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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174273
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】コンパクト容器
(51)【国際特許分類】
   A45D 33/00 20060101AFI20231130BHJP
【FI】
A45D33/00 625C
A45D33/00 625A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087033
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】加瀬 舞
(57)【要約】
【課題】コンパクト容器から塗布具を容易に取出すことができ、且つ、コンパクト容器を小型に構成することのできるコンパクト容器を提供する。
【解決手段】化粧料31a~31dを収容する化粧料収容部12と、塗布具40を収容するための収容空間を有する塗布具収容部13とが設けられた容器本体10と、容器本体10の開口面を開閉可能に覆う蓋体20とを備え、塗布具収容部13は収容空間を区画する底壁面10a及び側壁部24とを有し、側壁部15には開口部15aが設けられ、蓋体20には、開口部15aを覆う被覆部24aが設けられ、蓋体20が閉状態のときは開口部15aが被覆部24により覆われ、蓋体20が開状態のときは、開口部15aから被覆部が離間して開口部15aから塗布具40を取り出すことができるようにコンパクト容器100を構成した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧料を収容する化粧料収容部と、前記化粧料を塗布する塗布具を収容するための収容空間を有する塗布具収容部とが設けられた容器本体と、
前記容器本体の開口面を開閉可能に覆う蓋体と、
を備え、
前記塗布具収容部は、前記収容空間を区画する底壁面及び側壁部を有し、
前記側壁部には開口部が設けられ、
前記蓋体には、前記開口部を覆う被覆部が設けられ、
前記蓋体が閉状態のときは、前記開口部が前記被覆部により覆われ、
前記蓋体が開状態のときは、前記開口部から前記被覆部が離間して前記開口部から前記塗布具を取り出すことができる、コンパクト容器。
【請求項2】
前記塗布具は前記塗布具収容部に対して、磁力により脱着可能に構成された、請求項1に記載のコンパクト容器。
【請求項3】
前記蓋体が開状態のときは前記塗布具を磁力により前記蓋体に脱着可能であり、前記塗布具が前記塗布具収容部に収容された状態で前記蓋体が閉状態のときは、前記塗布具と前記蓋体との間で磁力が作用しないように構成された、請求項1又は請求項2に記載のコンパクト容器。
【請求項4】
化粧料を収容する化粧料収容部と、前記化粧料を塗布する塗布具を収容するための収容空間を有する塗布具収容部とが設けられた容器本体と、
前記容器本体の開口面を開閉可能に覆う蓋体と、
を備え、
前記蓋体又は前記塗布具収容部に対して前記塗布具は磁力により着脱可能であり、
前記蓋体を開状態にしたとき、前記蓋体又は前記塗布具収容部の側壁部に設けられた開口部から前記塗布具を取り出すことができる、コンパクト容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンパクト容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、アイシャドウ等の化粧料を収容する容器として、例えば特許文献1に開示されるコンパクト容器が知られている。コンパクト容器は、一般に、化粧料収容部と塗布具収容部とを備えた容器本体と、容器本体に対して開閉可能に設けられる蓋体とを備え、化粧料収容部には化粧料が収容され、塗布具収容部には化粧料に応じた塗布具が収容される。このようなコンパクト容器では、特許文献1に開示されるように、化粧料収容部に複数の収容空間を設け、複数色の化粧料や、複数種類の化粧料を収容することが行われている。コンパクト容器に収容される化粧料の色数や種類が多い場合は、それに応じて塗布具収容部には複数の塗布具が収容されることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-278823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、コンパクト容器は外出先で使用されることも多い。そのため、持ち運びが容易であること、すなわち、可能な限り小型であることが求められる。しかしながら、塗布具収容部を塗布具の大きさに応じた最小限のスペースで構成すると、塗布具収容部から塗布具を取り出すことが困難な場合がある。すなわち、塗布具収容部に塗布具を取り出すために指を入れるためのスペースが不足していると、塗布具を指でつまんで取り出すことが困難になる。塗布具をうまく取り出すことができない場合は、指等に化粧料が意図せず付着してしまったり、塗布具が塗布具収容部から飛び出して、落下し、周囲が化粧料で汚れたり、或いは、塗布具に汚れが付着するなどの不具合が生じる。
【0005】
一方、塗布具収容部に塗布具を取り出すための十分なスペースを設けるとコンパクト容器を小型にすることが困難になる。また、塗布具に対して塗布具収容部の容積が大きくなると、コンパクト容器を持ち運ぶ際などに塗布具が塗布具収容部内で動いてしまう。その場合、塗布具に付着した化粧料が塗布具収容部の内壁面や蓋体に設けられた鏡などに付着しコンパクト容器の内部が汚れてしまう。コンパクト容器の内部に化粧料が付着すると、塗布具にその化粧料が付着して、塗布具に複数の色の化粧料が付着するなどの不具合も生じる。
【0006】
そこで、本発明の課題は、コンパクト容器から塗布具を容易に取出すことができ、且つ、コンパクト容器を小型に構成することのできるコンパクト容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係るコンパクト容器は、化粧料を収容する化粧料収容部と、前記化粧料を塗布する塗布具を収容するための収容空間を有する塗布具収容部とが設けられた容器本体と、前記容器本体の開口面を開閉可能に覆う蓋体と、を備え、前記塗布具収容部は、前記収容空間を区画する底壁面及び側壁部とを有し、前記側壁部には開口部が設けられ、前記蓋体には、前記開口部を覆う被覆部が設けられ、前記蓋体が閉状態のときは、前記開口部が前記被覆部により覆われ、前記蓋体が開状態のときは、前記開口部から前記被覆部が離間して前記開口部から前記塗布具を取り出すことができる、ことを特徴とする。
【0008】
上記コンパクト容器において、前記塗布具は前記塗布具収容部に対して、磁力により脱着可能に構成されることも好ましい。
【0009】
上記コンパクト容器において、前記蓋体が開状態のときは前記塗布具を磁力により前記蓋体に脱着可能であり、前記塗布具が前記塗布具収容部に収容された状態で前記蓋体が閉状態のときは、前記塗布具と前記蓋体との間で磁力が作用しないように構成されることも好ましい。
【0010】
本発明に係るコンパクト容器は、化粧料を収容する化粧料収容部と、前記化粧料を塗布する塗布具を収容するための収容空間を有する塗布具収容部とが設けられた容器本体と、
前記容器本体の開口面を開閉可能に覆う蓋体と、を備え、前記蓋体又は前記塗布具収容部に対して前記塗布具は磁力により着脱可能であり、前記蓋体を開状態にしたとき、前記蓋体又は前記塗布具収容部の側壁部に設けられた開口部から前記塗布具を取り出すことができる、ものであってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るコンパクト容器によれば、塗布具収容部の収容空間を区画する側壁部に塗布具を取り出すための開口部が設けられ、蓋体にはこの開口部を覆う被覆部が設けられている。そして、蓋体が閉状態のとき開口部は被覆部により覆われ、蓋体が開状態のときは開口部から被覆部が離間して、開口部から塗布具を取り出すことができるように構成されている。また、本発明に係る他のコンパクト容器においても蓋体又は塗布具収容部に磁力で付着した塗布具をスライド移動させることで、塗布具を蓋体又は塗布具収容部に密着させた状態で開口部から容易に取り出すことができる。
【0012】
従って、本発明に係るコンパクト容器では、容器本体の開口面から塗布具収容部に指を入れて塗布具をつまんで取り出すためのスペースがなくても、塗布具を容器本体に対してスライド移動させることで塗布具を容易に取り出すことができる。そのため、塗布具収容部をコンパクトに構成し、コンパクト容器全体を小型に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係るコンパクト容器の一の実施形態を示す図であり、蓋体が容器本体に対して開状態にあるときの上面図である。
図2】(a)は図1に示すコンパクト容器であり、化粧料及び塗布具が収容される前の状態を示す上面図であり、(b)は図1に示すコンパクト容器において蓋体が容器本体に対して閉状態にあるときの側面図である。
図3図1に示すコンパクト容器を側面から表す図であり、(a)は図2(b)に対応し、(b)は蓋体が容器本体に対して開状態にあるときを示し、(c)は図1(a)のA-A側断面図である。
図4図1に示すコンパクト容器から塗布具を取り出す手順を説明するための図((a)、(b))である。
図5図1に示すコンパクト容器の変形例を説明するための図である。
図6】本発明に係るコンパクト容器の他の実施形態を示す図であり、蓋体が容器本体に対して開状態にあるときの上面図である。
図7】(a)は図6のB-B側断面図であり、(b)は図6に示すコンパクト容器の使用態様を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を参照しながら本発明に係るコンパクト容器の実施の形態を説明する。
[第一の実施の形態]
図1図5を参照して第一の実施の形態のコンパクト容器100を説明する。図1及び図2に示すように、本実施の形態のコンパクト容器100は、容器本体10と、容器本体10の上面(開口面)を開閉可能に覆う蓋体20とを備えている。蓋体20は容器本体10に対して回動部(本体側回動部11、蓋体側回動部21)を介して回動可能に取り付けられている。本明細書等における「上」、「下」とは相対的な位置関係を表し、蓋体20が閉じられた状態でコンパクト容器100を図2(b)に示す状態で水平面に載置したとき、容器本体10が位置する側を「下」、蓋体20が位置する側を「上」と称する。また、回動部(本体側回動部11、蓋体側回動部21)の回動軸に沿う方向を「左右方向」とする。さらに、上下方向と左右方向の双方に垂直な方向を「前後方向」とし、容器本体10において本体側回動部11が設けられる側を「後」、その反対側を「前」とする。
【0015】
容器本体10は底壁面10aと底壁面10aの外縁を取り囲むように設けられる本体側周壁部10bとを有し、底壁面10aと本体側周壁部10bとにより区画される上面視略矩形の収容空間を構成する。容器本体10の収容空間は仕切部10cにより左右方向に仕切られている。容器本体10において仕切部10cの左側は化粧料31a~31dを収容するための化粧料収容部12として構成される。また、容器本体10において仕切部10cの右側は塗布具40を収容するための塗布具収容部13として構成されている。なお、図1は化粧料31a~31d及び塗布具40が化粧料収容部12及び塗布具収容部13にそれぞれ収容された状態を示し、図2(a)は化粧料収容部12及び塗布具収容部13に化粧料31a~31d及び塗布具40が収容されていない状態を示す。
【0016】
容器本体10の前面側には、蓋体20に設けられた爪部22を係脱可能に係合する係合部14が設けられている。また、容器本体10の後面側には上述の本体側回動部11が設けられている。本体側回動部11は、回動軸として構成される蓋体側回動部21が回動可能に挿入される軸受けとして機能する。
【0017】
図2(a)に示すように、化粧料収容部12は4つの化粧料収容空間12a~12dに区画されている。本実施の形態では、化粧料収容空間12a~12dに対して、中皿に充填された化粧料31a~31dが収容されている(図1参照)。
【0018】
化粧料31a~31dは特に限定されるものではないが、例えばプレストアイシャドウや、クリームアイシャドウなどを好適に収容することができる。化粧料31a~31dは、アイシャドウの他、口紅、グロス、チーク、アイブロウ、アイライナー等であってもよい。化粧料31a~31dは、例えば、凹状に構成される化粧料収容空間12a~12dに収容可能であれば、化粧料の種類や形態は特に限定されるものではない。化粧料収容部12に複数の化粧料31a~31dを収容する場合、これらは同種の化粧料であってもよいし、異種の化粧料であってもよい。さらに、化粧料31a~31dは中皿を介さず、各化粧料収容空間12a~12dに直接充填されていてもよく、化粧料収容部12に対して化粧料を収容する際の形態は特に限定されない。
【0019】
塗布具収容部13は、塗布具40を収容するための凹状の収容空間であり、底壁面10aと本体側周壁部10bと仕切部10cとによって区画されている。ここで、本体側周壁部10bのうち、底壁面10aの右側部に配置される壁面部分を本体側右側壁部15(側壁部)と称する。本体側右側壁部15には、図3(b)等に示すように、塗布具40を取り出すための開口部15aが設けられている。開口部15aは、塗布具40を容器本体10に対して左右方向にスライド移動させることで、塗布具40を出し入れ可能な大きさに形成されている。
【0020】
底壁面10aにおいて当該塗布具収容部13の底面を成す領域の上面には、当該領域と略同じ面積の薄いシート状の磁石又は磁性体からなる磁性シート16が設けられている。なお、図1図2及び図4では磁性シート16にハッチングを付しているが、これらは断面を示すものではない。また、ここでいう磁性体は、鉄等の磁石に対して付着する作用を有する金属又は金属酸化物をいうものとする。
【0021】
図1及び図3(b)、(c)に示すように、塗布具40は、把持部41と、塗布部42と、磁性部43とを有する。塗布具40を塗布具収容部13に収容したときに、把持部41は上下方向に薄く、前後方向に細長い扁平形状を呈する。以下、このときの上下方向を把持部41の厚み方向と称する。
【0022】
塗布部42は、把持部41の長尺方向両端にそれぞれ設けられている。各図では塗布部42は、スポンジ製又はシリコン製等のチップとして構成された例を示している。但し、塗布部42はブラシ状に構成されていてもよい。また、一方の塗布部42と他方の塗布部42は同じ形態であってもよいし、異なる形態であってもよい。塗布具40は、化粧料31a~31dの種類や、化粧料31a~31dを塗布する部位に応じて適切な形態を採用することができる。
【0023】
本実施の形態では、塗布具収容部13に2本の塗布具40が収容されているが、塗布具40の数や種類は特に限定されるものではなく、塗布具収容部13には1本の塗布具40のみ収容されていてもよいし、3本以上の塗布具40が収容されていてもよい。また、異なる種類の塗布具40が収容されていてもよい。
【0024】
磁性部43は、図1及び図3(c)に示すように、略円柱状に構成されており、把持部41の長尺方向略中央位置において厚み方向に貫通するようにして埋設されている。
磁性部43は、上記磁性シート16に対して、磁力により塗布具40を塗布具収容部13の底面に脱着可能に付着可能な材料より構成されていればよく、磁石であってもよいし、磁性体であってもよい。
【0025】
磁性シート16及び磁性部43の双方が磁石より構成されていてもよいが、双方が磁石より構成されている場合は塗布具収容部13に対して塗布具40を収容する際に塗布具40を収容する向きに留意する必要がある。磁性シート16及び磁性部43のうちいずれか一方を磁石とし、その他方を磁性体とすれば、塗布具40を収容する際の向きに関する制約が少なくなり、より好ましい。また、本実施の形態では、把持部41に対して磁性部43を厚み方向に貫通するようにして埋設するものとしたが、これに限定されるものではない。例えば、磁性部43を把持部41の厚み方向に貫通させるのではなく、磁性部43の表面が把持部41の表面に露出しないようにして磁性部43を把持部41の内部に埋設してもよい。この場合、例えば、磁性部43をインサート品とすれば、いわゆるインサート成形により樹脂製の把持部41に磁性部43を容易に埋設することができる。さらに、磁性部43を把持部41に埋設するのではなく、把持部41の表面(片面、又は、両面)にのみシート状にした磁性部43を貼着する等してもよい。磁性部43の形状や大きさ、把持部41に設ける位置等は適宜変更することができる。
【0026】
次に、蓋体20について説明する。図1図3に示すように、蓋体20は略矩形を呈する天壁面20aと、天壁面20aの外縁を取り囲むように設けられる蓋体側周壁部20bとを有する。この蓋体20の後面側に上記蓋体側回動部21が設けられ、前面側に上記爪部22が設けられている。蓋体20の天壁面20aの内面には鏡23が設けられている。
【0027】
容器本体10に対して蓋体20が閉じられた状態(閉状態)のとき(図3(a))、爪部22は容器本体10に設けられた係合部14に係合する。爪部22と係合部14との係合を解除し、蓋体20の前面側を押し上げると、蓋体20が蓋体側回動部21を回動中心として回動し、蓋体20が開かれた状態となる。本体側回動部11に対して蓋体側回動部21は摺動する。当該コンパクト容器100ではいわゆるフリーストップ機能が実現されている。すなわち、蓋体20を閉状態から図3(b)に示す全開状態までの間の任意の回動角において、蓋体20がその姿勢を維持した状態で容器本体10に支持することができる。
【0028】
ここで、蓋体側周壁部20bのうち天壁面20aの右側部に配置される壁面部分を蓋体側右側壁部24(側壁部)と称する。図3(a)~(c)に示すように、蓋体側右側壁部24には容器本体10側に設けられた開口部15aを覆う被覆部24aが設けられている。図3(a)に示すように、蓋体20が容器本体10に対して閉状態にあるとき、開口部15aは被覆部24aに覆われる。一方、図3(b)、(c)に示すように蓋体20が容器本体10に対して開状態にあるとき、被覆部24aは開口部15aから離間する。
【0029】
次に、図3及び図4を参照して、上記コンパクト容器100から塗布具40を取り出す手順を説明する。図4(a)は図1図3(b)、(c)に対応する図である。
まず、図3(a)に示す閉状態から、蓋体20を開状態とすると、図3(b)に示すように、開口部15aから被覆部24aが離間して、開口部15aから塗布具40が露出する。塗布具40は塗布具収容部13に対して磁力により付着しているため、蓋体20を開いたときに、塗布具40が塗布具収容部13から飛び出すのを防ぐことができる。
【0030】
そして、例えば図4(a)に示すように、塗布具収容部13において右側に収容された塗布具40の把持部41の上面に親指をあて、他の指を底壁面10aの下面に添え、塗布具40を本体側右側壁部15に向けて移動させる。このときも塗布具40は塗布具収容部13に対して磁力により付着した状態が維持されるため、塗布具40を安定した状態でスライド移動させることができる。そして、把持部41に設けられた磁性部43が磁性シート16の外側に位置するまで移動させると、磁性部43と磁性シート16との間の引き合う力が解除され、開口部15aから塗布具40を取り出すことができる。
【0031】
一方の塗布具40を取り出す間、容器本体10に対して振動が負荷される場合がある。その場合、塗布具収容部13の左側に収容された他方の塗布具40にも振動が加わり、他方の塗布具40が塗布具収容部13から飛び出してしまうおそれがある。しかしながら、本実施の形態のコンパクト容器100では、他方の塗布具40についても、塗布具収容部13の底面に設けられた磁性シート16に磁力により付着しているため、一方の塗布具40を取り出す間も他方の塗布具40が塗布具収容部13に収容された状態を容易に維持することができる。
【0032】
なお、塗布具40を使用した後は、塗布具40を開口部15aから塗布具収容部13に収容させてもよいし、容器本体10の上面側から収容してもよい。例えば、他方の塗布具40が既に塗布具収容部13に収容されている場合も、他方の塗布具40は塗布具収容部13に対して磁力により付着しているため、他方の塗布具40が塗布具収容部13から飛び出すことなく、一方の塗布具40を塗布具収容部13に対して容易に収容することができる。
【0033】
以上のように構成されたコンパクト容器100によれば、塗布具収容部13の収容空間を区画する本体側右側壁部15に、塗布具40を取り出すための開口部15aを設けたため、塗布具40を開口部15a側に向けてスライド移動させることでコンパクト容器100から塗布具40を容易に取出すことができる。そのため、塗布具収容部13の上面(開口面)から指を入れて塗布具40をつまむためのスペースを設ける必要がなく、従来と比較すると塗布具収容部13をコンパクトに構成することができ、コンパクト容器200を小型に構成することができる。
【0034】
また、上記コンパクト容器100では、塗布具収容部13の底面に磁性シート16を設け、塗布具40に磁性部43を設けて、塗布具40が塗布具収容部13の底面に磁力により脱着可能に付着させることで、上述した種々の作用効果を得ることができる。
【0035】
さらに、上記コンパクト容器100では、被覆部24aを有するため、塗布具40を全て塗布具収容部13に収容した後、蓋体20を閉じると、容器本体10側に設けられた開口部15aを被覆部24aにより覆うことができる。そのため、塗布具40が開口部15aから意図せず外側に飛び出すことを抑制すると共に、蓋体20が閉状態にあるときに、コンパクト容器100の内側に開口部15aから汚れ等の異物が侵入しないようにすることができる。
【0036】
[変形例]
次に、図5を参照して第一の実施の形態のコンパクト容器100の変形例について説明する。図5に示す変形例のコンパクト容器110は、塗布具収容部13の底面に加えて、蓋体20の天壁面20aに、磁性シート111を備える点を除いて、第一の実施の形態のコンパクト容器100と同様の構成を有するため、同様の構成については第一の実施の形態のコンパクト容器100と同じ用語及び符号を用い、その説明を省略する。
【0037】
変形例では、蓋体20を容器本体10に対して閉状態としたとき、蓋体20の天壁面20aの内面と鏡23との間であって、塗布具収容部13に対向する領域以外の領域に設けられている。図示例では、化粧料収容部12に対向する領域の略全面に磁性シート111が設けられている。なお、図5では磁性シート111が設けられる領域にハッチングを付しているが、このハッチングは断面を示すものではない。
【0038】
この変形例のコンパクト容器110では、蓋体20の天壁面20a側にも磁性シート111が設けられている。例えば、外出先で化粧直し等をする際に、使用途中の塗布具40を洗面台などの上に置くと、塗布部42に水分が付着したり、洗面台に化粧料31a~31dが付着したりする。しかしながら、当該コンパクト容器110を用いれば、図5に示すように、塗布具40を鏡23を介して磁性シート111に磁力により付着させることができるため、使用途中の塗布具40を鏡23上に仮置きすることができる。そのため、使用途中の塗布具40を都度塗布具収容部13に収容する必要もなく、塗布具40が落下するなどの不具合も抑制することができ、外出先等での化粧直し等を効率よく行うことができる。
【0039】
また、当該コンパクト容器110は、上記第一の実施の形態のコンパクト容器100と同様に塗布具収容部13の底面に磁性シート16を備えているため、上記第一の実施の形態のコンパクト容器100と同様の作用効果を得ることができる。
【0040】
ここで、上記変形例のコンパクト容器110では、蓋体20を容器本体10に対して閉状態としたとき、塗布具収容部13の上方には磁性シート111が設けられていないため、蓋体20を閉じたときに塗布具40が蓋体20側に磁力により付着することを防止することができる。一方、塗布具収容部13の底面には磁性シート16が設けられているため、蓋体20を閉状態としたときに塗布具40は塗布具収容部13の底面にのみ付着し、コンパクト容器100を持ち運ぶ際に塗布具40が鏡23側に移動して、鏡23が塗布部42に付着した化粧料31a~31dで汚れるのを防止することができる。
【0041】
[第二の実施の形態]
次に、図6及び図7を参照して第二の実施の形態のコンパクト容器200について説明する。第二の実施の形態において、第一の実施の形態のコンパクト容器100と同様の構成については、第一の実施の形態のコンパクト容器100と同じ用語及び符号を用いて、その説明を省略する。
【0042】
第二の実施のコンパクト容器200は、第一の実施の形態のコンパクト容器100とは異なり、塗布具収容部13の底面には磁性シート16が設けられておらず、蓋体20の天壁面20aの内面であって、塗布具収容部13に対向する領域に磁性シート201が設けられている。この磁性シート201は、蓋体20の天壁面20aの内面と略同じ面積を有する。なお、図6及び図7(b)では磁性シート201にハッチングを付しているが、このハッチングは断面を示すものではない。
【0043】
そのため、塗布具40を塗布具収容部13に収容した状態で、蓋体20を閉状態とすると、図7(a)に示すように、塗布具40は蓋体20の天壁面20aの内面側に付着する。塗布具40を蓋体20の天壁面20aの内面側に付着させることで、当該コンパクト容器200を持ち運ぶ際にコンパクト容器200内での塗布具40の移動を防止することができる。
【0044】
第二の実施の形態のコンパクト容器200では第一の実施の形態とは異なり蓋体側右側壁部202は被覆部24aを有さず、その代わりに塗布具40をスライド移動させて取り出すための開口部202aが設けられている。また、当該コンパクト容器200では第一の実施の形態とは異なり本体側右側壁部203は開口部15aを備えず、その代わりに蓋体20が閉状態にあるときに上記開口部202aを被覆する被覆部203aが設けられている。そのため、蓋体20が閉状態にあるとき(図7(a))から、蓋体20を回動させると、塗布具40が蓋体20の天壁面20aの内面に付着された状態のまま蓋体20が開く。そして、図7(b)において点線で示す塗布具40を蓋体側右側壁部202に設けられた開口部202aの側にスライド移動させると、開口部202aから塗布具40を取り出すことができる。また、図7(b)に示す例では塗布具40をスライド移動させずに、蓋体20の天壁面20aに付着した塗布具40の位置を適宜調整すれば、塗布具40を指でつまんで直接取り出すこともできる。
【0045】
このように第二の実施の形態のコンパクト容器200についても塗布具収容部13の上面(開口面)から指を入れて塗布具40をつまむためのスペースを設けなくとも、塗布具40を取り出すことができるため、塗布具収容部13は塗布具40を取り出すためのスペースを考慮することなく、塗布具収容部13の大きさを設計することができる。そのため、従来と比較すると塗布具収容部13をコンパクトに構成することができ、コンパクト容器200を小型に構成することができる。
【0046】
当該第二の実施の形態のコンパクト容器200では、蓋体20の天壁面20aの内面の略全面に磁性シート201を設けたため、図7(b)に示すように、塗布具40を磁性シート201が設けられている領域であれば、任意の位置に脱着可能に付着させることができる。そのため、第一の実施の形態の変形例と同様に化粧の途中で塗布具40を仮置きすることができ、第一の実施の形態の変形例と同様の作用効果を得ることができる。
【0047】
図6及び図7には、蓋体20の天壁面20aの内面の略全面に鏡204を設け、蓋体20の天壁面20aと蓋体20の天壁面20aとの間に磁性シート201を設ける構成とした。鏡204に塗布具40が付着するため、塗布具40は把持部41の厚みに対して塗布部42の厚みが薄く、鏡204に塗布具40を付着させたとき、塗布部42が鏡204に接しないような形状とすれば、鏡204が塗布部42に付着した化粧料31a~31dで汚れることを防止することができる。
【0048】
第二の実施の形態のコンパクト容器200でも、蓋体20の天壁面20aの内面側に磁力により付着した塗布具40をスライド移動させて取り出すための開口部202aが設けられている。また、当該コンパクト容器200では第一の実施の形態とは異なり本体側右側壁部203は開口部15aを備えず、その代わりに蓋体20が閉状態にあるときに上記開口部202aを被覆する被覆部203aが設けられている。
【0049】
また、第二の実施の形態のコンパクト容器200において、蓋体20の天壁面20aの内面に鏡204を設ける場合は、蓋体20を容器本体10に対して閉状態としたとき、塗布具収容部13に対向する領域にのみ磁性シート201を設け、化粧料収容部12に対向する領域に鏡204を設けてもよい。この場合、塗布具40を仮置き可能な領域が塗布具収容部13の上面と略同様の大きさに限られるが、開口部202aから塗布具40の一端側を蓋体側右側壁部24の外側に突出させることもできるため、塗布具40の長尺方向が左右方向となるように蓋体20の天壁面20aの内面に仮置きすることもでき、仮置きが容易になる。
【0050】
以上説明した第一の実施の形態、変形例及び第二の実施の形態のコンパクト容器100、110、200は本発明に係るコンパクト容器の一態様であり、本発明に係るコンパクト容器は本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、容器本体10、蓋体20、回動部(本体側回動部11、蓋体側回動部21)などの構成は、適宜変更することができる。例えば、上記コンパクト容器100、110、200において、爪部22と係合部14とを脱着可能に係合させることで、蓋体20を容器本体10に対して開閉可能に閉状態に維持させるものとしたが、例えば、爪部22と係合部14とに代えて、磁力により蓋体20を容器本体10に対して開閉可能に閉状態に維持させるよう構成してもよい。例えば、爪部22に相当する部位に磁石(又は磁性体)を配置し、係合部14に相当する部位に他の磁石(又は磁性体)を配置し、爪部22側又は係合部14側の磁石(又は磁性体)の位置、或いは、磁力の作用する向きを可変とすることが考えられる。このように構成することで、蓋体20を容器本体10に対して閉状態とするときは、両者を磁力により吸引させ、蓋体20を容器本体10に対して開状態とするときは両者の間で磁力が作用しないように、或いは、反発する向きに磁力を作用させればよい。爪部22及び/又は係合部14に相当する位置に磁石又は磁性体を配置することで、蓋体20が開状態のとき、及び/又は係合部14にも塗布具40を磁力により付着させて、塗布具40を仮置き可能にしてもよい。
【0051】
また、第一の実施の形態のコンパクト容器100及び第二の実施の形態のコンパクト容器200はそれぞれ磁性シート16、201に対して塗布具40を磁性部43により磁力により脱着可能に付着させることができるため、蓋体20を閉状態としたときに開口部15a、202aが被覆部24a、203aにより覆われていなくとも、塗布具40が開口部15a、202aから外側に飛び出すことがない。従って、塗布具収容部13をコンパクトに構成しつつ、塗布具収容部13から塗布具40が飛び出すことを抑制するという観点からは、蓋体20又は容器本体10に被覆部24a、203aが設けられていなくてもよい。
【符号の説明】
【0052】
10 :容器本体
10a :底壁面
10b :本体側周壁部
10c :仕切部
11 :本体側回動部
12 :化粧料収容部
12a、12b、12c、12d:化粧料収容空間
13 :塗布具収容部
14 :係合部
15 :本体側右側壁部(側壁部)
15a :開口部
16 :磁性シート
20 :蓋体
20a :天壁面
20b :蓋体側周壁部
21 :蓋体側回動部
22 :爪部
23 :鏡
24 :蓋体側右側壁部
24a :被覆部
31a、31b、31c、31d:化粧料
40 :塗布具
41 :把持部
42 :塗布部
43 :磁性部
100 :コンパクト容器
110 :コンパクト容器
111 :磁性シート
200 :コンパクト容器
201 :磁性シート
202 :蓋体側右側壁部(側壁部)
202a :開口部
203 :本体側右側壁部
203a :被覆部
204 :鏡
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7