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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174254
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】位置測定装置及び位置測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 5/02 20100101AFI20231130BHJP
   G01S 3/48 20060101ALI20231130BHJP
   G01S 11/10 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
G01S5/02 Z
G01S3/48
G01S11/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087001
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹田 浩章
【テーマコード(参考)】
5J062
【Fターム(参考)】
5J062AA12
5J062BB03
5J062CC14
(57)【要約】
【課題】移動体に対して電波を放射することなく、移動体の位置を測定できる位置測定装置を提供する。
【解決手段】一実施形態に係る位置測定装置は、受信アンテナ部、到来方向推定部、検出部、特定部、及び位置算出部を備える。受信アンテナ部は、対象移動体が発する電波を受信して受信信号を生成する。到来方向推定部は、前記受信信号に基づいて前記電波の到来方向を推定する。検出部は、前記受信信号に基づいて前記受信アンテナ部が受信した前記電波の周波数である観測周波数を検出する。特定部は、前記受信信号に基づいて前記対象移動体が発する前記電波の周波数である送信周波数を特定する。位置算出部は、前記到来方向の推定結果と、前記観測周波数の検出結果と、前記送信周波数と、に基づいて、前記対象移動体の位置を算出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象移動体が発する電波を受信して受信信号を生成する受信アンテナ部と、
前記受信信号に基づいて前記電波の到来方向を推定する到来方向推定部と、
前記受信信号に基づいて前記受信アンテナ部が受信した前記電波の周波数である観測周波数を検出する検出部と、
前記受信信号に基づいて前記対象移動体が発する前記電波の周波数である送信周波数を特定する特定部と、
前記到来方向の推定結果と、前記観測周波数の検出結果と、前記送信周波数と、に基づいて、前記対象移動体の位置を算出する位置算出部と、
を備える位置測定装置。
【請求項2】
前記特定部は、前記受信アンテナ部が受信した前記電波の特徴量を使用して複数の機種ごとの諸元情報を示す参照情報を参照することにより、前記対象移動体の機種に対応する周波数を前記送信周波数として得る、
請求項1に記載の位置測定装置。
【請求項3】
前記特徴量は、パルス幅とパルス間隔と周波数との少なくとも1つを含む、
請求項2に記載の位置測定装置。
【請求項4】
前記到来方向の推定結果は、前記受信アンテナ部が第1時点において受信した前記電波の前記到来方向を示す第1の到来方向と、前記受信アンテナ部が前記第1時点よりも後の第2時点において受信した前記電波の前記到来方向を示す第2の到来方向と、を含み、
前記観測周波数の測定結果は、前記受信アンテナ部が前記第1時点において受信した前記電波の周波数を示す第1の観測周波数と、前記受信アンテナ部が前記第2時点において受信した前記電波の周波数を示す第2の観測周波数と、を含む、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の位置測定装置。
【請求項5】
前記受信アンテナ部が設けられる観測移動体の速度及び移動方向と、前記第1時点における前記観測移動体の位置である第1の位置と、前記第2時点における前記観測移動体の位置である第2の位置と、を含む観測移動体情報を生成する観測移動体情報生成部をさらに備え、
前記位置算出部は、前記到来方向の推定結果と、前記観測周波数の測定結果と、前記送信周波数と、前記観測移動体情報と、に基づいて、前記対象移動体の位置を算出する、
請求項4に記載の位置測定装置。
【請求項6】
前記位置算出部は、
前記第1の観測周波数と、前記送信周波数と、前記観測移動体の前記速度及び前記移動方向と、前記第1の到来方向と、から、前記第1時点における前記対象移動体の前記観測移動体の方向に対する速度である第1の速度を算出し、
前記第2の観測周波数と、前記送信周波数と、前記観測移動体の前記速度及び前記移動方向と、前記第2の到来方向と、から、前記第2時点における前記対象移動体の前記観測移動体の方向に対する速度である第2の速度を算出し、
前記第1の速度と、前記第2の速度と、前記第1の到来方向と、前記第2の到来方向と、から、前記対象移動体の速度及び移動方向を算出し、
前記対象移動体の前記速度及び前記移動方向に基づいて、前記対象移動体の位置を算出する、
請求項5に記載の位置測定装置。
【請求項7】
受信アンテナ部を備える位置測定装置により実行される位置測定方法であって、
前記受信アンテナ部で対象移動体からの電波を受信することと、
前記受信アンテナ部から出力される受信信号に基づいて前記電波の到来方向を推定することと、
前記受信信号に基づいて前記受信アンテナ部が受信した前記電波の周波数である観測周波数を検出することと、
前記受信信号に基づいて前記対象移動体が発する前記電波の周波数である送信周波数を特定することと、
前記到来方向の推定結果と、前記観測周波数の検出結果と、前記送信周波数と、に基づいて、前記対象移動体の位置を算出することと、
を備える位置測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、位置測定装置及び位置測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
移動体に対してレーダー波などの電波を放射することなしに、移動体の位置を測定できる手法が求められている。
【0003】
そのような手法として、離れた場所にある複数の電波到来方向測定装置で同時に同一の電波発射源の方位を測定し、それらの方位を線で結ぶことで、電波発射源の位置を測定する位置測定システムが知られている。
【0004】
上述の位置測定システムでは、全ての電波到来方向測定装置が同じタイミングで同じ電波を測定するようにする必要がある。また、いずれかの電波到来方向測定装置の位置情報に誤差がある場合、電波発射源の位置の測定結果に誤差が生じてしまう。複数の電波到来方向測定装置間で測定するタイミングを同期することや、電波到来方向測定装置の位置情報を電波到来方向測定装置間で共有することは、現行の技術でも可能であるが、そのための仕組みをシステムに組み込む必要が生じる。
【0005】
また、電波発射源が移動しない場合には、電波到来方向測定装置を移動可能とすることで単一の電波到来方向測定装置を使用して電波発射源の位置を測定することが可能である。具体的には、電波到来方向測定装置が移動して2か所の測定点で同一の電波発射源の方位を測定し、それらの方位を線で結ぶことで電波発射源の位置を測定する。しかしながら、このような位置測定手法は、電波発射源が移動する場合には適用できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10-62508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、移動体に対して電波を放射することなく、移動体の位置を測定できる位置測定装置及び位置測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態に係る位置測定装置は、受信アンテナ部、到来方向推定部、検出部、特定部、及び位置算出部を備える。受信アンテナ部は、対象移動体が発する電波を受信して受信信号を生成する。到来方向推定部は、前記受信信号に基づいて前記電波の到来方向を推定する。検出部は、前記受信信号に基づいて前記受信アンテナ部が受信した前記電波の周波数である観測周波数を検出する。特定部は、前記受信信号に基づいて前記対象移動体が発する前記電波の周波数である送信周波数を特定する。位置算出部は、前記到来方向の推定結果と、前記観測周波数の検出結果と、前記送信周波数と、に基づいて、前記対象移動体の位置を算出する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る位置測定装置を示すブロック図。
図2図1に示した位置算出部により実行される位置算出処理を説明する図。
図3図1に示した位置算出部により実行される位置算出処理を説明する図。
図4】実施形態に係る位置測定方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら実施形態を説明する。
【0011】
実施形態は、電波を発射する移動体の位置を測定する位置測定装置及び位置測定方法に関する。実施形態に係る位置測定装置及び位置測定方法は、電波発射源の機種(種類)を識別する機能を利用して移動体の送信周波数(移動体が発射する電波の周波数)を特定し、送信周波数などの情報を使用することで移動体の位置を測定する。それにより、移動体に対して電波を放射することなしに、移動体の位置を測定することが可能となる。
【0012】
ここで説明する実施形態では、位置測定装置は、位置測定の対象となる移動体とは異なる移動体に搭載される。なお、位置測定装置は、静止体、例えば、施設などの建物に設けられていてもよい。以降では、位置測定の対象となる移動体を対象移動体と称し、位置測定装置を搭載する移動体を観測移動体と称する。ここで説明する実施形態では、対象移動体及び観測移動体として航空機などの飛翔体を想定し、対象移動体及び観測移動体はいずれも等速直線運動するものとする。
【0013】
図1は、一実施形態に係る位置測定装置100の構成例を概略的に示している。図1に示すように、位置測定装置100は、受信アンテナ部110、周波数変換部120、AD(Analog-to-Digital)変換部130、到来方向推定部140、電波特徴量検出部(単に検出部ともいう)150、対象移動体識別部(特定部ともいう)160、観測移動体情報生成部170、位置算出部180、及び表示部190を備える。位置測定装置100は観測移動体に搭載される。
【0014】
受信アンテナ部110は、対象移動体が発する電波を受信して受信信号を生成し、周波数変換部120に送出する。対象移動体が発する電波は、例えば、レーダー波又は通信用電波などであり得る。本実施形態では、受信アンテナ部110は、1つの平面上に配置され、同一周波数帯の電波を受信するn個のアンテナ素子111-1~111-nからなるアレーアンテナを備える。ここで、nは2以上の整数である。アンテナ素子111-1~111-nの各々は対象移動体からの電波を受信して受信信号を生成し、受信アンテナ部110は、n個のアンテナ素子111-1~111-nに対応するnチャンネルの受信信号を周波数変換部120に送出する。
【0015】
なお、アレーアンテナを構成するアンテナ素子の数、アンテナ素子の形状又は種類、アンテナ素子を配置する間隔などは、位置測定の対象又は目的などによって任意に設定可能である。また、アレーアンテナは使用可能なアンテナの一例に過ぎない。電波の到来方向を推定することを可能にするアンテナであれば、いかなるアンテナを使用してもよい。例えば、受信アンテナ部110はパラボラアンテナを備えてもよい。
【0016】
周波数変換部120は、受信アンテナ部110からnチャンネルの受信信号を受け取り、nチャンネルの受信信号を中間周波数に周波数変換する。
【0017】
AD変換部130は、周波数変換部120により周波数変換されたnチャンネルの受信信号を同時サンプリングによってAD変換してnチャンネルの受信データ(デジタル化した受信信号)を得る。AD変換部130は、nチャンネルの受信データを到来方向推定部140及び電波特徴量検出部150に送出する。
【0018】
到来方向推定部140は、AD変換部130からnチャンネルの受信データを受け取り、nチャンネルの受信データに基づいて、受信アンテナ部110が受信した電波の到来方向を推定する。受信アンテナ部110がある時点(時刻)に受信した電波の到来方向は、その時点における対象移動体(電波発射源)の方位に相当する。例えば、到来方向推定部140は、nチャンネルの受信データに基づいて受信アンテナ部110から出力されるnチャンネルの受信信号間の位相差などを検出することにより、電波の到来方向を推定する。到来方向推定部140は、電波の到来方向を示す到来方向情報を位置算出部180に送出する。
【0019】
電波特徴量検出部150は、AD変換部130からnチャンネルの受信データを受け取り、nチャンネルの受信データに基づいて、受信アンテナ部110が受信した電波の1種類以上の特徴量を検出する。特徴量は周波数を少なくとも含む。対象移動体は観測移動体に対して相対的に移動することからドップラー効果が生じ、受信アンテナ部110が受信する(観測移動体で観測される)電波の周波数は対象移動体が発する電波の周波数から変化したものとなる。対象移動体が発する電波の周波数を送信周波数とも称し、受信アンテナ部110が受信する電波の周波数を観測周波数とも称する。特徴量は、パルス幅、パルス間隔などをさらに含んでよい。一例では、電波特徴量検出部150は、nチャンネルの受信データをビーム合成し、対象移動体の方向に受信ビームを向け、受信アンテナ部110が受信した電波を分析して、当該電波のパルス幅、パルス間隔、観測周波数などの情報を得る。電波特徴量検出部150は、観測周波数を示す観測周波数情報を位置算出部180に送出し、いずれかの種類の特徴量を示す特徴量情報を対象移動体識別部160に送出する。特徴量情報は、例えば、パルス幅とパルス間隔と観測周波数とのうちの少なくとも1つを示す情報を含む。他の例では、電波特徴量検出部150は、1つのアンテナ素子111に由来する1チャンネルの受信データを用いて、受信アンテナ部110が受信した電波を分析する。ビーム合成を使用する場合のほうが、アンテナ利得が高くなり、S/N(Signal-to-Noise ratio)が向上するため、好ましい。
【0020】
対象移動体識別部160は、電波特徴量検出部150から特徴量情報を受け取り、特徴量情報を使用してデータベースを参照することにより、対象移動体の機種を識別する。データベースは、複数の機種ごとの諸元情報を含む参照情報である。諸元情報は送信周波数を示す情報を少なくとも含む。諸元情報は、パルス幅、パルス間隔などを示す情報をさらに含んでよい。対象移動体識別部160は、電波特徴量検出部150から受け取った特徴量情報に合致する諸元情報に対応する機種を対象移動体の機種と識別し、特徴量情報に合致する諸元情報に含まれる送信周波数を示す送信周波数情報を位置算出部180に送出する。例えば特徴量情報がパルス幅を示す情報を含む場合、対象移動体識別部160は、特徴量情報により示されるパルス幅と実質的に等しいパルス幅を含む諸元情報に対応する機種を対象移動体の機種と識別する。特徴量情報が複数種類の特徴量を示す情報を含むようにすることで、識別精度が向上する。
【0021】
観測移動体情報生成部170は、観測移動体の位置、速度、及び移動方向を示す観測移動体情報を生成する。観測移動体情報生成部170は、慣性航法装置又はGPS(Global Positioning System)装置などのいかなる装置を使用してもよい。例えばGPS装置を使用する場合、観測移動体情報生成部170は、GPS装置で観測移動体の位置を周期的に測定し、位置の時間変化から観測移動体の速度及び移動方向を算出してよい。観測移動体情報生成部170は、観測移動体情報を位置算出部180に送出する。
【0022】
位置算出部180は、到来方向推定部140から到来方向情報を受け取り、電波特徴量検出部150から観測周波数情報を受け取り、対象移動体識別部160から送信周波数情報を受け取り、観測移動体情報生成部170から観測移動体情報を受け取り、到来方向情報、観測周波数情報、送信周波数情報、及び観測移動体情報に基づいて、対象移動体の位置を算出する。到来方向情報は、受信アンテナ部110が第1時点において受信した電波の到来方向、及び受信アンテナ部110が第1時点よりも後の第2時点において受信した電波の到来方向を示す情報を含み、観測周波数情報は、受信アンテナ部110が第1時点において受信した電波の観測周波数、及び受信アンテナ部110が第2時点において受信した電波の観測周波数を示す情報を含み、送信周波数情報は、対象移動体の送信周波数を示す情報を含み、観測移動体情報は、第1時点における観測移動体の位置、第2時点における観測移動体の位置、観測移動体の速度、及び観測移動体の移動方向を示す情報を含む。対象移動体の位置を算出する具体的な処理については後述する。
【0023】
表示部190は、対象移動体の位置の測定結果を表示する。例えば、表示部190は、液晶表示装置などの表示装置を備え、対象移動体及び観測移動体の位置を示す指示点を配置した地図を表示装置の画面上に表示させる。表示部190は、地図に加えて又は代えて、対象移動体と観測移動体との距離を示す情報などの他の情報を画面上に表示させてもよい。
【0024】
到来方向推定部140、電波特徴量検出部150、対象移動体識別部160、観測移動体情報生成部170、位置算出部180、及び表示部190に関して説明する処理は、CPU(Central Processing Unit)などの汎用回路、DSP(Digital Signal Processor)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などの専用回路、又は汎用回路と専用回路の組み合わせにより行われてよい。例えば汎用回路が使用される場合、コンピュータ読取可能媒体としてのメモリに位置測定プログラムが格納される。位置測定プログラムは、汎用回路により実行されたときに、到来方向推定部140、電波特徴量検出部150、対象移動体識別部160、観測移動体情報生成部170、位置算出部180、及び表示部190に関して説明する処理を汎用回路に実行させる。
【0025】
なお、位置測定装置100が静止体に設けられる実施形態では、上述した観測移動体情報生成部170は削除されてよい。
【0026】
図2及び図3を参照して位置算出部180における位置算出処理について説明する。
【0027】
第1時点における観測移動体の位置をPr1、第2時点における観測移動体の位置をPr2、第1時点における対象移動体の位置をPt1、第2時点における対象移動体の位置をPt2とする。また、位置Pr1と位置Pt1とを結ぶ線分と位置Pr2と位置Pt2とを結ぶ線分が交わる位置をOとし、位置Oと位置Pr1との距離をRr1、位置Oと位置Pr2との距離をRr2、位置Oと位置Pt1との距離をRt1、位置Oと位置Pt2との距離をRt2とする。さらに、第1時点における観測移動体から見た対象移動体の方位をθ、第2時点における観測移動体から見た対象移動体の方位をθ、観測移動体の速度をV、観測移動体の移動方向をΦ、対象移動体の速度をV、対象移動体の移動方向をΨとする。方位θは受信アンテナ部110が第1時点において受信した電波の到来方向に一致し、方位θは受信アンテナ部110が第2時点において受信した電波の到来方向に一致する。
【0028】
第1時点における観測移動体の対象移動体の方向に対する速度Vrd1は下記(式1)で表される。
rd1=V×cos(Φ+θ) ・・・(式1)
【0029】
対象移動体の送信周波数をf、第1時点における観測周波数(受信アンテナ部110が第1時点において受信した電波の周波数)をfd1、光速をcとすると、第1時点における対象移動体の観測移動体の方向に対する速度Vtd1は下記(式2)で表される。
td1=c+fd1/f×(Vrd1-c) ・・・(式2)
【0030】
同様に、第2時点における観測移動体の対象移動体の方向に対する速度Vrd2は下記(式3)で表される。
rd2=V×cos(Φ+θ) ・・・(式3)
【0031】
第2時点における観測周波数(受信アンテナ部110が第2時点において受信した電波の周波数)をfd2とすると、第2時点における対象移動体の観測移動体の方向に対する速度Vtd2は下記(式4)で表される。
td2=c+fd2/f×(Vrd2-c) ・・・(式4)
【0032】
また、対象移動体の速度をV、対象移動体の移動方向をΨとすると、第1時点における対象移動体の観測移動体の方向に対する速度Vtd1は下記(式5)と表すことができ、第2時点における対象移動体の観測移動体の方向に対する速度Vtd2は下記(式6)と表すことができる。
td1=V×cos(180-Ψ+θ)
=-V×cos(Ψ-θ) ・・・(式5)
td2=V×cos(180-Ψ+θ)
=-V×cos(Ψ-θ) ・・・(式6)
【0033】
(式5)及び(式6)をVについて整理すると、それぞれ(式7)及び(式8)となる。
=Vtd1/(cos(Ψ-θ)) ・・・(式7)
=Vtd2/(cos(Ψ-θ)) ・・・(式8)
【0034】
(式7)及び(式8)から、対象移動体の移動方向Ψについての方程式(式9)が導出される。
td1/(cos(Ψ-θ))=Vtd2/(cos(Ψ-θ)) ・・・(式9)
【0035】
td1は(式2)で計算でき、Vtd2は(式4)で計算でき、θ及びθは到来方向推定部140により測定される。よって、(式9)の変数は対象移動体の移動方向Ψのみであるため、(式9)の方程式を解くことで、対象移動体の移動方向Ψを求めることができる。
【0036】
対象移動体の移動方向Ψが求まると、(式7)又は(式8)にΨ及びθ又はθを代入することで、対象移動体の速度Vを求めることができる。さらに、対象移動体が第1時点から第2時点までの期間に移動する距離はVΔtで計算することができる。ここで、Δtは第1時点と第2時点との時間差である。
【0037】
対象移動体の移動距離VΔtが求まると、図2に示す距離Rt1は正弦定理を用いて下記(式10)で表すことができ、Rt1は下記(式11)で計算することができる。
t1/sin(Ψ-θ)=VΔt/sin(θ-θ) ・・・(式10)
t1=VΔt×sin(Ψ-θ)/sin(θ-θ) ・・・(式11)
【0038】
同様に、図2に示す距離Rt2、Rr1、Rr2はそれぞれ下記(式12)、(式13)、(式14)で計算することができる。
t2=VΔt×sin(180-Ψ+θ)/sin(θ-θ) ・・・(式12)
r1=VΔt×sin(180-θ-Φ)/sin(θ-θ) ・・・(式13)
r2=VΔt×sin(Φ+θ)/sin(θ-θ) ・・・(式14)
【0039】
第1時点における観測移動体と対象移動体との距離をR、第2時点における観測移動体と対象移動体との距離をRとすると、距離R、RはRt1、Rt2、Rr1、Rr2を用いて下記(式15)及び(式16)で計算することができる。
=Rr1+Rt1 ・・・(式15)
=Rr2+Rt2 ・・・(式16)
【0040】
位置算出部180は、観測移動体までの距離R、R及び観測移動体の方位θ、θを位置測定結果として出力してよい。また、位置算出部180は、距離R、Rを使用して位置Pt1、Pt2を算出し、位置Pt1、Pt2を位置測定結果として出力してもよい。
【0041】
次に、位置測定装置100の動作について説明する。
【0042】
図4は、一実施形態に係る位置測定方法を概略的に示している。図4に示す位置測定方法は、図1に示す位置測定装置100により実行される。観測移動体の速度V及び移動方向Φは事前に測定済みであるとする。
【0043】
図4に示すように、ステップS41において、位置測定装置100は、第1時点における対象移動体及び観測移動体に関する情報を生成する。例えば、到来方向推定部140は、受信アンテナ部110から出力される受信信号に基づいて、受信アンテナ部110が第1時点に受信した電波の到来方向を推定する。電波特徴量検出部150は、受信アンテナ部110から出力される受信信号に基づいて、受信アンテナ部110が第1時点に受信した電波の特徴量を検出する。例えば、電波特徴量検出部150は、受信アンテナ部110が第1時点に受信した電波の周波数を第1時点における観測周波数として測定する。観測移動体情報生成部170は、第1時点における観測移動体の位置を測定する。
【0044】
ステップS42において、対象移動体識別部160は、ステップS42で検出された特徴量と機種ごとの諸元情報を含むデータベースとに基づいて、対象移動体の送信周波数を特定する。例えば、対象移動体識別部160は、ステップS42で検出された特徴量でデータベースを参照することにより対象移動体の機種を識別し、対象移動体の機種に対応する送信周波数を特定する。
【0045】
ステップS43において、位置測定装置100は、第1時点から所定時間経過した第2時点における対象移動体及び観測移動体に関する情報を生成する。例えば、到来方向推定部140は、受信アンテナ部110から出力される受信信号に基づいて、受信アンテナ部110が第2時点に受信した電波の到来方向を推定する。電波特徴量検出部150は、受信アンテナ部110から出力される受信信号に基づいて、受信アンテナ部110が第2時点に受信した電波の特徴量を検出する。例えば、電波特徴量検出部150は、受信アンテナ部110が第2時点に受信した電波の周波数を第2時点における観測周波数として測定する。受信アンテナ部110が第1時点に受信した電波と第2時点に受信した電波が同一の電波発射源から放射されたものであることを確認するために、ステップS42に示す処理が実行されてもよい。観測移動体情報生成部170は、第2時点における観測移動体の位置を測定する。
【0046】
ステップS41~S43に示す処理により、位置測定装置100は、第1時点における観測移動体の位置Pr1、第2時点における観測移動体の位置Pr2、受信アンテナ部110が第1時点において受信した電波の到来方向θ、受信アンテナ部110が第2時点において受信した電波の到来方向θ、対象移動体の送信周波数f、第1時点における電波の観測周波数fd1、第2時点における電波の観測周波数fd2を得る。
【0047】
ステップS44において、位置算出部180は、到来方向推定部140により推定された第1時点における到来方向θと、電波特徴量検出部150により測定された第1時点における電波の観測周波数fd1と、対象移動体識別部160により特定された対象移動体の送信周波数fと、観測移動体情報生成部170により得られた観測移動体の速度V及び移動方向Φと、から、ドップラー効果を用いて、第1時点における対象移動体の観測移動体の方向に対する速度Vtd1を算出する。例えば、位置算出部180は、上記(式1)及び(式2)に従って、第1時点における対象移動体の観測移動体の方向に対する速度Vtd1を算出する。
【0048】
ステップS45において、位置算出部180は、到来方向推定部140により推定された第2時点における到来方向θと、電波特徴量検出部150により測定された第2時点における電波の観測周波数fd2と、対象移動体識別部160により特定された対象移動体の送信周波数fと、観測移動体情報生成部170により算出された観測移動体の速度V及び移動方向Φと、から、ドップラー効果を用いて、第2時点における対象移動体の観測移動体の方向に対する速度Vtd2を算出する。例えば、位置算出部180は、上記(式3)及び(式4)に従って、第2時点における対象移動体の観測移動体の方向に対する速度Vtd2を算出する。
【0049】
ステップS46において、位置算出部180は、ステップS44で算出された速度Vtd1及びステップS45で算出された速度Vtd2を使用して、対象移動体の移動方向Ψ及び速度Vを算出する。例えば、位置算出部180は、上記(式9)に従って、速度Vtd1、Vtd2及び到来方向θ、θから、対象移動体の移動方向Ψを算出し、上記(式7)に従って、速度Vtd1、到来方向θ、及び移動方向Ψから、対象移動体の速度Vを算出する。
【0050】
ステップS47において、位置算出部180は、ステップS46で算出された対象移動体の移動方向Ψ及び速度Vを使用して、対象移動体の位置を算出する。例えば、位置算出部180は、上記(式11)、(式13)及び(式15)に従って、観測移動体の速度V及び移動方向Φ、対象移動体の速度V及び移動方向Ψ、到来方向θ、θから、第1時点における観測移動体と対象移動体との距離Rを算出し、算出した距離Rを使用して第1時点における対象移動体の位置Pt1を算出する。さらに、位置算出部180は、上記(式12)、(式14)及び(式16)に従って、観測移動体の速度V及び移動方向Φ、対象移動体の速度V及び移動方向Ψ、到来方向θ、θから、第2時点における観測移動体と対象移動体との距離Rを算出し、算出した距離Rを使用して第2時点における対象移動体の位置Pt2を算出する。
【0051】
ステップS48において、表示部190は、位置算出部180により得られた位置測定結果を表示する。
【0052】
図4に示した処理手順は一例に過ぎない。例えば、ステップS44に示す第1時点における対象移動体の観測移動体の方向に対する速度Vtd1を算出する処理は、ステップS42とステップS43との間に実行されてもよい。
【0053】
以上のように、位置測定装置100では、受信アンテナ部110が対象移動体が発する電波を受信し、到来方向推定部140が受信アンテナ部110から出力される受信信号に基づいて電波の到来方向を推定し、電波特徴量検出部150が受信アンテナ部110から出力される受信信号に基づいて受信アンテナ部が受信した電波の周波数である観測周波数を検出し、対象移動体識別部160が受信アンテナ部110から出力される受信信号に基づいて対象移動体が発する電波の周波数である送信周波数を特定し、観測移動体情報生成部170が観測移動体の移動に関する観測移動体情報を生成し、位置算出部180が到来方向の推定結果と、観測周波数の検出結果と、送信周波数と、観測移動体情報と、に基づいて、対象移動体の位置を算出する。対象移動体識別部160は、受信アンテナ部110が受信した電波の特徴量を使用して複数の機種ごとの諸元情報を含む参照情報を参照することにより対象移動体の機種を識別し、対象移動体の機種に対応する周波数を送信周波数として得てよい。特徴量は、パルス幅とパルス間隔と周波数との少なくとも1つを含んでよい。到来方向の推定結果は、受信アンテナ部110が第1時点において受信した電波の到来方向を示す第1の到来方向と、受信アンテナ部110が第1時点よりも後の第2時点において受信した電波の到来方向を示す第2の到来方向と、を含んでよく、観測周波数の測定結果は、受信アンテナ部110が第1時点において受信した電波の周波数を示す第1の観測周波数と、受信アンテナ部110が第2時点において受信した電波の周波数を示す第2の観測周波数と、を含んでよく、観測移動体情報は、観測移動体の速度及び移動方向と、第1時点における観測移動体の位置である第1の位置と、第2時点における観測移動体の位置である第2の位置と、を含んでよい。位置算出部180は、第1の観測周波数と、送信周波数と、観測移動体の速度及び移動方向と、第1の到来方向と、から、第1時点における対象移動体の観測移動体の方向に対する速度である第1の速度を算出し、第2の観測周波数と、送信周波数と、観測移動体の速度及び移動方向と、第2の到来方向と、から、第2時点における対象移動体の観測移動体の方向に対する速度である第2の速度を算出し、第1の速度と、第2の速度と、第1の到来方向と、第2の到来方向と、から、対象移動体の速度及び移動方向を算出し、対象移動体の速度及び移動方向に基づいて、対象移動体の位置を算出してよい。
【0054】
上記の構成によれば、位置測定装置100において観測された電波から観測周波数及び対象移動体の送信周波数が特定され、ドップラー効果により生じる送信周波数と観測周波数との間の違いから対象移動体の速度などを算出することが可能となる。その結果、対象移動体に対してレーダー波などの電波を放射することなく、単一の装置で対象移動体の位置を測定することができる。
【0055】
上述した実施形態では、移動体(対象移動体及び観測移動体)として等速直線運動する飛翔体を想定している。しかしながら、移動体は、飛翔体に限らず、自動車などのいかなる移動体であってもよい。さらに、移動体が等速直線運動していなくても第1時点から第2時点までの期間において等速直線運動しているとみなせる場合には、上述した実施形態に係る位置測定方法を適用可能である。
【0056】
また、上述した実施形態では、説明を簡単にするために、対象移動体及び観測移動体が同一平面内を移動するものとしている。上述した実施形態に係る位置測定方法は、対象移動体及び観測移動体が3次元空間内を移動する場合にも適用可能である。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
100…位置測定装置、110…受信アンテナ部、111-1~111-n…アンテナ素子、120…周波数変換部、130…AD変換部、140…到来方向推定部、150…電波特徴量検出部、160…対象移動体識別部、170…観測移動体情報生成部、180…位置算出部、190…表示部。
図1
図2
図3
図4