(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174282
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】高所電気工事用アシスト装置
(51)【国際特許分類】
B66F 9/06 20060101AFI20231130BHJP
B66F 11/04 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B66F9/06 W
B66F11/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087045
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000141060
【氏名又は名称】株式会社関電工
(71)【出願人】
【識別番号】000134903
【氏名又は名称】株式会社ニシヤマ
(71)【出願人】
【識別番号】390013321
【氏名又は名称】株式会社ダイドー
(74)【代理人】
【識別番号】100080746
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 武嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100217881
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 由美
(72)【発明者】
【氏名】於保 健一
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 丙午郎
(72)【発明者】
【氏名】佐久 豊
(72)【発明者】
【氏名】大野 達也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅章
(72)【発明者】
【氏名】笹本 吉一
(72)【発明者】
【氏名】山下 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】江草 良一
(72)【発明者】
【氏名】瀧本 喜太
【テーマコード(参考)】
3F333
【Fターム(参考)】
3F333AA09
3F333AB04
3F333AC14
3F333DA04
3F333DA05
3F333DA07
3F333DA09
(57)【要約】
【課題】高所電気工事を行う作業者の肉体的負担を軽減できるアシスト装置を提供する。
【解決手段】高所作業車の作業バケット1の上方周端縁部12に取着される取付具4を有し、かつ、伸縮自在な帯板状アーム板21,22を設けて、先端に、操作スティック5を受持するスティック受け具6を、左右前後に水平移動させ、さらに、上方へ常時弾発回転付勢するガススプリングを、設ける。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高所作業車(10)のブーム(11)の先端に設けられた上方開口箱型の作業バケット(1)の上方周端縁部(12)に取着される取付具(4)と、
該取付具(4)に対して、鉛直状軸心(Lh )廻りに回転可能として取着されたベース部材(15)と、
上記ベース部材(15)に水平軸心(L6 )廻りに上下揺動自在として枢着された帯板状第1アーム板(21)と、
該第1アーム板(21)に対して、該第1アーム板(21)の先端(21A)から延伸自在として、重ね合わされる帯板状第2アーム板(22)と、
上記第1アーム板(21)と上記第2アーム板(22)を直線状態に維持しつつ、直線往復動させるガイドレール機構(G)と、
上記第2アーム板(22)の先端に付設され、絶縁操作スティック(5)を受持可能な略Y字状のスティック受け具(6)とを、
具備することを特徴とする高所電気工事用アシスト装置。
【請求項2】
上記帯板状第1アーム板(21)を、上記水平軸心(L6 )廻りに上方へ常時弾発回転付勢(M21)するガススプリング(18)を付設した請求項1記載の高所電気工事用アシスト装置。
【請求項3】
上記帯板状第1アーム板(21)の前方下端縁(23)には、長手方向に固着位置を変更調整自在として、ストッパ片(25)を、付設し、
さらに、一定の長さ寸法に設定したストッパ杆(20)を、上記前方下端縁(23)と上記ベース部材(15)の間に付設し、
上記第1アーム板(21)が上記ガススプリング(18)の弾発付勢力に抗して、下方揺動する際に、上記ストッパ片(25)が上記ストッパ杆(20)の上端部位の動きを阻止し、第1アーム板(21)の傾斜角度を所定値に規制するように構成した請求項1又は2記載の高所電気工事用アシスト装置。
【請求項4】
上記スティック受け具(6)は、第2アーム板(22)の先端に付設される略Y字状固定受け具本体(33)を備え、かつ、該固定受け具本体(33)は、2枚の上方突出腕(34)(34)を有すると共に、該上方突出腕(34)(34)には左右方向の貫孔(35)(35)を有し、
かつ、左右突出軸(37)(37)を有すると共に凹状受け部を有する揺動受け板(36)の上記突出軸(37)(37)を、上記固定受け具本体(33)の上記貫孔(35)(35)に、挿入して、
揺動受け板(36)を揺動可能に、枢着した請求項1記載の高所電気工事用アシスト装置。
【請求項5】
上記帯板状第1アーム板(21)の前方下端縁(23)には、長手方向に固着位置を変更調整自在として、ストッパ片(25)を、付設し、
さらに、一定の長さ寸法に設定したストッパ杆(20)を、上記前方下端縁(23)と上記ベース部材(15)の間に付設し、
上記第1アーム板(21)が上記ガススプリング(18)の弾発付勢力に抗して、下方揺動する際に、上記ストッパ片(25)が上記ストッパ杆(20)の上端部位の動きを阻止し、
第1アーム板(21)の傾斜角度を所定値に規制するように構成した請求項4記載の高所電気工事用アシスト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高所電気工事用アシスト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高所電気工事のために、高所作業車のブームの先端に設けられた作業バケットに作業者が乗って架空電線の電気工事を行っていた。
その際、作業バケット内の作業者は、両手で絶縁操作スティック(特許文献1,2参照)を握って、作業操作を行う。
【0003】
最近、上記絶縁スティックの先端に取付けられる作業器具類が複雑化し、重量が次第に増加しつつある。
そこで、絶縁スティックの基部を、高所作業車の作業バケットに設置する技術が提案されている(特許文献3,4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平3-3110号公報
【特許文献2】特開2019-161778号公報
【特許文献3】特開2017-103863号公報
【特許文献4】特開2000-324637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献3に記載の発明では、作業バケットの内部底壁面に、操作スティックを垂直姿勢に設置する構成である。従って、架空電線の真下位置まで、作業バケットを移動させる必要があり、かつ、複雑かつ微妙な電気工事が困難であるという欠点、及び、作業者は真上を向いて作業せねばならず、身体に無理が掛る欠点があった。
【0006】
また、特許文献4に記載の発明では、作業バケットに固着した保持(固定)装置によって、操作スティックを強固に安定して支持できるので、作業者の身体への負担は軽減される。しかしながら、架空電線と作業バケットとの上下・前後・左右方向の相対的位置関係が固定され、容易に変更することができず、架空電線への各種の電気工事をスムーズに行い得なくなり、作業能率が著しく低下するという欠点があった。
特に都市部においては、架空電線が輻輳している場合が多く、高所作業車の作業バケットが工事対象の電線に容易にアプローチすることが出来ない場合がある。このような場合、作業者は重量大なる回転工具や横パイプ部材を操作スティックの先端に付設し、基端を支持して作業を行うことになる。このため、作業者はやや離れた位置から無理な体勢で操作スティックを操作することになり、重心が先端側に偏った操作スティックの取扱いにかかる作業者の負担が大きいものとなっていた。
【0007】
そこで、本発明は、従来のこのような欠点を解消して、高所作業車の作業バケットに乗った作業者の身体への負担を著しく軽減(疲労を軽減)して、電気工事を能率良く、正確・高品質に行うことができるアシスト装置の提供を目的とする。
【0008】
さらに、作業バケットと(輻輳した)架空電線の被作業箇所との相対的位置関係が、左右・上下・前後に変化しても、作業者は、スムーズに対応でき、正確かつ高品質の作業を行うことができるアシスト装置の提供を、他の目的とする。特に、作業バケットから、(架空電線の)被作業箇所までの「高さ」が大幅に変化しても、スムーズに対応できるアシスト装置の提供を、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明は、高所作業車のブームの先端に設けられた上方開口箱型の作業バケットの上方周端縁部に取着される取付具と;該取付具に対して、鉛直状軸心廻りに回転可能として取着されたベース部材と;上記ベース部材に水平軸心廻りに上下揺動自在として枢着された帯板状第1アーム板と;該第1アーム板に対して、該第1アーム板の先端から延伸自在として、重ね合わされる帯板状第2アーム板と;上記第1アーム板と上記第2アーム板を直線状態に維持しつつ、直線往復動させるガイドレール機構と;上記第2アーム板の先端に付設され、絶縁操作スティックを受持可能な略Y字状のスティック受け具とを;具備する。
【0010】
また、上記帯板状第1アーム板を、上記水平軸心廻りに上方へ常時弾発回転付勢するガススプリングを付設した。
【0011】
また、上記帯板状第1アーム板の前方下端縁には、長手方向に固着位置を変更調整自在として、ストッパ片を、付設し;さらに、一定の長さ寸法に設定したストッパ杆を、上記前方下端縁と上記ベース部材の間に付設し;上記第1アーム板が上記ガススプリングの弾発付勢力に抗して、下方揺動する際に、上記ストッパ片が上記ストッパ片の上端部位の動きを阻止し、第1アーム板の傾斜角度を所定値に規制するように構成した。
【0012】
また、上記スティック受け具は、第2アーム板の先端に付設される略Y字状固定受け具本体を備え、かつ、該固定受け具本体は、2枚の上方突出腕を有すると共に、該上方突出腕には左右方向の貫孔を有し;かつ、左右突出軸を有すると共に凹状受け部を有する揺動受け板の上記突出軸を、上記固定受け具本体の上記貫孔に、挿入して;揺動受け板を揺動可能に、枢着した。
【0013】
また、上記帯板状第1アーム板の前方下端縁には、長手方向に固着位置を変更調整自在として、ストッパ片を、付設し;さらに、一定の長さ寸法に設定したストッパ杆を、上記前方下端縁と上記ベース部材の間に付設し;上記第1アーム板が上記ガススプリングの弾発付勢力に抗して、下方揺動する際に、上記ストッパ片が上記ストッパ杆の上端部位の動きを阻止し;第1アーム板の傾斜角度を所定値に規制するように構成した。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、操作スティックの中間部位をスティック受け具に受持させれば、作業者の意志通りに、スティック受け具の先端を左右上下前後方向に、特に、作業バケットから、高い(遠い)作業箇所にまで、広大な空間を自在に動かすことができ、一定の空間位置に静止した作業バケットから、架空電線の皮剥ぎ(皮剥ぎ取り)、切断、テーピング、その他の各種工事(作業)を、疲れ少なく、容易、かつ、スムーズ・迅速に、行うことができる。特に、操作スティックの先端に、重量大なる回転工具や横パイプ部材等を付設した状態下であっても、操作スティックの中間位置は確実にサポートされ、作業者の肉体的負担を軽減しながら、作業バケットに近い作業箇所から、高くかつ遠い作業箇所までの広大な空間を、スムーズかつ能率的に、電気工事を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図3】作業バケットから見て比較的に低い高さに在る作業箇所に対して作業者が操作スティックを用いて作業を行っている状態を示す図であって、(A)はバケットから作業箇所まで近い場合を示す側面図、(B)は遠い場合を示す側面図である。
【
図4】作業バケットから見て中位の高さに在る作業箇所に対して作業者が操作スティックを用いて作業を行っている状態を示す図であって、(A)はバケットから作業箇所まで近い場合を示す側面図、(B)は高くかつ遠い場合を示す側面図である。
【
図5】作業バケットから見て高い位置に在る作業箇所に対して作業者が操作スティックを用いて作業を行っている状態を示す図であって、(A)はバケットから作業箇所までやや近い場合を示す側面図、(B)はさらに高い場合を示す側面図である。
【
図6】本発明に係るアシスト装置に支持された絶縁操作スティックの先端が作業中に描く軌道範囲、及び、可動領域を説明した側面図である。
【
図10】絶縁操作スティックが作業中に動き得る可動領域を説明した正面図である。
【
図11】第1アーム板に対して第2アーム板が短縮した状態にある側面図である。
【
図12】第1アーム板に対して第2アーム板が伸長した状態にある側面図である。
【
図13】第1アーム板とガススプリングの詳しい側面図である。
【
図14】第1アーム板とガイドレール機構と第2アーム板及びガススプリングを示した正面図である。
【
図15】ガススプリングの内部機構及びその附近を示す断面図である。
【
図17】スティック受け具の作動を説明するための側面図である。
【
図18】スティック受け具に保持された絶縁操作スティックの作動を説明するための側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図示の実施の形態に基づき本発明を詳説する。
図1と
図2に於て、10は高所作業車であり、その伸縮ブーム11の先端には、上方開口箱型の作業バケット1が設けられる。電柱2,2の上部に懸架された電線(架空電線)3に対して、伸縮ブーム11の回転及び伸長作動によって、
図1と
図2のように作業バケット1を接近させる。原則的には、電線3の手前かつ僅かに下方位置に、作業バケット1を接近して停止させる。
【0017】
本発明に係るアシスト装置30は、上記作業バケット1の上方周端縁部12の一部に取付けられる。作業者Mは、作業バケット1に乗り込んでおり、このバケット1内から、本発明に係るアシスト装置30によって、操作スティック5を支持させながら、各種電気工事(作業)を、行う。
【0018】
図2~
図12に示すように、本発明のアシスト装置30は、作業バケット1の上方周端縁部12に取着される取付具4を有する。図例では、横断面形状が角張った“h型”である(
図11,
図12参照)。言い換えると、作業バケット1の上方周端縁部12に上方から外嵌状として嵌込まれる(下方開口状の)コの字部(チャンネル部)4Cと、そのコの字部4Cの角部から上方突出状に連設された上方突片部4Hとから成る。なお、(図示省略するが、)例えば、下方開口状としたコの字部4Cの一部に、ネジ孔を開設して、そのネジ孔にボルトを螺進して、上方周端縁部12に、強固に取着固定するのが、望ましい。
【0019】
次に、
図11,
図12に於て、15はベース部材であって、取付具4に対して、鉛直状軸心Lh 廻りに回転可能として、取着される。
具体的には、取付具4に対して、鉛直状支軸16を一体に立設する。この鉛直状支軸16の軸心Lh に対して、回転可能に外嵌した円筒部15Pと、該円筒部15Pの下端に固設されたブロック状のベース本体15Aと、上記円筒部15Pの上端に固設された上腕部15Bとから、上記ベース部材15が構成される。
なお、
図11,
図12に於て、鉛直状支軸16の下端は、取付具4に固着の孔付ブロック17の孔部に挿入固着されている。
【0020】
上述のように、取付具4に対し、鉛直状軸心Lh 廻りに回転可能として、取着されたベース部材15の(水平方向突出状の)上腕部15Bに、水平軸心L
6 廻りに(
図11の矢印M
1 ,M
2 のように)上下揺動自在として、帯板状第1アーム板21が枢着されている。
さらに、22は帯板状第2アーム板であり、この第2アーム板22は、第1アーム板21に対して、スライド自在に取付けられており、第1アーム板21の先端21Aから延伸自在として、重ね合わされる。
【0021】
そして、第1アーム板21と第2アーム板22を直線状態に維持しつつ、直線往復動させるガイドレール機構Gが、
図14に示すように、第1アーム板21と第2アーム板22の間8に、設けられる。
ガイドレール機構Gとしては、キャビネット等の家具等に用いられている(外筒と内筒から成る)ガイドレールと同様の構造とするのが望ましい。
また、第2アーム板22の先端には、絶縁操作スティック5を受持可能な略Y字状のスティック受け具6が付設(固設)される(
図18と
図12参照)。
【0022】
次に、
図13,
図14及び
図15に示すように、帯板状第1アーム板21を、水平軸心L
6 廻りに、矢印M
21の如く、上方へ常時弾発回転付勢するためのガススプリング18を、付設している。
具体的には、ベース部材15の上腕部15Bに固設した水平状の固定軸26(
図12参照)に、カム27を固着する。
そして、第1アーム板21の基端の側面に包囲ケーシング28を固着するが、このケーシング28を上記固定軸26が貫通しており、固定軸26に固設の上記カム27もケーシング28に内有される。
【0023】
さらに、このケーシング28の上壁には、上記ガススプリング(ガスダンパー)18が上方突出状に固着される。また、ガススプリング18のロッド18Aによって、一軸心L
29廻りに揺動する揺動部材29には、カム27に対して転動自在に圧接する小ローラ31が枢着されている。
従って、この小ローラ31がカム27に対して圧接しつつ転動すると、小ローラ31がカム27から受ける反力によって、第1アーム板21は矢印M
21にて示した上方揺動のための回転トルク(回転モーメント)を受けることとなる。
図11にて説明した(矢印M
1 ,M
2 の内の)矢印M
1 の方向が、ガススプリング18とカム27によって発生する回転トルク(回転モーメント)M
21の方向に該当する。
【0024】
このようにして、第1アーム板21は常に上方揺動方向の回転トルクM21を受け、従って、この第1アーム板21に取付けられた第2アーム板22及びその先端のスティック受け具6も、常に上方揺動方向に、弾発付勢され、従って、スティック受け具6にて受持された操作スティック5の中間部位は、常時、上方向へ弾発的に付勢されつつサポートされる。
要するに、上記ガススプリング18の弾発付勢力によって、帯板状第1アーム板21は、水平軸心L6 廻りに、常時、上方へ弾発回転付勢M21されている。
【0025】
次に、
図11と
図12に於て、20は一定の長さ寸法に設定されたストッパ杆である。また、第1アーム板21の前方下端縁23には、固着位置をその長手方向に変更調整自在として、ストッパ片25が、付設されている。
ストッパ杆20は、前方下端縁23と、ベース部材15のベース本体15Aの間に、介設される。第1アーム板21がガススプリング18(
図15参照)の弾発付勢力に抗して、下方揺動する際に、ストッパ片25が、ストッパ杆20の上端部位の動きを、阻止して、第1アーム板21(及び第2アーム板22)の傾斜角度を、所定値に規制できる。
なお、ストッパ片25を、ストッパ杆20の上端部位に連結又は一体状に付設しても、あるいは、ストッパ片25を独立して前方下端縁23に沿って、その固着位置を、変更調整するように、付設するも、自由に選択できる。
【0026】
また、
図16~
図18に示すように、操作スティック5を受持するスティック受け具6は、第2アーム板22の先端に付設(固設)される略Y字状固定受け具本体33を備える。
さらに、この固定受け具本体33は、2本(枚)の上方突出腕34,34を有し、さらに、この上方突出腕34,34には、左右方向の貫孔35,35を(同一軸心状として)有する。
【0027】
また、36は、(上方が拡大状の)U字型の揺動受け板であって、左右突出軸37,37を有し、この突出軸37,37は受け具本体33の貫孔35,35に挿入される。矢印M
36のように、受け板36は、受け具本体33に対して、左右揺動可能である。このような構成によって、
図18に示すように、操作スティック5を矢印M
5 のように揺動させることが容易となり、
図1,
図2に示した使用状態において、操作スティック5の先端を電線3等に対して、所望位置に移動させることができる。
【0028】
なお、
図16と
図17に示したように、揺動受け板36の下半部(外面)と、受け具本体33の(上方開口状の)略U字状凹部33Aとの間には、十分な間隙を形成して、矢印M
36方向への十分な揺動を可能とするのが望ましい。
【0029】
本発明に係るアシスト装置は、
図1と
図2に示したように、高所の電線3に対して、作業バケット1に乗った作業者Mは、安全に、かつ、能率良く、各種電気工事(作業)を行うことが、可能である。
図3,
図4,
図5に於て、操作スティック5の(側面から見た)傾き角度が水平に近い状態から鉛直に近い状態にまで、使用できることを示す。しかも、作業バケット1から近い電線3(
図1,
図2参照)に対応は勿論容易であると共に、強力に支持力を発揮する第1アーム板21と第2アーム板22の伸長作動によって、
図3(B)と
図4(B)のように、バケット1から遠い電線3(
図1,
図2参照)や、(
図4(B)と)
図5(B)のように、バケット1から十分に高いところの電線3(
図1,
図2参照)にも、作業者Mの身体的な疲労を低減しつつ、安全に、かつ、能率良く、高所作業を行い得る。
【0030】
図3(A),
図4(A),
図5(A)と、
図3(B),
図4(B),
図5(B)とを対比して見れば、明らかな如く、操作スティック5の全長を同一としたままで、スティック受け具6に対して、操作スティック5を(前方かつ上方へ)送りを付与すれば済む。
さらに、
図3(A)(B)と
図4(A)(B)と
図5(A)(B)に示す操作スティック5の最先端部5pの到達可能領域Zを、
図6に於て、点々をもって示す。つまり、所定幅Wz の帯状で、かつ、弯曲した弧状で示される。このように、側面から見て、バケット1から離れた、かつ、低いところから高所までを、カバー可能であることが、明らかとなる。
【0031】
また、
図11,
図12にて既に述べたように、ベース部材15の円筒部15Pは、鉛直状支軸16に回転自在に外嵌され、従って、ベース部材15に付設された第1アーム板21と第2アーム板22とストッパ杆20等、及び、スティック受け具6と、これに受持された操作スティック5は、鉛直状支軸16廻りに、平面視で、
図7,
図8,
図9のように、左右へ振る(揺動する)ことが、できる。
【0032】
このように、
図7,
図8,
図9の平面図と、
図10に示した正面図とを参酌すれば、作業者Mは、左右方向の広い範囲、及び、上下方向の広い範囲にわたって、操作スティック5を振る(揺動する)ことができ、
図1,
図2に示したように作業バケット1に乗って、架空電線3に対する電気工事作業を、能率的に、かつ、安全に行い得る。
しかも、
図7~
図10では、操作スティック5の全長を一定に保った場合を例示したが、
図6に於て既に説明したように、操作スティック5を、その長手方向に移動させて、最先端部5Pを、点々で示した領域Z内を変更自在であるので、
図7~
図10と
図6とを、合せて判断すれば、広大な領域Zの電気工事(作業)を行い得ることが分る。言い換えると、架空電線3と作業バケット1との上下・前後・左右方向の相対的位置関係を、容易に変更自在であり、操作スティク5の最先端部5P―――及び、これに取着した(電気工事用の)回転工具や横パイプ部材等―――を、広大な領域Z内で容易かつ安全に変更自在であって、電気工事の作業能率が著しく改善され、作業者Mの身体的負担も大きく軽減できる。
【0033】
なお、本発明の用途としての「電気工事」とは、「通信線工事」も、包含するものと定義する。
【0034】
本発明は、以上詳述したように、高所作業車10のブーム11の先端に設けられた上方開口箱型の作業バケット1の上方周端縁部12に取着される取付具4と;該取付具4に対して、鉛直状軸心Lh 廻りに回転可能として取着されたベース部材15と;上記ベース部材15に水平軸心L6 廻りに上下揺動自在として枢着された帯板状第1アーム板21と;該第1アーム板21に対して、該第1アーム板21の先端21Aから延伸自在として、重ね合わされる帯板状第2アーム板22と;上記第1アーム板21と上記第2アーム板22を直線状態に維持しつつ、直線往復動させるガイドレール機構Gと;上記第2アーム板22の先端に付設され、絶縁操作スティック5を受持可能な略Y字状のスティック受け具6とを;具備する構成であるので、次のような効果を発揮できる。
【0035】
即ち、 (i) 帯板状第1アーム板21と帯板状第2アーム板22は、両者間にガイドレール機構Gを介在させる構成であるので、ガイドレール機構Gの横断面は、上下幅寸法が大で、かつ、厚み寸法を小さく設定できる。 (ii) ガイドレール機構Gの上下幅寸法を大きく、厚み寸法を小さくすることができ、ガイドレール機構Gに作用する上下方向の曲げ力に対して、有利である。(iii) 全体を軽量化でき、しかも、上下方向の曲げ力が作用しても、第2アーム板22は第1アーム板21に対してスムーズに伸長・短縮できる。 (iv) ベース部材15が鉛直状軸心Lh 廻りに回転することによって、
図7~
図9、及び、
図10に示した如く、操作スティック5を左右に大きく振ることができ、広い領域をカバーする。即ち、
図1に例示した作業バケット1から操作スティック5を左右に大きく振って、架空電線3の必要な作業箇所に対して、迅速かつ容易に、対応可能である。 (v) 略Y字状のスティック受け具6に対して、操作スティック5を、その軸心方向に、押出したり、引込めたりすることで、
図6に示すように、最先端部5Pの到達領域Zを拡大できる。 (vi) 作業者Mの身体への負担を大幅に低減できる。(vii) 都市部においては、架空電線が輻輳している場合が多く、高所作業車の作業バケットが工事対象の電線に容易にアプローチすることができない場合がある。このような場合、作業者は重量大なる回転工具や横パイプ部材を操作スティックの先端に付設し、基端を支持して作業を行うことになる。このため、作業者はやや離れた位置から無理な体勢で操作スティックを操作することになり、重心が先端側に偏った操作スティックの取扱いにかかる作業者の負担が大きいものとなっていた。本発明に係るアシスト装置は、特に、このような問題を解決できるという作用・効果がある。
【0036】
また、上記帯板状第1アーム板21を、上記水平軸心L6 廻りに上方へ常時弾発回転付勢M21するガススプリング18を付設したので、操作スティック5の中間部位が弾発的に常時受持されて、左右上下前後に、操作スティック最先端部5Pを動かすことが可能となり、各種の作業を、疲れずに、能率的に行うことができる。特に、操作スティック5の最先端部5Pに、5kg~12kgもの重量大の回転工具や横パイプ部材等が取着した状態下でも、十分にガススプリング18による弾発的サポートによって、作業者の肉体的負担を著しく軽減できる。しかも、操作スティックの最先端部5Pの上記回転工具や横パイプ部材等を上下左右及び前後方向に動かすことができて、作業全体を容易かつスムーズに(肉体的負担を軽減して)行うことが可能となる。
【0037】
また、上記帯板状第1アーム板21の前方下端縁23には、長手方向に固着位置を変更調整自在として、ストッパ片25を、付設し;さらに、一定の長さ寸法に設定したストッパ杆20を、上記前方下端縁23と上記ベース部材15の間に付設し;上記第1アーム板21が上記ガススプリング18の弾発付勢力に抗して、下方揺動する際に、上記ストッパ片25が上記ストッパ杆20の上端部位の動きを阻止し、第1アーム板21の傾斜角度を所定値に規制するように構成したので、スティック受け具6に作用する荷重が所定値以上であれば第1アーム板21・第2アーム板22等が下方揺動して、所定姿勢に規制されて、安全に電気工事ができる。そして、上記荷重が所定値未満ならば、ガススプリング18による(
図11のM
1 方向の)弾発力によって、弾性的に軽く揺動しつつ、スティック受け具6に取着(受持)した操作スティック5は、サポートされて、作業者Mは電気工事を楽に行い得る。そして、ストッパ片25の固着位置を変更調整することで、電気工事の現場の状況に対応して、最も使用し易い状況にセッティングできる。
【0038】
また、上記スティック受け具6は、第2アーム板22の先端に付設される略Y字状固定受け具本体33を備え、かつ、該固定受け具本体33は、2枚の上方突出腕34,34を有すると共に、該上方突出腕34,34には左右方向の貫孔35,35を有し;かつ、左右突出軸37,37を有すると共に凹状受け部を有する揺動受け板36の上記突出軸37,37を、上記固定受け具本体33の上記貫孔35,35に、挿入して;揺動受け板36を揺動可能に、枢着したので、操作スティック5の基部位置を作業者が手で握り、スティック受け具6の揺動受け板36の凹状受け部に対して、操作スティック5の中間部位を落し込み(嵌合し)、
図18に示すように、操作スティック5を矢印M
5 のように上下揺動させようとすれば、揺動受け板36は貫孔35(左右突出軸37)廻りにスムーズに揺動(矢印M
36参照)して、操作スティック5を、軽快に、その傾斜姿勢を変える(調整する)ことが、可能であり、電気工事の作業能率も改善できる。
【0039】
また、上記帯板状第1アーム板21の前方下端縁23には、長手方向に固着位置を変更調整自在として、ストッパ片25を、付設し;さらに、一定の長さ寸法に設定したストッパ杆20を、上記前方下端縁23と上記ベース部材15の間に付設し;上記第1アーム板21が上記ガススプリング18の弾発付勢力に抗して、下方揺動する際に、上記ストッパ片25が上記ストッパ杆20の上端部位の動きを阻止し;第1アーム板21の傾斜角度を所定値に規制するように構成したので、スティック受け具6に作用する荷重が所定値以上であれば第1アーム板21・第2アーム板22等が下方揺動して、所定姿勢に規制されて、安全に電気工事ができる。そして、上記荷重が所定値未満ならば、ガススプリング18による(
図11のM
1 方向の)弾発力によって、弾性的に軽く揺動しつつ、スティック受け具6に取着(受持)した操作スティック5は、サポートされて、作業者Mは電気工事を楽に行い得る。そして、ストッパ片25の固着位置を変更調整することで、電気工事の現場の状況に対応して、最も使用し易い状況にセッティングできる。しかも、
図18に示すように、操作スティック5を矢印M
5 のように上下揺動させようとすれば、揺動受け板36は貫孔35(左右突出軸37)廻りにスムーズに揺動(矢印M
36参照)して、操作スティック5を、軽快に、その傾斜姿勢を変える(調整する)ことが、可能であり、電気工事の作業能率も一層改善できる。
【符号の説明】
【0040】
1 作業バケット
5 操作スティック
6 スティック受け具
10 高所作業車
11 ブーム
15 ベース部材
18 ガススプリング
20 ストッパ杆
21 第1アーム板
21A 先端
22 第2アーム板
23 前方下端縁
25 ストッパ片
33 受け具本体
34 上方突出腕
35 貫孔
36 揺動受け板
37 左右突出軸
G ガイドレール機構
L6 水平軸心
Lh 鉛直状軸心
M21 矢印(弾発回転付勢)