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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174225
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】支障物検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/497 20060101AFI20231130BHJP
   G01S 17/88 20060101ALI20231130BHJP
   B61B 1/02 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
G01S7/497
G01S17/88
B61B1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086965
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 孟真
(72)【発明者】
【氏名】石川 智之
【テーマコード(参考)】
3D101
5J084
【Fターム(参考)】
3D101AB13
3D101AB15
3D101AB16
3D101AB18
3D101AB19
3D101AD12
5J084AA05
5J084AA10
5J084AD01
5J084AD06
5J084BA04
5J084BA36
5J084BA50
5J084BB02
5J084CA31
5J084CA70
5J084DA09
5J084EA08
5J084EA16
(57)【要約】
【課題】ホーム、又はホームドアに取り付けた支障物検出装置の姿勢情報の較正作業の負担を軽減する。
【解決手段】投光部121は、光を照射する。受光部122は、投光部121が照射した光が物体に当って反射した反射光を検出する。走査部120は、投光部121、及び受光部122を回転させて空間を走査する。慣性計測部111は、支障物検出装置1の慣性運動を計測する。演算部112は、慣性計測情報に基づいて自装置の姿勢情報を算出する。測距制御部113は、光の往復時間に基づいて、投光部121が照射した光を反射させた物体までの距離を算出し、測距画像を生成する。演算部112は、測距制御部113が生成した測距画像から床面相当領域を抽出し、これが水平を示すまで姿勢情報を較正する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホーム、又は該ホームに設置されたホームドアに取り付けられ、前記ホームの床面を含む空間に向けて走査した光の往復時間に基づいて測距画像を生成し、慣性計測により求めた自装置の姿勢情報に基づいて前記測距画像から前記床面に相当する領域を抽出し、抽出した該領域が水平を示すように前記姿勢情報を較正し、較正した前記姿勢情報と前記領域が示す床面とに基づいて定まる検出空間内の支障物を検出する支障物検出装置。
【請求項2】
前記床面の上に基準高さを有する治具を配置し、前記姿勢情報の較正後に前記治具の検出結果を用いて前記床面からの基準高さを記憶する請求項1に記載の支障物検出装置。
【請求項3】
前記姿勢情報の較正後に生成された測距画像から前記床面に相当する領域を抽出し、抽出した該領域が水平を示さない場合に、警告する請求項1又は2に記載の支障物検出装置。
【請求項4】
前記姿勢情報の較正後に生成された測距画像から前記床面に相当する領域を抽出し、抽出した該領域が水平を示さない場合に、前記姿勢情報を再度較正する請求項1又は2に記載の支障物検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支障物検出装置の姿勢情報を較正する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ホームドア(ホーム柵を含む)は、鉄道のホーム等において旅客が軌道に落下したり、軌道を走る列車に接触したりすることを防ぐための装置である。これらのホームドアは、人の通行を阻止するためのドア、柵、ロープ等の通行阻止部材を有する。これら通行阻止部材は、その軌道上に支障物があると接触により事故を招く可能性がある。そこで、ホームドアにおいては、支障物を検出するために測距センサを内蔵した支障物検出装置が用いられている。
【0003】
この支障物検出装置は、ホームドアの近傍の検出空間を測距センサにより監視して支障物の有無を検出することで異常判定を行う。支障物検出装置に用いられる測距センサは、例えば、光を照射してその飛行時間に基づいて空間内の物体までの距離を三次元的に測定する3D-TOF(Time of flight)カメラである。
【0004】
ところで、測距センサが測距する空間の座標は自身の姿勢に応じて決まるが、その姿勢は、突発的な外乱や長期にわたる外力の蓄積等により予期せずに変化することがある。そのため、測距センサの姿勢情報は較正される必要がある。
【0005】
特許文献1は、位置及び向き較正ルーチンがイメージプロセッサにより実行されるとき、3D-TOFカメラにより捕捉されるレンジイメージ内の1つ以上の面を検出し、その1つ以上の検出面から基準面を選択し、基準面に対する3D-TOFカメラの位置及び向きパラメタ、例えば基準面上方の高さ及び/又はカメラロール角及び/又はカメラピッチ角を計算するカメラ装置、を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2011-530706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載の技術は、設置されたカメラの向きを調整者におおまかに入力させるほか、検出した1つ以上の検出面から基準面を選択させているので、調整者の習熟が必要となっていた。
【0008】
本発明の目的の一つは、ホーム、又はホームドアに取り付けた支障物検出装置の姿勢情報の較正作業の負担を軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ホーム、又は該ホームに設置されたホームドアに取り付けられ、前記ホームの床面を含む空間に向けて走査した光の往復時間に基づいて測距画像を生成し、慣性計測により求めた自装置の姿勢情報に基づいて前記測距画像から前記床面に相当する領域を抽出し、抽出した該領域が水平を示すように前記姿勢情報を較正し、較正した前記姿勢情報と前記領域が示す床面とに基づいて定まる検出空間内の支障物を検出する支障物検出装置、を第1の態様として提供する。
【0010】
第1の態様の支障物検出装置によれば、ホームドアに取り付けた支障物検出装置の姿勢情報の較正作業の負担を軽減することができる。
【0011】
第1の態様の支障物検出装置において、前記床面の上に基準高さを有する治具を配置し、前記姿勢情報の較正後に前記治具の検出結果を用いて前記床面からの基準高さを記憶する、という構成が第2の態様として採用されてもよい。
【0012】
第2の態様の支障物検出装置によれば、床面に相当する領域に基づいて自装置の姿勢情報が較正されてから、その床面からの基準高さを記憶することができる。
【0013】
第1又は第2の態様の支障物検出装置において、前記姿勢情報の較正後に生成された測距画像から前記床面に相当する領域を抽出し、抽出した該領域が水平を示さない場合に、警告する、という構成が第3の態様として採用されてもよい。
【0014】
第3の態様の支障物検出装置によれば、利用者は、較正後に生じた誤差が一定水準を超えたことを知ることができる。
【0015】
第1又は第2の態様の支障物検出装置において、前記姿勢情報の較正後に生成された測距画像から前記床面に相当する領域を抽出し、抽出した該領域が水平を示さない場合に、前記姿勢情報を再度較正する、という構成が第4の態様として採用されてもよい。
【0016】
第4の態様の支障物検出装置によれば、利用者は、較正後に生じた誤差が一定水準を超えたときに較正作業を負担しなくてよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る支障物検出装置1の外観の例を示す図。
図2】支障物検出システム9の全体構成の例を示す図。
図3】y軸が重力の方向に一致している場合の支障物検出装置1を示す図。
図4】y軸が重力の方向とずれている場合の支障物検出装置1を示す図。
図5】支障物検出装置1の動作の流れの例を示すフロー図。
図6】姿勢較正の動作の流れの例を示すフロー図。
図7】床面相当領域を手前側と奥側とに区別して調整する様子の例を示す図。
図8】床面相当領域を右側と左側とに区別して調整する様子の例を示す図。
図9】マージン量を記憶する動作の流れの例を示すフロー図。
図10】マージン量を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施形態>
以下に示すいくつかの図において、空間はxyz右手系座標空間として表される。また、図に示す座標記号のうち、円の中に点を描いた記号は、紙面奥側から手前側に向かう矢印を表す。空間においてx軸に沿う方向をx軸方向という。また、x軸方向のうち、x成分が増加する方向を+x方向といい、x成分が減少する方向を-x方向という。y、z成分についても、上記の定義に沿ってy軸方向、+y方向、-y方向、z軸方向、+z方向、-z方向が定義される。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る支障物検出装置1の外観の例を示す図である。また、図2は、支障物検出システム9の全体構成の例を示す図である。図1におけるz軸は、支障物検出装置1の観測方向であり、y軸及びx軸は、それぞれ主走査、副走査の際に投光する光の方向を回転させる軸を示している。
【0020】
図2に示す支障物検出システム9は、ホームドア2と、このホームドア2に接続された支障物検出装置1とを有する。支障物検出装置1は、ホーム、又はホームに設置されたホームドア2に取り付けられた装置であり、制御系11、及び光学系12を有する。
【0021】
光学系12は、走査部120、投光部121、及び受光部122を有する。投光部121は、光を照射する装置であり、例えばレーザーダイオード、LED(light emitting diode)等である。投光部121が照射する光は、例えば近赤外光等である。
【0022】
受光部122は、集光レンズ、アバランシェフォトダイオード(APD:avalanche photodiode)等の光検出デバイス、又はCCD(Charge Coupled Device)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサ等を有し、投光部121が照射した光が物体に当って反射した反射光を検出する。
【0023】
走査部120は、投光部121、及び受光部122を決められた軸まわりに回転させて投光及び受光の方向を変化させることで、空間を走査する装置である。走査部120は、上述したy軸、及びx軸を主走査、及び副走査に用いて投光部121、及び受光部122を回転(揺動)させる。なお、走査部120が走査する空間は、ホームの床面を含む空間である。
【0024】
制御系11は、電源部110、慣性計測部111、演算部112、測距制御部113、走査制御部114、及び通信制御部115を有する。制御系11のうち、慣性計測部111、演算部112、測距制御部113、走査制御部114、及び通信制御部115は、それぞれ個別のプロセッサ、コントローラ等によって実現されてもよい。また、これらのいずれかは、共通のプロセッサによって実現されてもよい。ここで用いられるプロセッサは、例えばCPU(Central Processing Unit)である。また、制御系11は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、ソリッドステートドライブ、ハードディスクドライブ等を有してもよい。
【0025】
電源部110は、支障物検出装置1の各構成に電力を供給する装置である。図2に示す電源部110は、電気配線によりホームドア2から電力の供給を受ける。
【0026】
慣性計測部111は、支障物検出装置1の慣性運動を計測する慣性計測装置(IMU:inertial measurement unit)である。図2に示す慣性計測部111は、例えば、ジャイロセンサ及び加速度センサを有し、これらによって三次元の角速度及び加速度を計測する。以下、慣性計測部111が計測する、支障物検出装置1の角速度又は加速度を含む情報を、慣性計測情報ともいう。
【0027】
演算部112は、慣性計測部111が計測した慣性計測情報を取得し、この慣性計測情報に基づいて自装置の向き、及び傾き等で表される姿勢を示す姿勢情報を算出する。すなわち演算部112は、姿勢情報から特定される重力の方向を、自装置に設定された座標軸に対応付ける演算を行う。演算部112は、演算結果を測距制御部113に供給する。
【0028】
図3は、y軸が重力の方向に一致している場合の支障物検出装置1を示す図である。図3に示すazはz軸方向の加速度であり、ayはy軸方向の加速度である。この図3において、重力の方向はyz平面上にある。図3に示す例において、重力加速度をgとするとay=gである。
【0029】
図4は、y軸が重力の方向とずれている場合の支障物検出装置1を示す図である。図4に示す重力の方向は、yz平面上にあり、y軸方向に対してθの傾きがある。この場合、azとayとを合成した加速度が重力加速度に等しくなる。すなわち、az=g・sinθであり、ay=g・cosθである。
【0030】
なお、図3、及び図4に示す例で重力加速度の方向はyz平面上にあるが、yz平面上になくてもよい。この場合、例えば重力の方向をyz平面上に正射影した方向とy軸方向との角度θが特定され、さらに、重力の方向とyz平面との角度φが特定される。x軸方向の加速度ax(図示せず)、及びay、azは、これらを合成した加速度が重力加速度に等しくなるように、上述したθ、φ、gを用いてそれぞれ計算される。
【0031】
図2に示す走査制御部114は、上述した走査部120を制御する。通信制御部115は、通信線を経由してホームドア2と接続され、この通信線によりホームドア2と情報のやり取りをする。
【0032】
測距制御部113は、投光部121に指示をして光を照射させる。また、測距制御部113は、受光部122から反射光の検知信号を取得する。そして、測距制御部113は、光学系12がホームの床面を含む空間に向けて走査した光の往復時間を算出する。この往復時間は、投光部121が光を照射してから、受光部122がその光の反射光を検知するまでの時間である。測距制御部113は、上述した光の往復時間に基づいて、投光部121が照射した光を反射させた物体までの距離を算出する。
【0033】
また、測距制御部113は、走査制御部114、及び演算部112と情報のやり取りをし、上述した光が照射された方向、又は上述した反射光が検知された方向を特定する。そして、測距制御部113は、特定した方向に対応する画素値に、算出した物体までの距離を反映させて画像(測距画像)を生成する。つまり、この測距制御部113を有する支障物検出装置1は、ホームの床面を含む空間に向けて走査した光の往復時間に基づいて測距画像を生成する支障物検出装置の例である。
【0034】
演算部112は、測距制御部113が生成した測距画像から床面に相当する領域(以下、床面相当領域ともいう)を抽出し、この床面相当領域が水平を示すまで姿勢情報を較正する。そして、演算部112は、姿勢情報の較正後に床面相当領域に基づいて検出空間を特定し、順次生成される測距画像のうち検出空間を監視して、支障物があるか否かを判定する。
【0035】
<支障物検出装置の動作>
図5は、支障物検出装置1の動作の流れの例を示すフロー図である。支障物検出装置1の制御系11は、測距画像を生成する(ステップS101)。また、制御系11は、慣性計測部111が計測する加速度を含む慣性計測情報を取得し(ステップS102)、これに基づいて自装置の姿勢(すなわち、向き、傾き)を示す姿勢情報を算出する(ステップS103)。
【0036】
そして、制御系11は、生成した測距画像を算出した姿勢情報に基づいて仮補正する(ステップS104)。ここで「仮補正」とは、詳細に座標を補正するのではなく、大まかに座標を補正することをいう。制御系11は、例えば、支障物検出装置1が通常とは天地が逆になるように取り付けられている場合に、この大まかな向きを特定して、これに沿って、測距画像の上下を逆にする等の仮補正を行う。
【0037】
測距画像を仮補正すると、制御系11は、仮補正された測距画像から床面相当領域を抽出する(ステップS105)。つまり、この制御系11を有する支障物検出装置1は、慣性計測により求めた自装置の姿勢情報に基づいて生成した測距画像から床面に相当する領域を抽出する支障物検出装置の例である。
【0038】
そして制御系11は、床面相当領域の各画素が示す床面までの距離に基づいて、自装置の姿勢情報を較正する(ステップS200)。支障物検出装置1の姿勢情報は、床面相当領域が水平を示すように較正される。つまり、この制御系11を有する支障物検出装置1は、抽出した床面相当領域が水平を示すように自装置の姿勢情報を較正する支障物検出装置の例である。以下、姿勢情報を較正することを、姿勢較正ともいう。
【0039】
図6は、姿勢較正の動作の流れの例を示すフロー図である。制御系11は、床面相当領域を自装置に近い近距離領域と、自装置から遠い遠距離領域とに分割する(ステップS201)。そして、制御系11は、近距離領域、及び遠距離領域のそれぞれについて高さの代表値を特定し、それぞれの高さの代表値の差が閾値以上であるか否かを判断する(ステップS202)。代表値は、例えば、相加平均値、相乗平均値、中央値等である。
【0040】
高さの代表値の差が閾値以上である、と判断する場合(ステップS202;YES)、制御系11は、その差が小さくなるように姿勢情報を較正する(ステップS203)。
【0041】
図7は、床面相当領域を手前側と奥側とに区別して調整する様子の例を示す図である。図7の横軸は奥行方向を示し、縦軸は高さ方向を示している。奥行方向は、支障物検出装置1から遠ざかる方向のうち、軌道に沿った方向である。高さ方向は、ホームの床面を基準とした高さの方向であり、ステップS203の較正前において重力の方向と正反対の方向である。
【0042】
ここで、床面相当領域は、支障物検出装置1の姿勢情報に基づいて特定されているため、ステップS203の較正前において、床面相当領域の法線の方向は、高さ方向と一致しない場合がある。制御系11は、床面相当領域を表す点群である床面点群を手前側と奥側とに分割し、そのそれぞれの高さの代表値(相加平均値等)を、手前側高さ、奥側高さとして算出する。そして、制御系11は、この手前側高さと奥側高さとの差が閾値未満になるように、支障物検出装置1の姿勢情報を較正する。
【0043】
例えば、制御系11は、上述した手前側高さが奥側高さよりも閾値以上高い場合、手前側高さが低くなるように、又は奥側高さが高くなるように、支障物検出装置1の姿勢情報を書き換える。このとき、制御系11は、例えば、高さ方向をx軸まわりに所定の角度だけ回転させ、手前側高さと奥側高さとの差を算出し直し、この差が閾値内に収まるまで、この角度の回転を続ける。
【0044】
一方、高さの代表値の差が閾値以上でない、と判断する場合(ステップS202;NO)、制御系11は、ステップS203を行わずに次の処理に進む。
【0045】
そして、制御系11は、次の処理として床面相当領域を自装置にとって左側にある左側領域と、右側にある右側領域とに分割する(ステップS204)。そして、制御系11は、左側領域、及び右側領域のそれぞれについて高さの代表値を特定し、それぞれの高さの代表値の差が閾値以上であるか否かを判断する(ステップS205)。
【0046】
高さの代表値の差が閾値以上である、と判断する場合(ステップS205;YES)、制御系11は、その差が小さくなるように姿勢情報を較正する(ステップS206)。
【0047】
図8は、床面相当領域を右側と左側とに区別して調整する様子の例を示す図である。図8の横軸は奥行方向を示し、縦軸はホーム方向を示している。奥行方向は、図7と同じく支障物検出装置1から遠ざかる方向のうち、軌道に沿った方向である。ホーム方向は、軌道からホームに向かう方向である。そして、上述した高さ方向は、図8における奥行方向、ホーム方向のいずれにも直交する。ここでは、図8における紙面手前側に向かう方向が高さ方向である。
【0048】
制御系11は、床面相当領域を表す点群である床面点群を左側と右側とに分割し、そのそれぞれの高さの代表値(相加平均値等)を、左側高さ、右側高さとして算出する。そして、制御系11は、この左側高さと右側高さとの差が閾値未満になるように、支障物検出装置1の姿勢情報を較正する。
【0049】
例えば、制御系11は、上述した左側高さが右側高さよりも閾値以上高い場合、左側高さが低くなるように、又は右側高さが高くなるように、支障物検出装置1の姿勢情報を書き換える。このとき、制御系11は、例えば、ホーム方向をz軸まわりに所定の角度だけ回転させ、左側高さと右側高さとの差を算出し直し、この差が閾値内に収まるまで、この角度の回転を続ける。
【0050】
一方、高さの代表値の差が閾値以上でない、と判断する場合(ステップS205;NO)、制御系11は、ステップS206を行わずに処理を終了する。
【0051】
なお、この動作において、ステップS201からステップS203までの処理と、ステップS204からステップS206までの処理とは、逆の順序で行われてもよい。
【0052】
図5に示すフロー図の通り、制御系11は、上述したステップS200の処理を終了すると、較正した自装置の姿勢情報と、床面相当領域が示す床面とに基づいて検出空間を特定する(ステップS106)。この検出空間は、支障物検出装置1が支障物の検出の対象とする空間であり、床面を基準とした高さの上限、及び下限が定められている。すなわち、制御系11は、較正した自装置の姿勢情報により高さ方向を特定し、測距画像から抽出した床面から下限高さ以上であって、かつ、上限高さ未満の空間を、検出空間として特定する。
【0053】
検出空間を特定した制御系11は、光学系12を用いてこの検出空間を走査させ、検出空間内の支障物を検出する(ステップS107)。すなわち、この制御系11を有する支障物検出装置1は、較正した自装置の姿勢情報と床面相当領域が示す床面とに基づいて定まる検出空間内の支障物を検出する支障物検出装置の例である。
【0054】
以上、説明した通り、支障物検出システム9において支障物検出装置1は、慣性計測部111が計測した慣性運動に基づく自装置の姿勢情報と、測距制御部113が生成した測距画像とからホームの床面相当領域を抽出する。そして、支障物検出装置1は、この床面相当領域が水平を示すように自装置の姿勢情報を較正し、構成した姿勢情報と床面相当領域とに基づいて特定される検出空間の支障物を検出する。これにより、利用者は、支障物検出装置1の姿勢情報を較正する作業を行わなくてよい。
【0055】
以上の実施形態で説明された構成、形状、大きさ及び配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎない。したがって、本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【0056】
<変形例>
以上が実施形態の説明であるが、この実施形態の内容は以下のように変形し得る。また、以下の変形例は組み合わされてもよい。
【0057】
<1>
上述した実施形態において、支障物検出装置1は、床面から下限高さ以上の検出空間を特定していたが、検出空間の下限の境界面(以下、下部境界面ともいう)は床面に配置した物理的な治具等を測距して特定してもよい。
【0058】
図9は、マージン量を記憶する動作の流れの例を示すフロー図である。例えば、ホームドア2は、図示しない入力パネルを有し、この入力パネルにより利用者の入力を受付ける。利用者は、ホームの床面に検出空間の下部境界面を特定させるための治具(以下、境界治具ともいう)を配置し、この境界治具を配置した旨を入力パネルに入力する。この境界治具は、基準となる高さ(基準高さという)を有する物理的な構造物である。
【0059】
支障物検出装置1の制御系11は、入力パネルからの利用者の入力を監視して、境界治具が配置されたか否かを判断する(ステップS301)。境界治具が配置されていない、と判断する間(ステップS301;NO)、制御系11は、この判断を続ける。
【0060】
一方、境界治具が配置された、と判断すると(ステップS301;YES)、制御系11は、新たに生成した測距画像を参照して床面相当領域の周囲の距離が変化したか否かを判断する(ステップS302)。
【0061】
床面相当領域の周囲の距離が変化していない、と判断する場合(ステップS302;NO)、制御系11は、異常終了する(ステップS303)。
【0062】
一方、床面相当領域の周囲の距離が変化した、と判断する場合(ステップS302;YES)、制御系11は、床面までの高さを設置高さとして記憶し(ステップS304)、床面と境界治具の上面との高さ方向の距離(すなわち、高さの差)をマージン量として記憶する(ステップS305)。
【0063】
図10は、マージン量を説明するための図である。支障物検出装置1は、上述した動作により、床面相当領域を示す床面点群の設置高さと、この床面点群から境界治具の基準高さに相当するマージン量とを記憶する。
【0064】
すなわち、この制御系11を有する支障物検出装置1は、床面の上に基準高さを有する治具を配置し、自装置の姿勢情報の較正後にこの治具の検出結果を用いて床面からの基準高さを記憶する支障物検出装置の例である。
【0065】
この構成により支障物検出装置1は、次回、改めて支障物を検出する際に、記憶された設置高さ及びマージン量を使うことで、姿勢情報の較正、及び検出空間の特定を短縮することができる。
【0066】
<2>
上述した実施形態において、制御系11は、ステップS200に示すの姿勢較正の処理を終了すると、検出空間を特定し、検出空間内の支障物を検出していたが、姿勢較正後に生成された測距画像から抽出される床面相当領域が水平を示していない場合に利用者に警告してもよい。
【0067】
すなわち、この制御系11を有する支障物検出装置1は、自装置の姿勢情報の較正後に生成された測距画像からホームの床面に相当する領域を抽出し、抽出したこの領域が水平を示さない場合に、警告する支障物検出装置の例である。
【0068】
この構成によれば、利用者は、一度、姿勢情報を較正した後に、経年変化、又は突発的外力等によって自装置の姿勢が変化し、測距画像で監視する範囲が変化したとしても、その変化を知ることができる。
【0069】
<3>
また、制御系11は、姿勢較正後に生成された測距画像から抽出される床面相当領域が水平を示していない場合に、再度、自装置の姿勢情報を較正してもよい。
【0070】
すなわち、この制御系11を有する支障物検出装置1は、自装置の姿勢情報の較正後に生成された測距画像からホームの床面に相当する領域を抽出し、抽出したこの領域が水平を示さない場合に、前記姿勢情報を再度較正する支障物検出装置の例である。
【0071】
この構成によれば、利用者は、一度、姿勢情報を較正した後に、経年変化、又は突発的外力等によって自装置の姿勢が変化し、測距画像で監視する範囲が変化したとしても、改めて自装置の姿勢情報を較正して、検出空間を再度特定することができる。
【0072】
<4>
上述した実施形態において、制御系11は、CPUを有していたが、これ以外の構成でもよい。例えば、制御系11は、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、プログラマブル論理デバイス、等を含むものでもよい。
【符号の説明】
【0073】
1…支障物検出装置、11…制御系、110…電源部、111…慣性計測部、112…演算部、113…測距制御部、114…走査制御部、115…通信制御部、12…光学系、120…走査部、121…投光部、122…受光部、2…ホームドア、9…支障物検出システム。
図1
図2
図3
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図8
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図10