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特開2023-174142推測装置、モデル生成装置、推測方法、モデル生成方法、推測プログラム、モデル生成プログラム及び学習済みモデル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174142
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】推測装置、モデル生成装置、推測方法、モデル生成方法、推測プログラム、モデル生成プログラム及び学習済みモデル
(51)【国際特許分類】
   G16C 20/70 20190101AFI20231130BHJP
   C08L 23/10 20060101ALI20231130BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20231130BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
G16C20/70
C08L23/10
C08K3/013
C08K5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086828
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】505130112
【氏名又は名称】株式会社プライムポリマー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小池 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】内藤 彩乃
(72)【発明者】
【氏名】向田 志保
(72)【発明者】
【氏名】中橋 一誌
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB111
4J002DA016
4J002DG046
4J002DJ006
4J002DJ046
4J002DJ056
4J002DL006
4J002FD016
4J002FD207
4J002GT00
(57)【要約】
【課題】ポリプロピレンコンパウンドの材料の処方から、ポリプロピレンコンパウンドの物性を推測する。
【解決手段】推測対象のポリプロピレンコンパウンドの処方に関する処方情報を取得する取得部101と、取得部102により取得された処方情報を、ポリプロピレンコンパウンドの処方に関する処方情報から該ポリプロピレンコンパウンドの物性情報を推測するための学習済みモデルへ入力して、入力された処方情報に対応するポリプロピレンコンパウンドの物性情報を推測する推測部105と、を含む推測装置10が提供される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
推測対象のポリプロピレンコンパウンドの処方に関する処方情報を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記処方情報を、ポリプロピレンコンパウンドの処方に関する処方情報から該ポリプロピレンコンパウンドの物性情報を推測するための学習済みモデルへ入力して、入力された前記処方情報に対応する前記ポリプロピレンコンパウンドの物性情報を推測する推測部と、
を含む推測装置。
【請求項2】
推測対象のポリプロピレンコンパウンドの物性情報を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記物性情報を、ポリプロピレンコンパウンドの処方に関する処方情報から該ポリプロピレンコンパウンドの物性情報を推測するための学習済みモデルへ入力して、入力された前記物性情報に対応する前記ポリプロピレンコンパウンドの処方に関する処方情報を推測する推測部と、
を含む推測装置。
【請求項3】
前記処方情報は、ポリプロピレンの配合に関する情報、ポリプロピレンの識別に関する情報、添加剤の配合に関する情報、補強剤の配合に関する情報、造核剤の配合に関する情報を含む、請求項1又は請求項2に記載の推測装置。
【請求項4】
前記物性情報は、前記ポリプロピレンコンパウンドの物性に関する情報を含む、請求項1又は請求項2に記載の推測装置。
【請求項5】
学習用のポリプロピレンコンパウンドの処方に関する学習用処方情報と該学習用のポリプロピレンコンパウンドの物性情報との組み合わせを表す学習用データに基づいて、ポリプロピレンコンパウンドの処方に関する処方情報から該ポリプロピレンコンパウンドの物性情報を推測するための学習済みモデルを生成する学習部
を含むモデル生成装置。
【請求項6】
前記学習用処方情報は、ポリプロピレンの配合に関する情報、ポリプロピレンの識別に関する情報、添加剤の配合に関する情報、補強剤の配合に関する情報、造核剤の配合に関する情報を含む、請求項5に記載のモデル生成装置。
【請求項7】
前記物性情報は、前記ポリプロピレンコンパウンドの物性に関する情報を含む、請求項5又は6に記載のモデル生成装置。
【請求項8】
プロセッサが、
推測対象のポリプロピレンコンパウンドの処方に関する処方情報を取得し、
取得した前記処方情報を、ポリプロピレンコンパウンドの処方に関する処方情報から該ポリプロピレンコンパウンドの物性情報を推測するための学習済みモデルへ入力して、入力された前記処方情報に対応する前記ポリプロピレンコンパウンドの物性情報を推測する
処理を実行する、推測方法。
【請求項9】
プロセッサが、
推測対象のポリプロピレンコンパウンドの処方に関する物性情報を取得し、
取得した前記物性情報を、ポリプロピレンコンパウンドの処方に関する処方情報から該ポリプロピレンコンパウンドの物性情報を推測するための学習済みモデルへ入力して、入力された前記物性情報に対応する前記ポリプロピレンコンパウンドの処方情報を推測する
処理を実行する、推測方法。
【請求項10】
プロセッサが、
学習用のポリプロピレンコンパウンドの処方に関する学習用処方情報と該学習用のポリプロピレンコンパウンドの物性情報との組み合わせを表す学習用データに基づいて、ポリプロピレンコンパウンドの処方に関する処方情報から該ポリプロピレンコンパウンドの物性情報を推測するための学習済みモデルを生成する
処理を実行するモデル生成方法。
【請求項11】
コンピュータに、
推測対象のポリプロピレンコンパウンドの処方に関する処方情報を取得し、
取得した前記処方情報を、ポリプロピレンコンパウンドの処方に関する処方情報から該ポリプロピレンコンパウンドの物性情報を推測するための学習済みモデルへ入力して、入力された前記処方情報に対応する前記ポリプロピレンコンパウンドの物性情報を推測する
処理を実行させる、推測プログラム。
【請求項12】
コンピュータに、
推測対象のポリプロピレンコンパウンドの処方に関する物性情報を取得し、
取得した前記物性情報を、ポリプロピレンコンパウンドの処方に関する処方情報から該ポリプロピレンコンパウンドの物性情報を推測するための学習済みモデルへ入力して、入力された前記物性情報に対応する前記ポリプロピレンコンパウンドの処方情報を推測する
処理を実行させる、推測プログラム。
【請求項13】
コンピュータに、
学習用のポリプロピレンコンパウンドの処方に関する学習用処方情報と該学習用のポリプロピレンコンパウンドの物性情報との組み合わせを表す学習用データに基づいて、ポリプロピレンコンパウンドの処方に関する処方情報から該ポリプロピレンコンパウンドの物性情報を推測するための学習済みモデルを生成する
処理を実行させるモデル生成プログラム。
【請求項14】
ポリプロピレンコンパウンドの処方に関する処方情報から該ポリプロピレンコンパウンドの物性情報を推測するための学習済みモデルであって、
学習用のポリプロピレンコンパウンドの処方に関する学習用処方情報と該学習用のポリプロピレンコンパウンドの物性情報との組み合わせを表す学習用データに基づいて機械学習され、入力された前記処方情報に基づいて、前記ポリプロピレンコンパウンドの物性情報を出力するよう、コンピュータを機能させるための学習済みモデル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、推測装置、モデル生成装置、推測方法、モデル生成方法、推測プログラム、モデル生成プログラム及び学習済みモデルに関する。
【背景技術】
【0002】
機械学習を用いて、ポリマー等の有機化合物の物性を予測する技術が開示されている。特許文献1には、データベースから機械学習し、回帰モデルを作成し、その回帰モデルに所望の構造情報を入れると物性を出力するポリマーの物性予測装置の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2019/172280号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、構造情報を入れるとポリマーの物性を出力する技術は存在するが、ポリプロピレンコンパウンドの物性を、材料の処方から推測する技術は開示されていない。ポリプロピレンコンパウンドを実際に作製し、ポリプロピレンコンパウンドの物性を測定することは非常に手間である。
【0005】
本開示は、ポリプロピレンコンパウンドの材料の処方から、ポリプロピレンコンパウンドの物性を推測する推測装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある観点によれば、推測対象のポリプロピレンコンパウンドの処方に関する処方情報を取得する取得部と、前記取得部により取得された前記処方情報を、ポリプロピレンコンパウンドの処方に関する処方情報から該ポリプロピレンコンパウンドの物性情報を推測するための学習済みモデルへ入力して、入力された前記処方情報に対応する前記ポリプロピレンコンパウンドの物性情報を推測する推測部と、を含む推測装置が提供される。
【0007】
本開示の別の観点によれば、推測対象のポリプロピレンコンパウンドの物性情報を取得する取得部と、前記取得部により取得された前記物性情報を、ポリプロピレンコンパウンドの処方に関する処方情報から該ポリプロピレンコンパウンドの物性情報を推測するための学習済みモデルへ入力して、入力された前記物性情報に対応する前記ポリプロピレンコンパウンドの処方に関する処方情報を推測する推測部と、を含む推測装置が提供される。
【0008】
前記処方情報は、ポリプロピレンコンパウンドの原料の配合比率に関する情報、および各原料を識別する情報、性質に関する情報を含んでもよい。ポリプロピレンコンパウンドの原料は、ポリプロピレン、ゴム、充填剤、補強材、添加剤を含んでいてもよい。
【0009】
前記物性情報は、前記ポリプロピレンコンパウンドの物性に関する情報を含んでもよい。
【0010】
本開示の別の観点によれば、学習用のポリプロピレンコンパウンドの処方に関する学習用処方情報と該学習用のポリプロピレンコンパウンドの物性情報との組み合わせを表す学習用データに基づいて、ポリプロピレンコンパウンドの処方に関する処方情報から該ポリプロピレンコンパウンドの物性情報を推測するための学習済みモデルを生成する学習部を含むモデル生成装置が提供される。
【0011】
前記学習用処方情報は、ポリプロピレンコンパウンドの原料の配合比率に関する情報、および各原料を識別する情報、性質に関する情報を含んでもよい。ポリプロピレンコンパウンドの原料は、ポリプロピレン、ゴム、充填剤、補強材、添加剤を含んでいてもよい。
【0012】
前記物性情報は、前記ポリプロピレンコンパウンドの物性に関する情報を含んでもよい。
【0013】
本開示の別の観点によれば、プロセッサが、推測対象のポリプロピレンコンパウンドの処方に関する処方情報を取得し、取得した前記処方情報を、ポリプロピレンコンパウンドの処方に関する処方情報から該ポリプロピレンコンパウンドの物性情報を推測するための学習済みモデルへ入力して、入力された前記処方情報に対応する前記ポリプロピレンコンパウンドの物性情報を推測する処理を実行する、推測方法が提供される。
【0014】
本開示の別の観点によれば、プロセッサが、推測対象のポリプロピレンコンパウンドの処方に関する物性情報を取得し、取得した前記物性情報を、ポリプロピレンコンパウンドの処方に関する処方情報から該ポリプロピレンコンパウンドの物性情報を推測するための学習済みモデルへ入力して、入力された前記物性情報に対応する前記ポリプロピレンコンパウンドの処方情報を推測する処理を実行する、推測方法が提供される。
【0015】
本開示の別の観点によれば、プロセッサが、学習用のポリプロピレンコンパウンドの処方に関する学習用処方情報と該学習用のポリプロピレンコンパウンドの物性情報との組み合わせを表す学習用データに基づいて、ポリプロピレンコンパウンドの処方に関する処方情報から該ポリプロピレンコンパウンドの物性情報を推測するための学習済みモデルを生成する処理を実行するモデル生成方法が提供される。
【0016】
本開示の別の観点によれば、コンピュータに、推測対象のポリプロピレンコンパウンドの処方に関する処方情報を取得し、取得した前記処方情報を、ポリプロピレンコンパウンドの処方に関する処方情報から該ポリプロピレンコンパウンドの物性情報を推測するための学習済みモデルへ入力して、入力された前記処方情報に対応する前記ポリプロピレンコンパウンドの物性情報を推測する処理を実行させる、推測プログラムが提供される。
【0017】
本開示の別の観点によれば、コンピュータに、推測対象のポリプロピレンコンパウンドの処方に関する物性情報を取得し、取得した前記物性情報を、ポリプロピレンコンパウンドの処方に関する処方情報から該ポリプロピレンコンパウンドの物性情報を推測するための学習済みモデルへ入力して、入力された前記物性情報に対応する前記ポリプロピレンコンパウンドの処方情報を推測する処理を実行させる、推測プログラムが提供される。
【0018】
本開示の別の観点によれば、コンピュータに、学習用のポリプロピレンコンパウンドの処方に関する学習用処方情報と該学習用のポリプロピレンコンパウンドの物性情報との組み合わせを表す学習用データに基づいて、ポリプロピレンコンパウンドの処方に関する処方情報から該ポリプロピレンコンパウンドの物性情報を推測するための学習済みモデルを生成する処理を実行させるモデル生成プログラムが提供される。
【0019】
本開示の別の観点によれば、ポリプロピレンコンパウンドの処方に関する処方情報から該ポリプロピレンコンパウンドの物性情報を推測するための学習済みモデルであって、学習用のポリプロピレンコンパウンドの処方に関する学習用処方情報と該学習用のポリプロピレンコンパウンドの物性情報との組み合わせを表す学習用データに基づいて機械学習され、入力された前記処方情報に基づいて、前記ポリプロピレンコンパウンドの物性情報を出力するよう、コンピュータを機能させるための学習済みモデルが提供される。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、ポリプロピレンコンパウンドを実際に作製することなく、ポリプロピレンコンパウンドの材料の処方から、ポリプロピレンコンパウンドの物性を推測する推測装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】開示の技術の実施形態に係る推測システムの概略構成を示す図である。
図2】推測装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3】推測装置の機能構成の例を示すブロック図である。
図4】データ記憶部が記憶する学習用データの一例を示す図である。
図5】本実施形態に係る機械学習の目的変数の一例を示す図である。
図6】各目的変数のデータ数、データ密度、R(決定係数)、実験誤差平均値の例を示す図である。
図7】各目的変数のデータ数、データ密度、R(決定係数)、実験誤差平均値の例を示す図である。
図8】各目的変数のデータ数、データ密度、R(決定係数)、実験誤差平均値の例を示す図である。
図9】実測値と推測値との関係を示すグラフである。
図10】実測値と推測値との関係を示すグラフである。
図11】実測値と推測値との関係を示すグラフである。
図12】実測値と推測値との関係を示すグラフである。
図13】実測値と推測値との関係を示すグラフである。
図14】実測値と推測値との関係を示すグラフである。
図15】推測装置によるポリプロピレンコンパウンドの物性推測処理の流れを示すフローチャートである。
図16】推測装置によるポリプロピレンコンパウンドの処方情報推測処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一または等価な構成要素および部分には同一の参照符号を付与している。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0023】
図1は、本実施形態に係る推測システムの概略構成を示す図である。図1に示した推測システムは、ポリプロピレンコンパウンドの材料の処方から、ポリプロピレンコンパウンドの物性を推測する推測装置10を備えたシステムである。
【0024】
入力装置1は、外部から入力された情報を受け付ける。入力装置1は、例えばキーボード、マウス、又は外部装置からの入力を受け付ける入力装置等によって実現される。
【0025】
具体的には、入力装置1は、学習用データの入力を受け付ける。学習用データとしては、学習用のポリプロピレンコンパウンドの材料の処方の情報を表す学習用処方情報と、当該学習用のポリプロピレンコンパウンドの物性情報との組み合わせを表すデータである。処方情報は、材料の処方に関する情報、すなわち、ポリプロピレンコンパウンドの原料(ポリプロピレン、ゴム、充填剤、補強材、添加剤等)の配合比率に関する情報および各原料の種類、性質に関する情報を含んでもよい。なお本実施形態において、原料の種類の情報とは、各原料を識別する情報を指す。原料を識別する情報としては、例えば原料の識別番号がある。また、物性情報は、ポリプロピレンコンパウンドの物性に関する情報を含んでもよい。
【0026】
ポリプロピレンコンパウンドの原料は、通常、ポリプロピレン、ゴム、充填剤、補強材、添加剤を含み、それぞれ複数の種類を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
本実施形態におけるポリプロピレンとしては、プロピレン単独重合体(いわゆるホモポリプロピレン)、プロピレン単独重合部とプロピレン-コモノマー共重合により構成される樹脂(いわゆるブロックポリプロピレン)、プロピレン-コモノマー共重合体(いわゆるランダムポリプロピレン)等が挙げられる。適用されるコモノマーの例は、エチレン、ブテン、ヘキセン、オクテン等である。
【0028】
ポリプロピレン単独重合部のパラメータとしては、例えばmmmm分率(IPF)、分子量(M)、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、Z平均分子量(Mz)、Mw/Mn、Mz/Mw、MFR(メルトフローレート)などが挙げられる。
【0029】
プロピレン-コモノマー共重合部(いわゆるゴム部)のパラメータとしては、例えば、構成割合、融点、結晶化温度、ガラス転移温度、密度、組成(コモノマー種、含有量等)、硬度、粘度、極限粘度([η])、融解熱量、MFR(メルトフローレート)などが挙げられる。
【0030】
プロピレン単独重合部とプロピレン-コモノマー共重合を合わせた全体パラメータとしては、MFRなどが挙げられる。
【0031】
本実施形態におけるゴムを例示する。オレフィン系ゴムであるエチレン・プロピレン共重合体、エチレン・ブテン共重合体、エチレン・ヘキセン共重合体、エチレン・オクテン共重合体、プロピレン・ブテン共重合体、プロピレン・ヘキセン共重合体、プロピレン・オクテン共重合体、プロピレン・エチレン・ブテン共重合体などが本実施形態のゴムとして挙げられる。
【0032】
また、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)、アクリルゴム(ACM)、フッ素ゴム(FKM)、シリコーンゴム(Q)も、本実施形態のゴムとして挙げられる。
【0033】
ゴムのパラメータとしては、例えば、融点、結晶化温度、ガラス転移温度、密度、組成(コモノマー種、含有量等)、硬度、粘度、極限粘度([η])、融解熱量、MFR(メルトフローレート)などが挙げられる。
【0034】
本実施形態における充填剤を例示する。タルク、マイカ、パイロフィライト、モンモリロナイトなどが本実施形態における充填剤に挙げられる。充填剤のパラメータとしては、例えば、充填剤の種類、構造因子、粒子径、密度、比表面積、吸油量、白色度などが挙げられる。
【0035】
本実施形態における補強材を例示する。ガラス繊維、炭素繊維、硫酸マグネシウム無機繊維などが本実施形態における補強材として挙げられる。補強材のパラメータとしては、例えば、補強材の種類、構造因子、繊維長、繊維径、密度、比表面積、吸油量、白色度などが挙げられる。
【0036】
本実施形態における添加剤を例示する。核剤、酸化防止剤、透明化剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、分解剤、帯電防止剤、防曇剤、離型剤、難燃剤、色素、顔料などが本実施形態における添加剤に挙げられる。添加剤のパラメータとしては、例えば、添加剤の種類、構造因子などが挙げられる。
【0037】
また、入力装置1は、物性情報を推測する対象のポリプロピレンコンパウンドの材料の処方を表す処方情報(以下、単に「推測対象の処方情報」とも称する。)を受け付ける。
【0038】
推測装置10は、ポリプロピレンコンパウンドの材料の処方が入力されると、入力されたポリプロピレンコンパウンドの材料の処方を学習済みモデルに入れることで、ポリプロピレンコンパウンドの物性を推測する。推測装置10は、ポリプロピレンコンパウンドの材料の処方を推測するために、学習用データに基づいて、ポリプロピレンコンパウンドの処方に関する処方情報から該ポリプロピレンコンパウンドの物性情報を推測するための学習済みモデルを生成する。
【0039】
ポリプロピレンコンパウンドの材料の処方の組み合わせは膨大であり、所望の物性を有するポリプロピレンコンパウンドを得るまで多くの実験を行わなければならない。所望の物性を有するポリプロピレンコンパウンドを得るために、ポリプロピレンコンパウンドを何度も作製するのは非常に手間である。本実施形態の推測装置10は、機械学習によって、ポリプロピレンコンパウンドの材料の処方から当該ポリプロピレンコンパウンドの物性を推測するための学習済みモデルを生成する。
【0040】
そして、推測装置10は、その学習済みモデルに対して推測対象のポリプロピレンコンパウンドの材料の処方を表す処方情報を入力し、当該ポリプロピレンコンパウンドの物性を推測する。これにより、実際にポリプロピレンコンパウンドを作製しなくともポリプロピレンコンパウンドの材料の処方からポリプロピレンコンパウンドの物性を推測することができる。
【0041】
出力装置2は、推測装置10が推測したポリプロピレンコンパウンドの物性に関する情報を表示する。
【0042】
図2は、推測装置10のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0043】
図2に示すように、推測装置10は、CPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、ストレージ14、入力部15、表示部16及び通信インタフェース(I/F)17を有する。各構成は、バス19を介して相互に通信可能に接続されている。
【0044】
CPU11は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU11は、ROM12またはストレージ14からプログラムを読み出し、RAM13を作業領域としてプログラムを実行する。CPU11は、ROM12またはストレージ14に記録されているプログラムにしたがって、上記各構成の制御および各種の演算処理を行う。本実施形態では、ROM12またはストレージ14には、ポリプロピレンコンパウンドの材料の処方から当該ポリプロピレンコンパウンドの物性を推測するための学習済みモデルを生成する学習プログラム、及び、推測対象の処方情報からポリプロピレンコンパウンドの物性を推測する推測プログラムが格納されている。
【0045】
ROM12は、各種プログラムおよび各種データを格納する。RAM13は、作業領域として一時的にプログラムまたはデータを記憶する。ストレージ14は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)またはフラッシュメモリ等の記憶装置により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、および各種データを格納する。
【0046】
入力部15は、マウス等のポインティングデバイス、およびキーボードを含み、各種の入力を行うために使用される。
【0047】
表示部16は、たとえば、液晶ディスプレイであり、各種の情報を表示する。表示部16は、タッチパネル方式を採用して、入力部15として機能しても良い。
【0048】
通信インタフェース17は、他の機器と通信するためのインタフェースであり、たとえば、イーサネット(登録商標)、FDDI、Wi-Fi(登録商標)等の規格が用いられる。
【0049】
上記の学習プログラム及び推測プログラムを実行する際に、推測装置10は、上記のハードウェア資源を用いて、各種の機能を実現する。推測装置10が実現する機能構成について説明する。
【0050】
図3は、推測装置10の機能構成の例を示すブロック図である。
【0051】
図3に示すように、推測装置10は、機能構成として、取得部101、データ記憶部102、学習部103、学習済みモデル記憶部104、データ生成部105、推測部106、選択部107、説明変数生成部108、目的変数生成部109及び変数記憶部110を有する。各機能構成は、CPU11がROM12またはストレージ14に記憶された学習プログラム及び推測プログラムを読み出し、実行することにより実現される。
【0052】
取得部101は、入力装置1によって受け付けられた学習用データを取得する。そして、取得部101は、取得した学習用データをデータ記憶部102へ格納する。また、取得部101は、入力装置1によって受け付けられた推測対象の処方情報を取得する。
【0053】
データ記憶部102には、取得部101によって取得された学習用データを記憶する。図4は、データ記憶部102が記憶する学習用データの一例を示す図である。図4に示される例では、複数の学習用データがテーブル形式によって格納される。図4に示したように、学習用データは、ポリプロピレンコンパウンドの処方情報と、当該処方情報から生成される当該ポリプロピレンコンパウンドの物性情報とが組になっている。
【0054】
学習部103は、複数の学習用データに基づいて、ポリプロピレンコンパウンドの処方情報からポリプロピレンコンパウンドの物性情報を推測するための学習済みモデルを生成する。具体的には、学習部103は、複数の学習用データのうちの、学習用処方情報に対応する正解の学習用物性情報と、学習用処方情報を学習済みモデルへ入力することにより得られるポリプロピレンコンパウンドの物性情報との間の差異が小さくなるように、学習済みモデルを学習させる。正解の学習用物性情報は、処方情報に基づいて成したポリプロピレンコンパウンドに対する実験によって得られたデータを用いる。
【0055】
本実施形態では、学習部103は、推測対象となるポリプロピレンコンパウンドの物性に影響を及ぼすパラメータ、例えば配合されるポリプロピレンの種類、ポリプロピレンの配合割合、ポリプロピレンの性質、添加されるゴムの種類、ゴムの配合割合、タルクの種類、タルクの配合割合、造核剤の種類、造核剤の配合割合等を説明変数とし、ポリプロピレンコンパウンドのMFR(Melt Flow Rate)、引張降伏応力、引張弾性率、曲げ強度、曲げ弾性率、シャルピー強度等を目的変数として機械学習を行う。
【0056】
ポリプロピレンコンパウンドの処方情報からポリプロピレンコンパウンドの物性情報を推測するための学習済みモデルとしては、SVM(Support Vector Machine)、PLS(Partial Least Squares regression)、重回帰分析、SVM(support vector machine)、LASSO(least absolute shrinkage and selection operator)、リッジ回帰、エラスティックネット、ガウス過程、決定木、ランダムフォレスト、勾配ブースティング、又はニューラルネット等であってもよい。
【0057】
モデルの学習手法は特定のものに限定されるものでは無いが、例えば、学習部103は、複数の機械学習手法に基づいて学習済みモデルを学習させてもよい。具体的には、学習部103は、複数の機械学習手法の内、決定係数が最も高いものから上位複数個の手法を用いて、学習済みモデルを学習させてもよい。
【0058】
図5は、本実施形態に係る機械学習の目的変数の一例を示す図である。図5には、目的変数として、ポリプロピレンコンパウンドの物性のパラメータ、各パラメータの単位、及び変数範囲(下端、上端)の一例が示されている。本実施形態では、目的変数として、図5に示したように、ポリプロピレンコンパウンドのMFR、引張降伏応力、引張弾性率、曲げ強度、曲げ弾性率、シャルピー強度(温度23℃)、シャルピー強度(温度-30℃)、HDT(荷重たわみ温度、荷重0.45MPa及び1.8MPa)、比重、せん断粘度及びダイスウェル比(温度200℃、せん断速度122(1/s)及び6080(1/s))、ΔH(融解熱量)を用いている。
【0059】
これらの目的変数のほかに、例えば、高速面衝撃(最大衝撃力変位、エネルギー)、硬さ(ロックウエル、ブリネル、ビッカース、ヌープ、スーパーフィシャル、マイヤ、ジュロメータ、バーコール、モノトロン、マルテンス、ショア、モースなど)、成型収縮率(MD方向、TD方向、MD-TD平均など)、線膨張係数(MD方向、TD方向、MD-TD平均など)、光沢、引張伸び率、アイゾット衝撃強さ、スパイラルフロー長、フローマーク長、ウエルドライン長、耐傷つき性、圧縮応力、脆化温度、耐熱温度、熱分解温度、熱伝導率、屈折率、光線透過率、耐候性、体積抵抗率、耐電圧、誘電率、切削性、曲げ性、溶接性、接着性、耐薬品性、臭気性、等も目的変数として挙げられる。
【0060】
学習済みモデル記憶部104は、学習部103によって生成された学習済みモデルを記憶する。
【0061】
データ生成部105は、基準となるポリプロピレンコンパウンドの処方情報を変化させることにより複数の処方情報を生成する。基準となるポリプロピレンコンパウンドの処方情報は、取得部101が取得した推測対象の処方情報であってもよい。本実施形態では、データ生成部105により生成された複数の処方情報の中から、所定の基準を満たす処方情報が選択される。
【0062】
推測部106は、取得部101が取得した推測対象の処方情報、又は、データ生成部105が生成した処方情報を学習済みモデル記憶部104に格納された学習済みモデルへ入力し、処方情報に対応するポリプロピレンコンパウンドの物性情報を推測する。
【0063】
選択部107は、推測部106により推測された複数の物性情報から、所定の基準を満たす物性情報を選択する。所定の基準はユーザによって予め設定されうる。
【0064】
説明変数生成部108は、学習部103による機械学習において用いられる説明変数に対する圧縮を行う。学習部103での機械学習の際に、全ての情報を説明変数として用いると変数の数が多くなり、学習部103での学習に時間を要してしまう。例えば、3種類のポリプロピレンを配合してポリプロピレンコンパウンドを生成する場合、3種類のポリプロピレンのそれぞれのパラメータを説明変数として用いると情報量が多くなってしまう。
【0065】
そこで説明変数生成部108は、説明変数を圧縮してもよい。例えば、説明変数生成部108は、配合される材料、すなわち配合されるポリプロピレン及びゴムの重量の割合に応じて説明変数を圧縮する。説明変数生成部108は、配合されるポリプロピレン及びゴムの重量の割合に応じて説明変数を圧縮する際に、ポリプロピレン及びゴムの種類に応じた所定の重み付けを行ってもよい。
【0066】
目的変数生成部109は、ランダムサンプリングによって、説明変数及び目的変数の組み合わせを選択する。説明変数及び目的変数の組み合わせは複数通り選択される。目的変数生成部109によって選択された説明変数及び目的変数は、学習部103による機械学習に用いられる。変数記憶部110は、目的変数生成部109が選択した説明変数及び目的変数の関係を記憶する。
【0067】
単に、機械学習により学習済みモデルを作成しただけでは、目的変数から説明変数の値を予測する逆解析を行うことはできない。説明変数から目的変数の値を予測する場合、複数の説明変数から1つの目的変数を予測するように学習済みモデルが作られているが、その学習済みモデルに1つの目的変数を入れるだけでは、複数の説明変数の解析解を得ることができない。
【0068】
目的変数生成部109により、事前に説明変数及び目的変数のリストを作成しておき、目的変数が入れられた場合に、リストからフィルタリングして抽出することで、目的変数から説明変数の値を予測する逆解析を行うことが可能となる。逆解析を行うことにより、作製したいポリプロピレンコンパウンドの目標物性値から、その目標物性値を得るための材料処方を予測することができる。それにより、例えば複数種の物性項目において特定範囲の物性値が要求される場合に、効率的にポリプロピレンコンパウンドの材料処方を決定することができるようになる。
【0069】
本実施形態において適用する物性の数は1以上である。従来の手法では対象とする物性の数が多いほど予測の難易度が著しく高くなるため、本実施形態に係る推測処理の有効性が著しく高くなる。
【0070】
本実施形態における好適は物性の数は、3以上であり、より好ましくは6以上、さらに好ましくは10以上、さらに好ましくは15以上、さらに好ましくは20以上である。
【0071】
学習部103による学習済みモデルの機械学習の際の学習用データは適切に用意されることが望ましい。本実施形態では、機械学習の精度が高くなるようにデータの分布状態を決定する。言い換えれば、本実施形態では、データ密度を考慮したデータセットを準備する。データ密度とは、各目的変数に関して、解析の対象とする範囲におけるデータ数の割合であり、データ数/(データ範囲/データ範囲の中心値)により導出する。本実施形態において、各原料の選択可能な種類の数に特に制約はないが、ポリプロピレンは1以上100以下であり、通常は1以上10以下である。ゴム、充填剤、補強材、添加剤は0以上100以下であり、通常は0以上10以下である。実施例において適用した原料の種類の数は、ポリプロピレンは1~4種類、ゴムは0~2種類、タルクは0又は1種類、核剤は0又は1種類であるが、本開示における原料の種類、その数はこれに限定されるものではない。
【0072】
図6図8は、学習部103による学習済みモデルの機械学習を行った際の、学習用データの各目的変数のデータ数、データ密度、R(決定係数)、実験誤差平均値の例を示す図である。図6に示した表を実施例1、図7に示した表を実施例2、図8に示した表を実施例3とする。
【0073】
図9~11は、目的変数がシャルピー強度(温度23℃)の場合の、ポリプロピレンコンパウンドの実測値と推測部106により推測された値との関係を示すグラフである。それぞれのグラフは、横軸がポリプロピレンコンパウンドのシャルピー強度(温度23℃)の実測値、縦軸が推測部106により推測されたシャルピー強度(温度23℃)の値である。
【0074】
図9は、図7に示した実施例2の場合の、ポリプロピレンコンパウンドの実測値と推測部106により推測された値との関係である。図10は、図6に示した実施例1の場合の、ポリプロピレンコンパウンドの実測値と推測部106により推測された値との関係である。図11は、図8に示した実施例3の場合の、ポリプロピレンコンパウンドの実測値と推測部106により推測された値との関係である。
【0075】
図6図11を参照すると、目的変数がシャルピー強度の場合、データ数が増えれば増えるほど、またデータ密度が大きくなればなるほど、実験誤差平均値が低下するというわけではない。すなわち、目的変数がシャルピー強度の場合、最も実験誤差平均値が少ないのは実施例2の場合である。このように、目的変数によっては実験誤差平均値とデータ数及びデータ密度との関係が比例しないものがある。具体的には、シャルピー強度(温度23℃)の予測において好適なデータ密度の範囲は、25以上64以下であり、より好ましくは30以上55以下、さらに好ましくは35以上50以下である。またシャルピー強度(温度-30℃)の予測において好適なデータ密度の範囲は、30以上75以下であり、より好ましくは35以上60以下、さらに好ましくは、40以上50以下である。推測装置10は、当該範囲のデータ密度のデータセットを用いて学習させることで、他の範囲のデータ密度のデータセットを用いて学習させた場合と比べて精度良くシャルピー強度の推測を行うことができる。
【0076】
図12~14は、目的変数が引張弾性率の場合の、ポリプロピレンコンパウンドの実測値と推測部106により推測された値との関係を示すグラフである。それぞれのグラフは、横軸がポリプロピレンコンパウンドの引張弾性率の実測値、縦軸が推測部106により推測された引張弾性率の値である。
【0077】
図12は、図7に示した実施例2の場合の、ポリプロピレンコンパウンドの実測値と推測部106により推測された値との関係である。図13は、図6に示した実施例1の場合の、ポリプロピレンコンパウンドの実測値と推測部106により推測された値との関係である。図14は、図8に示した実施例3の場合の、ポリプロピレンコンパウンドの実測値と推測部106により推測された値との関係である。
【0078】
図6図8図12図14を参照すると、目的変数が引張弾性率の場合、データ数が増えれば増えるほど実験誤差平均値が低下することになる。すなわち、目的変数が引張弾性率の場合、最も実験誤差平均値が少ないのは実施例3の場合である。
【0079】
このように、目的変数、すなわちポリプロピレンコンパウンドの物性によって適切な学習データは異なる。従って、本実施形態に係る推測装置10は、所望の物性を得るために適切なデータ密度の学習用データを用意して学習部103に学習させることで、実際にポリプロピレンコンパウンドを製造することなく、処方情報からポリプロピレンコンパウンドの物性情報を推測することが出来る。
【0080】
なお、図1及び図2に示した例では、推測装置10において学習部103及び推測部106が設けられていたが、本開示は係る例に限定されない。機械学習処理を行う装置と、推測処理を行う装置とは、別の装置であってもよい。また、機械学習処理によって得られた学習済みモデルが格納される装置と、推測処理を行う装置とは、別の装置であってもよい。
【0081】
次に、推測装置10の作用について説明する。
【0082】
図15は、推測装置10によるポリプロピレンコンパウンドの物性推測処理の流れを示すフローチャートである。CPU11がROM12又はストレージ14から推測プログラムを読み出して、RAM13に展開して実行することにより、ポリプロピレンコンパウンドの物性推測処理が行なわれる。
【0083】
CPU11は、ステップS101において、推測対象のポリプロピレンコンパウンドの処方に関する処方情報を取得する。推測対象のポリプロピレンコンパウンドの処方に関する処方情報は、説明変数が圧縮された状態で取得されてもよい。
【0084】
続いてCPU11は、ステップS102において、取得した処方情報を学習済みモデルに入力する。
【0085】
続いてCPU11は、ステップS103において、ポリプロピレンコンパウンドの処方情報から得られる物性情報を学習済みモデルに推測させる。
【0086】
続いてCPU11は、ステップS104において、学習済みモデルが推測したポリプロピレンコンパウンドの物性情報を出力する。
【0087】
推測装置10は、一連の処理の実行により、学習済みモデルに対して推測対象のポリプロピレンコンパウンドの材料の処方を表す処方情報を入力し、当該ポリプロピレンコンパウンドの物性を推測する。これにより、推測装置10は、実際にポリプロピレンコンパウンドを製造して物性を測定することなく、ポリプロピレンコンパウンドの材料の処方情報からポリプロピレンコンパウンドの物性情報を推測することができる。
【0088】
推測装置10は、学習済みモデルを用いることで、ポリプロピレンコンパウンドの物性情報から処方情報を逆推測させることもできる。
【0089】
図16は、推測装置10によるポリプロピレンコンパウンドの処方情報推測処理の流れを示すフローチャートである。CPU11がROM12又はストレージ14から推測プログラムを読み出して、RAM13に展開して実行することにより、ポリプロピレンコンパウンドの処方情報推測処理が行なわれる。
【0090】
CPU11は、ステップS111において、ポリプロピレンコンパウンドの物性情報を取得する。
【0091】
続いてCPU11は、ステップS112において、取得した物性情報を学習済みモデルに入力する。
【0092】
続いてCPU11は、ステップS113において、ポリプロピレンコンパウンドの物性情報から得られるポリプロピレンコンパウンドの処方情報を学習済みモデルに推測させる。
【0093】
続いてCPU11は、ステップS114において、学習済みモデルが推測したポリプロピレンコンパウンドの処方情報を出力する。
【0094】
推測装置10は、一連の処理の実行により、学習済みモデルに対して処方情報の推測対象のポリプロピレンコンパウンドの物性情報を入力し、当該ポリプロピレンコンパウンドの処方情報を推測する。これにより、推測装置10は、ポリプロピレンコンパウンドの物性情報から、当該ポリプロピレンコンパウンドを製造するための処方情報を推測することができる。
【0095】
以上、添付図面を参照しながら本開示の実施形態について詳細に説明したが、本開示の技術的範囲はかかる例に限定されない。本開示の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらの変更例または修正例についても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0096】
また、上記実施形態において記載された効果は、説明的又は例示的なものであり、上記実施形態において記載されたものに限定されない。つまり、本開示に係る技術は、上記実施形態において記載された効果とともに、又は上記実施形態において記載された効果に代えて、上記実施形態における記載から、本開示の技術分野における通常の知識を有する者には明らかな他の効果を奏しうる。
【0097】
なお、上記各実施形態でCPUがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行したポリプロピレンコンパウンドの物性推測処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、ポリプロピレンコンパウンドの物性推測処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0098】
また、上記各実施形態では、ポリプロピレンコンパウンドの物性推測処理のプログラムがROMまたはストレージに予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。プログラムは、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の非一時的(non-transitory)記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0099】
また、上記実施形態におけるCPU11の動作は、1つのプロセッサによって成すのみでなく、物理的に離れた位置に存在する複数のプロセッサが、ネットワークを通じて協働して動作するものであってもよい。また上記実施形態における推測装置10は、インターネット上の1以上のサーバとして提供されていてもよい。
【符号の説明】
【0100】
1 入力装置
2 出力装置
10 推測装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16