(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174239
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】状態推定モデル学習装置、方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06N 20/00 20190101AFI20231130BHJP
G01R 31/367 20190101ALI20231130BHJP
G01R 31/382 20190101ALI20231130BHJP
G01R 31/385 20190101ALI20231130BHJP
G01R 31/392 20190101ALI20231130BHJP
G01R 31/389 20190101ALI20231130BHJP
【FI】
G06N20/00 130
G01R31/367
G01R31/382
G01R31/385
G01R31/392
G01R31/389
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086983
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片山 昇
【テーマコード(参考)】
2G216
【Fターム(参考)】
2G216BA01
2G216BA21
2G216BA51
2G216CB11
(57)【要約】
【課題】インピーダンス測定の手間を軽減して、測定対象物の内部状態を精度よく推定する状態推定モデルを学習する。
【解決手段】状態推定モデル学習装置は、複数の測定対象物の各々についての、インピーダンス法により測定された周波数毎のインピーダンスと、予め求められた前記測定対象物の内部状態との組み合わせである学習データを複数受け付ける入力部と、前記受け付けた複数の学習データのうちの少なくとも2つの学習データを内分することにより、仮想測定対象物についての学習データを生成する学習データ生成部と、前記受け付けた複数の学習データと、前記生成された学習データとに基づいて、前記周波数毎のインピーダンスを入力とし、前記測定対象物の内部状態を出力する状態推定モデルを学習する学習部と、を含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の測定対象物の各々についての、インピーダンス法により測定された周波数毎のインピーダンスと、予め求められた前記測定対象物の内部状態との組み合わせである学習データを複数受け付ける入力部と、
前記受け付けた複数の学習データのうちの少なくとも2つの学習データを内分することにより、仮想測定対象物についての学習データを生成する学習データ生成部と、
前記受け付けた複数の学習データと、前記生成された学習データとに基づいて、前記周波数毎のインピーダンスを入力とし、前記測定対象物の内部状態を出力する状態推定モデルを学習する学習部と、
を含む状態推定モデル学習装置。
【請求項2】
前記学習データ生成部は、前記内部状態が対応する少なくとも2つの学習データを内分することにより、前記仮想測定対象物についての学習データを生成する請求項1記載の状態推定モデル学習装置。
【請求項3】
前記複数の測定対象物は、同一種類の測定対象物である請求項1又は2記載の状態推定モデル学習装置。
【請求項4】
前記測定対象物は、電子機器又は生物である請求項1~請求項3の何れか1項記載の状態推定モデル学習装置。
【請求項5】
前記電子機器は、電池であり、
前記内部状態は、温度、充電状態、又は劣化状態である請求項4記載の状態推定モデル学習装置。
【請求項6】
入力部が、複数の測定対象物の各々についての、インピーダンス法により測定された周波数毎のインピーダンスと、予め求められた前記測定対象物の内部状態との組み合わせである学習データを複数受け付け、
学習データ生成部が、前記受け付けた複数の学習データのうちの少なくとも2つの学習データを内分することにより、仮想測定対象物についての学習データを生成し、
学習部が、前記受け付けた複数の学習データと、前記生成された学習データとに基づいて、前記周波数毎のインピーダンスを入力とし、前記測定対象物の内部状態を出力する状態推定モデルを学習する
状態推定モデル学習方法。
【請求項7】
複数の測定対象物の各々についての、インピーダンス法により測定された周波数毎のインピーダンスと、予め求められた前記測定対象物の内部状態との組み合わせである学習データを複数受け付け、
前記受け付けた複数の学習データのうちの少なくとも2つの学習データを内分することにより、仮想測定対象物についての学習データを生成し、
前記受け付けた複数の学習データと、前記生成された学習データとに基づいて、前記周波数毎のインピーダンスを入力とし、前記測定対象物の内部状態を出力する状態推定モデルを学習する
ことをコンピュータに実行させる状態推定モデル学習プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の技術は、状態推定モデル学習装置、方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リチウムイオン電池等の電池の電池状態として劣化度を判定するために、交流インピーダンス法による測定で得られたインピーダンスと電池の劣化特性との関係について、機械学習を用いた方法が知られている(特許文献1)。
【0003】
また、電池のサイクル寿命を電池の早期の充放電サイクルの電圧をもとに機械学習で予測する技術が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-090346号公報
【特許文献2】特開2019-113524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1、2では、いずれも電池の個体差が考慮されておらず、機械学習のために使用した電池の特性にばらつきがあった場合、正確な状態推定ができない。
【0006】
開示の技術は、上記の点に鑑みてなされたものであり、インピーダンス測定の手間を軽減して、測定対象物の内部状態を精度よく推定する状態推定モデルを学習することができる状態推定モデル学習装置、方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1態様は、状態推定モデル学習装置であって、複数の測定対象物の各々についての、インピーダンス法により測定された周波数毎のインピーダンスと、予め求められた前記測定対象物の内部状態との組み合わせである学習データを複数受け付ける入力部と、前記受け付けた複数の学習データのうちの少なくとも2つの学習データを内分することにより、仮想測定対象物についての学習データを生成する学習データ生成部と、前記受け付けた複数の学習データと、前記生成された学習データとに基づいて、前記周波数毎のインピーダンスを入力とし、前記測定対象物の内部状態を出力する状態推定モデルを学習する学習部と、を含む。
【0008】
本開示の第2態様は、状態推定モデル学習方法であって、入力部が、複数の測定対象物の各々についての、インピーダンス法により測定された周波数毎のインピーダンスと、予め求められた前記測定対象物の内部状態との組み合わせである学習データを複数受け付け、学習データ生成部が、前記受け付けた複数の学習データのうちの少なくとも2つの学習データを内分することにより、仮想測定対象物についての学習データを生成し、学習部が、前記受け付けた複数の学習データと、前記生成された学習データとに基づいて、前記周波数毎のインピーダンスを入力とし、前記測定対象物の内部状態を出力する状態推定モデルを学習する。
【0009】
本開示の第3態様は、状態推定モデル学習プログラムであって、複数の測定対象物の各々についての、インピーダンス法により測定された周波数毎のインピーダンスと、予め求められた前記測定対象物の内部状態との組み合わせである学習データを複数受け付け、前記受け付けた複数の学習データのうちの少なくとも2つの学習データを内分することにより、仮想測定対象物についての学習データを生成し、前記受け付けた複数の学習データと、前記生成された学習データとに基づいて、前記周波数毎のインピーダンスを入力とし、前記測定対象物の内部状態を出力する状態推定モデルを学習することをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0010】
開示の技術によれば、インピーダンス測定の手間を軽減して、測定対象物の内部状態を精度よく推定する状態推定モデルを学習することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態の状態推定モデル学習装置及び状態推定装置として機能するコンピュータの一例の概略ブロック図である。
【
図2】インピーダンス法による測定方法を説明するための図である。
【
図3】本実施形態の状態推定モデル学習装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】仮想電池についての学習データを生成する方法を説明するための図である。
【
図5】内分比のバリエーションの例を示す図である。
【
図8】本実施形態の状態推定装置の構成を示すブロック図である。
【
図9】本実施形態の状態推定モデル学習装置の状態推定モデル学習処理ルーチンを示すフローチャートである。
【
図10】本実施形態の状態推定装置の状態推定処理ルーチンを示すフローチャートである。
【
図11】3つのリチウムイオン電池のインピーダンス特性を内分する例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、開示の技術の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一又は等価な構成要素及び部分には同一の参照符号を付与している。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0013】
<本実施形態の概要>
リチウムイオン電池等の電池の温度・充電量・劣化度などの内部状態の推定に、リチウムイオン電池の交流インピーダンス法と機械学習を用いることが考えられる。この場合、あらかじめ特定の電池のインピーダンス特性と推定したい内部状態を用いて学習させておき、内部状態が未知の電池のインピーダンスから内部状態を推定する。しかしながら電池には個体差があるため、学習に使用した電池と異なる電池を使用した場合に内部状態の推定が精度よく行えない場合がある。多数の電池を用いて学習を行えば、機械学習の汎化とよばれる性質により、個体差が吸収されて高精度で状態を推定できるようになるが、測定に手間がかかる。
【0014】
そこで、本実施形態では、2つ以上の電池の周波数毎のインピーダンスであるインピーダンス特性を内分したインピーダンス特性を、内分比を変化させて複数の仮想的な電池のインピーダンス特性を生成する。このインピーダンス特性を学習データとして機械学習を行い、内部状態が未知である新たな電池のインピーダンス特性から、内部状態を推定する。
【0015】
具体的には、2つ以上の電池のインピーダンス特性を内分したインピーダンス特性を、内分比を変化させて多数生成し、仮想的な電池のインピーダンス特性を得る。仮想的な電池のインピーダンス特性を用いることで、多数の電池のインピーダンス特性が不要となり、測定の手間が大幅に削減される。
【0016】
また、交流インピーダンス法により得られたインピーダンス特性をもとに機械学習を用いて電池の状態推定を行う際に、機械学習に必要な学習データを取得するための電池と、推定対象の電池とに、電池の個体差により生じる差がある場合においても、電池の状態推定が正確に行える。
【0017】
<本実施形態に係る状態推定モデル学習装置の構成>
図1は、本実施形態の状態推定モデル学習装置10のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0018】
図1に示すように、状態推定モデル学習装置10は、CPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、ストレージ14、入力部15、表示部16及び通信インタフェース(I/F)17を有する。各構成は、バス19を介して相互に通信可能に接続されている。
【0019】
CPU11は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU11は、ROM12又はストレージ14からプログラムを読み出し、RAM13を作業領域としてプログラムを実行する。CPU11は、ROM12又はストレージ14に記憶されているプログラムに従って、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。本実施形態では、ROM12又はストレージ14には、状態推定モデルを学習するための状態推定モデル学習プログラムが格納されている。状態推定モデル学習プログラムは、1つのプログラムであっても良いし、複数のプログラム又はモジュールで構成されるプログラム群であっても良い。
【0020】
ROM12は、各種プログラム及び各種データを格納する。RAM13は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ14は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを格納する。
【0021】
入力部15は、マウス等のポインティングデバイス、及びキーボードを含み、各種の入力を行うために使用される。
【0022】
入力部15は、複数の電池の各々についての、インピーダンス法により測定された周波数毎のインピーダンスと、予め求められた電池の内部状態(温度及び充電状態)との組み合わせである学習データを、入力として受け付ける。具体的には、
図2に示すように、充電状態が予め求められた電池34を恒温槽32に収容し、インピーダンス測定器30、スイッチ36、及び充放電回路38を用いて、インピーダンス法により周波数毎のインピーダンスを測定する。このとき、電池34の温度は恒温槽32で制御され、電池34の周波数毎のインピーダンスはインピーダンス測定器30を用いて測定される。測定された周波数毎のインピーダンスと、恒温槽32の温度と、電池34について予め求められた充電状態との組み合わせを、学習データとする。この学習データを、複数の電池の各々について用意し、入力部15は、複数の電池の各々についての学習データを受け付ける。この複数の電池は、同一種類の電池である。
【0023】
表示部16は、例えば、液晶ディスプレイであり、各種の情報を表示する。表示部16は、タッチパネル方式を採用して、入力部15として機能しても良い。
【0024】
通信インタフェース17は、他の機器と通信するためのインタフェースであり、例えば、イーサネット(登録商標)、FDDI(Fiber Distributed Data Interface)、Wi-Fi(登録商標)等の規格が用いられる。
【0025】
次に、状態推定モデル学習装置10の機能構成について説明する。
図3は、状態推定モデル学習装置10の機能構成の例を示すブロック図である。
【0026】
状態推定モデル学習装置10は、機能的には、
図3に示すように、学習用データベース(DB)20、学習データ生成部22、学習部24、及びモデル記憶部26を備えている。
【0027】
学習用データベース20には、入力された複数の電池の各々についての学習データが記憶されている。
【0028】
学習データ生成部22は、受け付けた複数の学習データのうちの少なくとも2つの学習データを内分することにより、仮想電池についての学習データを生成する。具体的には、学習データ生成部22は、内部状態が対応する少なくとも2つの学習データを内分することにより、仮想電池についての学習データを生成する。
【0029】
例えば、
図4に示すように、内部状態(温度及び充電状態)が略同一となる3つの学習データの周波数毎のインピーダンスを表すインピーダンス特性Z
A、Z
B、Z
Cの点を、以下の式に従って内分して仮想電池Xのインピーダンス特性Z
Xを生成する。
図4では、周波数毎に測定されたインピーダンスの実部Z’、インピーダンスの虚部Z’’をプロットすることにより得られたインピーダンス特性を示している。一例として、26の周波数毎に、測定されたインピーダンスの実部Z’、インピーダンスの虚部Z’’をプロットすることにより得られたインピーダンス特性が生成される。
【0030】
【0031】
ただし、α、β、γは、3つの学習データのインピーダンス特性Z
A、Z
B、Z
Cを内分する際の内分比であり、
図5に示すように、様々な内分比を設定して、仮想電池についての学習データを複数生成する。
【0032】
図5では、α:β:γ=1:1:9、・・・、9:9:1の81種類の内分比を用いる例を示している。本実施形態の例では、内部状態(温度及び充電状態)が略同一となる3つの学習データのインピーダンス特性Z
A、Z
B、Z
Cを8セット用意し、81種類の内分比を用いることにより、81×8=648個の仮想電池についての学習データを生成する。
【0033】
学習部24は、受け付けた複数の電池についての学習データと、生成された複数の仮想電池についての学習データとに基づいて、周波数毎のインピーダンスを入力とし、電池の内部状態を出力する状態推定モデルを学習する。
【0034】
具体的には、学習データの周波数毎のインピーダンスを入力とし、当該学習データの電池の内部状態(温度及び充電状態)を出力するように、ニューラルネットワークである状態推定モデルを学習する。
【0035】
より具体的には、測定された26の周波数ごとのインピーダンスに対してそれぞれ実部と虚部があるため、
図6に示すように、状態推定モデルでは、52次元の入力データとなる。状態推定モデルの隠れ層は2層あり1層目と2層目のノード数はそれぞれ32と16とし、活性化関数として、
図7に示すReLU関数を用いた。出力層からは、温度SoT(℃)、充電状態SoC(%)を表す二次元の値が出力される。
【0036】
モデル記憶部26には、学習された状態推定モデルが記憶される。
【0037】
<本実施形態に係る状態推定装置の構成>
上記
図1は、本実施形態の状態推定装置50のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0038】
上記
図1に示すように、状態推定装置50は、状態推定モデル学習装置10と同様の構成であり、ROM12又はストレージ14には、電池の内部状態を推定するための状態推定プログラムが格納されている。
【0039】
入力部15は、推定対象の電池についてインピーダンス法により測定された周波数毎のインピーダンスを、入力として受け付ける。例えば、入力部15は、推定対象の電池についてインピーダンス法により測定された26の周波数毎のインピーダンスの実部と虚部とからなる52次元の値を、入力として受け付ける。
【0040】
次に、状態推定装置50の機能構成について説明する。
図8は、状態推定装置50の機能構成の例を示すブロック図である。
【0041】
状態推定装置50は、機能的には、
図8に示すように、モデル記憶部60及び状態推定部62を備えている。
【0042】
モデル記憶部60には、状態推定モデル学習装置10によって学習された状態推定モデルが記憶される。
【0043】
状態推定部62は、受け付けた周波数毎のインピーダンスを状態推定モデルに入力し、推定対象の電池の内部状態を推定する。
【0044】
具体的には、推定対象の電池についてインピーダンス法により測定された26の周波数毎のインピーダンスの実部と虚部とからなる52次元の値を、状態推定モデルに入力し、推定対象の電池の内部状態である温度SoT(℃)、充電状態SoC(%)を表す二次元の値を推定する。
【0045】
<本実施形態に係る状態推定モデル学習装置の作用>
次に、本実施形態に係る状態推定モデル学習装置10の作用について説明する。
【0046】
図9は、状態推定モデル学習装置10による状態推定モデル学習処理の流れを示すフローチャートである。CPU11がROM12又はストレージ14から状態推定モデル学習プログラムを読み出して、RAM13に展開して実行することにより、状態推定モデル学習処理が行なわれる。また、状態推定モデル学習装置10に、複数の電池の各々についての、インピーダンス法により測定された周波数毎のインピーダンスと、予め求められた電池の内部状態(温度、充電状態)との組み合わせである学習データが入力され、学習用データベース20に格納される。
【0047】
ステップS100で、CPU11は、学習データ生成部22として、受け付けた複数の学習データのうちの少なくとも2つの学習データを内分することにより、仮想電池についての学習データを生成する。具体的には、学習データ生成部22は、内部状態が対応する少なくとも2つの学習データを内分することにより、仮想電池についての学習データを生成する。このとき、内分比を変えて、仮想電池についての学習データを複数生成する。
【0048】
ステップS102で、CPU11は、学習部24として、受け付けた複数の電池についての学習データと、生成された複数の仮想電池についての学習データとに基づいて、周波数毎のインピーダンスを入力とし、電池の内部状態を出力する状態推定モデルを学習する。CPU11は、学習された状態推定モデルをモデル記憶部26に格納し、状態推定モデル学習処理を終了する。
【0049】
<本実施形態に係る状態推定装置の作用>
次に、本実施形態に係る状態推定装置50の作用について説明する。
【0050】
図10は、状態推定装置50による状態推定処理の流れを示すフローチャートである。CPU11がROM12又はストレージ14から状態推定プログラムを読み出して、RAM13に展開して実行することにより、状態推定処理が行なわれる。また、状態推定装置50に、推定対象の電池についてインピーダンス法により測定された周波数毎のインピーダンスが入力される。
【0051】
ステップS110で、CPU11は、入力された推定対象の電池についてインピーダンス法により測定された周波数毎のインピーダンスを取得する。
【0052】
ステップS112で、CPU11は、状態推定部62として、受け付けた周波数毎のインピーダンスを状態推定モデルに入力し、推定対象の電池の内部状態を推定する。
【0053】
ステップS114で、CPU11は、上記ステップS112の推定結果を表示部16により出力し、状態推定処理を終了する。
【0054】
<実施例>
上述した状態推定モデル学習装置10及び状態推定装置50を用いて電池の温度を推定する実施例について説明する。
【0055】
ここでは、4種類のリチウムイオン電池A、B、C、Dを用意し、3種類のリチウムイオン電池A、B、Cを用いて、仮想電池のインピーダンス特性を生成すると共に、状態推定モデルを学習した。
【0056】
図11(A)に、3種類のリチウムイオン電池A、B、Cの周波数毎のインピーダンスを表すインピーダンス特性を示す。また、
図11(B)に、3種類のリチウムイオン電池A、B、Cのインピーダンス特性を、1:1:9に内分して生成した仮想電池Xのインピーダンス特性ZXを示す。
【0057】
図12(A)に、リチウムイオン電池Dのインピーダンス特性を用いて、リチウムイオン電池Dの温度を推定した結果(縦軸)と、実際の温度(横軸)とを示す。推定値(縦軸)は実際の温度(横軸)に近い値をとることが分かる。
【0058】
また、3種類のリチウムイオン電池B、C、Dを用いて、仮想電池のインピーダンス特性を生成すると共に、状態推定モデルを学習し、リチウムイオン電池Aの温度を推定した場合についても
図12(B)に示す。
図12(B)は、リチウムイオン電池Aのインピーダンス特性を用いて、リチウムイオン電池Aの温度を推定した結果(縦軸)と、実際の温度(横軸)とを示すグラフである。推定値(縦軸)は実際の温度(横軸)に近い値をとることが分かる。このように、学習に用いていない電池のインピーダンス特性を用いて温度を推定した結果、温度推定に成功していることが分かった。
【0059】
以上説明したように、本実施形態に係る状態推定モデル学習装置は、インピーダンス法により測定された周波数毎のインピーダンスと、予め求められた電池の内部状態との組み合わせである学習データを複数受け付け、少なくとも2つの学習データを内分することにより、仮想電池についての学習データを生成し、状態推定モデルを学習する。これにより、インピーダンス測定の手間を軽減して、電池の内部状態を精度よく推定する状態推定モデルを学習することができる。
【0060】
また、本実施形態に係る状態推定装置は、状態推定モデル学習装置によって学習された状態推定モデルを用いて、電池の内部状態を推定する。これにより、電池の内部状態を精度よく推定することができる。
【0061】
<変形例>
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0062】
例えば、測定対象物が、電池である場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、電池以外の電子機器や、野菜や果物などの生物を、測定対象物として内部状態を推定してもよい。
【0063】
また、電池の温度及び充電状態を推定する場合を説明したが、これに限定されるものではない。電池の劣化状態を推定するようにしてもよい。また、電池の温度、充電状態、及び劣化状態の何れかを推定するようにしてもよいし、電池の温度、充電状態、及び劣化状態のうちの任意の組み合わせを推定するようにしてもよい。
【0064】
また、状態推定モデル学習装置と状態推定装置とを別々の装置として構成する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、状態推定モデル学習装置と状態推定装置とを一つの装置として構成してもよい。
【0065】
また、上記各実施形態でCPUがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した各種処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、状態推定モデル学習処理及び状態推定処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0066】
また、上記各実施形態では、状態推定モデル学習プログラム及び状態推定プログラムがストレージ14に予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。プログラムは、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の非一時的(non-transitory)記憶媒体に記憶された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【符号の説明】
【0067】
10 状態推定モデル学習装置
11 CPU
14 ストレージ
15 入力部
16 表示部
20 学習用データベース
22 学習データ生成部
24 学習部
26 モデル記憶部
30 インピーダンス測定器
32 恒温槽
34 電池
50 状態推定装置
60 モデル記憶部
62 状態推定部