(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174278
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】スイッチ装置
(51)【国際特許分類】
H01H 13/22 20060101AFI20231130BHJP
H01H 9/02 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
H01H13/22
H01H9/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087040
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】室田 将哉
(72)【発明者】
【氏名】藤本 丈史
【テーマコード(参考)】
5G052
5G206
【Fターム(参考)】
5G052AA11
5G052BB01
5G052HA02
5G052HB07
5G052HC04
5G206AS02N
5G206FS13K
5G206GS21
5G206JS05
5G206JU04
5G206NS02
5G206NS05
(57)【要約】
【課題】製造作業を簡易化できるスイッチ装置を提供する。
【解決手段】スイッチ装置8は、ハウジング9、可動ターミナル18、第1固定ターミナル19、及び第2固定ターミナル20を備える。第1固定ターミナル19は、可動ターミナル18と接触する第1固定ターミナル本体19aと、第1固定ターミナル本体19aから側方に曲げ形成されるとともに基板21に実装される第1固定ターミナル用接続ピン19bとを有する。ハウジング9は、第1固定ターミナル用接続ピン19bの通過が可能な溝部33を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザによる操作部への操作に基づきばね部が反転するスナップアクション機構を有する可動ターミナルと、前記ばね部が反転していない場合に前記可動ターミナルが接触する第1固定ターミナルと、前記操作部が規定の操作量となったときの前記ばね部の反転によって前記可動ターミナルが接触する第2固定ターミナルと、少なくとも前記第1固定ターミナルを収容するためのハウジングとを備えたスイッチ装置であって、
前記第1固定ターミナルは、前記可動ターミナルと接触する第1固定ターミナル本体と、前記第1固定ターミナル本体から側方に曲げ形成されるとともに基板に実装される第1固定ターミナル用接続ピンとを有し、
前記ハウジングは、前記第1固定ターミナル用接続ピンの通過が可能な溝部を有するスイッチ装置。
【請求項2】
前記ハウジングは、開口部を有するケースと、前記開口部を閉じるとともに、前記第1固定ターミナルを位置決めするカバーとを備え、
前記カバーは、前記ケースとの組付け状態において前記溝部の少なくとも一部に嵌まる突壁を有する
請求項1に記載のスイッチ装置。
【請求項3】
前記溝部の少なくとも一部は、前記第1固定ターミナルの組付け方向に向かって溝幅が狭くなるようなテーパ状に形成されている
請求項1に記載のスイッチ装置。
【請求項4】
前記ハウジングの内部において前記溝部の背面に配置されることにより、前記ハウジングの内部への異物の侵入を抑制する規制壁を備える
請求項1に記載のスイッチ装置。
【請求項5】
前記第1固定ターミナル本体の基端を、前記溝部に形成された圧入部に圧入することにより、前記第1固定ターミナルを前記ハウジングに仮固定する圧入機構を備える
請求項1に記載のスイッチ装置。
【請求項6】
前記第1固定ターミナル本体は、コ字状に形成され、
前記第1固定ターミナル用接続ピンは、前記第1固定ターミナル本体の両端に形成され、
前記溝部は、前記ハウジングにおいて対向する一対の側壁の各々に形成されている
請求項1に記載のスイッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スナップアクション機構によって接点が切り替わるスイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されるように、操作部材に対する押圧操作に応じて作動するスナップアクション機構を備えたスイッチ装置が周知である。特許文献1は、ハウジング、操作部材、固定接点、可動接点、及びスナップアクション機構を備える。スナップアクション機構は、操作部材が所定位置まで押圧された場合に、可動接点を駆動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種のスイッチ装置において接点を基板に実装することを考えた場合、基板への実装のし易さから、平面実装方式を用いたい現状がある。この場合、例えば、接点は、基板との接続部位となる接続ピンを、基板の実装面に沿って曲げる加工が必要となる。
【0005】
ここで、例えば接点をスイッチ装置のケースに組付けた後、接点の接続ピンを曲げる工法の場合、ケースと一体化された接点の接続ピンを曲げる必要があるため、接続ピンを曲げ難いという課題が生じる。そこで、接点の接続ピンを先に曲げてから、ケースに組付ける工法をとることも想定される。このように、接続ピンを先曲げするのであれば、曲げ調整が容易となるからである。
【0006】
しかし、接続ピンを先曲げする工法の場合、先曲げした後の接点をケースに組付けるとき、先曲げした接続ピンがケースと干渉する可能性がある。この場合、接点をケースに組付けることができないため、何らかの対策が必要であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するスイッチ装置は、ユーザによる操作部への操作に基づきばね部が反転するスナップアクション機構を有する可動ターミナルと、前記ばね部が反転していない場合に前記可動ターミナルが接触する第1固定ターミナルと、前記操作部が規定の操作量となったときの前記ばね部の反転によって前記可動ターミナルが接触する第2固定ターミナルと、少なくとも前記第1固定ターミナルを収容するためのハウジングとを備えた構成であって、前記第1固定ターミナルは、前記可動ターミナルと接触する第1固定ターミナル本体と、前記第1固定ターミナル本体から側方に曲げ形成されるとともに基板に実装される第1固定ターミナル用接続ピンとを有し、前記ハウジングは、前記第1固定ターミナル用接続ピンの通過が可能な溝部を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、製造作業を簡易化できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態のスイッチユニットの斜視図である。
【
図4】(a)、(b)はスイッチ装置の作動図である。
【
図5】ケースへの第1固定ターミナルの組付けを示す斜視図である。
【
図8】
図2に示すVIII-VIII線断面図である。
【
図11】固定接点部を示すケース内部の斜視図である。
【
図12】固定接点部を示すケース内部の平面図である。
【
図14】接点状態の判定の仕方をまとめた表である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の一実施形態を説明する。
(スイッチユニット1の概説)
図1に示すように、スイッチユニット1は、例えば、手元の操作によって電動で車両のパーキングブレーキをオン又はオフに切り替える電動パーキングブレーキ用スイッチ2である。このスイッチユニット1は、例えば、車両の室内(運転席など)に配置されている。
【0011】
スイッチユニット1は、フレーム3と、フレーム3に可動可能に取付けられた操作部4とを備える。操作部4は、例えば、フレーム3又は操作部4に設けられた軸部5によって回転可能にフレーム3に取付けられている。操作部4は、軸部5の軸心La回りの両方向(第1操作方向R1、第2操作方向R2)に回転する。操作部4は、例えば、中立位置を起点に、第1操作方向R1又は第2操作方向R2に回転操作される。操作部4は、例えば、中立位置からの回転操作後に手が放されると、自動で元の中立位置に戻るモーメンタリ式である。
【0012】
パーキングブレーキをオンする場合は、例えば、ブレーキペダルを踏み込みつつ、操作部4を中立位置から第1操作方向R1に操作する。操作部4の第1操作方向R1への操作は、例えば、操作部4の引き上げ操作である。このとき、操作部4が第1操作方向R1において最奥の第1操作位置(電動パーキングブレーキオン位置)まで操作されると、パーキングブレーキがオンされる。
【0013】
パーキングブレーキをオフする場合は、例えば、ブレーキペダルを踏み込みつつ、操作部4を中立位置から第2操作方向R2に操作する。操作部4の第2操作方向R2への操作は、例えば、操作部4を押し下げる操作である。このとき、操作部4が第2操作方向R2において最奥の第2操作位置(電動パーキングブレーキオフ位置)まで操作されると、パーキングブレーキがオフされる。なお、パーキングブレーキは、例えば、車両のシフトポジションをドライブ位置に入れて走行が開始されたときに、自動でオフされてもよい。
【0014】
(スイッチ装置8の概説)
図2に示すように、スイッチユニット1は、操作部4の操作を検出するスイッチ装置8を備える。本例のスイッチ装置8は、操作部4の第1操作方向R1への操作を検出する第1スイッチ装置8aと、操作部4の第2操作方向R2への操作を検出する第2スイッチ装置8bと、を含む。2つのスイッチ装置8は、例えば、隣合うように並設されている。なお、これらスイッチ装置8は、基本的に同様の構成をとる。よって、以降は、これらスイッチ装置8の構成をまとめて説明する。
【0015】
スイッチ装置8は、装置部品を収容するハウジング9を備える。ハウジング9は、略直方体状をなす。ハウジング9は、開口部10を有するケース11と、開口部10を閉じるカバー12とを有する。ケース11は、例えば、スイッチ装置8の電気部品を絶縁するインシュレータである。ケース11は、例えば、カバー12と対向する一平面(本例は、紙面上面)を開口部10とした有底箱状に形成されている。ケース11は、対向する一対の側壁13を有する。カバー12は、例えば、溶着によってケース11に固定されている。溶着は、例えば、レーザ溶着である。
【0016】
図3に示すように、カバー12の裏面には、4隅の角に脚部14が形成されている。ケース11の開口縁の4隅には、カバー12の脚部14の各々と組をなすように係合部15が凹設されている。カバー12は、各脚部14をケース11の係合部15に各々係合することにより、ケース11に組付けられる。
【0017】
スイッチ装置8は、ユーザによる操作部4の操作に基づき可動する可動ターミナル18と、可動ターミナル18が選択的に接触する第1固定ターミナル19及び第2固定ターミナル20とを備える。可動ターミナル18は、可動ターミナル本体18aと、基板21に実装される可動ターミナル用接続ピン18bとを有する。可動ターミナル用接続ピン18bは、例えば、スイッチ装置8の幅方向(装置幅方向:
図3のY軸方向)の両側に一対設けられている。
【0018】
なお、可動ターミナル用接続ピン18bの隣の「18c」は、可動ターミナル18をプレス成形するときに必要な分断前の繋ぎである。よって、この繋ぎ部18cは、端子機能を持つものではないため、省略可能である。
【0019】
可動ターミナル用接続ピン18bは、ケース11の側壁13に形成された開口孔11aから、ケース11の外部に引き出される。繋ぎ部18cは、ケース11の側壁13に形成された開口孔11bから、ケース11の外部に引き出される。
【0020】
可動ターミナル18は、ユーザによる操作部4への操作に基づきばね部22が反転するスナップアクション機構23を有する。ばね部22の基端は、可動ターミナル本体18aに形成された一対の係合片24、25に固定されている。ばね部22は、先端に可動ターミナル18の可動接点部26を有する。可動接点部26は、例えば、リベットである。本例のリベットは、例えば、かしめによって形成されている。また、リベットの径は、かしめ加工が可能な最小値に設定されている。
【0021】
ばね部22は、ばね部22の基端に向かって張力を付与する引張部27と、張力に対して反対方向に反力を付与する圧縮部28とを有する。引張部27の基端は、ケース11内の端寄りに位置する係合片24に係合されている。圧縮部28の基端は、ケース11内の中央付近に位置する係合片25に係合されている。
【0022】
引張部27の基端には、操作部4と連動する押圧部31が対向配置されている。押圧部31の頭部31aは、カバー12に形成された孔32を介してハウジング9の外部に露出されている。押圧部31は、スイッチ装置8の高さ方向(装置高さ方向:
図3のZ軸方向)に沿って直線往復動するように設けられている。ばね部22は、押圧部31の押し込み量が規定量となったタイミングで反転する。
【0023】
第1固定ターミナル19は、可動ターミナル18と接触する第1固定ターミナル本体19aと、第1固定ターミナル本体19aの端部に形成された第1固定ターミナル用接続ピン19bとを備える。第1固定ターミナル19は、可動ターミナル18に対し、カバー12寄りの位置に配置されている。第1固定ターミナル本体19aは、例えば、コ字状に形成されている。第1固定ターミナル本体19aは、可動ターミナル18と対向する位置に配置されている。
【0024】
第1固定ターミナル用接続ピン19bは、例えば、第1固定ターミナル本体19aの両端に形成されている。第1固定ターミナル用接続ピン19bは、第1固定ターミナル本体19aよりも幅が小さいピン状に形成されている。第1固定ターミナル用接続ピン19bは、ハウジング9(本例は、ケース11)の側壁13に形成された溝部33から、ケース11の外部に引き出される。第1固定ターミナル用接続ピン19bは、基板21に実装される。
【0025】
第2固定ターミナル20は、可動ターミナル18と接触する第2固定ターミナル本体20aと、第2固定ターミナル本体20aの端部に形成された第2固定ターミナル用接続ピン20bとを備える。第2固定ターミナル20は、可動ターミナル18に対し、ケース11の底部寄りの位置に配置されている。第2固定ターミナル本体20aは、可動ターミナル18と対向する位置に配置されている。第2固定ターミナル用接続ピン20bは、例えば、第2固定ターミナル本体20aの両端に形成されている。第2固定ターミナル用接続ピン20bは、基板21に実装される。
【0026】
なお、第2固定ターミナル用接続ピン20bの隣の「20c」は、第2固定ターミナル20をプレス成形するときに必要な分断前の繋ぎである。よって、この繋ぎ部20cは、端子機能を持つものではないため、省略可能である。
【0027】
第2固定ターミナル用接続ピン20bは、ケース11の側壁13に形成された開口孔11dから、ケース11の外部に引き出される。繋ぎ部20cは、ケース11の側壁13に形成された開口孔11eから、ケース11の外部に引き出される。
【0028】
なお、可動ターミナル18(ばね部22を除く部分)及び第2固定ターミナル20は、例えば、ケース11に対し、裏側から固定される組立方法をとってもよい。或いは、可動ターミナル18(ばね部22を除く部分)及び第2固定ターミナル20は、例えば、ケース11にインサート成形されてもよい。
【0029】
(スイッチ装置8の接点切り替わりの動作)
図4(a)に示すように、操作部4が操作されていない中立位置の場合、スナップアクション機構23のばね部22は反転していない状態をとる。このとき、ばね部22の引張部27の張力と圧縮部28の反力との合成力が、可動接点部26に対して紙面上向きに働く。このため、可動ターミナル18の可動接点部26が第1固定ターミナル19に接触する。
【0030】
図4(b)に示すように、操作部4が第1操作方向R1(第2操作方向R2)に回転操作されて、押圧部31が押圧されたとする。このとき、操作部4が規定の操作量となると、張力及び反力の合成力が可動接点部26に対して紙面下向きに働く。よって、可動接点部26が第1固定ターミナル19から離れ、第2固定ターミナル20に接触する。すなわち、可動ターミナル18は、第1固定ターミナル19から第2固定ターミナル20に接続が切り替わる。
【0031】
また、押圧操作後に操作部4から手が離されると、ばね部22が元の状態に戻る様に反転することにより、可動接点部26が第1固定ターミナル19に接触する状態に復帰する。このようにして、操作部4の操作量に基づき、第1固定ターミナル19及び第2固定ターミナル20に対する可動接点部26の接触が選択的に切り替わる。
【0032】
(第1固定ターミナル19の構造)
図3に示す通り、本例の第1固定ターミナル19は、例えば、カバー12と別部品化されている。この第1固定ターミナル19は、例えば、開口部10がカバー12によって閉じられた場合に、カバー12によってケース11の内部における位置決めがなされる。具体的には、第1固定ターミナル19は、組付け時において、カバー12によって上から押さえられることにより、位置決めされる。
【0033】
第1固定ターミナル用接続ピン19bは、第1固定ターミナル19をケース11に組付ける前に、基板21の実装面34に沿う向きに予め曲げ形成されている。このように、第1固定ターミナル用接続ピン19bは、先曲げ形成されている。本例の第1固定ターミナル用接続ピン19bは、基板21の実装面34に対して水平方向(
図3のX-Y軸平面方向)に突出する。よって、第1固定ターミナル19は、第1固定ターミナル用接続ピン19bが予め曲げられた状態で、ケース11に組付け固定される。
【0034】
(溝部33の構造)
図5及び
図6に示すように、溝部33は、第1固定ターミナル用接続ピン19bの通過が可能に形成される。溝部33は、第1固定ターミナル19の組付け時において第1固定ターミナル用接続ピン19bを通過させるために設けられる。本例の溝部33は、一対の側壁13の両方に設けられている。溝部33は、第1固定ターミナル19の組付け時において第1固定ターミナル用接続ピン19bの通過を許容するガイド溝37を有する。ガイド溝37は、例えば、第1固定ターミナル19の組付け方向(
図6の矢印A1方向)に向かって溝幅が狭くなるようなテーパ状に形成されている。このように、溝部33の少なくとも一部は、テーパ状に形成されている。
【0035】
溝部33は、ケース11に組付けが完了した第1固定ターミナル19の第1固定ターミナル用接続ピン19bの配置スペースとなる切欠溝38を有する。切欠溝38は、例えば、ガイド溝37の下端において、ガイド溝37と連通するように形成されている。溝部33(ガイド溝37及び切欠溝38)は、ケース11の側壁13において上端から下端にかけて一帯に形成されている。
【0036】
(溝部33における異物侵入対策)
図6に示す通り、カバー12は、ケース11との組付け状態において溝部33の少なくとも一部に嵌まる突壁39を有する。突壁39は、カバー12の裏面端縁からケース11に向かって突出するように形成されている。突壁39は、各溝部33と組をなすように一対設けられている。突壁39は、溝部33の少なくとも一部に嵌まり込むことにより、溝部33からハウジング9内への異物侵入を抑制する。本例の突壁39は、溝部33のガイド溝37に嵌まる形状に形成されている。この場合、突壁39は、ガイド溝37の形状に合わせたテーパ状に形成されている。
【0037】
図7に示すように、スイッチ装置8は、ハウジング9の内部において溝部33の背面に配置された規制壁40を備える。本例の規制壁40は、一対設けられた溝部33と組をなすようにケース11に2つ設けられている。本例の規制壁40は、例えば、ガイド溝37の下端一部と、切欠溝38の全体と、を背面から覆うようにケース11に立設されている。規制壁40は、溝部33(ガイド溝37、切欠溝38)とケース11の内部とを区画することにより、溝部33からハウジング9(ケース11)の内部への異物の侵入を抑制する。
【0038】
(接続ピン群の配列)
図6に示す通り、可動ターミナル用接続ピン18b及び第2固定ターミナル用接続ピン20bは、第1固定ターミナル用接続ピン19bと同一方向(水平方向)に突出するように設けられている。すなわち、曲げ形成した第1固定ターミナル用接続ピン19bと同じ方向に突出するように、可動ターミナル用接続ピン18b及び第2固定ターミナル用接続ピン20bの突出方向を設定する。これにより、スイッチ装置8を基板21に実装する方式として、表面実装方式が使用可能になる。
【0039】
なお、本例の場合、繋ぎ部18c、20cも第1固定ターミナル用接続ピン19bと同一方向(水平方向)に突出するように形成される。よって、可動ターミナル用接続ピン18b、第1固定ターミナル用接続ピン19b、第2固定ターミナル用接続ピン20b、及び繋ぎ部18c、20cの全てが、同一平面上に位置する。
【0040】
(第1固定ターミナル19の圧入構造)
図8に示すように、スイッチ装置8は、第1固定ターミナル19を圧入によってハウジング9(本例は、ケース11)に仮固定する圧入機構43を備える。本例の圧入機構43は、ケース11の溝部33に形成された圧入部44を有する。本例の圧入部44は、溝部33に配置されるとともに、ガイド溝37に並設されている。圧入部44は、第1固定ターミナル本体19aの基端19cが挿し込まれる凹状部であって、対向する面に一対の第1凹凸部45を有する。第1凹凸部45は、所定の凹凸形状をなしている。
【0041】
圧入機構43は、第1固定ターミナル19の基端19cに一対の第2凹凸部46を有する。第2凹凸部46は、基端19cの各々の側面に設けられるとともに、第1凹凸部45に対して凹凸が互い違いになる形状に形成されている。圧入機構43は、第1固定ターミナル本体19aの基端19cを、ケース11に形成された圧入部44に圧入することにより、第1固定ターミナル19をケース11に仮固定する。すなわち、第1固定ターミナル19は、第1凹凸部45をケース11の第2凹凸部46に圧入することにより、ケース11に仮固定される。
【0042】
(ケース11に対するカバー12の仮止めの仕方)
図9に示すように、スイッチ装置8は、開口部10を閉じるようにケース11に組付けられたカバー12を、ケース11に一時的に固定する仮止め部48を備える。本例の仮止め部48は、例えば、ケース11の係合部15の側面に形成された複数の潰しリブ49を有する。
【0043】
本例の潰しリブ49は、ケース11の装置幅方向(
図9のY軸方向)及び装置長さ方向(
図9のX軸方向)の基準をとるために設けられる。具体的には、潰しリブ49は、ケース11の装置幅方向の基準をとる一対の第1潰しリブ49aと、ケース11の装置長さ方向の基準をとる一対の第2潰しリブ49bと、を有する。カバー12は、潰しリブ49によってケース11に仮固定された後、溶着(例えば、レーザ溶着)によって本固定される。
【0044】
(カバー12による第1固定ターミナル19の押さえ)
図10に示すように、カバー12は、ケース11に仮固定された際に第1固定ターミナル19を上から押さえる潰し変形可能なリブ50を裏面に有する。本例のリブ50は、3つ設けられている。リブ50は、カバー12がケース11に仮固定された際に、第1固定ターミナル19を上から押さえ込む。リブ50は、例えば、カバー12をケース11に溶着するまで第1固定ターミナル19を位置決めできればよい。
【0045】
(第2固定ターミナル20の詳細形状)
図11及び
図12に示すように、第2固定ターミナル20は、可動ターミナル18が接触する部位として、第2固定ターミナル20の一部を加工して形成した固定接点部53を有する。第2固定ターミナル20は、可動ターミナル18の可動接点部26と固定接点部53で接触する。固定接点部53は、第2固定ターミナル20の基材を、切削及び曲げによって加工することにより、形成されている。
【0046】
図11に示す通り、固定接点部53は、第2固定ターミナル本体20aの基部54から可動ターミナル18に向かって湾曲状に突出した形状に形成されている。また、固定接点部53は、側方(
図11のY軸方向)から見たときにアーチ状を描く形状に形成されている。第2固定ターミナル20は、固定接点部53の下側に切欠き孔55を有する。
【0047】
(スイッチユニット1の電気構成)
図13に示すように、スイッチユニット1は、スイッチ装置8の出力に基づき操作部4の操作を検出する制御部80を備える。制御部80は、操作部4の第1操作方向R1への操作を検出する第1スイッチ装置8aと、操作部4の第2操作方向R2への操作を検出する第2スイッチ装置8bと、に接続されている。本例の制御部80は、第1スイッチ装置8a及び第2スイッチ装置8bに対し、複数の第1ポートP1~第4ポートP4によって接続されている。
【0048】
具体的には、第1スイッチ装置8aは、可動ターミナル用接続ピン18bが第1ポートP1に接続され、第1固定ターミナル用接続ピン19bが第4ポートP4に接続され、第2固定ターミナル用接続ピン20bが第2ポートP2に接続されている。第2スイッチ装置8bは、可動ターミナル用接続ピン18bが第3ポートP3に接続され、第1固定ターミナル用接続ピン19bが第2ポートP2に接続され、第2固定ターミナル用接続ピン20bが第4ポートP4に接続されている。
【0049】
図14に示すように、操作部4が中立位置のときは、第1スイッチ装置8a及び第2スイッチ装置8bの可動ターミナル18がともに第1固定ターミナル19と接続されるため、第1ポートP1と第4ポートP4とが接続されるとともに、第2ポートP2と第4ポートP4とが接続される。制御部80は、この接続状態を検出すると、操作部4が中立位置に位置すると判定する。
【0050】
操作部4が第1操作方向R1に操作されて第1操作位置をとったとき、第1スイッチ装置8a及び第2スイッチ装置8bのうち、第1スイッチ装置8aのみ可動ターミナル18が第1固定ターミナル19から第2固定ターミナル20に接続が切り替わる。このため、操作部4が第1操作位置に操作されたときは、第1ポートP1、第2ポートP2、及び第3ポートP3が接続される。制御部80は、この接続状態を検出すると、操作部4が第1操作位置に操作されたと判定する。よって、この操作が電動パーキングブレーキ用スイッチ2のオン操作として検出される。
【0051】
操作部4が第2操作方向R2に操作されて第2操作位置をとったとき、第1スイッチ装置8a及び第2スイッチ装置8bのうち、第2スイッチ装置8bのみ可動ターミナル18が第1固定ターミナル19から第2固定ターミナル20に接続が切り替わる。このため、操作部4が第2操作位置に操作されたときは、第1ポートP1、第3ポートP3、及び第4ポートP4が接続される。制御部80は、この接続状態を検出すると、操作部4が第2操作位置に操作されたと判定する。よって、この操作が電動パーキングブレーキ用スイッチ2のオフ操作として検出される。
【0052】
(実施形態の作用)
次に、本実施形態のスイッチ装置8の作用について説明する。
図5に示す通り、第1固定ターミナル19は、先端の第1固定ターミナル用接続ピン19bを先に曲げた状態でケース11に組付けられる。このため、第1固定ターミナル19をケース11に組付けた後に第1固定ターミナル用接続ピン19bを曲げる後曲げに比べて、曲げの調整が容易となる。また、先曲げの場合には、曲げを精度よく行うことが可能となるため、基板21に実装するときのコプラナリティの精度もよくなる。
【0053】
ところで、第1固定ターミナル用接続ピン19bは、先曲げによって形成される場合、第1固定ターミナル本体19aから側方に延びた形状をとる。このため、ケース11には、第1固定ターミナル用接続ピン19bと干渉しないように、第1固定ターミナル用接続ピン19bを通過させるための通路が必要となる。そこで、本例の場合、ケース11の側壁13に溝部33(具体的には、ガイド溝37)を設けることにより、側壁13における第1固定ターミナル用接続ピン19bを通過可能としたので、この懸念も解消される。
【0054】
図6に示す通り、カバー12には、溝部33を塞ぐための突壁39が形成されている。ところで、ケース11の側壁13に溝部33を形成した場合、この溝部33からケース11内に異物が侵入してしまう可能性が生じる。そこで、本例の場合、カバー12に突壁39を形成することにより、溝部33を塞ぐようにした。よって、溝部33からの異物の侵入が抑制される。
【0055】
図7に示す通り、ケース11の内部には、溝部33の背面に規制壁40が形成されている。このため、溝部33からケース11内への異物の侵入を、規制壁40によっても制限することが可能となる。特に、本例の場合、カバー12の突壁39、第1固定ターミナル19の基端19c、及びケース11内の規制壁40の3つの壁によって、溝部33からケース11内への異物の侵入を制限できる。よって、この点でも、ケース11内に異物が侵入し難いといえる。
【0056】
また、
図3や
図6に示す通り、可動ターミナル用接続ピン18b、第1固定ターミナル用接続ピン19b、及び第2固定ターミナル用接続ピン20bの接続ピン群(繋ぎ部18c、20cも含む)の延出方向を、基板21の実装面34の沿う方向とした。このため、基板21へのスイッチ装置8の実装方式を、スルーホール実装方式ではなく、表面実装方式とすることが可能となる。このため、実装自由度が向上する。また、スイッチ装置8の装置小型化にも寄与する。
【0057】
(実施形態の効果)
上記実施形態のスイッチ装置8によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)スイッチ装置8は、ハウジング9、可動ターミナル18、第1固定ターミナル19、及び第2固定ターミナル20を備える。ハウジング9は、少なくとも第1固定ターミナル19を収容する。可動ターミナル18は、ユーザによる操作部4への操作に基づきばね部22が反転するスナップアクション機構23を有する。第1固定ターミナル19は、ばね部22が反転していない場合に可動ターミナル18が接触する。第2固定ターミナル20は、操作部4が規定の操作量となったときのばね部22の反転によって可動ターミナル18が接触する。第1固定ターミナル19は、可動ターミナル18と接触する第1固定ターミナル本体19aと、第1固定ターミナル本体19aから側方に曲げ形成されるとともに基板21に実装される第1固定ターミナル用接続ピン19bとを有する。ハウジング9は、第1固定ターミナル用接続ピン19bの通過が可能な溝部33を有する。
【0058】
本構成によれば、第1固定ターミナル用接続ピン19bを側方に曲げた形状としたので、第1固定ターミナル19を基板21の実装面34に取付けるときの実装方式を平面実装方式とすることができる。また、第1固定ターミナル用接続ピン19bが組付け時に通過する溝部33をケース11に設けた。このため、第1固定ターミナル用接続ピン19bの曲げ加工の容易化を狙って第1固定ターミナル用接続ピン19bを組付け前に先に曲げても、組付け時にケース11と第1固定ターミナル用接続ピン19bとが干渉しない。これにより、先曲げ加工を用いることが可能となる。よって、スイッチ装置8の製造作業を簡易化できる。
【0059】
(2)スイッチ装置8は、開口部10を有するケース11と、開口部10を閉じるとともに第1固定ターミナル19を位置決めするカバー12とを備える。カバー12は、ケース11との組付け状態において溝部33の少なくとも一部に嵌まる突壁39を有する。この構成によれば、溝部33をカバー12の突壁39で覆うので、溝部33からケース11の内部に異物が侵入してしまうことを抑制できる。
【0060】
(3)溝部33の少なくとも一部は、第1固定ターミナル19の組付け方向に向かって溝幅が狭くなるようなテーパ状に形成されている。この構成によれば、溝部33の入口を広くすることが可能となるので、第1固定ターミナル用接続ピン19bを溝部33に挿し込み易くすることができる。
【0061】
(4)スイッチ装置8は、ハウジング9の内部において溝部33の背面に配置されることにより、ハウジング9の内部への異物の侵入を抑制する規制壁40を備える。この構成によれば、溝部33の背面に規制壁40を立設しておくことが可能となるので、溝部33からハウジング9の内部に異物が侵入してしまうことを抑制できる。
【0062】
(5)スイッチ装置8は、第1固定ターミナル本体19aの基端19cを、溝部33に形成された圧入部44に圧入することにより、第1固定ターミナル19をハウジング9に仮固定する圧入機構43を備える。この構成によれば、スイッチ装置8を組立てるとき、第1固定ターミナル19を圧入によってハウジング9に仮固定しておくことが可能となる。このため、第1固定ターミナル19の位置決めに手間がかからないので、スイッチ装置8の組立ての容易化に寄与する。
【0063】
(6)第1固定ターミナル本体19aは、コ字状に形成されている。第1固定ターミナル用接続ピン19bは、第1固定ターミナル本体19aの両端に形成されている。溝部33は、ハウジング9において対向する一対の側壁13の各々に形成されている。この構成によれば、第1固定ターミナル本体19aの両側に第1固定ターミナル用接続ピン19bを有する第1固定ターミナル19を備えたスイッチ装置8であっても、製造作業を簡易にできる。
【0064】
(他の実施形態)
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0065】
・第1固定ターミナル19は、カバー12と別部品化されていることに限定されず、カバー12と一体部品としてもよい。
・第1固定ターミナル19は、両側に接続ピンを有する形状に限定されず、片側のみに接続ピンを有する形状でもよい。
【0066】
・第1固定ターミナル用接続ピン19bは、略L字形状に限定されず、例えば、基端19cから側方に直線状に延びた形状としてもよい。
・第1固定ターミナル19は、ケース11に対して基端19cが圧入されることに限らず、例えば、本体部分や接続ピンなど、他の箇所で圧入されてもよい。
【0067】
・第2固定ターミナル20の固定接点部53は、例えば、第2固定ターミナル20の基部54とは別部品からなるリベットでもよい。
・可動ターミナル18は、スナップアクション機構23を有する部材であればよい。
【0068】
・ガイド溝37(溝部33)の形状は、テーパ状に限らず、例えば直線状など、他の形状に変更してもよい。
・溝部33は、例えば、ガイド溝37のみ有する構造としてもよい。
【0069】
・溝部33は、圧入部44が省略された形状でもよい。すなわち、圧入機構43は、省略されてもよい。
・突壁39は、溝部33を全て覆う形状としてもよい。
【0070】
・規制壁40は、ケース11ではなく、カバー12に形成されてもよい。
・規制壁40の高さは、必要とする高さに適宜変更してもよい。
・カバー12を複数部品化し、そのうちの1つで第1固定ターミナル19を位置決めする構造としてもよい。
【0071】
・可動ターミナル18、第1固定ターミナル19、及び第2固定ターミナル20は、1枚の金属板からプレス加工等によって形成されてもよい。
・基板21への接点の実装方法は、平面実装方式に限定されず、例えば、スルーホール実装方式を用いてもよい。
【0072】
・スイッチ装置8は、電動パーキングブレーキに使用されることに限らず、他の装置や機器に使用されてもよい。
・スイッチ装置8は、車載用に限定されず、他の装置、機器、システムに使用されてもよい。
【0073】
・本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0074】
4…操作部、8…スイッチ装置、9…ハウジング、10…開口部、11…ケース、12…カバー、18…可動ターミナル、22…ばね部、23…スナップアクション機構、19…第1固定ターミナル、19a…第1固定ターミナル本体、19b…第1固定ターミナル用接続ピン、19c…基端、20…第2固定ターミナル、21…基板、33…溝部、34…実装面、40…規制壁、43…圧入機構、44…圧入部。