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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174150
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 37/04 20060101AFI20231130BHJP
   B32B 3/24 20060101ALI20231130BHJP
   B23K 26/70 20140101ALN20231130BHJP
【FI】
B23K37/04 F
B32B3/24
B23K26/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086848
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】岡本 和也
(72)【発明者】
【氏名】奥出 竜基
【テーマコード(参考)】
4E168
4F100
【Fターム(参考)】
4E168BA02
4E168BA37
4E168BA56
4F100AB01A
4F100AB01B
4F100BA02
4F100DD11B
4F100DD27
4F100EC17
4F100EJ59
(57)【要約】
【課題】重ね合わされた金属板同士の当接部を溶接して積層体を製造する場合に、当接部を良好に溶接するための技術を提供する。
【解決手段】第1金属板と第2金属板との間に内部空間が形成された積層体の製造方法である。積層体の製造方法は、凹状の収容部内に第1金属板を収容し、第2金属板を第1金属板に重ね合わせつつ第2金属板により収容部の開口を閉塞することと、第1金属板と第2金属板とが重ね合わせられることにより形成された内部空間と、収容部の開口が閉塞されることにより形成された閉空間と、を減圧するとともに、第1金属板と第2金属板との当接部を溶接することと、を備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1金属板と第2金属板との間に内部空間が形成された積層体の製造方法であって、
凹状の収容部内に前記第1金属板を収容し、前記第2金属板を前記第1金属板に重ね合わせつつ前記第2金属板により前記収容部の開口を閉塞することと、
前記第1金属板と前記第2金属板とが重ね合わせられることにより形成された前記内部空間と、前記収容部の開口が閉塞されることにより形成された閉空間と、を減圧するとともに、前記第1金属板と前記第2金属板との当接部を溶接することと、
を備える、積層体の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の積層体の製造方法であって、
前記内部空間と外部とを連通する第1連通部、及び、前記閉空間と外部とを連通する第2連通部の双方を介して空気が吸引されることにより、前記内部空間と前記閉空間とが減圧される、積層体の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の積層体の製造方法であって、
前記第2金属板は、外周部が湾曲しており、
前記外周部が前記収容部の内面に当接することにより、前記収容部の開口が閉塞される、積層体の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の積層体の製造方法であって、
前記外周部は、前記収容部内の前記第1金属板側と反対側へ湾曲している向きで、前記収容部の内面に当接する、積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、金属板同士の間に内部空間が形成された積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属板同士の間に内部空間が形成された積層体の製造方法として、2枚の金属板を重ね合わせてこれらの当接部を溶接することにより、積層体を得る方法がある。このような方法では、当接部を良好に溶接するために、重ね合わされた2枚の金属板が当接部で密着していることが好ましい。
【0003】
金属板同士の密着力を高める方法としては、例えば、2枚の金属板を挟持治具により挟持する方法が挙げられる。しかし、挟持治具を用いた方法では、挟持治具の配置によって溶接可能な範囲に制限が生じ得る。
【0004】
そこで、例えば特許文献1では、2枚の金属板を重ね合わせてこれらの間に内部空間を形成し、当該内部空間を減圧することにより金属板同士の密着力を高める方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8-25068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、例えば金属板にうねりが生じている場合など、2枚の金属板を重ね合わせたときにこれらの間に隙間が生じる場合、特許文献1に記載の方法では、この隙間から外気が入ってしまい上記内部空間が減圧されづらいことが考えられる。上記内部空間が十分に減圧されない場合、金属板同士の密着力を高めることが難しく、金属板同士の当接部が良好には溶接されない可能性がある。
【0007】
本開示の一局面は、重ね合わされた金属板同士の当接部を溶接して積層体を製造する場合に、当接部を良好に溶接するための技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、第1金属板と第2金属板との間に内部空間が形成された積層体の製造方法である。積層体の製造方法は、次の(i)及び(ii)を備える。
【0009】
(i)凹状の収容部内に第1金属板を収容し、第2金属板を第1金属板に重ね合わせつつ第2金属板により収容部の開口を閉塞すること。
【0010】
(ii)第1金属板と第2金属板とが重ね合わせられることにより形成された内部空間と、収容部の開口が閉塞されることにより形成された閉空間と、を減圧するとともに、第1金属板と第2金属板との当接部を溶接すること。
【0011】
このような構成によれば、第1金属板と第2金属板との当接部における密着力を高めることができるため、当接部を良好に溶接することができる。
【0012】
本開示の一態様では、内部空間と外部とを連通する第1連通部、及び、閉空間と外部とを連通する第2連通部の双方を介して空気が吸引されることにより、内部空間と閉空間とが減圧されてもよい。
【0013】
このような構成によれば、第1金属板と第2金属板との接合強度を高めることができる。
【0014】
本開示の一態様では、第2金属板は、外周部が湾曲していてもよい。外周部が収容部の内面に当接することにより、収容部の開口が閉塞されてもよい。
【0015】
このような構成によれば、第1金属板と第2金属板との当接部における密着力を一層高めることができる。
【0016】
本開示の一態様では、外周部は、収容部内の第1金属板側と反対側へ湾曲している向きで、収容部の内面に当接してもよい。
【0017】
このような構成によれば、第1金属板と第2金属板との当接部における密着力をより一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】積層体の斜視図である。
図2図1のII-II断面図である。
図3】減圧装置の斜視図である。
図4】第1金属板及び第2金属板が配置された状態における減圧装置の上面図である。
図5図5Aは、配置工程を説明するための断面図である。図5Bは、配置工程における図5Aの次の状態を示す断面図である。
図6】溶接工程を説明するための断面図である。
図7】溶接工程を説明するための他の断面図である。
図8】第2金属板の変形例を説明するための断面図である。
図9】第2金属板の他の変形例を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
[1.積層体の構成]
図1及び図2に示す積層体1は、第1金属板20と第2金属板30との間に、冷媒を流す流路としての内部空間11が形成された冷却器である。積層体1は、全体として外形が板状である。内部空間11は、インレット端部12からアウトレット端部13まで途切れなく繋がっている。インレット端部12及びアウトレット端部13は、内部空間11と外部とを連通する連通部である。インレット端部12から内部空間11へ流入された冷媒は、内部空間11を流れてアウトレット端部13から外部へ流出される。そして、アウトレット端部13から流出された冷媒が、図示しない冷却部において冷却され、再びインレット端部12から内部空間11へ流入される。すなわち、内部空間11は、冷媒を循環させる流路として機能する。内部空間11と外部との連通部は、インレット端部12及びアウトレット端部13の2つのみである。
【0020】
積層体1は、例えば、電気自動車に搭載され、当該電気自動車の電池を冷却するために用いられる。具体的には、電気自動車において、積層体1は、第1金属板20が電池と対向し且つ接触するように配置される。内部空間11を流れる冷媒と電池との間で熱交換が行われることにより、電池が冷却される。
【0021】
積層体1が備える第1金属板20及び第2金属板30は、互いに積層され且つ接合されている。第1金属板20及び第2金属板30は、金属製の板状の部材である。本実施形態では、第1金属板20及び第2金属板30は、平面視における外形が長方形状である。
【0022】
第1金属板20は、平板状である。第1金属板20には、前述したインレット端部12及びアウトレット端部13としてそれぞれ機能する2つの貫通孔21が形成されている。2つの貫通孔21は、第1金属板20を板厚方向に貫通している。また、2つの貫通孔21のそれぞれは、後述する第2金属板30の溝部31と平面視において重なる位置に形成されている。
【0023】
第2金属板30は、第1金属板20との間に内部空間11を形成するための溝部31が成形された板状の部材である。第2金属板30は、平面視において、第1金属板20よりも一回り大きく形成されている。第2金属板30は、平面視において第1金属板20を包含するように第1金属板20に積層されている。そして、第2金属板30は、第1金属板20と当接する部分である当接部32において、第1金属板20に接合されている。溝部31は、第1金属板20により覆われている。溝部31と第1金属板20とにより画定される空間が、内部空間11に該当する。前述したように、内部空間11は、インレット端部12からアウトレット端部13まで途切れなく繋がっている。すなわち、溝部31は、インレット端部12として機能する第1金属板20の貫通孔21と対向する部分から、アウトレット端部13として機能する第1金属板20の貫通孔21と対向する部分まで、途切れなく繋がるように形成されている。
【0024】
また、本実施形態の第2金属板30は、平面視における外周部33が全周にわたって湾曲するように成形されている。外周部33は、第1金属板20側と反対側へ湾曲している。
【0025】
[2.積層体の製造方法]
積層体1の製造方法(具体的には、積層体1の製造方法の少なくとも一部を構成する積層体1の溶接方法)について、図3図7を用いて説明する。積層体1の製造方法は、配置工程と、溶接工程と、を備える。配置工程は、第1金属板20及び第2金属板30を減圧装置4に配置する工程である。溶接工程は、第1金属板20及び第2金属板30が減圧装置4に配置されている状態において、第1金属板20と第2金属板30との間に形成された内部空間11と、後述する閉空間56と、を減圧しつつ、第1金属板20と第2金属板30との当接部32を溶接する工程である。
【0026】
[2-1.減圧装置の構成]
まず、減圧装置4の構成について説明する。
図3に示すように、減圧装置4は、位置決め治具50と、少なくとも1つ(本実施形態では3つ)の真空ポンプ60と、を備える。なお、図面では、真空ポンプ60が模式的に示されている。
【0027】
位置決め治具50は、第1金属板20及び第2金属板30を位置決めするための治具である。位置決め治具50は、金属製である。位置決め治具50は、土台部51と、枠部52と、を備える。
【0028】
土台部51及び枠部52は、第1金属板20を収容するための凹状の収容部53を構成する。具体的には、土台部51が、収容部53の内面のうちの底面を構成する。本実施形態の土台部51は、直方体状である。土台部51の上面511は、平面状である。この上面511が、収容部53の底面を構成する。
【0029】
また、枠部52が、収容部53の内面のうちの側面を構成する。枠部52は、枠状の部材である。枠部52は、土台部51の上面511に配置されている。枠部52の内面521が、収容部53の側面を構成する。
【0030】
図4に示すように、本実施形態の枠部52の内形は、平面視において長方形状である。枠部52の内形は、平面視において、第1金属板20よりも一回り大きく構成されている。さらに、枠部52の内形は、第2金属板30の平面視における外形とほぼ同一の寸法に構成されている。言い換えれば、枠部52の内形は、第2金属板30が枠部52の内側に嵌まり込むような大きさに構成されている。
【0031】
後に詳述するように、配置工程では、収容部53内に第1金属板20が収容され、第2金属板30により収容部53の開口が閉塞される。そして、続く溶接工程では、配置工程において第1金属板20と第2金属板30との間に形成された内部空間11から空気が吸引される。このため、図5A及び図5Bに示すように、位置決め治具50には、少なくとも1つの第1連通部54が設けられている。第1連通部54は、位置決め治具50に第1金属板20及び第2金属板30が配置された場合に、これらの間に形成される内部空間11と外部とを連通する。
【0032】
具体的には、第1連通部54は、土台部51を上面511側から反対側の下面512側へ貫通する連結管を有する。当該連結管の外径は、前述した第1金属板20の貫通孔21の直径とほぼ同一に構成されている。当該連結管における土台部51の上面511側の端部は、土台部51の上面511から突出している。当該連結管における土台部51の下面512側の端部は、真空ポンプ60に接続されている。
【0033】
図3に示すように、本実施形態では、2つの第1連通部54が位置決め治具50に(より詳細には土台部51に)設けられている。2つの第1連通部54は、第1金属板20が収容部53内に収容された状態における第1金属板20の2つの貫通孔21に対応する位置に、それぞれ設けられている。ここでいう第1金属板20が収容部53内に収容された状態とは、より詳細には、第1金属板20の端面と収容部53の側面との間に全周にわたって間隔を空けて、第1金属板20が収容部53内に収容された状態を指す。
【0034】
後に詳述するように、溶接工程では、配置工程において収容部53の開口が閉塞されることにより形成された閉空間56からも空気が吸引される。このため、図7に示すように、位置決め治具50には、少なくとも1つの第2連通部55も形成されている。第2連通部55は、収容部53の開口が閉塞された場合に、閉空間56と外部とを連通する。
【0035】
具体的には、第2連通部55は、枠部52を内面521側から反対側の外面522側へ貫通する連結管を有する。当該連結管における枠部52の外面522側の端部は、真空ポンプ60に接続されている。図3に示すように、本実施形態では、1つの第2連通部55が位置決め治具50に(より詳細には枠部52に)設けられている。
【0036】
真空ポンプ60は、対象とする空間から空気を吸引することにより、当該空間を減圧することが可能なポンプである。
【0037】
[2-2.配置工程]
次に、積層体1の製造方法における配置工程について説明する。配置工程は、第1金属板20及び第2金属板30を減圧装置4に配置する工程である。
【0038】
配置工程では、まず、図5Aに示すように、第1金属板20を収容部53内に収容する。具体的には、第1金属板20の貫通孔21に第1連通部54を構成する連結管が挿入されるように、第1金属板20を収容部53内に収容する。これにより、第1金属板20は、収容部53の底面に対向する面が当該底面に当接し、端面が全周にわたって収容部53の側面から離間した状態になる。
【0039】
続いて、第2金属板30を収容部53内の第1金属板20に重ね合わせつつ、第2金属板30により収容部53の開口を閉塞する。前述したように、本実施形態の第2金属板30は、外周部33が湾曲している。そこで、本実施形態では、外周部33が第1金属板20側と反対側へ湾曲している向きで、第2金属板30を収容部53の内側に嵌め込むことにより、収容部53の開口を閉塞する。これにより、第2金属板30は、第1金属板20に対向する面が第1金属板20に当接し、外周部33が全周にわたって収容部53の内面に当接した状態になる。
【0040】
上記のようにして、第2金属板30が収容部53内の第1金属板20に重ね合わせられ、第2金属板30により収容部53の開口が閉塞されることにより、図5Bに示すように、第1金属板20と第2金属板30との間に内部空間11が形成される。さらに、閉空間56も形成される。閉空間56は、第1金属板20の端面と、第2金属板30と、収容部53の内面と、により画定される空間である。本実施形態では、第1金属板20の全周の端面が、収容部53の側面から離間している。このため、閉空間56は、第1金属板20の外周を囲むように一続きに形成される。
【0041】
[2-3.溶接工程]
次に、積層体1の製造方法において配置工程の後に行われる溶接工程について説明する。溶接工程は、配置工程において形成された内部空間11と閉空間56とを減圧しつつ、第1金属板20と第2金属板30との当接部32を溶接する工程である。
【0042】
溶接工程では、図6及び図7に示すように、真空ポンプ60を駆動し、第1連通部54及び第2連通部55を介して空気を吸引することにより、内部空間11及び閉空間56を減圧する。内部空間11及び閉空間56が減圧されることにより、第2金属板30が大気圧によって第1金属板20側へ押し付けられる。
【0043】
そして、内部空間11及び閉空間56から空気を吸引している状態で、第1金属板20と第2金属板30との当接部32に第2金属板30側からレーザLを照射し、当接部32を溶接する。これにより、第1金属板20と第2金属板30とが接合されて積層体1が得られる。
【0044】
[3.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(3a)溶接工程では、配置工程において形成された内部空間11及び閉空間56を減圧するとともに、第1金属板20と第2金属板30との当接部32を溶接する。
【0045】
このような構成によれば、内部空間11及び閉空間56が減圧されることにより、第2金属板30が大気圧によって第1金属板20側へ押し付けられる。ここで、例えば第1金属板20又は第2金属板30にうねりが生じている場合等には、第1金属板20及び第2金属板30における最も外側の当接部32において、第1金属板20と第2金属板30との間に部分的な隙間が生じることも考えられる。仮にこのような隙間が生じている場合でも、最も外側の当接部32を挟んだ両空間に該当する内部空間11及び閉空間56が共に減圧されるため、第2金属板30は、大気圧によって第1金属板20側へ押し付けられる。すなわち、最も外側の当接部32における隙間の有無によらず、第1金属板10と第2金属板30との当接部32における密着力を高めることができる。したがって、当接部32を良好に溶接することができる。
【0046】
(3b)溶接工程では、第1連通部54及び第2連通部55を介して空気を吸引することにより、配置工程において形成された内部空間11及び閉空間56を減圧する。
【0047】
このような構成によれば、最も外側の当接部32においても、当接部32を挟んだ一方側ではなく両側へ空気が吸引される。このため、第1連通部54及び第2連通部55のいずれか一方のみを介して空気を吸引する構成と比較すると、最も外側の当接部32において、溶接工程にてレーザLの照射により溶解した金属がより広範囲に広がりやすい。したがって、第1金属板20と第2金属板30との接合範囲を広げることができる。つまり、第1金属板20と第2金属板30との接合強度を高めることができる。
【0048】
さらに、最も外側の当接部32においても当接部32を挟んだ両側へ空気が吸引されることにより、この当接部32におけるブローホールの発生を低減することもできる。この点も、第1金属板20と第2金属板30との接合強度を高めることに寄与する。
【0049】
(3c)第2金属板30は、外周部33が湾曲するように成形されている。配置工程では、第2金属板30を収容部53の内側へ嵌め込む。第2金属板30の外周部33が収容部53の内面に当接することにより、収容部53の開口が閉塞される。
【0050】
このような構成によれば、第2金属板30の外周部33が湾曲していることから、外周部33の弾性力によって外周部33は一層強く収容部53の内面に当接する。したがって、内部空間11及び閉空間56の密閉性を高めることができる。内部空間11及び閉空間56がより減圧されやすくなるため、第1金属板10と第2金属板30との当接部32における密着力を一層高めることができる。
【0051】
(3d)配置工程では、外周部33が収容部53内の第1金属板20側と反対側へ湾曲している向きで、第2金属板30を収容部53の内側へ嵌め込み、第2金属板30の外周部33を収容部53の内面に当接させる。
【0052】
このような構成によれば、続く溶接工程において内部空間11及び閉空間56を減圧した際に、第2金属板30の外周部33の湾曲が開く方向へ大気圧が作用する。このため、第2金属板30の外周部33は、より一層強く収容部53の内面に当接する。したがって、第1金属板20と第2金属板30との当接部32における密着力をより一層高めることができる。
【0053】
(3e)本実施形態では、第1金属板20は、平板状である。第2金属板30は、溝部31が成形された板状の部材である。配置工程では、第1金属板20が収容部53内に収容される。そして、溶接工程では、収容部53の開口を閉塞している第2金属板30側からレーザLが照射され、第1金属板20と第2金属板30とが溶接される。
【0054】
レーザによる溶接では、レーザの照射面に、凹凸を有する照射痕(いわゆるビード)が生じてしまう場合がある。しかし、上記のような構成によれば、溶接工程において、レーザLは、第1金属板20側ではなく第2金属板30側から照射される。つまり、第1金属板20における照射痕の発生を抑制することができる。したがって、例えば積層体1が電池等の冷却用に用いられる場合に、冷却対象と接触する第1金属板20に照射痕を生じにくくすることができる。これにより、第1金属板20を冷却対象に密着させやすくすることができる。すなわち、積層体1による冷却効率を高めることができる。
【0055】
(3f)減圧装置4は、内部空間11に繋がる2つの真空ポンプ60と、閉空間56に繋がる1つの真空ポンプ60と、を備える。溶接工程では、このような別個の真空ポンプ60を用いて、内部空間11及び閉空間56のそれぞれから空気を吸引する。
【0056】
このような構成によれば、内部空間11から直接的に空気を吸引する真空ポンプ60と、閉空間56から直接的に空気を吸引する真空ポンプ60と、が互いに異なるため、内部空間11及び閉空間56それぞれの真空度を調整しやすくすることができる。
【0057】
(3g)第1連通部54を構成する連通管は、土台部51の上面511側の端部が土台部51の上面511から突出している。配置工程では、この連結管が第1金属板20の貫通孔21に挿入されるように、第1金属板20を収容部53内に収容する。
【0058】
このような構成によれば、配置工程において、第1金属板20を位置決めしやすくすることができる。そして、収容部53内における第1金属板20の位置をずれにくくすることができる。
【0059】
加えて、本実施形態では、第1連通部54を構成する連通管の外径が、第1金属板20の貫通孔21の直径とほぼ同一に構成されている。このため、溶接工程において第1連通部54を介して空気を吸引する際に、内部空間11をより効率的に減圧することができる。
【0060】
[4.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0061】
(4a)上記実施形態では、溶接工程において、第1連通部54及び第2連通部55の双方を介して空気を吸引することにより、内部空間11及び閉空間56を減圧する。しかし、必ずしも第1連通部54及び第2連通部55の双方を介して空気を吸引しなくてもよく、いずれか一方のみを介して空気を吸引することにより、内部空間11及び閉空間56を減圧してもよい。例えば、第1連通部54のみを介して空気を吸引することにより、内部空間11及び閉空間56を減圧してもよい。
【0062】
(4b)上記実施形態では、第2金属板30は、外周部33が第1金属板20側と反対側へ湾曲している。しかし、第2金属板の外周部の形状は、特に限定されない。
【0063】
例えば、図8に示す第2金属板30Aのように、外周部33Aが第1金属板20側へ湾曲していてもよい。この場合、配置工程では、外周部33Aが第1金属板20側へ湾曲している向きで、第2金属板30Aを収容部53Aの内面に当接させることにより、収容部53Aの開口を閉塞する。なお、図8に示す例では、第2金属板30Aを収容部53Aの内側へ嵌め込んだときに第2金属板30Aが収容部53A内の第1金属板20に当接するように、収容部53Aを構成する土台部51Aの形状が上記実施形態の土台部51と若干異なっている。具体的には、土台部51Aには、第2金属板30Aの外周部33Aと対向する位置に、溝部が形成されている。
【0064】
また例えば、図9に示す第2金属板30Bのように、外周部33Bが湾曲していなくてもよい。第2金属板30Bの外周部33Bが湾曲していない場合でも、枠部52の内形と第2金属板30Bの平面視における外形とをほぼ同一の寸法に構成することにより、配置工程において、第2金属板30Bの外周部33Bを収容部53の内面に当接させて収容部53を閉塞することが可能である。
【0065】
(4c)上記実施形態では、配置工程において、第1金属板20を収容部53内に収容し、第2金属板30により収容部53の開口を閉塞する。第1金属板20は、平板状である。第2金属板30には、溝部31が成形された板状の部材である。
【0066】
しかし、上記実施形態のように、平板状の金属板と溝部が成形された金属板とにより内部空間が形成される場合に、必ずしも平板状の金属板が収容部内に収容され、溝部が形成された金属板が収容部を閉塞しなくてもよい。例えば、収容部内に収容される金属板と収容部を閉塞する金属板とが逆であってもよい。
【0067】
(4d)上記実施形態では、第1金属板20及び第2金属板30は、いずれも平面視において長方形状である。そして、第1金属板20は、上記(4c)でも述べたように平板状である。第2金属板30には、溝部31が成形されている。
【0068】
しかし、第1金属板及び第2金属板の各形状は、特に限定されない。例えば、第1金属板及び第2金属板は、平面視において、正方形状、四角形状以外の多角形状、円形状等であってもよい。また例えば、第1金属板にも溝部が形成されていてもよい。そして、第1金属板と第2金属板との溝部同士により、内部空間が形成されてもよい。
【0069】
(4e)上記実施形態では、収容部53を構成する枠部52の内形は、平面視において長方形状である。しかし、枠部の内形、すなわち収容部の開口を形成する部材の内形は、長方形状に限定されず、収容部の開口を閉塞する金属板の外形に合わせて適宜変更される。
【0070】
(4f)上記実施形態では、収容部53は、土台部51及び枠部52の2つの部材により構成されている。しかし、収容部を構成する部材の数は特に限定されず、1つのみであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0071】
(4g)上記実施形態では、第1連通部54は、連通管を有する。当該連通管における土台部51の上面511側の端部は、土台部51の上面511から突出している。しかし、上記実施形態のように連通管が第1連通部を構成する場合、当該連通管は、必ずしも収容部の内面からその端部が突出するように配置されなくてもよく、例えば、収容部の内面とその端部とが同じ高さになるように配置されてもよい。
【0072】
(4h)上記実施形態では、減圧装置4は、3つの真空ポンプ60を備える。しかし、減圧装置が備える真空ポンプの数は、特に限定されない。
【0073】
例えば、減圧装置は、内部空間11に繋がる1つの真空ポンプと、閉空間56に繋がる1つの真空ポンプと、の計2つの真空ポンプを備えることにより、上記実施形態のような、内部空間11及び閉空間56から直接的に且つ別々に空気を吸引する構成を実現してもよい。また例えば、減圧装置は、内部空間11及び閉空間56の双方から直接的に空気を吸引する単一の真空ポンプを備えてもよい。
【0074】
また、これらの場合に、例えば、完成品の積層体1においてインレット端部12及びアウトレット端部13として機能する2つの貫通孔21の双方を介して内部空間11から空気が吸引されてもよいし、一方の貫通孔21が塞がれた状態でもう一方の貫通孔21のみを介して内部空間11から空気が吸引されてもよい。
【0075】
(4i)上記実施形態では、内部空間11及び閉空間56から空気が吸引されている状態で、第1金属板20と第2金属板30との当接部32にレーザLが照射される。このため、溶解した金属が空気の吸引方向に引き込まれ、レーザLの照射面に、凹みを有する照射痕が生じる可能性がある。そこで、上記実施形態のように第1金属板と第2金属板との当接部を溶接する手段としてレーザが採用される場合、レーザを照射する際に、溶接ワイヤや溶接棒といった溶接フィラー(溶加材)が使用されてもよい。このような構成によれば、レーザの照射面に、大きく凹んだ照射痕が生じることを抑制することができる。
【0076】
(4j)上記実施形態では、積層体1は冷却器であるが、積層体の用途は特に限定されない。例えば、積層体は、冷却に加えて又は代えて、加熱の用途に用いられてもよい。また例えば、積層体は、燃料タンクといった、内部空間に対象物を貯留する容器として用いられてもよい。内部空間の形状や広さは、積層体の用途に応じて適宜変更される。
【0077】
(4k)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。
【符号の説明】
【0078】
1…積層体、11…内部空間、20…第1金属板、30…第2金属板、31…溝部、32…当接部、33…外周部、4…減圧装置、50…位置決め治具、51…土台部、52…枠部、53…収容部、54…第1連通部、55…第2連通部、56…閉空間、60…真空ポンプ、L…レーザ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9