(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174199
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】噴霧装置
(51)【国際特許分類】
B05B 7/04 20060101AFI20231130BHJP
B05B 1/00 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B05B7/04
B05B1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086915
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100091524
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 充夫
(72)【発明者】
【氏名】大久保 直哉
【テーマコード(参考)】
4F033
【Fターム(参考)】
4F033AA05
4F033AA06
4F033AA09
4F033BA01
4F033BA02
4F033BA03
4F033BA04
4F033DA01
4F033EA01
4F033LA09
4F033NA01
4F033QA04
4F033QA05
4F033QA07
4F033QB02Y
4F033QB03X
4F033QB12Y
4F033QB13Y
4F033QB14X
4F033QB15X
4F033QB17
4F033QD02
4F033QD15
4F033QE05
4F033QE09
(57)【要約】
【課題】粒径の小さい液体を噴霧し、かつ噴霧時の騒音が小さな噴霧装置を提供する。
【解決手段】噴霧装置10を構成する、静音部55の平面部56に、対向する平面部56に向かって複数の突起80を備えることで、噴霧時に発生する気流の乱れを小さくし、騒音値を低減することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体と気体とを混合して前記液体を微粒化したミストを噴霧する二流体ノズルにおいて、
前記二流体ノズルは、前記微粒化された液体を噴出する噴出口の外側に静音部を備え、
前記静音部は、前記噴出口から噴出する前記微粒化された液体の噴出方向と平行な面を有する2つの平行な平面部を有し、前記平面部の互いに対向する面の外縁部に、前記対向する平面部に向かってそれぞれ突出する複数の突起を備える噴霧装置。
【請求項2】
前記対向する2つの平面部の最短距離が0.2mm以上でかつ1.0mm以下であり、前記突起の高さが0.1mm以上でかつ前記対向する平面部の最短距離の半分未満である、請求項1に記載の噴霧装置。
【請求項3】
前記突起が、前記対向する2つの平面部の中間平面に関して面対称である、請求項2に記載の噴霧装置。
【請求項4】
前記突起が、鋸刃状である、請求項3に記載の噴霧装置。
【請求項5】
前記液体の液体流路と前記気体の気体流路とを有する噴霧装置本体部と、
前記噴霧装置本体部の中心軸上にある円筒部の先端に配置されて、前記液体流路の開口を覆う液体導入部と、
前記噴霧装置本体部の先端に配置され、前記液体導入部を覆うとともに、前記気体流路の開口を覆う気液噴出部と、
前記液体導入部と前記気液噴出部との間に位置し、前記液体導入部と前記気液噴出部とに面接触する円環状の気体導入部と、
前記液体導入部で覆われた前記液体流路の前記開口と、前記液体導入部と前記気体導入部と前記気液噴出部とに囲まれた気液混合部とを連通した液体流入口と、
円環状の前記気体導入部の少なくとも1箇所に前記気体流路と前記気液混合部とを連通して設けられ、前記気体流路を流れる気体流を、前記液体流入口から前記気液混合部に流入する液体流に対し交差する方向に、前記気液混合部に流入させて液体を微粒化させる気体流入口とを備え、
前記噴出口は、前記気液噴出部に設けられて、前記気液混合部と連通し、前記気液混合部にて前記微粒化された液体を噴出する、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の噴霧装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体により液体を微粒化する二流体ノズル型式の噴霧装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体を微粒化するノズルは、空間又は物質の冷却装置、加湿装置、液薬散布装置、燃焼装置、又は、粉塵対策装置等に広く用いられている。この微粒化ノズルを大別すると、液体をより微細な孔より噴出して微粒化する一流体ノズルと、空気、窒素、又は蒸気等の気体を用い、液体を微粒化する二流体ノズルとに分類される。この一流体ノズルと二流体ノズルとでは、一般的に、二流体ノズルの方が、気体の持つエネルギーを用いて液体を微粒化するため、一流体ノズルよりも微粒化性能に優れるという特徴がある。
【0003】
液体を微粒化する二流体ノズルの例としては、例えば、特許文献1に記載された二流体ノズルがある。
【0004】
特許文献1に記載された二流体ノズルの噴霧装置310は、
図7に示すように、噴霧装置本体部310aと、内蓋部313と、外蓋部314とを少なくとも備えている。内蓋部313と円環部324と外蓋部314とで気液混合部315を構成している。噴霧装置310は、さらに、噴霧装置蓋固定部317を備えている。
【0005】
噴霧装置310は、内蓋部313の内側端面313a側より液体流を導入し、その液体流に交差するように気体流を気液混合部315に導入及び衝突させ、気液混合流体流が円環部324の内面を周回しつつ、噴出部316へ進むことにより、気液混合部315内で液体の微粒化を促進することができる。このことにより、気化が早くかつ濡れ等を感じない粒径の小さな液体を噴霧可能な噴霧装置を提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された前記従来の二流体ノズルの構成では、粒径が10μm以下に微粒化された液体を生成する際に必要な空気と水との衝突、又は、噴霧時に発生する噴流によって、大きな騒音が生じるという問題がある。液体の粒径を10μm以下にでき、かつ噴霧時の騒音を低減することができれば、屋内等の静かな環境での加湿、暑熱対策、又は空間演出として利用することができる。従来技術の二流体ノズルを前記の用途で利用する場合、騒音を遮蔽する、又は、ノズル噴霧位置を利用者から遠ざける等の騒音を低減するといった対策が必要となる。故に、従来技術ではノズルの利用場所又は用途が限定されるという問題を有している。
【0008】
本発明は、前記課題を解決するものであり、粒径の小さい液体を噴霧し、かつ噴霧時の騒音が小さな噴霧装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の1つの態様にかかる噴霧装置は、液体と気体とを混合して前記液体を微粒化したミストを噴霧する二流体ノズルにおいて、
前記二流体ノズルは、前記微粒化された液体を噴出する噴出口の外側に静音部を備え、
前記静音部は、前記噴出口から噴出する前記微粒化された液体の噴出方向と平行な面を有する2つの平行な平面部を有し、前記平面部の互いに対向する面の外縁部に、前記対向する平面部に向かってそれぞれ突出する複数の突起を備える。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明の前記態様にかかる噴霧装置によれば、微粒化された液体を噴出する噴出口の外側に静音部を備え、静音部は、液体噴出方向と平行な面を有する2つの平行な平面部の互いに対向する面の外縁部に、前記対向する平面部に向かってそれぞれ突出する複数の突起を備えている。このような構成により、静音部が無いときよりも噴霧装置周辺に多数の小さな乱流を突起で発生させることにより、噴霧時の騒音を抑制することができる。よって、粒径の小さい液体を噴霧し、かつ噴霧時に発生する騒音の小さい噴霧装置を提供することができ、より多様な用途に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態における噴霧装置の概略切断部端面図
【
図2A】静音部の平面部に複数の鋸歯状の突起を設けた気液噴出部の外観斜視図
【
図4】平面部に設けられた突起を平面部に対し平行に移動させた位置に形成した静音部を
図2AのA方向から見た矢視図
【
図6】平面部に複数の波状の突起を設けた静音部を
図2AのA方向から見た矢視図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
本発明の実施の形態は、気体を用いて液体を微粒化噴霧する噴霧装置10に関するものであり、前記気体としては、例えば、空気、窒素、酸素、又は、不活性ガス等が挙げられ、使用の目的に応じて適宜選定可能である。また、前記液体としては、例えば、水、オゾン水、殺菌及び除菌機能を有する薬液、塗料、又は、燃料油等が挙げられ、使用の目的に応じて適宜選定可能である。
【0014】
(実施の形態)
本発明の実施の形態を説明するにあたり、先に噴霧装置10の構成について説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態における噴霧装置10の断面図である。噴霧装置10は、噴霧装置本体部20と、液体導入部30と、気体導入部40と、気液噴出部50とを少なくとも備えている。液体導入部30と気体導入部40と気液噴出部50とで、気液混合部60を構成している。噴霧装置10は、さらに、気液噴出部固定部70を備えている。
【0016】
噴霧装置本体部20は、円柱状部材の中心部に中心軸11の方向沿いに配置された液体流路21と、液体流路21の周囲に間隔をおいて中心軸11の方向沿いに配置された円筒状の気体流路22とがそれぞれ形成されている。液体流路21と気体流路22とは、噴霧装置本体部20の一部として中央部に位置する円筒部23で区切られている。液体流路21は、先端側のみを図示しており、後端の図示しない液体供給口は、例えば、水供給管を介して、液槽に接続されたポンプなどに接続されている。気体流路22も、先端側のみを図示しており、後端の図示しない気体供給口は、例えば、気体供給管を介して、空気圧縮機からなる空圧源などに接続されている。
【0017】
円筒部23の先端は、円筒部23以外の噴霧装置本体部20より先端側に少し突出し、その先端に液体導入部30が固定されている。
【0018】
液体導入部30は、噴霧装置本体部20の先端に配置され、液体流路21の先端開口を覆いかつ平らな下流側端面の中央部から先端側に向けて円柱状に突出した凸部31を有する軸方向断面略Y字形状をなしている。液体導入部30の中心軸11から半径方向に離れた少なくとも1箇所に、例えば
図1では2箇所は中心軸11の方向に貫通する液体流入口32が形成されている。
【0019】
液体流入口32は、液体導入部30の端面に中心軸11沿いに貫通した穴で構成され、液体流路21を流れる液体流61を液体流入口32の穴を通して気液混合部60に流入させる。液体流入口32は、例えば、気液混合部60の上流側で、円環状の気体導入部40の円形貫通穴42内に連通しかつ円形貫通穴42の内周面43の近傍に位置した貫通穴で構成される。この液体流入口32の貫通穴は少なくとも1個配置され、一例としては、180度間隔をあけて2個配置される。これらの液体流入口32の貫通穴で、液体導入部30で覆われた液体流路21の開口と、液体導入部30と気体導入部40と気液噴出部50とに囲まれた気液混合部60とを連通させて、液体流路21を流れる液体を気液混合部60に流入させている。
【0020】
気体流入口41は、円環状の気体導入部40の少なくとも1箇所に気体流路22と気液混合部60とを隙間41aを介して連通して設けられ、気体流路22を流れる気体流62を、液体流入口32から気液混合部60に流入する液体流61に対し交差する方向に、気液混合部60に流入させて液体を微粒化させる。
【0021】
さらに、円柱状の凸部31は、液体導入部30の下流側端面に、気液混合部60に中心軸11沿いに突出して設けられている。凸部31は液体流入口32よりも中心軸側に配置されているが、特に無くてもよい。
【0022】
気液噴出部50は、断面略Ω形状の部材で、噴霧装置本体部20の先端に配置され、液体導入部30と気体導入部40を覆うとともに、気体流路22を覆うことにより、円筒状の外形の隙間41aを形成している。よって、気体導入部40は、中心軸沿いに、気液噴出部50と液体導入部30との間で挟持されて固定されている。なお、気体導入部40と液体導入部30とは、別部材として説明しているが、これに限られるものではなく、1つの部材として一体的に構成されていてもよい。
【0023】
さらに、気液噴出部50の先端部51の中央部には、気液混合流体を流出させる管状流路53と、管状流路53と連通して、気液混合流体を噴出させる噴出口52が形成されている。先端部51の内面には、管状流路53と連通して先すぼまりの円錐台状の整流路54が形成されている。
【0024】
また、気液噴出部50の噴出口52の外側には、静音部55が形成されている。静音部55は、噴霧時の騒音を小さくする部分であり、後述するように、静音部55が無いときよりも噴霧装置周辺に多数の小さな乱流を発生させるものである。このため、少なくとも、静音部55には、噴出方向である中心軸11に対し平行な面を有する2つの平行な平面部56が形成されて、噴出口52から噴出する気液混合流体が2つの平行な平面部56の間を通るようにしている。平面部56の互いに対向する面の外縁部、例えば中心軸11沿いの外縁部及び中心軸11と交差する方向沿いの外縁部には、噴出方向と交差する方向に突出し、かつ、対向する平面部56に向かってそれぞれ突出する複数の突起80を形成している。2つの平行な平面部56は、上下に配置しても、左右に配置しても、又は、上下左右に対して斜めに配置してもよい。
【0025】
気液噴出部固定部70は、気液噴出部50を噴霧装置本体部20の端面との間に挟持して固定している。なお、気液噴出部固定部70を無くして、気液噴出部50が、直接、噴霧装置本体部20の端面に固定されるようにしてもよい。
【0026】
このような構成において、
図1に示すように、噴霧装置10に供給された液体は、噴霧装置本体部20に対して、図示しない液体供給口から装置先端側に液体流路21を流れて液体流61となる。その液体流61は、液体導入部30内の液体流入口32を通って、気液混合部60に供給される。また、噴霧装置10に供給された気体は、噴霧装置本体部20に対して、図示しない気体供給口から装置先端側に気体流路22を流れて気体流62となる。その気体流62は、気体流入口41を通って、気液混合部60に供給される。
【0027】
気液混合部60に対して気体流62と液体流61とが供給されると、気液混合部60内で互いに混合され、液体が微粒化された後に、気液噴出部50に設けられた噴出口52から混合されて微粒化された液体を噴霧装置10の外側に噴出する。
【0028】
比較のため、まず、本実施の形態における噴霧装置10から静音部55を取り外した状態で騒音を測定したのち、次に、静音部55を取り付けた状態で騒音を測定する。
【0029】
本実施の形態における噴霧装置10は、一例として、具体的には、気液混合部60が内径6.0mm、高さ1.9mmの円筒形状である。気液噴出部50の噴出口52は直径0.8mmであり、管状流路53は直径1.0mm、長さ1.0mmであり、円錐台形状の整流路54は広い方の面の直径3.0mm、狭い方の面が直径0.8mm、長さが2.7mmであり、平面部56の平面部幅が2.2mm、平面部高さが1.5mmである。液体流入口32は直径0.6mmであり、気体流入口41は幅2.0mm、高さ1.1mmの矩形断面形状であり、中心軸11に関して対称な位置の2箇所に形成されている。
【0030】
この噴霧装置10に対し、液体の例として水を25mL/minで供給し、気体の例として圧縮空気を、微粒化した水のザウター平均粒径が6.0μmとなるように供給した。微粒化した水のザウター平均粒径はレーザー回折法にて評価を行っており、レーザー回折法の測定距離は噴霧装置10の先端から100mmの位置とした。また、この条件での騒音値を噴霧装置10の先端から1000mmの位置で、騒音計で測定したところ、66.3dB(A特性)であった。
【0031】
なお、ザウター平均粒径とは、全粒子の全表面積に対する全粒子の全体積と同じ表面積対体積率を有する粒子径を指す。直径di の粒子がni個ある場合、ザウター平均粒径(D32と表記される場合が多い)は、次式で与えられる。
【0032】
D32 = Σnidi3/Σ nidi2
前記構成から成る噴霧装置10は、微粒化された気液混合流体が噴出口52から噴出される際に、噴出される高速の気液混合流体と外気との間の摩擦によって、気液混合流体と外気との間に乱流が形成される。これが噴霧時に発生する騒音の原因の一つとなっていると考えられる。
【0033】
図2Aは、静音部55の2つの対向する平面部56に、複数の三角形山状の鋸歯状の突起80を設けた気液噴出部50の外観斜視図である。
図2Bは、
図2Aに示す静音部55を
図2AのA方向から見た矢視図である。
図2Cは、
図2Bに示すC-C線で切断した切断端面図である。
図2Bと
図2Cに示すように、平面部56の噴出方向(例えば
図2Cでは下から上への方向)の外縁部及び噴出方向と交差する交差方向(例えば
図2Cでは左右方向)の外縁部に、対向する平面部56に向かって複数の突起80を設ける。また、突起80は対向する2つの平面部56の中間平面、すなわち
図2BのC-C線で切断した平面に関して面対称となるよう2つの平面部56に設ける。
【0034】
前記構成により、噴霧装置周辺に多数の小さな乱流を発生させる。この結果、大きな乱流により大きな騒音を発生させるのではなく、突起80による多数の小さな乱流を発生させて、全体として、発生する音を小さくすることができ、騒音を低減することができる。
【0035】
本実施の形態では、具体的な例として、突起高さ81が0.2mmであり、突起幅82が0.5mmである突起80を平面部56の外縁部に、対向する平面部56に向かって複数設けた。前記構成の静音部55を組み込んだ噴霧装置10に対し、前記条件と同様の条件で測定を行ったところ、騒音値は64.1dB(A特性)となり、突起80を設けない構成と比較し、-2.2dB(A特性)の騒音低減効果が確認された。
【0036】
突起80の突起高さ81と噴霧に伴う騒音値との相関関係を
図3に示す。突起80の突起高さ81が増加するに従い騒音値が減少し、0.1mm以上のとき大きな騒音低減効果が確認された。また、一方で、突起高さ81が、静音部55の対向する2つの平面間の最短距離の半分以上であると、微粒化された気液混合流体が通過する十分な流路面積が得られず、正常な噴霧が行えない。
【0037】
以上より、突起高さ81は0.1mm以上でかつ対向する2つの平面部56間の最短距離の半分未満であることが好ましい。
【0038】
図4は、前記実施の形態の変形例にかかる静音部55Bを
図2AのA方向から見た矢視図である。この静音部55Bは、平面部56に突起80を設ける位置に関して、対向する2つの平面部56の中間平面に関して面対称ではなく、片側の1つの平面部56に設けられた突起80を、平面部56に対し平行に移動させた位置に形成している。ここで突起80を平行に移動させた位置までの距離を突起移動距離83と呼称する。本変形例では、一例として、突起移動距離83を、突起幅82の4分の1にあたる0.125mm、突起幅82の2分の1にあたる0.25mmと変化させた。
【0039】
前記構成の静音部55Bを組み込んだ噴霧装置10に対し、前記条件と同様の条件で測定を行った。突起移動距離83を変化させた場合の突起80の突起高さ81と噴霧に伴う騒音値との相関関係を
図5に示す。
【0040】
突起移動距離83が0mmの場合に騒音低減効果は最大となるが、突起移動距離83が0.125mm、0.25mmいずれの場合も最大-1.5dB(A特性)程度の騒音低減効果が確認された。
【0041】
以上より、平面部56に突起80を設ける位置は、面対称であるのが最も効果が高いが、平面部56に対し平行に移動させた場合にも騒音低減効果はあるといえる。
【0042】
図6は、前記実施の形態の別の変形例にかかる静音部55Cにおいて、2つの対向する平面部56の外縁部に、複数の波状の突起80Cを設けた気液噴出部50を
図2AのA方向から見た矢視図である。
【0043】
具体的には、突起高さ81が0.2mmであり、突起幅82が0.5mm、波の山部の円弧の径84が0.1mm、波の谷部の円弧の径85が0.16mmである前記突起80Cを二つの平行な平面部56の外縁部に、対向する平面部56に向かって複数設けた。
【0044】
前記構成の静音部55Cを組み込んだ噴霧装置10に対し、前記条件と同様の条件で測定を行ったところ、騒音値は64.6dB(A特性)となり、突起80Cを設けない構成と比較し、-1.7dB(A特性)の騒音低減効果が確認された。
【0045】
以上より、平面部56の外縁部に設ける複数の突起80は鋸歯状であることがより好ましいが、波状の突起80Cであっても十分な騒音低減効果があるといえる。
【0046】
なお、この静音部55、55B、55Cは上記実施の形態で説明した二流体ノズル以外の他のミストノズルの先端に付けても静音効果があると考えられる。
【0047】
前記実施の形態及びその変形例にかかる噴霧装置10によれば、微粒化された液体を噴出する噴出口52の外側に静音部55、55B、55Cを備え、静音部55、55B、55Cは、液体噴出方向と平行な面を有する2つの平行な平面部56の互いに対向する面の外縁部に、対向する平面部56に向かってそれぞれ突出する複数の突起80、80Cを備えている。このような構成により、静音部55、55B、55Cが無いときよりも噴霧装置周辺に多数の小さな乱流を突起80、80Cで発生させることにより、噴霧時の騒音を抑制することができる。よって、粒径の小さい液体を噴霧し、かつ噴霧時に発生する騒音の小さい噴霧装置10を提供することができ、より多様な用途に利用することができる。
【0048】
なお、前記様々な実施の形態又は変形例のうちの任意の実施の形態又は変形例を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。また、実施の形態同士の組み合わせ又は実施例同士の組み合わせ又は実施の形態と実施例との組み合わせが可能であると共に、異なる実施の形態又は実施例の中の特徴同士の組み合わせも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の前記態様にかかる噴霧装置は、液体を微細かつ低騒音で噴霧可能な噴霧装置であり、この噴霧装置は、空間又は物質の冷却、加湿、薬液噴霧、燃焼、又は、空間演出等に広く用いることができる。
【符号の説明】
【0050】
10 噴霧装置
11 中心軸
20 噴霧装置本体部
21 液体流路
22 気体流路
23 円筒部
30 液体導入部
31 凸部
32 液体流入口
40 気体導入部
41 気体流入口
41a 隙間
42 気体導入部の円形貫通穴
43 気体導入部の円形貫通穴の内周面
50 気液噴出部
51 先端部
52 噴出口
53 管状流路
54 整流路
55、55B、55C 静音部
56 平面部
60 気液混合部
61 液体流
62 気体流
70 気液噴出部固定部
80、80C 突起
81 突起高さ
82 突起幅
83 突起移動距離
84 波の山部の径
85 波の谷部の径