデキストリンを含む、前記<6>に記載の抗菌性組成物。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ジヨードメタン化合物を単独で用いる場合に比べて、グラム陽性菌に対して高い抗菌効果を示す抗菌性組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1-1~実施例1-11において、有効成分(ジヨードメチル-p-トリルスルホン及び塩化ベンザルコニウム)中の塩化ベンザルコニウムの割合に対する、黄色ブドウ球菌のMIC値及びMIC理論値を示すグラフである。
【
図2】実施例1-12~実施例1-20において、有効成分(ジヨードメチル-p-トリルスルホン及び塩化ベンゼトニウム)中の塩化ベンゼトニウムの割合に対する、黄色ブドウ球菌のMIC値及びMIC理論値を示すグラフである。
【
図3】実施例1-21~実施例1-29において、有効成分(ジヨードメチル-p-トリルスルホン及び塩化セチルピリジニウム)中の塩化セチルピリジニウムの割合に対する、黄色ブドウ球菌のMIC値及びMIC理論値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本開示において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。
【0010】
(1)抗菌性組成物
本開示の抗菌性組成物は、ジヨードメタン化合物(A)と、第4級アンモニウム塩(B)とを含有する。
【0011】
本開示において、「ジヨードメタン化合物(A)」とは、ジヨードメチル基を有するベンゼン及びその誘導体(例えば、α,α-ジヨードアセチルベンゼン誘導体、α,α-ジヨードメチルスルホニルベンゼン誘導体)を示す。
本開示において、「第4級アンモニウム塩(B)」とは、4個の置換基を持つアンモニウムカチオンと、対イオン(アニオン)とからなる塩を示す。なお、4個の置換基のうち少なくとも2個の置換基は、アンモニウムカチオンとともに環状構造を形成していてもよい。
【0012】
本開示の抗菌性組成物は、上記の構成を有するため、ジヨードメタン化合物(A)を単独で用いる場合に比べて、グラム陽性菌に対して高い抗菌効果を示す。ジヨードメタン化合物は、ジヨードメチル-p-トリルスルホンであってもよい。グラム陽性菌は、黄色ブドウ球菌及び枯草菌であってもよく、黄色ブドウ球菌であってもよい。
【0013】
(1.1)ジヨードメタン化合物(A)
本開示の抗菌性組成物は、ジヨードメタン化合物(A)を含有する。
【0014】
ジヨードメタン化合物(A)は、公知のジヨードメタン化合物を用いることができるが、抗菌性組成物の良好な抗菌効果を発現させる観点から、下記一般式(1)で表される化合物(1)を含むことが好ましい。
【0015】
【0016】
一般式(1)において、R1は、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~7のアシル基、炭素数2~7のアルコキシカルボニル基、炭素数2~7のアルキルアミノカルボニル基又は炭素数3~13のジアルキルアミノカルボニル基を示し、R2は、ハロゲン原子又は炭素数1~6のアルキル基を示し、nは0又は1を示す。
L1は、カルボニル基又はスルホニル基を示す。
【0017】
R1で表される炭素数1~6のアルキル基は、直鎖アルキル基、分岐を有するアルキル基、又は環状構造を有するアルキル基であってもよく、直鎖アルキル基又は分岐を有するアルキル基であることが好ましい。
R1で表されるアルキル基の炭素数は、好ましくは1~3、より好ましくは1~2である。
R1で表される炭素数1~6のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、シクロブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、2-メチルブチル基、ネオペンチル基、1-エチルプロピル基、シクロペンチル基、n-へキシル基、4-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、1-メチルペンチル基、3,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0018】
R1で表される炭素数1~7のアシル基の具体例としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ペンタノイル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
【0019】
R1で表される炭素数2~7のアルコキシカルボニル基を構成するアルコキシ基としては、炭素数1~6のアルコキシ基であることが好ましく、炭素数1~3のアルコキシ基であることがより好ましく、炭素数1~2のアルコキシ基であることが更に好ましい。
炭素数2~7のアルコキシカルボニル基を構成するアルコキシ基は、直鎖アルコキシ基、分岐を有するアルコキシ基、又は環状構造を有するアルコキシ基であってもよく、直鎖アルコキシ基又は分岐を有するアルコキシ基であることが好ましい。
炭素数2~7のアルコキシカルボニル基を構成するアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、シクロプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基、シクロブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、2-メチルブトキシ基、ネオペンチルオキシ基、1-エチルプロポキシ基、シクロペンチルオキシ基、n-へキシルオキシ基、4-メチルペンチルオキシ基、3-メチルペンチルオキシ基、2-メチルペンチルオキシ基、1-メチルペンチルオキシ基、3,3-ジメチルブトキシ基、2,2-ジメチルブトキシ基、1,1-ジメチルブトキシ基、1,2-ジメチルブトキシ基、1,3-ジメチルブトキシ基、2,3-ジメチルブトキシ基、2-エチルブトキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0020】
R1で表される炭素数2~7のアルキルアミノカルボニル基又は炭素数3~13のジアルキルアミノカルボニル基を構成するアルキル基としては、炭素数1~6のアルキル基であることが好ましく、炭素数1~3のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1~2のアルキル基であることが更に好ましい。
炭素数2~7のアルキルアミノカルボニル基又は炭素数3~13のジアルキルアミノカルボニル基を構成するアルキル基は、直鎖アルキル基、分岐を有するアルキル基、又は環状構造を有するアルキル基であってもよく、直鎖アルキル基又は分岐を有するアルキル基であることが好ましい。
炭素数2~7のアルキルアミノカルボニル基又は炭素数3~13のジアルキルアミノカルボニル基を構成するアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、シクロブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、2-メチルブチル基、ネオペンチル基、1-エチルプロピル基、シクロペンチル基、n-へキシル基、4-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、1-メチルペンチル基、3,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0021】
R1で表される炭素数3~13のジアルキルアミノカルボニル基を構成する2つのアルキル基は、同じであってもよく、異なっていてもよい。2つのアルキル基は、互いに結合して環状構造を形成してもよい。
【0022】
R1としては、水素原子又は炭素数2~7のアルコキシカルボニル基であることが好ましく、水素原子又はエトキシカルボニル基であることがより好ましい。
【0023】
R2で表される炭素数1~6のアルキル基は、直鎖アルキル基、分岐を有するアルキル基、又は環状構造を有するアルキル基であってもよく、直鎖アルキル基又は分岐を有するアルキル基であることが好ましい。
R2で表されるアルキル基の炭素数は、好ましくは1~3、より好ましくは1~2、更に好ましくは1である。
R2で表される炭素数1~6のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、シクロブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、2-メチルブチル基、ネオペンチル基、1-エチルプロピル基、シクロペンチル基、n-へキシル基、4-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、1-メチルペンチル基、3,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0024】
R2で表されるハロゲン原子の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子が挙げられる。
【0025】
R2の置換位置は特に限定されるものではない。R2の置換位置は、一般式(1)のベンゼン環におけるL1の結合した炭素を基準として、オルト位、メタ位、又はパラ位であってもよく、パラ位であることが好ましい。
【0026】
R2としては、メチル基、又はエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0027】
nは、0又は1を示し、1であることが好ましい。
【0028】
L1は、カルボニル基又はスルホニル基を示す。
【0029】
ジヨードメタン化合物(A)としては、例えば、ジヨードメチル-p-トリルスルホン、ジヨードメチル-o-トリルスルホン、ジヨードメチル-m-トリルスルホン、ジヨードメチル-p-クロロフェニルスルホン、ジヨードメチル-p-ブロモフェニルスルホン、ジヨードメチル-p-エチルフェニルスルホン、ジヨードメチル-p-プロピルフェニルスルホン、ジヨードメチルフェニルケトン、ジヨードメチル(4-メチルフェニル)ケトン、ジヨードメチル(4-クロロフェニル)ケトン、メチル-2,2-ジヨード-3-オキソ-3-フェニルプロピオネート等が挙げられる。
なかでも、抗菌性組成物の良好な抗菌効果を発現させる観点から、ジヨードメタン化合物(A)は、ジヨードメチル-p-トリルスルホン、ジヨードメチル-o-トリルスルホン、ジヨードメチル-m-トリルスルホン、及びジヨードメチル-p-クロロフェニルスルホンから選ばれる群から選択される少なくとも1つを含むことが好ましく、ジヨードメチル-p-トリルスルホン(A-1)(以下、「DMTS(A-1)」ともいう)を含むことがより好ましい。
【0030】
ジヨードメタン化合物(A)は、市販品であってもよい。市販品としては、例えば、「ヨートル(登録商標)DP95」(三井化学株式会社製、主成分:DMTS(A-1))等が挙げられる。抗菌性組成物が後述するシクロデキストリン誘導体(C)を含有する場合、例えば、「ヨートル(登録商標)DP-CD」(三井化学株式会社製、主成分:DMTS(A-1)及びメチル-β-シクロデキストリン)等が挙げられる。「ヨートルDP-CD」は、実施例1-1で調製したジヨードメチル-p-トリルスルホン水溶液と同様の方法で調製される。
【0031】
(1.1.1)含有割合
ジヨードメタン化合物(A)の含有割合は、特に限定されず、抗菌性組成物の形態に応じて、適宜選択される。
【0032】
抗菌性組成物の形態は、特に限定されず、溶液(例えば、水溶液又は非水溶液)、懸濁液(すなわち、スラリー液)、粉体、ペレット等が挙げられる。溶液は、ジヨードメタン化合物(A)を溶媒に溶解させることで得られる。詳しくは、水溶液は、ジヨードメタン化合物(A)を水溶媒(すなわち、水を含む溶媒)に溶解させることで得られる。非水溶液は、ジヨードメタン化合物(A)を非水溶媒(すなわち、水を含まない溶媒)に溶解させることで得られる。懸濁液は、ジヨードメタン化合物(A)を溶媒に懸濁させることで得られる。抗菌性組成物の形態及び溶媒の詳細については、後述する。
【0033】
抗菌性組成物の形態が溶液である場合、ジヨードメタン化合物(A)の含有割合は、抗菌性組成物の全量に対して、好ましくは0.01質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5.0質量%である。
抗菌性組成物の形態が粉体である場合、ジヨードメタン化合物(A)の含有割合は、抗菌性組成物の全量に対して、好ましくは0.01質量%~99質量%、より好ましくは0.1質量%~20質量%である。
本開示において、ジヨードメタン化合物(A)の含有割合は、ジヨードメタン化合物(A)の添加割合(配合割合)と同一とみなす。
【0034】
(1.2)第4級アンモニウム塩(B)
本開示の抗菌性組成物は、第4級アンモニウム塩(B)を含有する。
【0035】
第4級アンモニウム塩(B)としては、例えば、ベンザルコニウム型4級アンモニウム塩、塩化アルキルピリジニウム、ハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム等が挙げられる。
ベンザルコニウム型4級アンモニウム塩としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ミリスチルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム等が挙げられる。
塩化アルキルピリジニウムとしては、例えば、塩化セチルピリジニウム、塩化ラウリルピリジニウム等が挙げられる。
ハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウムとしては、例えば、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。
塩化ジアルキルジメチルアンモニウムとしては、例えば、塩化ジメチルジデシルアンモニウム、塩化N-デシル-N-イソノニルジメチルアンモニウム、塩化ジオクチルジメチルアンモニウム、塩化ジセチルジメチルアンモニウム、塩化ジメチルジステアリルアンモニウム等が挙げられる。
第4級アンモニウム塩(B)は、ベンザルコニウム型4級アンモニウム塩及び塩化アルキルピリジニウムの少なくとも一方を含んでもよい。
【0036】
なかでも、優れた相乗的抗菌効果を奏する観点から、第4級アンモニウム塩(B)は、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、及び塩化セチルピリジニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0037】
塩化ベンザルコニウムは、〔C6H5CH2N(CH3)2R〕+Cl-で表される化学構造を有し、Rが炭素数8~18のアルキル基である化合物又はこれら化合物の混合物の総称である。Rが炭素数12~14のアルキル基である塩化ベンザルコニウムが最も殺菌力が強い。富士フイルム和光純薬株式会社製の「10%塩化ベンザルコニウム溶液」は、Rが炭素数12~14のアルキル基である塩化ベンザルコニウムを主成分とする。
【0038】
第4級アンモニウム塩(B)は、市販品であってもよい。塩化ベンザルコニウムの市販品としては、「10%塩化ベンザルコニウム溶液」(富士フイルム和光製薬株式会社製)、「Benzalkonium Chloride」(Toronto Research Chemicals社製)等が挙げられる。塩化ベンゼトニウムの市販品としては、「塩化ベンゼトニウム」(富士フイルム和光純薬株式会社製)等が挙げられる。塩化セチルピリジニウムの市販品としては、「ヘキサデシルピリジニウムクロリド一水和物」(富士フイルム和光純薬株式会社製)等が挙げられる。
【0039】
(1.2.1)混合比率
ジヨードメタン化合物(A)と第4級アンモニウム塩(B)との混合比率(A/B)(以下、単に「混合比率(A/B)」という。)は、特に限定されず、質量基準で、好ましくは1/99~90/10である。混合比率(A/B)が上記範囲内である場合、より高い抗菌効果を示すことができる。
混合比率(A/B)は、大腸菌(Escherichia coli)、黄色ブドウ球菌、及び枯草菌への抗菌効果の観点から、より好ましくは5/95~90/10、さらに好ましくは30/70~80/20である。
混合比率(A/B)の測定方法は、実施例に記載の方法と同様である。
【0040】
第4級アンモニウム塩が塩化ベンザルコニウムを含む場合、混合比率(A/B)は、好ましくは20/80~90/10、より好ましくは30/70~80/20である。これにより、抗菌性組成物は、グラム陽性菌のみならず、大腸菌に対しても高い抗菌効果を示す。
【0041】
第4級アンモニウム塩が塩化ベンゼトニウムを含む場合、混合比率(A/B)は、好ましくは10/90~90/10、より好ましくは80/20~90/10である。これにより、抗菌性組成物は、グラム陽性菌のみならず、大腸菌に対しても高い抗菌効果を示す。
【0042】
第4級アンモニウム塩が塩化セチルピリジニウムを含む場合、混合比率(A/B)は、好ましくは10/90~90/10、より好ましくは10/90~80/20である。これにより、抗菌性組成物は、グラム陽性菌のみならず、大腸菌に対しても高い抗菌効果を示す。
【0043】
(1.2.1)含有割合
第4級アンモニウム塩(B)の含有割合は、特に限定されず、抗菌性組成物の形態に応じて、適宜選択される。
抗菌性組成物の形態が溶液である場合、第4級アンモニウム塩(B)の含有割合は、抗菌性組成物の全量に対して、好ましくは0.01質量%~25質量%、より好ましくは0.03質量%~20質量%である。
抗菌性組成物の形態が粉体である場合、第4級アンモニウム塩(B)の含有割合は、抗菌性組成物の全量に対して、好ましくは0.01質量%~99質量%、より好ましくは0.5質量%~60質量%である。
本開示において、第4級アンモニウム塩(B)の含有割合は、第4級アンモニウム塩(B)の添加割合(配合割合)と同一とみなす。
【0044】
(1.3)シクロデキストリン誘導体(C)
本開示の抗菌性組成物は、ジヨードメタン化合物(A)及び第4級アンモニウム塩(B)に加えて、シクロデキストリン誘導体(C)を更に含有してもよいし、シクロデキストリン誘導体(C)を含有しなくてもよい。
【0045】
本開示において、「シクロデキストリン誘導体」とは、シクロデキストリン又はその誘導体を含むシクロデキストリン系化合物を示し、シクロデキストリン及び置換基を有するシクロデキストリンを含む。
【0046】
抗菌性組成物がシクロデキストリン誘導体(C)を更に含有することにより、包接化合物が形成されやすくなる。包接化合物は、ゲスト化合物としてのジヨードメタン化合物(A)と、ホスト化合物としてのシクロデキストリン誘導体(C)とを含んでもよい。シクロデキストリン誘導体(C)は、水に対する溶解性が高い。そのため、ジヨードメタン化合物(A)が水に対する溶解性が低い場合(例えば、DMTS(A-1))であっても、包接化合物は、水に対する溶解性が高い。その結果、抗菌性組成物は、溶液の形態で用いられ得る。それ故、抗菌性組成物の取扱性はより優れる。
【0047】
シクロデキストリン誘導体(C)における置換基としては、アルキル基、ヒドロキシアルキル基等が挙げられる。
アルキル基及びヒドロキシアルキル基における炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~3、更に好ましくは1である。
【0048】
シクロデキストリン誘導体(C)としては、α-シクロデキストリン誘導体、β-シクロデキストリン誘導体及びγ-シクロデキストリン誘導体のいずれでもよく、これらの混合物でもよい。具体的に、シクロデキストリン誘導体(C)としては、メチル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、メチル-γ-シクロデキストリン、メチル-α-シクロデキストリン等が挙げられる。
中でも、包接化合物をより形成しやすくする等の観点から、シクロデキストリン誘導体(C)は、β-シクロデキストリン誘導体(すなわち、β-シクロデキストリン又はその誘導体を含むβ-シクロデキストリン系化合物)を含むことが好ましい。
ジヨードメタン化合物(A)の水溶液への溶解性を向上させる等に観点から、β-シクロデキストリン誘導体は、メチル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを含むことが好ましく、メチル-β-シクロデキストリンを含むことがより好ましい。
【0049】
β-シクロデキストリン誘導体は、市販品であってもよい。市販品としては、例えば、「CAVASOL W7 M」(メチル-β-シクロデキストリン、シクロケム社製)、「CAVASOL W7 HP」(ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、シクロケム社製)、「化学修飾サイクロデキストリン メチル-β-CD」(塩水港精糖社製)、「化学修飾サイクロデキストリン HP-β-CD」(塩水港精糖社製)、「セルデックス HP-β-CD」(日本食品化工社製)等が挙げられる。
【0050】
(1.3.1)含有割合
シクロデキストリン誘導体(C)の含有割合は、特に限定されず、抗菌性組成物の形態に応じて、適宜選択される。以下、抗菌性組成物がシクロデキストリン誘導体(C)を更に含有する場合について説明する。
【0051】
抗菌性組成物の形態が溶液、又は粉体である場合、シクロデキストリン誘導体(C)の含有割合は、特に限定されず、抗菌性組成物の用途等に応じて適宜選択され、下記の範囲であることが好ましい。
シクロデキストリン誘導体(C)の含有割合は、抗菌性組成物の水に対する溶解性を向上させる等の観点から、抗菌性組成物に含まれるジヨードメタン化合物(A)の総質量に対して、好ましくは300質量%~3600質量%、より好ましくは600質量%~2700質量%、更に好ましくは900質量%~2100質量%である。
本開示において、シクロデキストリン誘導体(C)の含有割合は、シクロデキストリン誘導体(C)の添加割合(配合割合)と同一とみなす。
【0052】
(1.4)溶媒
本開示の抗菌性組成物は、ジヨードメタン化合物(A)及び第4級アンモニウム塩(B)に加えて、必要に応じて、溶媒(D)を更に含有してもよいし、溶媒(D)を含有しなくてもよい。
抗菌性組成物が溶媒(D)を含有することにより、抗菌性組成物の形態は、溶液となり得る。そのため、抗菌性組成物の形態が粉体である場合よりも、抗菌性組成物の取り扱い性は優れる。
【0053】
溶媒(D)としては、水溶媒又は非水溶媒が挙げられる。水溶媒は、水を含有する溶媒であればよく、例えば、水(以下、「水(D-1)」ともいう。)(例えば、精製水、イオン交換水)、生理食塩水等が挙げられる。非水溶媒は、水を含有しない溶媒であればよく、有機溶媒等が挙げられる。有機溶媒としては、硫黄原子含有溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド(以下、「DMSO(D-2)」ともいう。)等)、一価アルコール類(例えば、エタノール、イソプロパノール、ベンジルアルコール等)、グリコール系溶剤(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール等)及びその誘導体、グリセリン系溶剤(例えば、グリセリン、ジグリセリン等)及びその誘導体、環状有機溶媒(例えば、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン等)、エステル系溶媒(例えば、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、セバシン酸エステル等)、ケトン系溶媒(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、芳香族系溶媒(例えば、メチルナフタレン、フェニルキシリルエタン、アルキルベンゼン等)、脂肪族炭化水素溶媒(例えば、ノルマルパラフィン、イソパラフィン等)等が挙げられる、これら溶媒は、単独で使用してもよく、2種類以上を併用することも可能である。
【0054】
(1.4.1)含有割合
溶媒(D)の含有割合は、特に限定されず、抗菌性組成物の用途等に応じて適宜選択され、下記の範囲であることが好ましい。以下、抗菌性組成物が溶媒(D)を更に含有する場合について説明する。
溶媒(D)の含有割合は、抗菌性組成物の全量に対して、好ましくは30質量%~99質量%、より好ましくは50質量%~99質量%である。
本開示において、溶媒(D)の含有割合は、溶媒(D)の添加割合(配合割合)と同一とみなす。
【0055】
(1.5)他の成分
本開示の抗菌性組成物は、ジヨードメタン化合物(A)及び第4級アンモニウム塩(B)に加えて、必要に応じて、他の成分(E)を更に含有してもよいし、他の成分(E)を含有しなくてもよい。他の成分(E)としては、公知の成分であってもよく、例えば、界面活性剤、pH調整剤、消泡剤、防錆剤、粘度調整剤(例えば、増粘剤)、金属封鎖剤(キレート剤)、光安定化剤、紫外線吸収剤、促進剤、付着増進剤、香料、スケール防止剤、帯電防止剤、樹脂バインダー、柔軟加工剤、抗菌成分、抗ウイルス剤、他の防カビ剤等が挙げられる。これら他の成分は、単独又は2種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0056】
(1.6)対象細菌
本開示の抗菌性組成物が抗菌効果を示す細菌は、グラム陽性菌である。グラム陽性菌は、黄色ブドウ球菌及び枯草菌を含む。本開示の抗菌性組成物は、下記の実施例で示される通り、混合比率(A/B)の範囲によって、グラム陰性菌に対しても抗菌効果を示す。グラム陰性菌は、大腸菌、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、及びサルモネラ菌(Salmonella enterica)を含む。
【0057】
(1.7)対象カビ
本開示の抗菌性組成物は、下記の実施例で示される通り、混合比率(A/B)の範囲によって、真菌に対して抗カビ効果を示す。「抗カビ効果」とは、カビの増殖を抑制する効果を示す。真菌は、黒コウジカビ(Aspergillus niger)を含む。
【0058】
(1.8)対象酵母
本開示の抗菌性組成物は、下記の実施例で示される通り、混合比率(A/B)の範囲によって、酵母類に対して抗酵母効果を示す。「抗酵母効果」とは、酵母の増殖を抑制する効果を示す。酵母類は、パン酵母(Saccharomyces cerevisiae)、及びカンジダ菌(Candida albicans)を含む。
【0059】
(1.9)抗菌性組成物の用途
本開示の抗菌性組成物は、特に限定されず、種々の用途に用いることができる。
抗菌性組成物に用途としては、例えば、各種工業用製品及び日用品等として使用される、部材及び製品等の全てを含む。具体的には、上記用途としては、例えば、農業分野(例えば、農薬等)、林業分野(例えば、木材保存剤等)、漁業分野(例えば、浮具、漁具、及び水槽等)、畜産分野(例えば、飼料、飼槽、及びカーフジャケット等)、建設分野(例えば、壁紙、壁用ボード、壁材、及び床材等の内装建材、塗料、接着剤、フィルター、タイル、セメント、コンクリート、建材等に対する防蟻剤及び防虫剤、並びに木材等の資材等)、食料品分野(例えば、食品保存料等)、飲料・たばこ・飼料分野(例えば、水及びたばこ等)、繊維分野(例えば、衣類及び布団等)、パルプ・紙・紙加工品分野(例えば、包装紙等の包装材料等)、化学工業分野(例えば、金属加工液、洗浄剤、冷却水、メッキ液等の表面処理剤、プラスチック用又はガラス用等の切削液(例えばレンズ加工液)、インキ、印刷用トナー、医薬品、化粧品、トイレタリー製品、サニタリー用品、殺菌消毒剤、防臭剤、防腐剤、及び洗剤等)、プラスチック製品分野(例えば、樹脂成形体、フィルム、及び合成皮革(例えばポリウレタン系合成皮革)等)、ゴム製品分野、なめし革・同製品・毛皮分野(例えば、皮革等)、窯業・土石製品分野(例えば、食器類等の陶磁器等)、電気機械器具分野(例えば、冷蔵庫及び空調機等の家庭用電気機器並びにそれらの部材等)、輸送用機械器具分野(例えば、自動車及び物流用の船舶等)、精密機械器具分野(例えば、ハイテク機器及び光学機器等)、その他の製品分野(例えば、スポーツ用品、学用品、筆記具用インキ、玩具、プラスチック製等の雑貨、及び家庭用品等)、並びに医療・福祉サービス分野(例えば、病院、老人ホーム、及び公共施設等で用いる部材及び製品等)等の様々な分野において、それぞれで例示した部材及び製品等に用いることができる。
【0060】
中でも、抗菌性組成物の用途としては、内装建材、塗料、インキ、印刷用トナー、壁紙、接着剤、金属加工液、表面処理剤、プラスチック用又はガラス用等の切削液(例えばレンズ加工液)、成形物(例えば、フィルム、シート、及びプラスチック製品(例えば樹脂成形体及び合成皮革(例えばポリウレタン系合成皮革)等))、繊維(衣類及び布団等)、陶磁器(食器類等)、紙・パルプ製品、洗浄剤、防臭剤、防腐剤、並びにゴム製品分野が好適である。
【0061】
すなわち、上記で例示した分野における部材及び製品等が、本開示の抗菌性組成物を含有するよう加工することにより、部材及び製品等に抗菌効果を付与することが可能となる。
【0062】
(1.10)抗菌性組成物の製剤化
本開示の抗菌性組成物は、抗菌性組成物を製剤化したうえで、種々の用途に用いてもよい。抗菌性組成物を製剤化して用いることで、本開示の抗菌性組成物を、上記したような、分野、部材及び製品等に対して、より適用しやすくなる場合がある。製剤化により得られる剤型は、特に制限されず、水系、粉体系、及び溶剤系等の各種剤型(例えば、油剤、乳剤、可溶化製剤、水和剤、フロアブル剤(水中懸濁剤、水中乳濁剤等)、マイクロカプセル剤、粉剤、錠剤、エアゾール剤、及び炭酸ガス製剤等)が適用可能である。本開示の抗菌性組成物は、一般的に製剤化に用いられる任意成分と共に製剤化されることができる。
【実施例0063】
以下、本開示を実施例により更に具体的に説明するが、本開示はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0064】
[1]抗菌性組成物の作製
[1.1]準備
実施例及び参考例で用いた製品は、以下の通りである。
【0065】
(ジヨードメタン化合物(A))
・DMTS(A-1):三井化学株式会社製の「ヨートル(登録商標)DP95」(成分:ジヨードメチル-p-トリルスルホン、形態:粉体)
【0066】
(第4級アンモニウム塩(B))
・BAC(B-1a):富士フイルム和光純薬株式会社製の「10%塩化ベンザルコニウム溶液」(成分:塩化ベンザルコニウム、形態:水溶液、規格含量:10% Solution)
・BAC(B-1b):Toronto Research Chemicals社製の「Benzalkonium Chloride」(成分:塩化ベンザルコニウム、形態:粉体)
・BZC(B-2) :富士フイルム和光純薬株式会社製の「塩化ベンゼトニウム」(成分:塩化ベンゼトニウム、形態:粉体、規格含量:98.0+% (After Drying)(Titration))
・CPC(B-3) :富士フイルム和光純薬株式会社製の「ヘキサデシルピリジニウムクロリド一水和物」(成分:塩化セチルピリジニウム、形態:粉体、規格含量:99.0~102.0%(無水物換算))
【0067】
(シクロデキストリン誘導体(C))
・MβCD(C-1):株式会社シクロケム製の「CAVASOL(登録商標) W7 M」(成分:メチル-β-シクロデキストリン、形態:粉体)
【0068】
(溶媒(D))
・精製水(D-1) :蒸留水
・DMSO(D-2):富士フイルム和光純薬株式会社製の「ジメチルスルホキシド」(成分:ジメチルスルホキシド、形態:非水溶液)
【0069】
[1.2]実施例1-1
反応器(容量:3000mL)に、「MβCD(C-1)」(750g)と、希釈溶媒としての「水(D-1)」(1500mL)とを装入した。その後、「DMTS(A-1)」の含有量がジヨードメチル-p-トリルスルホン水溶液の全量に対して2.7質量%となるように、「DMTS(A-1)」を添加し、50℃で5時間撹拌した。その後、0.3MPa以下で加圧ろ過を行い、ジヨードメチル-p-トリルスルホン水溶液(以下、「DPCD」ともいう。)を得た。
【0070】
DPCD中のDMTS(A-1)の濃度を、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)を用いて下記の方法により求めた。実施例において「DMTS(A-1)の濃度」は、DPCDに溶解されているDMTS(A-1)の質量を意味する。
DPCD中のDMTS(A-1)の濃度は、予め作成した絶対検量線に基づいて求めた。
絶対検量線は、水溶媒にDMTS(A-1)を溶解させた溶液についてHPLC分析を行った場合における、溶液中のDMTS(A-1)の濃度と、ピークのArea%と、の関係を示すグラフであり、以下の方法で作成した。
アセトニトリル:水=1:1である溶媒を用いて、濃度の異なるDMTS(A-1)溶液を3種類用意し、HPLCを用いてDMTS(A-1)に相当するピークのArea%を算出した。その後、DMTS(A-1)濃度を縦軸、得られたArea%を横軸として絶対検量線を作成した。
HPLCの条件は、以下の通りとした。
-HPLCの条件-
・カラム:(株)ワイエムシィ製「YMC-Pack ODS-A」(150×6mm)
・移動相:アセトニトリル:H2O(0.1質量%トリフルオロ酢酸)=5:5→10:0 Over 15min、retention 10min、流速0.5mL/min
・温度:40℃
・検出波長:254nm
【0071】
DPCD中のDMTS(A-1)の濃度に対して、表1に記載の混合比率(A/B)となるように、「BAC(B-1a)」を添加し、超音波撹拌により溶解させ、抗菌性組成物を得た。
【0072】
[1.3]実施例1-2~実施例1-29、参考例1~参考例4
表1~表3に示すように、第4級アンモニウム塩(B)の種類及び混合比率(A/B)を変更したことの他は、実施例1-1と同様にして、抗菌性組成物(形態:水溶液)を得た。
【0073】
[1.4]実施例2-1
「DMTS(A-1)」及び「BAC(B-2)」を、表4に記載の混合比率(A/B)となるように混合し、抗菌性組成物(形態:粉体)を得た。後述の試験時は抗菌組成物を「DMSO(D-2)」に溶解させて使用した。「DMTS(A-1)」の含有量は、抗菌性組成物の全量に対して、3質量%であった。
【0074】
[1.5]実施例2-2~実施例2-9、参考例5及び参考例6
表4~表6に示すように、第4級アンモニウム塩(B)の種類及び混合比率(A/B)を変更したことの他は、実施例2-1と同様にして、「DMSO(D-2)」に溶解させた抗菌性組成物(形態:粉体)を得た。
【0075】
[2]抗菌効果の評価
抗菌性組成物の抗菌効果を、MIC(Minimum Inhibitory Concentration、最小発育阻止濃度)試験法によって評価した。
【0076】
[2.1]MIC試験(細菌)
[2.1.1]培地等
抗菌性試験では、下記のLB(Lysogeny Broth)培地を用いた。
LB培地は、「Difco LB Broth Miller(Luria-Bertani)」(ベクトン・ディッキンソン アンド カンパニー社製) 25gを1000mLの蒸留水に溶解して、調製された培地である。
【0077】
[2.1.2]前培養
MIC試験法(細菌)では、下記の菌種(a1)~菌種(b3)を用いた。菌種(a1)~菌種(b3)は、121℃、20分の条件でオートクレーブ滅菌したLB培地を用いて35℃にて24時間培養された供試菌種である。
菌種(a1):Staphylococcus aureus(NBRC 12732、分与機関 独立行政法人 製品評価技術基盤機構、黄色ブドウ球菌)
菌種(a2):Bacillus subtilis(NBRC 13719、分与機関 独立行政法人 製品評価技術基盤機構、枯草菌)
菌種(b1):Escherichia coli(NBRC 3972、分与機関 独立行政法人 製品評価技術基盤機構、大腸菌)
菌種(b2):Klebsiella pneumoniae(NBRC 13277、分与機関 独立行政法人 製品評価技術基盤機構、肺炎桿菌)
菌種(b3):Salmonella enterica(NBRC 3313、分与機関 独立行政法人 製品評価技術基盤機構、サルモネラ菌)
【0078】
[2.1.3]サンプル調製
実施例1-1~実施例2-9、参考例1~参考例6の抗菌性組成物を、121℃、20分の条件でオートクレーブ滅菌したLB培地に加えて、有効成分の最大濃度を1000ppmとした12段階の2倍希釈系列をマルチウェルプレート上に作製した。これにより、抗菌性組成物含有培地を得た。
MIC試験法(細菌)の「有効成分の最大濃度」とは、抗菌性組成物含有培地の総質量に対する、ジヨードメタン化合物(A)と第4級アンモニウム塩(B)の配合量から算出した抗菌性組成物含有培地中の合計(A+B)の質量の割合(質量%)を示す。
なお、実施例2-1~実施例2-3の抗菌性組成物において、有機溶媒としてのジメチルスルホキシドの濃度は、水溶液の抗菌性に対する溶媒の影響を少なくするために、最大4質量%とした。「ジメチルスルホキシドの濃度」とは、抗菌性組成物含有培地の総質量に対する、ジメチルスルホキシドの質量の割合(質量%)を示す。
【0079】
[2.1.4]菌液調製
供試菌種を121℃、20分の条件でオートクレーブ滅菌したLB培地に懸濁し、懸濁液のO.D.(Optical Density)が1.0~2.0となるように調製した。これにより、菌液を得た。
【0080】
[2.1.5]MIC測定(細菌)
抗菌性組成物含有培地の希釈系列各100μLに、表1~表5に記載の菌種の菌液を2μL接種し、18時間~24時間、35℃の条件で培養した。
目視により菌の発育を確認し、菌の発育のない最小希釈濃度をMIC値とした。抗菌性組成物含有培地が澄明である場合、菌の発育がないと判断した。測定結果を表1~表7に示す。
MIC試験(細菌)のMIC値の許容可能な範囲は、0.49ppm以上である。
【0081】
MIC試験(細菌)を計3回実施した。
3回のMIC試験(細菌)で実測されたMIC値が異なっていた場合、表1~表7において、3つのMIC値のうち最大値と最小値とを「最小値~最大値」の形式で記載した。例えば、表1中の「0.98~1.95」は、3回の試験のうち、MIC値の最小値が0.98ppm、MIC値の最大値が1.95ppmであったことを示す。
3回のMIC試験(細菌)のMIC値が異なっており、かつMIC値が測定範囲外にあるものがあり、数値を特定できない場合、3つのMIC値のうち最大値を「≦最大値」の形式で記載した。例えば、表1中の「≦0.49」は、3回の試験のうち、MIC値の最大値が0.49ppmであったことを示す。
【0082】
[2.2]MIC理論値(細菌)
下記式(2)に示すコルビーの式(Colby, S.R., Weeds, 第15巻, pp. 20-22, 1967年)によって、相乗効果の有無を検討した。詳しくは、各単剤(すなわち、ジヨードメタン化合物(A)及び第4級アンモニウム塩(B)の各々を含有する抗菌性組成物)の実測したMIC値を用いて、下記式(2)により、2剤混合(すなわち、ジヨードメタン化合物(A)及び第4級アンモニウム塩(B)を含有する抗菌性組成物)のMIC理論値を算出した。算出したMIC理論値を表1~表7に示す。
抗菌性組成物の実測したMIC値がMIC理論値よりも小さいことは、2剤混合の作用は、相加的な効果を超えていること、すなわち、相乗効果(すなわち、高い抗菌効果)が存在することを示す。
【0083】
式(2):MIC理論値=CA×混合比率(A/B)+CB×(1-混合比率(A/B))
【0084】
式(2)中、「CA」は、ジヨードメタン化合物(A)の単剤の実測されたMIC値を示す。「CB」は、第4級アンモニウム塩(B)の単剤の実測されたMIC値を示す。
【0085】
なお、表1中の実施例1-1~実施例1-11の2剤混合に対して、2つの単剤は参考例1及び参考例2である。表2中の実施例1-12~実施例1-20の2剤混合に対して、2つの単剤は参考例2及び参考例3である。表3中の実施例1-21~実施例1-29の2剤混合に対して、2つの単剤は参考例2及び参考例4である。表4中の実施例2-1~実施例2-3の2剤混合に対して、2つの単剤は参考例4及び参考例5である。表5中の実施例2-4~実施例2-6の2剤混合に対して、2つの単剤は参考例3及び参考例6である。表6中の実施例2-7~実施例2-9の2剤混合に対して、2つの単剤は参考例4及び参考例6である。
【0086】
実施例1-1~実施例1-11において、有効成分(ジヨードメチル-p-トリルスルホン及び塩化ベンザルコニウム)中の塩化ベンザルコニウムの割合に対する、黄色ブドウ球菌(a1)のMIC値及びMIC理論値を示すグラフを
図1に示す。
実施例1-12~実施例1-20において、有効成分(ジヨードメチル-p-トリルスルホン及び塩化ベンゼトニウム)中の塩化ベンゼトニウムの割合に対する、黄色ブドウ球菌(a1)のMIC値及びMIC理論値を示すグラフを
図2に示す。
実施例1-21~実施例1-29において、有効成分(ジヨードメチル-p-トリルスルホン及び塩化セチルピリジニウム)中の塩化セチルピリジニウムの割合に対する、黄色ブドウ球菌(a1)のMIC値及びMIC理論値を示すグラフを
図3に示す。
図1~
図3中、MIC値は、3つのMIC値の平均値を示す。
【0087】
[3]抗カビ効果の評価
抗菌性組成物の抗カビ効果を、MIC(Minimum Inhibitory Concentration、最小発育阻止濃度)試験法によって評価した。
【0088】
[3.1]MIC試験(カビ)
[3.1.1]培地及び界面活性剤溶液
MIC試験(カビ)では、下記のPDA(Potato Dextrose Agar)培地、PDB(Potato Dextrose Broth)培地、及び界面活性剤溶液を用いた。
PDA培地は、「Difco Potato Dextrose Agar」(ベクトン・ディッキンソン アンド カンパニー社製) 39gを1000mLの蒸留水に溶解し、エタノールで50mg/mLに希釈したクロラムフェニコール(富士フイルム和光純薬株式会社製、試薬特級)を1mL添加して、調製された培地である。
PDB培地は、「Difco Potato Dextrose Broth」(ベクトン・ディッキンソン アンド カンパニー社製) 24gを1000mLの蒸留水に溶解し、エタノールで50mg/mLに希釈したクロラムフェニコール(富士フイルム和光純薬株式会社製、試薬特級)を1mL添加して、調製された培地である。
界面活性剤溶液は、「塩化ナトリウム」(富士フイルム和光純薬株式会社製、試薬特級) 8.5g、「ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート」(富士フイルム和光純薬株式会社製、分子生物学用)0.5mL、蒸留水 1000mLに溶解して、調製された溶液である。
【0089】
[3.1.2]前培養
MIC試験(カビ)では、下記のカビ種(c1)を用いた。カビ種(c1)は、121℃、20分の条件でオートクレーブ滅菌したPDA培地を用いて25℃にて7日以上培養された供試カビ種である。
カビ種(c1):Aspergillus niger(NBRC 105649、分与機関 独立行政法人 製品評価技術基盤機構、黒コウジカビ)
【0090】
[3.1.3]サンプル調製
実施例1-3、実施例1-7、実施例1-11、実施例1-12.実施例1-16、実施例1-20、実施例1-21、実施例1-25、実施例1-29、参考例1、参考例2、参考例7及び参考例8の抗菌性組成物を、121℃、20分の条件でオートクレーブ滅菌したPDB培地に加えて、有効成分の最大濃度を100ppmとした11段階の2倍希釈系列を作製した。これにより、抗菌性組成物含有培地を得た。
MIC試験法(カビ)の「有効成分の最大濃度」とは、抗菌性組成物含有培地の総質量に対する、ジヨードメタン化合物(A)と第4級アンモニウム塩(B)の配合量から算出した抗菌性組成物含有培地中の合計(A+B)の質量の割合(質量%)を示す。
【0091】
[3.1.4]カビ液調製
供試カビ種を、121℃、20分の条件でオートクレーブ滅菌した界面活性剤溶液に懸濁し、ヘモサイトメーターを用いて胞子数が1×105/mL~100×105/mLとなるように調製した。これにより、カビ液を得た。
【0092】
[3.1.5]MIC測定(カビ)
調製した抗菌性組成物含有培地の希釈系列各2mLに、表7~表9に記載のカビ種のカビ液を100μL接種し、7日間、25℃の条件で、培養した。
目視によりカビの発育を確認し、カビの発育のない最小希釈濃度をMIC値とした。抗菌性組成物含有培地中にカビの菌糸が塊状となったものが目視で確認されない場合、カビの発育がないと判断した。測定結果を表7~表9に示す。
MIC試験(カビ)のMIC値の許容可能な範囲は、0.1ppm以上である。
【0093】
MIC試験(カビ)を計2回実施した。
2回のMIC試験(カビ)で実測されたMIC値が異なっていた場合、表7~表9において、表1~表6のMIC試験(細菌)の形式と同様の形式に記載した。
【0094】
[4]抗酵母効果の評価
抗菌性組成物の抗酵母効果を、MIC(Minimum Inhibitory Concentration、最小発育阻止濃度)試験法によって評価した。
【0095】
[4.1]MIC試験(酵母)
[4.1.1]培地及び界面活性剤溶液
MIC試験(酵母)では、下記のYM(Yeast-Mannitol)寒天培地を用いた。
YM寒天培地は、NBRC Medium No.108の作製方法に準拠して調製された培地である。詳しくは、YM寒天培地は「D(+)-グルコース」(富士フイルム和光純薬株式会社製、試薬特級) 10g、「Bacro Peptone」(ベクトン・ディッキンソン アンド カンパニー社製) 5g、「Bacto Malt Extract」(ベクトン・ディッキンソン アンド カンパニー社製) 3g、「Bacto Yeast Extract」(ベクトン・ディッキンソン アンド カンパニー社製) 3g、「寒天」(富士フイルム和光純薬株式会社製、試薬特級) 15gを1000mLの蒸留水に溶解して、調製された培地である。
【0096】
[4.1.2]前培養
MIC試験(酵母)では、下記の酵母種(d1)及び酵母種(d2)を用いた。酵母種(d1)及び酵母種(d2)の各々は、121℃、20分の条件でオートクレーブ滅菌したYM寒天培地を用いて、25℃、72時間培養された供試酵母種である。
酵母種(d1):Saccharomyces cerevisiae(NBRC 10217、分与機関 独立行政法人 製品評価技術基盤機構、パン酵母)
酵母種(d2):Candida albicans(NBRC 1385、分与機関 独立行政法人 製品評価技術基盤機構、カンジダ菌)
【0097】
[4.1.3]サンプル調製
実施例1-3、実施例1-7、実施例1-11、実施例1-12.実施例1-16、実施例1-20、実施例1-21、実施例1-25、実施例1-29、参考例1、参考例2、参考例7及び参考例8の抗菌性組成物を、121℃、20分の条件でオートクレーブ滅菌したPDB培地に加えて、有効成分の最大濃度を100ppmとした11段階の2倍希釈系列を作製した。これにより、抗菌性組成物含有培地を得た。
MIC試験法(酵母)の「有効成分の最大濃度」とは、抗菌性組成物含有培地の総質量に対する、ジヨードメタン化合物(A)と第4級アンモニウム塩(B)の配合量から算出した抗菌性組成物含有培地中の合計(A+B)の質量の割合(質量%)を示す。
【0098】
[4.1.4]酵母液調製
供試酵母種を121℃、20分の条件でオートクレーブ滅菌したPDB培地に懸濁し、ヘモサイトメーターを用いて胞子数が1×106/mL~2×106/mLとなるように調製した。これにより、酵母液を得た。
【0099】
[4.1.5]MIC測定試験(酵母)
抗菌性組成物含有培地の希釈系列各2mLに、表7~表9に記載の酵母種の酵母液を100μL接種し、72時間25℃の条件で培養した。
目視により酵母の発育を確認し、酵母の発育のない最小希釈濃度をMIC値とした。目視で確認できる大きさの酵母の集合体が見られない場合、酵母の発育がないと判断した。測定結果を表7~表9に示す。
MIC試験(酵母)のMIC値の許容可能な範囲は、0.1ppm以上である。
【0100】
MIC試験(酵母)を計2回実施した。
2回のMIC試験(酵母)で実測されたMIC値が異なっていた場合、表7~表9において、表1~表6のMIC試験(細菌)の形式と同様の形式に記載した。
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
表1~表9中、「(A)」はジヨードメタン化合物(A)を示し、「(B)」は第4級アンモニウム塩(B)を示し、「(C)」はシクロデキストリン誘導体(C)を示し、「(D)」は溶媒を示す。
表1~表6中、「S.aureus」は、黄色ブドウ球菌を示し、「B.subtilis」は、枯草菌を示し、「E.coli」は、大腸菌を示す。
表1~表3中、「K.pneumoniae」は、肺炎桿菌を示し、「S.enterica」は、サルモネラ菌を示す。
【0111】
表1~表6に示すように、実施例1-1~実施例2-9の抗菌性組成物は、ジヨードメタン化合物(A)と、第4級アンモニウム塩(B)とを含有する。
そのため、実施例1-1~実施例2-9では、
図1~
図3に示すように、実測された黄色ブドウ球菌(a1)に対するMIC値は、MIC理論値よりも低かった。つまり、相乗効果が存在し、黄色ブドウ球菌(a1)に対して参考例2よりも高い抗菌効果を示すことがわかった。
更に、実施例1-1~実施例2-9では、実測された枯草菌(a2)に対するMIC値は、MIC理論値よりも低かった。つまり、相乗効果が存在し、枯草菌(a2)に対して参考例2よりも高い抗菌効果を示すことがわかった。
これらの結果、実施例1-1~実施例2-9の抗菌性組成物は、ジヨードメタン化合物を単独で用いる場合に比べて、グラム陽性菌に対して高い抗菌効果を示すことがわかった。
【0112】
表1に示すように、実施例1-7~実施例1-10と、実施例1-1~実施例1-6及び実施例1-11との対比から、第4級アンモニウム塩が塩化ベンザルコニウム(B-1)を含み、かつ混合比率(A/B)が50/50~80/20であると、抗菌性組成物は、グラム陽性菌にのみならず、大腸菌(b1)に対しても高い抗菌効果を示すことがわかった。
【0113】
表3に示すように、実施例1-22~実施例1-27と、実施例1-21、実施例1-28及び実施例1-29との対比から、第4級アンモニウム塩が塩化セチルピリジニウム(B-3)を含み、かつ混合比率(A/B)が20/80以下であると、抗菌性組成物は、グラム陽性菌にのみならず、大腸菌(b1)に対しても高い抗菌効果を示す。
【0114】
表1に示すように、第4級アンモニウム塩が塩化ベンザルコニウム(B-1)を含み、かつ混合比率(A/B)が50/50であると、抗菌性組成物は、グラム陽性菌のみならず、グラム陰性菌(すなわち、大腸菌(b1)、肺炎桿菌(b2)及びサルモネラ菌(b3))に対しても高い抗菌効果を示すことがわかった。更に、表7に示すように、抗菌性組成物は、真菌(すなわち、黒コウジカビ(c1))に対して高い抗菌効果、及び酵母類(すなわち、パン酵母(d1)及びカンジダ菌(d2))に対して高い抗酵母効果を有することがわかった。
【0115】
実施例1-3、実施例1-7及び実施例1-11の抗菌性組成物は、MβCD(C-1)を含有する。実施例2-1~実施例2-3の抗菌性組成物は、MβCD(C-1)を含有しない。表1及び表4に示すように、実施例1-3、実施例1-7及び実施例1-11と、実施例2-1~実施例2-3とを混合比率(A/B)ごとに対比すると、実測された黄色ブドウ球菌(a1)及び枯草菌(a2)の各々に対するMIC値は、略同一であった。
実施例1-12、実施例1-16及び実施例1-20の抗菌性組成物は、MβCD(C-1)を含有する。実施例2-4~実施例2-6の抗菌性組成物は、MβCD(C-1)を含有しない。表2及び表5に示すように、実施例1-12、実施例1-16及び実施例1-20と、実施例2-4~実施例2-6とを混合比率(A/B)ごとに対比すると、実測された黄色ブドウ球菌(a1)及び枯草菌(a2)の各々に対するMIC値は、略同一であった。
実施例1-21、実施例1-25及び実施例1-29の抗菌性組成物は、MβCD(C-1)を含有する。実施例2-7~実施例2-9の抗菌性組成物は、MβCD(C-1)を含有しない。表3及び表6に示すように、実施例1-21、実施例1-25及び実施例1-29と、実施例2-7~実施例2-9とを混合比率(A/B)ごとに対比すると、実測された黄色ブドウ球菌(a1)及び枯草菌(a2)の各々に対するMIC値は、略同一であった。
これらの結果、MβCD(C-1)の存在は、グラム陽性菌に対して高い抗菌効果にほとんど影響がないことがわかった。