(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174216
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】重大事故判定装置、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20231130BHJP
G21D 3/04 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
G05B23/02 301X
G21D3/04 B
G21D3/04 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086953
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平川 大介
(72)【発明者】
【氏名】加藤 貴久
(72)【発明者】
【氏名】柴田 学
【テーマコード(参考)】
3C223
【Fターム(参考)】
3C223AA03
3C223BA01
3C223BB17
3C223CC01
3C223EB01
3C223FF22
3C223FF23
3C223FF26
3C223FF35
3C223FF45
3C223GG01
3C223HH03
3C223HH08
3C223HH13
(57)【要約】
【課題】プラントの重大事故につながる緊急事態の状況判断の精度を高め、信頼性を向上させた重大事故判定技術を提供する。
【解決手段】
重大事故判定装置10は、プラント11の事故に起因して発生する事象を分類21し進展する事象の状況をレベル区分22し定義した判断基準25を保持するデータベース20と、プラント11のプロセス値30を判断基準25に関連付けてデータ保持部15に保持させる関連付け部12と、プロセス値30に基づいて判断基準25に到達したか否かを判定する判定部16と、判断基準25に到達した事象の分類21及び状況のレベル区分22を出力し表示させる出力部17と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラント事故に起因して発生する事象を分類し、進展する前記事象の状況をレベル区分し、定義した判断基準を保持するデータベースと、
プラントのプロセス値を前記判断基準に関連付けてデータ保持させる関連付け部と、
前記プロセス値に基づいて前記判断基準に到達したか否かを判定する判定部と、
前記判断基準に到達した前記事象の前記分類及び前記状況の前記レベル区分を出力し表示させる出力部と、を備える重大事故判定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の重大事故判定装置において、
前記判断基準が未到達である場合、到達する時間を推定する推定部を備える重大事故判定装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の重大事故判定装置において、
前記出力に基づいて、前記事象を前記分類の別にタイル表示し、
前記判断基準に到達した場合、対応する前記レベル区分に切り替えてタイル表示する重大事故判定装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の重大事故判定装置において、
共通の前記事象で異なる前記レベル区分で定義された前記判断基準の各々に到達したか否かについて、
関連付けた前記プロセス値及び前記判断基準を論理接続し、
前記事象の進展方向に沿ってツリー表示した重大事故判定装置。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の重大事故判定装置において、
プラントの重大事故シミュレータで前記判断基準を到達させた結果に基づいて、
前記判断基準に関連付けする前記プロセス値及び前記判定に用いる条件パラメータを設定する重大事故判定装置。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載の重大事故判定装置において、
前記判断基準は、原子力発電所の緊急時活動レベルが適用される重大事故判定装置。
【請求項7】
プラント事故に起因して発生する事象を分類し、進展する前記事象の状況をレベル区分し、定義した判断基準をデータベースに保持するステップと、
プラントのプロセス値を前記判断基準に関連付けてデータ保持させるステップと、
前記プロセス値に基づいて前記判断基準に到達したか否かを判定するステップと、
前記判断基準に到達した前記事象の前記分類及び前記状況の前記レベル区分を出力し表示させるステップと、を含む重大事故判定方法。
【請求項8】
コンピュータに、
プラント事故に起因して発生する事象を分類し、進展する前記事象の状況をレベル区分し、定義した判断基準をデータベースに保持するステップ、
プラントのプロセス値を前記判断基準に関連付けてデータ保持させるステップ、
前記プロセス値に基づいて前記判断基準に到達したか否かを判定するステップ、
前記判断基準に到達した前記事象の前記分類及び前記状況の前記レベル区分を出力し表示させるステップ、を実行させる重大事故判定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、プラントに発生した重大事故を判定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力プラントで事故が発生した際は、設備の監視/制御を行う中央制御室の他に、対策の立案・意思決定を行う緊急時対策所及び後方支援を行う電力会社本店等のオフサイトが、相互に情報共有し対応にあたる。これら各所でプラントデータの監視が必要となるが、必要とする情報の粒度はそれぞれにおいて異なる。過度に詳細な情報提供は、意思決定の阻害要因になる。このため各所の目的に応じて監視画面の表示方法を最適化する必要がある。
【0003】
そのような事故発生時における緊急時対策所及び原子力防災管理者の重要な役割として、EAL(Emergency Action Level:緊急時活動レベル)の通報がある。原子力発電所の緊急時対策指針(JEAG-4102-201X)では、原子力防災管理者は判断したEALを、直ちに国や規制庁、地方自治体等に通知することになっている。しかしEALは、判断条件が多岐に渡る(警戒事態:13種、施設緊急事態:25種、全面緊急事態:24種)。このためEAL判断は、過酷事故の状況にあっても、システマチックに運用される必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のようにEAL判断がシステマチックに運用されることで、ヒューマンエラーの削減、効率的な情報共有・ユーザ判断が期待できる。しかしこれまでは、現時点のEAL判断に止まり、今後予測されるEAL判断をするまでは至っていない。また、事故が発生した原子力プラントでは、過酷な状況下であっても、正確で迅速なEAL判断が強く求められている。
【0006】
ところで、原子力プラントでは、大量に設置したセンサ等から送信される大量のデータ信号を監視して、事故が発生したか否かを判定する。重大事故につながる可能性を持つ緊急事態を正確に状況判断できれば、非常に有意義である。しかし、緊急事態の状況判断の精度が低く誤判断や見逃しが頻繁に発生する場合は、重大事故判定の信頼性も乏しいものとなる。
【0007】
本発明の実施形態はこのような事情を考慮してなされたもので、プラントの重大事故につながる緊急事態の状況判断の精度を高め、信頼性を向上させた重大事故判定技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係る重大事故判定装置において、プラント事故に起因して発生する事象を分類し進展する前記事象の状況をレベル区分し定義した判断基準を保持するデータベースと、プラントのプロセス値を前記判断基準に関連付けてデータ保持させる関連付け部と、前記プロセス値に基づいて前記判断基準に到達したか否かを判定する判定部と、前記判断基準に到達した前記事象の前記分類及び前記状況の前記レベル区分を出力し表示させる出力部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態により、プラントの重大事故につながる緊急事態の状況判断の精度を高め、信頼性を向上させた重大事故判定技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る重大事故判定装置を示すブロック図。
【
図2】データベースに保持される緊急時活動レベル(EAL)の判断基準を示すマトリックス表。
【
図3】第2実施形態に係る重大事故判定装置を示すブロック図。
【
図4】いずれのレベル区分においても分類の判断基準が未到達である場合を示すツリー表示。
【
図5】いずれかのレベル区分において分類の判断基準が到達した場合を示すツリー表示。
【
図6】いずれのレベル区分においても分類の判断基準が未到達である場合を示すタイル表示。
【
図7】事象の分類のうち判断基準に到達したレベル区分を示したタイル表示。
【
図8】第3実施形態に係る重大事故判定装置を示すブロック図。
【
図9】(A)各実施形態に係る重大事故判定方法の工程及び重大事故判定プログラムのアルゴリズムを説明するフローチャート、(B)ステップS13のサブルーチン。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は本発明の第1実施形態に係る重大事故判定装置10A(10)を示すブロック図である。このように重大事故判定装置10は、プラント11の事故に起因して発生する事象を分類21し(
図2)進展する事象の状況をレベル区分22し定義した判断基準25を保持するデータベース20と、プラント11のプロセス値30を判断基準25に関連付けてデータ保持部15に保持させる関連付け部12と、プロセス値30に基づいて判断基準25に到達したか否かを判定する判定部16と、判断基準25に到達した事象の分類21及び状況のレベル区分22を出力し表示させる出力部17と、を備えている。
【0012】
図2はデータベース20に保持される緊急時活動レベル(EAL)の判断基準25を示すマトリックス表である。緊急時活動レベル(EAL)は、原子力施設の異常を示す事象が発生した際、緊急事態を判断する基準(判断基準25)を定義している。
図2に示すようにこの緊急事態は、施設の情報、放射線量等に基づき「警戒事態(AL:Alert)」、「施設敷地緊急事態(SE:Site Emergency)」及び「全面緊急事態(GE:General Emergency)」の3つにレベル区分22されている。
【0013】
緊急時活動レベル(EAL)は、事象の分類21の各々を状況毎にレベル区分22し、判断基準25で緊急事態を定義している。それぞれの分類21は複数にレベル区分22され、各々に判断基準25が設定されている。なお以降において、特定の分類21のレベル区分22を指す場合は、
図2のマトリックスの行を特定する事象番号と列を特定する状況記号を用いて、例えば、SE27,GE42のように示す。
【0014】
警戒事態(AL)では、プラントの安全レベルが低下した場合、あるいは、その可能性がある事象が発生した場合を判断基準25とする。この場合、PAZ(予防的防護措置を準備する区域)内の災害時要援護者の避難の準備が開始される。
【0015】
施設敷地緊急事態(SE)では、公衆を防護するために必要とされるプラントの機能が喪失した場合、あるいは、その可能性があるような事象が発生した場合を判断基準25とする。この場合、PAZ内の災害時要援護者の避難が実施され、PAZ内住民の避難準備が実施
される。
【0016】
全面緊急事態(GE)では、炉心損傷若しくは燃料の溶融が発生した場合、あるいは、その可能性があるような事象が発生し、さらに格納容器の健全性を喪失する可能性がある事象が発生した場合を判断基準25とする。この場合、PAZ内住民の避難が実施され、UPZ(緊急時防護措置を準備する区域)の屋内退避が実施される。
【0017】
データベース20は、
図2に示すような、事象の分類21と状況のレベル区分22とを変数として組み合わせたマトリックスに、判断基準25を割り付けて、データ保持している。なお、実施形態において、緊急事態の判断基準25は原子力発電所の緊急時活動レベル(EAL)を例示しているが、適用は特に限定されない。また分類21の各々において三段階のレベル区分22が設定されているがこのレベル区分22の段数は特に限定されない。
【0018】
プロセス値30は、プラント11に設置されたセンサで検出された温度、圧力、放射線量等の検出値や、機器稼働状態、ユーザ操作のON/OFF等の状態値を示すもので、リアルタイムに時系列に取得されるものである。
【0019】
関連付け部12で関連付けられるプロセス値30と判断基準25とは、人間系で予め設定することができる事項である。ここで関連付け部12の機能を、
図4を参照して説明する。このように、それぞれのレベル区分22(22
AL,22
SE,22
GE)の判断基準25(25
AL,25
SE,25
GE)は、プロセス値30n(n=1~8)に関連付けされている。さらに、上位のレベル区分22の判断基準25は、下位のレベル区分22の判断基準25の成否にも関連付けられている(例えば、判断基準25
GEにおける判断基準25
SE,判断基準25
SEにおける判断基準25
AL)。
【0020】
図1に戻って説明を続ける。データ保持部15に保持されるプロセス値30は、関連付けされた判断基準25が単数又は複数の場合がある。また、判断基準25が関連付けされないプロセス値30は保持されていない。
【0021】
条件パラメータ26には、それぞれの判断基準25に関連付けたプロセス値30について、成立/不成立を決定する条件が設定されている。プロセス値30がセンサ等の検出値であれば成立/不成立の決定には予め設定された閾値が条件パラメータ26として用いられる。またプロセス値30が機器稼働状態やユーザ操作のON/OFF等の状態値であれば二値化され成立/不成立に割り当てられた状態値が条件パラメータ26として用いられる。
【0022】
さらに条件パラメータ26に従って、それぞれのプロセス値30における条件の成立/不成立の結果の組み合わせから、判断基準25の到達の成否が出力されるように、論理演算回路が形成されている。そして、分類21が共通するレベル区分22(22
AL,22
SE,22
GE)の判断基準25(25
AL,25
SE,25
GE)については、到達成否が連続的に判定できるよう論理演算回路が形成されている。つまり、一つの分類21につき、一つの論理演算回路で、一連のレベル区分22(22
AL,22
SE,22
GE)が表されている。なお
図6において、符号35はOR演算子を表し、符号36はAND演算子を表している。
【0023】
判定部16は、条件パラメータ26に基づき分類21毎に形成した論理演算回路に、プロセス値30の時系列を入力する。そして、それぞれの分類21で進展するレベル区分22(22AL,22SE,22GE)が、判断基準25(25AL,25SE,25GE)に到達したか否かを判定する。そして、この判定結果は、出力部17から出力され、判断基準25に到達した事象の分類21及び状況のレベル区分22の情報が開示される。
【0024】
(第2実施形態)
次に
図3から
図7を参照して本発明における第2実施形態について説明する。
図3は第2実施形態に係る重大事故判定装置10B(10)を示すブロック図である。なお、
図3において
図1と共通の構成又は機能を有する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。
【0025】
第2実施形態の重大事故判定装置10Bは、第1実施形態の重大事故判定装置10Aの構成に加え、さらに判断基準25が未到達である場合、到達する時間を推定する推定部27を備えている。さらに、判断基準25に到達したことで出力部17から出力された事象の分類21及び状況のレベル区分22の進展情報31(
図4~
図7)を表示させる表示部18を備えている。
【0026】
推定部27は、判断基準25が未到達である場合、到達する時間を推定する。つまり、未到達の判断基準25に関連付けされたそれぞれのプロセス値30の今後の挙動を推定し各々の条件が不成立から成立に切り替わる時間を推定する。そして論理演算回路において判断基準25に到達する時間を推定する。
【0027】
表示部18は、判断基準25に到達すると、出力部17から出力された分類21及びレベル区分22の進展情報31を表示させる。さらに表示部18は、判断基準25が未到達であっても、推定される到達時間を表示できる。
【0028】
図4はいずれのレベル区分22においても分類21の判断基準25が未到達である場合を示すツリー表示である。
図5はいずれかのレベル区分22(図示は「AL」と「SE」)において分類21の判断基準25が到達した場合を示すツリー表示である。
【0029】
図4及び
図5に示すように、ツリー表示は、共通事象の分類21
23で異なるレベル区分22(22
AL,22
SE,22
GE)を定義した判断基準25(25
AL,25
SE,25
GE)の各々が、到達したか否かを示している(図示は「AL」及び「SE」は到達、「GE」は未到達)。
【0030】
そしてツリー表示は、互いに関連付けられたプロセス値30及び判断基準25を、事象の進展方向に沿って論理接続させたものである。ツリー表示では、判断基準25に関連付けされている論理演算式35,36やプロセス値30n(n=1~8)を、判定や推定の根拠として時間軸に沿って提示することができる。
【0031】
図6は、いずれのレベル区分22においても分類21の判断基準25が未到達である場合を示すタイル表示である。
図7は事象の分類21のうち判断基準25に到達(AL21,AL22,SE23,GE03)したレベル区分22を示したタイル表示である。
【0032】
図6及び
図7に示すように、進展情報31の出力に基づいて、事象の分類21別にタイル表示されている。そして、事象の分類21のいずれかが判断基準25に到達した場合(
図7のAL21,AL22,SE23,GE03)、対応する状況のレベル区分22に切り替えてタイル表示する。なお、判断基準25に到達した場合の表示切替は、図示するようにタイルの背景を反転させたり、その他のグラフィック操作をしたりして、人間が認識できるようにする。
【0033】
(第3実施形態)
次に
図8を参照して本発明における第3実施形態について説明する。
図8は第3実施形態に係る重大事故判定装置10C(10)を示すブロック図である。なお、
図8において
図1又は
図3と共通の構成又は機能を有する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。
【0034】
第3実施形態の重大事故判定装置10Cは、第1実施形態の重大事故判定装置10Aの構成又は第2実施形態の重大事故判定装置10Bの構成に加え、さらにプラント11の重大事故シミュレータ28を備えている。この重大事故シミュレータ28は、プラント11において、仮想的に判断基準25を到達させることができる。このシミュレーションの結果に基づいて、それぞれの判断基準25に関連付けするプロセス値30及び判定に用いる条件パラメータ26を設定又は更新することができる。
【0035】
重大事故シミュレータ28で、プラント11に仮想的な重大事故を発生させたときの、プロセス値30xと条件パラメータ26との関係を機械学習部32において学習させて学習モデル33を作成することができる。その後、シミュレータ28を利用して、判断基準25に到達する仮想的なプロセス値30yを見い出す。そしてこの仮想的なプロセス値30yを更新部34に入力し学習モデル33で条件パラメータ26を更新させることができる。具体的な学習方法としてはパーセプトロンやマルチレイヤ―パーセプトロンやディープラーニングといった、ニューラルネットワークと呼ばれる技術を活用することができる
【0036】
図9(A)のフローチャートに基づいて各実施形態に係る重大事故判定方法の工程及び重大事故判定プログラムのアルゴリズムを説明する。
図9(B)はステップS13のサブルーチンである。
【0037】
まずプラント事故で発生する事象の分類21と状況のレベル区分22とで定義した判断基準25をデータベース20に保持させる(S11)。そして、プラント11のプロセス値30を判断基準25に関連付けてデータ保持する(S12)。さらに、それぞれの判断基準25に関連付けられたプロセス値30について、成立/不成立を決定し論理演算する条件パラメータ26を設定する(S13)。
【0038】
ここで、プラント事故が発生した場合(S14 Yes)、時系列にプロセス値30を条件パラメータ26に基づいて判定する(S15)。そして、いずれかの判断基準25に到達した場合は(S16 Yes)、対応する事象の分類21及び状況のレベル区分22を出力し表示させる(S17)。さらに次段のレベル区分22の判断基準に到達するまでの時間を推定し表示させる(S18)。そして、このレベル区分22が最終段(GE)に到達するまで、(S15)から(S18)のフローを繰り返す(S19 No Yes,END)。
【0039】
なお、条件パラメータ26の設定(S13)については、
図9(B)に示すサブルーチンで適時更新することができる。まず、プラントの重大事故シミュレータ28で判断基準25に到達する仮想的なプロセス値30yを見い出す(S21)。そして、予め作成されている学習モデル33に基づいて、シミュレーションした仮想的なプロセス値30yと判断基準25との関係から、新たな条件パラメータ26を設定し更新する(S22、RETURN)。
【0040】
以上述べた少なくともひとつの実施形態の重大事故判定装置によれば、分類した事象毎に進展状況をレベル区分し割り付けた判断基準にプラントのプロセス値を関連付けて判定することにより、緊急事態の状況判断の精度を高めプラント重大事故の信頼性を向上させることが可能となる。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0042】
以上説明した重大事故判定装置は、専用のチップ、FPGA(Field Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)、又はCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサを高集積化させた制御装置と、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などの記憶装置と、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などの外部記憶装置と、ディスプレイなどの表示装置と、マウスやキーボードなどの入力装置と、通信I/Fとを、備えており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成で実現できる。このため重大事故判定装置の構成要素は、コンピュータのプロセッサで実現することも可能であり、重大事故判定プログラムにより動作させることが可能である
【0043】
また重大事故判定プログラムは、ROM等に予め組み込んで提供される。もしくは、このプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、CD-R、メモリカード、DVD、フレキシブルディスク(FD)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されて提供するようにしてもよい。
【0044】
また、本実施形態に係る重大事故判定プログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせて提供するようにしてもよい。また、重大事故判定装置は、構成要素の各機能を独立して発揮する別々のモジュールを、ネットワーク又は専用線で相互に接続し、組み合わせて構成することもできる。
【符号の説明】
【0045】
10(10A,10B,10C)…重大事故判定装置、11…プラント、12…関連付け部、15…データ保持部、16…判定部、17…出力部、18…表示部、20…データベース、21…分類、22…レベル区分、25…判断基準、26…条件パラメータ、27…推定部、28…重大事故シミュレータ、30…プロセス値、31…進展情報、32…機械学習部、33…学習モデル、34…更新部、35…論理演算式。