(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174251
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】車両用制御装置
(51)【国際特許分類】
B60R 16/02 20060101AFI20231130BHJP
B60K 35/00 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B60R16/02 640K
B60R16/02 635
B60K35/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086998
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105980
【弁理士】
【氏名又は名称】梁瀬 右司
(74)【代理人】
【識別番号】100121027
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100178995
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 陽介
(72)【発明者】
【氏名】平松 宗也
【テーマコード(参考)】
3D344
【Fターム(参考)】
3D344AA03
3D344AA16
3D344AA27
3D344AA30
3D344AD01
3D344AD13
(57)【要約】
【課題】表示装置の電源ラインに接続されたヒューズの挿抜状態を判定し、判定結果に応じて表示内容を変更することにより、利便性を向上する。
【解決手段】車両用制御装置では、各種の情報およびスイッチが表示されるCID3およびメータディスプレイ4と、これらの表示画面を制御する統合コックピットECU10のCPU10aとを備える。ここで、CPU10aは、CID3のバックアップ電源ラインL1に接続されたバックアップヒューズ20aの挿抜状態を判定し、該ヒューズ20aが抜かれている状態で、イグニッションスイッチがON状態に操作された場合は、CID3の表示していた各種機能の設定スイッチを、メータディスプレイ4に表示させる。これにより、CID3の表示ができない場合であっても、各種機能の設定を行うことができ、利便性が向上する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に配設された表示装置を制御する車両用制御装置において、
前記表示装置を制御する表示装置制御手段を備え、
前記表示装置の電源供給ラインには、当該ラインを電気的に断続するヒューズが挿抜可能に接続された第1の電源供給ラインと、第2の電源供給ラインとがあり、
前記表示装置制御手段は、
前記ヒューズが挿入されているか抜かれているかの挿抜状態を判定し、当該判定結果に応じて前記表示装置の表示内容を変更または表示画面に追加する
ことを特徴とする車両用制御装置。
【請求項2】
前記表示装置は、第1の表示装置と第2の表示装置とを含み、
前記第1の表示装置には、前記第1の電源供給ラインが接続され、
前記第2の表示装置には、前記第2の電源供給ラインが接続され、
前記表示装置制御手段は、前記第1の表示装置の前記ヒューズの挿抜状態の判定結果に応じて前記第2の表示装置の表示内容を変更または表示画面に追加することを特徴とする請求項1に記載の車両用制御装置。
【請求項3】
前記表示装置制御手段は、前記第1の表示装置の前記ヒューズが抜かれていると判定した場合は、前記第1の表示装置の表示内容の少なくとも一部が表示されるように、前記第2の表示装置の表示内容を変更または表示画面に追加することを特徴とする請求項2に記載の車両用制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設けられた表示装置の制御を行う車両用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両には、搭載された電気機器を保護するためにヒューズが設けられている(例えば、特許文献1)。ヒューズは、電気機器の回路内(例えば電源ライン)に設けられており、回路の異常時に過電流が発生した場合に溶断して回路を保護する。ヒューズは、通常の使用状態では溶断しないことが要求されるため、ヒューズの寿命を推定して定期的に交換する場合があるが、特許文献1では、算出したヒューズの抵抗値に基づいてヒューズの寿命を推定し、ヒューズの劣化を通知する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、各種制御を行うECUやカーナビなどの車両に搭載される電子機器では、イグニッションスイッチがOFFの状態でも、メモリの記憶内容の保持等を行うためのバックアップ電源が設けられる場合がある。この場合、イグニッションスイッチがOFFの状態でも待機電流を消費するため、バッテリが劣化しやすいという問題がある。そこで、バックアップ電源の供給ラインにもヒューズ(バックアップヒューズ)を設け、車両の運搬時や長期保管時には、当該ヒューズを抜いて待機電流を防止することが行われる場合がある。
【0005】
しかしながら、例えば、カーナビ、ディスプレイオーディオ、その他の液晶パネルなどの表示装置にバックアップヒューズが設けられていた場合、運搬時や長期保管時にバックアップヒューズが抜かれると表示装置の表示ができない状態になる。この場合、運搬時などに車を一時的に動かす場合に、表示装置に表示させると有益な情報があっても、表示されないことになる。
【0006】
そこで、イグニッションスイッチがONされた状態で導通する電源ラインなど、他の電源ラインを設けて、バックアップヒューズが抜かれた状態でも表示装置に表示できるようにすることが考えられる。ただし、運搬時や長期保管時においては表示装置への表示が必要でない項目と必要となる項目があり、状況に応じて表示装置の表示内容を変更すると利便性が向上する。
【0007】
本発明は、上記した課題を鑑みてなされたものであり、表示装置の電源ラインに接続されたヒューズの挿抜状態を判定し、判定結果に応じて表示内容を変更することにより、利便性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するため、本発明にかかる車両用制御装置は、車両に配設された表示装置を制御する車両用制御装置において、前記表示装置を制御する表示装置制御手段を備え、前記表示装置の電源供給ラインには、当該ラインを電気的に断続するヒューズが挿抜可能に接続された第1の電源供給ラインと、第2の電源供給ラインとがあり、前記表示装置制御手段は、前記ヒューズが挿入されているか抜かれているかの挿抜状態を判定し、当該判定結果に応じて前記表示装置の表示内容を変更または表示画面に追加することを特徴としている(請求項1)。
【0009】
また、前記表示装置は、第1の表示装置と第2の表示装置とを含み、前記第1の表示装置には、前記第1の電源供給ラインが接続され、前記第2の表示装置には、前記第2の電源供給ラインが接続され、前記表示装置制御手段は、前記第1の表示装置の前記ヒューズの挿抜状態の判定結果に応じて前記第2の表示装置の表示内容を変更または表示画面に追加するようにしてもよい(請求項2)。
【0010】
また、前記表示装置制御手段は、前記第1の表示装置の前記ヒューズが抜かれていると判定した場合は、前記第1の表示装置の表示内容の少なくとも一部が表示されるように、前記第2の表示装置の表示内容を変更または表示画面に追加するようにしてもよい(請求項3)。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、ヒューズの挿抜状態によって、表示装置の表示内容を変更可能に構成されているため、例えば、ヒューズが抜かれていない状態では表示されない項目でも、ヒューズが抜かれた状態では表示可能になるため、利便性が向上する。
【0012】
請求項2の発明によれば、第1の表示装置のヒューズの挿抜状態によって、第2の表示装置の表示内容が変更または表示画面に追加されるため、利便性が向上する。
【0013】
請求項3の発明によれば、第1の表示装置のヒューズが抜かれている状態では、第2の表示装置の表示内容として、第1の表示装置の表示内容の少なくとも一部が表示される。したがって、例えば、第1の表示装置のヒューズが抜かれている状態では、第1の表示装置の表示内容を第2の表示装置に表示させることができ、利便性が向上する。また、例えば、第1の表示装置のヒューズが抜かれている状態で、イグニッションスイッチがON状態のときだけ表示させようとすると、第1の表示装置に、イグニッションスイッチがON状態のときにのみ導通する電源回路を形成した別の電源ラインを設ける必要がある。この場合、第1の表示装置用に、別途電源回路やハーネスを設ける必要が生じてコストや重量の増加につながるが、このようなコストや重量が増加するのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両用制御装置の概略構成図である。
【
図2】
図1の車両用制御装置の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態にかかる車両用制御装置について、
図1~
図2を参照して説明する。なお、
図1は本発明の一実施形態に係る車両用制御装置の概略構成図、
図2は車両用制御装置の動作を説明するための図である。
【0016】
(車両の電気的構成)
本発明の一実施形態にかかる車両用制御装置は、車両1に配設されるものであり、各種電子機器に電源を供給するバッテリ2と、CID(Center Information Display)3と、メータディスプレイ4と、ハンドルに設けられたステアリングスイッチ5と、CID3とメータディスプレイ4の表示を制御する統合コックピットECU10とを備える。
【0017】
CID3(本発明の「第1の表示装置」に相当)は、各種の情報やスイッチを表示する表示装置であり、インストルメントパネルの中央部に配設される。CID3は、タッチパネル構成であり、液晶パネルと、該液晶パネルが押下されたときの位置を検知して、その位置情報を統合コックピットECU10のCPU10aに送信する位置検知手段とを備える。
【0018】
CID3の表示画面に表示される情報としては、例えば、カーナビゲーションの地図表示や、燃費情報であり、スイッチとしては、運転支援機能のON/OFFの設定スイッチ、横滑り防止機能(VSC)のON/OFFの設定スイッチ、エアコン調整の操作スイッチ、アイドリングストップ機能のON/OFFの設定スイッチである。なお、CID3は、タッチパネル構成でなく、ハードスイッチ構成による表示であっても良い。
【0019】
各スイッチは、表示画面の特定領域に表示され、ユーザが当該特定領域を押下すると、その位置情報を含む押下信号が統合コックピットECU10のCPU10aに送信される。なお、CID3の表示画像のデータは、例えば、統合コックピットECU10のメモリ10bに記憶されており、統合コックピットECU10のCPU10aがメモリ10bから画像データを選択してCID3に表示させる。なお、表示画像データについては、CID3に設けられたメモリ(図示省略)に保存し、CID3のCPU(図示省略)が、統合コックピットECU10のCPU10aから指定された画像データをメモリ内から選択して表示画面に表示させるようにしてもよい。
【0020】
CID3は、バッテリ2から電源が供給されて駆動する。この実施形態では、CID3に電源を供給する経路として、バックアップ電源ラインL1(本発明の「第1の電源供給ライン」に相当)と、ACC電源ラインL2の2ラインが設けられている。バックアップ電源ラインL1は、バッテリ2とCID3の電源端子とをその他の回路を介さずに直接接続するラインである。また、バックアップ電源ラインL1には直列にバックアップヒューズ20aが接続される。
【0021】
バックアップヒューズ20a(本発明の「ヒューズ」に相当)は、例えば、板状または線状の金属などで形成されており、例えば、バッテリ2とCID3の電源端子との間の正極ラインに直列に接続されている。バックアップヒューズ20aを形成する金属は、所定値以上の電流が流れると溶断してバックアップ電源ラインL1を遮断する。
【0022】
ACC(アクセサリ)電源ラインL2は、バッテリ2とCID3の電源端子とをACC電源回路を介して接続するラインである。ACC電源回路は、ACC電源スイッチがONの状態ではACC電源ラインL2を導通させ、OFFの状態ではACC電源ラインL2を遮断させる回路である。また、ACC電源ラインL2には直列にACCヒューズ20bが接続されている。
【0023】
ACCヒューズ20bは、例えば、板状または線状の金属などで形成されており、例えば、バッテリ2とCID3の電源端子との間の正極ラインに直列に接続されている。ACCヒューズ20bを形成する金属は、所定値以上の電流が流れると溶断してACC電源ラインL2を遮断する。したがって、ACCヒューズ20bが正常な状態で挿入されていると、ACCがONの状態でバッテリ2から電源がCID3に供給される。
【0024】
この構成によれば、イグニッションスイッチ(図示省略)がOFFの状態でも、ACC電源スイッチがOFFの状態でも、バックアップ電源ラインL1に正常なバックアップヒューズ20aが挿入されていると、CID3にはバッテリ2からの電源(バックアップ電源)が供給される。
【0025】
メータディスプレイ4(本発明の「第2の表示装置」に相当)は、各種の情報や各種機能(例えば、運転支援機能(SCM)、横滑り防止機能(VSC)など)のON/OFFボタンを表示する表示装置であり、インストルメントパネルの運転席側において車速メータやタコメータなどの計測器を含めている。メータディスプレイ4は、例えば非タッチパネル式の液晶パネルで構成されており、後述する機能のON/OFFの設定ボタンが表示されているときは、ハンドルに設置されたステアリングスイッチ5を操作してON/OFFの指定を行う。なお、車速メータやタコメータなどの計測器は、をメータディスプレイ4と別体に構成しても良い。具体的には、インストルメントパネルの運転席側において、メータディスプレイ4と車速メータやタコメータなどの計測器とを隣接して配設しても良い。
【0026】
メータディスプレイ4の表示画面に表示される情報としては、例えば、車室内のイルミネーション機能のON/OFF状態の表示、カーステレオなどの設定音量の表示などである。イルミネーション機能とは、車室内に配設されたカラーLEDなどの照明装置の点灯の有無や点灯色を変えたりできる機能である。
【0027】
なお、メータディスプレイ4の表示画面には、バックアップヒューズ20aが抜かれている状態で、イグニッション電源が供給された場合、通常であればCID3の表示画面に表示される一部の内容が表示される。この実施形態では、当該一部の内容は、運転支援機能のON/OFFの設定ボタン、横滑り防止機能(VSC)のON/OFFの設定ボタン、アイドリングストップ機能のON/OFFの設定ボタンであり、詳しくは後述する。
【0028】
ステアリングスイッチ5は、例えば、表示画面内に表示された項目指定カーソルの移動スイッチ、エンタースイッチ、リターンスイッチ、音量の設定スイッチ、イルミネーション機能のON/OFFスイッチなどの複数のスイッチで構成されている。
【0029】
なお、メータディスプレイ4の表示画像のデータは、例えば、統合コックピットECU10のメモリ10bに記憶されており、統合コックピットECU10のCPU10aがメモリ10bから画像データを選択してメータディスプレイ4に表示させる。なお、表示画像データについては、メータディスプレイ4に設けられたメモリ(図示省略)に保存し、メータディスプレイ4のCPU(図示省略)が、統合コックピットECU10のCPU10aから指定された画像データをメモリ内から選択して表示画面に表示させるようにしてもよい。
【0030】
メータディスプレイ4は、バッテリ2から電源が供給されて駆動する。この実施形態では、メータディスプレイ4に電源を供給する経路として、バックアップ電源ラインL3と、IG電源ラインL4(本発明の「第2の電源供給ライン」に相当)と、ACC電源ラインL5の3ラインが設けられている。バックアップ電源ラインL3は、バッテリ2とメータディスプレイ4の電源端子とをその他の回路を介さずに直接接続するラインである。また、バックアップ電源ラインL3には直列にバックアップヒューズ30aが接続されている。
【0031】
バックアップヒューズ30aは、例えば、板状または線状の金属などで形成されており、例えば、バッテリ2とメータディスプレイ4の電源端子との間の正極ラインに直列に接続されている。バックアップヒューズ30aを形成する金属は、所定値以上の電流が流れると溶断してバックアップ電源ラインL3を遮断する。
【0032】
IG(イグニッション)電源ラインL4は、バッテリ2とメータディスプレイ4の電源端子とをIG電源回路を介して接続するラインである。IG電源回路は、イグニッションスイッチがONの状態ではIG電源ラインL4を導通させ、OFFの状態ではIG電源ラインL4を遮断させる回路である。また、IG電源ラインL4には直列にIGヒューズ30bが接続されている。
【0033】
IGヒューズ30bは、例えば、板状または線状の金属などで形成されており、例えば、バッテリ2とメータディスプレイ4の電源端子との間の正極ラインに直列に接続されている。IGヒューズ30bを形成する金属は、所定値以上の電流が流れると溶断してIG電源ラインL4を遮断する。したがって、IGヒューズ30bが正常な状態で挿入されていると、イグニッションスイッチがONの状態でバッテリ2から電源がメータディスプレイ4に供給される。
【0034】
ACC(アクセサリ)電源ラインL5は、バッテリ2とメータディスプレイ4の電源端子とをACC電源回路を介して接続するラインである。ACC電源回路は、ACC電源スイッチがONの状態ではACC電源ラインL5を導通させ、OFFの状態ではACC電源ラインL5を遮断させる回路である。また、ACC電源ラインL5には直列にACCヒューズ30cが接続されている。
【0035】
ACCヒューズ30cは、例えば、板状または線状の金属などで形成されており、例えば、バッテリ2とメータディスプレイ4の電源端子との間の正極ラインに直列に接続されている。ACCヒューズ30cを形成する金属は、所定値以上の電流が流れると溶断してACC電源ラインL5を遮断する。したがって、ACCヒューズ30cが正常な状態で挿入されていると、ACCがONの状態でバッテリ2から電源がメータディスプレイ4に供給される。
【0036】
この構成によれば、イグニッションスイッチ(図示省略)がOFFの状態でも、ACC電源スイッチがOFFの状態でも、バックアップ電源ラインL3に正常なバックアップヒューズ30aが挿入されていると、メータディスプレイ4にはバッテリ2からの電源(バックアップ電源)が供給される。
【0037】
統合コックピットECU10は、CID3およびメータディスプレイ4の表示を制御するものであり、各種制御及び各種演算などを行うCPU10a(本発明の「表示装置制御手段」に相当)、各種プログラムや、CID3およびメータディスプレイ4の画像データなどを記憶するメモリ10bなどを有する。
【0038】
(CIDの表示画面の制御)
例えば、統合コックピットECU10のCPU10aは、CID3のホーム画面に表示されているカーナビのアイコンの表示領域がユーザにより押下された場合は、CID3から送信された押下信号(押下位置情報を含む)に基づいて、ユーザがカーナビを指定していると判定し、メモリ10bからカーナビの地図画像データを選択して、CID3に表示させる。
【0039】
また、統合コックピットECU10のCPU10aは、CID3のホーム画面に表示されている運転支援機能のONボタン(「SCM」のONボタン)の表示領域がユーザにより押下された場合は、CID3から送信された押下信号(押下位置情報を含む)に基づいて、ユーザにより運転支援機能の作動が指定されていると判定し、運転支援機能の制御を司る他のECUに運転支援機能の作動要求信号を送信する。当該他のECUでは作動要求信号の受信に基づいて運転支援制御を実行する。
【0040】
この実施形態において、運転支援制御とは、例えば、パーキングアシスト機能にかかる制御であったり、衝突被害軽減機能にかかる制御であったり、前方車両の追従機能にかかる制御である。なお、統合コックピットECU10のCPU10aと他のECUとは、CAN通信により相互に情報のやり取りが可能になっている。
【0041】
一方、統合コックピットECU10のCPU10aは、CID3のホーム画面に表示されている運転支援機能のOFFボタン(「SCM」のOFFボタン)の表示領域がユーザにより押下された場合は、CID3から送信された押下信号(押下位置情報を含む)に基づいて、ユーザにより運転支援機能の非作動が指定されていると判定し、運転支援機能の制御を司る他のECUに運転支援機能の非作動要求信号を送信する。当該他のECUでは非作動要求信号の受信に基づいて、運転支援機能を実施しない。
【0042】
横滑り防止機能(VSC)のON/OFFボタンや、アイドリングストップ機能のON/OFFボタンについてもCID3のホーム画面に表示されており、これらの表示領域がユーザにより押下された場合も同様に、その機能を司る他のECUが作動要求信号または非作動要求信号を受信することにより当該機能を作動させるか、あるいは、非作動とする。
【0043】
(メータディスプレイの表示画面の制御)
メータディスプレイ4について、統合コックピットECU10のCPU10aは、CID3のバックアップ電源ラインL1のバックアップヒューズ20aが挿入されているか、抜かれているかを判定して表示内容の変更または表示画面に追加を行う。
【0044】
(バックアップヒューズが挿入されている場合)
例えば、統合コックピットECU10のCPU10aは、CID3のバックアップ電源ラインL1のバックアップヒューズ20aが挿入されていると判定した場合は、現在設定されているイルミネーション機能のON/OFF状態と、現在設定されている音量レベルをメータディスプレイ4の表示内容に決定する。このとき、統合コックピットECU10のCPU10aは、決定した表示内容に対応する画像データをメモリ10bから選択してメータディスプレイ4に表示させる。
【0045】
CID3のバックアップ電源ラインL1のバックアップヒューズ20aが挿入されているか、あるいは、抜かれているかは、例えば、CID3のバックアップ電源ラインL1に接続される電源端子の電圧レベルを検知することで判定可能である。
【0046】
設定されているイルミネーション機能のON/OFFの状態や、設定されている音量レベルは例えば、メモリ10bの所定の記憶領域に格納されており、当該記憶領域の記憶内容に基づいて表示する。イルミネーション機能のON/OFFの変更は、ステアリングスイッチ5のイルミネーション機能のON/OFFスイッチを押下することにより行う。例えば、イルミネーション機能がOFFの状態でステアリングスイッチ5のイルミネーション機能のONスイッチが押下された場合は、当該信号が統合コックピットECU10のCPU10aに入力される。統合コックピットECU10のCPU10aでは、当該信号が入力されると、メモリ10bに記憶されているイルミネーション機能のON/OFF状態の格納領域の記憶内容をON状態に書き換え、メータディスプレイ4の表示に反映させる。
【0047】
(バックアップヒューズが抜かれている場合)
統合コックピットECU10のCPU10aは、CID3のバックアップ電源ラインL1のバックアップヒューズ20aが抜かれていると判定した場合は、横滑り防止機能(VSC機能)のON/OFF、運転支援機能のON/OFF、アイドリングストップ機能のON/OFFの設定画面をメータディスプレイ4の表示内容に決定する。このとき、統合コックピットECU10のCPU10aは、決定した表示内容に対応する画像データをメモリ10bから選択してメータディスプレイ4に表示させる。
【0048】
横滑り防止機能(VSC機能)のON/OFF、運転支援機能のON/OFF、アイドリングストップ機能のON/OFFの設定画面は、本来であればCID3の表示項目である。ただし、CID3のバックアップ電源ラインL1のバックアップヒューズ20aが抜かれている場合は、イグニッションスイッチをON状態にしても、電源が供給されずにCID3に表示できないため、この実施形態ではメータディスプレイ4で表示する。
【0049】
当該設定画面の表示態様の一例としては、例えば、メータディスプレイ4の表示画面に、横滑り防止機能(VSC機能)の欄と、運転支援機能(SCM機能)の欄と、アイドリングストップ機能(IS機能)の欄とが表示されるとともに、そのうちの1つを指定するカーソルが表示される。カーソルは、ステアリングスイッチ5の項目指定カーソルの移動スイッチを押下することで移動する。ここで、ステアリングスイッチ5のエンタースイッチが押下されるたびに、カーソルが位置する欄に対応する機能のONとOFFが切り換わり、統合コックピットECU10のCPU10aは、変更後のON/OFF状態が表示画面に反映されるように表示画面を制御する。
【0050】
また、統合コックピットECU10のCPU10aは、機能のON/OFF状態の変更操作があった場合は、指定された状態を示す要求信号(作動要求信号/非作動要求信号)を担当するECUに送信する。
【0051】
なお、上記した設定画面の表示態様は一例であり、横滑り防止機能(VSC機能)と、運転支援機能(SCM機能)と、アイドリングストップ機能(IS機能)とをメータディスプレイ4で設定可能な構成であれば、適宜変更または追加可能である。
【0052】
次に、バックアップヒューズ20aの挿抜状態によるメータディスプレイ4とCID3の表示画面の変化について、
図2を参照して説明する。なお、
図2のCID3の表示画面は、表示画面中の一部の表示項目を図示しており、他の表示項目は図示省略している。
【0053】
日常で使用しているときの車両1では、CID3のバックアップ電源ラインL1のバックアップヒューズ20aおよびACC電源ラインL2のACCヒューズ20b、メータディスプレイ4のバックアップ電源ラインL3のバックアップヒューズ30a、IG電源ラインL4のIGヒューズ30b、ACC電源ラインL5のACCヒューズ30cの全てが挿入された状態にある。
【0054】
この状態で、例えばイグニッションスイッチがON操作されると、メータディスプレイ4には、設定されているイルミネーション機能の状態(
図2では「イルミ ON」の表示)と、設定されている音量レベル(
図2では「音量 3」の表示)が表示される。
【0055】
なお、バックアップヒューズ30aが挿入されているため、イグニッションスイッチがOFFであって、かつ、ACC電源スイッチがOFFであっても、メータディスプレイ4には駆動電源が供給されるが、統合コックピットECU10のCPU10aは、イグニッションスイッチがOFF、かつ、ACC電源スイッチがOFFの場合は、メータディスプレイ4の表示が行われないように表示画面を制御する。
【0056】
一方、CID3では、全てのヒューズ20a,20b,30a,30b,30cが挿入された状態でイグニッションスイッチがON操作されると、各種機能(横滑り防止機能(VSC)、運転支援機能(SCM)など)の設定スイッチを含むホーム画面が表示される。このときの電源は、バックアップ電源ラインL1から供給される。
【0057】
なお、バックアップヒューズ20aが挿入されているため、ACC電源スイッチがOFFであっても、CID3には駆動電源が供給されるが、統合コックピットECU10のCPU10aは、イグニッションスイッチがOFFの場合およびACC電源スイッチがOFFの場合は、CID3の表示が行われないように表示画面を制御する。
【0058】
車両1を運搬する場合や、長期保管を行う場合、バックアップ電源ラインL1およびバックアップ電源ラインL3を導通させておくと、常時待機電流(暗電流)を消費するため、バッテリ2が劣化するおそれがある。そこで、このような場合は、CID3のバックアップヒューズ20aおよびメータディスプレイ4のバックアップヒューズ30aを抜く操作が一般的に行われる。
【0059】
バックアップヒューズ20a,30aが抜かれた状態で、例えば、車両1の運搬中に車両1を移動させる必要が生じた場合は、イグニッションスイッチがON状態に設定されてエンジン等の駆動源が始動する。この場合、メータディスプレイ4には、IG電源ラインL4からの電源の供給により、表示が可能になる。ただし、統合コックピットECU10のCPU10aは、CID3のバックアップヒューズ20aが抜かれていると判定しているため、メータディスプレイ4の表示内容を、イルミネーション機能の設定状態と設定音量の表示から、各種機能(横滑り防止機能(VSC)、運転支援機能(SCM)など)の設定画面に変更または表示画面に追加する。これにより、CID3のバックアップヒューズ20aが抜かれた状態であっても、メータディスプレイ4側から各種機能(横滑り防止機能(VSC)、運転支援機能(SCM)など)の設定変更が可能になる。
【0060】
一方、CID3では、バックアップヒューズ20a,30aが抜かれた状態で、イグニッションスイッチがON状態に設定されても、どの電源ラインL1,L2も導通しないため、表示ができない状態になる。したがって、CID3の表示画面にはブラック画面となる。
【0061】
車両1の運搬または長期保管が終了して、バックアップヒューズ20a,30aが挿し直されたとする。この状態でイグニッションスイッチがON状態に設定されると、統合コックピットECU10のCPU10aは、CID3のバックアップヒューズ20aが挿入されていると判定し、メータディスプレイ4の表示内容を、設定されているイルミネーション機能のON/OFF状態の表示と、設定されている音量レベルの表示に戻す。
【0062】
一方、CID3では、バックアップヒューズ20a,30aが挿し直された状態でイグニッションスイッチがON状態に設定されると、バックアップ電源ラインL1の電源の供給により表示が再開する。このとき、統合コックピットECU10のCPU10aは、CID3の表示画面に各種機能(横滑り防止機能(VSC)、運転支援機能(SCM)など)の設定スイッチを含むホーム画面が表示されるように制御する。これにより、CID3の表示画面から各種機能(横滑り防止機能(VSC)、運転支援機能(SCM)など)の設定変更または表示画面に追加が可能になる。
【0063】
したがって、上記した実施形態によれば、メータディスプレイ4は非タッチパネル式の表示器で構成しているため、メータディスプレイ4の表示内容の変更や設定操作は、ステアリングスイッチ5の操作で行われる。そこで、各種機能(横滑り防止機能(VSC)、運転支援機能(SCM)など)の設定画面等をメータディスプレイ4で行うとすると、ステアリングスイッチ5の押下回数が増加したり、表示画面の深階層化による操作性が悪化する。したがって、この実施形態では、タッチパネル式のCID3を設けて、各種機能(横滑り防止機能(VSC)、運転支援機能(SCM)など)の設定画面をCID3に表示させることにより、ステアリングスイッチ5の押下回数の増加や、表示画面の深階層化を防止している。
【0064】
しかしながら、この実施形態の構成によれば、待機電流(暗電流)を無くすべく、CID3のバックアップヒューズ20aを抜くと、CID3に電源が供給できなくなるため、運搬時の一時的な移動などで必要になり得る各種機能(横滑り防止機能(VSC)、運転支援機能(SCM)など)の設定が行えなくなるおそれがある。これを回避する方法として、CID3側にもIG電源ラインを別途設け、イグニッションスイッチがON状態に設定されると電源が供給されて表示ができるようにすることが考えられる。しかしながら、そうすると別途IG電源回路の形成やハーネスが必要となり、車両1の質量が増加したり、コストが増加したりする。
【0065】
そこで、この実施形態では、運搬中や長期保管中でバックアップヒューズ20aが抜かれた状態でCID3側での表示ができない場合は、IG電源ラインL4が設けられているメータディスプレイ4側で各種機能(横滑り防止機能(VSC)、運転支援機能(SCM)など)の設定画面が表示されるように、メータディスプレイ4の表示内容を変更する。これにより、運搬中や長期保管中に待機電流の消費を防止しつつ、一時的に移動必要な場合など、各種機能(横滑り防止機能(VSC)、運転支援機能(SCM)など)の設定が必要な状況が生じた場合は、メータディスプレイ4側で設定変更を行うことができ、利便性が向上する。また、これに伴って、別途IG電源回路を形成したりハーネスを用意したりする必要がなく、車両1の重量やコストの増加を軽減できる。
【0066】
なお、車両1の運搬時や長期保管中では、イルミネーション機能のON/OFF状態の表示や設定音量の表示の必要性は乏しいため、メータディスプレイ4の表示内容を変更することによる利便性への影響は少ない。
【0067】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能であり、例えば、上記した実施形態では、2つの表示装置(CID3、メータディスプレイ4)を設けて、CID3のバックアップヒューズ20aが抜かれている状態では、メータディスプレイ4の表示画面に、CID3に表示していた内容の一部(各種機能(横滑り防止機能(VSC)、運転支援機能(SCM)など)の設定スイッチ)を表示するようにしたが、表示装置を1つ設け、当該表示装置のバックアップヒューズの挿抜状態によって、表示内容を変更または表示画面に追加するようにしてもよい。この場合、状況に応じて表示装置の表示内容を変更または追加することができ、利便性が向上する。
【0068】
また、バックアップヒューズ20aが抜かれている時に、メータディスプレイ4に表示する内容(CID3に表示していた表示内容)については、必要に応じて適宜変更または追加可能であり、例えば、ウィンドウの開閉スイッチなどをCID3に表示している場合は、当該スイッチを表示してもよい。
【0069】
CID3のバックアップ電源ラインL1のバックアップヒューズ20aとメータディスプレイ4のバックアップ電源ラインL3のバックアップヒューズ30aとが同一のヒューズであってもよい。同様に、ACC電源ラインL2のACCヒューズ20bとACC電源ラインL5のACCヒューズ30cとが同一のヒューズであってもよい。
【0070】
また、CID3の電源ラインのうち、ACC電源ラインL2はなくてもよい。さらには、ACC電源ラインL5についてもなくてもよい。
【0071】
また、上記した実施形態では、統合コックピットECU10の制御や各種演算処理をCPU10aのみで行う場合について説明したが、例えば、画像処理等については別途設けたGPU(Graphics Processing Unit)が担当するようにしてもよい。この場合は、CPU10a、GPU、メモリを1つのチップに形成したSoC(System on a Chip)構成としてもよい。
【0072】
また、本発明は、上記した実施形態は、ガソリン車に限らず、電気自動車、ハイブリッド車、自動運転車にも適用することができる。
【0073】
また、本発明は、車両に設けられた表示装置の制御を行う種々の車両用制御装置に採用することができる。
【符号の説明】
【0074】
1:車両
3:CID(第1の表示装置)
4:メータディスプレイ(第2の表示装置)
10a:CPU(表示装置制御手段)
20a:バックアップヒューズ(ヒューズ)
L1:バックアップ電源ライン(第1の電源供給ライン)
L4:IG電源ライン(第2の電源供給ライン)