(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174229
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】光電変換装置
(51)【国際特許分類】
H01L 27/146 20060101AFI20231130BHJP
H01L 31/10 20060101ALI20231130BHJP
H04N 25/70 20230101ALI20231130BHJP
【FI】
H01L27/146 A
H01L31/10 A
H04N5/369
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086972
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100124442
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 創吾
(72)【発明者】
【氏名】白髭 大貴
【テーマコード(参考)】
4M118
5C024
5F149
5F849
【Fターム(参考)】
4M118AB01
4M118AB03
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5F849EA13
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(57)【要約】
【課題】光電変換装置の位相差検出の精度低下
【解決手段】半導体層に設けられた複数の光電変換領域と、マイクロレンズと、をそれぞれが有する画素と、を含み、前記半導体層は、前記マイクロレンズが形成された面に対向する面側から順に第1の深さと、第2の深さと、前記第1の深さと前記第2の深さとの間の深さである第3の深さと、を有し、前記第1の深さにおいて前記複数の光電変換領域を分離し、第1の方向に延在する第1の分離部と、記第2の深さにおいて前記複数の光電変換領域を分離し、第2の方向に延在する第2の分離部と、前記第3の深さにおいて前記複数の光電変換領域を分離し、第3の方向に延在する第3の分離部と、を有し、前記第1の分離部と前記第3の分離部がなす90度以下の角は、前記第1の分離部と前記第2の分離部がなす90度以下の角よりも小さいことを特徴とする光電変換装置。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体層に設けられた複数の光電変換領域と、マイクロレンズと、をそれぞれが有する画素と、を含み、
前記半導体層は、前記マイクロレンズが形成された面に対向する面側から順に第1の深さと、第2の深さと、前記第1の深さと前記第2の深さとの間の深さである第3の深さと、を有し、
前記第1の深さにおいて前記複数の光電変換領域を分離し、第1の方向に延在する第1の分離部と、
前記第2の深さにおいて前記複数の光電変換領域を分離し、第2の方向に延在する第2の分離部と、
前記第3の深さにおいて前記複数の光電変換領域を分離し、第3の方向に延在する第3の分離部と、を有し、
前記第1の分離部と前記第3の分離部がなす90度以下の角は、前記第1の分離部と前記第2の分離部がなす90度以下の角よりも小さいことを特徴とする光電変換装置。
【請求項2】
前記第2の深さと前記第3の深さの間の第4の深さに、複数の光電変換領域を分離し、第4の方向に延在する第4の分離部を有し、
前記第1の分離部と前記第4の分離部がなす90度以下の角は、前記第1の分離部と前記第2の分離部がなす90度以下の角よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項3】
前記第1の分離部と前記第4の分離部がなす90度以下の角は、前記第1の分離部と前記第3の分離部がなす90度以下の角よりも大きいことを特徴とする請求項2に記載の光電変換装置。
【請求項4】
前記複数の光電変換領域は、前記第1の分離部によって分離される第1の光電変換領域と第2の光電変換領域と、前記第3の分離部によって分離される第3の光電変換領域と第4の光電変換領域と、を有し、
平面視で、前記第1の光電変換領域と前記第3の光電変換領域とが重なり、前記第1の光電変換領域と前記第4の光電変換領域とが重ならないことを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項5】
前記複数の光電変換領域は、前記第1の分離部によって分離される第1の光電変換領域および第2の光電変換領域と、前記第3の分離部によって分離される第3の光電変換領域および第4の光電変換領域と、を有し、
前記第1の光電変換領域と前記第3の光電変換領域との間のポテンシャル差は、前記第1の光電変換領域と前記第4の光電変換領域との間のポテンシャル差よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項6】
前記複数の光電変換領域は、前記第1の分離部によって分離される第1の光電変換領域と第2の光電変換領域とを有し、
前記第1の分離部の、前記複数の光電変換領域で生成される信号電荷に対するポテンシャルは、前記第1の光電変換領域および前記第2の光電変換領域の、前記信号電荷に対するポテンシャルよりも高いことを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項7】
前記複数の光電変換領域のそれぞれが台形の領域を有し、
前記第1の分離部によって分離される第1の光電変換領域と第2の光電変換領域とはその長手方向に沿って第1の分離部が配された矩形の領域を有することを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項8】
前記第1の分離部は、各画素における前記複数の光電変換領域の重心を通る線に沿って設けられることを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項9】
前記第2の深さに設けられた光電変換領域と、前記第3の深さに設けられた光電変換領域とは導電型が同じであることを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項10】
前記第1の分離部の面積は、前記第1の光電変換領域の面積よりも小さいことを特徴とする請求項5に記載の光電変換装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の光電変換装置と、
前記光電変換装置が出力する信号を用いて画像を生成する信号処理部と、を有することを特徴とする光電変換システム。
【請求項12】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の光電変換装置を備える移動体であって、
前記光電変換装置が出力する信号を用いて前記移動体の移動を制御する制御部を有することを特徴とする移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光電変換装置において、1つの画素マイクロレンズ下に複数の光電変換素子を配置し、撮像と位相差検出を同一のセンサで行う場合に、被写体のコントラストの方向によりオートフォーカス(AF)の精度が低下する可能性がある。この問題は特許文献1の
図20に示すように、光入射方向に積層した光電変換素子の分離方向を1層目と2層目で異ならせることで解決できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示された画素構造では、積層した光電変換素子間のクロストークにより位相差検出の精度が低下する恐れがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一つの側面は、導体層に設けられた複数の光電変換領域と、マイクロレンズと、をそれぞれが有する画素と、を含む光電変換装置であって、前記半導体層は、前記マイクロレンズが形成された面に対向する面側から順に第1の深さと、第2の深さと、前記第1の深さと前記第2の深さとの間の深さである第3の深さと、を有し、前記第1の深さにおいて前記複数の光電変換領域を分離し、第1の方向に延在する第1の分離部と、記第2の深さにおいて前記複数の光電変換領域を分離し、第2の方向に延在する第2の分離部と、前記第3の深さにおいて前記複数の光電変換領域を分離し、第3の方向に延在する第3の分離部と、を有し、前記第1の分離部と前記第3の分離部がなす90度以下の角は、前記第1の分離部と前記第2の分離部がなす90度以下の角よりも小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、光電変換装置の位相差検出の精度低下を防ぐことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態に係る光電変換装置の各半導体基板の模式図である。
【
図2】第1実施形態に係る光電変換装置のブロック図である。
【
図3】第1実施形態に係る光電変換装置の画素の等価回路図である。
【
図4】第1実施形態に係る光電変換装置の画素の平面図である。
【
図5】第1実施形態に係る光電変換装置の光電変換部の模式図である。
【
図6】第1実施形態に係る光電変換装置の断面図である。
【
図7】第1実施形態に係る光電変換装置の画素と配線の平面図である。
【
図8】第1実施形態に係る光電変換装置の光電変換部の配置方向を示す図である。
【
図9】第1実施形態に係る光電変換装置の画素の平面図である。
【
図10】第2実施形態に係る光電変換装置の画素の平面図である。
【
図11】第2実施形態に係る光電変換装置の光電変換部の模式図である。
【
図12】第3実施形態に係る光電変換装置の画素の平面図である。
【
図13】第3実施形態に係る光電変換装置の光電変換部の模式図である。
【
図14】第4実施形態に係る光電変換装置の画素の平面図である。
【
図15】第4実施形態に係る光電変換装置の光電変換部の模式図である。
【
図16】第5の実施形態に係る光電変換システムの機能ブロック図である。
【
図17】第6の実施形態に係る光電変換システムの機能ブロック図である。
【
図18】第7の実施形態に係る光電変換システムの機能ブロック図である。
【
図19】第8の実施形態に係る光電変換システムの機能ブロック図である。
【
図20】第9の実施形態に係る光電変換システムの機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に示す形態は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、本発明を限定するものではない。各図面が示す部材の大きさや位置関係は、説明を明確にするために誇張していることがある。以下の説明において、同一の構成については同一の番号を付して説明を省略することがある。
【0009】
以下の説明においては、信号電荷が電子である場合を例として説明する。したがって、信号電荷と同じ導電型のキャリアを多数キャリアとする第1導電型の半導体領域とはN型半導体領域であり、第2導電型の半導体領域とはP型半導体領域である。なお、信号電荷がホールである場合でも本発明は成立する。この場合は、信号電荷と同じ導電型のキャリアを多数キャリアとする第1導電型の半導体領域はP型半導体領域であり、第2導電型の半導体領域とはN型半導体領域である。
【0010】
本明細書および請求項において、単に「不純物濃度」という用語が使われた場合、逆導電型の不純物によって補償された正味の不純物濃度を意味している。つまり、「不純物濃度」とは、NETドーピング濃度を指す。P型の添加不純物濃度がN型の添加不純物濃度より高い領域はP型半導体領域である。反対に、N型の添加不純物濃度がP型の添加不純物濃度より高い領域はN型半導体領域である。また、以下に述べる実施形態中に記載される半導体領域、ウエルの導電型や注入されるドーパントは一例であって、実施形態中に記載された導電型、ドーパントのみに限定されるものではない。実施形態中に記載された導電型、ドーパントに対して適宜変更できる。さらに、この変更に伴って、半導体領域、ウエルの電位は適宜変更される。
【0011】
本明細書において、「平面視」とは、後述する半導体基板の光入射面又は光入射面に対向する面に対して垂直な方向から視ることを指す。また、断面とは、半導体基板の光入射面と垂直な方向における面を指す。なお、微視的に見て半導体基板の光入射面が粗面である場合は、巨視的に見たときの半導体基板の光入射面を基準として平面視を定義する。
【0012】
本明細書において、深さ方向は、半導体基板の光入射面(第1面)からトランジスタが配される側の面(第2面)に向かう方向である。
【0013】
また、以下に述べる各実施形態では、光電変換装置の一例として、撮像装置を中心に説明するが、各実施形態は、撮像装置に限られるものではなく、光電変換装置の他の例にも適用可能である。例えば、測距装置(焦点検出やTOF(Time Of Flight)を用いた距離測定等の装置)、測光装置(入射光量の測定等の装置)などがある。
【0014】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について
図1から
図9までを用いて説明する。
【0015】
図1は、実施形態1に係る光電変換装置500を示している。
【0016】
光電変換装置は、半導体デバイスICである。本実施形態に係る光電変換装置500とは、例えば、イメージセンサや、測光センサ、測距センサとして用いることができる。以下では、一例として、CMOSイメージセンサを説明する。
【0017】
光電変換装置500は、基板1と基板2との全部または一部が積層して接合された積層型の光電変換装置である。基板1および基板2は、積層後にウェハをダイシングしてチップ化したチップの状態であってもよいし、ウェハの状態であってもよい。光電変換装置500は、積層型の裏面照射型の光電変換装置である。
【0018】
基板1は、画素10に含まれる画素回路を含む半導体素子層11と、配線構造12と、を有する。基板2は、配線構造24と、電気回路を含む半導体素子層23と、を有する。基板1の配線構造12と基板2の配線構造24とは、各配線構造に含まれる配線層を接合することで構成された金属接合部により接合されている。金属接合部とは、配線層を構成する金属と配線層を構成する金属とが直接接合された構造である。
【0019】
画素10を構成する素子は、半導体素子層11に配される。なお、画素10の一部の構成が半導体素子層11に配され、他の一部の構成が半導体素子層に配されてもよい。この場合、画素10のうちの半導体素子層11に配される画素回路の構成としては、フォトダイオードなどの光電変換領域が挙げられる。光電変換領域を含む画素回路は、半導体素子層11に平面視で2次元アレイ状に配される。半導体素子層11は、複数の画素回路が2次元アレイ状に配された画素領域を有する。
図1では、半導体素子層11には、複数の画素回路を構成する複数の光電変換部が行方向および列方向の2次元アレイ状に配されている。
【0020】
配線構造12は、M(Mは1以上の整数)層の配線層と層間絶縁材料を含む。配線構造24は、N(Nは1以上の整数)層の配線層と層間絶縁材料を含む。
【0021】
半導体素子層23は、半導体素子層11に配された光電変換部で得られた信号を処理する電気回路を含む。説明の便宜上、
図1において、基板2の上面に図示された構成は半導体素子層23に配された構成である。電気回路とは、例えば、
図1に示す、垂直走査回路20、水平走査回路21、信号処理回路22等を構成するトランジスタのいずれか1つである。信号処理回路22とは、例えば、増幅トランジスタ、選択トランジスタ、リセットトランジスタなどの画素10の構成の一部、増幅回路、選択回路、論理演算回路、AD変換回路、メモリ、圧縮処理や合成処理等を行う回路の少なくともいずれか1つである。
【0022】
画素10は、画像を構成するために繰り返して配置される回路の最小単位を指しうる。そして、画素10に含まれ、半導体素子層11に配された画素回路は、少なくとも、光電変換部を含んでいればよい。画素回路には、光電変換部以外の構成を含んでいてもよい。例えば、画素回路はさらに、転送トランジスタ、フローティングディフュージョン(FD)、リセットトランジスタ、増幅トランジスタ、容量接続トランジスタ、選択トランジスタの少なくともいずれか1つを含んでいてもよい。典型的には、選択トランジスタ及び当該選択トランジスタを介して信号線に接続された一群の素子が画素10を構成する。すなわち、選択トランジスタが画素回路の外縁でありうる。あるいは、光電変換部と転送トランジスタの組が画素10を構成することもある。他にも、1つあるいは複数の光電変換部と、1つの増幅回路あるいは1つのAD変換回路との組が画素10を構成してもよい。
【0023】
図2は、本実施形態に係る光電変換装置の概略構成を表すブロック図である。
【0024】
光電変換装置は、画素アレイ100、垂直走査回路20、増幅回路25、水平走査回路21、出力回路26及び制御回路27を備える。画素アレイ100は、平面視で、複数の行及び複数の列を含む二次元状に配置された複数の画素10を備える。垂直走査回路20は、画素10に含まれる複数のトランジスタをオン(導通状態)又はオフ(非導通状態)に制御するための複数の制御信号を供給する。画素10の各列には信号線28が設けられており、画素10からの信号が列ごとに信号線28に読み出される。増幅回路25は、信号線28に出力された画素信号を増幅し、画素10のリセット時の信号及び光電変換時の信号に基づく相関二重サンプリング処理等の処理を行う。水平走査回路21は、増幅回路25の増幅器に接続されたスイッチと、該スイッチをオン又はオフに制御するための制御信号を供給する。制御回路27は、垂直走査回路20、増幅回路25及び水平走査回路21を制御する。出力回路26は、バッファアンプ、差動増幅器等を含み、増幅回路25からの画素信号を光電変換装置の外部の信号処理部に出力する。また、AD変換部を更に光電変換装置に設けることにより、光電変換装置がデジタルの画素信号を出力する構成であってもよい。制御回路27、増幅回路25、及び出力回路26は、
図1の信号処理回路22に含まれている。
【0025】
図3は、本実施形態に係る光電変換装置の画素の等価回路の一例を示している。
【0026】
以下では、2つの光電変換部を1つのフローティングディフュージョンで共有する形態について説明するが、FDを共有する光電変換部の数はこれに限定されない。また、2つの光電変換部のそれぞれが別のフローティングディフュージョンを有していてもよい。画素10は、光電変換部PDA、光電変換部PDB、転送トランジスタ202、フローティングディフュージョンFD、リセットトランジスタRES、ソースフォロワトランジスタSF、選択トランジスタSELを有する。これらの各トランジスタを制御する制御信号は、
図1に示す垂直走査回路20から、各トランジスタのゲートに制御線を介して入力される。
【0027】
図4は第1の実施形態に係る光電変換装置の画素の平面図である。
図4(a)は画素10の上面模式図を表しており、
図4(b)、
図4(c)、
図4(d)のそれぞれは画素の形成された半導体層の表面(光入射面に対向する面)側から裏面(光入射面)側までの各深さでの断面における平面構造を表している。
【0028】
画素10は、光電変換領域201、光電変換領域206、光電変換領域208、転送トランジスタ202のゲート、フローティングディフュージョン203、マイクロレンズ204、第1の分離部205、第2の分離部207、第3の分離部209を有する。光電変換領域201、光電変換領域206、光電変換領域208は、それぞれ半導体層の異なる深さに設けられている。各深さにおける光電変換領域の平面的な配置について以下に説明する。
【0029】
半導体層の表面側(第1の深さ)にN型の第1の光電変換領域201a、第2の光電変換領域201bが設けられ、2つの光電変換領域201の双方を覆うようにマイクロレンズ204が配されている。第1の光電変換領域201a、第2の光電変換領域201bのそれぞれは転送トランジスタ202のゲートに接続され、第1の光電変換領域201aと第2の光電変換領域201bとの間は第1の分離部205により分離されている。第1の分離部205は第1の方向210に沿って設けられている。第1の分離部によって分離される第1の光電変換領域201aと第2の光電変換領域201bとはその長手方向に沿って第1の分離部205が配された矩形の領域を有する。各光電変換領域の形状は角が直角をなすものに限られず、例えば角丸の長方形形状であってもよい。
【0030】
図4(d)は画素裏面側の平面構造を表している。画素の裏面側とは光電変換領域が設けられた半導体層の光が入射する面を指す。半導体層の裏面側(第2の深さ)に位置するN型の第3の光電変換領域206a、第4の光電変換領域206bは、その間を第2の方向211に沿って設けられた第2の分離部207によって分離されている。第2の方向211と第1の方向210は異なる方向である。
【0031】
図4(c)は画素中間層の平面構造を表している。光電変換領域208は、半導体層中の第1の深さに設けられた光電変換領域201と第2の深さに設けられた光電変換領域206との間の第3の深さに存在している。この光電変換領域208は、平面視において第3の方向212に沿って設けられた第3の分離部209によって第5の光電変換領域208aと第6の光電変換領域208bとに分離されている。光電変換領域208a、208bのそれぞれはいずれも台形の領域を有し、第3の方向212は、第1の方向210と第2の方向211の中間の角度方向となっている。言い換えれば、
図4(e)において第1の分離部205と第3の分離部209がなす90度以下の角θ1は、
図4(f)において第1の分離部205と第2の分離部207がなす90度以下の角θ2よりも小さい。
【0032】
第1の分離部205、第2の分離部207、第3の分離部209のそれぞれは、例えばトレンチ構造などの絶縁部材であってもよく、P型の半導体領域であってもよい。各分離部によって分離される光電変換領域のN型不純物濃度に対して低濃度のN型領域が形成されていてもよい。すなわち、各分離部によって分離される光電変換領域の間に信号電荷に対するポテンシャル障壁となる構造が形成されていればよい。
【0033】
図5(a)、
図5(b)は画素中の各光電変換領域について光入射面側を上にした模式図である。
【0034】
画素10は、光入射面に対向する面である基板表面側から光入射面である基板裏面側にかけて、光電変換領域201と光電変換領域208と光電変換領域206とが異なる深さに形成されている。上述の通り、2つの光電変換領域201間には第1の分離部205が形成され、2つの光電変換領域208間には第3の分離部209が形成される。2つの光電変換領域206間には第2の分離部207が形成されている。これらの分離部による光電変換領域の分離方向である、第1の方向210、第3の方向212、第2の方向211はいずれも異なり、第3の方向212は、平面視で第1の方向210と第2の方向211の中間の角度方向になっている。
【0035】
図6(a)、
図6(b)、
図6(c)、
図6(d)のそれぞれは画素の断面図を表している。
図6(a)に記載のA-B断面、C-D断面、E-F断面がそれぞれ
図6(b)、
図6(c)、
図6(d)に対応している。
【0036】
転送トランジスタ202のゲートのある基板表面側からマイクロレンズ204の設けられる基板裏面側にかけて、光電変換領域201、光電変換領域208、光電変換領域206が形成されている。各光電変換領域は、分離された光電領域同士の断面積の和が一定となるように分離されている。また、画素中央部を通るC-D断面では半導体層中の深さによらず各光電変換領域の断面積は一定である。
【0037】
なお、
図6の各断面では光電変換領域201、光電変換領域208、光電変換領域206のそれぞれは同等の厚みを有しているが、例えば光電変換領域208を光電変換領域201、光電変換領域206よりも厚く形成してもよい。また、基板裏面側に配された光電変換領域206から基板表面側に配された光電変換領域201まで徐々に厚くなるよう形成してもよい。
【0038】
図7は第1の実施形態に係る光電変換装置の画素の比較例であり、画素中間層を有さない画素構造である。
図7に示す画素では基板表面側と基板裏面側で分離方向が異なる2つの光電変換領域が隣接した構造を有している。
【0039】
図7に示す画素は、
図7(a)の基板表面側に光電変換領域201、
図7(b)の基板裏面側に光電変換領域206を有する。光電変換領域201は第1の方向210に沿って延在する第1の分離部205によって第1の光電変換領域201a、第2の光電変換領域201bに分離される。また、光電変換領域206は第2の方向211に沿って延在する第2の分離部207によって第3の光電変換領域206a、第4の光電変換領域206bに分離される。
【0040】
図7(d)にハッチングで示すように、このような構造の画素では、第1の光電変換領域201aと第4の光電変換領域206bの一部が接する(213a)。また、第2の光電変換領域201bと第3の光電変換領域206aも一部が接する(213b)。そのため、第3の光電変換領域206aから第1の光電変換領域201aへと転送すべき電荷の一部が第3の光電変換領域206aから第2の光電変換領域201bへと転送されるおそれがある。あるいは、第4の光電変換領域206bから第2の光電変換領域201bへと転送すべき電荷の一部が、第4の光電変換領域206bから第1の光電変換領域201aへと転送されるおそれがある。すなわち、誤った転送経路を電荷が移動してしまう可能性がある。これにより位相差検出に用いる信号が正しく取得されず、位相差検出精度が低下する可能性がある。
【0041】
本実施形態では、光電変換領域201および光電変換領域206の間に画素中間層である光電変換領域208を設け、光電変換領域208の分離角度である第3の方向212を第1の方向210と第2の方向211の間の角度にする。これにより、基板裏面から基板表面にかけて光電変換領域の分離方向の角度変化が緩やかになり、a画素(206a、208a、201a)とb画素(206b、208b、201b)の層間の重なりが少なくなる。例えば
図7における第3の光電変換領域206aと第2の光電変換領域201bの重なりと比較して、
図4における第3の光電変換領域206aと第6の光電変換領域208bの重なりは少ない。あるいは
図7における第3の光電変換領域206aと第2の光電変換領域201bの重なりと比較して、
図4における第5の光電変換領域208aと第2の光電変換領域201bの重なりは少ない。すなわち、a画素間を転送されるべき信号がa画素からb画素へと転送されてしまう可能性は小さくなる。これにより位相差検出に用いられる信号が正しく取得され、光電変換領域208が無い場合と比較して位相差検出精度が向上する。
【0042】
図8は画素10に対して第2の方向211がなす角度の例を示している。第2の方向211は光電変換装置101中の画素10ごとに異なっていてもよい。例えば
図8(a)に示す方向211―1のような角度の場合は水平方向にコントラストが変化する被写体の位相差検出に有利であり、
図8(d)に示す方向211―4に示すような角度の場合は垂直方向にコントラストが変化する被写体の位相差検出に有利となる。また、光電変換領域の分離方向は画素10の配列方向に対して垂直方向、または水平方向に限られない。
図8(b)に示す方向211―2あるいは
図8(c)に示す方向211―3のように画素10の配列方向に対して斜め方向に分離してもよい。
【0043】
第2の方向211は光電変換装置101の複数の画素10で統一されている必要はなく、第2の方向211が異なる画素10を配置してもよい。例えば
図8(a)、
図8(b)、
図8(c)、
図8(d)のそれぞれに示される4種の画素を1つの光電変換装置101内に配置してもよい。
【0044】
また、上記説明では分離部が形成されている方向を光電変換領域の分離方向としているが、例えば各層の光電変換領域の重心を内分する面を分離面と定義し、分離面と各層の交わる線の方向を分離方向と定義してもよい。また、各層の2つの光電変換領域同士が隣接する辺の方向を分離方向としてもよい。
【0045】
図9は、画素10の配線301や画素毎に配置されるトランジスタを含む模式図である。本実施形態では、第1の方向210を画素ごとに同じ方向に揃えている。
【0046】
位相差検出の方向を画素毎に異ならせたい場合、例えば画素全体を所望の位相差検出方向に応じて回転させる方法がある。複数方向の位相差検出を目的として、画素10ごとにマイクロレンズ下の2つの光電変換部全体を基板裏面側と基板表面側の向きを揃えて回転させた場合、画素ごとに基板表面側の光電変換領域201の配置が変わる。すなわち、配線301やトランジスタの位置が画素毎に異なる配置となる。これにより、例えばフローティングディフュージョン203の容量に差が生じ、画素特性差が現れる可能性がある。
【0047】
本実施形態に係る構成によれば、複数方向の位相差検出を目的として画素10ごとに第2の方向211を異ならせた場合においても、光電変換領域201の配置は画素間で統一することが出来る。そのため、表面側の画素レイアウトの違いによる画素特性の差を抑制することが可能である。
【0048】
なお、ここまで本実施形態について裏面入射型の画素を有する光電変換装置を用いて説明したが、表面照射型の画素であってもよい。また、複数の半導体基板が積層された光電変換装置を用いて説明したが、画素と回路とが同一の半導体基板に形成された光電変換装置であってもよい。
【0049】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態について
図10、
図11を用いて説明する。また、第1の実施形態と共通する構成要素には共通する番号を付し、説明を省略する。
【0050】
第1の実施形態との違いは、第3の光電変換領域206aと第6の光電変換領域208bあるいは第4の光電変換領域206bと第5の光電変換領域208aが平面視で重ならないような配置となっている点である。光電変換領域206および光電変換領域208と同様に、光電変換領域208と光電変換領域201についても各光電変換領域のa画素とb画素とが重ならない配置となっている。
【0051】
第2の実施形態では
図11bに示すように第3の光電変換領域206aと第6の光電変換領域208b(あるいは第4の光電変換領域206bと第5の光電変換領域208a)が隣接しないような構造となっている。
【0052】
分離部(第1の分離部205、第2の分離部207、第3の分離部209)の幅を大きくすることで、上述のa画素とb画素との平面視における重なりを小さくする事ができる。しかし、各画素において分離部が占める面積を増やせば光電変換領域の面積が小さくなり、フォトダイオードに蓄積可能な電荷量が減るというデメリットがある。画素あたりの分離部の面積は、フォトダイオードの光電変換領域の面積よりも小さい事が望ましい。
【0053】
なお、
図10、
図11の説明で用いた「平面視で重ならない」、「隣接しない」といった表現は、N型不純物が第3の光電変換領域206aと第6の光電変換領域208bの間に全く存在しない場合に限られるものではない。例えば第3の光電変換領域206aから第5の光電変換領域208aにかけて、信号電荷に対するポテンシャルより第3の光電変換領域206aから第6の光電変換領域208bにかけての信号電荷に対するポテンシャルが高く形成されていればよい。信号電荷が電子の場合、第3の光電変換領域206a―第6の光電変換領域208b間のN型不純物濃度が第3の光電変換領域206a―第5の光電変換領域208a間のN型不純物濃度よりも小さければよい。
【0054】
光電変換領域206と光電変換領域208についてだけでなく、光電変換領域208と光電変換領域201についても同様のポテンシャル差が形成される関係になっている。このような構造により、a画素とb画素との間で電荷のクロストークが生じにくくなる。ここでa画素とは第1の光電変換領域201a、第3の光電変換領域206a、第5の光電変換領域208aであり、b画素とは第2の光電変換領域201b、第4の光電変換領域206b、第6の光電変換領域208bである。
【0055】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態について
図12、
図13を用いて説明する。
図12は画素10の上面模式図を表しており、
図13は第3の実施形態における各画素の光電変換領域の模式図を表している。本実施形態の第1の実施形態、第2の実施形態との違いは光電変換領域208を2層にしている点である。
【0056】
すなわち、本実施形態に係る光電変換領域208は第3の深さに設けられ、第3の方向212-1に延びる第3の分離部209-1によって分離された第5の光電変換領域208a―1と第6の光電変換領域208b―1を有する。さらに、第2の深さと第3の深さとの間の第4の深さに設けられ、第4の方向212-2に延びる第4の分離部209-2によって分離された第7の光電変換領域208a―2と第8の光電変換領域208b―2を有する。
【0057】
光電変換領域208を2層にすることにより、第2の方向211から第1の方向210までの分離部の角度変化に対して、各層間の分離方向の角度変化を小さくすることが出来る。つまり、光電変換領域208を2層にすることで、光電変換領域208が1層の場合と比較して各層間のa画素とb画素の重なりを小さくすることができる。これにより、a画素とb画素との間の電荷のクロストークをより低減し、位相差検出の精度を向上させることが出来る。
【0058】
なお、光電変換領域208の層数は2層に限られず、例えば3層以上の光電変換領域を形成してもよい。
【0059】
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態について
図14、
図15を用いて説明する。
【0060】
図14は画素10の上面模式図を表しており、
図15は第4の実施形態における各画素の光電変換領域の模式図を表している。
【0061】
本実施形態に係る光電変換領域208は第3の深さに設けられ、第3の方向212-1に延びる第3の分離部209-1によって分離された第5の光電変換領域208a―1と第6の光電変換領域208b―1を有する。さらに、第2の深さと第3の深さとの間の第4の深さに設けられ、第4の方向212-2に延びる第4の分離部209-2によって分離された第7の光電変換領域208a―2と第8の光電変換領域208b―2を有する。さらに、第2の深さと第4の深さとの間の第5の深さに設けられ、第5の方向212-3に延びる第5の分離部209-3によって分離された第9の光電変換領域208a―3と第10の光電変換領域208b―3を有する。
【0062】
本実施形態と、第1の実施形態から第3の実施形態までとの違いは、光電変換領域206と光電変換領域201とを分離する角度が90度変化している点である。第1~第3の実施形態では第2の方向211と第1の方向210とが斜めに交差する構成としていた。本実施形態では、第2の方向211と第1の方向210とが直交するように光電変換領域を分離することで、垂直方向にコントラストが変化する被写体に対する位相差検出の精度を向上させることが出来る。
【0063】
<第5の実施形態>
本実施形態による光電変換システムについて、
図16を用いて説明する。
図16は、本実施形態による光電変換システムの概略構成を示すブロック図である。
【0064】
上記第1~第4の実施形態で述べた光電変換装置は、種々の光電変換システムに適用可能である。適用可能な光電変換システムの例としては、デジタルスチルカメラ、デジタルカムコーダ、監視カメラ、複写機、ファックス、携帯電話、車載カメラ、観測衛星などが挙げられる。また、レンズなどの光学系と撮像装置とを備えるカメラモジュールも、光電変換システムに含まれる。
図16には、これらのうちの一例として、デジタルスチルカメラのブロック図を例示している。
【0065】
図16に例示した光電変換システムは、光電変換装置の一例である撮像装置1004、被写体の光学像を撮像装置1004に結像させるレンズ1002を備える。さらに、レンズ1002を通過する光量を可変にするための絞り1003、レンズ1002の保護のためのバリア1001を有する。レンズ1002及び絞り1003は、撮像装置1004に光を集光する光学系である。撮像装置1004は、上記のいずれかの実施形態の光電変換装置であって、レンズ1002により結像された光学像を電気信号に変換する。
【0066】
光電変換システムは、また、撮像装置1004より出力される出力信号の処理を行うことで画像を生成する画像生成部である信号処理部1007を有する。信号処理部1007は、必要に応じて各種の補正、圧縮を行って画像データを出力する動作を行う。信号処理部1007は、撮像装置1004が設けられた半導体基板に形成されていてもよいし、撮像装置1004とは別の半導体基板に形成されていてもよい。
【0067】
光電変換システムは、更に、画像データを一時的に記憶するためのメモリ部1010、外部コンピュータ等と通信するための外部インターフェース部(外部I/F部)1013を有する。更に光電変換システムは、撮像データの記録又は読み出しを行うための半導体メモリ等の記録媒体1012、記録媒体1012に記録又は読み出しを行うための記録媒体制御インターフェース部(記録媒体制御I/F部)1011を有する。なお、記録媒体1012は、光電変換システムに内蔵されていてもよく、着脱可能であってもよい。
【0068】
更に光電変換システムは、各種演算とデジタルスチルカメラ全体を制御する全体制御・演算部1009、撮像装置1004と信号処理部1007に各種タイミング信号を出力するタイミング発生部1008を有する。ここで、タイミング信号などは外部から入力されてもよく、光電変換システムは少なくとも撮像装置1004と、撮像装置1004から出力された出力信号を処理する信号処理部1007とを有すればよい。
【0069】
撮像装置1004は、撮像信号を信号処理部1007に出力する。信号処理部1007は、撮像装置1004から出力される撮像信号に対して所定の信号処理を実施し、画像データを出力する。信号処理部1007は、撮像信号を用いて、画像を生成する。
【0070】
このように、本実施形態によれば、上記のいずれかの実施形態の光電変換装置(撮像装置)を適用した光電変換システムを実現することができる。
【0071】
<第6の実施形態>
本実施形態の光電変換システム及び移動体について、
図17を用いて説明する。
図17は、本実施形態の光電変換システム及び移動体の構成を示す図である。
【0072】
図17(a)は、車載カメラに関する光電変換システムの一例を示したものである。光電変換システム1300は、撮像装置1310を有する。撮像装置1310は、上記のいずれかの実施形態に記載の光電変換装置である。光電変換システム1300は撮像装置1310により取得された複数の画像データに対し画像処理を行う画像処理部1312と、光電変換システム1300により取得された複数の画像データから視差(視差画像の位相差)の算出を行う視差取得部1314を有する。また、光電変換システム1300は、算出された視差に基づいて対象物までの距離を算出する距離取得部1316と、算出された距離に基づいて衝突可能性があるか否かを判定する衝突判定部1318と、を有する。ここで、視差取得部1314や距離取得部1316は、対象物までの距離情報を取得する距離情報取得手段の一例である。すなわち、距離情報とは、視差、デフォーカス量、対象物までの距離等に関する情報である。衝突判定部1318はこれらの距離情報のいずれかを用いて、衝突可能性を判定してもよい。距離情報取得手段は、専用に設計されたハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアモジュールによって実現されてもよい。また、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等によって実現されてもよいし、これらの組合せによって実現されてもよい。
【0073】
光電変換システム1300は車両情報取得装置1320と接続されており、車速、ヨーレート、舵角などの車両情報を取得することができる。また、光電変換システム1300は、衝突判定部1318での判定結果に基づいて、車両に対して制動力を発生させる制御信号を出力する制御部である制御ECU1330が接続されている。また、光電変換システム1300は、衝突判定部1318での判定結果に基づいて、ドライバーへ警報を発する警報装置1340とも接続されている。例えば、衝突判定部1318の判定結果として衝突可能性が高い場合、制御ECU1330はブレーキをかける、アクセルを戻す、エンジン出力を抑制するなどして衝突を回避、被害を軽減する車両制御を行う。警報装置1340は音等の警報を鳴らす、カーナビゲーションシステムなどの画面に警報情報を表示する、シートベルトやステアリングに振動を与えるなどしてユーザーに警告を行う。
【0074】
本実施形態では、車両の周囲、例えば前方又は後方を光電変換システム1300で撮像する。
図17(b)に、車両前方(撮像範囲1350)を撮像する場合の光電変換システムを示した。車両情報取得装置1320が、光電変換システム1300ないしは撮像装置1310に指示を送る。このような構成により、測距の精度をより向上させることができる。
【0075】
上記では、他の車両と衝突しないように制御する例を説明したが、他の車両に追従して自動運転する制御や、車線からはみ出さないように自動運転する制御などにも適用可能である。更に、光電変換システムは、自車両等の車両に限らず、例えば、船舶、航空機あるいは産業用ロボットなどの移動体(移動装置)に適用することができる。加えて、移動体に限らず、高度道路交通システム(ITS)等、広く物体認識を利用する機器に適用することができる。
【0076】
<第7の実施形態>
本実施形態の光電変換システムについて、
図18を用いて説明する。
図18は、本実施形態の光電変換システムである距離画像センサの構成例を示すブロック図である。
【0077】
図18に示すように、距離画像センサ401は、光学系407、光電変換装置408、画像処理回路404、モニタ405、およびメモリ406を備えて構成される。そして、距離画像センサ401は、光源装置411から被写体に向かって投光され、被写体の表面で反射された光(変調光やパルス光)を受光することにより、被写体までの距離に応じた距離画像を取得することができる。
【0078】
光学系407は、1枚または複数枚のレンズを有して構成され、被写体からの像光(入射光)を光電変換装置408に導き、光電変換装置408の受光面(センサ部)に結像させる。
【0079】
光電変換装置408としては、上述した各実施形態の光電変換装置が適用され、光電変換装置408から出力される受光信号から求められる距離を示す距離信号が画像処理回路404に供給される。
【0080】
画像処理回路404は、光電変換装置408から供給された距離信号に基づいて距離画像を構築する画像処理を行う。そして、その画像処理により得られた距離画像(画像データ)は、モニタ405に供給されて表示されたり、メモリ406に供給されて記憶(記録)されたりする。
【0081】
このように構成されている距離画像センサ401では、上述した光電変換装置を適用することで、画素の特性向上に伴って、例えば、より正確な距離画像を取得することができる。
【0082】
<第8の実施形態>
本実施形態の光電変換システムについて、
図19を用いて説明する。
図19は、本実施形態の光電変換システムである内視鏡手術システムの概略的な構成の一例を示す図である。
【0083】
図19では、術者(医師)1131が、内視鏡手術システム1150を用いて、患者ベッド1133上の患者1132に手術を行っている様子が図示されている。図示するように、内視鏡手術システム1150は、内視鏡1100と、術具1110と、内視鏡下手術のための各種の装置が搭載されたカート1134と、から構成される。
【0084】
内視鏡1100は、先端から所定の長さの領域が患者1132の体腔内に挿入される鏡筒1101と、鏡筒1101の基端に接続されるカメラヘッド1102と、から構成される。図示する例では、硬性の鏡筒1101を有するいわゆる硬性鏡として構成される内視鏡1100を図示しているが、内視鏡1100は、軟性の鏡筒を有するいわゆる軟性鏡として構成されてもよい。
【0085】
鏡筒1101の先端には、対物レンズが嵌め込まれた開口部が設けられている。内視鏡1100には光源装置1203が接続されており、光源装置1203によって生成された光が、鏡筒1101の内部に延設されるライトガイドによって当該鏡筒の先端まで導光され、対物レンズを介して患者1132の体腔内の観察対象に向かって照射される。なお、内視鏡1100は、直視鏡であってもよいし、斜視鏡又は側視鏡であってもよい。
【0086】
カメラヘッド1102の内部には光学系及び光電変換装置が設けられており、観察対象からの反射光(観察光)は当該光学系によって当該光電変換装置に集光される。当該光電変換装置によって観察光が光電変換され、観察光に対応する電気信号、すなわち観察像に対応する画像信号が生成される。当該光電変換装置としては、前述の各実施形態に記載の光電変換装置を用いることができる。当該画像信号は、RAWデータとしてカメラコントロールユニット(CCU:Camera Control Unit)1135に送信される。
【0087】
CCU1135は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等によって構成され、内視鏡1100及び表示装置1136の動作を統括的に制御する。さらに、CCU1135は、カメラヘッド1102から画像信号を受け取り、その画像信号に対して、例えば現像処理(デモザイク処理)等の、当該画像信号に基づく画像を表示するための各種の画像処理を施す。
【0088】
表示装置1136は、CCU1135からの制御により、当該CCU1135によって画像処理が施された画像信号に基づく画像を表示する。
【0089】
光源装置1203は、例えばLED(Light Emitting Diode)等の光源から構成され、術部等を撮影する際の照射光を内視鏡1100に供給する。
【0090】
入力装置1137は、内視鏡手術システム1150に対する入力インターフェースである。ユーザーは、入力装置1137を介して、内視鏡手術システム1150に対して各種の情報の入力や指示入力を行うことができる。
【0091】
処置具制御装置1138は、組織の焼灼、切開又は血管の封止等のためのエネルギー処置具1112の駆動を制御する。
【0092】
内視鏡1100に術部を撮影する際の照射光を供給する光源装置1203は、例えばLED、レーザ光源又はこれらの組み合わせによって構成される白色光源から構成することができる。RGBレーザ光源の組み合わせにより白色光源が構成される場合には、各色(各波長)の出力強度及び出力タイミングを高精度に制御することができるため、光源装置1203において撮像画像のホワイトバランスの調整を行うことができる。また、この場合には、RGBレーザ光源それぞれからのレーザ光を時分割で観察対象に照射し、その照射タイミングに同期してカメラヘッド1102の撮像素子の駆動を制御することにより、RGBそれぞれに対応した画像を時分割で撮像することも可能である。当該方法によれば、当該撮像素子にカラーフィルタを設けなくても、カラー画像を得ることができる。
【0093】
また、光源装置1203は、出力する光の強度を所定の時間ごとに変更するようにその駆動が制御されてもよい。その光の強度の変更のタイミングに同期してカメラヘッド1102の撮像素子の駆動を制御して時分割で画像を取得し、その画像を合成することにより、いわゆる黒つぶれ及び白とびのない高ダイナミックレンジの画像を生成することができる。
【0094】
また、光源装置1203は、特殊光観察に対応した所定の波長帯域の光を供給可能に構成されてもよい。特殊光観察では、例えば、体組織における光の吸収の波長依存性を利用する。具体的には、通常の観察時における照射光(すなわち、白色光)に比べて狭帯域の光を照射することにより、粘膜表層の血管等の所定の組織を高コントラストで撮影する。あるいは、特殊光観察では、励起光を照射することにより発生する蛍光により画像を得る蛍光観察が行われてもよい。蛍光観察では、体組織に励起光を照射し当該体組織からの蛍光を観察すること、又はインドシアニングリーン(ICG)等の試薬を体組織に局注するとともに当該体組織にその試薬の蛍光波長に対応した励起光を照射し蛍光像を得ること等を行うことができる。光源装置1203は、このような特殊光観察に対応した狭帯域光及び/又は励起光を供給可能に構成され得る。
【0095】
<第9の実施形態>
本実施形態の光電変換システムについて、
図20(a)、(b)を用いて説明する。
図20(a)は、本実施形態の光電変換システムである眼鏡1600(スマートグラス)を説明する。眼鏡1600には、光電変換装置1602を有する。光電変換装置1602は、上記の各実施形態に記載の光電変換装置である。また、レンズ1601の裏面側には、OLEDやLED等の発光装置を含む表示装置が設けられていてもよい。光電変換装置1602は1つでもよいし、複数でもよい。また、複数種類の光電変換装置を組み合わせて用いてもよい。光電変換装置1602の配置位置は
図20(a)に限定されない。
【0096】
眼鏡1600は、制御装置1603をさらに備える。制御装置1603は、光電変換装置1602と上記の表示装置に電力を供給する電源として機能する。また、制御装置1603は、光電変換装置1602と表示装置の動作を制御する。レンズ1601には、光電変換装置1602に光を集光するための光学系が形成されている。
【0097】
図20(b)は、1つの適用例に係る眼鏡1610(スマートグラス)を説明する。眼鏡1610は、制御装置1612を有しており、制御装置1612に、光電変換装置1602に相当する光電変換装置と、表示装置が搭載される。レンズ1611には、制御装置1612内の光電変換装置と、表示装置からの発光を投影するための光学系が形成されており、レンズ1611には画像が投影される。制御装置1612は、光電変換装置および表示装置に電力を供給する電源として機能するとともに、光電変換装置および表示装置の動作を制御する。制御装置は、装着者の視線を検知する視線検知部を有してもよい。視線の検知は赤外線を用いてよい。赤外発光部は、表示画像を注視しているユーザーの眼球に対して、赤外光を発する。発せられた赤外光の眼球からの反射光を、受光素子を有する撮像部が検出することで眼球の撮像画像が得られる。平面視における赤外発光部から表示部への光を低減する低減手段を有することで、画像品位の低下を低減する。
【0098】
赤外光の撮像により得られた眼球の撮像画像から表示画像に対するユーザーの視線を検出する。眼球の撮像画像を用いた視線検出には任意の公知の手法が適用できる。一例として、角膜での照射光の反射によるプルキニエ像に基づく視線検出方法を用いることができる。
【0099】
より具体的には、瞳孔角膜反射法に基づく視線検出処理が行われる。瞳孔角膜反射法を用いて、眼球の撮像画像に含まれる瞳孔の像とプルキニエ像とに基づいて、眼球の向き(回転角度)を表す視線ベクトルが算出されることにより、ユーザーの視線が検出される。
【0100】
本実施形態の表示装置は、受光素子を有する光電変換装置を有し、光電変換装置からのユーザーの視線情報に基づいて表示装置の表示画像を制御してよい。
【0101】
具体的には、表示装置は、視線情報に基づいて、ユーザーが注視する第1の視界領域と、第1の視界領域以外の第2の視界領域とを決定される。第1の視界領域、第2の視界領域は、表示装置の制御装置が決定してもよいし、外部の制御装置が決定したものを受信してもよい。表示装置の表示領域において、第1の視界領域の表示解像度を第2の視界領域の表示解像度よりも高く制御してよい。つまり、第2の視界領域の解像度を第1の視界領域よりも低くしてよい。
【0102】
また、表示領域は、第1の表示領域、第1の表示領域とは異なる第2の表示領域とを有し、視線情報に基づいて、第1の表示領域および第2の表示領域から優先度が高い領域を決定されてよい。第1の視界領域、第2の視界領域は、表示装置の制御装置が決定してもよいし、外部の制御装置が決定したものを受信してもよい。優先度の高い領域の解像度を、優先度が高い領域以外の領域の解像度よりも高く制御してよい。つまり優先度が相対的に低い領域の解像度を低くしてよい。
【0103】
なお、第1の視界領域や優先度が高い領域の決定には、AIを用いてもよい。AIは、眼球の画像と当該画像の眼球が実際に視ていた方向とを教師データとして、眼球の画像から視線の角度、視線の先の目的物までの距離を推定するよう構成されたモデルであってよい。AIプログラムは、表示装置が有しても、光電変換装置が有しても、外部装置が有してもよい。外部装置が有する場合は、通信を介して、表示装置に伝えられる。
【0104】
視認検知に基づいて表示制御する場合、外部を撮像する光電変換装置を更に有するスマートグラスに好ましく適用できる。スマートグラスは、撮像した外部情報をリアルタイムで表示することができる。
【0105】
[変形実施形態]
本発明は、上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。例えば、いずれかの実施形態の一部の構成を他の実施形態に追加した例や、他の実施形態の一部の構成と置換した例も、本発明の実施形態に含まれる。
【0106】
また、上記第5の実施形態、第6の実施形態に示した光電変換システムは、光電変換装置を適用しうる光電変換システム例を示したものであって、本発明の光電変換装置を適用可能な光電変換システムは
図20乃至
図18に示した構成に限定されるものではない。第7の実施形態に示したToFシステム、第8の実施形態に示した内視鏡、第9の実施形態に示したスマートグラスについても同様である。
【0107】
なお、上記実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0108】
また、本開示は以下の構成を含む。
【0109】
(構成1)半導体層に設けられた複数の光電変換領域と、マイクロレンズと、をそれぞれが有する画素と、を含み、前記半導体層は、前記マイクロレンズが形成された面に対向する面側から順に第1の深さと、第2の深さと、前記第1の深さと前記第2の深さとの間の深さである第3の深さと、を有し、前記第1の深さにおいて前記複数の光電変換領域を分離し、第1の方向に延在する第1の分離部と、前記第2の深さにおいて前記複数の光電変換領域を分離し、第2の方向に延在する第2の分離部と、前記第3の深さにおいて前記複数の光電変換領域を分離し、第3の方向に延在する第3の分離部と、を有し、前記第1の分離部と前記第3の分離部がなす90度以下の角は、前記第1の分離部と前記第2の分離部がなす90度以下の角よりも小さいことを特徴とする光電変換装置。
【0110】
(構成2)前記第2の深さと前記第3の深さの間の第4の深さに、複数の光電変換領域を分離し、第4の方向に延在する第4の分離部を有し、前記第1の分離部と前記第4の分離部がなす90度以下の角は、前記第1の分離部と前記第2の分離部がなす90度以下の角よりも小さいことを特徴とする構成1に記載の光電変換装置。
【0111】
(構成3)前記第1の分離部と前記第4の分離部がなす90度以下の角は、前記第1の分離部と前記第3の分離部がなす90度以下の角よりも大きいことを特徴とする構成2に記載の光電変換装置。
【0112】
(構成4)前記複数の光電変換領域は、前記第1の分離部によって分離される第1の光電変換領域と第2の光電変換領域と、前記第3の分離部によって分離される第3の光電変換領域と第4の光電変換領域と、を有し、平面視で、前記第1の光電変換領域と前記第3の光電変換領域とが重なり、前記第1の光電変換領域と前記第4の光電変換領域とが重ならないことを特徴とする構成1から構成3までのいずれかに記載の光電変換装置。
【0113】
(構成5)前記複数の光電変換領域は、前記第1の分離部によって分離される第1の光電変換領域および第2の光電変換領域と、前記第3の分離部によって分離される第3の光電変換領域および第4の光電変換領域と、を有し、前記第1の光電変換領域と前記第3の光電変換領域との間のポテンシャル差は、前記第1の光電変換領域と前記第4の光電変換領域との間のポテンシャル差よりも小さいことを特徴とする請求項1から構成4のいずれかに記載の光電変換装置。
【0114】
(構成6)前記複数の光電変換領域は、前記第1の分離部によって分離される第1の光電変換領域と第2の光電変換領域とを有し、前記第1の分離部の、前記複数の光電変換領域で生成される信号電荷に対するポテンシャルは、前記第1の光電変換領域および前記第2の光電変換領域の、前記信号電荷に対するポテンシャルよりも高いことを特徴とする構成1から構成5のいずれかに記載の光電変換装置。
【0115】
(構成7)前記複数の光電変換領域のそれぞれが台形の領域を有し、前記第1の分離部によって分離される第1の光電変換領域と第2の光電変換領域とはその長手方向に沿って第1の分離部が配された矩形の領域を有することを特徴とする請求項1から構成6のいずれかに記載の光電変換装置。
【0116】
(構成8)前記第1の分離部は、各画素における前記複数の光電変換領域の重心を通る線に沿って設けられることを特徴とする請求項1から構成7のいずれかに記載の光電変換装置。
【0117】
(構成9)前記第2の深さに設けられた光電変換領域と、前記第3の深さに設けられた光電変換領域とは導電型が同じであることを特徴とする請求項1から構成8のいずれかに記載の光電変換装置。
【0118】
(構成10)前記第1の分離部の面積は、前記第1の光電変換領域の面積よりも小さいことを特徴とする請求項1から構成9のいずれかに記載の光電変換装置。
【0119】
(構成11)構成1から構成10のいずれかに記載の光電変換装置と、
前記光電変換装置が出力する信号を用いて画像を生成する信号処理部と、を有することを特徴とする光電変換システム。
【0120】
(構成12)構成1から構成10のいずれかに記載の光電変換装置を備える移動体であって、
前記光電変換装置が出力する信号を用いて前記移動体の移動を制御する制御部を有することを特徴とする移動体。
【符号の説明】
【0121】
101 光電変換装置
102 画素
204 マイクロレンズ
207 第1の分離部
209 第2の分離部
205 第3の分離部